(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  収容物を収容するための空間部が形成されたリアシェルとフロントシェルとが互いの開口縁部側辺側に付設されたヒンジ部を介して開閉可能となるように構成され、底部四隅に移動用のキャスターが取付けられて成るスーツケース等のバッグ類の少なくとも一方のシェルの側壁面にスイッチ部が設けられ、スイッチ部に配されたスイッチボタンを押下操作することでキャスターの転動を停止させるようにしたスーツケース等のバッグ類におけるキャスターロック装置であって、このキャスターロック装置は、フロントシェルの側壁面に設けられ、スイッチボタンを押下操作することでフロントキャスターの転動を停止させるようになっていて、スイッチ部のスイッチボタンの押下時に連動して操作される操作機構と、この操作機構による作動が、牽引あるいは押圧、押し戻されるワイヤーを備えた伝達機構を介して伝達されることでキャスターの車輪の外側面あるいは内側面に圧接・圧止する停止力で、車輪の転動を阻止する押圧停止機構とを備えて成り、
  操作機構は、スイッチボタンの押下操作をガイドするための当該スイッチボタンに連結された連結部と、この連結部の両端側を連繋して操作される左右一対のラチェット機構部と、スイッチボタンに下方に向けて揺動昇降自在に取付けられたV型リンクアームと、V型リンクアームの昇降動によって上下動自在とし且つ前記伝達機構のワイヤーの一端が固着されて成るスライダーとを有し、
  ラチェット機構部は、前記スイッチ部の左右両側に配されたラチェットガイド筒部と、スイッチボタンに連結された連結部の左右両側に連繋されてラチェットガイド筒部に上下動自在に挿入されたラチェット操作ロッドと、ラチェット操作ロッドの下端で回転自在となるように連繋されたラチェット係止ロッドと、ラチェット係止ロッドを上方へ向けて押圧付勢するスプリングとを備え、ラチェット操作ロッドの下端には複数のガイド突起が円周方向に沿って等間隔で突設され、各ガイド突起はラチェットガイド筒部の内面に形成された等間隔配置のスリット部それぞれに係合することでラチェット操作ロッド自体は回転せずに上下動すると共に、ラチェット係止ロッドに形成された突条部がラチェットガイド筒部の内周面に形成されたスリット部を通過可能として成り、ラチェット操作ロッドの下面およびラチェット係止ロッドの上面には互いに噛合可能な上下動円周嵌合部、回転円周嵌合部を設け、ラチェットガイド筒部のスリット部の下端部にはラチェット溝部を設け、スイッチボタンの1回目の押下操作により、ラチェット操作ロッドの上下動円周嵌合部とラチェット係止ロッドの回転円周嵌合部との噛み合いにより、上側にあるラチェット操作ロッドに対し下方のラチェット係止ロッドのみが所定のピッチで一方向に回転し、1回目の押下操作の解除によって、両円周嵌合部同士の噛み合いが外れると同時に、突条部をラチェットガイド筒部のラチェット溝部に係止させるものとし、スイッチボタンの2回目の押下操作により、両円周嵌合部同士が再度噛み合うことで、上側にあるラチェット操作ロッドに対しラチェット係止ロッドが所定のピッチで一方向に回転されると同時にラチェット溝部から突条部が係止解除され、ガイド突起と突条部とが共にスリット部を通過可能となって、スプリングの弾発力に任せてラチェット操作ロッド、ラチェット係止ロッドを上方に復帰移動可能としてあり、
  スイッチ部にはスイッチボタンを押下操作可能とする操作用凹陥部を備え、スイッチボタンの押下ロック状態においては操作用凹陥部の内奥面にそのロック状態を認識させるための表示部が露呈し、スイッチボタンの押下ロック解除状態においては操作用凹陥部の内奥面の表示部が当該スイッチボタンによって隠蔽されるものとしてあり、
  押圧停止機構は、伝達機構の末端に連繋されている牽引駆動バーと、牽引駆動バーを下方に向けて弾発付勢している復原部と、牽引駆動バー先端に連繋された揺動梃子レバーと、揺動梃子レバーの揺動によって牽引駆動バーと逆方向で上下動することでキャスターの車輪の外側面に圧接・離反可能とした押圧停止バーとを備えて成る、
  ことを特徴とするスーツケース等のバッグ類におけるキャスターロック装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
  このような従来のロック構造によると、特許文献1に係る旅行カバンのロック構造は、取手の出入りに関連してのキャスターのコロに対するピンの押圧とするため、この取手がいわゆるリアシェルに設けられていると、フロントシェル側に付設のキャスターをロックさせるようにするにはそのまま適用できない。特許文献2に係るキャスターの固定構造は、個々のキャスターそれぞれに対応してのスーツケース底部近傍における止動スイッチそれぞれを個別に操作しなければならないから、面倒である。特許文献3に係るキャリーバッグのブレーキ構造は、バッグ自体を引き回すための伸縮ハンドルの伸縮操作に関連するから、この伸縮ハンドルが設けられているリアシェル側のキャスターに対してのみのブレーキ操作ができるにすぎない。特許文献4に係るブレーキ機能付きスーツケース構造では、スーツケースにおける引出し式ハンドルが設けられているリアシェルに、昇降式プッシュスイッチを含む作動モジュールを配装してあって、ブレーキが作動されるキャスターはリアシェル側のものであるから、フロントシェル側に付設のキャスターをロックできるようにはなっていない。
【0006】
  そこで本発明は上述したような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、その目的は、例えばリアシェル、フロントシェルから成る開閉式のスーツケース等において、特にそのフロントシェルの底部に取り付けられているフロントキャスターを独自に停止ロックあるいはロック解除を操作でき、スーツケース等の不用意な移動を防止でき、また、例えばリアシェルに設けられている引出し式のハンドルによって傾けた状態での移動も容易であるばかりでなく、直立時での停止状態を維持できるようにしたスーツケース等のバッグ類におけるキャスターロック装置を提供することにある。
 
【課題を解決するための手段】
【0007】
  上述した課題を解決するため、本発明にあっては、収容物を収容するための空間部が形成されたリアシェル2とフロントシェル3とが互いの開口縁部側辺側に付設されたヒンジ部を介して開閉可能となるように構成され、底部四隅に移動用のキャスター7,8が取付けられて成るスーツケース1等のバッグ類の少なくとも一方のシェル3(2)の側壁面にスイッチ部11が設けられ、スイッチ部11に配されたスイッチボタン13を押下操作することでキャスター8(7)の転動を停止させるようにしたスーツケース1等のバッグ類におけるキャスターロック装置(20)であって、このキャスターロック装置(20)は、スイッチ部11のスイッチボタン13の押下時に連動して操作される例えばラチェット構造による自己復帰式等による操作機構21と、この操作機構21による作動が、牽引あるいは押圧、押し戻されるワイヤー42を備えた伝達機構41を介して伝達されることでキャスター8(7)の車輪の外側面あるいは内側面に圧接・圧止する停止力で、車輪の転動を阻止する押圧停止機構51とを備えて成ることを特徴とする。
  キャスターロック装置(20)は、フロントシェル3の側壁面に設けられ、スイッチボタン13を押下操作することでフロントキャスター8の転動を停止させるものとすることができる。
  操作機構21は、スイッチボタン13の押下操作をガイドするための当該スイッチボタン13に連結された連結部23と、この連結部23の両端側を連繋して操作される例えばワンウェイプッシュスイッチ構成による左右一対のラチェット機構部71と、スイッチボタン13に下方に向けて揺動昇降自在に取付けられたV型リンクアーム24と、V型リンクアーム24に連繋された昇降動によって上下動自在とし且つ前記伝達機構41のワイヤー42の一端が固着されて成るスライダー32とを有するものとすることができる。
  ラチェット機構部71は、前記スイッチ部11の左右両側に配されたラチェットガイド筒部72と、スイッチボタン13に連結された連結部23の左右両側に連繋されてラチェットガイド筒部72に上下動自在に挿入されたラチェット操作ロッド73と、ラチェット操作ロッド73の下端で回転自在となるように連繋されたラチェット係止ロッド74と、ラチェット係止ロッド74を上方へ向けて押圧付勢するスプリング75とを備え、ラチェット操作ロッド73の下端には複数のガイド突起73cが円周方向に沿って等間隔で突設され、各ガイド突起73cはラチェットガイド筒部72の内面に形成された等間隔配置のスリット部78それぞれに係合することでラチェット操作ロッド73自体は回転せずに上下動すると共に、ラチェット係止ロッド74に形成された突条部74bがラチェットガイド筒部72の内周面に形成されたスリット部78を通過可能として成り、ラチェット操作ロッド73の下面およびラチェット係止ロッド74の上面には互いに噛合可能な上下動円周嵌合部73d、回転円周嵌合部74cを設け、ラチェットガイド筒部72のスリット部78の下端部にはラチェット溝部77を設け、スイッチボタン13の1回目の押下操作により、ラチェット操作ロッド73の上下動円周嵌合部73dとラチェット係止ロッド74の回転円周嵌合部74cとの噛み合いにより、上側にあるラチェット操作ロッド73に対し下方のラチェット係止ロッド74のみが所定のピッチで一方向に回転し、1回目の押下操作の解除によって、両円周嵌合部73d,74c同士の噛み合いが外れると同時に、突条部74bをラチェットガイド筒部72のラチェット溝部77に係止させるものとし、スイッチボタン13の2回目の押下操作により、両円周嵌合部73d,74c同士が再度噛み合うことで、上側にあるラチェット操作ロッド73に対しラチェット係止ロッド74が所定のピッチで一方向に回転されると同時にラチェット溝部77から突条部74bが係止解除され、ガイド突起73cと突条部74bとが共にスリット部78を通過可能となって、スプリング75の弾発力に任せてラチェット操作ロッド73、ラチェット係止ロッド74を上方に復帰移動可能とするものとできる。
  スイッチ部11にはスイッチボタン13を押下操作可能とする操作用凹陥部12を備え、スイッチボタン13の押下ロック状態においては操作用凹陥部12の内奥面にそのロック状態を認識させるための表示部14が露呈し、スイッチボタン13の押下ロック解除状態においては操作用凹陥部12の内奥面の表示部14が当該スイッチボタン13によって隠蔽されるものとすることができる。
  押圧停止機構51は、伝達機構41の末端に連繋されている牽引駆動バー52と、牽引駆動バー52を下方に向けて弾発付勢している復原部55と、牽引駆動バー52の先端に連繋された揺動梃子レバー53と、揺動梃子レバー53の揺動によって牽引駆動バー52と逆方向で上下動することでキャスター8(7)の車輪の外側面に圧接・離反可能とした押圧停止バー54とを備えて成るものとすることができる。
【0008】
  以上のように構成された本発明に係るスーツケース1等のバッグ類におけるキャスターロック装置(20)にあって、操作機構21は、スイッチ部11のスイッチボタン13の1回目の押下操作により、スプリング75の弾発力に抗してラチェット操作ロッド73、ラチェット係止ロッド74を下降移動させる。すると、ラチェット係止ロッド74の突条部74bはラチェット操作ロッド73下端のガイド突起73cと共にスリット部78を通過させる。突条部74bのみがスリット部78を通過した際には、スプリング75の弾発力によってラチェット操作ロッド73の上下動円周嵌合部73dとラチェット係止ロッド74の回転円周嵌合部74cとが噛み合うことで、上側にあるラチェット操作ロッド73に対し下方のラチェット係止ロッド74のみを所定のピッチで一方向に回転させる。
  スイッチ部11のスイッチボタン13の1回目の押下操作の解除によって、両円周嵌合部73d,74c同士の噛み合いが外れると同時に、突条部74bの上端がラチェットガイド筒部72下端のラチェット溝部77に係止される。
  このとき、V型リンクアーム24は逆V字型となるよう上方向に揺動され、V型リンクアーム24に連繋されているスライダー32をガイド筒31内で上方移動した状態にさせる。これにより、伝達機構41のワイヤー42が上方に牽引され、押圧停止機構51における牽引駆動バー52を介して揺動梃子レバー53を復原部55の付勢力に抗しつつ時計方向に揺動させ、押圧停止バー54の下端をキャスター8(7)の車輪の外側面に圧止させることでキャスター8(7)の転動を停止させる。
  スイッチ部11のスイッチボタン13の2回目の押下操作により、ラチェット操作ロッド73の上下動円周嵌合部73dとラチェット係止ロッド74の回転円周嵌合部74cとが再度噛み合うことで、上側にあるラチェット操作ロッド73に対しラチェット係止ロッド74を所定のピッチで一方向に回転させると同時にラチェットガイド筒部72のラチェット溝部77から突条部74bの係止を解除させる。そして、ガイド突起73cと突条部74bとを共にスリット部78を通過させ、スプリング75の弾発力でもってラチェット係止ロッド74およびラチェット操作ロッド73をラチェットガイド筒部72の内部上方に移動復帰させる。
  このとき、V型リンクアーム24は正V字型となるよう下方向に揺動され、V型リンクアーム24に連繋されているスライダー32をガイド筒31内で下方移動した状態にさせる。これにより、伝達機構41のワイヤー42が下方に押し込まれ、押圧停止機構51における牽引駆動バー52を介して揺動梃子レバー53を復原部55の付勢力に任せて反時計方向に揺動させ、押圧停止バー54の下端をフロントキャスター8の車輪の外側面から離反させることでフロントキャスター8の転動停止を解除させる。
  操作用凹陥部12の表示部14は、スイッチボタン13の押下ロック状態において当該表示部14を露呈させ、スイッチボタン13の押下ロック解除状態において当該表示部14をスイッチボタン13によって隠蔽させる。
 
【発明の効果】
【0009】
  本発明は以上説明したように構成されているため、例えばリアシェル2、フロントシェル3から成る開閉式のスーツケース1等において、特にそのフロントシェル3の底部に取り付けられているフロントキャスター8を独自に停止ロックあるいはロック解除を操作でき、スーツケース1等の不用意な移動を防止できる。また、例えばリアシェル2に設けられている引出し式のハンドル4によって傾けた状態での移動も容易であり、フロントキャスター8を停止ロックさせた状態ではスーツケース1等を直立させた儘での停止状態を維持できるものとなる。
【0010】
  すなわちこれは本発明において、キャスターロック装置(20)は、スイッチ部11のスイッチボタン13の押下時に連動して操作される例えばラチェット構造等の自己復帰式による操作機構21と、この操作機構21による作動が、牽引あるいは押圧、押し戻されるワイヤー42を備えた伝達機構41を介して伝達されることでキャスター8(7)の車輪の外側面あるいは内側面に圧接・圧止する停止力で、車輪の転動を阻止する押圧停止機構51とを備えて成るからである。
【0011】
  キャスターロック装置(20)は、フロントシェル3の側壁面に設けられ、スイッチボタン13を押下操作することでフロントキャスター8の転動を停止させるので、フロントシェル3の底部に取り付けられているフロントキャスター8の停止ロックあるいはロック解除を独自に操作することができる。しかも、直立時での停止状態を維持できると同時に、停止状態を維持したままであっても、リアシェル2に設けられている引出し式のハンドル4によってスーツケース1を傾けた状態での移動が何等の支障なく行える。
【0012】
  操作機構21は、スイッチボタン13の押下操作をガイドするための当該スイッチボタン13に連結された連結部23と、この連結部23の両端側を連繋して操作される例えばワンウェイプッシュスイッチ構成による左右一対のラチェット機構部71と、スイッチボタン13に下方に向けて揺動自在に取付けられたV型リンクアーム24と、V型リンクアーム24の昇降動によって上下動自在とし且つ前記伝達機構41のワイヤー42の一端が固着されて成るスライダー32とを有するので、キャスター8(7)の独自の停止ロックあるいはロック解除が容易で且つ確実に操作可能となる。しかもV型リンクアーム24とスライダー32との直接的な連繋により強度が向上し、さらに操作機構21全体の省スペース化を図ることができる。
【0013】
  ラチェット機構部71は、前記スイッチ部11の左右両側に配されたラチェットガイド筒部72と、スイッチボタン13に連結された連結部23の左右両側に連繋されてラチェットガイド筒部72に上下動自在に挿入されたラチェット操作ロッド73と、ラチェット操作ロッド73の下端で回転自在となるように連繋されたラチェット係止ロッド74と、ラチェット係止ロッド74を上方へ向けて押圧付勢するスプリング75とを備え、ラチェット操作ロッド73の下端には複数のガイド突起73cが円周方向に沿って等間隔で突設され、各ガイド突起73cはラチェットガイド筒部72の内面に形成された等間隔配置のスリット部78それぞれに係合することでラチェット操作ロッド73自体は回転せずに上下動すると共に、ラチェット係止ロッド74に形成された突条部74bがラチェットガイド筒部72の内周面に形成されたスリット部78を通過可能として成り、ラチェット操作ロッド73の下面およびラチェット係止ロッド74の上面には互いに噛合可能な上下動円周嵌合部73d、回転円周嵌合部74cを設け、ラチェットガイド筒部72のスリット部78の下端部にはラチェット溝部77を設け、スイッチボタン13の1回目の押下操作により、ラチェット操作ロッド73の上下動円周嵌合部73dとラチェット係止ロッド74の回転円周嵌合部74cとの噛み合いにより、上側にあるラチェット操作ロッド73に対し下方のラチェット係止ロッド74のみが所定のピッチで一方向に回転し、1回目の押下操作の解除によって、両円周嵌合部73d,74c同士の噛み合いが外れると同時に、突条部74bをラチェットガイド筒部72のラチェット溝部77に係止させるものとし、スイッチボタン13の2回目の押下操作により、両円周嵌合部73d,74c同士が再度噛み合うことで、上側にあるラチェット操作ロッド73に対しラチェット係止ロッド74が所定のピッチで一方向に回転されると同時にラチェット溝部77から突条部74bが係止解除され、ガイド突起73cと突条部74bとが共にスリット部78を通過可能となって、スプリング75の弾発力に任せてラチェット操作ロッド73、ラチェット係止ロッド74を上方に復帰移動可能としたので、繰り返されるスイッチボタン13のワンタッチ押下操作によってキャスター8(7)に対する独自の停止ロックあるいはロック解除の操作が容易に行える。
【0014】
  スイッチ部11にはスイッチボタン13を押下操作可能とする操作用凹陥部12を備え、スイッチボタン13の押下ロック状態においては操作用凹陥部12の内奥面にそのロック状態を認識させるための表示部14が露呈し、スイッチボタン13の押下ロック解除状態においては操作用凹陥部12の内奥面の表示部14が当該スイッチボタン13によって隠蔽されるものとしたので、キャスター8(7)がロック状態となっているか、あるいはロック解除状態となっているかを外見上で容易に判別することができる。
【0015】
  押圧停止機構51は、伝達機構41の末端に連繋されている牽引駆動バー52と、牽引駆動バー52を下方に向けて弾発付勢している復原部55と、牽引駆動バー52先端に連繋された揺動梃子レバー53と、揺動梃子レバー53の揺動によって牽引駆動バー52と逆方向で上下動することでキャスター8(7)の車輪の外側面に圧接・離反可能とした押圧停止バー54とを備えて成るので、キャスター8(7)の車輪の外側面に対する圧接・離反を揺動梃子レバー53の揺動によって確実なものとすることができ、しかも下部にあるキャスター8(7)の独自の停止ロックあるいはロック解除を上方のスイッチ部11からの遠隔操作によって容易で且つスムーズに行うことができる。
【0016】
  尚、上記の課題を解決するための手段、発明の効果の項それぞれにおいて付記した符号は、図面中に記載した構成各部を示す部分との参照を容易にするために付した。本発明は、これらの記載、図面中の符号等によって示された構造・形状等に限定されない。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0018】
  以下、図面を参照して本発明を実施するための一形態を説明すると、図において示される符号1は例えば旅行用収納バッグ・鞄等として使用されるスーツケースであり、保形性を有する例えば硬質プラスチック等により形成されている。
 
【0019】
(スーツケースの外観構成)
  スーツケース1は、
図1および
図2に示すように、全体が略直方体状であって、種々の収容物を収容するための空間部が形成された箱型を呈するリアシェル2とフロントシェル3とが互いの開口縁部側辺側に付設された一対のヒンジ部(図示せず)を介して開閉可能となるように連結構成されている。リアシェル2の背面上側には、スーツケース1を使用者の手で移動し、引き回すための伸縮自在な引出し式ハンドル4を備えており、リアシェル2の上面と一方の側面との2箇所には、スーツケース1自体を持つために手で握る部分である把持部5,6を備えている。
 
【0020】
  スーツケース1の底部四隅には、移動用のリアキャスター7およびフロントキャスター8が、すなわちリアシェル2の底面の二つの隅角部に2個のリアキャスター7が取り付けられ、フロントシェル3の底面の二つの隅角部にフロントキャスター8が取り付けられている。そして、スーツケース1の上面に装備された引出し式ハンドル4を使用する場合において、スーツケース1が合計四つの両キャスター7,8を介して床面・地面等に置かれた正立姿勢で移動できるようにしてある。
 
【0021】
  スーツケース1には、前記ヒンジ部を介してリアシェル2とフロントシェル3とを開閉するための例えばスライドファスナー9が設けられている。このスライドファスナー9は、二つのスライダー(図示せず)を互いに近接させることで当該スライドファスナー9を構成する噛合部が閉鎖され、二つのスライダーを互いに離反させることで当該スライドファスナー9を構成する噛合部が開放されるものとなっている。
 
【0022】
  フロントシェル3の側面には、後述するキャスターロック装置20の構成要素であるスイッチ部11が設けられている。このスイッチ部11は、フロントシェル3の側面に形成された操作用凹陥部12の内側において押下操作可能としたスイッチボタン13が配されて成り、操作用凹陥部12の内奥面には例えば「STOP(ストップ)」等の文字を表記した表示部14が形成されている。スイッチボタン13の押下操作前においては当該スイッチボタン13により表示部14が隠蔽され、スイッチボタン13の押下操作後においては表示部14が露呈してフロントキャスター8がロック状態となっていることが外見上で視認できるものとなっている。
 
【0023】
(キャスターロック装置の詳細構造)
  
図2に示すように、フロントシェル3の側壁面には、スイッチ部11のスイッチボタン13を押下操作したときにフロントキャスター8自体の転動を一時的にでも停止させるようにしたキャスターロック装置20が設けられている。このキャスターロック装置20自体は、スイッチ部11のスイッチボタン13の押下時に連動して操作される例えばラチェット構造等による自己復帰式の操作機構21と、この操作機構21の作動によって牽引あるいは押圧、押し戻されるワイヤー42を備えた一対の伝達機構41それぞれを介して伝達されることで二つの隅角部にある各フロントキャスター8の車輪の外側面あるいは内側面に圧接・圧止する停止力で、車輪の転動を阻止する押圧停止機構51とを備えて成る。尚、ワイヤー42は、これを内部で円滑にスライドさせる細径状の保護筒43内に収納されており、保護筒43の端部それぞれから所定長さで外出している外出部分によって操作機構21、押圧停止機構51それぞれに連繋されている。
 
【0024】
  操作機構21は、
図3および
図4に示すように、フロントシェル3の側壁面に固定されたブラケット22に内装されている。このブラケット22内の上方側には、スイッチボタン13の押下操作をガイドするための当該スイッチボタン13に連結された連結部23と、連結部23の上部両端側に形成されている二股分岐部分それぞれの先端爪部23aがラチェット操作ロッド73の上部に形成されている孔状の嵌合部73bに嵌め合い連繋して操作される左右一対のラチェット機構部71とが設けられている。ラチェット機構部71は、後述するように、スイッチボタン13の1回目の押下操作によってラチェット操作ロッド73を介して下降したラチェット係止ロッド74をその下降位置で係止させ、スイッチボタン13の2回目の押下操作によって同じくラチェット操作ロッド73を介してラチェット係止ロッド74の係止を解除させる所謂ワンウェイプッシュスイッチを構成するものとしてある。
 
【0025】
  連結部23の下部には、下端が二股に分かれている支持部29が設けられており、この支持部29の下端における二股部分に跨っていて、揺動開閉されることで、中央軸支部分が昇降するV型リンクアーム24の端部それぞれが二股部分の端部それぞれに連結されることで揺動自在に取付けられている。すなわち、V型リンクアーム24は、ブラケット22の内側に突設された一対の揺動支持軸25a,25bそれぞれに揺動自在となって枢支された第1リンクアーム24aと第2リンクアーム24bとを備え、第1リンクアーム24aの一端に形成された長孔26aに、一方の支持端部に形成された支持突起27aが係合し、第2リンクアーム24bの一端に形成された長孔26bに、他方の支持端部に形成された支持突起27bが係合している。また、相互に軸支される第1リンクアーム24aと第2リンクアーム24bとの各他端である前記中央軸支部分は、後述するI型リンクアーム30の上端前面に突設した軸部28それぞれに関節状に連繋されている。
 
【0026】
  このように構成されたV型リンクアーム24は、スイッチボタン13を下方に押し込むことで、第1リンクアーム24aと第2リンクアーム24bとが各揺動支持軸25a,25bを支点にしてそれぞれ正(上)方向に揺動されて略逆V字状に屈曲した状態となり、これに伴って上昇する軸部28を介してI型リンクアーム30が上方に牽引されるものとなっている(
図4参照)。一方、スイッチボタン13を上記したラチェット機構部71によるワンウェイプッシュスイッチ動作でもって上方位置に復帰させた際には、第1リンクアーム24aと第2リンクアーム24bとが各揺動支持軸25a,25bを支点にしてそれぞれ逆(下)方向に揺動されて略正V字状に屈曲した状態となり、これに伴って下降する軸部28を介してI型リンクアーム30が下方に押し込まれるものとなっている(
図3参照)。
 
【0027】
  また、ブラケット22内の下方側には角筒状のガイド筒31が設けられ、このガイド筒31内には、矩形ブロック状のスライダー32が昇降自在に配され、スライダー32の下面側には、前記一対の伝達機構41のワイヤー42の各一端が固着されている。これら両ワイヤー42は、ブラケット22から下方へ向けて延出するよう一端が例えばナットにより締結固定されている各保護筒43の内部に収納されている。
 
【0028】
  前記I型リンクアーム30の下端側には係合突起33が形成され、この係合突起33はスライダー32の上部側面に形成された横向き長円形状の係合孔部34にスライド自在に係合されている。こうすることでI型リンクアーム30が上方に牽引されると同時にスライダー32がガイド筒31内で上方にスライドし、一対の伝達機構41の各ワイヤー42は上方に牽引されるものとなっている。尚、図示を省略したが、このI型リンクアーム30を介することなくV型リンクアーム24を軸部28を介してスライダー32に直接連結することもある。
 
【0029】
  ラチェット機構部71は、前記スイッチ部11における操作用凹陥部12の左右両側に不動となって配されるようブラケット22それぞれの内部に固定されたラチェットガイド筒部72と、前記連結部23の左右両側に連繋されてラチェットガイド筒部72に挿入され、前記スイッチボタン13の操作により上下動自在となるラチェット操作ロッド73と、ラチェット操作ロッド73の下端にラチェット操作ロッド73内で回転自在となって係合連繋されるラチェット係止ロッド74と、ラチェット係止ロッド74の下端開口部に回転自在に装着される軸受部材79と、軸受部材79を介してラチェット係止ロッド74を上方へ向けて押圧付勢するスプリング75それぞれから成る。
 
【0030】
  連結部23は、
図3に示すように、この上部が二股に分かれていて、その分岐部分それぞれの先端爪部23aがラチェット操作ロッド73上部の嵌合部73bに嵌め合い連繋している。また、ラチェットガイド筒部72内で、ラチェット操作ロッド73の上下動を円滑化させるため、
図5に示すように、前記スプリング75に対応して弾発力を平衡させる規制スプリング23bを、ラチェットガイド筒部72の上壁部内面と、ラチェット操作ロッド73の上端面との間に、例えばラチェット操作ロッド73の上端面に設けた突部に嵌め合わせて介装してある。ラチェットガイド筒部72の筒内略中央には、縮径状の内周突部76が形成され、その下端部に略三角波形状のラチェット溝部77が形成されている。また内周突部76には、ラチェットガイド筒部72の上下方向に沿って形成された複数のスリット部78が内周方向に沿って等間隔で離間配置されている。そして、ラチェット操作ロッド73の下端には複数のガイド突起73cが円周方向に沿って等間隔に突設され、各ガイド突起73cは等間隔配置のスリット部78それぞれに係合することでラチェット操作ロッド73自体は回転せずにラチェットガイド筒部72内で上下動するものとなっている。尚、図示を省略したが、規制スプリング23bは、ラチェットガイド筒部72の内部に配さずに、連結部23と前記ブラケット22の上部壁との間に拡開傾向に付勢させて配装することもできる。
 
【0031】
  ラチェット係止ロッド74の上面中央にはロッド状の突起74aが立脚状に形成され、ラチェット操作ロッド73の下面中央の凹部73aに回転自在に係合すべく成してあると共に、ラチェット係止ロッド74の下面中央に形成されている凹部74dには、軸ピン状の前記軸受部材79が回転自在に係合している。この軸受部材79は、この軸受部材79自体の下部に形成したフランジ部によってラチェットガイド筒部72の内周面に摺動可能に当接しており、軸受部材79の下端とラチェットガイド筒部72の底壁内面との間に拡開傾向に付勢させて縮装したスプリング75によって、軸受部材79、ラチェット係止ロッド74、ラチェット操作ロッド73等をラチェットガイド筒部72内でその上方に弾撥付勢させている。こうすることで、ラチェット係止ロッド74は、これの上部が突起74aによってラチェット操作ロッド73に、これの下部が凹部74dによって軸受部材79にそれぞれ回転自在に嵌め合わせられていて、ラチェットガイド筒部72内で回転自在に支承された状態となっている。
 
【0032】
  また、ラチェット操作ロッド73の下面に形成した略三角歯波状の上下動円周嵌合部73dと、ラチェット係止ロッド74の上面に同様に形成した略三角歯波状の回転円周嵌合部74cとが切離自在に噛み合うものとなっている。ラチェット係止ロッド74の下部には上下方向に沿って突条部74bが形成されており、上記ラチェット操作ロッド73下端のガイド突起73cと共にラチェットガイド筒部72の内周突部76に形成されたスリット部78内を通過可能となしてある。この通過時においては、両円周嵌合部73d,74c同士は若干ずれていて、完全に噛み合っておらず若干離隔されている。突条部74bのみがスリット部78を通過した後には、スプリング75の弾発力によって両円周嵌合部73d,74c同士が隙間なく完全に噛み合うものとなっている。この完全噛み合いにより、上側にあるラチェット操作ロッド73に対し下方のラチェット係止ロッド74のみが所定のピッチで一方向(
図7における横向矢印方向)に回転され、ラチェット係止ロッド74の突条部74bが上側のガイド突起73cに対して位相ズレを生じさせるようになっている。
 
【0033】
  そして、スイッチボタン13の1回目の押下操作により、ラチェット操作ロッド73の上下動円周嵌合部73dとラチェット係止ロッド74の回転円周嵌合部74cとの完全噛み合いにより、上側にあるラチェット操作ロッド73に対し下方のラチェット係止ロッド74のみが所定のピッチで一方向に回転し、1回目の押下操作の解除によって、両円周嵌合部73d,74c同士の噛み合いが外れると同時に、突条部74bの上端傾斜面である回転円周嵌合部74cがラチェットガイド筒部72内のラチェット溝部77に係止されるものとなっている(
図7(d)参照)。
 
【0034】
  また、スイッチボタン13の2回目の押下操作により、両円周嵌合部73d,74c同士が再度噛み合うことで、上側にあるラチェット操作ロッド73に対しラチェット係止ロッド74が所定のピッチで一方向(
図7(f)の横向矢印方向)に回転させられると同時にラチェットガイド筒部72のラチェット溝部77から突条部74bの上端傾斜面の係止が解除され、突条部74bと上側のガイド突起73cとの位相が一致することで、突条部74bとガイド突起73cとが共に内周突部76相互間のスリット部78を通過可能となる。こうすることで、スプリング75の弾発力でもって規制スプリング23bを圧縮しつつラチェット係止ロッド74およびラチェット操作ロッド73をラチェットガイド筒部72の内部上方に移動復帰させるものとしてある。
 
【0035】
  尚、上記した構成によるラチェット機構部71は、本発明における一例を示すものであって、ワンウェイプッシュスイッチを実現するものであればその他の構成、例えばラチェット係止ロッド74に対し回転規制バネ等を設けたり、あるいはその他の回転ピッチを規制したりする等の種々の構成であっても良い。
 
【0036】
  押圧停止機構51は、
図2に示すように、フロントキャスター8の取付位置上方のスーツケース1の内側における側方位置で上下動し且つ伝達機構41の末端に連繋されている牽引駆動バー52と、牽引駆動バー52を下方向に弾発付勢している復原部55と、先端に牽引駆動バー52が枢支されている揺動梃子レバー53と、この揺動梃子レバー53に上下動自在に枢支され、揺動梃子レバー53の揺動によって牽引駆動バー52と逆方向で上下動するよう配置された押圧停止バー54とから成る。尚、この押圧停止バー54は、揺動梃子レバー53における一方向の揺動によって当該押圧停止バー54の下端がフロントキャスター8の車輪の外側面に圧止され、揺動梃子レバー53における他方向の揺動によって当該押圧停止バー54の下端がフロントキャスター8の車輪の外側面から離反させられるものとしてある。
 
【0037】
  牽引駆動バー52は、伝達機構41のワイヤー42と連繋されており、復原部55は、牽引駆動バー52にねじ止め固着したスプリングロック(図示せず)との間で、伸張傾向に弾発付勢させたコイルスプリングを縮装して成る。また押圧停止バー54はその上下動を円滑に案内させるよう、例えばフロントキャスター8自体に設けてある上下動ガイド56に貫挿させてある。
 
【0038】
  尚、本実施の形態中では、フロントキャスター8を対象としたものであるが、これに限らず、リアキャスター7においても同様に実施可能である。
 
【0039】
(リアキャスターロック装置の詳細構造)
  
図2に示すように、リアシェル2の背部内壁には、移動等のために引き出し伸長させた引出し式ハンドル4の押し込み収納によってスーツケース1自体の移動を阻止すべく、すなわち引出し式ハンドル4を縮小格納したときにリアキャスター7自体の転動を一時的にでも停止させるようにしたリアキャスターロック装置80が設けられている。伸縮する引出し式ハンドル4はスーツケース1の背部、例えば背盤に配置した筒状の案内筒に引き出し伸張、縮小収納自在に構成されており、引き出し時、収納時ではそれが保持されるように適宜にロックされるものとしてあり、引出し式ハンドル4の握持部分自体は左右の脚部の上端相互間を連結している倒コ字状あるいは四角、長円形等の枠状に形成されている。図示例では、脚部分、案内筒が左右で対状になっているツインバー式のものとしてあるも、脚部分、案内筒が1本状となっているシングルバー式であっても良い。
 
【0040】
  リアキャスターロック装置80自体は、引出し式ハンドル4の伸縮に対応し、縮小格納時に連動して操作される操作機構81と、この操作機構81による作動が、牽引あるいは押圧、押し戻されるワイヤー42を備えた伝達機構82を介して伝達されることで、リアキャスター7の車輪の外側面あるいは内側面に圧接・圧止する停止力で、車輪の転動を阻止する押圧停止機構83とを備えて成る。
 
【0041】
  操作機構81は、引出し式ハンドル4が押し込まれるときの引出し式ハンドル4自体を格納・保持するようにスーツケース1の所定位置例えば移動走行時の上部位置に設けられた格納部に配装されている。操作機構81は、引出し式ハンドル4上部における側面のいずれかに引出し式ハンドル4面から突出状にして設けた操作体84と、この操作体84の下降(下動)によって揺動し、この揺動作動を押圧停止機構83に伝達する伝達機構82が連繋されている揺動牽引レバー85とから成る。図示の揺動牽引レバー85は、これの略中央位置で軸着枢支されていて、一端が操作体84によって下方向に揺動されると、伝達機構82に連繋されている他端が上方向に揺動されることで伝達機構82を牽引するようにしている。
 
【0042】
  尚、引出し式ハンドル4の押し込み操作に連動してリアキャスター7をロックするリアキャスターロック装置80を設ける代わりに、引出し式ハンドル4とは独立して操作可能な上記した構成と同様のキャスターロック装置20をリアキャスター7の側壁面に設けても良い。要は、本発明に係るキャスターロック装置20は、フロントキャスター8、リアキャスター7の転動停止あるいはその解除のためのロック機構としていずれにも採用可能である。
 
【0043】
  次に、以上のように構成された実施の形態についての使用の一例を説明すると、フロントキャスター8の転動を停止させる場合には、先ず、
図1(a)に示すようにスイッチ部11のスイッチボタン13の1回目の押下操作により、
図7(a)および
図7(b)に示すようにスプリング75の弾発力に抗してラチェット操作ロッド73、ラチェット係止ロッド74が下降移動される。すると、ラチェット係止ロッド74の突条部74bはラチェット操作ロッド73下端のガイド突起73cと共にラチェットガイド筒部72内の内周突部76相互間のスリット部78を通過する。この通過時においては、両円周嵌合部73d,74c同士は若干ずれていて完全に噛み合っていない。
 
【0044】
  図7(c)に示すように、突条部74bのみがスリット部78を通過した際には、スプリング75の弾発力によって両円周嵌合部73d,74c同士が完全に噛み合う。すると、上側にあるラチェット操作ロッド73に対し下方のラチェット係止ロッド74のみが所定のピッチで一方向に回転する。
 
【0045】
  図7(d)に示すように、スイッチ部11のスイッチボタン13の1回目の押下操作を解除すると、両円周嵌合部73d,74c同士の噛み合いが外れると同時に、突条部74bの上端傾斜面がラチェットガイド筒部72のラチェット溝部77に係止され、また上記規制スプリング23bにより規制された状態となる。このとき、V型リンクアーム24は逆V字型となるよう上方向に揺動され、V型リンクアーム24に連繋されているI型リンクアーム30を介してスライダー32をガイド筒31内で上方移動した状態となる(
図4参照)。こうすることで、牽引される伝達機構41を介してフロントキャスター8の車輪に対し作動される押圧停止機構51の押圧停止バー54が車輪面に圧止し、車輪の移動を停止させる。
 
【0046】
  フロントキャスター8の転動停止を解除させる場合には、スイッチボタン13の2回目の押下操作により、両円周嵌合部73d,74c同士が再度噛み合うことで、
図7(e)および
図7(f)に示すように、上側にあるラチェット操作ロッド73に対しラチェット係止ロッド74が所定のピッチで一方向に回転させられ、この回転によって上下動円周嵌合部73d、回転円周嵌合部74cが若干ずれた位置となり、ラチェットガイド筒部72のラチェット溝部77から突条部74bの係止が解除され、ラチェット係止ロッド74の突条部74bと上側のガイド突起73cとの位相が一致した状態となる。
 
【0047】
  図7(g)に示すように、突条部74bとガイド突起73cとが共にラチェットガイド筒部72内の内周突部76相互間のスリット部78を通過し、スプリング75の弾発力でもって規制スプリング23bを圧縮しつつラチェット係止ロッド74およびラチェット操作ロッド73をラチェットガイド筒部72の内部上方に移動復帰させる。このとき、V型リンクアーム24は正V字型となるよう下方向に揺動され、V型リンクアーム24に連繋されているI型リンクアーム30を介してスライダー32をガイド筒31内で下方移動した状態となる(
図3参照)
 
【0048】
  これにより伝達機構41のワイヤー42が上方に牽引され、押圧停止機構51における牽引駆動バー52を介して揺動梃子レバー53が復原部55の付勢力に抗しつつ時計方向に揺動し、押圧停止バー54下端がフロントキャスター8の車輪の外側面に圧止されてロックが完了する。また、このロック状態においては、
図1(b)に示すように、操作用凹陥部12の内奥面の例えば「STOP(ストップ)」等の表示部14が露呈しており、これによりフロントキャスター8がロック状態となっていることが確認できる。
 
【0049】
  これにより伝達機構41のワイヤー42が下方に押し込まれ、押圧停止機構51における牽引駆動バー52を介して揺動梃子レバー53が復原部55の付勢力に任せて反時計方向に揺動し、押圧停止バー54下端がフロントキャスター8の車輪の外側面から離反されてロック解除が完了する。また、このロック解除状態においては、
図1(a)に示すように、操作用凹陥部12の内奥面の例えば「STOP(ストップ)」等の表示部14がスイッチボタン13によって隠蔽されており、これによりフロントキャスター8がロック解除状態となっていることが確認できる。