【文献】
Engel, G E et al.,Precise multipass Herriott cell design: Derivationof controlling design equations,OPTICS LETTERS,2007年 3月15日,Vol.32, No.6,pp.704-706
【文献】
Herriott D et al.,Off-Axis Paths in Spherical Mirror Interferometers,Applied Optics,1964年,Vol.3, No.4,pp.523-526
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
セル本体と、このセル本体内において、互いに光軸が一致する状態で対向配置された、球面状または放物面状の反射面を有する2つの反射鏡と、各々、反射鏡の光軸に沿って伸びる同一の円環状空間領域内において互いに独立した多重反射光路を形成するよう構成された基準光学測定系および他の光学測定系とを具えてなり、
前記基準光学測定系の多重反射光路は、各々の反射鏡の反射面上における反射点の位置が多重反射に伴って反射鏡の光軸を中心とする円軌道上または楕円軌道上を周回する基準多重反射光路の一部によって構成され、セル本体に対するレーザ光の入射位置とセル本体外部へのレーザ光の出射位置とが、当該基準多重反射光路における互いに異なる反射点の位置に形成されており、
前記他の光学測定系の多重反射光路は、前記基準光学測定系における多重反射光路と異なる当該基準多重反射光路の他の一部によって構成され、セル本体に対するレーザ光の入射位置とセル本体外部へのレーザ光の出射位置とが、前記基準多重反射光路における、前記基準光学測定系における多重反射光路に係る反射点以外の互いに異なる反射点の位置に形成されていることを特徴とするマルチパスセル。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明のマルチパスセルの一例における構成の概略を示す説明図であって、(a)反射鏡の光軸に沿った断面を示す断面図、(b)左側面図、(c)右側面図であり、
図2は、
図1に示すマルチパスセルにおける、基準光学測定系および他の光学測定系の2つの光学測定系の各々において形成される多重反射光路を、一方の反射鏡の反射面上に、他方の反射鏡の反射面上における反射点を投影した状態で示す、説明図、
図3は、
図1に示すマルチパスセルにおいて形成される多重反射光路を説明するための斜視図である。
このマルチパスセルは、被検査ガス(サンプルガス)が導入される円筒状のセル本体11と、その軸方向における両端位置の各々に、互いに焦点距離(曲率半径)が同一の大きさの球面状の反射面21A,31Aを有する第1の反射鏡21および第2の反射鏡31が反射鏡保持部材40によって保持固定された状態で設けられており、第1の反射鏡21および第2の反射鏡31の両者は、互いに光軸L1,L2が一致する状態で対向して配置されている。
図1における符号41A,41Bは、セル本体11の内部空間に連通する開口部であって、一方が被検ガス導入用開口部、他方が被検ガス排出用開口部とされる。
【0018】
セル本体11の、第1の反射鏡21側の外方位置には、第1の光源26および適宜の反射ミラー27を介してセル本体11から出射された光を検出する受光センサ28が配置されており、第1の光源26から照射されるレーザ光が第1の反射鏡21に形成された一方の開口部22Aを介してセル本体11内に入射され、2つの反射鏡21,31によって多重反射された後、第1の反射鏡21に形成された他方の開口部22Bを介して、セル本体11の外部に出射され、反射ミラー27を介して受光センサ28によって受光される基準光学測定系としての第1の光学測定系25が構成されている。
第1の反射鏡21における開口部22A,22Bの各々は、反射鏡21の背面側から透光性を有する窓板部材45によって気密に閉塞されている。
【0019】
上記マルチパスセルにおける第1の光学測定系25の多重反射光路MP1は、セル本体11内へのレーザ光の入射位置とセル本体11外部へのレーザ光の出射位置とが一致する状態で構成された、いわゆる『ヘリオット型』の多重反射光路(以下、「基準ヘリオット型光路」という。)の一部を構成するものであって、2つの反射鏡21,31による反射が繰り返して行われてレーザ光が第1の反射鏡21における入射位置に到達する前の位置、この実施例においては、例えば2つの反射鏡21,31によって3回反射された後の第1の反射鏡21における反射面21A上の位置4(A)からセル本体11の外部に出射されるよう構成されている。
従って、第1の光学測定系25の多重反射光路MP1においては、第1の反射鏡21の反射面21A上における反射点(
図2および
図3において(A)が付された符号で示されており、数字は反射順序を示している。)は、セル本体11内に対する光の入射位置(開口部22Aの形成位置)0(A)を含む、反射鏡21の光軸L1を中心とする半径R1の円C1の円軌道上に並ぶよう位置されており、また、第2の反射鏡31の反射面31A上における反射点(
図2および
図3においては(B)が付された符号で示されており、数字は反射順序を示している。)は、第2の反射鏡31の光軸L2を中心とする半径R1の円軌道C1上に並ぶよう位置されている。
基準ヘリオット型光路は、各々の反射鏡21,31の反射面21A,31A上における反射点の位置(
図2において、[]書きで示されたものを含む(A),(B)が付された符号)が多重反射に伴って所定間隔毎に周方向の一定方向(
図2において反時計方向)に移動されて、円軌道C1上を周回、例えば5周するよう構成されており、第1の反射鏡21の反射面21A上に、第2の反射鏡31における反射点を軸方向に投影したとき、第1の反射鏡21における互いに隣接する2つの反射点、例えば2(A)および[ 28(A)] の間の位置に、第2の反射鏡31における1つの反射点、例えば[ 15(B)] が位置されるよう構成されている。
【0020】
第1の光学測定系25における多重反射光路MP1の光路長(反射回数)は、特に制限されるものではなく、目的に応じて適宜に設定することができ、また、基準ヘリオット型光路についても、例えば、反射鏡21,31の焦点距離(曲率半径)、反射鏡21,31間の離間距離(中心位置間距離)、反射回数およびその他の光学条件を適宜に選定することにより、目的に応じて適宜に設定することができ、また、第1の反射鏡21におけるレーザ光の入射用の開口部22Aおよび出射用の開口部22Bの各々は、目的に応じて設定される円軌道C1上の位置に形成すればよい。
【0021】
而して、このマルチパスセルにおいては、互いに独立した、いわゆる『ヘリオットセル』の動作原理を利用した複数系統の多重反射光路が一のセル本体11内において形成されている。
すなわち、上記基準ヘリオット型光路の一部を構成する第1の光学測定系25における多重反射光路MP1は、反射鏡21(31)の光軸L1(L2)に沿って伸びる円環状空間領域A1内において形成されており、当該円環状空間領域A1内において、第1の光学測定系25における多重反射光路MP1と互いに独立した多重反射光路を形成するよう構成された一つの他の光学測定系(以下、「第2の光学測定系」という。)を具えている。
【0022】
第2の光学測定系35は、上記基準ヘリオット型光路の、第1の光学測定系25における多重反射光路MP1以外の他の一部を構成する多重反射光路MP2を形成するものであって、例えば、セル本体11の、第2の反射鏡31側の外方位置に配置された、第2の光源36および適宜の反射ミラー37を介してセル本体11から出射された光を検出する受光センサ38を具えており、第2の光源36から照射されるレーザ光が第2の反射鏡31に形成された一方の開口部32A(例えば基準ヘリオット型光路における反射点5(B)の位置)を介してセル本体11内に入射され、2つの反射鏡21,31によって多重反射された後、第2の反射鏡31に形成された他方の開口部32B(例えば基準ヘリオット型光路における反射点31(B)の位置)を介して、セル本体11の外部に出射され、反射ミラー37を介して受光センサ38によって受光される構成とされている。
第2の反射鏡31における開口部32A,32Bは、反射鏡31の背面側から透光性を有する窓板部材45によって気密に閉塞されている。
【0023】
従って、第2の光学測定系35の多重反射光路MP2においては、第2の反射鏡31の反射面31A上における反射点(
図2および
図3において(C)が付された符号で示されており、数字は反射順序を示している。)は、セル本体11内に対する光の入射位置(開口部32Aの形成位置)0(C)(基準ヘリオット型光路における〔5(B)〕)を含む、第2の反射鏡31の光軸L2を中心とする半径R1の円軌道C1上、すなわち、第1の光学測定系25における反射点が位置される円軌道上に並ぶよう位置されており、また、第1の反射鏡21の反射面21A上における反射点(
図2および
図3においては(D)が付された符号で示されており、数字は反射順序を示している。)は、第1の反射鏡21の光軸L1を中心とする半径R1の円軌道C1(第1の光学測定系25における反射点が位置される円軌道)上に並ぶよう位置されている。
【0024】
第2の光学測定系35における多重反射光路MP2の光路長は、第1の光学測定系25における多重反射光路MP1の光路長との関係において、適宜に設定することができる。
【0025】
第1の光学測定系25における第1の光源26および第2の光学測定系35における第2の光源36は、例えば近赤外線半導体レーザにより構成することができる。
第1の光学測定系25および第2の光学測定系35を構成する光源26,36によるレーザ光の波長の一例を検知対象ガスとの関係において示すと、例えば、
12CO
2 (質量数が12の炭素)の検知に用いられるレーザ光の波長は2.014または2.004〔μm〕、
13CO
2 (質量数が13の炭素)の検知に用いられるレーザ光の波長は2.040〔μm〕であり、CH
4 の検知においては1.651または1.654〔μm〕、COの検知においては1.568〔μm〕、C
2 H
2 の検知においては1.520または1.530〔μm〕、NH
3 の検知においては1.517〔μm〕、N
2 Oの検知においては1.516〔μm〕、H
2 Oである場合には1.364または1.847〔μm〕、HClの検知においては1.747または1.743〔μm〕である。
【0026】
第1の光学測定系25における第1の光源26と、第2の光学測定系35における第2の光源36は、互いに同一波長の光を照射するものであっても、互いに異なる波長の光を照射するものであっても、いずれのものであってもよい。
第1の光学測定系25における第1の光源26と、第2の光学測定系35における第2の光源36とが、互いに異なる波長のレーザ光を照射するものである場合には、高いガス選択性を得ることができて複数種のガス成分を同時に検出することができ、例えば、特定ガス成分とその干渉ガス成分の検出、あるいは、同位体測定などを行うこともできる。
また、第1の光学測定系25における第1の光源26と、第2の光学測定系35における第2の光源36とが、互いに同一波長のレーザ光を照射するものである場合には、第1の光学測定系25における多重反射光路MP1と第2の光学測定系35における多重反射光路MP2との光路長を互いに異なる大きさとすることにより、一のガス成分について、広範囲の測定レンジを得ることができる。
【0027】
上記構成のマルチパスセルの一構成例について示すと、第1の反射鏡21および第2の反射鏡31は、焦点距離が360mm、曲率半径が720mm、反射面21A(31A)の外周縁の径(有効反射面の径)がφ45mm、反射鏡21,31間の離間距離(中心位置間距離)が320mmであり、第1の光学測定系25に係る多重反射光路MP1は、反射回数が3回(2往復)、各々の反射鏡21,31の反射面21A,31A上において反射点が位置される円軌道C1の半径R1が30mm、光路長が約1.28mであり、第2の光学測定系35に係る多重反射光路MP2は、反射回数が25回(13往復)、光路長が約8.3mである。
【0028】
而して、上記構成のマルチパスセルによれば、一のセル本体11内において、互いに独立した2系統の光学測定系25, 35が形成されており、例えば、第1の光学測定系25における第1の光源26と第2の光学測定系35における第2の光源36として、互いに異なる波長のレーザ光を照射するものが用いられることにより、高いガス選択性を得ることができて被検査ガスに含まれる2種類のガス成分を同時に検出することができる。
例えば、第1の光学測定系25における第1の光源26として、例えば中心波長が1.651μm付近である赤外線光源を用い、第2の光学測定系35における第2の光源36として、例えば中心波長が1.364μm付近である赤外線光源を用いた場合には、第1の光学測定系25においてCH
4 の検出を行うことができると共に第2の光学測定系35においてH
2 Oの検出を行うことができる。第1の光学測定系25に係る検知対象ガスと第2の光学測定系35に係る検知対象ガスとの組み合わせとしては、例えばCH
4 の検出(中心波長1.651μm付近)とNH
3 の検出(中心波長1.517μm付近)、あるいは、CH
4 の検出(中心波長1.651μm付近)とCOの検出(中心波長1.568μm付近)等を例示することができるが、特に限定されるものではなく、また、例えばCOの検出においては、中心波長が4.7μm付近の中赤外域のレーザ光を用いることもできる。さらにまた、例えばある特定ガス成分とその干渉ガス成分の検出、あるいは、
12CO
2 および
13CO
2 などの同位体測定などを行うこともできる。
しかも、第1の光学測定系25の多重反射光路MP1および第2の光学測定系35の多重反射光路MP2は、いずれも、共通の基準ヘリオット型光路の互いに異なる一部を構成するものであるので、相互に干渉することなく、必要な大きさの光路長が確保されたものとして構成することができる。
さらにまた、第1の光学測定系25と第2の光学測定系35が互いに異なる光路長の多重反射光路MP1,MP2を形成するものであり、第1の光学測定系25における第1の光源26および第2の光学測定系35における第2の光源36として、互いに同一の波長のレーザ光を照射するものが用いられることにより、一のガス成分について、広範囲の測定レンジを得ることができる。
【0029】
<第2実施形態>
図4は、本発明のマルチパスセルの他の例における構成の概略を示す説明図であって、(a)反射鏡の光軸に沿った断面を示す断面図、(b)左側面図、(c)右側面図であり、
図5は、
図4に示すマルチパスセルにおける、基準光学測定系および他の光学測定系の2つの光学測定系の各々において形成される多重反射光路を、一方の反射鏡の反射面上に、他方の反射鏡の反射面上における反射点を投影した状態で示す、説明図、
図6は、
図4に示すマルチパスセルにおいて形成される多重反射光路を説明するための斜視図である。 このマルチパスセルは、被検査ガス(サンプルガス)が導入される円筒状のセル本体11と、その軸方向における両端位置の各々に、互いに焦点距離(曲率半径)が同一の大きさの球面状の反射面21A,31Aを有する第1の反射鏡21および第2の反射鏡31が反射鏡保持部材40によって保持固定された状態で設けられており、第1の反射鏡21および第2の反射鏡31の両者は、互いに光軸L1,L2が一致する状態で対向して配置されている。
図1における符号41A,41Bは、セル本体11の内部空間に連通する開口部であって、一方が被検ガス導入用開口部、他方が被検ガス排出用開口部とされる。
【0030】
セル本体11の、第1の反射鏡21側の外方位置には、第1の光源26および適宜の反射ミラー27を介してセル本体11から出射された光を検出する受光センサ28が配置されており、第1の光源26から照射されるレーザ光が第1の反射鏡21に形成された開口部22を介してセル本体11内に入射され、2つの反射鏡21,31によって多重反射された後、再び、当該開口部22を介してセル本体11の外部に出射され、反射ミラー27を介して受光センサ28によって受光される基準光学測定系としての第1の光学測定系25が構成されている。
第1の反射鏡21における開口部22は、反射鏡21の背面側から透光性を有する窓板部材45によって気密に閉塞されている。
【0031】
第1の光学測定系25における多重反射光路MP1において、第1の反射鏡21の反射面21A上における反射点(
図5においては(A)が付された符号で示されており、
図6においては、便宜上、丸数字で示されており、数字は反射順序を示している。)は、セル本体11内に対する光の入射位置(開口部22の形成位置)0(A)を含む、反射鏡21の光軸L1を中心とする半径R1の円軌道C1上に並び、例えば、出射位置32(A)が入射位置0(A)と一致するよう、位置されている。
また、第2の反射鏡31の反射面31A上における反射点(
図5においては(B)が付された符号で示されており、
図6においては、便宜上、丸数字で示されており、数字は反射順序を示している。)は、第2の反射鏡31の光軸L2を中心とする半径R1の円軌道C1上に並ぶよう、位置されている。
そして、この実施例における多重反射光路MP1は、例えば、一の反射鏡21(31)において、反射点の位置が多重反射に伴って所定間隔毎に周方向の一定方向(
図5において反時計方向)に移動されて、円軌道C1上を周回、例えば5周すると共に、第1の反射鏡21の反射面21A上に、第2の反射鏡31における反射点を軸方向に投影したとき、第1の反射鏡21における互いに隣接する2つの反射点、例えば2(A)および28(A)の間の位置に、第2の反射鏡31における1つの反射点、例えば15(B)が位置されるよう構成されている。
【0032】
多重反射光路MP1の光路長は、特に制限されるものではなく、例えば、反射鏡21,31の焦点距離(曲率半径)、反射鏡21,31間の離間距離(中心位置間距離)、反射回数およびその他の光学条件を適宜に選定することにより、目的に応じて適宜に設定することができ、また、第1の反射鏡21におけるレーザ光の入出射用の開口部22は、目的に応じて設定される円軌道C1上の位置に形成すればよい。
【0033】
而して、このマルチパスセルにおいては、互いに独立した、いわゆる『ヘリオットセル』の動作原理を利用した複数系統の多重反射光路が一のセル本体11内において形成されている。
すなわち、第1の光学測定系25における多重反射光路MP1は、反射鏡21(31)の光軸L1(L2)に沿って伸びる円環状空間領域(円筒状空間領域)A1内において形成されており、当該円環状空間領域A1の内側の円柱状空間領域すなわち第1の光学測定系25の多重反射光路MP1において使用されない空間領域において、少なくとも一つの他の光学測定系、この実施例においては、一つの他の光学測定系(以下、「第2の光学測定系」という。)が位置されている。
【0034】
第2の光学測定系35は、例えば、セル本体11の、第2の反射鏡31側の外方位置に配置された、第2の光源36および適宜の反射ミラー37を介してセル本体11から出射された光を検出する受光センサ38を具えており、第2の光源36から照射されるレーザ光が第2の反射鏡31に形成された一方の開口部32Aを介してセル本体11内に入射され、2つの反射鏡21,31によって多重反射された後、第2の反射鏡31に形成された他方の開口部32Bを介して、セル本体11の外部に出射され、反射ミラー37を介して受光センサ38によって受光される構成とされている。
第2の反射鏡31における開口部32A,32Bは、反射鏡31の背面側から透光性を有する窓板部材45によって気密に閉塞されている。
【0035】
第2の光学測定系35の多重反射光路MP2は、いわゆる『ヘリオット型』の多重反射光路(基準ヘリオット型光路)の一部を構成するものであって、2つの反射鏡21,31による反射が繰り返して行われてレーザ光が第2の反射鏡31の反射面31A上における入射位置0(C)に到達する前の位置、この実施例においては、例えば2つの反射鏡21,31によって15回反射された後の第2の反射鏡31における反射面31A上の位置16(C)からセル本体11の外部に出射される構成とされている。
【0036】
従って、第2の光学測定系35の多重反射光路MP2は、反射鏡21(31)の光軸L1(L2)に沿って伸びる円環状空間領域(円筒状空間領域)A2内において形成されており、第2の反射鏡31の反射面31A上における反射点(
図5においては(C)が付された符号で示されており、
図6においては、便宜上、四角で囲まれた数字で示されており、数字は反射順序を示している。)は、セル本体11内に対する光の入射位置(一方の開口部32Aの形成位置)0(C)を含む、第2の反射鏡31の光軸L2を中心とする半径R2の円軌道C2上に並ぶよう位置されており、また、第1の反射鏡21の反射面21A上における反射点(
図5においては(D)が付された符号で示されており、
図6においては、便宜上、四角で囲まれた数字で示されており、数字は反射順序を示している。)は、第1の反射鏡21の光軸L1を中心とする半径R2の円軌道C2上に並ぶよう位置されている。 第2の光学測定系35における多重反射光路MP2についての基準ヘリオット型光路は、各々の反射鏡21,31の反射面21A,31A上における反射点の位置(
図5において、[]書きで示されたものを含む(C),(D)が付された符号)が多重反射に伴って所定間隔毎に周方向の一定方向(
図5において反時計方向)に移動されて、円軌道C2上を周回、例えば5周するよう構成されており、第1の反射鏡21の反射面21A上に、第2の反射鏡31における反射点を軸方向に投影したとき、第1の反射鏡21における互いに隣接する2つの反射点、例えば15(D)および〔21(D)〕の間の位置に、第2の反射鏡31における1つの反射点、例えば2(C)が位置されるよう構成されており、第1の光学測定系25における多重反射光路MP1と実質的に互いに同一の光路長を有する。
【0037】
第2の光学測定系35における多重反射光路MP2の光路長(反射回数)は、特に制限されるものではなく、目的に応じて適宜に設定することができる。
【0038】
第1の光学測定系25における第1の光源26および第2の光学測定系35における第2の光源36は、例えば近赤外線半導体レーザにより構成することができ、上記実施形態1において例示した波長のものを用いることができる。
【0039】
第1の光学測定系25における光源26と、第2の光学測定系35における第2の光源36は、互いに同一波長の光を照射するものであっても、互いに異なる波長の光を照射するものであっても、いずれのものであってもよい。
第1の光学測定系25における第1の光源26と、第2の光学測定系35における第2の光源36とが、互いに異なる波長のレーザ光を照射するものである場合には、高いガス選択性を得ることができて複数種のガス成分を同時に検出することができ、例えば、特定ガス成分とその干渉ガス成分の検出、あるいは、同位体測定などを行うこともできる。
また、第1の光学測定系25における第1の光源26と、第2の光学測定系35における第2の光源36とが、互いに同一波長のレーザ光を照射するものである場合には、第1の光学測定系25における多重反射光路MP1と第2の光学測定系35における多重反射光路MP2との光路長を互いに異なる大きさとすることにより、一のガス成分について、広範囲の測定レンジを得ることができる。
【0040】
上記構成のマルチパスセルの一構成例について示すと、第1の反射鏡21および第2の反射鏡31は、焦点距離が360mm、曲率半径が720mm、反射面21A(31A)の外周縁の径(有効反射面の径)がφ45mm、反射鏡21,31間の離間距離(中心位置間距離)が320mmであり、第1の光学測定系25における多重反射光路MP1は、反射回数が31回(16往復)、各々の反射鏡21,31の反射面21A,31A上において反射点が位置される円軌道C1の半径R1が30mm,光路長が約10.24mであり、第2の光学測定系35における多重反射光路MP2は、反射回数が15回(8往復)、各々の反射鏡21,31の反射面21A,31A上において反射点が位置される円軌道C2の半径R2が15mm,光路長が約5.12mである。
また、第1の光学測定系25における多重反射光路MP1が形成される円環状空間領域A1の最内側位置は、反射鏡21(31)の光軸L1(L2)から26.4mm程度の位置であり、レーザ光のビーム径が約φ3mm程度であり、従って、第1の光学測定系25および第2の測定光学系35は、光学的な干渉を生ずることなく、互いに独立したものとして構成される。
【0041】
而して、上記構成のマルチパスセルにおいても、上記第1実施形態に係るものと同様の効果を得ることができる。すなわち、一のセル本体11内において、互いに独立した2系統の光学測定系25, 35が形成されており、例えば、第1の光学測定系25における第1の光源26および第2の光学測定系35における第2の光源36として互いに異なる波長のレーザ光を照射するものが用いられることにより、高いガス選択性を得ることができて被検査ガスに含まれる2種類のガス成分を同時に検出することができ、しかも、第1の光学測定系25の多重反射光路MP1および第2の光学測定系35の多重反射光路MP2を互いに干渉することなく、必要な大きさの光路長が確保されたものとして構成することができる。
例えば、第1の光学測定系25における第1の光源26として、例えば中心波長が1.651μm付近である赤外線光源を用い、第2の光学測定系35における第2の光源36として、例えば中心波長が1.364μm付近である赤外線光源を用いた場合には、第1の光学測定系25においてCH
4 の検出を行うことができると共に第2の光学測定系35においてH
2 Oの検出を行うことができる。第1の光学測定系25に係る検知対象ガスと第2の光学測定系35に係る検知対象ガスとの組み合わせとしては、例えばCH
4 の検出(中心波長1.651μm付近)とNH
3 の検出(中心波長1.517μm付近)、あるいは、CH
4 の検出(中心波長1.651μm付近)とCOの検出(中心波長1.568μm付近)等を例示することができるが、特に限定されるものではなく、また、例えばCOの検出においては、中心波長が4.7μm付近の中赤外域のレーザ光を用いることもできる。さらにまた、例えばある特定ガス成分とその干渉ガス成分の検出、あるいは、
12CO
2 および
13CO
2 などの同位体測定などを行うこともできる。
さらにまた、第1の光学測定系25と第2の光学測定系35が互いに異なる光路長の多重反射光路MP1,MP2を形成するものであり、第1の光学測定系25における光源26および第2の光学測定系35における光源36として、互いに同一の波長のレーザ光を照射するものが用いられることにより、一のガス成分について、広範囲の測定レンジを得ることができる。
【0042】
以上のようなマルチパスセルは、上述したように、例えば、赤外線吸収分光法によるガス測定器に好適に用いられる。
本発明のガス測定器は、
図7に示すように、上記マルチパスセルにより構成されたガス検知部50と、マルチパスセルにおける第1の光学測定系25を構成する第1の光源26および第2の光学測定系35を構成する第2の光源36の各々の動作制御を行う機能を有すると共に受光センサ28,38の各々からの検出信号に基づいて2種類のガス成分の濃度を算出する機能を有する制御手段55とを具えてなる。
そして、ガス検知においては、制御手段55における光源制御部56によって、例えば第1の光源26および第2の光源36の各々に対する供給電流の大きさが制御されることにより、第1の光学測定系25における第1の光源26および第2の測定光学系35における第2の光源36の各々から、例えば周波数変調されたレーザ光がセル本体11内に入射され、これにより多重反射光路MP1,MP2が形成された状態において、被検査ガスがセル本体11内に供給されることにより、第1の光学測定系25に係るレーザ光がその波長付近に吸収特性を有する第1の検知対象ガスに吸収されることによって受光センサ28により検出される赤外線光量が低下し、この赤外線光量の減衰の程度に応じたガス濃度が制御手段55における信号処理部57によって検出されると共に、第2の光学測定系35に係るレーザ光がその波長付近に吸収特性を有する、第1の検知対象ガスとは異なる種類の第2の検知対象ガスに吸収されることによって受光センサ38により検出される赤外線光量が低下し、この赤外線光量の減衰の程度に応じたガス濃度が制御手段55における信号処理部57によって検出される。
【0043】
而して、上記マルチパスセルを具えてなるガス測定器によれば、マルチパスセルが、互いに独立した2系統の光学測定系25,35(多重反射光路MP1,MP2)が形成されて2種類のガス成分を同時に検知することができるよう構成されているので、複数種のガス成分を同時に検出することができる構成のものでありながら、ガス測定器それ自体を小型のものとして構成することができ、しかも、各々の多重反射光路MP1,MP2において、互いに干渉することなく、必要な大きさの光路長を確保することができるので、2種類のガス成分を同時にかつ高い精度で検出することができる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、セル本体内に形成される多重反射光路の数は、2系統に限定されるものではなく、例えば3系統以上であってもよく、また、1系統のみであってもよい。
また、上記第1実施形態および第2実施形態に係るマルチパスセルの各々においては、第1の光学測定系における光源および受光センサと、第2の光学測定系における光源および受光センサとが、一方の反射鏡側の外方位置に形成された構成であってもよく、また、第2の実施形態に係るマルチパスセルにおいては、基準光学測定系における多重反射光路は入射位置および出射位置が互いに異なる位置とされた構成(基準ヘリオット型光路の一部を構成するもの)とされていてもよい。
さらにまた、各々の光学測定系における多重反射光路(基準ヘリオット型光路)は、反射鏡の反射面上における反射点の位置が多重反射に伴って周回するよう構成されている必要はなく、例えば、反射点が周方向に対して所定の方向に順次に並ぶよう構成されていてもよい。
さらにまた、反射鏡の構成、2つの反射鏡の離間距離の大きさ、反射回数、多重反射光路における光路長の大きさおよびその他の具体的構成は、上記実施例に限定されるものではなく、目的に応じて適宜に設定することができる。