【文献】
Prishchenko A,Synthesis of 2-P-Substituted Derivatives of Ethanesulfonic Acid,Russian Journal of General Chemistry,2004年,74(11),1820-21
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一般式(I)で表されるホスホノスルホン酸化合物の含有量が、非水電解液全質量に対して0.001質量%〜10質量%である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の非水電解液。
正極と、金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属若しくは合金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属窒素化物、及び、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料からなる群から選ばれた少なくとも1種を負極活物質として含む負極と、請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の非水電解液と、を含むリチウム二次電池。
正極と、金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属若しくは合金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属窒素化物、及び、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料からなる群から選ばれた少なくとも1種を負極活物質として含む負極と、請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の非水電解液と、を含むリチウム二次電池を、充放電させて得られたリチウム二次電池。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明のホスホノスルホン酸化合物を用いた非水電解液、及びその非水電解液を用いたリチウム二次電池、前記非水電解液に有用なリチウム二次電池用添加剤について具体的に説明する。
【0035】
<非水電解液>
本発明の非水電解液は、下記一般式(I)で表されるホスホノスルホン酸化合物を含有する。本発明の非水電解液は、所望によりその他の成分を含有してもよい。
本発明の非水電解液は、かかる構成により、電池に用いたときに、電池の低温放電特性の改善と電池の保存特性の改善とを両立できる。
従って、本発明の非水電解液をリチウム二次電池に用いた場合には、低温放電特性に優れ、かつ、保存特性に優れたリチウム二次電池を実現し得る。
【0036】
〔ホスホノスルホン酸化合物〕
本発明におけるホスホノスルホン化合物は、下記一般式(I)で表されるホスホノスルホン酸化合物(以下、単に「一般式(I)で表される化合物」ともいう)である。
【0038】
前記一般式(I)中、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、フェニル基、ベンジル基、又は一般式(II)で表される基を表し、R
4及びR
5は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、nは、1〜6の整数を表す。
nが2〜6の整数を表す場合、複数存在するR
4及びR
5は、それぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
また、一般式(II)中、R
6、R
7及びR
8は、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、又はベンジル基を表し、mは、0〜2の整数を表す。*は、一般式(I)における酸素原子との結合位置を表す。
一般式(I)で表される化合物中に一般式(II)で表される基が2つ以上含まれる場合、2つ以上の一般式(II)で表される基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0039】
なお、本明細書において、「アルキル基」は、特に断らない限りにおいて、直鎖状のアルキル基(直鎖アルキル基)、分岐鎖を有するアルキル基、環状のアルキル基を包含する。
また、本明細書において、「ハロアルキル基」は、ハロゲン化アルキル基を意味する。
【0040】
前記一般式(I)中、「炭素数1〜6のアルキル基」は、炭素数が1ないし6個である直鎖アルキル基又は分岐鎖を有するアルキル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、2−メチルブチル基、1−メチルペンチル基、ネオペンチル基、1−エチルプロピル基、ヘキシル基、3,3−ジメチルブチル基等が具体例として挙げられる。前記アルキル基としては、炭素数が1ないし4個である直鎖アルキル基又は分岐鎖を有するアルキル基が好ましい。
前記一般式(I)中、「炭素数1〜6のハロアルキル基」は、炭素数が1ないし6個である直鎖アルキル基又は分岐鎖を有するアルキル基における水素原子の少なくとも1つがハロゲン原子に置き換わった構造のハロアルキル基を表し、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロイソプロピル基、パーフルオロイソブチル基、クロロメチル基、クロロエチル基、クロロプロピル基、ブロモメチル基、ブロモエチル基、ブロモプロピル基、ヨウ化メチル基、ヨウ化エチル基、ヨウ化プロピル基が具体例として挙げられる。
炭素数1〜6のハロアルキル基としては、炭素数1〜3のハロアルキル基がより好ましい。
【0041】
前記一般式(I)中、「ハロゲン原子」は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が具体例として挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
【0042】
前記一般式(I)中、フェニル基は、無置換であっても、置換基を有していてもよい。 このフェニル基に導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基等が挙げられる。
【0043】
前記フェニル基に導入可能な置換基中、「ハロゲン原子」は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が具体例として挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
【0044】
前記フェニル基に導入可能な置換基中、「炭素数1〜6のアルキル基」は、前述の「炭素数1〜6のアルキル基」と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0045】
前記フェニル基に導入可能な置換基中、「炭素数1〜6のハロアルキル基」は、前述の「炭素数1〜6のハロアルキル基」と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0046】
前記フェニル基に導入可能な置換基中、「炭素数1〜6のアルコキシ基」は、炭素数が1ないし6個である直鎖アルコキシ基又は分岐鎖を有するアルコキシ基であり、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、2−メチルブトキシ基、1−メチルペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、1−エチルプロポキシ基、ヘキシルオキシ基、3,3−ジメチルブトキシ基などが具体例として挙げられる。
炭素数1〜6のアルコキシ基としては、炭素数1〜3のアルコキシ基がより好ましい。
【0047】
前記一般式(I)中、ベンジル基は無置換であっても、置換基を有していてもよい。
このベンジル基に導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、及び炭素数1〜6のアルコキシ基等が挙げられる。
【0048】
前記のベンジル基に導入可能な置換基中の、「ハロゲン原子」、「炭素数1〜6のアルキル基」、「炭素数1〜6のハロアルキル基」、「炭素数1〜6のアルコキシ基」は、前記のフェニル基に導入可能な置換基中の、「ハロゲン原子」、「炭素数1〜6のアルキル基」、「炭素数1〜6のハロアルキル基」、「炭素数1〜6のアルコキシ基」とそれぞれ同義である。
【0049】
前記一般式(II)における、「炭素数1〜6のアルキル基」、「フェニル基」、「ベンジル基」は、前述した「炭素数1〜6のアルキル基」、「フェニル基」、及び「ベンジル基」とそれぞれ同義である。
【0050】
前記一般式(I)中、nは、前述のとおり1〜6の整数を表すが、1〜2の整数であることが好ましい。
【0051】
また、前記一般式(I)で表されるホスホノスルホン酸化合物としては、下記一般式(III)で表されるホスホノスルホン酸化合物が特に好ましい。
【0053】
一般式(III)中、R
4及びR
5は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R
6、R
7及びR
8は、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、ベンジル基を表し、nは、1〜6の整数を表す。
【0054】
前記一般式(III)における、「ハロゲン原子」、「炭素数1〜6のアルキル基」、「フェニル基」、「ベンジル基」は、前記一般式(I)における、「ハロゲン原子」、「炭素数1〜6のアルキル基」、「フェニル基」、及び「ベンジル基」とそれぞれ同義である。
【0055】
また、前記一般式(III)中、nは、1〜6の整数を表すが、1〜2の整数であることが好ましい。
【0056】
前記一般式(I)で表されるホスホノスルホン酸化合物として、特に好ましくは、ビス(トリメチルシリル)ホスホノメタンスルホン酸トリメチルシリル、ビス(トリメチルシリルメチル)ホスホノメタンスルホン酸トリメチルシリルメチル、ホスホノメタンスルホン酸、ジエチルホスホノメタンスルホン酸メチル、2−(ジエトキシホスホリル)エタンスルホン酸フェニル、2−(ヒドロキシ(トリメチルシリルオキシ)ホスホリル)エタンスルホン酸フェニルが挙げられる。
【0057】
なお、前記一般式(I)で表されるホスホノスルホン酸化合物は、後述するように、リチウム二次電池用の添加剤(好ましくは、リチウム二次電池の非水電解液用の添加剤)として有用である。
本発明における一般式(I)で表されるホスホノスルホン酸化合物の具体例〔例示化合物1〜例示化合物118〕を、一般式(I)における各置換基を明示することで以下に記載するが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
下記例示化合物の構造中、「Me」はメチル基を、「Et」はエチル基を、「Pr」はn−プロピル基を、「iPr」はイソプロピル基を、「Bu」はn−ブチル基を、「t-Bu」はターシャリブチル基を、「Pent」はペンチル基を、「Hex」はヘキシル基を、「Ph」はフェニル基を、「Bn」はベンジル基を、それぞれ表す。
【0061】
上記例示化合物のなかでも、電池の低温放電特性の改善及び電池の保存特性の改善の観点からは、ビス(トリメチルシリル)ホスホノメタンスルホン酸トリメチルシリル、ビス(トリメチルシリルメチル)ホスホノメタンスルホン酸トリメチルシリルメチル、ホスホノメタンスルホン酸、ジエチルホスホノメタンスルホン酸メチル、2−(ジエトキシホスホリル)エタンスルホン酸フェニル、2−(ヒドロキシ(トリメチルシリルオキシ)ホスホリル)エタンスルホン酸フェニルなどが好ましく挙げられる。
本発明における一般式(I)で表されるホスホノスルホン酸化合物の一例であるビス(トリメチルシリル)ホスホノメタンスルホン酸トリメチルシリルは、例えば、以下に記載する工程によって製造することができるが、本製法に限定されるものではない。
本発明における一般式(I)で表されるホスホノスルホン酸化合物のうち、n=1の場合は、公知の方法、例えば、
Tetrahedron, 1987, 43, 5125-5134
Organic and Biomolecular Chemistry, 2007, 5, 160-168
Chemische Berichte, 1980, 113, 142-151
Tetrahedron Letters, 1987, 28, 1101-1104
に記載の方法に準じることにより製造される。
【0062】
なお、本発明における一般式(III)で表されるホスホノスルホン酸化合物であってn=1である化合物(即ち、下記一般式(XIII)で表されるホスホノスルホン酸化合物)は、例えば、下記一般式(Ia)で表される化合物を出発物質とし、以下に記載する方法によって製造することができるが、本製法に限定されるものではない。
【0064】
前記一般式(Ia)中、R
1a,R
2a及びR
3aは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基である。一般式(Ia)、一般式(XIV)、及び一般式(XIII)中、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8は、一般式(III)におけるR
4、R
5、R
6、R
7及びR
8とそれぞれ同義である。
上記スキームに従った製造方法について、詳細に説明する。
前記一般式(XIII)で表されるホスホノスルホン酸化合物は、一般式(Ia)で表される化合物を、無溶媒下或いは溶媒存在下、一般式(XIV)で表されるシリル化合物と反応させることにより製造することができる。
用いられる一般式(XIV)で表されるシリル化合物におけるXは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を表すが、好ましくは、臭素原子或いはヨウ素原子である。
【0065】
反応に用いられる溶媒としては、反応を阻害せず、出発物質をある程度溶解するものであれば特に限定はなく、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン及びクロロホルムのようなハロゲン化炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン及びクロロベンゼンのような芳香族炭化水素類;ヘキサン、シクロヘキサン及びヘプタンのような脂肪族炭化水素類;又は、これらの混合溶媒が挙げられ、好適には、ハロゲン化炭化水素類又は芳香族炭化水素類であり、より好適には、ジクロロメタン又はトルエンである。
溶媒の量は、一般式(Ia)で表される化合物1molに対し、通常、0.1リットル〜10リットルを用いることができ、好適には、0.1リットル〜5リットルである。
反応温度は、原料化合物、反応試薬及び溶媒等により異なるが、通常、0℃〜反応系における還流温度の範囲で行うことができ、好適には、10℃〜40℃である。
反応時間は、原料化合物、反応試薬、溶媒及び反応温度等により異なるが、通常、0.5時間〜48時間の範囲で行うことができ、好適には、1時間〜24時間である。
本工程に使用される一般式(Ia)で表される化合物は、市販品としても入手可能であるか、既知の方法によって製造される。具体的には、例えば、Tetrahedron, 1987, 43, 5125-5134に記載の方法によって製造される。
【0066】
本発明における一般式(I)で表されるホスホノスルホン酸化合物のうち、n=2である化合物は、公知の方法、例えば、
Phosphorus, Sulfur and Silicon and the Related Elements, 1991, 56, 111-115
Russian Journal of General Chemistry, 2004, 74, 1820-1821
Heteroatom Chemistry, 208, 19, 470-473
に記載の方法に準じる方法により製造される。
本発明における一般式(I)で表されるホスホノスルホン酸化合物のうち、n=3〜6である化合物は、公知の方法、例えば、US206614635、DE938186に記載の方法に準じることより製造することができる。
【0067】
上記一般式(I)で表されるホスホノスルホン酸化合物は、リチウム二次電池用添加剤、特に、後述するリチウム二次電池の非水電解液用の添加剤として有用であり、この添加剤を非水電解液に添加することで、低温放電特性に優れ、かつ、保存特性に優れたリチウム二次電池を実現し得る。
以下、上記一般式(I)で表されるホスホノスルホン酸化合物が上記効果を奏する理由について、推測される理由を説明する。
一般式(I)で表されるホスホノスルホン酸化合物を用いることにより、初期充電による負極側への皮膜形成の際、本骨格を有する一般式(I)で表されるホスホノスルホン酸化合物が、負極側において低温状態でもリチウムイオン伝導性に富み、しかも負極表面での継続的な溶媒分解などを抑えることができるように働くため、初期の低温放電特性に優れた電池を提供できるものと推測される。
加えて、電池の保存特性に対しては、上記一般式(I)で表されるホスホノスルホン酸化合物がホスホン酸構造とスルホン酸構造とを同一分子上に併せ持つことにより、正極側においては活物質の構造変化や含有する遷移金属の溶出などによる抵抗上昇や容量低下を効果的に抑制できるとともに、負極側においては皮膜の必要以上の形成や遷移金属の析出による抵抗上昇や容量低下を効果的に抑制できる。本作用が主作用となり、保存特性に優れた電池を提供できるものと推測される。
但し、本発明は上記の推測によって限定されることはない。
【0068】
<新規ホスホノスルホン酸化合物>
なお、本発明における下記一般式(XIII)で表されるホスホノスルホン酸化合物は新規化合物である。
下記一般式(XIII)で表されるホスホノスルホン酸化合物は、前記一般式(III)で表されるホスホノスルホン酸化合物のうち、前記一般式(III)中のnが1である化合物である。
【0070】
前記一般式(XIII)中、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8は、一般式(III)におけるR
4、R
5、R
6、R
7及びR
8とそれぞれ同義である。
一般式(XIII)中、R
4及びR
5は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、R
6、R
7及びR
8はそれぞれ独立に、メチル基、エチル基、t−ブチル基、フェニル基、又はベンジル基であることが好ましい。この一般式(XIII)で表されるホスホノスルホン酸化合物もまた、非水系電解液の添加剤として有用である。
【0071】
本発明の非水電解液は、以上で説明した一般式(I)で表されるホスホノスルホン酸化合物(一般式(III)又は一般式(XIII)で表されるホスホノスルホン酸化合物を包含する;以下同じ)を、1種のみ含有していてもよいし、2種以上を含有していてもよい。
本発明の非水電解液中における一般式(I)で表されるホスホノスルホン酸化合物の含有量は、非水電解液全質量に対して0.001質量%〜10質量%であることが好ましく、0.05質量%〜5質量%の範囲であることがより好ましい。この範囲において、低温放電特性に優れ、かつ、電池の保存特性に優れたリチウム二次電池をより効果的に実現し得る。
【0072】
本発明の非水電解液は、必要に応じ、一般式(1)で表されるホスホノスルホン酸化合物に加え、その他の成分を含んでいてもよい。
前記その他の成分としては、本発明の効果をより効果的に得る観点より、例えば、後述の一般式(IV)で表される化合物、後述の一般式(V)で表される化合物、後述の一般式(VI)で表される化合物、ジフルオロリン酸リチウム(LiOP(O)F
2)、後述の一般式(X)で表される化合物、後述の一般式(XI)で表される化合物、及び後述の一般式(XII)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
また、前記その他の成分としては、後述の電解質及び非水溶媒も挙げられる。
【0073】
また、本発明のリチウム二次電池用添加剤は、前記一般式(I)で表されるホスホノスルホン酸化合物を含有する。
本発明のリチウム二次電池用添加剤をリチウム二次電池の非水電解液に添加することにより、記述のとおり、低温放電特性に優れ、かつ、保存特性に優れたリチウム二次電池を実現し得る。
本発明のリチウム二次電池用添加剤は、必要に応じ、一般式(1)で表されるホスホノスルホン酸化合物に加え、その他の成分を含有していてもよい。
前記その他の成分としては、上記効果をより向上させるという観点より、例えば、後述の一般式(IV)で表される化合物、後述の一般式(V)で表される化合物、後述の一般式(VI)で表される化合物、ジフルオロリン酸リチウム(LiOP(O)F
2)、後述の一般式(X)で表される化合物、後述の一般式(XI)で表される化合物、及び後述の一般式(XII)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0074】
本発明の非水電解液は、前述のとおり、一般式(I)で表されるホスホノスルホン酸化合物を含有することを特徴とするが、その他の成分として、公知のものを任意に含むことができる。
以下、非水電解液のその他の成分について説明する。
非水電解液は、一般的には、非水溶媒及び電解質を含有する。
【0075】
〔非水溶媒〕
本発明における非水溶媒は、種々公知のものを適宜選択することができるが、環状の非プロトン性溶媒及び/又は鎖状の非プロトン性溶媒を用いることが好ましい。
電池の安全性の向上のために、溶媒の引火点の向上を志向する場合は、非水溶媒として環状の非プロトン性溶媒を使用することが好ましい。
【0076】
〔環状の非プロトン性溶媒〕
環状の非プロトン性溶媒としては、環状カーボネート、環状カルボン酸エステル、環状スルホン、環状エーテルを用いることができる。
環状の非プロトン性溶媒は単独で使用してもよいし、複数種混合して使用してもよい。
環状の非プロトン性溶媒の非水溶媒中の混合割合は、好ましくは10質量%〜100質量%、さらに好ましくは20質量%〜90質量%、特に好ましくは30質量%〜80質量%である。このような比率にすることによって、電池の充放電特性に関わる電解液の伝導度を更に高めることができる。
環状カーボネートの例として具体的には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、2,3−ペンチレンカーボネートなどが挙げられる。これらのうち、誘電率が高いエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートが好適に使用される。負極活物質に黒鉛を使用した電池の場合は、エチレンカーボネートがより好ましい。また、これら環状カーボネートは2種類以上を混合して使用してもよい。
【0077】
環状カルボン酸エステルとして、具体的にはγ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、あるいはメチルγ−ブチロラクトン、エチルγ−ブチロラクトン、エチルδ−バレロラクトンなどのアルキル置換体などを例示することができる。
環状カルボン酸エステルは、蒸気圧が低く、粘度が低く、かつ誘電率が高く、電解液の引火点と電解質の解離度を下げることなく電解液の粘度を下げることができる。このため、電解液の引火性を高くすることなく電池の放電特性に関わる指標である電解液の伝導度を高めることができるという特徴を有するので、溶媒の引火点の向上を指向する場合は、前記環状の非プロトン性溶媒として環状カルボン酸エステルを使用することが好ましい。環状カルボン酸エステルの中でも、γ−ブチロラクトンが最も好ましい。
また、環状カルボン酸エステルは、他の環状の非プロトン性溶媒と混合して使用することが好ましい。例えば、環状カルボン酸エステルと、環状カーボネート及び/又は鎖状カーボネートとの混合物が挙げられる。
【0078】
環状スルホンの例としては、スルホラン、2−メチルスルホラン、3―メチルスルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジプロピルスルホン、メチルエチルスルホン、メチルプロピルスルホンなどが挙げられる。
環状エーテルの例としてジオキソランを挙げることができる。
【0079】
〔鎖状の非プロトン性溶媒〕
本発明の鎖状の非プロトン性溶媒としては、鎖状カーボネート、鎖状カルボン酸エステル、鎖状エーテル、鎖状リン酸エステルなどを用いることができる。
鎖状の非プロトン性溶媒の非水溶媒中の混合割合は、好ましくは10質量%〜100質量%、さらに好ましくは20質量%〜90質量%、特に好ましくは30質量%〜80質量%である。
鎖状カーボネートとして具体的には、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、エチルブチルカーボネート、ジブチルカーボネート、メチルペンチルカーボネート、エチルペンチルカーボネート、ジペンチルカーボネート、メチルヘプチルカーボネート、エチルヘプチルカーボネート、ジヘプチルカーボネート、メチルヘキシルカーボネート、エチルヘキシルカーボネート、ジヘキシルカーボネート、メチルオクチルカーボネート、エチルオクチルカーボネート、ジオクチルカーボネート、メチルトリフルオロエチルカーボネートなどが挙げられる。これら鎖状カーボネートは2種類以上を混合して使用してもよい。
【0080】
鎖状カルボン酸エステルとして具体的には、ピバリン酸メチルなどが挙げられる。
鎖状エーテルとして具体的には、ジメトキシエタンなどが挙げられる。
鎖状リン酸エステルとして具体的には、リン酸トリメチルなどが挙げられる。
【0081】
〔溶媒の組み合わせ〕
本発明の非水電解液で使用する非水溶媒は、1種類でも複数種類を混合して用いてもよい。また、環状の非プロトン性溶媒のみを1種類又は複数種類用いても、鎖状の非プロトン性溶媒のみを1種類又は複数種類用いても、又は環状の非プロトン性溶媒及び鎖状のプロトン性溶媒を混合して用いてもよい。電池の負荷特性、低温特性の向上を特に意図した場合は、非水溶媒として環状の非プロトン性溶媒と鎖状の非プロトン性溶媒を組み合わせて使用することが好ましい。
さらに、電解液の電気化学的安定性から、環状の非プロトン性溶媒には環状カーボネートを、鎖状の非プロトン性溶媒には鎖状カーボネートを適用することが最も好ましい。また、環状カルボン酸エステルと環状カーボネート及び/又は鎖状カーボネートの組み合わせによっても電池の充放電特性に関わる電解液の伝導度を高めることができる。
【0082】
環状カーボネートと鎖状カーボネートの組み合わせとして、具体的には、エチレンカーボネートとジメチルカーボネート、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネート、プロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、プロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、プロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネートなどが挙げられる。
環状カーボネートと鎖状カーボネートの混合割合は、質量比で表して、環状カーボネート:鎖状カーボネートが、好ましくは5:95〜80:20、さらに好ましくは10:90〜70:30、特に好ましくは15:85〜55:45である。このような比率にすることによって、電解液の粘度上昇を抑制し、電解質の解離度を高めることができるため、電池の充放電特性に関わる電解液の伝導度を高めることができる。また、電解質の溶解度をさらに高めることができる。よって、常温又は低温での電気伝導性に優れた電解液とすることができるため、常温から低温での電池の負荷特性を改善することができる。
【0083】
環状カルボン酸エステルと環状カーボネート及び/又は鎖状カーボネートの組み合わせの例として、具体的には、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジメチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとスルホラン、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとスルホラン、γ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとスルホラン、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとスルホラン、γ−ブチロラクトンとスルホランとジメチルカーボネートなどが挙げられる。
【0084】
〔その他の溶媒〕
本発明の非水電解液は、非水溶媒として、上記以外の他の溶媒を含んでいてもよい。他の溶媒としては、具体的には、ジメチルホルムアミドなどのアミド、メチル−N,N−ジメチルカーバメートなどの鎖状カーバメート、N−メチルピロリドンなどの環状アミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノンなどの環状ウレア、ほう酸トリメチル、ほう酸トリエチル、ほう酸トリブチル、ほう酸トリオクチル、ほう酸トリメチルシリル等のホウ素化合物、及び下記の一般式で表されるポリエチレングリコール誘導体などを挙げることができる。
HO(CH
2CH
2O)
aH
HO[CH
2CH(CH
3)O]
bH
CH
3O(CH
2CH
2O)
cH
CH
3O[CH
2CH(CH
3)O]
dH
CH
3O(CH
2CH
2O)
eCH
3
CH
3O[CH
2CH(CH
3)O]
fCH
3
C
9H
19PhO(CH
2CH
2O)
g[CH(CH
3)O]
hCH
3
(Phはフェニル基)
CH
3O[CH
2CH(CH
3)O]
iCO[OCH(CH
3)CH
2]
jOCH
3
前記式中、a〜fは、5〜250の整数、g〜jは2〜249の整数、5≦g+h≦250、5≦i+j≦250である。
【0085】
〔電解質〕
本発明の非水電解液は、種々公知の電解質を使用することができ、通常、非水電解液用電解質として使用されているものであれば、いずれをも使用することができる。
電解質の具体例としては、(C
2H
5)
4NPF
6、(C
2H
5)
4NBF
4、(C
2H
5)
4NClO
4、(C
2H
5)
4NAsF
6、(C
2H
5)
4N
2SiF
6、(C
2H
5)
4NOSO
2C
kF
(2k+1)(k=1〜8の整数)、(C
2H
5)
4NPF
n[C
kF
(2k+1)]
(6−n)(n=1〜5の整数、k=1〜8の整数)などのテトラアルキルアンモニウム塩、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4、LiAsF
6、Li
2SiF
6、LiOSO
2C
kF
(2k+1)(k=1〜8の整数)、LiPF
n[C
kF
(2k+1)]
(6−n)(n=1〜5の整数、k=1〜8の整数)などのリチウム塩が挙げられる。また、次の一般式で表されるリチウム塩も使用することができる。
【0086】
LiC(SO
2R
a)(SO
2R
b)(SO
2R
c)、LiN(SO
2OR
d)(SO
2OR
e)、LiN(SO
2R
f)(SO
2R
g)(ここで、R
a、R
b、R
c、R
d、R
e、R
f、及びR
gは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基である)。これらの電解質は単独で使用してもよく、また2種類以上を混合してもよい。
これらのうち、特にリチウム塩が望ましく、さらには、LiPF
6、LiBF
4、LiOSO
2C
kF
(2k+1)(k=1〜8の整数)、LiClO
4、LiAsF
6、LiNSO
2[C
kF
(2k+1)]
2(k=1〜8の整数)、LiPF
n[C
kF
(2k+1)]
(6−n)(n=1〜5、k=1〜8の整数)が好ましい。
本発明における電解質は、通常は、非水電解質中に0.1mol/L〜3mol/L、好ましくは0.5mol/L〜2mol/Lの濃度で含まれることが好ましい。
【0087】
本発明の非水電解液は、特にLiPF
6を含有することが望ましい。LiPF
6は、解離度が高いため、電解液の伝導度を高めることができ、さらに負極上での電解液の還元分解反応を抑制する作用がある。LiPF
6は単独で使用してもよいし、LiPF
6とそれ以外の電解質を使用してもよい。それ以外の電解質としては、通常、非水電解液用電解質として使用されるものであれば、いずれも使用することができるが、前述のリチウム塩の具体例のうちLiPF
6以外のリチウム塩が好ましい。
具体例としては、LiPF
6とLiBF
4、LiPF
6とLiN[SO
2C
kF
(2k+1)]
2(k=1〜8の整数)、LiPF
6とLiBF
4とLiN[SO
2C
kF
(2k+1)](k=1〜8の整数)などが例示される。
【0088】
リチウム塩中に占めるLiPF
6の比率は、好ましくは1質量%〜100質量%、より好ましくは10質量%〜100質量%、さらに好ましくは50質量%〜100質量%が望ましい。このような電解質は、0.1mol/L〜3mol/L、好ましくは0.5mol/L〜2mol/Lの濃度で非水電解液中に含まれることが好ましい。
【0089】
〔一般式(IV)で表される化合物〕
本発明の非水電解液は、一般式(IV)で表される化合物を含有することができる。本発明の非水電解液が一般式(IV)で表される化合物を含有する形態は、負極の表面皮膜形成の点で好ましい。
【0091】
前記一般式(IV)中、Y
1及びY
2は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、又はプロピル基を示す。
【0092】
一般式(IV)で表される化合物としては、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、プロピルビニレンカーボネート、ジメチルビニレンカーボネート、ジエチルビニレンカーボネート、ジプロピルビニレンカーボネートなどが例示される。これらのうちでビニレンカーボネートが最も好ましい。
【0093】
本発明の非水電解液が一般式(IV)で表される化合物を含有する場合、含有される一般式(IV)で表される化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。 本発明の非水電解液が一般式(IV)で表される化合物を含有する場合、一般式(IV)で表される化合物の含有量は、目的に応じて適宜選択できるが、非水電解液全質量に対して、0.001質量%〜10質量%が好ましく、0.05質量%〜5質量%であることが更に好ましい。
【0094】
また、本発明の非水電解液が、一般式(IV)で表される化合物を含有する場合において、前述の一般式(I)で表されるホスホノスルホン酸化合物の含有量は、非水電解液全質量に対して0.001質量%〜10質量%であることが好ましく、0.05質量%〜5質量%の範囲であることがより好ましい。この範囲において、より効果的に、電池の低温放電特性の改善と、電池の保存特性の改善と、を両立することができる。
【0095】
〔一般式(V)で表される化合物〕
本発明の非水電解液は、一般式(V)で表される化合物を含有することができる。本発明の非水電解液が一般式(V)で表される化合物を含有する形態は、負極の表面皮膜形成の点で好ましい。
【0097】
前記一般式(V)中、X
1、X
2、X
3及びX
4は、それぞれ独立に、ビニル基、フッ素原子により置換されてもよい炭素数1〜3のアルキル基、水素原子、フッ素原子、又は塩素原子を示す。ただし、X
1、X
2、X
3及びX
4が同時に水素原子であることはない。
【0098】
一般式(V)中、X
1、X
2、X
3及びX
4がフッ素原子により置換されてもよい炭素数1〜3のアルキル基を表す場合の、フッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜3のアルキル基としては、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基などが挙げられる。
【0099】
一般式(V)で表される化合物としては公知のものを使用でき、たとえば、ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、4,4,5−トリフルオロエチレンカーボネート、4,4,5,5−テトラフルオロエチレンカーボネートなどの、エチレンカーボネートにおいて1〜4個の水素がフッ素により置換されたフッ素化エチレンカーボネートが挙げられる。これらの中でも、ビニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、4−フルオロエチレンカーボネートが最も望ましい。
【0100】
本発明の非水電解液が一般式(V)で表される化合物を含有する場合、含有される一般式(V)で表される化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
本発明の非水電解液が一般式(V)で表される化合物を含有する場合、一般式(V)で表される化合物の含有量は、目的に応じて適宜選択できるが、非水電解液全質量に対して、0.001質量%〜10質量%が好ましく、0.05質量%〜5質量%であることが更に好ましい。
本発明の非水電解液は、前記一般式(IV)で表される化合物及び前記一般式(V)で表される化合物の双方を含んでいてもよく、双方を含む場合の好ましい含有量は、前記した好ましい含有量と同様である。
【0101】
また、本発明の非水電解液が、一般式(V)で表される化合物を含有する場合において、前述の一般式(I)で表されるホスホノスルホン酸化合物の含有量は、非水電解液全質量に対して0.001質量%〜10質量%であることが好ましく、0.05質量%〜5質量%の範囲であることがより好ましい。この範囲において、より効果的に、電池の低温放電特性の改善と、電池の保存特性の改善と、を両立することができる。
【0102】
〔一般式(VI)で表される化合物〕
本発明の非水電解液は、一般式(VI)で表される化合物を含有することができる。本発明の非水電解液が一般式(VI)で表される化合物を含有する形態は、負極の表面皮膜形成の点で好ましい。一般式(VI)で表される化合物は、環状硫酸エステル化合物である。以下、一般式(VI)で表される化合物を、「一般式(VI)で表される環状硫酸エステル化合物」ともいう。
【0104】
一般式(VI)中、R
9及びR
10は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、一般式(VII)で表される基、又は式(VIII)で表される基を表す。
一般式(VII)中、R
11は、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又は式(IX)で表される基を表す。
一般式(VII)、式(VIII)、および式(IX)における*は、結合位置を表す。
一般式(VI)で表される化合物中に、一般式(VII)で表される基が2つ含まれる場合、2つの一般式(VII)で表される基は、同一であっても互いに異なっていてもよい。
【0105】
前記一般式(VI)中(詳細には前記一般式(VII)中)、「ハロゲン原子」は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が具体例として挙げられる。
前記一般式(VI)中(詳細には前記一般式(VII)中)におけるハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
【0106】
前記一般式(VI)中、「炭素数1〜6のアルキル基」は、前述の一般式(I)中の「炭素数1〜6のアルキル基」と同義であり、具体例も同様である。
前記一般式(VI)中における炭素数1〜6のアルキル基としては、炭素数1〜3のアルキル基がより好ましい。
【0107】
一般式(VI)中、「炭素数1〜6のハロアルキル基」は、前述の一般式(I)中の「炭素数1〜6のハロアルキル基」と同義であり、具体例も同様である。
前記一般式(VI)中における炭素数1〜6のハロアルキル基としては、炭素数1〜3のハロアルキル基がより好ましい。
【0108】
前記一般式(VI)中、「炭素数1〜6のアルコキシ基」は、炭素数が1〜6個である直鎖アルコキシ基又は分岐鎖を有するアルコキシ基であり、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、2−メチルブトキシ基、1−メチルペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、1−エチルプロポキシ基、ヘキシルオキシ基、3,3−ジメチルブトキシ基などが具体例として挙げられる。
炭素数1〜6のアルコキシ基としては、炭素数1〜3のアルコキシ基がより好ましい。
【0109】
前記一般式(VI)中のR
9として、好ましくは、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、前記一般式(VII)で表される基(一般式(VII)において、R
11は、フッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のハロアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、又は式(IX)で表される基であることが好ましい。)、又は前記式(VIII)で表される基である。
前記一般式(VI)中のR
10として、好ましくは、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、前記一般式(VII)で表される基(一般式(VII)において、R
11は、フッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のハロアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、又は、式(IX)で表される基であることが好ましい。)、又は前記式(VIII)で表される基であり、より好ましくは水素原子又はメチル基であり、特に好ましくは水素原子である。
【0110】
前記一般式(VI)中のR
9が前記一般式(VII)で表される基である場合、前記一般式(VII)中のR
11は前述のとおり、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又は式(IX)で表される基であるが、R
11としてより好ましくは、フッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のハロアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、又は、式(IX)で表される基であり、更に好ましくは、フッ素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、又は、式(IX)で表される基である。
前記一般式(VI)中のR
10が前記一般式(VII)で表される基である場合、一般式(VII)中のR
11の好ましい範囲については、前記一般式(VI)中のR
9が前記一般式(VII)で表される基である場合におけるR
11の好ましい範囲と同様である。
【0111】
前記一般式(VI)におけるR
9及びR
10の好ましい組み合わせとしては、R
9が、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、前記一般式(VII)で表される基(前記一般式(VII)中、R
11はフッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のハロアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、又は前記式(IX)で表される基であることが好ましい)、又は前記式(VIII)で表される基であり、R
10が、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、前記一般式(VII)で表される基(前記一般式(VII)中、R
11はフッ素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のハロアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、又は前記式(IX)で表される基であることが好ましい。)、又は前記式(VIII)で表される基である組み合わせである。
前記一般式(VI)におけるR
9及びR
10のより好ましい組み合わせとしては、R
9が、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、前記一般式(VII)で表される基(前記一般式(VII)中、R
11はフッ素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、又は前記式(IX)で表される基であることが好ましい)又は前記式(VIII)で表される基であり、R
10が水素原子又はメチル基である組み合わせである。
前記一般式(VI)におけるR
9及びR
10の特に好ましい組み合わせとしては、前記一般式(VI)において、R
9が前記式(VIII)で表される基であり、R
10が水素原子である組み合わせ(最も好ましくは1,2:3,4−ジ−O−スルファニル−メゾ−エリスリトール)である。
【0112】
前記一般式(VI)において、R
9が前記一般式(VII)で表される基である化合物は、下記一般式(XV)で表される化合物である。
【0114】
一般式(XV)中、R
10及びR
11は、一般式(VI)及び一般式(VII)におけるR
10及びR
11とそれぞれ同義である。
【0115】
一般式(XV)で表される化合物としては、R
10が、水素原子、又は炭素数1〜6のアルキル基であり、R
11が、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又は前記式(IX)で表される基である化合物が好ましい。
更に、一般式(XV)で表される化合物としては、R
10が、水素原子又はメチル基であって、R
11が、フッ素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、又は前記式(IX)で表される基である化合物が特に好ましい。
【0116】
前記一般式(VI)で表される化合物として、好ましくは、2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン、4−メチル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン、4−エチル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン、4−プロピル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン、4−メチルスルホニルオキシメチル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン、4−エチルスルホニルオキシメチル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン、ビス((2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン−4−イル)メチル)サルフェート、1,2:3,4−ジ−O−スルファニル−メゾ−エリスリトール、又は1,2:3,4−ジ−O−スルファニル−D,L−スレイトールであり、更に好ましくは、2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン、4−メチル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン、4−エチル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン、4−プロピル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン、4−メチルスルホニルオキシメチル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン、4−エチルスルホニルオキシメチル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン、ビス((2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン−4−イル)メチル)サルフェート、又は1,2:3,4−ジ−O−スルファニル−メゾ−エリスリトールであり、特に好ましくは、2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン、4−メチル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン、4−エチル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン、4−プロピル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン、4−メチルスルホニルオキシメチル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン、4−エチルスルホニルオキシメチル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン、又はビス((2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン−4−イル)メチル)サルフェートである。
【0117】
本発明の非水電解液が一般式(VI)で表される化合物を含有する場合、含有される一般式(VI)で表される化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
本発明の非水電解液が一般式(VI)で表される化合物を含有する場合、一般式(VI)で表される化合物の含有量は、目的に応じて適宜選択できるが、非水電解液全質量に対して、0.001質量%〜10質量%が好ましく、0.05質量%〜5質量%であることが更に好ましい。
【0118】
また、本発明の非水電解液が、一般式(VI)で表される化合物を含有する場合において、前述の一般式(I)で表されるホスホノスルホン酸化合物の含有量は、非水電解液全質量に対して0.001質量%〜10質量%であることが好ましく、0.05質量%〜5質量%の範囲であることがより好ましい。この範囲において、より効果的に、電池の低温放電特性の改善と、電池の保存特性の改善と、を両立することができる。
【0119】
〔ジフルオロリン酸リチウム、一般式(X)、一般式(XI)、又は一般式(XII)で表される化合物〕
本発明の非水電解液は、本発明の効果をより効果的に得る観点から、更に、ジフルオロリン酸リチウム(LiOP(O)F
2)、下記一般式(X)で表される化合物、下記一般式(XI)で表される化合物、及び、下記一般式(XII)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することが好ましい。
この群から選ばれる少なくとも1種の化合物は、電解質化合物である。
以下、この群から選ばれる少なくとも1種の化合物を、「特定電解質化合物」ということがある。
本発明の非水電解液における電解質としては、特定電解質化合物以外の電解質(例えば、前述した一般的な電解質)のみを用いてもよいし、特定電解質化合物のみを用いてもよいし、特定電解質化合物以外の電解質と特定電解質化合物とを併用してもよい。
特に、本発明の非水電解液が、電解質として、特定電解質化合物と特定電解質化合物以外の電解質とを含む場合には、通常の非水電解液用の電解質の基本的性能である電気伝導性が保持されることに加え、電池性能(特に初期及び充電保存時における電池の低温放電特性)も更に向上する。更に、特定電解質化合物及び特定電解質化合物以外の電解質の少なくとも一方がリチウムイオンを含む場合には、リチウムイオンの安定的な供給源となる。
【0121】
一般式(X)、一般式(XI)及び一般式(XII)中、Mは、アルカリ金属である。
前記Mは、リチウム、ナトリウム、又はカリウムであることが好ましく、リチウムであることがより好ましい。
【0122】
一般式(X)、一般式(XI)、又は一般式(XII)で表される化合物の合成方法としては、たとえば、一般式(X)で表される化合物の場合には、非水溶媒中でLiPF
6とこのLiPF
6に対して1倍モルのシュウ酸とを反応させて、リンに結合しているフッ素原子をシュウ酸で置換する方法等がある。
また、一般式(XI)で表される化合物の場合には、非水溶媒中でLiPF
6とこのLiPF
6に対して2倍モルのシュウ酸とを反応させて、リンに結合しているフッ素原子をシュウ酸で置換する方法等がある。
また、一般式(XII)で表される化合物の場合には、非水溶媒中でLiPF
6とこのLiPF
6に対して3倍モルのシュウ酸とを反応させて、リンに結合しているフッ素原子をシュウ酸で置換する方法等がある。
これらの場合には、アニオン化合物のリチウム塩を得ることができる。
【0123】
本発明の非水電解液が、ジフルオロリン酸リチウム、一般式(X)で表される化合物、一般式(XI)で表される化合物、及び、一般式(XII)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する場合、ジフルオロリン酸リチウム、一般式(X)で表される化合物、一般式(XI)で表される化合物、及び、一般式(XII)で表される化合物の総含有量は、非水電解液全質量に対して0.001質量%〜10質量%であることが好ましく、0.05質量%〜5質量%の範囲であることがより好ましい。この範囲において、より効果的に、電池の低温特性の改善と、電池の保存特性の改善と、を両立することができる。
【0124】
また、本発明の非水電解液が、ジフルオロリン酸リチウム、一般式(X)で表される化合物、一般式(XI)で表される化合物、及び、一般式(XII)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する場合において、前述の一般式(I)で表されるホスホノスルホン酸化合物の含有量は、非水電解液全質量に対して0.001質量%〜10質量%であることが好ましく、0.05質量%〜5質量%の範囲であることがより好ましい。この範囲において、より効果的に、電池の低温放電特性の改善と、電池の保存特性の改善と、を両立することができる。
【0125】
本発明の非水電解液は、リチウム二次電池用の非水電解液として好適であるばかりでなく、一次電池用の非水電解液、電気化学キャパシタ用の非水電解液、電気二重層キャパシタ、アルミ電解コンデンサー用の電解液としても用いることができる。
【0126】
<リチウム二次電池>
本発明のリチウム二次電池は、負極と、正極と、前記本発明の非水電解液とを基本的に含んで構成されており、通常、負極と正極との間にセパレータが設けられている。
【0127】
(負極)
前記負極を構成する負極活物質は、金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属もしくは合金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属窒素化物、及び、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料から選ばれた少なくとも1種(単独で用いてもよいし、これらの2種以上を含む混合物を用いてもよい)を用いることができる。
リチウム(又はリチウムイオン)との合金化が可能な金属もしくは合金としては、シリコン、シリコン合金、スズ、スズ合金などを挙げることができる。また、チタン酸リチウムでも良い。
これらの中でもリチウムイオンをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料が好ましい。このような炭素材料としては、カーボンブラック、活性炭、黒鉛材料(人造黒鉛、天然黒鉛)、非晶質炭素材料、等が挙げられる。前記炭素材料の形態は、繊維状、球状、ポテト状、フレーク状いずれの形態であってもよい。
【0128】
前記非晶質炭素材料として具体的には、ハードカーボン、コークス、1500℃以下に焼成したメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソペーズビッチカーボンファイバー(MCF)などが例示される。
前記黒鉛材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛が挙げられる。人造黒鉛としては、黒鉛化MCMB、黒鉛化MCFなどが用いられる。また、黒鉛材料としては、ホウ素を含有するものなども用いることができる。また、黒鉛材料としては、金、白金、銀、銅、スズなどの金属で被覆したもの、非晶質炭素で被覆したもの、非晶質炭素と黒鉛を混合したものも使用することができる。
【0129】
これらの炭素材料は、1種類で使用してもよく、2種類以上混合して使用してもよい。
前記炭素材料としては、特にX線解析で測定した(002)面の面間隔d(002)が0.340nm以下の炭素材料が好ましい。また、炭素材料としては、真密度が1.70g/cm
3以上である黒鉛又はそれに近い性質を有する高結晶性炭素材料も好ましい。以上のような炭素材料を使用すると、電池のエネルギー密度をより高くすることができる。
【0130】
(正極)
前記正極を構成する正極活物質としては、MoS
2、TiS
2、MnO
2、V
2O
5などの遷移金属酸化物又は遷移金属硫化物、LiCoO
2、LiMnO
2、LiMn
2O
4、LiNiO
2、LiNi
XCo
(1−X)O
2〔0<X<1〕、LiFePO
4などのリチウムと遷移金属とからなる複合酸化物、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリアセン、ジメルカプトチアジアゾール、ポリアニリン複合体などの導電性高分子材料等が挙げられる。これらの中でも、特にリチウムと遷移金属とからなる複合酸化物が好ましい。負極がリチウム金属又はリチウム合金である場合は、正極として炭素材料を用いることもできる。また、正極として、リチウムと遷移金属との複合酸化物と、炭素材料と、の混合物を用いることもできる。
上記の正極活物質は、1種類で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。正極活物質は導電性が不充分である場合には、導電性助剤とともに使用して正極を構成することができる。導電性助剤としては、カーボンブラック、アモルファスウィスカー、グラファイトなどの炭素材料を例示することができる。
【0131】
(セパレータ)
前記セパレータは、正極と負極とを電気的に絶縁し且つリチウムイオンを透過する膜であって、多孔性膜や高分子電解質が例示される。
前記多孔性膜としては微多孔性高分子フィルムが好適に使用され、材質としてポリオレフィン、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル等が例示される。
特に、多孔性ポリオレフィンが好ましく、具体的には多孔性ポリエチレンフィルム、多孔性ポリプロピレンフィルム、又は多孔性のポリエチレンフィルムとポリプロピレンフィルムとの多層フィルムを例示することができる。多孔性ポリオレフィンフィルム上には、熱安定性に優れる他の樹脂がコーティングされてもよい。
前記高分子電解質としては、リチウム塩を溶解した高分子や、電解液で膨潤させた高分子等が挙げられる。
本発明の非水電解液は、高分子を膨潤させて高分子電解質を得る目的で使用してもよい。
【0132】
(電池の構成)
本発明のリチウム二次電池は、前記の負極活物質、正極活物質及びセパレータを含む。 本発明のリチウム二次電池は、種々公知の形状をとることができ、円筒型、コイン型、角型、フィルム型その他任意の形状に形成することができる。しかし、電池の基本構造は、形状によらず同じであり、目的に応じて設計変更を施すことができる。
本発明の非水電解質二次電池の例として、
図1に示すコイン型電池が挙げられる。
図1に示すコイン型電池では、円盤状負極2、電解質を非水溶媒に溶解してなる非水電解液を注入したセパレータ5、円盤状正極1、必要に応じて、ステンレス、又はアルミニウムなどのスペーサー板7、8が、この順序に積層された状態で、正極缶3(以下、「電池缶」ともいう)と封口板4(以下、「電池缶蓋」ともいう)との間に収納される。正極缶3と封口板4とはガスケット6を介してかしめ密封する。
【0133】
なお、本発明のリチウム二次電池は、負極と、正極と、前記本発明の非水電解液とを含むリチウム二次電池(充放電前のリチウム二次電池)を、充放電させて得られたリチウム二次電池であってもよい。
即ち、本発明のリチウム二次電池は、まず、負極と、正極と、前記本発明の非水電解液と、を含む充放電前のリチウム二次電池を作製し、次いで、該充放電前のリチウム二次電池を1回以上充放電させることによって作製されたリチウム二次電池(充放電されたリチウム二次電池)であってもよい。
【0134】
本発明の非水電解液及びその非水電解液を用いたリチウム二次電池の用途は特に限定されず、種々公知の用途に用いることができる。例えば、ノートパソコン、モバイルパソコン、携帯電話、ヘッドホンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、電子手帳、電卓、ラジオ、バックアップ電源用途、モーター、自動車、電気自動車、バイク、電動バイク、自転車、電動自転車、照明器具、ゲーム機、時計、電動工具、カメラ等、小型携帯機器、大型機器を問わず広く利用可能なものである。
【実施例】
【0135】
以下に実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって制限されるものではない。なお、以下の実施例において、「%」又は「wt%」は質量%を表す。
【0136】
以下、一般式(I)で表されるホスホノスルホン酸化合物の合成例を示す。
〔合成例1〕
<ジエチルホスホノメタンスルホン酸メチル(例示化合物10)の合成>
【0137】
メタンスルホン酸メチル(5.00g,45.4mmol)をテトラヒドロフラン(100ml)に溶かし、−78℃に冷却下、n−ブチルリチウム(1.6Mヘキサン溶液、31ml、49.9mmol)を滴下し、同温度で30分撹拌した。続いて、ジエチル燐酸クロライド(3.9ml,27.2mmol)を滴下し、−78℃で1時間、−50℃で30分撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え撹拌後、更に水で薄めた混合物から、酢酸エチルで2回抽出した。合わせた抽出液(有機層)を、水及び飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン系)で精製し、ジエチルホスホノメタンスルホン酸メチル(例示化合物10)を5.04g(収率75%)得た。得られた化合物のNMR測定結果は以下の通りであった。
1H−NMR(270MHz,CDCl
3)δ(ppm):4.31−4.20(4H,m),3.73(2H,d,J=17.5Hz),1.42−1.35(6H,m).
【0138】
〔合成例2〕
<ビス(トリメチルシリル)ホスホノメタンスルホン酸トリメチルシリル(例示化合物23)の合成>
ジエチルホスホノメタンスルホン酸メチル(例示化合物10)(5.04g、20.5mmol)を塩化メチレン(25ml)に溶かし、室温で、トリメチルシリルブロミド(10.8ml,80.9mmol)を加えた。室温で6時間撹拌後、反応液を減圧下濃縮し、ビス(トリメチルシリル)ホスホノメタンスルホン酸トリメチルシリル(例示化合物23)(7.67g,収率95%)を得た。得られた化合物のNMR測定結果は以下の通りであった。
1H−NMR(270MHz,CDCl
3)δ(ppm):3.90(2H,d,J=18.4Hz),0.36(18H,s),0.07(9H,s).
【0139】
〔合成例3〕
<ビス(トリメチルシリルメチル)ホスホノメタンスルホン酸トリメチルシリルメチル(例示化合物71)の合成>
(工程1)
Chemische Berichte, 1980, vol.113, (1), 142-151に記載の方法に従い、ホスホノ酢酸(16.8g)より、(ジクロロホスホリル)メタンスルホニルクロライドを13.08g(47%)得た。
(工程2)
トリメチルシリルメタノール(0.9ml,7.13mmol)及びトリエチルアミン(1.5ml,10.8mmol)を塩化メチレン(20ml)に溶かした溶液に、氷冷下、上記(ジクロロホスホリル)メタンスルホニルクロリド(0.50g, 2.16mmol)を塩化メチレン(2ml)に溶かした溶液を滴下した。氷冷下、2時間撹拌後、反応液を水中に注ぎ込んだ。その混合物から塩化メチレンで抽出した。あわせた抽出液(有機層)を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製し、ビス(トリメチルシリルメチル)ホスホノメタンスルホン酸トリメチルシリルメチル(例示化合物71)(58.1mg,収率6%)を得た。得られた化合物のNMR測定結果は以下の通りであった。
1H−NMR(270MHz,CDCl
3)δ(ppm):3.99(2H,s),3.85(2H,d,J=6.3Hz),3.67(2H,d,J=16.8Hz),0.15(9H,s),0.12(18H,s).
【0140】
〔合成例4〕
<ホスホノメタンスルホン酸(例示化合物1)の合成>
合成例2で得たビス(トリメチルシリル)ホスホノメタンスルホン酸トリメチルシリル(例示化合物23)(236.5mg,0.602mmol)を、メタノール(5ml)に溶かし、室温で、2日間撹拌した。反応液を減圧下濃縮後、真空ポンプにて更に乾燥し、ホスホノメタンスルホン酸(例示化合物1)(104.9mg,収率99%)を得た。得られた化合物のNMR測定結果は以下の通りであった。
1H−NMR(270MHz,acetone-d
6)δ(ppm):3.75(2H, d,J=17.5Hz).
【0141】
〔合成例5〕
<2−(ジエトキシホスホリル)エタンスルホン酸フェニル(例示化合物43)の合成>
亜リン酸ジエチル(0.90g,6.50mmol)及びジアザビシクロウンデセン(0.99g,6.50mmol)をテトラヒドロフラン(20ml)に溶かした溶液に、氷冷下、フェニル ビニルスルホネート(1.14g,6.19mmol)をテトラヒドロフラン(3ml)に溶かした溶液を滴下した。氷冷下、4時間撹拌後、反応液を水中に注ぎ込んだ。その混合物から酢酸エチルで2回抽出した。あわせた抽出液(有機層)を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製し、2−(ジエトキシホスホリル)エタンスルホン酸フェニル(例示化合物43)(0.97g,収率49%)を得た。得られた化合物のNMR測定結果は以下の通りであった。
1H−NMR(270MHz,CDCl
3)δ(ppm):7.46−7.25(5H,m),4.21−4.09(4H,m),3.52−3.43(2H,m),2.45−2.31(2H,m),1.39−1.32(6H,m).
【0142】
〔合成例6〕
<2−(ヒドロキシ(トリメチルシリルオキシ)ホスホリル)エタンスルホン酸フェニル(例示化合物81)の合成>
合成例5で得た2−(ジエトキシホスホリル)エタンスルホン酸フェニル(例示化合物43)(726.3mg、2.25mmol)を塩化メチレン(14.5ml)に溶かし、室温で、トリメチルシリルブロミド(0.71ml,5.4mmol)を加えた。室温で16時間撹拌後、反応液を減圧下濃縮し、2−(ヒドロキシ(トリメチルシリルオキシ)ホスホリル)エタンスルホン酸フェニル(例示化合物81)(750.2mg,収率98%)を得た。得られた化合物のNMR測定結果は以下の通りであった。
1H−NMR(270MHz,CDCl
3)δ(ppm):7.46−7.24(5H,m),3.52−3.40(2H,m),2.47−2.30(2H,m),0.32(9H,s).
【0143】
以上、一般式(I)で表されるホスホノスルホン酸化合物の合成例として、例示化合物10、例示化合物23、例示化合物71、例示化合物1、例示化合物43、例示化合物81の合成例を説明したが、その他の一般式(I)で表されるホスホノスルホン酸化合物についても上記合成例と類似の方法により合成できる。
【0144】
〔実施例1〕
以下の手順にて、リチウム二次電池を作製した。
<負極の作製>
人造黒鉛20質量部、天然黒鉛系黒鉛80質量部、カルボキシメチルセルロース1質量部及びSBRラテックス2質量部を水溶媒で混錬してペースト状の負極合剤スラリーを調製した。
次に、この負極合剤スラリーを厚さ18μmの帯状銅箔製の負極集電体に塗布し乾燥した後に、ロールプレスで圧縮して負極集電体と負極活物質層とからなるシート状の負極を得た。このときの負極活物質層の塗布密度は10mg/cm
2であり、充填密度は1.5g/mlであった。
【0145】
<正極の作製>
LiCoO
2を90質量部、アセチレンブラック5質量部及びポリフッ化ビニリデン5質量部を、N−メチルピロリジノンを溶媒として混錬してペースト状の正極合剤スラリーを調製した。
次に、この正極合剤スラリーを厚さ20μmの帯状アルミ箔の正極集電体に塗布し乾燥した後に、ロールプレスで圧縮して正極集電体と正極活物質層とからなるシート状の正極を得た。このときの正極活物質層の塗布密度は30mg/cm
2であり、充填密度は2.5g/mlであった。
【0146】
<非水電解液の調製>
非水溶媒としてエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とメチルエチルカーボネート(EMC)とをそれぞれ34:33:33(質量比)の割合で混合した中に、電解質であるLiPF
6を、最終的に得られる非水電解液中の電解質濃度が1モル/リットルとなるように添加し、溶解させた。
得られた溶液に対して、添加剤として、前記合成例2で得られたビス(トリメチルシリル)ホスホノメタンスルホン酸トリメチルシリル(例示化合物23)を、最終的に得られる非水電解液全質量に対する含有量が0.5wt%となるように添加し、非水電解液を得た。
【0147】
<コイン型電池の作製>
上述の負極を直径14mmで、上述の正極を直径13mmで、それぞれ円盤状に打ち抜いて、コイン状の電極(負極及び正極)を得た。また厚さ20μmの微多孔性ポリエチレンフィルムを直径17mmの円盤状に打ち抜きセパレータを得た。
得られたコイン状の負極、セパレータ及びコイン状の正極を、この順序でステンレス製の電池缶(2032サイズ)内に積層し、非水電解液20μlを注入してセパレータと正極と負極に含漬させた。
更に、正極上にアルミニウム製の板(厚さ1.2mm、直径16mm)及びバネを乗せ、ポリプロピレン製のガスケットを介して、電池缶蓋をかしめることにより電池を密封し、直径20mm、高さ3.2mmの
図1で示す構成を有するコイン型のリチウム二次電池(以下、「コイン型電池」又は「試験用電池」と称することがある)を作製した。
得られたコイン型電池(試験用電池)について、各測定を実施した。
【0148】
[評価方法]
<電池の初期特性、抵抗値(−20℃)測定>
上記コイン型電池を定電圧4.0Vで充電し、次いで、該充電後のコイン型電池を恒温槽内で−20℃に冷却し、−20℃において0.2mA定電流で放電し、放電開始から10秒間における電位低下を測定することにより、コイン型電池の直流抵抗[Ω]を測定し、得られた値を初期抵抗値[Ω](−20℃)とした。後述の比較例1のコイン型電池についても同様にして、初期抵抗値[Ω](−20℃)を測定した。
これらの結果から、下記式により、比較例1での初期抵抗値[Ω](−20℃)を100%としたときの実施例1での初期抵抗値(相対値;%)として、「初期特性、抵抗値(−20℃)[%]」を求めた。
得られた結果を表1に示す。
【0149】
初期特性、抵抗値(−20℃)[%]
=(実施例1での初期抵抗値[Ω](−20℃)/比較例1での初期抵抗値[Ω](−20℃))×100[%]
【0150】
<電池の保存特性、容量維持率測定>
上記で得られたコイン型電池について、25℃の恒温槽中で定電流1mAかつ定電圧4.2Vで充電し、この25℃の恒温槽中で1mA定電流で2.85Vまで放電し、1サイクル目の放電容量[mAh]を測定した。
次に、このコイン型電池を定電圧4.2V充電し、充電したコイン型電池を80℃の恒温槽内に2日間保存(以下、この操作を「高温保存試験」とする)した後、1サイクル目の放電容量と同様の方法で高温保存試験後の放電容量[mAh]を測定し、下記式にて電池の保存特性である容量維持率[%]を計算した。
得られた結果を表1に示す。
【0151】
保存特性、容量維持率[%]
=(高温保存試験後の放電容量[mAh]/1サイクル目の放電容量[mAh])×100[%]
【0152】
後述の比較例1のコイン型電池についても同様にして、容量維持率[%]を計算した。
これらの結果から、比較例1での容量維持率を100%としたときの実施例1での容量維持率(相対値;%)を求めた。
得られた容量維持率(相対値;%)を表1に示す。
【0153】
<電池の保存特性、抵抗値(−20℃)測定>
初期抵抗値測定後のコイン型電池を定電圧4.2V充電し、充電したコイン型電池を80℃の恒温槽内に2日間保存した(高温保存試験)。次に、この高温保存試験後のコイン型電池の抵抗値(−20℃)を前述の初期抵抗値(−20℃)と同様の方法で測定した。後述の[比較例1]のコイン型電池についても同様にして、高温保存試験後の抵抗値(−20℃)を測定した。
これらの結果から、下記式により、比較例1での高温保存試験後の抵抗値[Ω](−20℃)を100%としたときの実施例1での高温保存試験後の抵抗値(相対値%)として、実施例1での「保存特性、抵抗値(−20℃)[%]」を求めた。
得られた結果を表1に示す。
【0154】
保存特性、抵抗値(−20℃)[%]
=(実施例1での高温保存試験後の抵抗値[Ω](−20℃)/比較例1での高温保存試験後の抵抗値[Ω](−20℃))×100[%]
【0155】
〔実施例2〕
実施例1中の非水電解液の調製において、例示化合物23に代えて例示化合物71を、最終的に得られる非水電解液全質量に対する含有量が0.5wt%となるように添加したこと以外は実施例1と同様にしてコイン型電池を得た。
得られたコイン型電池について、実施例1と同様にして各測定を実施した。評価結果を表1に示す。
【0156】
〔実施例3〕
実施例1中の非水電解液の調製において、例示化合物23に代えて例示化合物10を、最終的に得られる非水電解液全質量に対する含有量が0.5wt%となるように添加したこと以外は実施例1と同様にしてコイン型電池を得た。
得られたコイン型電池について、実施例1と同様にして各測定を実施した。評価結果を表1に示す。
【0157】
〔実施例4〕
実施例1中の非水電解液の調製において、例示化合物23に代えて例示化合物1を、最終的に得られる非水電解液全質量に対する含有量が0.5wt%となるように添加したこと以外は実施例1と同様にしてコイン型電池を得た。
得られたコイン型電池について、実施例1と同様にして各測定を実施した。評価結果を
表1に示す。
【0158】
〔実施例5〕
実施例1中の非水電解液の調製において、例示化合物23に代えて例示化合物43を、最終的に得られる非水電解液全質量に対する含有量が0.5wt%となるように添加したこと以外は実施例1と同様にしてコイン型電池を得た。
得られたコイン型電池について、実施例1と同様にして各測定を実施した。評価結果を表1に示す。
【0159】
〔実施例6〕
実施例1中の非水電解液の調製において、前記例示化合物23に代えて例示化合物81を、最終的に得られる非水電解液全質量に対する含有量が0.5wt%となるように添加したこと以外は実施例1と同様にしてコイン型電池を得た。
得られたコイン型電池について、実施例1と同様にして各測定を実施した。評価結果を表1に示す。
【0160】
〔比較例1〕
実施例1中の非水電解液の調製において、添加剤(例示化合物23)を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にしてコイン型電池を得た。
得られたコイン型電池について、実施例1と同様にして各測定を実施した。評価結果を表1に示す。
【0161】
〔比較例2〕
実施例1中の非水電解液の調製において、前記例示化合物23に代えてジエチルホスホノメタンカルボン酸エチル(比較化合物1)を、最終的に得られる非水電解液全質量に対する含有量が0.5wt%となるように添加したこと以外は実施例1と同様にしてコイン型電池を得た。
得られたコイン型電池について、実施例1と同様にして各測定を実施した。評価結果を表1に示す。
【0162】
【表1】
【0163】
上記表1並びに後述の表2及び表3における非水電解液用添加剤の添加量は、最終的に得られる非水電解液全質量に対しての質量%(wt%)を意味する。
また、上記表1並びに後述の表2及び表3中、「一般式(I)化合物」は、一般式(1)で表されるホスホノスルホン酸化合物を意味する。
実施例及び比較例に用いた例示化合物の構造を以下に示す。
【0164】
【化21】
【0165】
表1に示すように、添加剤を含有しない比較例1と比べ、実施例1〜6では、保存特性として、容量維持率を維持したまま低温抵抗値を有意に低減することができている。更に、実施例1〜6では、比較例1と比べ、初期特性としての低温抵抗値も有意に低減することができている。
一方、比較化合物1を添加した比較例2では、保存特性に関して比較化合物1の添加による悪影響が見られ、また初期特性としての低温抵抗値も増加傾向にあった。
【0166】
〔実施例7〕
実施例1中の非水電解液の調製において、更に、添加剤としてビニレンカーボネート(化合物A)を、最終的に得られる非水電解液全質量に対する含有量が0.5wt%となるように添加したこと以外は実施例1と同様にしてコイン型電池を得た。
得られたコイン型電池について、実施例1と同様にして各測定を実施した。評価結果を表2に示す。
【0167】
〔実施例8〜13〕
実施例7中の非水電解液の調製において、ビニレンカーボネート(化合物A)に代えてそれぞれ化合物B〜Gを、最終的に得られる非水電解液全質量に対する含有量がそれぞれ0.5wt%となるように添加したこと以外は実施例7と同様にしてコイン型電池を得た。
得られたコイン型電池について、実施例1と同様にして各測定を実施した。評価結果を表2に示す。
【0168】
〔実施例14〕
実施例3中の非水電解液の調製において、更に、添加剤としてビニレンカーボネート(化合物A)を、最終的に得られる非水電解液全質量に対する含有量が0.5wt%となるように添加したこと以外は実施例3と同様にしてコイン型電池を得た。
得られたコイン型電池について、実施例1と同様にして各測定を実施した。評価結果を表2に示す。
【0169】
〔実施例15〜20〕
実施例14中の非水電解液の調製において、ビニレンカーボネート(化合物A)に代えてそれぞれ化合物B〜G、最終的に得られる非水電解液全質量に対する含有量がそれぞれ0.5wt%となるように添加したこと以外は実施例14と同様にしてコイン型電池を得た。
得られたコイン型電池について、実施例1と同様にして各測定を実施した。評価結果を表2に示す。
【0170】
〔実施例21〕
実施例4中の非水電解液の調製において、更に、添加剤として化合物Gを、最終的に得られる非水電解液全質量に対する含有量が0.5wt%となるように添加したこと以外は実施例4と同様にしてコイン型電池を得た。
得られたコイン型電池について、実施例1と同様にして各測定を実施した。評価結果を表2に示す。
【0171】
〔実施例22〕
実施例5中の非水電解液の調製において、更に、添加剤として化合物Gを、最終的に得られる非水電解液全質量に対する含有量が0.5wt%となるように添加したこと以外は実施例5と同様にしてコイン型電池を得た。
得られたコイン型電池について、実施例1と同様にして各測定を実施した。評価結果を表2に示す。
【0172】
〔実施例23〕
実施例6中の非水電解液の調製において、更に、添加剤として化合物Gを、最終的に得られる非水電解液全質量に対する含有量が0.5wt%となるように添加したこと以外は実施例6と同様にしてコイン型電池を得た。
得られたコイン型電池について、実施例1と同様にして各測定を実施した。評価結果を表2に示す。
【0173】
【表2】
【0174】
表2では、対比のため、表1における比較例1の結果も記載した。
実施例に用いた化合物A〜Gの構造を以下に示す。
【0175】
【化22】
【0176】
表2に示すように、添加剤を含有しない比較例1と比べ、添加剤として、一般式(1)で表される化合物と化合物A〜Gのいずれか1つとを組み合わせて使用した実施例7〜23では、保存特性として、容量維持率を維持したまま低温抵抗値を有意に低減することができている。更に、実施例7〜23では、比較例1と比べ、初期特性としての低温抵抗値も有意に低減することができている。
【0177】
〔実施例24〜31〕
実施例7〜9、13〜16、及び20において、一般式(1)で表される化合物の添加量を、最終的に得られる非水電解液全質量に対する含有量が1.5wt%となるように増加させたこと以外は実施例7〜9、13〜16、及び20と同様にしてコイン型電池を得た。
得られたコイン型電池について、実施例1と同様にして各測定を実施した。評価結果を表3に示す。
【0178】
【表3】
【0179】
表3中では、対比のため、表2中における比較例1の結果も記載した。
【0180】
表3に示すように、実施例7〜9、13〜16、及び20に対し、一般式(1)で表される化合物の添加量を増加させた実施例24〜31においても、実施例7〜9、13〜16、及び20と同様の効果が確認された。
【0181】
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本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。