(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0018】
(実施形態1)
<通信管理システム1の概要>
図1は、実施形態1に係る通信管理システム1が適用される現場を示す図である。通信管理システム1は、作業機械MCと管理装置10との間に介在する移動体通信の通信状態を監視することにより、通信キャリア(電気通信事業者)の異常を判定する。
図1には、作業機械としてダンプトラック2及び油圧ショベル4が例示されているが、本実施形態において、作業機械MCはこれらに限定されない。例えば、作業機械は、ホイールローダ、ブルドーザ、クレーン又はフォークリフト等であってもよい。
【0019】
本実施形態において、作業機械MCは、オペレータの操作によって動作する有人の機械であるが、作業機械MCはこのようなものに限定されない。例えば、作業機械MCは、管理装置10による管理のもと、作業機械MCに備えられた制御システム等によって制御されることにより走行等を行い、かつ管理装置10によって運行が管理されたり、管理装置10を介してオペレータが遠隔操作したりする無人の機械であってもよい。
【0020】
通信管理システム1は、管理装置10を備えている。管理装置10は、例えば、作業機械MCの稼働情報を、携帯電話等の通信網(移動体通信システム)を介して作業機械MCから収集する。管理装置10は、例えば、管理施設3内に設置されている。本実施形態において、管理装置10は、通信装置5を介して通信回線7に接続されている。通信装置5は、アンテナ5Aを備えている。通信回線7には、交換機8が接続されている。交換機8は、基地局6と通信回線7とを接続している。交換機8は、作業機械MCが備える通信装置と管理装置10との間の通信を、通信回線7との間で中継する役割を有している。基地局6は、作業機械MCが備える通信装置から送信される各種情報を受信し、復調して交換機8に送信する。
【0021】
作業機械MCは、移動体通信を行う際、複数の通信キャリアのいずれか一つを選択し、設定する機能を有した制御装置を搭載している。作業機械MCは、自身に搭載される制御装置によって選択されて設定された通信キャリアの情報(以下、適宜通信キャリア情報という)及び前述した制御装置が収集した作業機械MCの稼働情報を、アンテナ2A、4Aから外部に送信する。通信キャリア情報と稼働情報とは、必ずしも同じタイミングに作業機械MCから外部へ送信される必要はない。作業機械MCから送信された情報は、作業機械MCの制御装置が設定した通信キャリアの通信網によって送られる。管理装置10は、作業機械MCの通信装置から送信された、通信キャリア情報及び稼働情報を含む情報を、基地局6、交換機8、通信回線7及び通信装置5を介して取得する。
【0022】
作業機械MCの稼働情報は、作業機械MCの制御装置が生成する。また、稼働情報は管理装置10に送信される。管理装置10が取得する稼働情報は、作業機械MCの稼働状態に関する情報を含み、例えば、作業機械MCの位置に関する情報である位置情報(緯度、経度又は高度の座標)、稼働時間、走行距離、エンジン水温、異常の有無、異常の箇所、異常の種類を示すコード、バッテリ電圧の状態、燃料残量、燃料消費率及び積載量等のうちの少なくとも1つである。稼働情報は、例えば、作業機械MCの予防保全及び故障診断等に用いられる。
【0023】
管理装置10は、作業機械MCに与えられる情報を送信することができる。この場合、管理装置10は、作業機械MCに与えられる情報を、通信装置5を介して通信回線7に送信する。この情報は、管理装置10が設定した通信キャリアの通信網によって送られる。管理装置10から作業機械MCに与えられる情報は、交換機8で変調され、基地局6から電波の形で送信される。基地局6から送信された、作業機械MCに与えられる情報及び通信キャリアに関する情報を含む電波は、作業機械MCのアンテナ2A、4Aが受信する。作業機械MCの通信装置は、アンテナ2A、4Aが受信した電波を元の情報に復調し、作業機械MCの制御装置20に送信する。このように、作業機械MCと管理装置10とは、無線通信によって相互に情報をやり取りすることができる。次に、管理装置10について、より詳細に説明する。
【0024】
<管理装置10>
図2は、通信管理システム1が有する管理装置10を示す図である。管理装置10は、処理装置12と、記憶装置13と、入出力部(I/O)15とを含む。管理装置10は、入出力部15に、出力装置としての表示装置16と、入力装置17と、通信装置5とが接続されている。管理装置10は、例えば、コンピュータである。処理装置12は、例えば、CPU(Central Processing Unit)とメモリとを組み合わせた装置である。記憶装置13は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ若しくはハードディスクドライブ等又はこれらを組み合わせたものである。入出力部15は、処理装置12又は記憶装置13との間で情報の入出力を行う。入出力部15は、管理装置10に接続される表示装置16又は入力装置17、さらには通信装置5との間で情報の入出力を行う。
【0025】
処理装置12は、本実施形態に係る作業機械の管理方法を実行する。処理装置12は、通信状況解析部12Aと、判定部12Bとを含む。通信状況解析部12Aと判定部12Bにて実行される作業機械の管理方法の詳細については後述するが、通信状況解析部12Aと判定部12Bの機能について以下に説明する。通信状況解析部12Aは、作業機械MCの通信部(通信装置)から送信された通信キャリア情報を異なるタイミングで取得し、少なくとも2つの異なるタイミングに含まれる通信キャリア情報を、それぞれのタイミング毎に集計する。例えば、通信状況解析部12Aは、1日に1回、複数の作業機械MCから通信キャリア情報を取得し、複数の日にわたって取得した複数の作業機械MCからの通信キャリア情報を、取得した日毎に集計する。
【0026】
例えば、通信状況解析部12Aは、作業機械MCが利用可能な通信キャリアが、通信キャリア情報の送信のため作業機械MCと通信した回数(通信数)を、通信キャリア毎、かつ作業機械MCからキャリア情報を取得した日毎に集計する。通信数は、通信状況解析部12Aが取得した通信キャリア情報の数(データ送信数)に相当する。対象となる作業機械MCは、1台でも複数台でもよい。対象となる作業機械MCが複数台である場合、複数台の作業機械MCは、異なる種類の作業機械MCであってもよい。また、作業機械MCが利用可能な通信キャリアは単数であってもよいし、複数であってもよい。また、通信状況解析部12Aは、集計後における通信キャリア情報を時間の経過順に配列する処理を実行する。時間の経過順に配列された複数の通信キャリア情報を、適宜時系列データという。
【0027】
本実施形態において、作業機械MCは、通信キャリア情報に加え、自身の位置に関する情報である位置情報も管理装置10に送信することができる。この場合、通信状況解析部12Aは、作業機械MCの通信部(通信装置)から送信された通信キャリア情報及び位置情報を異なるタイミングで取得し、少なくとも2つの異なるタイミングに含まれる通信キャリア情報及び位置情報を、それぞれのタイミング毎に集計する。例えば、通信状況解析部12Aは、1日に1回、複数の作業機械MCから通信キャリア情報及び位置情報を取得し、複数の日にわたって取得した複数の作業機械MCからの通信キャリア情報及び位置情報を、取得した日毎に集計する。
【0028】
判定部12Bは、作業機械MCが利用可能な通信キャリアに異常が発生したことを判定する。判定部12Bは、通信状況解析部12Aが取得した通信キャリア情報の数、すなわちデータ送信数の時間に対する変化及び複数の通信キャリア間における通信キャリア情報の比率の時間に対する変化の少なくとも一つから、通信キャリアの異常を判定する。データ送信数の時間に対する変化としては、例えば、特定の通信キャリアのデータ数が減少したこと又は特定の通信キャリアのデータ数が急激に増加したこと等が挙げられる。
【0029】
記憶装置13は、処理装置12に各種の処理を実行させるための各種のコンピュータプログラムを記憶している。また、記憶装置13は、通信状況解析部12Aが集計した通信キャリア情報を記憶する。
【0030】
表示装置16は、例えば、液晶ディスプレイ等である。入力装置17は、例えば、キーボード、タッチパネル又はマウス等である。次に、作業機械MCについて、より詳細に説明する。
【0031】
<作業機械MC>
図3は、作業機械MCの一例を示す図である。作業機械MCは、制御装置20と、アンテナ24Aが接続された通信装置24と、GPS用アンテナ25Aが接続された位置検出装置25と、作業機26Mを制御する作業機コントローラ26と、エンジン27Eを制御するエンジンコントローラ27と、走行装置28Dを制御する走行コントローラ28とを含む。作業機械MCが油圧ショベル4である場合は、走行コントローラ28は必ずしも必要なものではない。
図3に示す作業機械MCは、作業機26Mを備える。すなわち、作業機械MCは、例えば、油圧ショベル、ホイールローダ、ブルドーザ、クレーン又はフォークリフト等であるが、作業機26Mを備えるものには限定されない。例えば、作業機械MCは、ダンプトラックであってもよい。また、作業機械MCは、動力発生源としてエンジン27Eを備えるが、動力発生源は電動機であってもよい。
【0032】
制御装置20は、処理装置21と、記憶装置22と、入出力部(I/O)23とを含む。制御装置20は、例えば、コンピュータである。制御装置20は、作業機械MCを制御し、かつ稼働情報を収集する。制御装置20は、作業機械MCが利用可能な通信キャリアの通信キャリア情報及び収集した稼働情報を、通信装置24及びアンテナ24Aを介して作業機械MCの外部、より具体的には
図1及び
図2に示す管理装置10に向けて送信する。
【0033】
稼働情報は、例えば、作業機コントローラ26から収集される作業機26Mの状態に関する情報、エンジンコントローラ27から収集されるエンジン27Eの状態に関する情報及び走行コントローラ28から収集される走行装置28Dの状態に関する情報(速度、進行方向等の情報)である。作業機26Mの状態に関する情報、エンジン27Eの状態に関する情報又は走行装置28Dの状態に関する情報は、図示しない圧力センサ、回転センサ及び温度センサといった各種センサから得られた情報を含む。各種センサから得られる情報とは、例えば、エンジンオイルの油圧、エンジン27Eの回転数、エンジン27Eの冷却水の温度又は作動油の温度等があり、これらに限らない。作業機械MCは、エンジン27Eの出力設定及び走行装置28Dの速度設定等を、図示しない操作ボタン等の設定装置により行うことができる。そのような設定状態に関する情報を制御装置20が収集し、稼働情報に含めてもよい。また、位置検出装置25が検出した作業機械MCの位置(緯度、経度又は高度)及び作業機械MCに発生した異常に関する情報も稼働情報に含まれる。作業機械MCに発生した異常に関する情報は、例えば、ある種のエラーコード又は異常の種類若しくは異常の発生時間である。稼働情報は、作業機械MCに発生した異常に関する情報に限らず、稼働時間といった作業機械MCが正常に稼働していることを示す情報を含んでいてもよい。制御装置20は、作業機コントローラ26、エンジンコントローラ27、位置検出装置25、走行コントローラ28及び作業機械MCの各種センサ類から、作業機械MCの位置に関する情報(位置情報)及び作業機械MCの稼働状態に関する情報を収集し、稼働情報を生成する。
【0034】
処理装置21は、例えば、CPUとメモリとを組み合わせた装置である。処理装置21は、キャリア設定部21Aと、通信部21Bとを有する。処理装置21には、SIM(Subscriber Identity Module)カード30が接続されている。SIMカードは、固有のID番号に関する情報又は通信キャリアに関する情報等を記憶するICカードである。SIMカード30には、作業機械MCが通信することができない通信キャリア(通信不許可通信キャリア)に関する情報が予め記憶されている。作業機械MCが通信することができない通信キャリアに関する情報は、一つあるいは複数の情報がSIMカード30に記憶されている。キャリア設定部21Aは、作業機械MCに備えられ、かつ作業機械MCと管理装置10との間の通信サービスを提供する通信キャリアを設定する。作業機械MCが稼働している現場の近くに存在する基地局6から、通信キャリア毎に特有の電波が送信される。複数の通信キャリアが運用されているような現場の場合は、通信キャリア毎の複数の電波が基地局6から送信されている。本実施形態において、キャリア設定部21Aは、通信装置24を介して通信キャリア特有の電波を一つ又は複数取得したら、SIMカード30に記憶されている情報を読み込む。取得された通信キャリア特有の電波から判別される通信キャリアが、SIMカード30に記憶されている通信不許可通信キャリアでなければ、その電波に対応する通信キャリアを、作業機械MCと管理装置10との間の通信サービスを提供する通信キャリアとして設定することになる。そして、キャリア設定部21Aは、設定した通信キャリアがいずれの通信キャリアであるのかを示した情報を通信キャリア情報として生成する。
【0035】
作業機械MCが通信することができる通信キャリア(通信許可通信キャリア)に関する情報が、SIMカード30に予め記憶されていてもよい。作業機械MCが通信することができる通信キャリアに関する情報は、一つ又は複数の情報がSIMカード30に記憶されている。この場合、基地局6から取得された、通信キャリア特有の電波から判別される通信キャリアが、SIMカード30に記憶されている通信許可通信キャリアであれば、その電波に対応する通信キャリアが、作業機械MCと管理装置10との間の通信サービスを提供する通信キャリアとして設定されるようにしてもよい。
【0036】
通信部21Bは、キャリア設定部21Aが生成した通信キャリア情報を、通信装置24から作業機械MCの外部に送信する。この場合、通信部21Bは、キャリア設定部21Aが設定した通信キャリアを用いて、通信キャリア情報を送信する。また、通信部21Bは、設定された通信キャリアを用いて取得した稼働情報も送信することができ、また、必要に応じて位置検出装置25が検出した位置情報も送信する。
【0037】
記憶装置22は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ若しくはハードディスクドライブ等又はこれらを組み合わせて構成されている。記憶装置22は、キャリア設定部21Aが生成した通信キャリア情報、処理装置21が生成した稼働情報及び位置検出装置25が検出した位置情報等を一時的に保存する。また、記憶装置22は、前述したように、管理装置10から送信された、作業機械MCに与えられる情報を保存する。
【0038】
さらに、記憶装置22は、処理装置21が実行する処理の命令が記述されたコンピュータプログラム、稼働情報を収集するための処理の命令が記述されたコンピュータプログラム、作業機械MCを制御するための命令が記述されたコンピュータプログラム及び通信管理システム1を運用するための各種設定値等を記憶している。処理装置21は、前述したコンピュータプログラムを読み出し、対応した処理を実行する。
【0039】
入出力部23には、処理装置21と、制御装置20に接続される通信装置24、位置検出装置25、作業機コントローラ26、エンジンコントローラ27及び走行コントローラ28等の機器類及び各種センサ類が接続されている。入出力部23は、処理装置21と、自身に接続される機器類及びセンサ類との間で情報の入出力を行う。制御装置20と各コントローラとは、例えば、CAN(Controller Area Network)を用いて相互通信可能としている。
【0040】
通信装置24は、制御装置20が作業機械MCの外部と通信する際に用いられる。本実施形態において、通信装置24は、無線通信装置である。通信装置24は、各種のコントローラ及び各種のセンサ、通信端末並びに通信モデムを有する。通信装置24は、アンテナ24Aを介して、
図1に示す基地局6との間で相互に無線通信を行う。アンテナ24Aは、
図1に示すダンプトラック2のアンテナ2Aであってもよいし、油圧ショベル4のアンテナ4Aであってもよいし、これら以外であってもよい。制御装置20は、アンテナ24A及び通信装置24を介して、前述の稼働情報、通信キャリア情報、位置情報及び作業機械MCに与えられる情報を送受信する。
【0041】
位置検出装置25は、作業機械MCに搭載され、かつ作業機械MCの位置を検出し、検出した位置の情報を位置情報として生成する位置検出部である。本実施形態において、位置検出装置25は、GPS用アンテナ25Aを備えている。GPS用アンテナ25Aは、GPS(Global Positioning System)を構成する複数のGPS衛星から出力された電波を受信する。GPS用アンテナ25Aは、受信した電波を位置検出装置25に出力する。位置検出装置25は、GPS用アンテナ25Aが受信した電波を電気信号に変換し、自身の位置情報、すなわち位置検出装置25の位置を算出(測位)することにより、位置検出装置25が搭載された作業機械MCの位置情報を求める。位置情報は、作業機械MCの位置に関する情報であり、緯度、経度又は高度の座標である。位置検出装置25が自身の位置を計測するためには、GPS衛星に限らず他の測位用衛星によるものでもよい。すなわち、GNSS(全地球航法衛星システム:Global Navigation Satellite System)による位置計測ができればよい。次に、作業機械MCが管理装置10に送信する情報について説明する。
【0042】
<作業機械MCが送信する情報>
図4は、作業機械MCが管理装置10に送信する情報の一例を示す図である。本実施形態において、作業機械MCの制御装置20は、所定のタイミングで情報を管理装置10に送信する。作業機械MCから管理装置10に送信される情報を作業機械情報IMとする。前述した稼働情報を含む情報を移動体情報DAとする。本実施形態において、作業機械情報IMは、前述した移動体情報DA、稼働情報ヘッダ部DAhd及びヘッダ部HDを含んでいる。
【0043】
移動体情報DAの先頭には、稼働情報ヘッダ部DAhdが付されている。稼働情報ヘッダ部DAhdは、移動体情報DAがどのような種類の情報であるか、移動体情報DAにはどのような情報が含まれるか等が記述されている。本実施形態において、移動体情報DAは、位置情報IPを含んでいる。
【0044】
作業機械情報IMのヘッダ部HDは、稼働情報ヘッダ部DAhdの先頭に付されている。ヘッダ部HDは、例えば、作業機械MCの識別情報、作業機械情報IMが作成された時刻、作業機械情報IMが送信された時刻、通信キャリア情報、基地局コード、電波強度、国コード及びIPアドレス等を含む。作業機械MCの識別情報は、例えば、通信装置24の電話番号、通信装置24の製造番号又は作業機械MCの製造番号等のように、作業機械MCを個別に識別するような情報であればよい。
【0045】
図5は、ヘッダ部HDの構造の一例を示す図である。ヘッダ部HDは、情報を記憶するための8個の領域B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8を有している。本実施形態において、領域B1には、例えば、作業機械MCの識別情報(作業機械識別情報)IDMが記憶される。領域B2には、このヘッダ部HDが付される作業機械情報IMを送信するときに使用した通信キャリアが、通信キャリア情報IDCとして記憶される。領域B3には、作業機械情報IMが作成された時刻(生成タイミング)TDGが記憶される。領域B4には、作業機械情報IMが送信された時刻(送信時刻)TDLが記憶される。領域B5には、このヘッダ部HDが付される作業機械情報IMが経由する基地局6のコード(基地局コード)BCが記憶される。領域B6には、電波強度RSSIが記憶される。領域B7には、作業機械MCが稼働している国の情報としての国コードDCが記憶される。領域B8には、
図3に示す通信装置24に割り当てられている電話番号NTが記憶される。このように、ヘッダ部HDは、通信キャリア情報IDCを含む。このため、例えば、管理装置10は、ヘッダ部HDを解析すれば、このヘッダ部HDを備える作業機械情報IMが送信されたときに使用された通信キャリアを特定することができる。
【0046】
図6は、管理装置10が生成する通信情報リストの一例を示す図である。管理装置10は、受信した作業機械情報IMのヘッダ部HDに記憶されている情報から、例えば、
図6に示すような通信情報リストDRを作成し、記憶装置13に記憶させる。この通信情報リストDRは、管理装置10の通信状況解析部12Aが作成する。例えば、通信情報リストDRは、作業機械情報IMを取得したタイミング毎に作成される。すなわち、管理装置10は、作業機械情報IMを取得したタイミングに含まれる作業機械情報IMから、通信情報リストDRを作成する。例えば、管理装置10が1日1回、作業機械情報IMを取得する場合、その1日で取得した作業機械情報IMから通信情報リストDRが作成される。なお、管理装置10が、1日に複数回のタイミングで作業機械情報IMを取得できるように作業機械MCの通信装置24等が設定され、複数の作業機械情報IMをもとに通信情報リストDRが作成されるようにしてもよい。あるいは、管理装置10が1日1回、作業機械情報IMを取得する場合、予め設定された期間、例えば一週間分の作業機械情報IMをもとに、通信情報リストDRを作成するようにしてもよい。
【0047】
通信情報リストDRは、管理装置10が作業機械情報IMを取得したタイミング毎に、複数又は単数の作業機械識別情報IDMに対して、位置情報IP、通信キャリア情報IDC、生成タイミングTDG、到達時刻TDR及び到達所要時間ΔTが記述されている。到達時刻TDRは、作業機械情報IMが管理装置10に到達した時刻、すなわち、管理装置10が作業機械情報IMを受信した時刻に相当する。作業機械情報IMは、ヘッダ部HDに通信キャリア情報IDCを含むため、到達時刻TDRは通信キャリア情報IDCが管理装置に取得された時刻でもある。到達所要時間ΔTは、到達時刻TDRと送信時刻TDLとの差分から求められる。
【0048】
この例において、通信情報リストDRは、複数の作業機械識別情報IDM1、IDM2、・・・IDMnに対して、それぞれ対応する位置情報IP、通信キャリア情報IDC、生成タイミングTDG、到達時刻TDR及び到達所要時間ΔTが記述されている。また、通信情報リストDRには、管理装置10が作業機械情報IMを取得したタイミングに応じて複数の情報が記述されている。この例では、y1年m1月のd1日からdj日までの情報が通信情報リストDRに含まれている(jは1以上31以下の整数)。管理装置10にアクセスして通信情報リストDRを見た管理者等は、通信情報リストDRに含まれている通信キャリア情報IDCから、作業機械MCからの作業機械情報IMの通信に使用された通信キャリア及びその数(データ送信数に対応)を把握することができる。このように、管理装置10の通信状況解析部12Aは、作業機械MCの通信部としての通信装置24から送信された通信キャリア情報IDCを異なるタイミングで取得し、少なくとも2つの異なるタイミングに含まれる通信キャリア情報IDCを、それぞれのタイミング毎に集計する。集計は、通信情報リストDRのような形でなくてもよい。また、集計の単位は、日々を最小単位としてもよいし、前述のように予め設定された期間、例えば一週間を最小単位としてもよい。通信キャリア情報IDCは、最小単位としたタイミング毎に集計されるようにしてもよい。
【0049】
さらに、本実施形態において、通信キャリア情報IDCは、少なくとも2つの異なるタイミングに含まれる通信キャリア情報IDCが、それぞれのタイミング毎に集計されていればよく、管理装置10は、集計の対象となる通信キャリア情報IDCを異なるタイミングで取得してもよい。いいかえれば、同一のタイミングで管理装置10が取得した複数の通信キャリア情報IDCのうち、少なくとも2つの異なるタイミングに含まれる通信キャリア情報IDCが集計されているようにしてもよい。位置情報IPも、通信キャリア情報IDCと同様である。
【0050】
図7は、所定の期間に管理装置10が取得した通信キャリア情報IDCを時間の経過順に配列した時系列データの一例を示す図である。
図7には、3種類の通信キャリアの情報が含まれている。それぞれの通信キャリア情報IDCとして、それぞれの通信キャリア名a、b、cを用いる(以下同様)。また、
図7には、n(nは1以上の整数)台の作業機械MCの情報が含まれている。それぞれの作業機械MCは、作業機械識別情報IDM1、IDM2、・・・IDMnで区別される。
図7には、d1日からdj日までの所定の期間に管理装置10が取得した作業機械情報IMに含まれる通信キャリア情報IDCが記述されている。dの後ろに付された数字が小さいほど、過去の情報であることを示す。
【0051】
作業機械識別情報IDM1〜IDMnの作業機械MCは、いずれもd2日までは通信キャリアaを用いて管理装置10に対して作業機械情報IMを送信している。d3日になると、作業機械識別情報IDM1〜IDMnの作業機械MCは、いずれも通信キャリアb又は通信キャリアcを用いて管理装置10に対して作業機械情報IMを送信している。すなわち、d3日は、作業機械MCから管理装置10の通信に、通信キャリアaは用いられていないことが分かる。この結果から、管理装置10の判定部12B又は管理者は、d3日に、通信不可能となる何らかの異常が通信キャリアaに発生したと判定できる。
【0052】
図8は、通信キャリア情報IDCの数Nを日毎に集計して時間の経過順に配列した例を示す図である。
図9は、複数の通信キャリア間における通信キャリア情報IDCの比率NRを日毎に集計して時間の経過順に配列した例を示す図である。
図8及び
図9は、いずれも時系列データの一例である。これらの時系列データは、いずれも管理装置10、より具体的には通信状況解析部12Aが作成する。管理装置10は、時系列データを
図2に示す表示装置16に表示させたり、出力装置としてのプリンタに出力させたりしてもよい。このようにすれば、管理者は、時系列データを視認することができる。なお、時系列データを表示させたり出力させたりするにあたって、通信キャリア情報IDCの集計の単位を、
図8及び
図9に示すような日々を最小単位としなくてもよい。通信キャリア情報IDCは、前述のように予め設定された期間、例えば一週間を最小単位としたタイミング毎に集計されるようにしてもよい。
【0053】
図8の縦軸は、通信キャリア情報IDCの数Nであり、適宜データ送信数Nともいう。
図9の縦軸は、複数の通信キャリア間における通信キャリア情報IDCの比率NRであり、適宜使用率NRという。
図8及び
図9の横軸は、いずれも通信キャリア情報IDCを管理装置10が取得した日である。それぞれの日は、符号dに付される数字で区別する。数字の大きい方が、より新しい情報であることを示している。
図8及び
図9は、d1〜d10までの10日間における通信キャリア情報IDCの集計結果を示している。
【0054】
図8及び
図9に示すように、d2日とd3日とでは、通信キャリア情報IDCの状態が大きく変化していることが分かる。具体的には、
図8からデータ送信数Nの総数がd2日まではNaの近くであったが、d3日には急激に減少していること及びd3日において通信キャリアaのデータ送信数Nが急激に減少し通信キャリアb及び通信キャリアcのデータ送信数Nが増加していることが分かる。
図9からは、d3日において、d2日までと比較して通信キャリアaの使用率NRが低下し、通信キャリアb及び通信キャリアcの使用率NRが増加していることが分かる。この結果から、前述したように、管理装置10の判定部12B又は管理者は、d3日に、通信キャリアaに通信不可能となる何らかの異常が発生したと判定できる。通信キャリアaに異常が発生したため、通信キャリアb及び通信キャリアcの使用率NRが増加している。
【0055】
d3日からd7日までは、d2日までと比較して通信キャリアaの使用率NRが低下し、d4以降は通信キャリアb及び通信キャリアcの使用率NRよりも低い状態が継続している。また、この期間は、d2日までと比較して通信キャリアaのデータ送信数Nも通信キャリアb及び通信キャリアcの通信数Nよりも低い状態が継続している。この結果から、管理装置10の判定部12B又は管理者は、通信キャリアaの異常は、少なくともd7日まで継続していると判定できる。
【0056】
図8から、データ送信数Nの総数は、通信キャリアaに異常が発生していなかったd2日以前はNaに近い総数であったが、d8日になると、急激に増加していることが分かる。また、データ送信数Nの総数の増加の内訳を見ると、通信キャリアaに集中していることが分かる。
図9から、d8日における使用率NRは、通信キャリアaに異常が発生していなかったd2日以前の使用率NRと同程度であることが分かる。d9日以降における使用率NRも、通信キャリアaに異常が発生していなかったd2日以前の使用率NRと同程度であることが分かる。このことから、管理装置10の判定部12B又は管理者は、通信キャリアaの異常は、d8日には解消されたと判定できる。d8日におけるデータ送信数Nの総数の増加は、通信キャリアaに異常が発生していた期間であるd3日からd7日の間に、通信キャリアaのサーバーに蓄積されて管理装置10に未送信であった、通信キャリア情報IDCを含む作業機械情報IMが、d8日にまとめて管理装置10へ送信されたことが原因である。
【0057】
このように、管理装置10の判定部12B又は管理者は、通信キャリア情報IDCの時系列データを用いることにより、通信キャリアa、b、cに異常が発生したこと又は正常な状態であることを判定することができる。このとき、通信状況解析部12Aが取得した通信キャリア情報IDCの数、すなわちデータ送信数Nの時間に対する変化及び複数の通信キャリアa、b、c間における通信キャリア情報の比率である使用率NRの時間に対する変化の少なくとも一つを用いることにより、管理装置10の判定部12B又は管理者は、通信キャリアの異常をより確実に判定することができる。
【0058】
前述した例は、作業機械MC及び通信キャリアが複数であるが、これらの数は問わず、管理装置10の判定部12B又は管理者は、時系列データを用いることによって通信キャリアに異常が発生したことを判定することができる。例えば、作業機械MCが1台であっても、その通信キャリア情報IDCから求めた使用率NRに大きな変化があれば、管理装置10の判定部12B又は管理者は、その時点において使用率NRが低下している通信キャリアに何らかの異常が発生していると判定できる。通信キャリアが単一である場合、これに異常が発生した場合、その通信キャリアを使用している作業機械MCからの通信キャリア情報IDCは得られないことになるので、管理装置10の判定部12B又は管理者は、データ送信数Nの急激な低下から、通信キャリアの異常を判定することができる。
【0059】
図10は、実施形態1に係る通信管理方法の処理例を示すフローチャートである。本実施形態に係る通信管理方法は、通信管理システム1によって実現される。ステップS101において、
図3に示す作業機械MCのキャリア設定部21Aは、通信に使用する通信キャリアを設定し、通信キャリア情報IDCを生成する。ステップS102において、通信部21Bは、通信装置24を介して通信キャリア情報IDCを外部に送信する。本実施形態において、通信キャリア情報IDCは、作業機械情報IMに含まれる形で送信されるが、通信部21Bは、通信キャリア情報IDCのみを単独で送信してもよい。ステップS101及びステップS102は、作業機械MCの制御装置20によって実行される処理である。
【0060】
作業機械MCから送信された通信キャリア情報IDCは、キャリア設定部21Aによって設定された通信キャリアによって管理装置10に送信される。このとき、通信キャリア情報IDCは、設定された通信キャリアのサーバー等を経由して管理装置10に送信される。通信キャリア情報IDCが通信キャリアのサーバーに一時的に保存されれば、その後、設定された通信キャリアに通信の異常が発生しても、所定の期間は前述したサーバーに通信キャリア情報IDCが保存される。サーバーに保存された通信キャリア情報IDCは、通信の異常が回復した後、サーバーから管理装置10に送信される。
【0061】
ステップS103において、管理装置10は、設定された通信キャリアの通信網を介して通信キャリア情報IDCを受信し、取得する。このとき、管理装置10は、予め定められた所定のタイミングで、通信キャリア情報IDCを受信する。本実施形態において、所定のタイミングは1日に1回であるが、これには限定されない。例えば、1日に複数回であってもよいし、数日に1回又は1週間に1回であってもよい。本実施形態において、管理装置10は、異なる所定のタイミングで通信キャリア情報IDCを取得する。
【0062】
ステップS104において、管理装置10は、取得した通信キャリア情報IDCを記憶装置13に保存し、蓄積する。ステップS105において、管理装置10の通信状況解析部12Aは、少なくとも2つの異なるタイミングに含まれる通信キャリア情報IDCを、それぞれのタイミング毎に集計し、必要に応じて時系列データを生成する。この集計及び時系列データを生成する方法は、前述した通りである。管理装置10は、例えば、
図2に示す表示装置16に時系列データを表示させてもよい。また、時系列データを、管理装置10から無線通信で携帯端末装置等であって表示機能を備えたものに転送し、その携帯端末装置等に時系列データを表示させるようにしてもよい。
【0063】
ステップS106において、管理装置10の判定部12Bは、時系列データから、通信キャリアの異常を判定する。この判定の方法は、前述した通りである。ステップS107において、管理装置10は、例えば、
図2に示す表示装置16に判定結果を表示させる。このとき、管理装置10は、異常が発生したことを音声又は表示装置16に表示される画像等によって報知したり、異常が発生した通信キャリアを音声又は画像等によって報知したりしてもよい。このようにすれば、管理者は、通信キャリアの異常を把握しやすくなる。
【0064】
また、本実施形態では、作業機械MCと管理装置10との間に1つの通信キャリアが選択され設定された例を説明したが、本実施形態はこのようなものに限定されない。例えば、作業機械MCが稼働する国と管理装置10が設置されている国とが異なる場合、作業機械MCと管理装置10との間には、作業機械MCが稼働する国と管理装置10が設置されている国の通信キャリアと管理装置10が設置されている国の通信キャリアとの2つが存在する。このような場合、作業機械MCが、自身の稼働する国における通信キャリア情報IDCを管理装置10に送信することにより、管理装置10又は管理者は、作業機械MCが稼働する国における通信キャリアの異常を判定することができる。
【0065】
以上、本実施形態は、作業機械MCからの通信キャリア情報IDCを異なるタイミングで取得し、少なくとも2つの異なるタイミングに含まれる通信キャリア情報IDCを、タイミング毎に集計する。このため、本実施形態は、通信キャリア情報IDCが取得されたタイミング毎に、通信キャリア情報IDCに基づいて得られたデータ送信数N及び使用率NRの少なくとも一方を求めることができる。本実施形態は、少なくとも2つの異なるタイミングにおいて、通信キャリア情報IDCのデータ送信数N及び使用率NRの少なくとも一方が得られるので、これらを比較すれば、通信キャリアの異常、例えば、どの通信キャリアに異常が発生したかを判定し、特定することができる。また、本実施形態は、作業機械から送信される通信キャリア情報IDCを用いることで、通信キャリア情報IDCを取得するタイミングの間隔程度の時間、例えば一日毎の間隔によって通信キャリアの異常を発見できる。このため、本実施形態は、通信キャリアの異常を迅速に発見し、その情報を異常が発生している通信キャリアに通知することで、迅速な復旧を手助けすることもできる。本実施形態の構成は、以下の実施形態においても適宜適用でき、また、省略、置換又は変更も可能である。
【0066】
(実施形態2)
実施形態2は、作業機械MCから送信された通信キャリア情報IDC及び位置情報IPを異なるタイミングで取得し、少なくとも2つの異なるタイミングに含まれる通信キャリア情報IDC及び位置情報IPを、それぞれのタイミング毎に対応付ける。すなわち、実施形態2は、実施形態1と同様の通信管理システム、通信管理方法を用いるが、通信キャリア情報IDCに加え、作業機械MCの位置情報IPを用いる点が異なる。
【0067】
図11は、所定の期間に管理装置10が取得した通信キャリア情報IDC及び位置情報IPを対応付けて時間の経過順に配列した時系列データの一例を示す図である。
図11は、前述した
図7に示した、通信キャリア情報IDCの時系列データに加え、作業機械MCの位置情報IPを含んでいる。位置情報IPは、P1、P2、・・・Pnで表される(nは1以上の整数)。位置情報IPの数は、作業機械情報IMの数と同等である。
図11には、n(nは1以上の整数)台の作業機械MCの情報が含まれているので、d1日、d2日、・・dj日それぞれに含まれる位置情報IP及び通信キャリア情報IDCもn個である。dの後ろに付された数字が小さいほど、過去の情報であることを示す。
【0068】
図12は、位置情報IPを説明するための図である。位置情報IPは、
図3に示す作業機械MCの位置検出装置25が検出した作業機械MCの位置である。経度をX、緯度をY、高度をZとすると、位置情報IPは、これらの座標P(X、Y、Z)で表現することができる。本実施形態では、少なくとも2つの異なるタイミングで取得し、それぞれのタイミングに含まれる通信キャリア情報IDCと位置情報IPとを対応付けて一組の情報とした上で、例えば、少なくとも2つの異なるタイミングにおける一組の情報を比較する。
【0069】
位置情報IPを座標P(X、Y、Z)で表現すると、異なるタイミング間において座標P(X、Y、Z)がわずかでも異なっていれば、作業機械MCの位置は異なると判定する可能性がある。本実施形態では、位置情報IPを元に、異常が発生した地域を特定する。座標P(X、Y、Z)がわずかでも異なっていれば作業機械MCの位置は異なると判定すると、多くの位置情報IPが得られる結果、特定の通信キャリアに異常が発生した地域の特定が煩雑になる可能性がある。また、後述するように、管理装置10が位置情報IPに基づき地図上に通信キャリア情報IDCを表示させる場合、座標P(X、Y、Z)がわずかでも異なっていれば作業機械MCの位置は異なると判定すると、地図上には多くの通信キャリア情報IDCが表示され、視認し難くなる可能性がある。
【0070】
本実施形態において、管理装置10は、例えば、今回取得した位置情報IPが、前回取得した作業機械MCの座標P(X、Y、Z)から所定の半径R内にある場合は、同一の位置であるとして取り扱ってもよい。このようにすると、位置情報IPを適切な数にすることができるので、特定の通信キャリアに異常が発生した地域の特定が容易になる。また、管理装置10が位置情報IPに基づき地図上に通信キャリア情報IDCを表示させる場合、地図上に通信キャリア情報IDCが過剰に表示されることを回避できる。
【0071】
図11に示す時系列データから、作業機械識別情報IDM1〜IDMnの作業機械MCは、いずれもd1日までは通信キャリアaを用いて管理装置10に対して作業機械情報IMを送信していることが分かる。d2日になると、作業機械識別情報IDM1〜IDMnの作業機械MCは、いずれも通信キャリアb又は通信キャリアcを用いて管理装置10に対して作業機械情報IMを送信している。すなわち、d2日は、作業機械MCから管理装置10への作業機械情報IM等の通信のために、通信キャリアaは用いられていないことが分かる。この結果から、管理装置10の判定部12B又は管理者は、d2日に、通信不可能となる何らかの異常が通信キャリアaに発生したと判定できる。
【0072】
本実施形態では、通信キャリア情報IDCと位置情報IPとが対応付けられている。このため、管理装置10の判定部12B又は管理者は、異常が発生している通信キャリアに加え、位置情報IPから異常の発生している地域(位置)を把握することもできる。このため、本実施形態は、通信キャリアの異常及び異常が発生している地域を迅速に発見し、その情報を異常が発生している通信キャリアに通知することで、さらに迅速な復旧を手助けすることもできる。
【0073】
<地図表示>
図13及び
図14は、通信キャリア情報IDCを地
図PD1、PD2上に表示した例を示す図である。
図13は、
図11に示すd1日の状態であり、
図14は、
図11に示すd2日の状態である。すなわち、地
図PD1と地
図PD2とは、時系列データである。地
図PD1、PD2は、例えば、
図2に示す管理装置10によって表示装置16に表示される。地
図PD1、PD2は、表示装置16の同一の画面に並べられて表示されてもよいし、表示装置16の画面が管理装置10又は管理者に切り替えられることによって、異なるタイミングで表示装置16に表示されてもよい。また、地
図PD1、PD2は、プリンタによって紙等の記録媒体に印刷されることによって記録媒体上に表示されてもよい。
【0074】
管理装置10は、作業機械MCから送信された作業機械情報IMに含まれる位置情報IPと対応する地
図PD1、PD2上の位置に、作業機械MCの位置を示すシンボルを示して、表示装置16等に表示させる。管理装置10は、作業機械MCの位置情報IP及び通信キャリア情報IDCに基づき、作業機械MCが使用した通信キャリアa、b、cを、例えば、シンボルの種類によって区別し、表示装置16等に表示させている。すなわち、地
図PD1、PD2上には、通信キャリア情報IDCが表示されることになる。地
図PD1、PD2上に表示されたシンボルは、作業機械MCの位置及びその作業機械MCが使用した通信キャリアを示す。
【0075】
図13及び
図14に示した地
図PD1、PD2に示された実線Lは、地域を区分して示した線(区切り線)である。この地域の区分は、行政区画であってもよいし、独自の管理区域を予め設定し、その設定に応じた地域を表すものであってもよい。あるいは、異なる国が隣接しているような地域では、地
図PD1、PD2に示した実線Lは国境線としてもよい。実線Lで囲まれた地域を、例えば
図13及び
図14に示すように地域A、地域B、地域Cとする。
図13及び
図14に示すように隣接する地域の通信キャリアの状況を管理する場合に限らず、各地域は離れていてもよい。例えば、地域Aは空港建設の現場、地域Bは地域Aから離れた道路工事の現場、地域Cは地域Aと離れているが地域Bに隣接したダム工事の現場、といった独自の管理区域を予め設定してもよい。
【0076】
図13及び
図14から、d1日とd2日との間で、地域Aにおいては、ほとんどの領域でいずれの日も通信キャリアaが使用されている。地域B及び地域Cにおいては、d1日とd2日との間で、使用される通信キャリアが変化している。具体的には、地域B及び地域Cは、d2日はd1日と比較して通信キャリアaの数が減少し、通信キャリアb、cの数が増加している。地域Aは、地域Aと地域B及び地域Cとの境界に近い領域で、d2日において使用される通信キャリアが通信キャリアaから通信キャリアcに変化している。
【0077】
この結果から、管理装置10の判定部12B又は管理者は、d1日とd2日との間に通信キャリアaに異常が発生し、かつ異常が発生した地域は、地域B及び地域C並びに地域Aの領域であって、地域B及び地域Cと隣接する領域であると判定できる。このように、本実施形態は、作業機械MCの位置情報IPと通信キャリア情報IDCとを地図上に表示することにより、管理装置10の判定部12B又は管理者は、いずれの通信キャリアに異常が発生したのか、さらに、その異常がいつ発生したかということ、その異常が発生した地域はどこであるかといった、通信キャリアの異常の有無、異常の発生時期及び異常の発生場所を特定することができる。
【0078】
図15は、実施形態2に係る通信管理方法の処理例を示すフローチャートである。本実施形態に係る通信管理方法は、
図1に示す通信管理システム1によって実現される。ステップS201において、
図3に示す作業機械MCのキャリア設定部21Aは、通信に使用する通信キャリアを設定し、通信キャリア情報IDCを生成する。ステップS202において、通信部21Bは、通信装置24を介して通信キャリア情報IDCとともに、位置検出装置25が検出した作業機械MCの位置を位置情報IPとして送信する。位置情報IPは、例えば、通信キャリア情報IDCの送信時において検出された位置情報IPとすることができる。ステップS201及びステップS202は、作業機械MCの制御装置20によって実行される処理である。
【0079】
ステップS203において、管理装置10は、作業機械MCで設定された通信キャリアの通信網を介して通信キャリア情報IDC及び位置情報IPを作業機械MCから受信し、取得する。このとき、管理装置10は、予め定められた所定のタイミングで、通信キャリア情報IDC及び位置情報IPを受信する。本実施形態において、管理装置10は、異なる所定のタイミングで通信キャリア情報IDC及び位置情報IPを取得する。ステップS204において、管理装置10は、取得した通信キャリア情報IDC及び位置情報を記憶装置13に保存し、蓄積する。
【0080】
ステップS205において、管理装置10の通信状況解析部12Aは、少なくとも2つの異なるタイミングに含まれる通信キャリア情報IDC及び位置情報IPを、それぞれのタイミング毎に対応付ける処理を実行し、必要に応じて時系列データを生成する。異なるタイミング毎に対応付けられた通信キャリア情報IDC及び位置情報IPは、例えば、
図11に示す時系列データのd1日、d2日等のそれぞれにおける、通信キャリア情報IDCと位置情報IPとを有する一組の情報である。
【0081】
ステップS206において、管理装置10は、表示装置16に対して、作業機械MCの位置情報IPに対応する地図上の位置に、位置情報IPに対応付けられた通信キャリア情報IDCを表示させる。本実施形態において、管理装置10の判定部12Bは、例えば、
図11に示す時系列データから、通信キャリアの異常及び異常が発生する地域を判定してもよい。判定の結果、管理装置10は、いずれかの通信キャリアに異常が発生したこと及びその地域を音声又は表示装置16に表示される画像等によって報知したり、異常が発生した通信キャリア及びその地域を音声又は画像等によって報知したりしてもよい。このようにすれば、管理者は、通信キャリアの異常及び異常が発生した地域を把握しやすくなる。また、いずれかの通信キャリアの異常及び異常が発生する地域を管理者に報知する形態として、前述の地図を用いた形態でなく、文字情報として表示装置16に表示させてもよい。例えば、「地域Aにおいて、d2日より通信キャリアaに異常が発生していることが推測される。」といった文字による報知の形態を採ってもよい。
【0082】
以上、本実施形態は、作業機械MCからの通信キャリア情報IDCを異なるタイミングで取得し、少なくとも2つの異なるタイミングに含まれる通信キャリア情報IDC及び位置情報IPを、それぞれのタイミング毎に対応付けて集計する。本実施形態は、少なくとも2つの異なるタイミングにおいて、通信キャリア情報IDC及びこれに対応付けられた位置情報IPが時系列で得られるので、これらを比較すれば、いずれの通信キャリアに異常が発生したのか、その異常がいつ発生したのか、さらにその異常がどの地域で発生したのかを判定し、特定することができる。このため、本実施形態は、通信キャリアの異常及びその発生地域を迅速に発見し、その情報を異常が発生している通信キャリアに通知することで、さらに迅速な復旧を手助けすることもできる。
【0083】
以上、実施形態1及び実施形態2について説明したが、これらで説明した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、本実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
通信管理システム1は、作業機械MCに搭載され、かつ通信サービスを提供する通信キャリアを設定し、設定した通信キャリアの情報を通信キャリア情報として生成する通信キャリア設定部と、作業機械MCに搭載され、かつ通信キャリア情報を作業機械MCの外部に送信する通信部と、通信部から送信された通信キャリア情報を異なるタイミングで取得し、少なくとも2つの異なるタイミングに含まれる通信キャリア情報を、それぞれのタイミング毎に集計する管理装置10と、を含む。