特許第5695243号(P5695243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5695243
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】シートフレーム及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/427 20060101AFI20150312BHJP
   B60N 2/68 20060101ALI20150312BHJP
   B60R 21/02 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   B60N2/427
   B60N2/68
   B60R21/02 E
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-46432(P2014-46432)
(22)【出願日】2014年3月10日
(62)【分割の表示】特願2010-526792(P2010-526792)の分割
【原出願日】2009年8月28日
(65)【公開番号】特開2014-122037(P2014-122037A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2014年3月10日
(31)【優先権主張番号】特願2008-223743(P2008-223743)
(32)【優先日】2008年9月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100111109
【弁理士】
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】新妻 健一
【審査官】 佐々木 一浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−209017(JP,A)
【文献】 特開2006−213201(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0195873(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/427
B60N 2/68
B60R 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座フレーム側にリクライニング機構を介して取り付けられたシートバックフレームを備えるシートフレームにおいて、
前記シートバックフレームは、
少なくとも左右方向に離間して配設され上下方向に延在する一対のサイドフレームと、
前記一対のサイドフレームを前記リクライニング機構の近傍で連結し、前記一対のサイドフレームのそれぞれに固定される一対の側部と、該一対の側部を連結する連結部とからなる板状の下部フレームと、
前記下部フレームの一対の側部に挟まれた位置に配設されたエネルギー吸収部材と、を有してなり、
前記エネルギー吸収部材は、前記連結部よりも前方側に配置される塑性変形可能な変形部と、前記変形部の一辺と連続して形成され前記連結部に固定される固定端部と、前記変形部を挟んで前記固定端部と反対側に形成される自由端部と、を有し、
前記エネルギー吸収部材の前記自由端部は、前記連結部の前記固定端部が固定される側と反対側の端部よりも前記固定端部と反対側に延出して配設されることを特徴とするシートフレーム。
【請求項2】
前記エネルギー吸収部材の前記自由端部は、シート前方側へ折り返されることを特徴とする請求項1に記載のシートフレーム。
【請求項3】
前記下部フレームの連結部は、前記エネルギー吸収部材よりも板厚が薄いことを特徴とする請求項1又は2に記載のシートフレーム。
【請求項4】
前記下部フレームの上端部は、シート前方へ屈曲し、前記エネルギー吸収部材の上端と接合されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシートフレーム。
【請求項5】
前記エネルギー吸収部材の、後面衝突の際に乗員の腰部より初期に荷重が入力される部分に、小さな孔またはスリットを形成したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシートフレーム。
【請求項6】
前記エネルギー吸収部材は、前記固定端部と前記下部フレームの連結部との連結のみで前記シートフレームに連結され、背もたれ面側からの押圧によって塑性変形可能に構成されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載シートフレーム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシートフレームと、
前記一対のサイドフレーム間に配設され、クッション材を後方から支持する受圧部材と、を備え、
前記エネルギー吸収部材の変形部は前記受圧部材の前端よりもシート前方に配置されることを特徴とする車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートフレーム及び車両用シートに係り、特に後面衝突時にリクライニング機構に入力される荷重の低減を図ったシートフレーム及び車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車が後部に追突されたり、後退走行時に衝突したりするなど、いわゆる後面衝突の際に、着座している乗員が慣性移動によって急激に後方に移動してシートバックの背もたれ面に押しつけられることがある。それに伴って、シートバックのリクライニング角度を調整するリクライニング機構に過大な荷重が入力される虞がある。
【0003】
このような、リクライニング機構に過大な荷重が入力されることを防止するため、図5に示すように、自動車などの車両用シートのシートフレームでは、シートバックフレーム111の下側部分にヒューズ100が形成されている。後面衝突時には、このヒューズ100が形成された部分からシートバック(シートバックフレーム111)が後方に倒れることができるように構成されることで、リクライニング機構120に限界を超える過大な荷重が入力されることを防止している(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−335162号公報
【特許文献2】特開2006−347436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1及び2に開示された技術は、後面衝突時に、シートバックフレーム111の下側部分に形成されたヒューズ100を起点としてシートバック全体が後方に倒れることでリクライニング機構120への入力荷重を低減することができる。しかし、シートバックが倒れるためのスペースを車両用シートの後方側に確保する必要があり、車種によっては適用が困難な場合があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、幅広い車種に適用できるとともに、後面衝突時のリクライニング機構への入力荷重を低減することが可能なシートフレーム及び車両用シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、請求項1に係るシートフレームによれば、着座フレーム側にリクライニング機構を介して取り付けられたシートバックフレームを備えるシートフレームにおいて、前記シートバックフレームは、少なくとも左右方向に離間して配設され上下方向に延在する一対のサイドフレームと、前記一対のサイドフレームを前記リクライニング機構の近傍で連結し、前記一対のサイドフレームのそれぞれに固定される一対の側部と、該一対の側部を連結する連結部とからなる板状の下部フレームと、前記下部フレームの一対の側部に挟まれた位置に配設されたエネルギー吸収部材と、を有してなり、前記エネルギー吸収部材は、前記連結部よりも前方側に配置される塑性変形可能な変形部と、前記変形部の一辺と連続して形成され前記連結部に固定される固定端部と、前記変形部を挟んで前記固定端部と反対側に形成される自由端部と、を有し、前記エネルギー吸収部材の前記自由端部は、前記連結部の前記固定端部が固定される側と反対側の端部よりも前記固定端部と反対側に延出して配設されることにより解決される。
【0008】
上記構成によって、後面衝突時に、着座している乗員が慣性移動によって急激に後方に移動してシートバックの背もたれ面に押しつけられると、乗員の腰部がクッション材を介して、エネルギー吸収部材の変形部を後方に押圧して塑性変形させることができる。このエネルギー吸収部材が塑性変形する際に衝撃エネルギーを吸収することで、リクライニング機構に入力される荷重を低減することができる。
また、エネルギー吸収部材の自由端部が、連結部の固定端部が固定される側と反対側の端部よりも固定端部と反対側に延出して配設されるため、エネルギー吸収部材の変形の際に、下部フレームの連結部にエネルギー吸収部材の自由端部が接触することがない。そのため、大きな変形量であってもスムーズにエネルギー吸収部材を変形させることができ、いずれの変形過程においても比較的均一に衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0009】
このとき、請求項2のように、前記エネルギー吸収部材の前記自由端部は、シート前方側へ折り返されると好適である。
上記構成のように、自由端部がシート前方側へ折り返されることで、エネルギー吸収部材の変形の際にシートバックの背面側に配設されたクッション材若しくは表皮材の損傷を抑制することができる。
【0010】
また、請求項3のように、前記下部フレームの連結部は、前記エネルギー吸収部材よりも板厚が薄いと好適である。
【0011】
さらに、具体的には、請求項4のように、前記下部フレームの上端部は、シート前方へ屈曲し、前記エネルギー吸収部材の上端と接合されていると好適である。
【0012】
また、請求項5のように、前記エネルギー吸収部材の、後面衝突の際に乗員の腰部より初期に荷重が入力される部分に、小さな孔またはスリットを形成するとより好適である。
このような構成により、入力される荷重に応じて段階的にエネルギー吸収部材を変形させることができ、後面衝突の初期にシートバックを介してリクライニング機構に負荷される荷重を低減することができるとともに、乗員の腰部が受ける衝撃荷重を軽減することができる。
【0013】
さらに、請求項6のように、前記エネルギー吸収部材は、前記固定端部と前記下部フレームの連結部との連結のみで前記シートフレームに連結され、背もたれ面側からの押圧によって塑性変形可能に構成されると好適である。
【0014】
前記課題は、請求項7に係る車両用シートによれば、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシートフレームと、前記一対のサイドフレーム間に配設され、クッション材を後方から支持する受圧部材と、を備え、前記エネルギー吸収部材の変形部は前記受圧部材の前端よりもシート前方に配置されること、により解決される。
このような構成によれば、前述した各作用効果を備えた車両用シートを得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るシートフレームによれば、後面衝突時にエネルギー吸収部材を塑性変形させることによってシートバックに作用する衝撃エネルギーを吸収し、リクライニング機構に入力される荷重を低減することができる。さらに、エネルギー吸収部材の変形量が大きい場合であっても衝撃エネルギーを吸収することができる。
また、本発明に係るシートフレームによれば、エネルギー吸収部材の変形の際に、シートバックの背面側に配設されたクッション材若しくは表皮材の損傷を抑制することができる。
さらに、本発明に係るシートフレームによれば、後面衝突の初期にシートバックを介してリクライニング機構に負荷される荷重を低減することができるとともに、乗員の腰部が受ける衝撃荷重を軽減することができる。
本発明に係る車両用シートによれば、上述した特徴を有するシートフレームを備えた車両用シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るシートの概略斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係るシートフレームの概略斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る下部フレーム及びエネルギー吸収部材の中央断面図(I−I断面図)である。
図4】本発明の一実施形態に係る後面衝突前後のエネルギー吸収部材の状態を示す概念説明図である。
図5】従来のシートフレームの後面衝突時の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることはもちろんである。
【0018】
図1乃至図4は本発明の一実施形態を示し、図1は車両用シートの概略斜視図、図2はシートフレームの概略斜視図、図3は下部フレーム及びエネルギー吸収部材の中央断面図(I−I断面図)、図4は後面衝突前後のエネルギー吸収部材の状態を示す概念説明図である。
【0019】
本実施形態に係る車両用シートSは、図1に示すように、シートバックS1と、シートクッションS2と、シートバックS1の上部に取り付けられたヘッドレストHRとを備えている。本実施形態のシートバックS1及びシートクッションS2は、シートバックフレーム11及び着座フレーム12(図2参照)のそれぞれにクッション材4を取り付け、クッション材4の外周を表皮材5により被覆して構成されている。なお、ヘッドレストHRの構成は任意であり、少なくとも乗員の頭部を支持する頭部支持部と、頭部支持部をシートバックS1側に装着するためのピラーとを備えて構成されている。
また、シートバックS1の背もたれ面側を前方側、シートバックS1のヘッドレストHRが取り付けられる側を上方側とする。
【0020】
次に、図2に基づいて、本実施形態に係るシートフレームFについて説明する。
シートフレームFは、上述のシートバックフレーム11と着座フレーム12と不図示のヘッドレストフレームとを主な構成部材として構成されている。
シートバックフレーム11は、不図示のクッション材4等によって覆われ乗員の背中を後方から支持するものであり、本実施形態においては略矩形状の枠体となっている。シートバックフレーム11は下端部側でリクライニング機構20を介して着座フレーム12側と連結されており、リクライニング調整自在に構成されている。
より詳細には、シートバックフレーム11は、左右方向の側面側に配設されるサイドフレーム15,15と、このサイドフレーム15,15の上端部側を連結する上部フレーム16と、下端部側を連結する下部フレーム17とを主な構成部材として構成されている。
【0021】
サイドフレーム15は、シートバックフレーム11の側面を構成する一対の延伸部材であり、左右方向に離間して配設され上下方向に所定の長さを有している。平板状のサイドフレーム15,15本体の前端部及び後端部をそれぞれ内側へ折り曲げることで必要な強度を確保している。
上部フレーム16は、略コ字状の部材であり、上部フレーム16の側面部16a,16aは、サイドフレーム15,15の上部側で一部が重なるように配設され、この重なり部分においてサイドフレーム15,15と一体に固着接合される。
【0022】
また、シートバックフレーム11の上部には、不図示のヘッドレストフレームが配設されている。上部フレーム16に設けられたピラー支持部18,18に、ヘッドレストフレームのピラー(不図示)が取り付けられる。
【0023】
一対のサイドフレーム15,15の間には、クッション材4を後方から支える受圧部材21が配設されており、受圧部材21を支持してサイドフレーム15,15と連結する連結部材として、2本のワイヤ22,22が左右のサイドフレーム15,15の間に架設されている。
【0024】
下部フレーム17は、サイドフレーム15,15に固着される左右の側部17a,17aと、左右の側部17a,17aを連結する連結部17bと、で構成された部材である。側部17a,17aは、サイドフレーム15,15の下部側と一部が重なるように配設され、この重なり部分においてサイドフレーム15,15に一体に固着接合される。左右の側部17a,17aを一体に連結する連結部17bには、後述するエネルギー吸収部材25が固着されている。
また、下部フレーム17の側部17a,17aは、リクライニング機構20を介して着座フレーム12側と連結されている。
【0025】
図3に下部フレーム17及びエネルギー吸収部材25の中央断面図(I−I断面図)を示す。
本実施形態のエネルギー吸収部材25は、略矩形状の板状の部材を上下方向に湾曲させて断面略C字状に形成したものであり、下部フレーム17の連結部17bに固定されて、左右の側部17a,17aに挟まれた位置に配置されている。このエネルギー吸収部材25は、連結部17bの前方側に張り出した変形部25aと、変形部25aの上部側に形成された固定端部25bと、変形部25aを挟んで固定端部25bと反対側、すなわち本実施形態においては変形部25aの下部側に形成された自由端部25cの各部から構成されている。
【0026】
具体的には、エネルギー吸収部材25の変形部25aの上部側に形成された固定端部25bのみを、下部フレーム17の連結部17bにのみ固定することで、エネルギー吸収部材25が配設されている。すなわち、エネルギー吸収部材25の下部側の自由端部25cは固定されておらず、背もたれ面側からの押圧による変形部25aの変形に応じて下方又は後方に移動できるように自由端として構成されている。
このようにエネルギー吸収部材25の上下の一方の端部を自由端とすることで、上下側の2カ所で固着する場合に比べて、変形部25aの塑性変形がスムーズに行え、また塑性変形の進行によっても変形応力の変動を少なくすることができる。
【0027】
自由端部25cは、下側フレーム17の連結部17bの固定端部25bが固定される側と反対側の端部よりも、固定端部25bと反対側に延出して配設されている。本実施形態においては、図3に示すように、自由端部25cは連結部17bの下側の端部よりも下方に延出して配設されている。このような構成にすることで、エネルギー吸収部材25が大きく変形しても、下部フレーム17の連結部17bに自由端部25cが接触することがない。そのため、エネルギー吸収部材25の変形量に関わらず比較的均一に衝撃エネルギーを吸収し続けることができる。
なお、本実施形態においては、エネルギー吸収部材25の上部側を固定端部25bとし、下部側を自由端部25cとしたが、エネルギー吸収部材25の下部側を固定端部25bとして連結部17bに固着し、上部側を自由端部25cとして変形時に移動可能とする構成としてもよい。
【0028】
また自由端部25cは、その先端が前方側に折り返されて折り返し部分が丸みを帯びた形状に形成されている。このような形状にすることで、エネルギー吸収部材25が背もたれ面側からの押圧により変形して後方に移動した場合に、シートバックS1の背面側に配設されたクッション材4若しくは表皮材5に接触しても、クッション材4や表皮材5を損傷しないように構成されている。
【0029】
エネルギー吸収部材25は、下部フレーム17の連結部17bの長手方向に沿って固定端部25bが連続して溶接されて接合されており、接合部分には溶接部19が形成されている。また、エネルギー吸収部材25の左右方向の寸法は、左右の端部が下部フレーム17の両側の側部17a,17aとはいずれも離間して配置可能な長さに調整されている。
なお、固定端部25bを下部フレーム17の連結部17bに固着する手法としては、溶接以外にも、リベット止め、ボルト止め、若しくはスポット溶接などであってもよく、固定端部25bを連結部17bにかしめて固着してもよい。
【0030】
エネルギー吸収部材25は、変形部25aの背もたれ面側に乗員の腰部が配置される位置であることが望ましい。このような位置関係とすることで、後面衝突時に慣性によって後方に移動した乗員の腰部が、クッション材4を挟んでエネルギー吸収部材25を押圧して変形部25aを変形させることができる。リクライニング機構20に近い高さに位置する乗員の腰部の衝撃をエネルギー吸収部材25(変形部25a)の変形によって吸収することができるため、背もたれ面への背部の沈み込みでは吸収しきれなかった衝撃エネルギーを吸収することができる。すなわち、リクライニング機構20に入力される衝撃荷重とともに、乗員の腰部に伝わる衝撃荷重を軽減することができる。
【0031】
また、上述のように、エネルギー吸収部材25は、下部フレーム17の側部17a,17aのいずれの内側からも僅かに離間して取り付けられている。左右の側部17a,17aのいずれにも固定されないことで、いずれの位置においてもエネルギー吸収部材25の変形方向を一方向に限定することができる。すなわち、エネルギー吸収部材25の変形挙動を単純化することで、塑性変形の再現性を向上し、バラツキをなくして狙いの変形特性を得ることができる。そのため、エネルギー吸収部材25の中心からずれた位置が乗員の腰部によって押圧された場合であっても、塑性変形に要する応力の変動が少ない。様々な状況で生じた後面衝突においてエネルギー吸収部材25を確実に変形させることができ、設計通りの効果を発揮させることができる。
なお、エネルギー吸収部材25の固着位置が限定されることで、組み付け性の向上にも効果がある。
【0032】
さらに、エネルギー吸収部材25が左右の側部17a,17aの内側から僅かに離間して配置されることの他の効果について説明する。
側面衝突の際に側方から受けた荷重によってサイドフレーム15や側部17a,17aが内側方向に変形した場合には、左右の側部17a,17aがエネルギー吸収部材25の側方の端部に当接することになる。ここで、エネルギー吸収部材25は、略C字断面形状であることから構造的に前後方向よりも左右方向の強度が高い。そのため、側面衝突の際などの左右方向から作用する応力に対しては変形抵抗が大きく、シートフレームFの変形を防ぐことができる。
【0033】
エネルギー吸収部材25は、塑性変形可能な金属若しくは樹脂製の板体から構成することができるが、特に、軟鉄やアルミニウム合金などの高い塑性変形能を備える材質によって構成されることが望ましい。また、変形部25aの形状、板厚、材質などを選定することによって、吸収可能なエネルギーを調整することができる。例えば、エネルギー吸収部材25の板厚を厚くし、若しくは高い降伏強度を有する材質に変更することで強度を上げれば、より大きなエネルギーを吸収することができる。すなわち、狙いの変形特性を得ることによって、最適なエネルギー吸収特性を有するエネルギー吸収部材25を作製することが可能となり、車両のタイプごとに適したシートフレームFを提供することができる。
【0034】
また、エネルギー吸収部材25の所定箇所に孔やスリットを形成することで、入力される荷重に応じて段階的に変形させることができる。例えば、後面衝突の際、乗員の腰部により初期に荷重が入力される部分に、小さな孔、若しくはスリットをいくつか形成して変形容易とすることで、後面衝突の初期にシートバックS1を介してリクライニング機構20に負荷される荷重を低減することができるとともに、乗員の腰部が受ける衝撃荷重を軽減することができる。
【0035】
次に、エネルギー吸収部材25の作用を図4に基づいて説明する。
図4は、後面衝突時におけるエネルギー吸収部材25の状態を示す説明図であり、図4(a)は衝突前、図4(b)は衝突後の状態を示している。
後方から衝撃を受けて慣性で乗員が後方に移動すると、乗員の背部が受圧部材21を後方に押圧しつつシートバックS1の背もたれ面側に沈み込む。このとき、乗員の腰部が不図示のクッション材4を挟んでエネルギー吸収部材25を後方に押圧して塑性変形させる。具体的には、エネルギー吸収部材25の変形部25aに乗員の後方移動に伴う荷重が負荷されると、変形部25aが負荷された荷重に応じて下方側若しくは後方側に塑性変形する。変形部25aの変形に伴い、自由端部25cが後方へ移動してシートバックS1の背面側に配設されたクッション材4若しくは表皮材5に接触することがあるが、折り返しによって丸みを帯びた形状にされているため、クッション材4や表皮材5を損傷することがない。
【0036】
このエネルギー吸収部材25の塑性変形によって、後面衝突時の衝撃荷重を吸収してシートバックS1に負荷される荷重を低減することができる。こうして、リクライニング機構20に入力される衝撃荷重の低減を図り、リクライニング機構20に限界以上の荷重が負荷されることを防いでいる。同時に乗員の腰部にかかる衝撃荷重も軽減することができる。また、エネルギー吸収部材25の自由端部25cは、連結部17bの下側の端部よりも下方に膨出して配設されることで、エネルギー吸収部材25が大きく変形しても、下部フレーム17の連結部17bに自由端部25cが接触することがなく、変形部25aの塑性変形の進行に伴う変形応力の変動を少なくすることができる。
【0037】
本発明によれば、上述のように、後面衝突時にリクライニング機構20に入力される荷重を低減することでリクライニング機構20の損傷を抑制し、同時に、乗員の腰部にかかる衝撃荷重も軽減することができる。
【0038】
なお、本実施形態では、具体例として、自動車のフロントシートのシートバックS1について説明したが、これに限らず、後部座席のシートバックについても、同様の構成を適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0039】
S 車両用シート
S1 シートバック
S2 シートクッション
HR ヘッドレスト
F シートフレーム
4 クッション材
5 表皮材
11,111 シートバックフレーム
12 着座フレーム
15 サイドフレーム
16 上部フレーム
16a 側面部
17 下部フレーム
17a 側部
17b 連結部
18 ピラー支持部
19 溶接部
20,120 リクライニング機構
21 受圧部材
22 ワイヤ
25 エネルギー吸収部材
25a 変形部
25b 固定端部
25c 自由端部
100 ヒューズ
図1
図2
図3
図4
図5