(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バッテリフォークリフトの稼働時間を計時するために、バッテリフォークリフトを始動あるいは停止する際に操作するためのキースイッチがオン状態になっていることを示す信号を検出して行うことが可能であった。バッテリフォークリフトは、エンジンを用いずにバッテリに蓄電された電力のみで駆動する。したがって、このバッテリへの充放電が頻繁に行われるとともに、休車時である夜間や休日の長い時間を使って、バッテリへの充電が実行される。ここで、キースイッチをオン状態にしてバッテリへの充電を行うと、そのオン状態を示す信号を検知して、長い充電時間が稼働時間として計上されてしまう場合があった。この充電時間が稼働時間に計上されると、実際に荷役作業や走行などを行っている実稼働時間を正確に把握することができないという問題があった。
【0005】
一方、エンジンフォークリフトは、エンジンの稼働によって駆動する発電機(オルタネータ)の出力電圧を示す信号を検知して稼働時間を算出することができる。すなわち、エンジンフォークリフトの場合は、バッテリを駆動源としないため日常の充電という行為は不要であり、エンジンが稼働しているか否かを示す信号を検出することが容易で、精度が高い実稼働時間を把握することができる。したがって、複数のバッテリフォークリフトの稼働時間比較はもとより、バッテリフォークリフトとエンジンフォークリフトとの稼働時間の比較を行う場合、大きな稼働時間の誤差が生じ、稼働時間管理上の誤差をもたらすという問題があった。
【0006】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、蓄電池へ充電された電力で駆動する産業車両に対する精度の高い稼働時間管理を行うことができる産業車両、産業車両の稼働管理システム、及び電動式フォークリフトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる産業車両は、キースイッチがキーオン状態であるか否かを検出するキーオン信号検出部と、蓄電池への充電中であるか否かを検出する充電中信号検出部と、前記キーオン状態、かつ、充電中でない時間を稼働時間として算出する稼働時間算出部と、前記稼働時間を出力する出力部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、この発明にかかる産業車両は、上記の発明において、各種情報を表示する表示部と、前記出力部は、前記表示部に前記稼働時間を表示出力することを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかる産業車両は、上記の発明において、前記出力部は、少なくとも稼働時間と充電時間とを出力することを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかる産業車両は、上記の発明において、前記稼働時間算出部は、前記キーオン状態の時間である電源オン時間から充電中の時間である充電時間を減算した値を稼働時間として算出することを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかる産業車両は、上記の発明において、位置情報を取得する位置検出部と、前記出力部から出力された稼働時間と前記位置検出部により取得された前記位置情報とを無線通信によって外部に送信する通信部と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかる産業車両の稼働管理システムは、上記の発明において、上記発明のいずれか一つに記載の産業車両と、前記産業車両と無線通信可能な管理サーバと、前記産業車両と前記管理サーバとが無線通信を用いて相互通信が可能な無線通信システムとを備え、前記出力部は、所定の時刻に、前記稼働時間を前記無線通信システムを用いて出力することを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかる電動式フォークリフトは、キースイッチがキーオン状態であるか否かを検出するキーオン信号検出部と、蓄電池への充電中であるか否かを検出する充電中信号検出部と、前記キーオン状態、かつ、充電中でない時間を稼働時間として算出する稼働時間算出部と、前記稼働時間を出力する出力部と、位置情報を取得する位置検出部と、前記出力部から出力された稼働時間と前記位置検出部により取得された前記位置情報とを無線通信によって外部に送信する通信部と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、稼働時間算出部が、キーオン状態、かつ、充電中でない時間を稼働時間として算出し、出力部がこの稼働時間を出力するようにしている。このため、蓄電池へ充電された電力で駆動する産業車両に対する精度の高い稼働時間管理を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第一の実施形態)
以下、添付図面を参照してこの発明を実施するための形態について説明する。
【0017】
(バッテリフォークリフトの全体構成)
図1は、この発明の第一の実施の形態である産業車両の一例である電動式フォークリフト(以下、バッテリフォークリフト)の全体概要構成を示す左側面図である。
図1に示すように、バッテリフォークリフト1は、車体2の前部に荷役装置3を有する。荷役装置3は、マスト3a及びフォーク3bを有する。フォーク3bは、マスト3aにガイドされて上下に昇降する。また、マスト3aは、前後にチルトする。
【0018】
車体2の中央付近には、運転席4が設けられている。運転席4の前方には、フロントコンソール5、ステアリングホイール6、前後進レバー7、リフトレバー8、チルトレバー9が設けられる。また、運転席4の前方下部には、アクセルペダル10が設けられている。さらに、運転席4の前方下部には、図示しないブレーキペダルも設けられている。
【0019】
運転席4の下方にはバッテリ11が収容されている。蓄電池であるバッテリ11は、鉛蓄電池であり、2V電池セルが36個、直列接続され各2V電池セルに所定の量の電解液が満たされている。以下、電解液はバッテリ液として適宜表現する。なお、電池セルの電圧と電池セルの個数は、本実施の形態において一例として説明するだけであって、以下に説明する発明は、これに限らず適用可能である。各2V電池セルには、バッテリ液が満たされている。また、バッテリ11の前部には、キャパシタ12が設けられている。なお、本実施の形態では鉛蓄電池の例で説明するが他の二次電池であってもよい。他の二次電池として、例えばリチウムイオンバッテリなどを用いることができる。
【0020】
車体2の前部には、駆動輪13が設けられる。また、車体2の後部には、操舵輪14が設けられる。駆動輪13は、バッテリ11及びキャパシタ12の電力を用いて駆動する走行モータ15が、図示しない動力伝達機構を介して接続される。走行モータ15は、アクセルペダル10及び前後進レバー7などの操作に応じて駆動制御される。また、操舵輪14は、ステアリングホイール6の操作に応じて操舵される。
【0021】
車体2の後部には、バッテリ11及びキャパシタ12の電力を用いて駆動する荷役モータ16が設けられる。荷役モータ16は図示しない油圧ポンプに接続される。油圧ポンプは、図示しないリフトシリンダ及びチルトシリンダを油圧駆動する。リフトレバー8を操作するとリフトシリンダが伸縮し、チルトレバー9を操作するとチルトシリンダが伸縮する。このリフトシリンダ及びチルトシリンダの伸縮によって、フォーク3bが昇降し、マスト3aがチルトする。
【0022】
なお、運転席4を囲うキャビン17上部には、GPSアンテナ17a及び送受信アンテナ17bが設けられている。また、運転席4の下部には、バッテリフォークリフト1の全体制御を行うコントローラ20が配置されている。
【0023】
(システム概要及びバッテリフォークリフトの電気的構成)
図2は、この発明の第一の実施の形態にかかるバッテリフォークリフト1の稼働管理システム100の全体構成及びバッテリフォークリフト1の電気的構成を示す模式図である。
図2に示すように、この稼働管理システム100は、管理対象である、少なくとも一台あるいは複数のバッテリフォークリフト1と管理サーバ102とにより構成され、管理サーバ102は、バッテリフォークリフト1に通信接続され、バッテリフォークリフト1から送信される稼働時間情報を用いて各バッテリフォークリフト1の稼働状態を管理する。バッテリフォークリフト1は、複数のGPS衛星STから送られる電波をもとに自己の位置を検出することが可能である。また、バッテリフォークリフト1は、無線通信によって基地局サーバ101と通信可能である。さらに、管理サーバ102は、ネットワークNWを介して基地局サーバ101に通信接続される。つまり、バッテリフォークリフト1と管理サーバ102とは、このような無線通信システムを用いて相互通信が可能である。
【0024】
バッテリフォークリフト1は、GPSセンサ30及び送受信器31を有する。送受信アンテナ17bや送受信器31は、通信部を構成するものである。GPSセンサ30は、位置検出部であって、GPS衛星STから送られる電波を、GPSアンテナ17aを介して受信し、バッテリフォークリフト1の位置を検出し位置情報を生成する。なお、GPS衛星STから送られる電波には、時刻データが含まれており、後述するように、その時刻データを用いて、時刻情報生成部は時刻情報を生成する。また、送受信器31は、送受信アンテナ17b、及び基地局サーバ101の送受信アンテナ101aを介して、基地局サーバ101との間で情報の送受信を行う。
【0025】
バッテリフォークリフト1は、コントローラ20、キースイッチ32、DC/DCコンバータ33、荷役モータ16を駆動する荷役インバータ34、走行モータ15を駆動する走行インバータ35、フロントコンソール5に配置されるモニタパネル36、充電器37、バッテリ11、及びキャパシタ12を有する。なお、充電器37をバッテリフォークリフト1に搭載せず、車両外にある充電器37を用いることでバッテリ11に充電可能なバッテリフォークリフト1であってもよい。この場合、車両外の充電器37には充電状態検出部38がなく、充電状態検出部38は、バッテリフォークリフト1の例えば充電ケーブルが差し込まれる図示しないコネクタ部に設けられるようにすればよい。あるいは、車両外の充電器37に充電状態検出部38を設けて、充電状態検出部38から充電中信号をバッテリフォークリフト1に送信するようにしてもよい。
【0026】
コントローラ20は、通信コントローラ21、マスタコントローラ22、モニタコントローラ23、及びIDキーコントローラ24を有する。通信コントローラ21、マスタコントローラ22、モニタコントローラ23、及びIDキーコントローラ24は、通信ラインL1を介して相互に通信接続される。通信ラインL1は、車両内通信ネットワークである。
【0027】
バッテリ11は、例えば、図示しない2V電極セルが36個、直列接続され、74Vの電圧を出力するものを用いることができる。バッテリ11は、電源ラインL2を介して、荷役インバータ34、走行インバータ35、DC/DCコンバータ33に接続され、各装置に電力を供給する。なお、電源ラインL2には、充電器37が接続される。DC/DCコンバータ33は、電源ラインL3を介して、通信コントローラ21、マスタコントローラ22、モニタコントローラ23、及びIDキーコントローラ24に接続され、例えば24Vといった所定電圧に変換された電力を各コントローラに供給する。キースイッチ32は、フロントコンソール5の所定の場所に備え、図示しないキーをキースイッチ32に差し込み回動することにより、バッテリフォークリフト1を始動あるいは停止することが可能なキーシリンダーを用いることができる。キーシリンダーであるキースイッチ32は、キーオンとキーオフ、アクセサリーという3つの回動位置がある。キーをオフの位置からアクセサリーの位置まで回動すれば、図示しない前照灯などの電装品にバッテリ11から電力が供給される。キーをさらに回動すると、オンの位置までキーは回動し、キーから手を放すとキーはアクササリーの位置に戻り、バッテリ11からの電力が各インバータ34,35を介して荷役モータ16や走行モータ15に供給され、各モータ15,16が駆動することで荷役作業や走行作業が可能となる。また、キースイッチ32より出力される、上記のオンあるいはアクセサリーの位置にキーがあることを示す信号は、DC/DCコンバータ33に送信されるよう、キースイッチ32とDC/DCコンバータとは電気的に接続されている。DC/DCコンバータ33は、キースイッチ32がキーオン状態の場合に、制御ラインL4を介して、所定電圧として例えば24Vのキーオン信号を、通信コントローラ21、マスタコントローラ22、モニタコントローラ23、及びIDキーコントローラ24に送出する。マスタコントローラ22と、荷役インバータ34及び走行インバータ35との間は、駆動制御ラインL5を介して接続される。マスタコントローラ22は、リフトレバー8、チルトレバー9、ステアリングホイール6、前後進レバー7、アクセルペダル10の操作量に応じて、荷役インバータ34及び走行インバータ35を駆動制御し、荷役モータ16及び走行モータ15を駆動させる。本実施の形態のバッテリフォークリフト1は、キースイッチ32がキーオフの位置にあっても充電時には、通信コントローラ21、マスタコントローラ22、モニタコントローラ23、IDコントローラ24の全てに上記の所定の電圧(例えば24V)が供給され各コントローラが起動するように、DC/DCコンバータ33は制御を実行する。なお、荷役インバータ34及び走行インバータ35には、キャパシタ12が接続される。キャパシタ12は、荷役インバータ34及び走行インバータ35による制御のもとに、回生エネルギーを一時的に蓄え、あるいは放出する。このキャパシタ12を用いることによって、エネルギー使用効率を格段に向上させることができる。
【0028】
充電器37は、充電用外部電源からの交流電力を直流電力に変換し、電源ラインL2を介してバッテリ11を充電する。充電用外部電源は、バッテリフォークリフト1が稼働する工場や倉庫に設置された三相交流200Vの商用電源を用いることができる。充電器37は、充電用外部電源が接続されて充電中であるか否かを検出する充電状態検出部38を有する。充電状態検出部38は、例えば接点スイッチで構成され、商用電源からの図示しない充電ケーブルのプラグが充電器37に差し込まれた際、その接点スイッチが動作し、所定の信号を出力するものを用いることができる。すなわち、充電状態検出部38は、充電中である場合、所定の信号(充電中信号)を出力する。充電中信号は、充電状態検出部38とDC/DCコンバータ33との間を接続する充電検出ラインL6を介してDC/DCコンバータ33に出力される。充電状態検出部38は、接点スイッチに換え、図示しないプラグが充電器37に差し込まれた際に、商用電源から供給された電力によって所定の信号を出力する半導体素子を用いたものでもよい。
【0029】
通信コントローラ21は、キーオン信号検出部21a、充電中信号検出部21b、稼働時間算出部21c、時刻情報生成部を構成する時計21d、及びメモリ21eを有する。時計21dは例えば時計ICにより構成され、時刻を示す情報を常に生成する。また、GPS衛星STから送られる電波には、時刻データが含まれており、その時刻データをGPSアンテナ17aおよびGPSセンサ30を介して通信コントローラ21は受信する。そして、通信コントローラ21のメモリ21eに記憶された図示しない時刻補正プログラムによって、時計ICにより計時した時刻と受信した時刻データとを比較して現在時刻を補正する。時刻補正プログラムは、時刻情報生成部を構成するものであって、通信コントローラ21の内部に存在する、メモリ21eとは異なる記憶装置に記憶されていてもよい。GPS衛星STから受信した時刻データを用いた現在時刻の補正は、時刻補正プログラムに設定された所定の周期で実行される。以下、補正後の現在時刻を時刻情報と称する。なお、時計ICにより得られる現在時刻を補正せずに、そのまま時刻情報として用いてもよい。つまり、時刻情報は、GPS衛星STから送られる電波を利用した補正後の現在時刻やそのような時計ICからえられた現在時刻のいずれかを用いればよい。キーオン信号検出部21aは、制御ラインL4からキーオン信号が入力されているか否かを検出する。充電中信号検出部21bは、充電検出ラインL6を介して充電中信号が入力されているか否かを検出する。稼働時間算出部21cは、後述する稼働時間の算出処理によって稼働時間を算出することができる。稼働時間算出部21cは、キーオン信号が入力され、かつ、充電中信号が入力されていない場合に、バッテリフォークリフト1は稼働中であるとして稼働時間を累積加算する。この累積加算された稼働時間は、メモリ21eに記憶され、更新される。
【0030】
また、通信コントローラ21は、GPSセンサ30から位置情報を取得する。さらに、通信コントローラ21は、定期的あるいは管理サーバ102側からの指示によって、マスタコントローラ22あるいはモニタコントローラ23を介してバッテリフォークリフト1の稼働状態を取得することもできる。そして、通信コントローラは、稼働状態、位置情報、時刻情報、車両IDを含む移動体情報を、送受信器31を介して管理サーバ102側に送信する。この稼働状態の中には、メモリ21eに記憶されている稼働時間が含まれる。上記のように現在時刻を示す時刻情報は、時刻情報生成部が生成することで取得することができる。通信コントローラ21は、図示しない出力部を備えており、出力部は送受信部31に稼働時間を含む稼働状態等の移動体情報を出力する。
【0031】
マスタコントローラ22は、メモリ22eや、荷役インバータ34や走行インバータ35を制御する図示しない動作制御部を有する。メモリ22eは、マスタコントローラ22の動作制御部の動作に必要な制御プログラムなどの各種情報を記憶する。マスタコントローラ22は、充電状態検出部38から充電中信号を受信したら起動し、通信ラインL1を介して通信コントローラ21、モニタコントローラ22、IDキーコントローラ24に起動信号を送信し、各コントローラを起動させる。
【0032】
モニタコントローラ23は、モニタパネル36に接続される。モニタパネル36は、バッテリフォークリフト1の表示部であって、液晶モニタと所定のスイッチとを備えたものやタッチパネルなどであって、各種情報の入力及び表示出力が可能である。なお、モニタパネル36は、液晶モニタのみで構成されるものであって、各種情報の入力は別のスイッチなどで可能とするものであってもよい。モニタパネル36は、各種情報をオペレータに対して表示するものであって、バッテリフォークリフト1が、荷役作業や走行作業を行っている場合は、バッテリ11の充電量をバーグラフ表示したり、走行速度を表示したり、各種エラーの発生状況を表示することができる。また、モニタパネル36は、バッテリフォークリフト1が充電中は、モニタパネル36に充電の進捗を示すグラフィック表示をする。グラフィック表示としては、バーグラフ表示や電池の絵柄を用いて充電量を視覚的に表示することができる。電池の絵柄を用いる場合は、電池の絵柄内の塗りつぶし領域の大きさで充電量の大きさを表現することができる。IDキーコントローラ24は、オペレータのID管理を行う。例えば、管理サーバ102から通信要求があった場合、IDキーコントローラ24に記憶されているオペレータID情報を、通信コントローラ21を介して管理サーバ102に送信したり、キースイッチ32にキーが挿入された場合あるいはモニタパネル36の特殊操作が行われた場合、オペレータがバッテリフォークリフト1の運転を許可された者であるか否かを判定するためにオペレータIDの認証処理を行う。そのキーとしては、IDを記憶した電子チップが組み込まれたIDキーを用いることができる。IDキーコントローラ24が、オペレータIDが正規なものであるとの認証を行った場合、IDキーコントローラ24は、その認証結果を示す信号を通信ラインL1を介してマスタコントローラ22に送信する。その結果、マスタコントローラ22は、DC/DCコンバータ33、荷役インバータ34、走行インバータ35に対して走行や荷役の作業を可能とする制御信号を出力する。なお、IDキーコントローラ24は、本実施の形態では必須なものではない。
【0033】
管理サーバ102は、位置情報データベース(DB)102a、地図情報データベース(DB)102b、ID情報データベース(DB)102c、稼働時間情報データベース(DB)102d、警告部102e、及び表示部102fを有する。位置情報DB102aは、バッテリフォークリフト1から送信されたバッテリフォークリフト1の位置情報を記憶する。地図情報DB102bは、各バッテリフォークリフト1がどの場所で稼働しているのかを表示部102fに示すために必要な地図情報を記憶する。ID情報DB102cは、オペレータID情報を記憶する。ID情報DB102cに、各バッテリフォークリフト1を個別に識別するための車両ID情報を記憶してもよい。稼働時間情報DB102dは、稼働時間の情報を記憶する。警告部102eは、移動体情報に含まれる故障情報をバッテリフォークリフト1から受信し、故障情報の内容に応じて警告レベルを設定しておき、この警告レベルに従って警告を出力する。この警告の出力先は、管理サーバ102の表示部102f、あるいは管理サーバ102に接続される図示しないユーザ端末であってもよい。その警告を示す情報をバッテリフォークリフト1に無線送信しバッテリフォークリフト1側のモニタパネル36の図示しない表示部や図示しないスピーカによる発音装置を用いて出力するようにしてもよい。なお、表示部102fは液晶パネルなどの表示装置で構成される。
【0034】
(稼働時間の算出・送信処理)
次に、
図3に示すフローチャートを参照して、通信コントローラ21による稼働時間の算出・送信処理手順について説明する。なお、稼働時間の算出・送信処理手順を実行するプログラムは、通信コントローラ21のメモリ21eに記憶されている。
図3に示すように、キーオン信号検出部21aは、所定のサンプリング時間で、制御ラインL4介して入力されるキーオン信号を受信したか否かを判断する(ステップS101)。上記の所定のサンプリング時間として、例えば1秒という時間が予め設定されている。キーオン信号が受信されたか否かは、キースイッチ32がアクセサリーの位置にあるとき、アクセサリーの位置にキーがあることを示す信号、例えば24Vの電圧を示す信号がキースイッチ32からDC/DCコンバータ33に出力され、その信号を制御ラインL4を介して通信コントローラ21に送信することで、キーオン信号検出部21aが判断することができる。キーオン信号が受信されていない場合(ステップS101,No)には、この判断処理を繰り返す。
【0035】
キーオン信号が受信された場合(ステップS101,Yes)には、さらに、充電中信号検出部21bが充電検出ラインL6およびDC/DCコンバータ33を介して充電中信号を受信しているか否かを判断する(ステップS102)。充電中信号が受信されている場合(ステップS102,Yes)には、ステップS101に移行する。
【0036】
充電中信号が受信されていない場合(ステップS102,No)には、充電中でない電源オン時間であるため、メモリ21eに記憶されている稼働時間に、上記の所定のサンプリング時間にキーオン信号が受信されている場合、そのサンプリング時間に相当する時間、例えば1秒間を加算する累積演算を行う(ステップS103)。なお、ステップS101〜S103までの処理を次のような処理としてもよい。所定の時間内(例えば10秒間)のサンプリングにおいてキーオン信号が受信されている回数をカウントし、カウントされた回数に上記の所定のサンプリング時間(例えば1秒)を乗算し乗算して得られた時間をメモリ21eに記憶されている稼働時間に加算する累積演算を行ってもよい。その後、メモリ21eに記憶されている稼働時間の更新を行う(ステップS104)。
【0037】
その後、現在時刻が送信タイミングであるか否かを判断する(ステップS105)。送信タイミングは、毎日の定時刻、毎月の定時刻といった定期的時刻、あるいは管理サーバ102側からの送信要求があった時といった不定期的時刻とすることができる。送信タイミングが、毎日の定時刻や毎月の定時刻である場合、それらのタイミングは、通信コントローラ21の図示しない記憶装置あるいはメモリ21eに予め記憶されている。また、それらのタイミングを変更したい場合は、管理サーバ102からの変更指令により変更することが可能である。時刻情報生成部により生成された現在時刻が送信タイミングである場合(ステップS105,Yes)には、稼働時間、時刻情報生成部により計時された送信時刻を示す時刻情報、車両IDを含む稼働時間情報を管理サーバ102に送信する(ステップS106)。一方、送信タイミングでない場合(ステップS105,No)には、ステップS101に移行する。稼働時間情報に、IDキーコントローラ24により認証されたオペレータIDを含めてもよい。
【0038】
なお、通信コントローラ21が更新する稼働時間は、累積時間であることを前提として説明した。この場合、通信コントローラ21が送信する稼働時間は、前回送信時と今回送信時との差分時間であってもよいし、累積時間であってもよい。毎日の定時刻送信の場合を差分時間とし、毎月の定時刻送信の場合を累積時間とすることが好ましい。稼働時間は、キーオン状態であって、かつ、充電中でない時間のみの時間の長さとなる。つまり、稼働時間は、バッテリ11に充電されている時間を除いた時間となる。なお、当然ながら、走行や荷役作業などを行わず、かつ、充電も行われていない時間は稼働時間に含まれない。
【0039】
(第二の実施形態:稼働時間の算出・送信処理の変形例)
上述した実施の形態では、キーオン信号を受信し、かつ、充電中信号を受信していない場合に、直接、稼働中であるとして稼働時間を累積加算していた。これに限らず、この第二の実施形態では、キーオン信号を受信している電源オン時間と、充電中信号を受信している充電時間とをそれぞれ累積加算し、電源オン時間から充電時間を減算した時間を稼働時間として間接的に算出するようにしている。この場合、稼働時間以外に、充電時間を直接、得ることができる。
【0040】
図4は、この発明の第二の実施の形態にかかる通信コントローラ21による稼働時間の算出・送信処理手順を示すフローチャートである。
図4に示すように、キーオン信号検出部21aは、第一の実施の形態と同様な所定のサンプリング時間で、制御ラインL4介して入力されるキーオン信号を受信したか否かを判断する(ステップS201)。キーオン信号が受信されていない場合(ステップS201,No)には、ステップS203に移行する。キーオン信号が受信された場合(ステップS201,Yes)には、この所定のサンプリング時間を、電源オン時間として累積加算して更新する(ステップS202)。
【0041】
その後、充電中信号検出部21bが充電検出ラインL6およびDC/DCコンバータ33を介して、第一の実施の形態と同様な所定のサンプリング時間で充電中信号を受信しているか否かを判断する(ステップS203)。充電中信号が受信されていない場合(ステップS203,No)には、ステップS205に移行する。一方、充電中信号が受信されている場合(ステップS203,Yes)には、充電中であるため、この所定のサンプリング時間を、充電時間として累積加算して更新する(ステップS204)。
【0042】
その後、ステップS205では、メモリ21eに記憶されている電源オン時間から充電時間を減算した稼働時間を累積演算して更新する(ステップS205)。
【0043】
その後、送信タイミングであるか否かを判断する(ステップS206)。送信タイミングは、第一の実施の形態と同様に、毎日の定時刻、毎月の定時刻といった定期的時刻、あるいは管理サーバ102側からの送信要求があった時といった不定期的時刻とすることができる。時刻情報生成部により生成された現在時刻が送信タイミングである場合(ステップS206,Yes)には、稼働時間、充電時間、時刻情報生成部により計時された送信時刻を示す時刻情報、車両IDを含む稼働時間情報を管理サーバ102に送信する(ステップS207)。一方、送信タイミングでない場合(ステップS105,No)には、ステップS201に移行する。稼働時間情報に、IDキーコントローラ24により認証されたオペレータIDを含めてもよい。
【0044】
(第三の実施形態:マスタコントローラによる稼働時間の算出処理の変形例)
この第三の実施形態は、通信コントローラ21に替えて、マスタコントローラ22が稼働時間の算出処理を行うようにしている。
図5は、この発明の第三の実施の形態にかかるバッテリフォークリフト1の稼働管理システム100の全体構成及びバッテリフォークリフト1の電気的構成を示す模式図である。
図5に示すように、第一および第二の実施の形態における、通信コントローラ21に配置されていたキーオン信号検出部21a、充電中信号検出部21b、稼働時間算出部21c、時計21dは、それぞれマスタコントローラ22内に、キーオン信号検出部22a、充電中信号検出部22b、稼働時間算出部22c、時計22dとして配置される。
【0045】
この第三の実施の形態では、マスタコントローラ22が稼働時間を算出し、通信コントローラ21が稼働時間情報を管理サーバ102側に送信するようにしている。すなわち、稼働時間の算出処理と稼働時間の送信処理とを分離させた構成としている。また、マスタコントローラ22は、図示しない出力部を備えており、出力部は、通信コントローラ21あるいはモニタコントローラ23に稼働時間を含む稼働状態といった移動体情報を出力する。このようにすることで、移動体情報を通信部である送受信器31を介して外部に無線通信を使って出力したり、モニタパネル36に移動体情報、例えば稼働時間を表示出力することができる。
【0046】
(管理サーバの管理処理)
管理サーバ102は、上述した精度の高い稼働時間を含む稼働時間情報を得ることができるので、バッテリフォークリフト1の稼働時間管理を精度よく行うことができる。また、エンジンバッテリフォークとの稼働時間の比較を行いたい場合、精度よく行うことができる。ここで、管理サーバ102は、精度の高い稼働時間を示す稼働時間情報と送信時刻を示す時刻情報を得ることができるので、管理サーバ102は、
図6に示すように、稼働時間の履歴管理を行うことができる。
図6の横軸の日時として、例えば一週間単位や一か月単位をとれば、バッテリフォークリフト1が一週間のうちでどの日に多く稼働したのか、あるいは一か月のうちでどの日に多く稼働したのかといったことが遠隔で管理することができる。あるいは、
図6の横軸の日時を一日単位ととれば、バッテリフォークリフト1が一日のうちでどの時間帯に多く稼働したのかといったことが遠隔で管理することができる。バッテリフォークリフト1からは位置情報も送信されるので、どの場所で稼働しているバッテリフォークリフト1がどの程度の稼働時間であるのかについても容易に管理することができる。このように稼働時間の履歴管理及び分析を行うことによって、稼働時間が長い時期あるいは短い時期が顕在化し、稼働時間情報が紐付けされたバッテリフォークリフト1の稼働場所を知ることでさらに詳細な稼働管理ができ、稼働時間の長さに応じた各バッテリフォークリフト1のメンテナンス計画やバッテリフォークリフト1の稼働計画等を効率よく検討することができる。
【0047】
また、管理サーバ102は、車両IDを得ることができるため、同一地域に複数の同一車種が存在しても、各バッテリフォークリフトの稼働時間管理を容易に行うことができる。つまり、例えば特定の倉庫などで稼働する複数のバッテリフォークリフト1を管理する者は、稼働管理システム100を用いてバッテリフォークリフト1の稼働計画を検討することができる。なお、車両IDは、各フォークリフト1に固有の製造番号に相当するものでもよいし、通信コントローラ21の製造番号などでもよい。つまり、各フォークリフトを個別に識別でいるものであればよい。
【0048】
さらに、上述した実施の形態では、通信コントローラ21とマスタコントローラ22とを別のコントローラとしているが、マスタコントローラ22内に通信コントローラを内在させるようにしてもよい。
【0049】
また、稼働時間や充電時間以外に稼働状態に関する情報として各種情報を管理サーバ102側に送信してもよい。例えば、充電が行われるたびにバッテリ11の充電時間や充電電力量を示す情報をバッテリフォークリフト1に備えたセンサなどにより求め、それら情報を含めて管理サーバ102に送信してもよい。
【0050】
さらに、上述した実施の形態では、稼働時間などを管理サーバ102側に送ることを前提としたが、これに限らず、無線通信を用いず、マスタコントローラ22に図示しない出力部を設け、出力部から稼働時間を示す情報をモニタコントローラ23に出力しバッテリフォークリフト1のモニタパネル36上に稼働時間を表示出力するようにしてもよい。この場合、通信コントローラ21あるいはマスタコントローラ22が算出した稼働時間をサービスメータとして表示出力することができる。
【0051】
また、上述した実施の形態では、バッテリ11の他にキャパシタ12を用いることを前提として記載したが、キャパシタ12を用いず、バッテリのみで駆動するものにも適用される。また、上述したようにバッテリフォークリフト1は、産業車両の一例であり、本実施の形態は、産業車両全般に適用することができる。例えば、エンジンを搭載せずにバッテリを動力源として電動機を駆動させ、電動機により油圧ポンプを駆動させて作動油を作業機の油圧シリンダに供給し作業機を動作させるような構成とした電動式建設機械にも適用される。