【文献】
今井 昌康、土屋 一洋、丸野 廣大、舛山 葉菜子、舘 真人、森 一晃,“脳血流SPECTにおけるIMP非採血法(IMP−RAMDA)の初期経験”,第73回日本核医学会関東甲信越地方会,日本,日本核医学会関東甲信越地方会,2010年 8月 6日,一般演題3,<URL: http://kkse-nm.kenkyuukai.jp/special/index.asp?id=3390>から閲覧可能,URL,http://kkse-nm.kenkyuukai.jp/images/sys%5Cinformation%5C20110411123045-1688D15BD20E5DB1145004DF6B94138F7C828C63394F14B93E4FB314F5613572.pdf
【文献】
吉岡 隆二,“IMP−Graph Plot法 島根核医学技術研究会での検討(1)”,第47回山陽核医学カンファレンス記録集,日本,山陽核医学カンファレンス,2009年 5月16日,一般演題1,<URL: http://www.sanyokakuigaku.info/kiroku/kiroku.html#n47>から閲覧可能,URL,http://www.sanyokakuigaku.info/kiroku/pdf/47/47_3.pdf
【文献】
矢野 今朝人、宮坂 正、佐藤 誠,“自動化Patlak Plot法の開発と臨床例における検証”,日本放射線技術学会雑誌,日本,日本放射線技術学会 ,2007年 2月,Vol.63,No.2,p.247−256
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
体内に投与された放射性薬剤から放射される放射線量を所定の時間間隔で経時的に計数して得られる計数値であって、脳領域における前記計数値である脳計数値および肺領域における前記計数値である肺計数値を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された前記脳計数値および前記肺計数値の経時変化の度合いを定量的に示す指標値をそれぞれについて算出し、算出された前記指標値を用いた第一演算処理によって、前記脳領域に前記放射性薬剤が到達した時点を示す脳到達時と、前記肺領域に前記放射性薬剤が到達した時点を示す肺到達時と、を推定する推定手段と、
前記推定手段によって推定された前記脳到達時と前記肺到達時との時間差を求め、前記肺計数値と、当該肺計数値が計数された時点から前記時間差が経過した時に計数された前記脳計数値と、を一組として前記脳領域における血流速度を示す変数を有する関係式に代入する第二演算処理を、複数組の前記肺計数値と前記脳計数値のそれぞれについて実行した演算結果に基づいて回帰分析を行うことによって前記血流速度を求めて前記脳領域における脳血流の定量解析を行う解析手段と、を備え、
前記関係式における説明変数は、前記肺計数値に対する、基準時から当該肺計数値が計数される時点までに計数された当該肺計数値に係る前記肺領域における前記放射線量の累計値の比率である第一比率、または当該肺計数値に対する、当該肺計数値が計数された時点から前記時間差が経過した時に計数された前記脳計数値の比率である第二比率のいずれか一方であり、
前記関係式における目的変数は、前記第一比率または前記第二比率の他方であり、
前記説明変数の係数は、前記血流速度を示す変数であり、さらに、
前記解析手段は、前記演算結果から前記第一比率と前記第二比率とからなるデータ列を複数組導出し、導出された複数組の前記データ列から算出される相関係数が最大となる前記データ列の組み合わせを用いて前記血流速度を求める脳血流定量解析装置。
前記指標値は、ある時点で計数された前記脳計数値または前記肺計数値を基準として、当該時点から連続して計数された前記脳計数値または前記肺計数値が変化した割合を示す値である請求項3に記載の脳血流定量解析装置。
前記解析手段は、前記取得手段によって取得された前記肺計数値のうち最大を示す前記肺計数値が計数された時点または当該時点より後に計数された前記肺計数値と、当該肺計数値と一組となる前記脳計数値と、に基づいて得られた前記第一比率および前記第二比率とからなる前記データ列を導出する請求項1から4のいずれか一項に記載の脳血流定量解析装置。
前記解析手段は、前記取得手段によって取得された前記肺計数値のうち最大を示す前記肺計数値が計数された時点または当該時点より後に計数された前記肺計数値に基づいて得られた複数の前記第一比率を値の小さい順番でみて、前記第一比率と組をなす前記第二比率について当該順番の前後で大小判定を繰り返し行い、小さい方の前記第一比率と組をなす前記第二比率が、大きい方の前記第一比率と組をなす前記第二比率より大きいことに基づいて前記データ列を導出する請求項1または5に記載の脳血流定量解析装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0013】
<解析装置10および周辺機器の概要>
図1は、本実施形態における解析装置10および周辺機器示す機能構成図である。ここで周辺機器は、撮像装置20、表示装置30および操作受付部40である。
【0014】
解析装置10が行う定量解析は、IMP−Graph Plot法の理論に基づくものである。ここでIMP−Graph Plot法とは、
123I−IMP(N−Isopropyl−4−[123I]iodoamphetamine:以下、IMPと称す)を放射性薬剤として用いる脳血流の定量解析方法の一つで、Patlak Plot法を応用したものである。また、IMPは代表的な蓄積型トレーサの一つであり、高い脂溶性によって初回循環でその大部分が脳組織に取り込まれる。蓄積型トレーサとしては、IMPの他にPAO(
99mTc−HMPAO)やECD(
99mTc−ECD)等が広く知られている。
ここで脳血流の定量解析とは、脳血流の流動性について定量的に示す数値を算出すること、または当該数値を用いて脳血流の動態を解析することをいう。
【0015】
撮像装置20は、IMPから放射される放射線量を検知し、検知した放射線の数を計数して、計数結果を所定の時間間隔で画像化することにより、体内の各領域におけるIMPの経時的な分布変化を可視化することができる。核医学検査において、撮像装置20が行う撮像方法をダイナミックスキャンといい、このような撮像方法で得られる撮像データをダイナミック画像という。なお、本実施形態における撮像装置20によって得られる撮像データはダイナミック画像に限らず、スタティックに撮像された撮像データ(スタティック画像)が含まれる。
【0016】
本実施形態における解析装置10は、計数値取得部112と、ROI到達時推定部114と、脳血流解析部116と、を備えることを特徴とする。
計数値取得部112は、体内に投与されたIMP(放射性薬剤)から放射される放射線量を所定の時間間隔で経時的に計数して得られる計数値であって、脳領域における計数値である脳計数値および肺領域における計数値である肺計数値を取得する。
ROI到達時推定部114は、計数値取得部112によって取得された脳計数値および肺計数値の経時変化の度合いを定量的に示す指標値をそれぞれについて算出し、算出された指標値を用いた第一演算処理によって、脳領域に放射性薬剤が到達した時点を示す脳到達時T
1と、肺領域に放射性薬剤が到達した時点を示す肺到達時T
2と、を推定する。
脳血流解析部116は、ROI到達時推定部114によって推定された脳到達時T
1と肺到達時T
2との時間差ΔTを求め、肺計数値と、当該肺計数値が計数された時点から時間差ΔTが経過した時に計数された脳計数値と、を脳領域における血流速度を示す変数を有する関係式に代入する第二演算処理に基づいて脳領域における脳血流の定量解析を行う。
なお、解析装置10は、本段落で挙げた機能に限らず他にも種々の機能を有している。解析装置10に内包される各種機能については、後に詳述する。
【0017】
解析装置10は、いわゆるコンピュータ端末であってCPUとメモリとを有する。CPUは、解析装置10に組み込まれたコンピュータプログラムの実行処理を行うハードウェアである。メモリは、CPUが処理すべきデータを一定期間保持するハードウェアである。なお、ここでメモリは、メインメモリやキャッシュメモリ等の記憶装置を含むハードウェアの総称として扱う。解析装置10は、メモリで保持されたデータやプログラムをCPUで実行することにより、種々の機能をソフトウェア処理によって実現することができる。あるいは、解析装置10は、専用の論理回路を用いたハードウェア処理、およびソフトウェア処理およびハードウェア処理の組み合わせによっても実現可能である。
【0018】
表示装置30は、撮像装置20に撮像されたダイナミック画像や、解析装置10によって生成される解析結果等を、解析者が視認可能に表示出力する装置である。
操作受付部40は、解析者による操作を受け付ける手段であり、具体的には、操作ボタン、キーボード、マウス等である。解析装置10は、操作受付部40から受け付けた電気信号に応じて各種制御を実行することができる。
なお、
図1においては表示装置30と操作受付部40とを別々の構成要素であるかのように図示しているが、タッチパネルを用いれば表示装置30と操作受付部40とを一体的に実現することも可能である。
【0019】
なお、本実施形態において解析装置10は一つの装置として説明するが、複数の情報端末がネットワークを介して通信可能に接続しているネットワークシステムとしても本発明は実現可能である。このとき、上記の計数値取得部112(取得手段)、ROI到達時推定部114(推定手段)、脳血流解析部116(解析手段)に相当する機能のそれぞれが、上記複数の情報端末の一または複数に遍在していればよい。
ここでネットワークとは、インターネットやLAN(Local Area Network)等の種々のコンピュータネットワーク又はその組合せで構成することができる。また、各構成要素とネットワークとの通信接続は、有線通信であってもよいし、無線通信であってもよい。
このようなネットワークシステムは、例えば、撮像装置20に相当する装置で撮像されたダイナミック画像をネットワーク上に格納し、当該ネットワークにアクセス可能な別のコンピュータ端末でROI到達時推定部114や脳血流解析部116に相当する処理を実行し、その結果をまたネットワーク上に格納するといったクラウドコンピューティングによるシステム等が考えられる。
【0020】
あるいは、記憶媒体から読み出されてコンピュータによって実行されるプログラムとしても本発明は実現可能である。このとき、当該プログラムは、上記の計数値取得部112(取得手段)、ROI到達時推定部114(推定手段)、脳血流解析部116(解析手段)に相当する処理を当該コンピュータに実行させるためのプログラムである。
ここで記憶媒体とは、磁気ディスクや光学ディスク、フラッシュメモリ等のデータを記憶する装置や部品をいう。
【0021】
<解析装置10による定量解析の基本原理>
ここで、解析装置10による定量解析の基本原理を、以下詳細に説明する。
IMPを投与した直後について、以下の(a)から(d)の前提が成り立つことを仮定することにより、初回循環時にMicrosphereモデルと同じ状態が成り立ち、ダイナミック画像から取得される計数値に基づいて、採血を伴うことなく定量解析が実現できる。
(a)投与されたIMPの脳組織への分布は、初回循環時にほぼ決定される
(b)初回循環脳通過時のIMP動態がMicrosphereモデルに近似できる
(c)再循環での取り込みがほとんどない
(d)いったん脳組織に取り込まれたIMPは比較的長時間脳内に留まる
【0022】
なお、本実施形態の解析装置10による定量解析においては、前段の諸条件を鑑みて、IMPを右腕静脈にボーラス投与する。これは、ダイナミック画像を用いた定量解析においては、被験者に対して一定の速度で薬剤を静注しなくては安定した結果が得られないからである。なお、ボーラス投与とは薬剤を一塊として投与することである。
また、撮像装置20によるダイナミックスキャンが開始した後(数秒後)にIMPの投与を開始する。IMPの投与直後の分布変化を漏れなく計測(計数)するためである。そして、撮像装置20は2分間のダイナミックスキャンを行うものとする。これは、IMPの脳内分布は初回巡回時にほぼ決定されるという前提なので2分間で十分な計数結果が得られるからである。
なお、本実施形態の撮像装置20によるダイナミックスキャンは、1フレームを2秒で撮像することが可能であるため、2分間の測定で60枚のダイナミック画像を撮像することができる。
【0023】
図2は、IMP−Graph Plot法におけるコンポーネントモデルを示す図である。ここで、IMP投与直後において、肺動脈60から肺70への血流量(肺動脈血流量)をC、肺動脈60におけるIMPの血中濃度(肺動脈血中濃度)をCr(t)、肺70におけるIMPの血中濃度(肺血中濃度)をL(t)、肺70を通過後の動脈内濃度をCa(t)、脳90におけるIMPの蓄積放射能量をB(t)、脳90における血流量を示す変数をFと与えたとき、以下の(1)〜(5)の式が成り立つ。
なお、肺70から左室80までの動脈内濃度と、左室80から脳90までの動脈内濃度とは、共にCa(t)で表せるものとする。また、式(1)〜式(5)におけるtは、それぞれの領域(臓器)においてIMPが到達した時点が同時であると仮定したときに、当該時点を基点(ゼロ)とする経過時間を表している。
【0024】
Microsphereモデルに近似するという仮定が前提なので、式(1)に示すように、B(t)はCa(t)の積分値とFとを乗じた値となる。
【数1】
【0025】
Fickの原理から、L(t)はC、Cr(t)、Ca(t)で式(2)として表せる。また、式(2)をCa(t)で整理すると式(3)となる。
【数2】
【数3】
【0026】
式(3)を式(1)に代入すると式(4)に示すようになり、式(4)の左辺と右辺を共にCr(t)で除することによって式(5)が得られる。なお、式(5)におけるY切片であるF・L(t)/C/Cr(t)の変化量は、Fの変化量に比べて十分に小さいため定数とみなすことができる。
【数4】
【数5】
【0027】
式(5)はPatlak Plot法で用いる関数式と原理的に同じであり、Patlak Plot法と同様に、式(5)に複数の計数結果を代入して行う回帰分析により脳血流の血流速度を示す変数Fを求めることができる。
なお、ここまで解析装置10の解析原理であるIMP−Graph Plot法の原理について説明してきたが、これは本発明の実施形態の一例であって、他の定量解析方法への応用も可能であり、本発明による定量分析は必ずしも回帰分析を行うとは限らない。例えば、式(5)におけるY切片(F・L(t)/C/Cr(t))に相当する変数がゼロに等しいと見なせるほど小さい場合、回帰分析を行わずとも、脳血流の血流速度を示す変数(本実施形態における変数F相当)を求めることは可能である。
【0028】
<解析装置10の各種機能の詳細>
入力部102は、撮像装置20からダイナミック画像を含む種々のデータを入力する機能である。入力部102は、撮像装置20から種々のデータを受動的に受け付ける機能であってもよいし、撮像装置20に記憶されている種々のデータを能動的に読み取る機能であってもよい。
【0029】
記憶部104は、解析装置10が処理するデータの一部または全部を記憶する機能であり、具体的には、上述したメモリにおける記憶領域の一部または全部により構成されている。記憶部104が記憶するデータは、入力部102が撮像装置20から入力した種々のデータや脳血流解析部116により格納された解析結果等が含まれる。
【0030】
描画生成部106は、記憶部104から種々のデータを読み出し、読み出されたデータに基づいて表示装置30に表示可能な描画データを生成する機能である。本実施形態の描画生成部106が生成する描画データは主に二つに分けられる。一つは、入力部102から入力されたダイナミック画像である。これは、ROI設定部110によってROIが設定される際(この設定の詳細については、後述するROI設定部110の説明を参照)に、解析者に当該ダイナミック画像を提示するために行われるものである。もう一つは、脳血流解析部116によって得られた解析結果を解析者に提示するために行われるものである。なお、当該解析結果は、グラフや数値、画像等の組み合わせによって描画される。具体的には、
図7や
図8に示すグラフや当該グラフに関する数値、または
図9に示す画像である。
【0031】
図7は、表示装置30に表示されるタイムアクティビティカーブの一例を示す図である。
図7に示すグラフは、縦軸に放射線量の計数値(カウント値)、横軸に撮像開始時を起点とする経過時間をとる。ここでタイムアクティビティカーブとは、計数値取得部112によって取得された計数値の経時的変化を示すものであり、本来は不連続である各々の計数値を曲線でつなげることによって連続的に変化しているように解析者に視認させている。なお、
図7にはタイムアクティビティカーブの他にROI到達時推定部114によって推定された脳到達時T
1および肺到達時T
2も示されている。
図8は、表示装置30に表示される解析グラフの一例を示す図である。具体的には、上述した式(5)における左辺であるB(t)/Cr(t)をY軸値として与え、脳血流の血流速度を示す変数Fの係数である∫Cr(t)dt/Cr(t)をX軸値として与えてプロットしたグラフを示したものである。
図8のグラフは、縦軸にY軸値、横軸にX軸値をとる。
図9は、表示装置30に表示される解析画像の一例を示す図である。具体的には、撮像装置20により撮像されたスタティック画像を脳血流解析部116による解析結果に基づいて再構成し、脳内の各領域における血流分布を解析者に視認しやすいようにマッピングしたものである。
図7〜
図9に示した図の詳細については、以下において適宜説明する。
【0032】
出力部108は、描画生成部106によって生成された描画データを表示装置30で表示可能に出力する機能である。出力部108は、表示装置30から指令を受け付け、当該指令に応じて描画データを出力する受動的機能であってもよいし、表示装置30を制御して描画データを表示させる能動的機能であってもよい。
【0033】
ROI設定部110は、記憶部104に記憶されているダイナミック画像のいずれかを選択し、当該ダイナミック画像内の一部領域をROIとして設定する機能である。ここでROIとは、画像を用いた解析手法において、観察(測定)する対象となる一部領域のことをいう。なお、ROIはRegion of Interestの略であり、関心領域または対象領域等とも呼ばれる。
本実施形態において、ROI設定部110は、記憶部104から選択したダイナミック画像を表示装置30に表示させ、解析者は当該ダイナミック画像を見ながら操作受付部40を操作し、操作受付部40によって受け付けられ操作に応じてROIを設定する態様で以下説明する。なお、この態様は一例であって、ROI設定部110はダイナミック画像を画像処理することによって自動的にROI設定する機能を有してもよい。
【0034】
図3に、ROI設定の際に、表示装置30に表示されるダイナミック画像の一例を示す。
ここで、
図3の上部に図示される枠部31は頭部に設定されたROIである。より具体的には、頭部の撮像時に眉毛が生えている領域の近傍に設定され、脳中央から底部付近の最も幅の広い部分に設定されるROIであり、
図2に示したコンポーネントモデルにおける脳90に対応する領域である。以下の説明において脳領域とは、この眉毛近傍に設定されるROIのことをいう。
また、
図3の下部に図示される枠部32は胸部に設定されたROIである。より具体的には、胸部の撮像時に第4から第5肋間に設定され、左右の分岐部直下の肺動脈幹内に設定されるROIであり、
図2に示したコンポーネントモデルにおける肺動脈60に対応する領域である。以下の説明において肺領域とは、この肺動脈近傍に設定されるROIのことをいう。
【0035】
計数値取得部112は、脳領域における計数値である脳計数値および肺領域における計数値である肺計数値を取得する。
ここで計数値とは、放射線量を示す定量的な数値をいい、具体的には撮像装置20に内蔵している検出器(シンチレータ)によって検知された放射線の数である。本実施形態の計数値取得部112は、撮像装置20が撮像したダイナミック画像に対して設定されたROIにおいて検知された放射線の数を読み取ることによって計数値を取得する。この態様は一例であって、計数値を取得する手段としては、例えば、本実施形態の撮像装置20のようにダイナミック画像を撮像できる装置であって自律的に所定の領域について計数値を取得する手段であってもよい。あるいは、ネットワークを介して他装置が取得した計数値を受信することによって計数値を取得する手段であってもよい。
【0036】
ROI到達時推定部114は、計数値取得部112によって取得された脳計数値および肺計数値の経時変化の度合いを定量的に示す指標値をそれぞれについて算出する。
また、ROI到達時推定部114は、算出された指標値を用いた第一演算処理によって、脳領域に放射性薬剤が到達した時点を示す脳到達時T
1と、肺領域に放射性薬剤が到達した時点を示す肺到達時T
2と、を推定する。
【0037】
ここで推定するとは、一定の事実を用いて推し量って決定することをいう。本実施形態における解析装置10は非採血による定量解析を行う装置であり、直接的に血流内のIMPを観測しているわけではなく、体外に放射された放射線量の計数値からその分布を間接的に把握している。本実施形態におけるROI到達時推定部114は、間接的に把握されているIMPの分布(各ROIにおける計数値)に基づいて脳到達時T
1や肺到達時T
2を推定するものである。
【0038】
なお、ROI到達時推定部114は、計数値取得部112によって取得された肺計数値が計数された時点のいずれか一つを肺到達時T
2として推定する。実際は肺動脈の中でIMPの分布は連続的に変化しているが、計数値は時系列的に離散して計数されており、計数された時点を基準として肺計数値の経時変化を解析する方がより的確だからである。
また、ROI到達時推定部114は、計数値取得部112によって取得された肺計数値のうち最大を示す肺計数値が計数された時点より後であって、当該時点から予め定められた時間内に収まる時点を脳到達時T
1として推定する。具体的には、脳到達時T
1として推定する時点を、肺計数値の最大値を示す時を基準とする所定時間内のいずれかに限定する。これは、人間の血行動態を考慮した場合、肺計数値が最大を示す時に脳血管にIMPが存在せず、また、その後6秒以上かつ20秒以下でIMPが脳に到達する事例がほとんどであり、それを超えることは稀だからである。すなわち、上記所定時間は6秒以上かつ20秒以下に設定されることが好ましい。なお、ここで下限値である6秒は、
図2に示すコンポーネントモデルにおいてIMPが肺動脈60から左室80まで流動する時間より長く、肺動脈60から脳90まで流動する時間より短いと推定される時間である。また、上限値である20秒は、IMPが肺動脈60から脳90まで流動する時間より長く、IMPが肺動脈60に到達してから脳90の全領域に循環するまでに要する時間より短いと推定される時間である。
【0039】
ここで経時変化の度合いを定量的に示す指標値とは、具体的には(Frame[n+1]−Frame[n])/Frame[n]で与えられる値である。このとき、ROI到達時推定部114は、複数の時点について指標値を算出し、算出された複数の指標値のうち最大を示す指標値の元となった脳計数値または肺計数値が計数された時点を脳到達時T
1または肺到達時T
2として推定することができる。
ここで、Frame[n]とは、n番目に撮影されたダイナミック画像における計数値を意味しており、換言すれば撮像開始から2n秒経過した時点における計数値といえる。また、ここでnとは、ダイナミック画像におけるフレーム数を意味しており、1フレーム=2秒であるからnは時間に依存している変数ともいえる。
【0040】
(Frame[n+1]−Frame[n])/Frame[n]を換言すれば、当該指標値は、ある時点で計数された脳計数値または肺計数値を基準として、当該時点から連続して計数された脳計数値または肺計数値が変化した割合を示す値(変化率)といえる。
なお、ここで連続して計数された計数値とは、当該時点を起点とする複数の連続した時点における計数値のそれぞれを用いて算出される変化率であれば足りる。従って、本実施形態においては基準となる時点(n番目)の計数値と、その1フレーム後(n+1番目)の計数値と、連続して計数された2つの計数値によって変化率を計算する態様としているが、連続して計数された3つ以上の計数値を用いて変化率を計算する態様であってもよい。
また、(Frame[n+1]−Frame[n])/Frame[n]は、n番目のフレームにおける計数値とn+1番目のフレームにおける計数値の差分に注目して算出される変化率である。この式は(Frame[n+1]/Frame[n]−1)と同じ値を示すことは明らかであり、n番目のフレームにおける計数値に対するn+1番目のフレームにおける計数値の比率と同義とみてよい。
【0041】
IMP−Graph法の前提に立てば、IMPの投与前に体内から検知される放射線量は極めて微量である。また、IMPの投与はボーラス投与であるので、IMP投与後において最初に計数値が急増し始めた時点(タイムアクティビティカーブの立ち上がり時点)が肺到達時T
2または脳到達時T
1と考えられる。この考えと
図7に示すグラフに基づいて、ROI到達時推定部114による推定処理について以下に説明する。
【0042】
図7に示すグラフにおいて、撮像開始(0sec)から急峻に上昇し、22secをピークとして徐々に減少する曲線Aが肺計数値の変化を示すタイムアクティビティカーブである。また、曲線Aと比べてなだらかに上昇し、撮像時間内(120sec)において上昇を続ける曲線Bが脳計数値の変化を示すタイムアクティビティカーブである。また、破線で示す曲線B
1は、式(1)〜(5)におけるtの仮定を鑑みて、曲線Aで表される肺計数値から推定される肺到達時T
2と、曲線Bで表される脳計数値から推定される脳到達時T
1と、を同じ時点とみなしたタイムアクティビティカーブである。具体的には、脳到達時T
1(
図7においては「Brain」と示される34sec時点)と肺到達時T
2(
図7においては「PA」と示される14sec時点)の時間差ΔTだけ曲線Bを時間軸補正したものである。換言すれば、曲線B
1は、曲線Bにおける脳到達時T
1を曲線Aにおける肺到達時T
2に時間補正して合わせたものである。
【0043】
図7の曲線Aおよび曲線B(または曲線B
1)を一見すると、経時変化の度合いを定量的に示す指標値として計数値の変化量(例えばFrame[n+1]−Frame[n])を用いて推定することも可能であるように思える。しかし、変化量に着目する推定では、IMP投与して初回循環した後の時点における計数値変化に着目し、当該時点を肺到達時T
2または脳到達時T
1として推定するエラーが生じうる。逆に言えば、変化率に着目する推定はIMP投与直後の初期段階に一定の優位性を与えており、初期段階の計数時点を脳到達時T
1または肺到達時T
2として推定しやすい方法といえ、よりIMP−Graph Plot法の原理を前提とする本実施形態の解析装置10に適した方法といえる。
【0044】
あるいは、前段で述べたようにIMP投与直後の初期段階に一定の優位性を与えるのであれば、当該指標値は、ある時点で計数された脳計数値または肺計数値を、計数結果の範囲内において時間経過に依存して増大傾向にある変数で除した値であれば上記変化率でなくてもよいように思える(例えば(Frame[n+1]−Frame[n])/n)。また、このように当該指標値を与えるのであれば、ROI到達時推定部114は、複数の時点について指標値を算出し、算出された複数の指標値のうち最大を示す指標値の元となった脳計数値または肺計数値が計数された時点を脳到達時T
1または肺到達時T
2として推定することができるという点で、本実施形態の態様と共通となりうる。
しかし、(Frame[n+1]−Frame[n])/nとして与えた指標値を用いた場合、開始時点(n=0)において当該指標値は無限大となるため、開始時点で発散しないようにマスク処理を行う等の工夫が別途必要となる。従って、IMP投与後において最初に計数値が急増し始めた時点を推定する方法の指標値として最適とはいいがたい。
ここで増大傾向とは、取得されたダイナミック画像が撮像された時間(120sec)の間において、時間経過(フレーム数nの増大)と共に概ね増大していることをいう。従って、増大傾向にある変数とは、必ずしも全時間帯において増大している変数に限らず、一部の時間帯において減少している変数であっても構わない。
【0045】
以上のことを総合的に勘案すると、本実施形態のように変化率を指標値として与えて脳到達時T
1および肺到達時T
2を推定する方法が最も本実施形態の解析装置10が行う定量解析に適しているといえる。
【0046】
また、(Frame[n+1]−Frame[n])/Frame[n]として与えられる指標値(変化率)は、分子も分母もフレーム数n(時間)に依存する変数であるため、タイムアクティビティカーブの目視によっては感得しがたい。従って、当該指標値に注目して定量解析を行う場合、解析装置10(コンピュータ)の判断が解析者(人間)の判断より高い精度となりうる。
【0047】
脳血流解析部116は、ROI到達時推定部114によって推定された脳到達時T
1と肺到達時T
2との時間差ΔT(=T
1−T
2)を求め、肺計数値と、当該肺計数値が計数された時点から時間差ΔTが経過した時に計数された脳計数値と、を一組とし、複数組の肺計数値と脳計数値のそれぞれについて第二演算処理を実行する。また、脳血流解析部116は第二演算処理を実行した演算結果に基づいて回帰分析を行うことによって血流速度を求める。
ここで肺計数値と脳計数値とを一組として第二演算処理を実行するとは、一の肺計数値と一の脳計数値とを同一回の第二演算処理によって処理することをいう。従って、肺計数値と脳計数値とを一組とする処理にあたって、これらを同一テーブルに格納する、または、これらを特定のキーで関係付ける等の対応付けを必ずしも与えなくてよい。
【0048】
ここで、第二演算処理に用いる関係式における説明変数および目的変数は、式(5)で示したように、肺計数値に対する、基準時から当該肺計数値が計数される時点までに計数された当該肺計数値に係る肺領域における放射線量の累計値の比率である第一比率(∫Cr(t)dt/Cr(t))と、当該肺計数値に対する、当該肺計数値が計数された時点から時間差ΔTが経過した時に計数された脳計数値の比率である第二比率(B(t)/Cr(t))である。また、説明変数の係数は血流速度を示す変数Fである。
なお、本実施形態における第一比率の基準時とは、ROI到達時推定部114によって推定された肺到達時T
2として演算する。
また、本実施形態においては説明変数が第一比率であり、目的変数が第二比率である。ただし、説明変数が第二比率であり、目的変数が第一比率として回帰分析する態様も考えられうる。この場合、説明変数の係数は本実施形態における変数Fの逆数に相当する変数となる。
【0049】
脳血流解析部116は、演算結果から第一比率と第二比率とからなるデータ列を複数組導出し、導出された複数組のデータ列から算出される相関係数が最大となるデータ列の組み合わせを用いて血流速度を求める。すなわち、脳血流解析部116は、第二演算処理によって得られるデータ列の全てを用いて定量解析を行うことを必ずしも要しない。
Microsphere法やこれに近似する定量解析法は、いずれも簡易なコンポーネントモデルに基づく近似計算により脳内血流を定量解析しているため、実際には存在しているが当該近似計算においては無視すべきデータ列が不可避に存在する。解析精度を上げるためには、無視するデータ列と解析に用いるデータ列とを適切に取捨選択することが不可欠であるが、従来手法においては解析者の恣意的判断に依存するところが大きかった。従って、解析者の熟練度や能力に応じて、必ずしも適切な取捨選択がなされない虞があり、解析者によって解析結果が不均等となる原因の一つとなっていた。
本実施形態における解析装置10は、一定の基準に基づくコンピュータ処理によって解析に使用するデータ列を取捨選択するので、解析者の恣意的判断を排することができる。以下、解析装置10(脳血流解析部116)によるデータ列の取捨選択の原理について
図8のグラフを用いて説明する。
【0050】
図8は、上述したように、式(5)における左辺であるB(t)/Cr(t)をY軸値として与え、脳血流の血流速度を示す変数Fの係数である∫Cr(t)dt/Cr(t)をX軸値として与えてプロットしたグラフである。換言すれば、
図8は、前段で説明した第二演算処理を複数組の肺計数値と脳計数値のそれぞれについて実行した演算結果をそれぞれプロットしたグラフであり、当該プロットが第一比率と第二比率とからなるデータ列に相当する。
脳血流解析部116は、これらのプロットのうち所定の範囲に収まるX軸値を有するプロットを導出し、導出されたプロットから算出される相関係数が最大となるデータ列の組み合わせを選択し、選択されたデータ列の組み合わせから最小二乗法によって説明変数(第一比率)の係数として与えられる変数Fを算出する。上述したように変数Fは脳領域における血流速度を示しており、変数Fを算出することによって脳領域における血流速度を求めることができる。ここで変数Fは、
図8における直線88の傾きに相当している。なお、直線88の左端と右端におけるX軸値の範囲が本段落で説明した所定の範囲である。以下の説明においては、直線88の左端を解析開始点と呼称し、直線88の右端を解析終了点と呼称する。
図8の上段に示される「START」とは解析開始点を、「END」とは解析終了点を、それぞれ示すものである。
【0051】
図8においてX軸値が0であるプロット81は、肺到達時T
2において計数された肺計数値と、脳到達時T
1において計数された脳計数値と、を一組として第二演算処理を実行した演算結果をプロットしたものである。また、
図8においてY軸値が最小を示すプロット82は、計数値取得部112によって取得された肺計数値のうち最大を示す肺計数値と、当該肺計数値が計数された時点(
図7における22sec)から時間差ΔTだけ経過した時点において計数された脳計数値と、を一組として第二演算処理を実行した演算結果をプロットしたものである。ここで図示されているようにプロット81からプロット82に至る区間においてY軸値は減少傾向にある。仮にプロット81からプロット82に至る区間に含まれるデータ列から回帰分析(最小二乗法)によって変数Fを求めた場合、変数Fは負の値となる。これは脳領域における血流速度が負の値となることを意味しており、不適切な値であることは明らかである。
【0052】
ここで示した例のように多くの症例において、肺到達時T
2から肺計数値が最大となる時点の間におけるY軸値が減少傾向となる。従って、脳血流解析部116は、計数値取得部112によって取得された肺計数値のうち最大を示す肺計数値が計数された時点または当該時点より後に計数された肺計数値と、当該肺計数値と一組となる脳計数値と、に基づいて得られた第一比率および第二比率とからなるデータ列を導出することが好ましい。
なお、本実施形態の脳血流解析部116は、肺計数値が最大であるプロット82より二つ右の(4sec後に計数された)プロット84を解析開始点としている。これは、発明者によって行われた解析結果によれば、肺計数値が最大となるプロット82やその一つ右の(2sec後に計数された)プロット83を解析開始点として解析した場合と比して良好な解析結果が得られたことに基づくものである。
【0053】
また、脳血流解析部116は、計数値取得部112によって取得された肺計数値のうち最大を示す肺計数値が計数された時点または当該時点より後に計数された肺計数値に基づいて得られた複数の第一比率を値の小さい順番でみて、第一比率と組をなす第二比率について当該順番の前後で大小判定を繰り返し行い、小さい方の第一比率と組をなす第二比率が、大きい方の第一比率と組をなす第二比率より大きいことに基づいてデータ列を導出する。これを換言すれば、脳血流解析部116は、
図8においてY軸値が最小であるプロット82以後についてY軸値の上昇を持続している区間(右肩上がりの区間)を判定する。なお、本実施形態の脳血流解析部116は、解析開始点として定められたプロット84以後について、上記大小判定を行うものとする。
そして、最初にY軸値が下降する区間、
図8においてはプロット86とプロット87の区間が大小判定により検知され、プロット86が脳血流解析部116により導出される最終点として決定される。
【0054】
以上に説明したように、本実施形態の脳血流解析部116は、前段で説明した処理によって決定されたプロット84(解析開始点)と、本段で説明した大小判定により決定されたプロット86と、の間の区間におけるデータ列を導出する態様をとる。上述した変数Fの算出方法においては、右肩上がりの区間におけるデータ列を用いて変数Fを算出する方法が妥当だからである。
【0055】
脳血流解析部116は、導出されたデータ列のうちプロット84を起点とする連続点を用いて相関係数が最大となるデータ列の組み合わせを求める。本実施形態においてはプロット84からプロット85の区間を選択したとき相関係数が最大であり、プロット85を解析終了点とする。すなわち、本実施形態における回帰分析の範囲はプロット84とプロット85との区間に含まれるデータ列であり、これらから最小二乗法によって変数Fを求める。
【0056】
このようにして求められた変数Fは設定されたROIの大きさに依存しているため、脳血流解析部116は、変数Fを単位面積あたりの数値に換算して規格化(SFR:Standardized F by ROI)する。また、脳血流解析部116は、他の定量解析方法で算出されている平均脳血流量(mCBF:mean Cerebral Blood Flow)とSFRの相関式からmCBFを算出する。そして、脳血流解析部116は、求められた変数F、SFRおよびmCBFを解析結果として記憶部104に格納する。
なお、脳血流解析部116が解析結果として得るものは、ここに列挙するものに限らなくてもよく、変数Fから統計的に換算可能な種々の定量値を含みうる。この種々の定量値には、例えば、脳血管における異常(血栓等)の位置や異常度合いを示す定量値等が挙げられる。
【0057】
<解析装置10による定量解析のフロー>
以下、
図4〜
図6を用いて、解析装置10による定量解析のフローについて説明する。
図4は、解析装置10によって行われる全体処理のフローチャートである。
図5は、ROI到達時推定部114に関する処理の詳細を示すフローチャートである。
図6は、脳血流解析部116に関する処理の詳細を示すフローチャートである。
【0058】
まず、
図4を用いて解析装置10によって行われる全体処理のフローについて説明する。描画生成部106は、記憶部104に格納されているダイナミック画像(
図3参照)を、出力部108を介して表示装置30に表示させる(ステップS101)。解析装置10を操作する解析者は、当該ダイナミック画像を見ながら頭部および胸部にROI(脳領域および肺領域)を設定する(ステップS102)。
【0059】
計数値取得部112は、ステップS102にて設定された脳領域および肺領域のそれぞれにおける放射線量の計数値(脳計数値および肺計数値)を取得する(ステップS103)。ROI到達時推定部114は、ステップS103にて取得された脳計数値および肺計数値のそれぞれについて変化率((Frame[n+1]−Frame[n])/Frame[n])を算出する。そして、ROI到達時推定部114は、算出された変化率のうち最大を示す変化率の元となった脳計数値または肺計数値が計数されたフレームが撮像された時点を脳到達時T
1または肺到達時T
2として推定する(ステップS104)。
【0060】
脳血流解析部116は、時間差ΔT(=T
1−T
2)を求め、S103にて取得された脳計数値と肺計数値とのうち、ある時点で計数された肺計数値および当該肺計数値より時間差ΔTの後に計数された脳計数値とを一組として式(5)の関係式に代入する第二演算処理を複数組について実行し、演算結果を得る。また、脳血流解析部116は当該演算結果から変数F、SFRおよびmCBFを算出する(ステップS105)。
【0061】
描画生成部106は、ROI到達時推定部114の推定結果から脳計数値および肺計数値のタイムアクティビティカーブを示すグラフ(
図7に相当するグラフ)を描画する。また、描画生成部106は、脳血流解析部116による第二演算処理の演算結果と、算出された変数Fに基づいて、(X,Y)=(∫Cr(t)dt/Cr(t),B(t)/Cr(t))として与えられるデータ列をプロットしたグラフ(
図8に相当するグラフ)を描画する。さらに、描画生成部106は、記憶部104に格納されている脳のスタティック画像を、脳血流解析部116によって算出されたmCBFに基づいて再構成して脳内の各領域における血流分布をマッピングした画像(
図9に相当する画像)を描画する(ステップS106)。
より詳細に言えば、スタティック画像は、撮像装置20がダイナミック画像を撮像した後に、頭部を輪切りにした状態で図示されるSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)画像である。SPECT画像にはIMP濃度の高低(放射線量の計数値の大小)が色彩で示され、
図9では濃淡でIMP濃度の高低を示している。
図9に示す事例に則していえば、右下部91が
図9のスタティック画像において最も濃く表示されている脳領域である。
図9はモノクロであるが、カラー画像を用いればより詳細にIMP濃度の高低を図示することも可能である。また、mCBFは脳全域における脳血流の平均血流速度である。従って、これらに基づいて脳内の断片領域における血流速度を解析者に提示することが可能である。
【0062】
さらに、描画生成部106は、ステップS106にて生成した描画や生成に用いた各種数値(パラメータ)を、出力部108を介して表示装置30に表示させる(ステップS107)。
なお、
図4において、
図7・
図8に相当するグラフおよび
図9に相当する画像を表示出力する処理を一つのステップとして図示するが、描画生成部106はこれらの描画を時系列的に分散して処理できるので、異なるタイミングあるいは異なる画面領域に表示することも可能である。
また、本実施形態においては、
図7・
図8に相当するグラフおよび
図9に相当する画像を表示出力するように説明したが、これは解析装置10の原理説明のために便宜的に示したものに過ぎない。本実施形態の解析装置10はステップS102の処理については解析者の判断を用いているが、他の処理は機械的に処理可能である。従って、必ずしも解析者が視認可能に
図7・
図8に相当するグラフおよび
図9に相当する画像の全てを図示する必要はなく、これらの一部または全部を表示出力しない態様により解析装置10が実現されてもよい。
【0063】
続いて、
図5を用いてステップS104の処理の詳細を説明する。ROI到達時推定部114は、n=1を与え(ステップS201)、1番目のフレームから計数される計数値と2番目のフレームから計数される計数値から変化率((Frame[2]−Frame[1])/Frame[1])を算出する(ステップS202)。
【0064】
さらに、ROI到達時推定部114はn=n+1を与え、n=2となる(ステップS203)。そして、n=60であるか否か(計数値取得部112によって取得されたダイナミック画像の最終フレーム60番目に達したか否か)の判断をするがn=2であって否定される(ステップS204のNo)ので、n=2としてステップS202の処理に移行する。
上記のステップS202〜ステップS204の処理をn=60に達するまで繰り返し実行し、n=60となったとき(ステップS204のYes)、ステップS205に移行する。
【0065】
ROI到達時推定部114は、n=2,max=1を与える(ステップS205)。ここでmaxとは、その処理時点で最大の変化率に与えられるnの値である。
そして、ROI到達時推定部114は、n=1(max)のときの変化率(Δ(1))とn=2のときの変化率(Δ(2))の大小判定をし、Δ(2)が大きいとき(ステップS206のYES)はmaxに2を与えて(ステップS207)からステップS208に移行し、Δ(1)が大きいとき(ステップS206のNO)はそのままステップS208に移行する。
【0066】
さらに、ROI到達時推定部114はn=n+1を与え、n=3となる(ステップS208)。そして、n=60であるか否かの判断をするがn=3であって否定される(ステップS209のNo)ので、n=3としてステップS206の判定処理に移行する。
上記のステップS206〜ステップS209の処理をn=60に達するまで繰り返し実行し、n=60となったとき(ステップS209のYes)、max番目のフレームが撮像された時点を到達時として推定する(ステップS210)。
【0067】
続いて、
図6を用いてステップS105の処理の詳細を説明する。脳血流解析部116は、最大の肺計数値と当該肺計数値と一組となる脳計数値に基づいて計数されたプロット(
図8におけるプロット82)より二つ右のプロット(
図8におけるプロット84)を解析開始点と決定する(ステップS301)。
【0068】
次に、脳血流解析部116は、m=3を与える(ステップS302)。ここでmとは、ステップS301で決定した解析開始点を起点として第一比率(∫Cr(t)dt/Cr(t))の小さい順番でみてm番目のデータ列であることである。すなわち、
図8のグラフにおいてX軸値が小さい順番において解析開始点から数えてm番目のプロットであることを意味している。
なお、mの初期値として3を与えるのは、回帰分析には少なくとも3点以上のプロットを要するからである。mに与える初期値を変更することによって回帰分析に用いるプロットの下限を4点以上とすることも可能である。
【0069】
脳血流解析部116は、R(m=3)を算出する(ステップS303)。ここでR(m)とは、ステップS301で決定した解析開始点を起点として、m番目までのデータ列からなる組み合わせから算出される相関係数を表している。
【0070】
脳血流解析部116は、m=m+1(=4)を与え(ステップS304)、R(m)=−1を与え(ステップS305)、R(m+1)=−1を与える(ステップS306)。ステップS305およびステップS306では、仮にm=3でステップS307の判定がNoだったとき、ステップS308以降の処理が発散しないためにR(m)およびR(m+1)を与えている。
【0071】
脳血流解析部116は、m=3におけるY軸値(Y軸値(3))と、m=4におけるY軸値(Y軸値(4))とを大小判定し、Y軸値(4)が大きいとき(ステップS307のYES)、m=4としてステップS303に移行する。あるいは、Y軸値(3)が大きいとき(ステップS307のNo)、ステップS308に移行する。すなわち、脳血流解析部116は、mに対応するY軸値が、m+1に対応するY軸値より大きいと判定されるまで上記ステップS303〜ステップS307を繰り返す。
【0072】
また、
図6から明らかであるように、脳血流解析部116によって実行される大小判定の処理(ステップS302〜ステップS307)の中に、相関係数R(m)を算出する処理(ステップS303)が組み込まれている。本実施形態における当該大小判定は、多数存在するデータ列の中から相関係数R(m)の算出に用いるデータ列の組み合わせを導出すること(以下、導出処理)にある。具体的には、
図8におけるプロット84からプロット86までのプロット(データ列)を導出するための処理である。従って、導出処理の後処理として相関係数を算出することも可能である。しかし、このような態様では、再びmに3以上の値を逐次与えて相関係数R(m)をそれぞれ算出しなくてはならない。このような態様の処理負荷と、本実施形態の処理負荷とを比較すると、本実施形態の処理負荷の方が軽減される。
【0073】
脳血流解析部116は、m=4、max=3を与える(ステップS308)。ここでmaxとは、その処理時点で最大の相関係数R(m)に与えられるmの値である。
そして、脳血流解析部116は、m=3(max)のときの相関係数R(3)とm=4のときの相関係数R(4)の大小判定をし、相関係数R(4)が大きいとき(ステップS309のYES)はmaxに4を与えて(ステップS310)からステップS311に移行し、相関係数R(3)が大きいとき(ステップS309のNO)はそのままステップS311に移行する。
【0074】
さらに、脳血流解析部116はm=m+1を与え、m=4となる(ステップS311)。そして、相関係数R(4)=−1であるか否か(ステップS307でNoと判定されたときに与えられていたmに達したか否か)を判定する。相関係数R(4)=−1が否定されれば(ステップS312のNo)、m=4としてステップS309の判定処理に移行する。
上記のステップS309〜ステップS312の処理を相関係数R(m)=−1となるまで繰り返し実行し、相関係数R(m)=−1となったとき(ステップS312のYes)、max番目のプロット(データ列)を解析終了点として決定する(ステップS313)。
【0075】
脳血流解析部116は、S301で決定された解析開始点と、S313で決定された解析終了点との間に含まれるデータ列から定量解析を行い、変数F、SFRおよびmCBFを算出する(ステップS314)。
【0076】
ここまで実施形態を示して本発明を説明したが、これらは一例である。また、本発明の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が単一の構成要素として構成されていること、一つの構成要素が複数の構成要素に分割されて形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
また、上述した各種の構成要素は、必ずしも必須の構成要素ではなく、本発明の効果を阻害しない程度に省いても構わないし、同等に機能又は作用する他の構成要素に代えてもよい。
【0077】
また、上記実施形態において示すフローも本発明の実施の一例であって、ここに示した手順に限られない。従って、上記フローチャートに図示した一のステップが複数に分離されて実行される、複数のステップが一のステップとして実行される、複数のステップが並行して実行される等を許容する。
【0078】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)体内に投与された放射性薬剤から放射される放射線量を所定の時間間隔で経時的に計数して得られる計数値であって、脳領域における前記計数値である脳計数値および肺領域における前記計数値である肺計数値を取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された前記脳計数値および前記肺計数値の経時変化の度合いを定量的に示す指標値をそれぞれについて算出し、算出された前記指標値を用いた第一演算処理によって、前記脳領域に前記放射性薬剤が到達した時点を示す脳到達時と、前記肺領域に前記放射性薬剤が到達した時点を示す肺到達時と、を推定する推定手段と、前記推定手段によって推定された前記脳到達時と前記肺到達時との時間差を求め、前記肺計数値と、当該肺計数値が計数された時点から前記時間差が経過した時に計数された前記脳計数値と、を前記脳領域における血流速度を示す変数を有する関係式に代入する第二演算処理に基づいて前記脳領域における脳血流の定量解析を行う解析手段と、を備えることを特徴とする脳血流定量解析装置。
(2)前記推定手段は、前記取得手段によって取得された前記肺計数値が計数された時点のいずれか一つを前記肺到達時として推定し、前記取得手段によって取得された前記肺計数値のうち最大を示す前記肺計数値が計数された時点より後であって、当該時点から予め定められた時間内に収まる時点を前記脳到達時として推定する(1)に記載の脳血流定量解析装置。
(3)前記指標値は、ある時点で計数された前記脳計数値または前記肺計数値を、計数結果の範囲内において時間経過に依存して増大傾向にある変数で除した値であり、前記推定手段は、複数の時点について前記指標値を算出し、算出された複数の前記指標値のうち最大を示す前記指標値の元となった前記脳計数値または前記肺計数値が計数された時点を前記脳到達時または前記肺到達時として推定する(1)または(2)に記載の脳血流定量解析装置。
(4)前記指標値は、ある時点で計数された前記脳計数値または前記肺計数値を基準として、当該時点から連続して計数された前記脳計数値または前記肺計数値が変化した割合を示す値である(3)に記載の脳血流定量解析装置。
(5)前記解析手段は、前記肺計数値と、当該肺計数値が計数された時点から前記時間差が経過した時に計数された前記脳計数値と、を一組とし、複数組の前記肺計数値と前記脳計数値のそれぞれについて前記第二演算処理を実行した演算結果に基づいて回帰分析を行うことによって前記血流速度を求める(1)から(4)いずれか一つに記載の脳血流定量解析装置。
(6)前記関係式における説明変数および目的変数は、前記肺計数値に対する、基準時から当該肺計数値が計数される時点までに計数された当該肺計数値に係る前記肺領域における前記放射線量の累計値の比率である第一比率、および、当該肺計数値に対する、当該肺計数値が計数された時点から前記時間差が経過した時に計数された前記脳計数値の比率である第二比率であり、前記説明変数の係数は前記血流速度を示す変数である(5)に記載の脳血流定量解析装置。
(7)前記解析手段は、前記演算結果から前記第一比率と前記第二比率とからなるデータ列を複数組導出し、導出された複数組の前記データ列から算出される相関係数が最大となる前記データ列の組み合わせを用いて前記血流速度を求める(6)に記載の脳血流定量解析装置。
(8)前記解析手段は、前記取得手段によって取得された前記肺計数値のうち最大を示す前記肺計数値が計数された時点または当該時点より後に計数された前記肺計数値と、当該肺計数値と一組となる前記脳計数値と、に基づいて得られた前記第一比率および前記第二比率とからなる前記データ列を導出する(7)に記載の脳血流定量解析装置。
(9)前記解析手段は、前記取得手段によって取得された前記肺計数値のうち最大を示す前記肺計数値が計数された時点または当該時点より後に計数された前記肺計数値に基づいて得られた複数の前記第一比率を値の小さい順番でみて、前記第一比率と組をなす前記第二比率について当該順番の前後で大小判定を繰り返し行い、小さい方の前記第一比率と組をなす前記第二比率が、大きい方の前記第一比率と組をなす前記第二比率より大きいことに基づいて前記データ列を導出する(7)または(8)に記載の脳血流定量解析装置。
(10)前記解析手段によって実行される前記大小判定の処理の中に、前記相関係数を算出する処理が組み込まれている(9)に記載の脳血流定量解析装置。
(11)複数の情報端末がネットワークを介して通信可能に接続しているネットワークシステムであって、体内に投与された放射性薬剤から放射される放射線量を所定の時間間隔で経時的に計数して得られる計数値であって、脳領域における前記計数値である脳計数値および肺領域における前記計数値である肺計数値を取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された前記脳計数値および前記肺計数値の経時変化の度合いを定量的に示す指標値をそれぞれについて算出し、算出された前記指標値を用いた第一演算処理によって、前記脳領域に前記放射性薬剤が到達した時点を示す脳到達時と、前記肺領域に前記放射性薬剤が到達した時点を示す肺到達時と、を推定する推定手段と、前記推定手段によって推定された前記脳到達時と前記肺到達時との時間差を求め、前記肺計数値と、当該肺計数値が計数された時点から前記時間差が経過した時に計数された前記脳計数値と、を前記脳領域における血流速度を示す変数を有する関係式に代入する第二演算処理に基づいて前記脳領域における脳血流の定量解析を行う解析手段と、を備えることを特徴とする脳血流定量解析システム。
(12)記憶媒体から読み出されてコンピュータによって実行されるプログラムであって、体内に投与された放射性薬剤から放射される放射線量を所定の時間間隔で経時的に計数して得られる計数値であって、脳領域における前記計数値である脳計数値および肺領域における前記計数値である肺計数値を取得する取得処理と、前記取得処理によって取得された前記脳計数値および前記肺計数値の経時変化の度合いを定量的に示す指標値をそれぞれについて算出し、算出された前記指標値を用いた第一演算処理によって、前記脳領域に前記放射性薬剤が到達した時点を示す脳到達時と、前記肺領域に前記放射性薬剤が到達した時点を示す肺到達時と、を推定する推定処理と、前記推定処理によって推定された前記脳到達時と前記肺到達時との時間差を求め、前記肺計数値と、当該肺計数値が計数された時点から前記時間差が経過した時に計数された前記脳計数値と、を前記脳領域における血流速度を示す変数を有する関係式に代入する第二演算処理に基づいて前記脳領域における脳血流の定量解析を行う解析処理と、を前記コンピュータに実行させるためのプログラム。
【解決手段】解析装置10は、体内に投与されたIMPについて脳計数値および肺計数値を取得する計数値取得部112と、脳計数値および肺計数値の経時変化の度合いを定量的に示す指標値をそれぞれについて算出し、算出された指標値を用いた第一演算処理によって脳到達時と肺到達時とを推定するROI到達時推定部114と、脳到達時と肺到達時との時間差を用いた第二演算処理に基づいて脳領域における脳血流の定量解析を行う脳血流解析部116と、を備える。