特許第5695310号(P5695310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5695310
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】γ−オリザノール含有外用剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/575 20060101AFI20150312BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20150312BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20150312BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20150312BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20150312BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   A61K31/575
   A61K9/06
   A61K9/10
   A61K47/24
   A61K47/06
   A61P17/00
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2009-242167(P2009-242167)
(22)【出願日】2009年10月21日
(65)【公開番号】特開2010-120928(P2010-120928A)
(43)【公開日】2010年6月3日
【審査請求日】2012年6月27日
(31)【優先権主張番号】特願2008-271128(P2008-271128)
(32)【優先日】2008年10月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000163006
【氏名又は名称】興和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100068700
【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 三幸
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】狩野 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】沢井 勇
【審査官】 中尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−081352(JP,A)
【文献】 特開平11−180845(JP,A)
【文献】 特開平08−259456(JP,A)
【文献】 玉木毅,治療―現況と最近の進歩“保湿剤とスキンケア ―おもな保湿外用剤の使い方とスキンケアにかかわる生活指導”,医学のあゆみ,日本,医歯薬出版,2004年 7月 3日,Vol.210,No.1,P.84-89
【文献】 稲木敏男 外1名,第3章 新しい保湿剤の特性と効果“尿素製剤の保湿作用”,フレグランスジャーナル 臨時増刊,日本,フレグランスジャーナル社,2000年 4月10日,No.17,P.161-168
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/575
A61K 9/06
A61K 9/10
A61K 47/06
A61K 47/24
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
γ−オリザノールを油相に含み、オルトリン酸若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、及びワセリンを含有する外用剤組成物。
【請求項2】
乳化組成物又は油性軟膏組成物の形態である、請求項1に記載の外用剤組成物。
【請求項3】
γ−オリザノール1質量部に対し、オルトリン酸若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を、フリーのオルトリン酸換算で0.01〜5質量部含有するものである、請求項1又は2に記載の外用剤組成物。
【請求項4】
オルトリン酸若しくはその塩又はそれらの溶媒和物が、オルトリン酸の二水素塩又はその溶媒和物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の外用剤組成物。
【請求項5】
オルトリン酸若しくはその塩又はそれらの溶媒和物が、リン酸二水素カリウムである、請求項1〜のいずれか1項に記載の外用剤組成物。
【請求項6】
γ−オリザノールの含有量が、外用剤組成物全質量に対し0.1〜5質量%である、請求項1〜のいずれか1項に記載の外用剤組成物。
【請求項7】
クエン酸を含まないものである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の外用剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経時的な変色が抑制された、γ−オリザノール含有外用剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
γ−オリザノールは米ヌカ油、米胚芽油、トウモロコシ油、その他の穀類のヌカ油中に存在する物質で、トリテルペンアルコールのフェルラ酸(3−メトキシ−4−ヒドロキシ桂皮酸)エステルの混合物である(非特許文献1)。γ−オリザノールの薬理作用に関しては様々な報告があり、成長促進作用、自律神経失調症の緩和作用、性腺刺激作用、皮脂分泌促進作用、血流促進作用、皮膚温度上昇作用、抗酸化作用、紫外線吸収作用、チロシナーゼ活性抑制作用などがあり、さらには安全性も高い物質である。従って、医薬品、化粧品、食品添加物、さらには動物の成長促進剤として応用され、広範囲にわたって使用されている。例えば、γ−オリザノールを含有する皮膚外用剤として、尿素と、精製γ−オリザノールとを含有することを特徴とする皮膚外用剤が知られている(特許文献1)。
また、γ−オリザノールは脂溶性であることから、製剤化にあたって様々の検討がなされており、例えば水溶液の形態にして供給する技術も知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3493459号公報
【特許文献2】特開平07−258165号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】FRAGRANCE JOURNAL,3,p71−77,1998
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
γ−オリザノールは脂溶性であり、油相中に溶解させ、乳化組成物や油性軟膏等の形態で皮膚等に適用するのが、吸収性、安定性等の点で有利である。しかし、γ−オリザノールを含有する外用剤組成物を製造するに当たり、γ−オリザノールを油相中に配合した場合、得られた油相が、経時的に黄色に変色してしまうという問題が生じることが判明した。外用剤組成物の変色は、その商品価値を大きく低下させてしまうこととなる。
従って、本発明はγ−オリザノールを油相中に含有する、経時的な変色の抑制された外用剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者らは、外用剤組成物の経時的な変色の抑制について種々検討してきたところ、リン酸若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、又はワセリンを、それぞれ単独でγ−オリザノール含有外用剤組成物に配合した場合には、外用剤組成物の経時的な変色の抑制作用がみられないにもかかわらず、意外にも、これらを組み合わせて配合した場合にのみ特異的に、長期間変色せず、安定な外用剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、γ−オリザノール、リン酸若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、及びワセリンを含有する外用剤組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、種々の薬理作用、生理作用を有するγ−オリザノールを油相に含有し、かつ、長期間変色せず安定であり、商品価値が高い、皮膚若しくは粘膜外用剤又は坐剤等の外用剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
「γ−オリザノール」は、イネ(Oryza sativa L.)の種皮等から得られ、主としてトリテルペンアルコールのフェルラ酸(3−メトキシ−4−ヒドロキシ桂皮酸)エステルからなるものであり、本発明に用いられる「γ−オリザノール」としては、原料、精製方法、製造方法等は特に限定されないが、医薬部外品原料規格2006に記載のγ−オリザノールが好ましい。本発明においては、γ−オリザノールとして市販品を用いることができ、市販品としては例えば、γ−オリザノール「理研」(理研ビタミン社製)、γ−オリザノール(オリザ油化社製)、オリザノール−C(岡安商店社製)などが挙げられる。
【0010】
本発明の外用剤組成物中のγ−オリザノールの含有量は、薬理効果、生理効果及び外用剤組成物の経時的な変色の抑制効果の観点から、外用剤組成物全質量に対し、0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜3質量%がより好ましく、0.5〜2質量%が特に好ましい。なお、γ−オリザノールの含有量は、例えばHPLC法(UV検出)によって定量することができる。
【0011】
本発明に用いられる「リン酸若しくはその塩又はそれらの溶媒和物」としては、リン酸そのもののほか、その塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩)、その溶媒和物(例えば、水和物)が挙げられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0012】
リン酸の具体例としては、例えば、オルトリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸等が挙げられる。
リン酸の塩の具体例としては、例えば、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三アンモニウム等のリン酸塩;リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カルシウム等のリン酸二水素塩;リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸水素カルシウム等のリン酸水素塩等が挙げられる。
リン酸又はその塩の溶媒和物の具体例としては、例えば、リン酸一水素ナトリウム七水和物、リン酸水素カルシウム水和物、リン酸二水素ナトリウム一水和物、リン酸二水素カルシウム水和物等のリン酸塩水和物等が挙げられる。
これらのうち、本発明においては、外用剤組成物の経時的な変色の抑制効果の観点から、オルトリン酸若しくはその塩又はそれらの溶媒和物が好ましく、オルトリン酸の二水素塩又はその溶媒和物がより好ましく、リン酸二水素カリウムが特に好ましい。
【0013】
本発明においては、リン酸若しくはその塩又はそれらの溶媒和物として市販品を用いることができ、こうした市販品としては例えば、リン酸一ナトリウム(和光純薬社製)、リン酸水素二ナトリウム(和光純薬社製)、無水リン酸二水素ナトリウム(太平化学産業社製)、リン酸二水素カリウム(関東化学社製、和光純薬社製)、リン酸水素カリウム(和光純薬社製)等が挙げられる。
【0014】
リン酸若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の含有量は、外用剤組成物の経時的な変色の抑制効果の観点から、外用剤組成物全質量に対し、フリーのリン酸の質量(オルトリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸等の塩、溶媒和物にあっては、それぞれ対応するオルトリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸等のフリー体の質量)に換算して0.01〜5質量%が好ましく、0.02〜4質量%がより好ましく、0.03〜3質量%が特に好ましい。
【0015】
γ−オリザノールとリン酸若しくはその塩又はそれらの溶媒和物との含有比は、外用剤組成物の経時的な変色の抑制効果の観点から、γ−オリザノール1質量部に対し、フリーのリン酸の質量に換算して0.01〜5質量部が好ましく、0.02〜4質量部がより好ましく、0.03〜3質量部が特に好ましい。
【0016】
本発明に用いられる「ワセリン」は、主として保湿剤・基剤等として配合される成分であり、白色ワセリン、黄色ワセリン等が挙げられる。本発明においては、外用剤組成物の経時的な変色の抑制効果の観点から、白色ワセリンが好ましく、第十五改正日本薬局方に記載の白色ワセリンが特に好ましい。
ワセリンの含有量は、経時的な変色の抑制効果の観点から外用剤組成物全質量に対し、1〜45質量%が好ましく、1.5〜40質量%がより好ましく、2〜35質量%が特に好ましい。
【0017】
γ−オリザノールとワセリンとの含有比は、外用剤組成物の経時的な変色の抑制効果の観点から、γ−オリザノール1質量部に対し、1〜45質量部が好ましく、1.5〜40質量部がより好ましく、2〜35質量部が特に好ましい。
また、リン酸若しくはその塩又はそれらの溶媒和物とワセリンとの含有比は、外用剤組成物の経時的な変色の抑制効果の観点から、フリーのリン酸の質量に換算したリン酸1質量部に対し、0.2〜4500質量部が好ましく、0.2〜2000質量部がより好ましく、0.6〜1500質量部が特に好ましい。
【0018】
本発明の外用剤組成物中の油性成分としては、乳化組成物や油性軟膏組成物等の外用剤組成物において油相を構成する成分として一般的に使用されるものであれば特に限定されず、例えば、炭化水素類(流動パラフィン、スクワラン等)、ロウ類(サラシミツロウ、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ラノリン等)、油脂類(大豆油、ハードファット、ヒマシ油、オリーブ油、トリアシルグリセロール等)、アルコール類(セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、コレステロール等)、脂肪酸類(パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等)、シリコーン油(メチルポリシロキサン等)、ビタミン誘導体類(パルミチン酸レチノール、酢酸トコフェロール等)等を挙げることができ、これらを単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。これらの油性成分は、γ−オリザノールの溶解性の点から、本発明の外用剤組成物中にγ−オリザノール1質量部に対し1〜1000質量部含有するのが好ましく、5〜500質量部含有するのがより好ましく、7.5〜200質量部含有するのが特に好ましい。
【0019】
本発明の外用剤組成物には、前記成分以外に、外用剤組成物の使用目的、形態等種々の条件に応じて、必要により乳化剤、水性成分、防腐剤、酸化防止剤、他の薬効成分、水等を含有せしめることができる。
【0020】
乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル等)、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル(モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビット等)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等)、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビットミツロウ、ショ糖脂肪酸エステル、モノアシルグリセロール(モノステアリン酸グリセリン等)、ジアシルグリセロール(ジステアリン酸グリセリル等)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(モノステアリン酸ジグリセリル等)、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンステロール、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド(ポリオキシエチレンステアリン酸アミド等)、レシチン、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(モノラウリン酸ポリエチレングリコール等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、ソルビタン脂肪酸エステル(モノステアリン酸ソルビタン等)、アルキル硫酸ナトリウム(ラウリル硫酸ナトリウム等)等を挙げることができ、これらを単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
これらの乳化剤は、本発明の外用剤組成物中に、γ−オリザノールの溶解性および皮膚等に対する刺激の点から0.5〜10質量%含有するのが好ましく、1〜5質量%含有するのがより好ましく、1.5〜4質量%含有するのが特に好ましい。
【0021】
水性成分としては、例えば、低級アルコール類(エタノール、イソプロピルアルコール等)、多価アルコール類(1,3−ブチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、水溶性高分子類(メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、ポリビニルピロリドン、水溶性コラーゲン、ヒアルロン酸等)、アミノ酸類(グリシン、アラニン等)、その他(クエン酸、乳酸、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム等)等を挙げることができ、これらを単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0022】
防腐剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等を挙げることができ、これらを単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0023】
酸化防止剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム水和物等のエデト酸塩又はその水和物、ジブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール等を挙げることができる。なお、これらは、単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0024】
他の薬効成分としては、例えば、鎮痒を目的として、抗ヒスタミン剤(ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン等)、局所麻酔剤(アミノ安息香酸エチル、リドカイン等)、局所消炎鎮痒剤(カンフル、メントール等)、その他(クロタミトン、グリチルレチン酸等)等を配合でき、これらを単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。また、保湿を目的として、多価アルコール類(1,3−ブチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、アミノ酸(グリシン、アラニン等)、酸性ムコ多糖類(ヒアルロン酸、ヘパリン類似物質等)、糖アルコール(ソルビトール、トレハロース等)、その他(尿素、乳酸、乳酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸塩等)等を配合でき、これらを単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0025】
本発明の外用剤組成物のpHは、γ−オリザノールの安定性及び外用剤組成物の刺激性の点から、4〜9が好ましく、5〜8がより好ましい。なお、当該pHの調整は、水酸化ナトリウム等を用いて常法により行えばよい。
【0026】
本発明の外用剤組成物の稠度は、使用感の点から、2g〜50gが好ましく、5g〜45gがより好ましい。ここで稠度は、25℃にて直径1cmの金属球を6cm/分の速度で1cm進入させた際の応力の最大値を表し、レオメーター(FUDOHレオメーター:(株)レオテック)にて測定できる。
【0027】
本発明の外用剤組成物は、γ−オリザノールを油相に含んでいればよく、例えば乳化組成物や油性軟膏組成物でもよいが、乳化組成物、特に水中油型乳化組成物であるのが、使用感等の点から好ましい。乳化組成物の好ましい形態としては、クリーム、乳液、ローション等が挙げられる。
【0028】
本発明の外用剤組成物が乳化組成物である場合における、油相/水相の質量比は、乳化安定性の観点から、0.05〜1/1が好ましく、0.1〜0.95/1がより好ましい。
【0029】
本発明の外用剤組成物は、常法に従って製造することができ、通常の乳化組成物、軟膏等と同様にして製造することができる。例えば、リン酸若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を溶解した水相と、γ−オリザノール及びワセリンを溶解した油相とをそれぞれ加熱混合し、50〜80℃等の加熱条件下で乳化した後、冷却することにより製造することができる。
本発明の外用剤組成物の使用形態としては、例えば、皮膚局所若しくは粘膜への塗布又は坐剤としての肛門への注入等が挙げられるが、皮膚局所への塗布が好ましい。
【実施例】
【0030】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。
【0031】
実施例1
リン酸二水素カリウム(リン酸二水素カリウム:関東化学社製)0.5g、尿素20gおよびクリームのpHが7.2となる量に相当する水酸化ナトリウムを、クリームの全量が100gとなる量に相当する精製水に加え、75℃に加熱・混合したものを水相とした。一方、γ−オリザノール(オリザノール−C:岡安商店社製)1g、白色ワセリン(白色ワセリン:Sonneborn社製)15g、グリチルレチン酸0.3g、スクワラン6g、モノステアリン酸グリセリン1.2g、ポリソルベート60 1.4g及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50 0.5gを加えて75℃に加熱・混合したものを油相とした。水相に油相を加え、75℃で撹拌・混合して乳化した後に室温に冷却して全量100gのクリームを製造した。得られたクリームは白色であった。
【0032】
比較例1
実施例1においてリン酸二水素カリウムを配合しないものを、リン酸二水素カリウムを配合しない以外は実施例1と同様にして、比較例1のクリームとして製造した。得られたクリームは白色であった。
【0033】
比較例2
実施例1において白色ワセリンを配合しないものを、白色ワセリンを配合しない以外は実施例1と同様にして、比較例2のクリームとして製造した。得られたクリームは白色であった。
【0034】
試験例1
実施例1並びに比較例1及び2で製造したクリームについて、下記評価項目につき評価を行なった。
(経時的な変色の抑制の評価)
変色は、調製直後の色調に対する40℃、6箇月暗所保存後におけるクリームの色調の変化を目視で評価した。色調に変化がないものを○、黄色ないしは褐色に変色したものを×とした。また、併せて40℃、6箇月暗所保存後におけるクリームのpHを測定した。
【0035】
試験結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
表1から明らかなように、γ−オリザノールを含有するクリームにリン酸二水素カリウム及びワセリンを配合した場合だけ経時的な変色が抑制された。当該試験結果より、γ−オリザノール、リン酸若しくはその塩又はそれらの溶媒和物、及びワセリンを含有する本発明の外用剤組成物は、長期間変色せず、安定な外用剤組成物であることが明らかとなった。
【0038】
実施例2
リン酸二水素カリウム(リン酸二水素カリウム:関東化学社製)0.8kg、尿素32kg、グリシン4.8kg、水酸化ナトリウム0.16kg、エデト酸ナトリウム水和物0.01kg、精製水70kgを水相釜に投入し、75℃にて加温溶解し、水相とした。一方、γ−オリザノール(オリザノール−C:岡安商店社製)1.6kg、白色ワセリン(白色ワセリン:Sonneborn社製)28.8kg、グリチルレチン酸0.8kg、流動パラフィン9.6kg、セタノール3.2kg、ステアリルアルコール3.2kg、モノステアリン酸グリセリン1.6kg、ポリソルベート60 1.76kg及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50 1.76kgを油相釜に投入し、75℃にて加温混合し、油相とした。上記油相と水相を乳化釜に投入し、75℃で10分間乳化混合し、混合後更に攪拌しながら冷却し、全量およそ160kgのクリームを製造した。