(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第二絶縁層形成工程において、前記第一導電層上の少なくとも一部には前記第二絶縁層が形成されず、前記第二絶縁層は、第一導電層形成領域上に開口部を有しており、
前記めっき工程において、前記第二絶縁層の前記開口部を起点として、第二導電層を析出させる、請求項10に記載の太陽電池の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の好ましい実施形態を図面に基づいて説明する。
図1Aおよび
図1Bに模式的に示すように、本発明の太陽電池は、光電変換部50の第一主面上に集電極70を備える。集電極70は、光電変換部50側から順に、第一導電層71と第二導電層72とを含む。
【0024】
本発明の太陽電池は、光電変換部の第一主面上において、第一導電層が形成されていない領域(第一導電層非形成領域)の少なくとも一部に、絶縁層90を有する。絶縁層90は、第一導電層71に接する第一絶縁層91と、第一絶縁層91上の少なくとも一部を覆うように形成された第二絶縁層92と、を有する。
【0025】
以下、本発明の一実施形態であるヘテロ接合結晶シリコン太陽電池(以下、「ヘテロ接合太陽電池」と記載する場合がある)を例として、本発明をより詳細に説明する。ヘテロ接合太陽電池は、単結晶シリコン基板の表面に、単結晶シリコンとはバンドギャップの異なるシリコン系薄膜を有することで、拡散電位が形成された結晶シリコン系太陽電池である。シリコン系薄膜としては非晶質のものが好ましい。中でも、拡散電位を形成するための導電型非晶質シリコン系薄膜と結晶シリコン基板の間に、薄い真性の非晶質シリコン層を介在させたものは、変換効率の最も高い結晶シリコン太陽電池の形態の一つとして知られている。
【0026】
図2は、本発明の一実施形態に係るヘテロ接合太陽電池の模式的断面図である。ヘテロ接合太陽電池105は、光電変換部50として、単結晶シリコン基板1の第一主面(受光面)に、導電型シリコン系薄膜3aおよび受光面側透明電極層6aをこの順に有する。単結晶シリコン基板1の第二主面(受光面の反対面)には、導電型シリコン系薄膜3bおよび裏面側透明電極層6bをこの順に有する。光電変換部50表面の受光面側透明電極層6a上には、第一導電層71および第二導電層72を含む集電極70が形成されている。
【0027】
単結晶シリコン基板1と導電型シリコン系薄膜3a,3bとの間には、真性シリコン系薄膜2a,2bを有することが好ましい。裏面側透明電極層6b上には裏面金属電極8を有することが好ましい。
【0028】
[光電変換部の構成]
まず、ヘテロ接合太陽電池に用いられる、一導電型単結晶シリコン基板について説明する。一般的に単結晶シリコン基板は、導電性を持たせるために、シリコンに対して電荷を供給する不純物を含有している。単結晶シリコン基板は、シリコン原子に電子を導入するための原子(例えばリン)を含有させたn型と、シリコン原子に正孔を導入する原子(例えばボロン)を含有させたp型がある。すなわち、本発明における「一導電型」とは、n型またはp型のどちらか一方であることを意味する。
【0029】
ヘテロ接合太陽電池では、単結晶シリコン基板へ入射した光が最も多く吸収される入射側のへテロ接合を逆接合として強い電場を設けることで、電子・正孔対を効率的に分離回収することができる。そのため、受光面側のヘテロ接合は逆接合であることが好ましい。一方で、正孔と電子とを比較した場合、有効質量および散乱断面積の小さい電子の方が、一般的に移動度が大きい。以上の観点から、ヘテロ接合太陽電池に用いられる単結晶シリコン基板1は、n型単結晶シリコン基板であることが好ましい。単結晶シリコン基板1は、光閉じ込めの観点から、表面にテクスチャ構造を有することが好ましい。
【0030】
テクスチャが形成された単結晶シリコン基板の表面に、シリコン系薄膜が製膜される。シリコン系薄膜の製膜方法としては、プラズマCVD法が好ましい。プラズマCVD法によるシリコン系薄膜の形成条件としては、基板温度100〜300℃、圧力20〜2600Pa、高周波パワー密度0.004〜0.8W/cm
2が好ましく用いられる。シリコン系薄膜の形成に使用される原料ガスとしては、SiH
4、Si
2H
6等のシリコン含有ガス、またはシリコン系ガスとH
2との混合ガスが好ましく用いられる。
【0031】
導電型シリコン系薄膜3a,3bは、一導電型または逆導電型のシリコン系薄膜である。例えば、一導電型単結晶シリコン基板1としてn型単結晶シリコン基板が用いられる場合、一導電型シリコン系薄膜、および逆導電型シリコン系薄膜は、各々n型、およびp型となる。p型またはn型シリコン系薄膜を形成するためのドーパントガスとしては、B
2H
6またはPH
3等が好ましく用いられる。また、PやBといった不純物の添加量は微量でよいため、予めSiH
4やH
2で希釈された混合ガスを用いることが好ましい。導電型シリコン系薄膜の製膜時に、CH
4、CO
2、NH
3、GeH
4等の異種元素を含むガスを添加して、シリコン系薄膜を合金化することにより、シリコン系薄膜のエネルギーギャップを変更することもできる。
【0032】
シリコン系薄膜としては、非晶質シリコン薄膜、微結晶シリコン(非晶質シリコンと結晶質シリコンとを含む薄膜)等が挙げられる。中でも非晶質シリコン系薄膜を用いることが好ましい。例えば、一導電型単結晶シリコン基板1としてn型単結晶シリコン基板を用いた場合の光電変換部50の好適な構成としては、透明電極層6a/p型非晶質シリコン系薄膜3a/i型非晶質シリコン系薄膜2a/n型単結晶シリコン基板1/i型非晶質シリコン系薄膜2b/n型非晶質シリコン系薄膜3b/透明電極層6bの順の積層構成が挙げられる。この場合、前述の理由から、p層側を受光面とすることが好ましい。
【0033】
真性シリコン系薄膜2a,2bとしては、シリコンと水素で構成されるi型水素化非晶質シリコンが好ましい。単結晶シリコン基板上に、CVD法によってi型水素化非晶質シリコンが製膜されると、単結晶シリコン基板への不純物拡散を抑えつつ表面パッシベーションを有効に行うことができる。また、膜中の水素量を変化させることで、エネルギーギャップにキャリア回収を行う上で有効なプロファイルを持たせることができる。
【0034】
p型シリコン系薄膜は、p型水素化非晶質シリコン層、p型非晶質シリコンカーバイド層、またはp型非晶質シリコンオキサイド層であることが好ましい。不純物拡散の抑制や直列抵抗低下の観点ではp型水素化非晶質シリコン層が好ましい。一方、p型非晶質シリコンカーバイド層およびp型非晶質シリコンオキサイド層は、ワイドギャップの低屈折率層であるため、光学的なロスを低減できる点において好ましい。
【0035】
ヘテロ接合太陽電池の光電変換部50は、導電型シリコン系薄膜3a,3b上に、透明電極層6a,6bを備える。透明電極層6a,6bは、導電性酸化物を主成分とする。導電性酸化物としては、例えば、酸化亜鉛や酸化インジウム、酸化錫を単独または混合して用いることができる。導電性、光学特性、および長期信頼性の観点から、酸化インジウムを含んだインジウム系酸化物が好ましく、中でも酸化インジウム錫(ITO)を主成分とするものがより好ましく用いられる。透明電極層は、単層でもよく、複数の層からなる積層構造でもよい。
【0036】
ここで、本明細書において、特性の成分を「主成分とする」とは、含有量が50重量%より多いことを意味し、70重量%以上が好ましく、90%重量以上がより好ましい。
【0037】
透明電極層には、ドーピング剤を添加することができる。例えば、透明電極層として酸化亜鉛が用いられる場合、ドーピング剤としては、アルミニウムやガリウム、ホウ素、ケイ素、炭素等が挙げられる。透明電極層として酸化インジウムが用いられる場合、ドーピング剤としては、亜鉛や錫、チタン、タングステン、モリブデン、ケイ素等が挙げられる。透明電極層として酸化錫が用いられる場合、ドーピング剤としては、フッ素等が挙げられる。
【0038】
ドーピング剤は、受光面側透明電極層6aおよび裏面側透明電極層6bの一方もしくは両方に添加することができる。特に、受光面側透明電極層6aにドーピング剤を添加することが好ましい。受光面側透明電極層6aにドーピング剤を添加することで、透明電極層自体が低抵抗化されるとともに、透明電極層6aと集電極70との間での抵抗によるロスを抑制することができる。
【0039】
受光面側透明電極層6aの膜厚は、透明性、導電性、および光反射低減の観点から、10nm以上140nm以下であることが好ましい。透明電極層6aの役割は、集電極70へのキャリアの輸送であり、そのために必要な導電性があればよく、膜厚は10nm以上であることが好ましい。膜厚を140nm以下にすることにより、透明電極層6aでの光吸収によるロスを低減し、透過率の低下に伴う光電変換効率の低下を抑制することができる。また、透明電極層6aの膜厚が上記範囲内であれば、透明電極層内のキャリア濃度上昇も防ぐことができるため、赤外域の透過率低下に伴う光電変換効率の低下も抑制される。
【0040】
透明電極層の製膜方法は、特に限定されないが、スパッタ法等の物理気相堆積法や、有機金属化合物と酸素または水との反応を利用した化学気相堆積(MOCVD)法等が好ましい。いずれの製膜方法においても、熱やプラズマ放電によるエネルギーを利用することもできる。
【0041】
透明電極層作製時の基板温度は、適宜設定される。例えば、シリコン系薄膜として非晶質シリコン系薄膜が用いられる場合、200℃以下が好ましい。基板温度を200℃以下とすることにより、非晶質シリコン層からの水素の脱離や、それに伴うシリコン原子へのダングリングボンドの発生を抑制でき、結果として変換効率を向上させることができる。
【0042】
裏面側透明電極層6b上には、裏面金属電極8が形成されることが好ましい。裏面金属電極8としては、近赤外から赤外域の反射率が高く、かつ導電性や化学的安定性が高い材料を用いることが望ましい。このような特性を満たす材料としては、銀やアルミニウム等が挙げられる。裏面金属電極層の製膜方法は、特に限定されないが、スパッタ法や真空蒸着法等の物理気相堆積法や、スクリーン印刷等の印刷法等が適用可能である。
【0043】
[集電極]
受光面側透明電極層6a上に、集電極70が形成される。集電極70は、光電変換部50側から、第一導電層71と、第二導電層72とを含む。第二導電層72はめっき法により形成される。
【0044】
(第一導電層)
第一導電層71は、めっき法により第二導電層が形成される際の導電性下地層として機能する層である。そのため、第一導電層は電解めっきの下地層として機能し得る程度の導電性を有していればよい。なお、本明細書においては、体積抵抗率が10
−2Ω・cm以下であれば導電性であると定義する。また、体積抵抗率が、10
2Ω・cm以上であれば、絶縁性であると定義する。
【0045】
第一導電層71は、インクジェット法、スクリーン印刷法、導線接着法、スプレー法、真空蒸着法、スパッタ法等の公知技術によって作製できる。第一導電層71は、櫛形等の所定形状にパターン化されていることが好ましい。パターン化された第一導電層の形成には、生産性の観点からスクリーン印刷法が適している。スクリーン印刷法では、導電性の印刷ペースト、および集電極のパターン形状に対応した開口パターンを有するスクリーン版を用いて、集電極パターンが印刷される。
【0046】
第一導電層71は、導電性微粒子と絶縁性材料とを含む導電性ペーストを用いて形成されることが好ましい。絶縁性材料としては、バインダー樹脂等を用いることができる。特に、後述するように、第一導電層の形成材料に含まれる絶縁性材料が染み出すことにより第一絶縁層が形成される場合は、絶縁性材料としてバインダー樹脂を用いることが好ましい。
【0047】
バインダー樹脂としては、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂等の熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。これらの樹脂は固体状の樹脂でもよく、液状樹脂でもよい。また、導電性ペーストは、有機溶剤や無機溶剤を含んでいてもよい。導電性ペーストに液状樹脂や有機溶剤等の液状材料を含めることにより、塗布性(印刷性)が向上し得る
。
【0048】
導電性微粒子としては、銀、アルミニウム、銅、インジウム、ビスマス、ガリウム等の金属材料の単体、もしくは複数の金属材料を用いることができる。導電性微粒子710の粒径は、0.25μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましい。第一導電層71が、スクリーン印刷等の印刷法により形成される場合、導電性微粒子の粒径は、スクリーン版のメッシュサイズ等に応じて適宜に設定され得る。粒径は、メッシュサイズより小さいことが好ましく、メッシュサイズの1/2以下がより好ましい。なお、粒子が非球形の場合、粒径は、粒子の投影面積と等面積の円の直径(投影面積円相当径、Heywood径)により定義される。
【0049】
また、スクリーン印刷により形成された第一導電層の導電性を十分向上させるためには、熱処理により樹脂材料を硬化させることが望ましい。例えば、導電性微粒子および絶縁性材料を含む導電性ペーストを硬化させることにより、第一導電層が形成される。導電性ペーストとして、溶剤を含む材料が用いられる場合には、溶剤を除去するための乾燥工程が実施されることが好ましい。この場合の乾燥温度は、光電変換部の透明電極層や非晶質シリコン系薄膜の耐熱性を勘案して、250℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、180℃以下であることがさらに好ましい。乾燥時間は、例えば5分間〜1時間程度で適宜に設定され得る。
【0050】
第一導電層71の膜厚は、コスト的な観点から20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。一方、第一導電層71のライン抵抗を所望の範囲とする観点から、第一導電層71の膜厚は0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。
【0051】
第一導電層71は、複数の層から構成されてもよい。例えば、光電変換部表面の透明電極層との接触抵抗が低い下層と、バインダー樹脂含有量の多い材料を含む上層からなる積層構造であっても良い。このような構造によれば、透明電極層との接触抵抗の低下に伴う太陽電池の曲線因子向上が期待できる。
【0052】
以上、第一導電層がスクリーン印刷により形成される場合を中心に説明したが、第一導電層の形成方法は印刷法に限定されず、インクジェット法等によりパターン形成されてもよい。
【0053】
(第二導電層)
第一導電層71上に、第二導電層72がめっき法により形成される。第二導電層として析出させる金属は、めっき法で形成できる材料であれば特に限定されず、例えば、銅、ニッケル、錫、アルミニウム、クロム、銀、金、亜鉛、鉛、パラジウム等、あるいはこれらの混合物を用いることができる。
【0054】
太陽電池の動作時(発電時)には、電流は主として第二導電層を流れる。そのため、第二導電層での抵抗による電流ロスを抑制する観点から、第二導電層のライン抵抗は、できる限り小さいことが好ましい。具体的には、第二導電層のライン抵抗は、1Ω/cm以下であることが好ましく、0.5Ω/cm以下であることがより好ましい。一方、上述のように、第一導電層のライン抵抗は、電解めっきの際の下地層として機能し得る程度に小さければよく、5Ω/cm以下にすればよい。
【0055】
第二導電層は、無電解めっき法、電解めっき法のいずれでも形成され得る。生産性の観点から、電解めっき法が好適である。電解めっき法では、金属の析出速度を大きくすることができるため、第二導電層を短時間で形成することができる。
【0056】
酸性銅めっきを例として、電解めっき法による第二導電層の形成方法を説明する。
図3は、第二導電層の形成に用いられるめっき装置10の概念図である。光電変換部上に第一導電層が形成された基板12と、陽極13とが、めっき槽11中のめっき液16に浸されている。基板12上の第一導電層71は、基板ホルダ14を介して電源15と接続されている。陽極13と基板12との間に電圧を印加することにより、第一導電層上に銅を析出させることができる。
【0057】
酸性銅めっきに用いられるめっき液16は銅イオンを含む。例えば硫酸銅、硫酸、水を主成分とする公知の組成のものが使用可能であり、これに0.1〜10A/dm
2の電流を流すことにより、第二導電層として金属層を析出させることができる。適切なめっき時間は、集電極の面積、電流密度、陰極電流効率、設定膜厚等に応じて適宜設定される。
【0058】
第二導電層は、複数の層から構成させても良い。例えば、Cu等の導電率の高い材料からなる第一のめっき層を、絶縁層の開口部を介して第一導電層上に形成した後、化学的安定性に優れる第二のめっき層を第一のめっき層の表面に形成することにより、低抵抗で化学的安定性に優れた集電極を形成することができる。
【0059】
[絶縁層]
上記のように、本発明においては、第一導電層上にめっき法により第二導電層が形成される。第二導電層形成時に、光電変換部上の第一導電層が形成されていない領域(第一導電層非形成領域)が露出していると、光電変換部がめっき液に接触して、光電変換部の内部(シリコン基板等)に、めっき液中の金属イオンが侵入し、太陽電池特性の低下を招く。また、ヘテロ接合太陽電池のように、光電変換部の最表面に透明電極層が形成されている場合は、電解めっきの際に、第一導電層に加えて透明電極層にも通電が行われるために、第一導電層非形成領域にも金属が析出する。
【0060】
本発明においては、光電変換部を保護するために、光電変換部の第一導電層非形成領域に絶縁層90が形成され、絶縁層形成後に、めっきにより第二導電層が形成される。絶縁層90は、第一導電層71に接する第一絶縁層91と、第一絶縁層91上の少なくとも一部を覆うように形成された第二絶縁層92とを有する。
【0061】
<第一の実施形態>
以下では、第一の実施形態として、第一絶縁層を形成後に、マスク等を用いて所定形状にパターニングされた第二絶縁層を形成する形態について説明する。
図4は、本発明の第一の実施形態により、太陽電池の光電変換部50上へ、絶縁層90および集電極70を形成する方法を示す工程概念図である。
【0062】
この実施形態では、まず、光電変換部50が準備される(光電変換部準備工程、
図4(A))。例えば、ヘテロ接合太陽電池の場合は、前述のように、シリコン基板上に、シリコン系薄膜および透明電極層を備える光電変換部が準備される。
【0063】
光電変換部50の第一主面上に、第一導電層を形成するために、導電性微粒子710と絶縁性材料712とを含む導電性ペーストが塗布される。例えば、集電極の形状に対応した開口パターンを有するスクリーン版を用いて、導電性ペーストの塗布(印刷)が行われる。開口幅W
0のスクリーン版85を用いて導電性ペーストの印刷が行われる場合、光電変換部上には、幅がW
0と略等しい導電性ペースト塗布領域80が形成される(
図4(B))。なお、導電性ペースト中の絶縁性材料と導電性微粒子の比率は、いわゆるパーコレーションの閾値(導電性が発現する導電性微粒子含有量に相当する比率の臨界値)以上になるように設定される。
【0064】
光電変換部上に塗布されたペーストの塗布領域から、光電変換部の表面にペーストが濡れ広げられて、スクリーン版の開口幅W
0よりも幅の大きい塗布層81となる(
図4(C))。この際、塗布領域から、ペースト中の絶縁性材料が染み出して光電変換部上に濡れ広がることにより、導電性微粒子710と絶縁性材料712とを含む第一導電層71の外縁に接して、第一絶縁層91が形成される。この場合、第一絶縁層91は、第一導電層71中の絶縁性材料と同一の材料により形成される。
【0065】
例えば、第一導電層形成用の導電性ペーストに含まれる導電性微粒子とバインダー樹脂の含有量を適宜調整することにより、塗布領域からバインダー樹脂が染み出し、第一導電層の外縁に接する第一絶縁層が形成される。第一導電層71と第一絶縁層91とが接する境界7Bから第一絶縁層の端部9Bまでの幅L
9、すなわち第一絶縁層の線幅は、0.2mm〜1.0mmが好ましく、0.5mm〜1.0mmがより好ましい。第一絶縁層の線幅を上記範囲にすることにより、第二絶縁層を形成する場合の位置合わせが容易となる。また、めっきにより第一導電層上に第二導電層が形成される際に、第一導電層形成領域と第一導電層非形成領域との境界近傍をめっき液から保護することができる。
【0066】
なお、第一導電層形成用の導電性ペーストから絶縁性材料(バインダー樹脂)が染み出すことにより第一絶縁層91が形成される場合、
図5に示すように、光電変換部50の表面に平行な方向において、複数の導電性微粒子710同士が接触して、電気的に導電性を有する領域が第一導電層71であり、第一導電層71の外縁に接する領域が第一絶縁層91である。導電性ペースト中の導電性微粒子の一部が、絶縁性材料とともに染み出した場合であっても、
図5の導電性微粒子718,719のように、第一導電層71の導電性微粒子710と孤立して電気的に導電性を示さない場合、これらの孤立した導電性微粒子を含む領域は、第一絶縁層とみなす。導電性微粒子が「電気的に導電性を示さない」とは、典型的には、染み出し部分における導電性微粒子が、絶縁性材料により覆われて、他の導電性微粒子から孤立している状態を意味する。導電性微粒子による遮光を抑制する観点から、第一絶縁層91に含まれる導電性微粒子は少ないことが好ましく、第一絶縁層は導電性微粒子を含まないことがより好ましい。
【0067】
導電性ペーストに含まれる導電性微粒子の粒径、導電性微粒子と絶縁性材料の含有量の比、導電性ペーストの粘度等を適宜調整することにより、第一絶縁層91の線幅を所望の範囲とすることができる。第一絶縁層への導電性微粒子の染み出しを抑制する観点から、導電性微粒子の粒径は、0.25μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましい。導電性微粒子の粒径は、2〜3μmがより好ましい。導電性ペーストは、25℃における粘度が、50〜400Pa・sであることが好ましく、100〜350Pa・sであることがより好ましく、200〜300Pa・sであることがさらに好ましい。導電性ペースト中の絶縁性樹脂材料の含有量は、ペーストの粘度が上記範囲となるように調整されることが好ましい。樹脂の種類等によって含有量の最適値は異なるが、例えば、5wt%〜20wt%が好ましい。
【0068】
導電性ペーストが溶剤を含む場合は、必要に応じて乾燥が行われる。また、導電性ペースト中の樹脂材料として光硬化性や熱硬化性の樹脂材料が含まれる場合は、光照射や加熱により導電性ペーストの硬化が行われてもよい。
【0069】
光電変換部の第一主面上への導電性ペーストの塗布により、第一導電層71および第一絶縁層91が形成された後、第一導電層非形成領域上に、第二絶縁層92が形成される(第二絶縁層形成工程)。第二絶縁層92は、第一絶縁層91の少なくとも一部を覆うように形成される(
図4(D))。第二絶縁層92は、第一絶縁層91上の全面を覆うように形成されることが好ましい。第二絶縁層92は、第一導電層71上にも形成されてもよい。ただし、第一導電層形成領域の少なくとも一部には第二絶縁層が形成されない。すなわち、第二絶縁層92は、第一導電層形成領域上に開口部92hを有する。
【0070】
本発明の第一の実施形態では、第一導電層形成領域の少なくとも一部に第二絶縁層が形成されないように、製膜が行われる。第二絶縁層の製膜方法としては、CVD、スパッタ、蒸着等の乾式法や、スクリーン印刷、インクジェット、スプレー塗布等の湿式法が挙げられる。例えば、乾式法では、第一導電層上に第二絶縁層が形成されないように、第一導電層71上をマスク95で被覆した状態で製膜が行われる。湿式法でも、第一導電層71上をマスク95で被覆した状態で製膜が行われることにより、第一導電層形成領域上に開口部92hを形成できる。スクリーン印刷により第二絶縁層が形成される場合、第一導電層形成領域の形状(すなわち、集電極の形状)と逆パターン(ネガパターン)に対応した開口パターンを有するスクリーン版を用いて、絶縁性材料の塗布(印刷)が行われる。
【0071】
光電変換部の第一主面上において、第二絶縁層92は、第一絶縁層91の少なくとも一部を覆うように形成される。また、第二絶縁層92は、塗布層81が形成されていない領域の全面に形成されていることが好ましい。これにより、第一主面上の第一導電層非形成領域の全面が絶縁層90により覆われる。すなわち、第一主面上の第一導電層非形成領域は、少なくとも、第一絶縁層91および第二絶縁層92いずれか一方により覆われることが好ましい。
【0072】
第二絶縁層92が形成された後に、めっき法により第二導電層72が形成される(めっき工程、
図4(E))。本実施形態では、第二絶縁層92が形成されていない開口部92hにおいて、第一導電層71が露出した状態である。そのため、めっき工程において、第一導電層がめっき液に曝され、この開口部92hを起点として金属の析出が可能となる。
【0073】
第一導電層非形成領域の全面に絶縁層90が形成されていれば、めっき法により第二導電層が形成される際に、絶縁層90が保護層となり、光電変換部50を、めっき液から化学的および電気的に保護することが可能となる。例えば、ヘテロ接合太陽電池のように光電変換部50の表面に透明電極層6aが形成されている場合は、透明電極層の表面に絶縁層90が形成されることで、透明電極層とめっき液との接触が抑止され、透明電極層の溶解や、透明電極層上への金属層(第二導電層)の析出を防ぐことができる。
【0074】
太陽電池の受光面側の集電極は、線幅が小さく(遮光面積が小さく)、かつ低抵抗であることが求められるため、幅に対する厚みの比(アスペクト比)が大きいことが好ましい。前述の特許文献3(特開2010−98232号公報)にも記載されているように、導電性ペーストが流動して濡れ広げられると、集電極の線幅が大きくなるため、アスペクト比が小さくなり、遮光面積が大きくなる。そのため、導電性のペーストを用いて集電極や導電性シードが形成される場合、一般には、高粘度で、濡れ広がりによる染み出しが生じ難い導電性ペーストが用いられる。一方、本発明者らの検討によれば、このような導電性ペーストにより導電層が形成された場合、導電層の近傍の絶縁層にピンホール等が発生すると、めっきの際に、導電層直下の透明電極層等がめっき液に溶解され、導電層が光電変換部から剥れ易くなることが判明した。
【0075】
これに対して、本発明では、導電性ペーストが光電変換部上で濡れ広げられ、絶縁性材料が染み出すことにより、第一導電層71と、その外縁に接する第一絶縁層91とが、連続した一体の塗布層81として形成される。そのため、第一導電層と絶縁層との間に空隙が形成されず、第一絶縁層上に形成される第二絶縁層に、ピンホールや、局所的に膜厚の小さい部分が存在する場合でも、第一導電層近傍の光電変換部とめっき液との接触が抑制され、光電変換部から第一導電層が剥離し難い。
【0076】
また、本発明においては、第一導電層71の外縁に接する第一絶縁層91上に、第二絶縁層92が形成されるため、第一導電層71の近傍では、絶縁層90が二層構成となる。第一導電層形成領域およびその近傍の光電変換部の表面(ヘテロ接合太陽電池では、透明電極層)は、光電変換部と集電極とのコンタクト領域である。このコンタクト領域上の絶縁層90が二層構成であるため、めっき工程において、めっき液と光電変換部のコンタクト領域との接触が大幅に低減される。また、太陽電池の実使用時には、光電変換部のコンタクト領域と環境因子(水分や有機ガス等)との接触が抑制される。そのため、本発明の構成によれば、太陽電池特性が高められることに加えて、太陽電池の信頼性向上においても有利である。
【0077】
一般に、導電性シード上に選択的にめっき法により金属層を析出させるためには、導電性シードの形状(導電性シードの幅)に合わせてマスクを配置する必要があり、厳密な位置合わせ精度が要求される。例えば、従来技術では、導電性シードをスクリーン印刷する際のスクリーン版85の開口部の位置と、絶縁層を形成する際のマスク95による遮蔽領域との位置合わせ精度が低い場合、導電性シードと絶縁層との間に空隙が形成され、そこからめっき液が浸透し、特性の低下を招く。
【0078】
これに対して、本発明では、第一導電層71の外縁に接して第一絶縁層91が形成されるため、第二絶縁層形成時には、第一導電層形成領域の少なくとも一部を覆うようにマスクを配置すればよく、第一絶縁層91の幅L
9に相当する位置合わせ精度のマージンが存在する。そのため、第二絶縁層形成時に、マスクの配置や印刷位置の厳密な位置合わせが不要となり、生産性を高めることができる。
【0079】
第二絶縁層92の材料としては、電気的に絶縁性を示す材料が用いられる。また、第二絶縁層92は、めっき液に対する化学的安定性を有する材料であることが望ましい。めっき液に対する化学的安定性が高い材料を用いることにより、第二導電層形成時のめっき工程中に、第二絶縁層92により、光電変換部がめっき液から保護されるため、光電変換部表面へのダメージが生じ難くなる。
【0080】
第二絶縁層92は、光電変換部50との付着強度が大きいことが好ましい。例えば、ヘテロ接合太陽電池では、第二絶縁層92は、光電変換部50表面の受光面側透明電極層6aとの付着強度が大きいことが好ましい。透明電極層と絶縁層との付着強度を大きくすることにより、めっき工程中に、第二絶縁層が剥離し難くなり、透明電極層上への金属の析出を防ぐことができる。
【0081】
第二絶縁層92には、光吸収が少ない材料を用いることが好ましい。第二絶縁層92は、光電変換部50の受光面側に形成されるため、絶縁層による光吸収が小さければ、より多くの光を光電変換部へ取り込むことが可能となる。例えば、第二絶縁層92が透過率90%以上の十分な透明性を有する場合、第二絶縁層での光吸収による光学的な損失が小さく、第二導電層形成後に絶縁層を除去することなく、そのまま太陽電池として使用することができる。そのため、太陽電池の製造工程を単純化でき、太陽電池の生産性をより向上させることが可能となる。第二絶縁層92が除去されることなくそのまま太陽電池として使用される場合、第二絶縁層92は、透明性に加えて、十分な耐候性、および熱・湿度に対する安定性を有する材料を用いて形成されることがより望ましい。
【0082】
第二絶縁層の材料は、無機絶縁性材料でも、有機絶縁性材料でもよい。無機絶縁性材料としては、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等の材料を用いることができる。有機絶縁性材料としては、例えば、ポリエステル、エチレン酢酸ビニル共重合体、アクリル、エポキシ、ポリウレタン、有機シロキサン等の材料を用いることができる。また、有機−無機ハイブリッド絶縁性材料を用いることもできる。
【0083】
酸化シリコンや窒化シリコン等の無機材料からなる絶縁層の形成には、プラズマCVD法、スパッタ法等の乾式法が好ましく用いられる。また、プラズマCVDなどに代表されるような乾式法で第二絶縁層92を形成する場合は、第二絶縁層92に好適な反射防止特性を付与する観点から、膜厚は30nm〜250nmの範囲内で設定されることが好ましく、50nm〜250nmの範囲内で設定されることがより好ましい。
【0084】
有機材料からなる絶縁層の形成には、スクリーン印刷法等の湿式法が好ましく用いられる。これらの方法によれば、ピンホール等の欠陥が少なく、緻密な構造の膜を形成することが可能となる。
【0085】
第二絶縁層92の膜厚は、第二絶縁層の材料や形成方法に応じて適宜設定される。スクリーン印刷法などの湿式法により第二絶縁層92が形成される場合、第二絶縁層は、絶縁層印刷時に透明導電層の表面凹凸を完全に覆う程度に厚いことが好ましい。かかる観点から、第二絶縁層の膜厚は10μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましい。また、めっき工程の起点となる集電極形成領域は第二絶縁層により被覆されないことが求められる。かかる観点から、第二絶縁層の膜厚は40μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがさらに好ましい。
【0086】
<第二の実施形態>
上述のように、第一の実施形態では、マスク等を用いて第一導電層上を被覆する方法や、印刷法等により、第一導電層形成領域上に開口部92hを有する第二絶縁層92が形成される。一方、本発明の第二の実施形態では、第一導電層71上の全面に第二絶縁層92が形成された後、第一導電層71上の第二絶縁層92に開口が形成され、この開口を起点としてめっき法により第二導電層72が形成される。
【0087】
第二の実施形態において、第二絶縁層に開口を形成する方法は特に制限されず、やすり等を用いた研磨や機械的な孔開け、粘着テープ等を用いて局所的に絶縁層を剥離する方法、レーザ照射、化学エッチング等が採用できる。
【0088】
好ましくは、第一導電層中の低融点材料を熱流動させることにより、第一導電層上の第二絶縁層に開口が形成される。例えば、低融点材料を含有する第一導電層上に第二絶縁層を形成後、低融点材料の熱流動開始温度T
1以上に加熱(アニール)して第一導電層の表面形状に変化を生じさせることにより、その上に形成されている第二絶縁層に開口(き裂)が形成される。
【0089】
以下、第一導電層中の低融点材料の熱流動を利用して、絶縁層に開口を形成し、この開口を起点として第二導電層を形成する方法を図面に基づいて説明する。
図6は、本発明の第二の実施形態により、太陽電池の光電変換部50上へ、絶縁層90および集電極70を形成する方法を示す工程概念図である。
【0090】
まず、第一の実施形態と同様に、光電変換部50が準備される(光電変換部準備工程、
図6(A))。次いで、光電変換部50の第一主面上に、第一導電層を形成するために、低融点材料711および絶縁性材料712を含む導電性ペーストが塗布される(
図6(B))。
【0091】
低融点材料711は、導電性微粒子であることが好ましい。低融点材料711が導電性の場合、導電性ペーストは、低融点材料711および絶縁性材料(樹脂材料)712を含有する。低融点材料が絶縁性の場合、導電性ペーストは、低融点材料および樹脂材料に加えて、導電性材料を含有する。また、後述のように、導電性ペーストは、低融点材料711以外に、高融点材料713等の別の材料を含有していてもよい。本実施形態においても、第一の実施形態と同様に、導電性ペーストの塗布領域83からペースト中の絶縁性材料が染み出して光電変換部上に濡れ広がることにより、第一導電層71の外縁に接して、第一絶縁層91が形成される(
図6(C))。
【0092】
光電変換部の第一主面上への導電性ペーストの塗布により、第一導電層71および第一絶縁層91が形成された後、第一導電層非形成領域上に、第二絶縁層92が形成される(第二絶縁層形成工程)。第二絶縁層92は、塗布層84の略全体、すなわち第一導電層71および第一絶縁層91の略全体を覆うように形成される(
図6(D))。ここで、略全体を覆うとは、第一導電層および第一絶縁層の全体が覆われている場合に加えて、局所的なピンホールが存在する場合や、絶縁層が局所的に島状に形成されている状態を含む。本実施形態においても、第二絶縁層92は、塗布層84が形成されていない領域の全面に形成され、第一主面上の第一導電層非形成領域の全面が絶縁層90により覆われることが好ましい。
【0093】
第二絶縁層が形成された後、加熱によるアニール処理が行われる(アニール工程、
図6(E))。アニール処理により、第一導電層71がアニール温度Taに加熱され、低融点材料711が熱流動することによって第一導電層71の表面形状が変化する。この変化に伴って第一導電層71上に形成された第二絶縁層92に変形が生じ、開口90hが形成される。開口は、例えばき裂状に形成される。
【0094】
第二絶縁層92に開口90hを形成後に、めっき法により第二導電層72が形成される(めっき工程、
図6(F))。第一導電層71は第二絶縁層92により被覆されているが、第二絶縁層92の開口90hでは、第一導電層71が露出した状態である。そのため、めっき工程において第一導電層がめっき液に曝され、この開口90hを起点として金属の析出が可能となる。
【0095】
本実施形態においても、第一導電層71の近傍では、絶縁層90が二層構成であるため、めっき工程において、光電変換部とめっき液との接触を防止できる。また、本実施形態では、第二絶縁層を全面に形成すればよいため、第二絶縁層形成時に、集電極形成領域近傍でのマスクやスクリーン版の位置合わせ等が不要となり、生産性を高めることができる。
【0096】
本実施形態において、第一導電層71は、熱流動開始温度T
1の低融点材料711を含む。熱流動開始温度とは、加熱により材料が熱流動を生じ、低融点材料を含む層の表面形状が変化する温度であり、典型的には融点である。高分子材料やガラスでは、融点よりも低温で材料が軟化して熱流動を生じる場合がある。このような材料では、熱流動開始温度=軟化点と定義できる。軟化点とは、粘度が4.5×10
6Pa・sとなる温度である(ガラスの軟化点の定義に同じ)。
【0097】
低融点材料は、アニール処理において熱流動を生じ、第一導電層71の表面形状に変化を生じさせるものであることが好ましい。そのため、低融点材料の熱流動開始温度T
1は、アニール工程における加熱温度(アニール温度)Taよりも低温であることが好ましい。
【0098】
低融点材料の熱流動開始温度T
1の下限は特に限定されない。アニール処理時における第一導電層の表面形状の変化量を大きくして、第二絶縁層92に開口90hを容易に形成するためには、第一導電層の形成時に、低融点材料が熱流動を生じないことが好ましい。導電性ペーストを用いて第一導電層71(および第一絶縁層91)が形成される場合、ペーストの乾燥のために加熱が行われることがある。この場合は、低融点材料の熱流動開始温度T
1は、導電性ペーストの乾燥のための加熱温度よりも高温であることが好ましい。かかる観点から、低融点材料の熱流動開始温度T
1は、80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。
【0099】
低融点材料は、熱流動開始温度T
1が上記範囲であれば、有機物であっても、無機物であってもよい。低融点材料は、電気的には導電性であっても、絶縁性でも良いが、導電性を有する金属材料であることが望ましい。低融点材料が金属材料であれば、第一導電層の抵抗値を小さくできるため、電解めっき法により第二導電層が形成される場合に、第二導電層の膜厚の均一性を高めることができる。また、低融点材料が金属材料であれば、光電変換部50と集電極70との間の接触抵抗を低下させることも可能となる。
【0100】
導電性の低融点材料としては、低融点金属材料の単体もしくは合金、複数の低融点金属材料の混合物を好適に用いることができる。低融点金属材料としては、例えば、インジウムやビスマス、ガリウム等が挙げられる。低融点材料が、金属微粒子等の粒子状材料である場合、アニール処理による第二絶縁層への開口の形成を容易とする観点から、低融点材料の粒径D
Lは、第一導電層71の膜厚の1/20以上であることが好ましく、1/10以上であることがより好ましい。
【0101】
低融点材料の粒子の形状は特に限定されないが、扁平状等の非球形が好ましい。また、球形の粒子を焼結等の手法により結合させて非球形としたものも好ましく用いられる。一般に、金属粒子が液相状態となると、表面エネルギーを小さくするために、表面形状が球形となりやすい。アニール処理前の第一導電層の低融点材料が非球形であれば、アニール処理により熱流動開始温度T
1以上に加熱されると、粒子が球形に近付くため、第一導電層の表面形状の変化量がより大きくなる。そのため、第一導電層71上の第二絶縁層92への開口の形成が容易となる。
【0102】
第一導電層71は、上記の低融点材料に加えて、低融点材料よりも相対的に高温の熱流動開始温度を有する高融点材料を含有することが好ましい。第一導電層71が高融点材料713を有することで、第一導電層と第二導電層とを効率よく導通させることができ、太陽電池の変換効率を向上させることができる。例えば、低融点材料として表面エネルギーの大きい材料が用いられる場合、アニール処理により第一導電層71が高温に曝されて、低融点材料が液相状態になると、低融点材料の粒子が集合して粗大な粒状となり、第一導電層71に断線を生じる場合がある。これに対して、高融点材料はアニール処理時の加熱によっても液相状態とならないため、第一導電層形成材料中に高融点材料を含有することにより、低融点材料の粗大化による第一導電層の断線が抑制され得る。
【0103】
高融点材料の熱流動開始温度T
2は、アニール温度Taよりも高いことが好ましい。すなわち、第一導電層71が低融点材料および高融点材料を含有する場合、低融点材料の熱流動開始温度T
1、高融点材料の熱流動開始温度T
2、およびアニール処理におけるアニール温度Taは、T
1<Ta<T
2を満たすことが好ましい。高融点材料は、絶縁性材料であっても導電性材料であってもよいが、第一導電層の抵抗をより小さくする観点から導電性材料が好ましい。また、低融点材料の導電性が低い場合は、高融点材料として導電性の高い材料を用いることにより、第一導電層全体としての抵抗を小さくすることができる。導電性の高融点材料としては、例えば、銀、アルミニウム、銅などの金属材料の単体もしくは、複数の金属材料を好ましく用いることができる。
【0104】
第一導電層71が低融点材料と高融点材料とを含有する場合、その含有比は、上記のような低融点材料粗大化による断線の抑止や、第一導電層の導電性、絶縁層への開口の形成容易性(第二導電層の金属析出の起点数の増大)等の観点から、適宜に調整される。その最適値は、用いられる材料や粒径の組合せに応じて異なるが、例えば、低融点材料と高融点材料の重量比(低融点材料:高融点材料)は、5:95〜67:33の範囲である。低融点材料:高融点材料の重量比は、10:90〜50:50がより好ましく、15:85〜35:65がさらに好ましい。
【0105】
前述のごとく、第一導電層71は導電性であり、体積抵抗率が10
−2Ω・cm以下であればよい。第一導電層71の体積抵抗率は、10
−4Ω・cm以下であることが好ましい。第一導電層が低融点材料のみを有する場合は、低融点材料が導電性を有していればよい。第一導電層が、低融点材料および高融点材料を含有する場合は、低融点材料および高融点材料のうち、少なくともいずれか一方が導電性を有していればよい。例えば、低融点材料/高融点材料の組合せとしては、絶縁性/導電性、導電性/絶縁性、導電性/導電性が挙げられるが、第一導電層をより低抵抗とするためには、低融点材料および高融点材料の双方が導電性を有する材料であることが好ましい。
【0106】
なお、アニール処理において、第二絶縁層92の開口90hは、主に第一導電層71の低融点材料711上に形成される。低融点材料が絶縁性材料の場合、開口の直下は絶縁性であるが、低融点材料の周辺に存在する導電性の高融点材料にもめっき液が浸透するために、第一導電層とめっき液とを導通させることが可能である。
【0107】
上記のような低融点材料と高融点材料との組合せを用いる以外に、第一導電層71中の導電性材料の大きさ(例えば、粒径)等を調整することにより、アニール処理時の加熱による第一導電層の断線を抑制し、変換効率を向上させることも可能である。例えば、銀、銅、金等の高い融点を有する材料も、粒径が1μm以下の微粒子であれば、融点よりも低温の200℃程度あるいはそれ以下の温度T
1’で焼結ネッキング(微粒子の融着)を生じるため、本発明の「低融点材料」として用いることができる。このような焼結ネッキングを生じる材料は、焼結ネッキング開始温度T
1’以上に加熱されると、微粒子の外周部付近に変形が生じるため、第一導電層の表面形状を変化させ、第二絶縁層に開口を形成することができる。また、微粒子が焼結ネッキング開始温度以上に加熱された場合であっても、融点T
2’未満の温度であれば微粒子は固相状態を維持するため、材料の粗大化による断線が生じ難い。すなわち、金属微粒子等の焼結ネッキングを生じる材料は、本発明における「低融点材料」でありながら、「高融点材料」としての側面も有しているといえる。このような焼結ネッキングを生じる材料では、焼結ネッキング開始温度T
1’=熱流動開始温度T
1と定義できる。
【0108】
本実施形態において、第二絶縁層92の膜厚は、アニール処理における第一導電層の表面形状の変化に伴って生じる界面の応力等によって、第二絶縁層に開口が形成され得る程度に薄いことが好ましい。かかる観点から、第二絶縁層92の膜厚は、1000nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましい。なお、第一導電層形成領域上の第二絶縁層の膜厚と第一導電層非形成領域上の第二絶縁層の膜厚は異なっていてもよい。例えば、第一導電層形成領域では、アニール処理による開口の形成を容易とする観点で第二絶縁層の膜厚が設定され、第一導電層非形成領域では、適宜の反射防止特性を有する光学膜厚となるように第二絶縁層の膜厚が設定されてもよい。
【0109】
本実施形態においても、第一の実施形態と同様に、第二絶縁層の材料は、無機絶縁性材料でも、有機絶縁性材料でもよい。アニール処理における第一導電層の表面形状の変化に伴って生じる界面の応力等による、絶縁層への開口の形成を容易とする観点から、本実施形態においては、絶縁層の材料は、破断伸びが小さい無機材料であることが好ましい。
【0110】
第一導電層形成領域上の第二絶縁層92は、必ずしも連続した層状でなくてもよく、島状であっても良い。なお、本明細書における「島状」との用語は、表面の一部に、絶縁層が形成されていない領域を有する状態を意味する。
【0111】
本実施形態において、第一導電層形成領域上の第二絶縁層92は、第一導電層71と第二導電層72との付着力の向上にも寄与し得る。例えば、下地電極層であるAg層上にめっき法によりCu層が形成される場合、Ag層とCu層との付着力は小さいが、酸化シリコン等からなる第二絶縁層上にCu層が形成されることにより、第二導電層の付着力が高められ、太陽電池の信頼性を向上することが期待される。
【0112】
アニール処理時のアニール温度(加熱温度)Taは、低融点材料の熱流動開始温度T
1よりも高温、すなわちT
1<Taであることが好ましい。アニール温度Taは、T
1+1℃≦Ta≦T
1+100℃を満たすことがより好ましく、T
1+5℃≦Ta≦T
1+60℃を満たすことがさらに好ましい。アニール温度は、第一導電層の材料の組成や含有量等に応じて適宜設定され得る。
【0113】
アニール温度Taは、光電変換部50の耐熱温度よりも低温であることが好ましい。これに伴って、第一導電層71の低融点材料の熱流動開始温度T
1も、光電変換部の耐熱温度よりも低温であることが好ましい。
【0114】
光電変換部の耐熱温度とは、当該光電変換部を備える太陽電池、あるいは太陽電池を用いて作製した太陽電池モジュールの特性が不可逆的に低下する温度であり、光電変換部の構成により異なる。例えば、ヘテロ接合太陽電池では、光電変換部を構成する結晶シリコン基板は、500℃以上の高温に加熱された場合でも特性変化を生じ難いが、透明電極層や非晶質シリコン系薄膜は250℃程度に加熱されると、熱劣化を生じたり、ドープ不純物の拡散を生じ、太陽電池特性の不可逆的な低下を生じる場合がある。
【0115】
すなわち、ヘテロ接合太陽電池や、シリコン系薄膜太陽電池のように透明電極層や非晶質シリコン系薄膜を有する場合の耐熱温度は250℃程度である。そのため、光電変換部が非晶質シリコン系薄膜を備えるヘテロ接合太陽電池や、シリコン系薄膜太陽電池の場合、非晶質シリコン系薄膜およびその界面での熱ダメージ抑制の観点から、アニール温度は250℃以下に設定されることが好ましい。より高性能の太陽電池を実現するためには、アニール温度は200℃以下にすることがより好ましく、180℃以下にすることがさらに好ましい。
【0116】
一方、一導電型結晶シリコン基板の第一主面上に逆導電型の拡散層を有する結晶シリコン太陽電池は、非晶質シリコン薄膜や透明電極層を有していないため、耐熱温度は800℃〜900℃程度である。そのため、250℃よりも高温のアニール温度Taでアニール処理が行われてもよい。
【0117】
なお、第二の実施形態において、第二絶縁層への開口の形成方法は、絶縁層形成後にアニール処理を行う方法に限定されない。例えば、基板を加熱しながら第二絶縁層が形成されることで、絶縁層の形成と略同時に開口を形成することもできる。ここで、「絶縁層の形成と略同時」とは、絶縁層形成工程の他に、アニール処理等の別途の工程が行われていない状態、すなわち、絶縁層の製膜中、あるいは製膜直後の状態を意味する。製膜直後とは、絶縁層の製膜終了後(加熱停止後)から、基板が冷却され室温等に戻るまでの間も含むものとする。また、低融点材料上の絶縁層に開口が形成される場合、低融点材料上の絶縁層の製膜が終わった後であっても、その周辺に絶縁層が製膜されることに追随して、低融点材料周辺の絶縁層に変形が生じ、開口が形成される場合も含むものとする。
【0118】
絶縁層の形成と略同時に開口を形成する方法としては、例えば、絶縁層形成工程において、第一導電層71の低融点材料711の熱流動開始温度T
1よりも高い温度Tbに基板を加熱しながら、第一導電層71上に第二絶縁層92を製膜する方法が用いられる。低融点材料が流動状態となっている第一導電層上に第二絶縁層92が製膜されるため、製膜と同時に製膜界面に応力が生じ、例えばき裂状の開口が絶縁層に形成される。
【0119】
なお、絶縁層形成時の基板温度Tb(以下、「絶縁層形成温度」)とは、絶縁層の製膜開始時点の基板表面温度(「基板加熱温度」ともいう)を表す。一般に、絶縁層の製膜中の基板表面温度の平均値は、通常製膜開始時点の基板表面温度以上となる。したがって、絶縁層形成温度Tbが、低融点材料の熱流動開始温度T
1よりも高温であれば、絶縁層に開口等の変形を形成することができる。
【0120】
例えば、第二絶縁層92がCVD法やスパッタ法等の乾式法により形成される場合は、絶縁層製膜中の基板表面温度を低融点材料の熱流動開始温度T
1よりも高温とすることにより、開口を形成することができる。また、第二絶縁層92が湿式法により形成される場合は、溶媒を乾燥する際の基板表面温度を低融点材料の熱流動開始温度T
1よりも高温とすることにより、開口を形成することができる。なお、湿式法により絶縁層が形成される場合の「製膜開始時点」とは、溶媒の乾燥開始時点を指す。絶縁層形成温度Tbの好ましい範囲は、前記アニール温度Taの好ましい範囲と同様である。
【0121】
基板表面温度は、例えば基板表面に温度表示材(サーモラベルやサーモシールとも呼ばれる)や熱電対を貼り付けて測定することができる。また、加熱部(ヒーターなど)の温度は、基板の表面温度が所定範囲となるように適宜に調整することができる。
【0122】
絶縁層の形成と略同時に開口が形成された後、開口の形成が不十分な箇所がある場合等は、さらに前述のアニール工程が行われてもよい。
【0123】
[集電極形成後の付加工程]
上記のように、本発明の第一の実施形態および第二の実施形態のいずれにおいても、第一導電層上の絶縁層の開口(部)を起点として、めっきにより第二導電層が形成される。めっき後には、基板12の表面に残留しためっき液を除去することが好ましい。めっき液を除去することによって、第一導電層非形成領域に析出した金属を除去することができる。第一導電層非形成領域に析出する金属としては、例えば第二絶縁層92のピンホール等を起点とするものが挙げられる。めっき液除去工程により、このような金属が除去されることによって、遮光が低減され、太陽電池特性をより向上させることが可能となる。
【0124】
本発明においては、集電極形成後(めっき工程後)に、光電変換部上の絶縁層が除去されてもよい。特に、第二絶縁層として光吸収の大きい材料が用いられる場合は、絶縁層の光吸収による太陽電池特性の低下を抑制するために、絶縁層除去工程が行われることが好ましい。第二絶縁層の除去方法は、絶縁層材料の特性に応じて適宜選択される。例えば、化学的なエッチングや機械的研磨により第二絶縁層が除去され得る。また、材料によってはアッシング(灰化)法も適用可能である。この際、光取り込み効果をより向上させる観点から、第一導電層非形成領域上の第二絶縁層が全て除去されることがより好ましい。なお、第二絶縁層として光吸収の小さい材料が用いられる場合は、絶縁層除去工程が行われる必要はない。
【0125】
以上、ヘテロ接合太陽電池の受光面側に集電極70が設けられる場合を中心に説明したが、裏面側にも同様の集電極が形成されてもよい。ヘテロ接合太陽電池のように結晶シリコン基板を用いた太陽電池は、電流量が大きいため、一般に、透明電極層/集電極間の接触抵抗による発電ロスが顕著となる傾向がある。これに対して、第一導電層と第二導電層を有する集電極は、透明電極層との接触抵抗が低いため、本発明によれば、接触抵抗に起因する発電ロスを低減することが可能となる。
【0126】
[ヘテロ接合太陽電池以外への適用例]
本発明は、ヘテロ接合太陽電池以外の結晶シリコン太陽電池や、GaAs等のシリコン以外の半導体基板が用いられる太陽電池、非晶質シリコン系薄膜や結晶質シリコン系薄膜のpin接合あるいはpn接合上に透明電極層が形成されたシリコン系薄膜太陽電池や、CIS,CIGS等の化合物半導体太陽電池、色素増感太陽電池や有機薄膜(導電性ポリマー)等の有機薄膜太陽電池のような各種の太陽電池に適用可能である。
【0127】
結晶シリコン太陽電池としては、一導電型(例えばp型)結晶シリコン基板の第一主面上に逆導電型(例えばn型)の拡散層を有し、拡散層上に前記集電極を有する構成が挙げられる。このような結晶シリコン太陽電池は、一導電型層の裏面側にp
+層等の導電型層を備えるのが一般的である。このように、光電変換部が非晶質シリコン層や透明電極層を含まない場合は、低融点材料の熱流動開始温度T
1およびアニール温度Taは、250℃より高くてもよい。
【0128】
シリコン系薄膜太陽電池としては、例えば、p型薄膜とn型薄膜との間に非晶質の真性(i型)シリコン薄膜を有する非晶質シリコン系薄膜太陽電池や、p型薄膜とn型薄膜との間に結晶質の真性シリコン薄膜を有する結晶質シリコン系半導体太陽電池が挙げられる。また、複数のpin接合が積層されたタンデム型の薄膜太陽電池も好適である。このようなシリコン系薄膜太陽電池では、透明電極層や非晶質シリコン系薄膜の耐熱性を勘案して、低融点材料の熱流動開始温度T
1およびアニール温度Taは250℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、180℃以下であることがさらに好ましい。
【0129】
[太陽電池モジュール]
本発明の太陽電池は、実用に供するに際して、モジュール化されることが好ましい。太陽電池のモジュール化は、適宜の方法により行われる。例えば、集電極にタブ等のインターコネクタを介してバスバーが接続されることによって、複数の太陽電池セルが直列または並列に接続され、封止材およびガラス板により封止されることによりモジュール化が行われる。
【実施例】
【0130】
以下、ヘテロ接合太陽電池の作製例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0131】
(作製例1)
一導電型単結晶シリコン基板として、入射面の面方位が(100)で、厚みが200μmのn型単結晶シリコンウェハを用い、このシリコンウェハを2重量%のHF水溶液に3分間浸漬し、表面の酸化シリコン膜を除去後、超純水によるリンスが2回行われた。このシリコン基板を、70℃に保持された5/15重量%のKOH/イソプロピルアルコール水溶液に15分間浸漬し、ウェハの表面をエッチングすることでテクスチャが形成された。その後に超純水によるリンスが2回行われた。原子間力顕微鏡(AFM パシフィックナノテクノロジー社製)により、ウェハの表面観察を行ったところ、ウェハの表面はエッチングが進行しており、(111)面が露出したピラミッド型のテクスチャが形成されていた。
【0132】
エッチング後のウェハがCVD装置へ導入され、その受光面側に、真性シリコン系薄膜2aとしてi型非晶質シリコンが5nmの膜厚で製膜された。i型非晶質シリコンの製膜条件は、基板温度:150℃、圧力:120Pa、SiH
4/H
2流量比:3/10、投入パワー密度:0.011W/cm
2であった。なお、本作製例における薄膜の膜厚は、ガラス基板上に同条件にて製膜された薄膜の膜厚を、分光エリプソメトリー(商品名M2000、ジェー・エー・ウーラム社製)にて測定することにより求められた製膜速度から算出された値である。
【0133】
i型非晶質シリコン層2a上に、逆導電型シリコン系薄膜3aとしてp型非晶質シリコンが7nmの膜厚で製膜された。p型非晶質シリコン層3aの製膜条件は、基板温度が150℃、圧力60Pa、SiH
4/B
2H
6流量比が1/3、投入パワー密度が0.01W/cm
2であった。なお、上記でいうB
2H
6ガス流量は、H
2によりB
2H
6濃度が5000ppmまで希釈された希釈ガスの流量である。
【0134】
次にウェハの裏面側に、真性シリコン系薄膜2bとしてi型非晶質シリコン層が6nmの膜厚で製膜された。i型非晶質シリコン層2bの製膜条件は、上記のi型非晶質シリコン層2aの製膜条件と同様であった。i型非晶質シリコン層2b上に、一導電型シリコン系薄膜3bとしてn型非晶質シリコン層が4nmの膜厚で製膜された。n型非晶質シリコン層3bの製膜条件は、基板温度:150℃、圧力:60Pa、SiH
4/PH
3流量比:1/2、投入パワー密度:0.01W/cm
2であった。なお、上記でいうPH
3ガス流量は、H
2によりPH
3濃度が5000ppmまで希釈された希釈ガスの流量である。
【0135】
この上に透明電極層6aおよび6bとして、各々酸化インジウム錫(ITO、屈折率:1.9)が100nmの膜厚で製膜された。ターゲットとして酸化インジウムを用い、基板温度:室温、圧力:0.2Paのアルゴン雰囲気中で、0.5W/cm
2のパワー密度を印加して透明電極層の製膜が行われた。裏面側透明電極層6b上には、裏面金属電極8として、スパッタ法により銀が500nmの膜厚で形成された。受光面側透明電極層6a上には、第一導電層71および第二導電層72を有する集電極70が以下のように形成された。
【0136】
第一導電層71の形成には、導電性微粒子710として、低融点材料としてのSnBi金属粉末(粒径D
L=25〜35μm、融点T
1=141℃)と、高融点材料としての銀粉末(粒径D
H=2〜3μm、融点T
2=971℃)とを、20:80の重量比で含み、さらに絶縁性材料(バインダー樹脂)としてエポキシ系樹脂を5wt%含む印刷ペースト(塗布材料)が用いられた。この印刷ペーストを、集電極パターンに対応する開口幅(L=80μm)を有する#230メッシュ(開口幅:l=85μm)のスクリーン版を用いて、スクリーン印刷し、180℃で乾燥が行われた。このサンプルを光学顕微鏡にて観察したところ、第一導電層に含まれるバインダー樹脂の一部が染み出し、該染み出し部分により、第一導電層71に接するように第一絶縁層91が0.5mm幅に形成されていた。
【0137】
第一導電層71と第一絶縁層91が形成されたウェハが、CVD装置に投入され、第二絶縁層92として酸化シリコン層(屈折率:1.5)が、プラズマCVD法により45nmの厚みで受光面側に形成された。この際、第二絶縁層は、第一導電層非形成領域上と第一導電層上の全面に形成されていた。すなわち、第一導電層上および第一絶縁層上の全面が第二絶縁層に覆われていた。
【0138】
第二絶縁層92の製膜条件は、基板温度:135℃、圧力133Pa、SiH
4/CO
2流量比:1/20、投入パワー密度:0.05W/cm
2(周波数13.56MHz)であった。その後、絶縁層形成後のウェハが熱風循環型オーブンに導入され、大気雰囲気において、180℃で20分間、アニール処理が実施された。
【0139】
以上のようにアニール工程までが行われた基板12が、
図3に示すように、めっき槽11に投入された。めっき液16には、硫酸銅五水和物、硫酸、および塩化ナトリウムが、それぞれ120g/l、150g/l、および70mg/lの濃度となるように調製された溶液に、添加剤(上村工業製:品番ESY−2B、ESY−H、ESY−1A)が添加されたものが用いられた。このめっき液を用いて、温度40℃、電流3A/dm
2の条件でめっきが行われ、第一導電層71上の絶縁層上に、10μm程度の厚みで第二導電層72として銅が均一に析出した。第一導電層が形成されていない領域への銅の析出はほとんどみられなかった。
【0140】
該基板を用い、その後、さらに電流密度5A/dm
2の条件で過剰にめっきを実施し、第一導電層非形成領域にCuをピンホール状に析出させた。過剰めっき後の集電極近傍の平面観察写真を
図7Aに示す。
図7Aにおいて、写真下端の白色部分は、第一導電層形成領域上に、第二導電層として銅が析出した集電極部分である。図中の黒色矢印より下側の領域aは、第一絶縁層(印刷ペースト中のバインダー樹脂の染み出し部分)上に第二絶縁層(酸化シリコン層)が形成された領域であり、黒線矢印より上側の領域bは、透明電極層上に直接第二絶縁層が形成された領域である。
図7Aから明らかなように、第一絶縁層非形成領域bでは、銅の析出がみられたのに対して、第一導電層近傍の第一絶縁層形成領域aでは、銅はほとんど析出していなかった。
【0141】
(作製例2)
作製例1と同様に、受光面側透明電極層6a上に、印刷ペースト(塗布材料)がスクリーン印刷され、第一導電層71に接するように第一絶縁層91が形成された。第一導電層形成パターンのネガパターンに開口部を有するスクリーン版を利用して、シロキサン系アクリル樹脂をスクリーン印刷し、400mJの条件にてUV硬化させることにより、第二絶縁層92を形成した。第二絶縁層は、印刷ペーストの塗布層84が形成されていない領域の全面に形成された。第二絶縁層は、ペースト中のバインダー樹脂の染み出しにより形成された第一絶縁層上の略全面を覆うように形成されており、第一導電層上には形成されていなかった。
【0142】
その後、作製例1と同様にして、第一導電層71上に、第二導電層72として銅を析出させた。第一導電層が形成されていない領域への銅の析出はほとんどみられなかった。
図8Aにおいて、中央の白色部分が第一導電層上に銅が析出した領域であり、その周囲の黒色部分は、第二絶縁層の膜厚が小さい領域である。
【0143】
(作製例3)
第一導電層(および第一絶縁層)形成用の印刷ペーストとして、バインダー樹脂の含有量が20wt%のペーストが用いられた点を除いて、作製例1と同様にヘテロ接合太陽電池が作製された。
【0144】
(作製例4)
作製例4では、第一導電層(および第一絶縁層)形成用の印刷ペーストとして、バインダー樹脂の含有量が4wt%のペーストが用いられた点を除いて、作製例1と同様にヘテロ接合太陽電池が作製された。印刷ペーストをスクリーン印刷し、乾燥後のサンプルを光学顕微鏡にて観察したところ、第一導電層からのバインダー樹脂の染み出しは観測されなかった。すなわち、作製例4では、第一絶縁層91が形成されなかった。
【0145】
作製例1と同様に、第二絶縁層(酸化シリコン層)の製膜およびアニールを実施後に、電流3A/dm
2の条件でめっきが行われ、第一導電層71上の絶縁層上に、10μm程度の厚みで第二導電層72として銅を均一に析出させた。第一導電層が形成されていない領域への銅の析出はほとんどみられなかった。一方、作製例1と同様に過剰めっきを実施したところ、
図7Bに示すように、第一導電層形成領域の近傍に銅の析出がみられた。
【0146】
(作製例5)
作製例5では、作製例4と同様に、バインダー樹脂の含有量が4wt%のペーストを用いて第一導電層を形成後、作製例2と同様に、第一導電層形成パターンのネガパターンのスクリーン版を利用してシロキサン系アクリル樹脂をスクリーン印刷し、硬化させることにより、第二絶縁層92を形成した。その後、第一導電層71上に、第二導電層72として銅を析出させたところ、第一導電層の近傍に銅の析出がみられた。
図8Bにおいて、中央の白色部分が第一導電層上に銅が析出した領域であり、その外縁の黒色部分は、第二絶縁層の膜厚が小さい領域である。第一導電層形成領域近傍の絶縁層の膜厚が小さい部分にも銅が析出していることが分かる。
【0147】
作製例1〜5で用いた導電性ペーストの樹脂含有量および粘度、第一導電層のライン抵抗および線幅、第一絶縁層の線幅(ペーストの染み出し幅)、ならびに第二絶縁層の形成方法および材料を、表1に示す。なお、粘度は、株式会社ブルックフィールド製のHB型回転粘度計にて、14号スピンドルを用い、試料温度25℃、スピンドル回転速度4rpmの条件で測定した値である。
【0148】
【表1】
【0149】
第一導電層形成に用いられる導電性ペースト中のエポキシ樹脂(バインダー樹脂)の含有量が5wt%である作製例1および作製例2、ならびにエポキシ樹脂の含有量が20wt%である作製例3では、導電性ペーストの塗布領域からエポキシが染み出すことにより第一絶縁層が形成されたのに対し、エポキシ樹脂の含有量が4wt%の作製例4および作製例5では、エポキシ樹脂が染み出さず、第一絶縁層が形成されなかった。
【0150】
第一絶縁層を有さない作製例4(
図7B)では、過剰めっき後に、第一導電層形成領域近傍にも銅が析出していたのに対して、第一絶縁層上に第二絶縁層が形成された作製例1(
図7A)および作製例3では、第一導電層近傍(領域a)の絶縁層が二層となっているため、第二絶縁層が単層の箇所(領域b)と比較して、絶縁層によるめっき液からの保護能力が高いことが分かる。また、作製例5(
図8B)では、第一導電層形成領域近傍の第二絶縁層の膜厚が小さくなっている領域で銅が析出していたのに対して、作製例2(
図8A)では、第一導電層非形成領域での銅の析出はみられなかった。
【0151】
これらの結果から、第二導電層が乾式法により形成される場合(作製例1,3)、および印刷法により形成される場合(作製例2)のいずれにおいても、導電性ペーストの絶縁材料が染み出して第一絶縁層が形成されることにより、第一導電層非形成領域上への不所望の金属の析出が抑制されることが分かる。
【0152】
エポキシ樹脂の含有量20%である作製例3では、第一導電層のライン抵抗が1.3Ω/cmであり、作製例1,2に比べて、抵抗が増加した。これは、ペースト中の樹脂含有量が多いことに起因すると考えられる。また、作製例3に比べて、作製例1,2では、第一導電層の線幅が約40μm細くなった。これは、液状樹脂の含有量が小さく、金属粒子の含有量が相対的に大きいために、導電性ペーストの粘度が上昇したことに起因すると考えられる。従って、導電性ペーストの樹脂含有量等を調整することにより、導電性ペーストの粘度を調整し、第一導電層の線幅の増大や、抵抗の増大を抑制でき、太陽電池特性をより向上できると考えられる。
【0153】
以上、作製例を用いて説明したように、本発明によれば、レジスト等を用いて厳密なパターニングを行うことなく、光電変換部をめっき液から保護するための絶縁層を形成することが可能である。また、第一導電層近傍の絶縁層が二層構成であるため、不所望の金属の析出が抑制され、高出力の太陽電池を低コストで提供することが可能となる。
本発明の太陽電池は、光電変換部(50)の第一主面上に集電極(70)を備える。集電極(70)は、光電変換部(50)側から順に、第一導電層(71)と第二導電層(72)とを含む。光電変換部(50)の第一主面上において、第一導電層(70)が形成されていない第一導電層非形成領域には、絶縁層(90)が形成されている。絶縁層(90)は、光電変換部(50)の第一主面上において、第一導電層(71)に接する第一絶縁層(91)と、第一絶縁層(91)上の少なくとも一部を覆うように形成された第二絶縁層(92)とを備える。