(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5695321
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】高速ダイナミックリンクアダプテーションのためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
H04W 52/22 20090101AFI20150312BHJP
H04J 3/16 20060101ALI20150312BHJP
H04W 52/30 20090101ALI20150312BHJP
H04W 52/36 20090101ALI20150312BHJP
H04W 52/50 20090101ALI20150312BHJP
【FI】
H04W52/22
H04J3/16
H04W52/30
H04W52/36
H04W52/50
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-19375(P2010-19375)
(22)【出願日】2010年1月29日
(62)【分割の表示】特願2006-5064(P2006-5064)の分割
【原出願日】2002年10月18日
(65)【公開番号】特開2010-141912(P2010-141912A)
(43)【公開日】2010年6月24日
【審査請求日】2010年3月1日
【審判番号】不服2013-3686(P2013-3686/J1)
【審判請求日】2013年2月26日
(31)【優先権主張番号】60/344,693
(32)【優先日】2001年10月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】399037405
【氏名又は名称】楽天株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン イー.テリー
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ジー.ディック
(72)【発明者】
【氏名】ロバート エー.ディファジオ
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ エス.レビー
【合議体】
【審判長】
加藤 恵一
【審判官】
江口 能弘
【審判官】
近藤 聡
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−269244(JP,A)
【文献】
特開平10−21091(JP,A)
【文献】
“MAC protocol specification(Release 1999)”,3GPP TS 25.321 V3.9.0,2001年10月2日,pp.39−40,URL,http://www.3gpp.org/ftp/Specs/archive/25_series/25.321/25321−390.zip
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W52/22
H04W52/30
H04W52/36
H04W52/50
H04J3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ機器物理レイヤによって、トランスポートフォーマットコンビネーションのセット(TFCS)の中から最大送信パワーレベルを超えるトランスポートフォーマットコンビネーション(TFC)を判定するステップであって、前記最大送信パワーレベルを超える送信パワー要件を有するTFCは前記TFCSから除去され、先に前記最大送信パワーレベルを超えていたが、現在は前記最大送信パワーレベルを超えない送信パワー要件を有するTFCは利用可能なTFCのセットへ戻され、該判定するステップは毎送信時間間隔に少なくとも1回行われ、前記TFCSの前記TFCは順序を有している、判定するステップと、
ユーザ機器によって、アップリンクデータの送信のためのTFCを、前記順序を有する前記TFCに基づいて選択をするステップと、を備え、
前記選択されたTFCは、前記最大送信パワーレベルを超えないと判定されたTFCである、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記TFCを選択する前記ステップは、送信時間間隔(TTI)基準で実行されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
利用可能なTFCの前記セットから符号化複合トランスポートチャネル(CCTrCH)の送信のためのTFCを選択するステップをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
アップリンクデータの送信のための前記TFCの選択に対して利用可能なTFCの前記セットが、周期的に更新されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
利用可能なTFCの前記セットは、送信時間間隔(TTI)毎に更新されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
アップリンクデータの送信のための前記TFCの選択に対して利用可能なTFCの前記セットが確立されるのは、符号化複合トランスポートチャネル(CCTrCH)の確立時であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
各TFCは、各々のTFCの前記送信パワー要件についての相対感度に関連付けられ、最大送信パワーレベルに関連するマージンは、利用可能なTFCの前記セットから前記TFCを除外する際に使用されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
無線通信においてトランスポートフォーマットコンビネーション(TFC)を選択するユーザ機器(UE)であって、
トランスポートフォーマットコンビネーションのセット(TFCS)の中から最大送信パワーレベルを超えるトランスポートフォーマットコンビネーション(TFC)を判定するプロセッサであって、前記最大送信パワーレベルを超える送信パワー要件を有するTFCは前記TFCSから除去され、先に前記最大送信パワーレベルを超えていたが、現在は前記最大送信パワーレベルを超えない送信パワー要件を有するTFCは利用可能なTFCのセットの中における利用可能なTFCに戻され、該判定は毎送信時間間隔に少なくとも1回行われ、前記TFCSの前記TFCは順序を有している、プロセッサと、
アップリンクデータの送信のためのTFCを、前記順序を有する前記TFCに基づいて選択をするプロセッサと、を備え、
前記選択されたTFCは、前記最大送信パワーレベルを超えないと判定されたTFCである、
ことを特徴とするUE。
【請求項9】
前記TFCを選択することは、送信時間間隔(TTI)基準に実行されることを特徴とする請求項8に記載のUE。
【請求項10】
前記プロセッサは、利用可能なTFCの前記セットから符号化複合トランスポートチャネル(CCTrCH)の送信のためのTFCを選択することを特徴とする請求項8に記載のUE。
【請求項11】
アップリンクデータの送信のための前記TFCの選択に対して利用可能なTFCの前記セットが、周期的に更新されることを特徴とする請求項8に記載のUE。
【請求項12】
利用可能なTFCの前記セットは、送信時間間隔(TTI)毎に更新されることを特徴とする請求項11に記載のUE。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通信システムにおける高速ダイナミックリンクアダプテーションに関する。
【背景技術】
【0002】
第3世代(3G)通信システムでは、ユーザ機器(UE: User Equipment)が最大許容または物理的最大の送信パワーより大きい送信パワーで送信を行わなければならないような劣化した無線伝搬条件を補償するために、ダイナミックリンクアダプテーション(DLA: Dynamic Link Adaptation)が使用される。最大パワーレベルより大きいパワーレベルでの送信を要求する伝送は、3G通信システムでは最大パワーレベルで送信される。これらの信号が最大パワーレベルで送信されると(これらの信号はそれらの所望の送信パワーレベルより小さい)、それらの信号の性能は劣化し、誤り率が増大して、送信データが受信されない可能性が高まり、使用されているシステム資源が浪費されることになる。
【0003】
この最大パワー条件に対処するための従来技術の一方法は、最大許容または物理的最大の送信パワーで送信を継続し、受信器の誤り訂正機能に頼って、誤りが生じればそれを訂正することである。これによると結局は、システムのパフォーマンスが望ましくないものとなる。というのは、所望の誤り率性能のレベルを維持するのに十分でないパワーレベルで送信が行われることになるからである。
【0004】
最大パワー条件に対応するためのもう1つの方法は、所望の誤り率性能のレベルを維持するために必要な送信パワーが最大パワー能力より大きい期間のアップリンク(UL: Uplink)データ要件を低減することである。この方法は、データレートを低減することによって、所望の誤り率性能を維持する。
【0005】
ブロック誤り率(BLER: Block Error Rate)の増大を許容することによって、ULデータ要件に影響を及ぼすことなく、所望のパワーが最大パワー能力を超える時にUL送信を継続することも可能である。この効果は、最大パワー条件が感知される時から、全体として低減されたレートにUL送信を再設定することができる時までの期間について不可避であると考えられる。3Gワイヤレス標準では、この期間を制限するUE性能要件が規定されている。
【0006】
最大送信パワーレベルより大きいパワーレベルを要求する伝送は失敗する可能性が高いので、規定の要件を超えようとする強力な動機づけがある。失敗した伝送のデータ再送を許容するサービスでは、オーバーヘッドが増大し、無線資源効率が低下し、UEのバッテリ寿命が短くなる。再送を許容しないサービスでは、BLERが増大することにより、BLERの品質ターゲットを維持しようとする後続のパワー要求が増大することになる。UEは既にその最大パワーで送信をしているので、UL送信パワー制御アルゴリズムで使用される信号対干渉比SIRターゲットの増大は、現在のチャネル条件に対するBLER性能を改善しない。チャネル条件が改善すれば、増大したSIRターゲットにより、UEは、所望の性能を維持するのに必要であるより大きいパワーレベルで送信を行わなければならないため、無線資源効率およびバッテリ寿命が低下する。
【0007】
改善されたサービス品質(QoS: Quality of Service)に対する性能要件を達成し、または超えるためには、UL送信要件を調節する効率的方法が必要である。
【0008】
3G通信システムでは、個別のデータストリームが特定のQoS能力を有するトランスポートチャネル(TrCH: Transport Channel)に割り当てられ、それらは規定のBLER品質ターゲットを達成するように設定される。UEに割り当てられる物理チャネルは、複数のTrCHを同時にサポートする。これは符号化複合トランスポートチャネル(CCTrCH: Coded Composite Transport Channel)と呼ばれる。CCTrCHは、任意の特定の送信時間間隔(TTI: Transmission Time Interval)において、各TrCH上の可変量のデータが存在することを可能にする。TTI期間は各TrCHに固有である。特定のTrCHに対する各TTI期間内に、送信されるデータの量はトランスポートフォーマット(TF: Transport Format)により規定される。
【0009】
任意の特定のTTI期間におけるCCTrCHについて、各TrCHに対するTFのセットはトランスポートフォーマットコンビネーション(TFC: Transport Format Combination)として知られている。すべての利用可能なTFC(すなわち、利用可能な許容多重化オプションのすべて)のセットは、トランスポートフォーマットコンビネーションセット(TFCS: Transport Format Combination Set)として知られている。
【0010】
それぞれのULのCCTrCHについて、UE媒体アクセス制御(MAC: Medium Access Control)エンティティは、送信のためのTFCをTTIごとに選択する。このTFCおよび関連するデータは、物理データ要求プリミティブにて送信のために物理層に提供される。物理層がその後、このTFCの送信が最大または許容UE送信パワーを超えると判定した場合、物理ステータス指示プリミティブがMACに対して生成されて、最大パワーまたは許容送信パワーに到達したことを知らせる。
【0011】
最大または許容送信パワーに達したことがMACに通知されると、この条件が存在し続ける原因となるTFCは、そのTFCが3GPP標準に従ってブロックすることができないものでない限り、ブロックされる。すなわち、利用可能なTFCのセットから除去される。ブロックされたTFCは後に、UE送信パワー測定により最大または許容UE送信パワー以下でそれらのTFCをサポートできることが示されると、それらを以後の期間ブロック解除することによって、利用可能なTFCのセットに復元され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、TFCが除去される現在の方式には深刻な欠点がある。前述のように、物理層は、TFCの送信が最大または許容UE送信パワーを超えることを要求しているかどうかを判定してから、最大パワーまたは許容パワーに達したことを示す物理ステータス指示プリミティブをMACエンティティに対して生成する。この方法を用いると、MACが、ブロックされるTFCを除去し利用可能なTFCの更新されたセットからTFCを選択し始めるために、利用可能なTFCのセットを再設定する間に、UEはおよそ60ミリ秒またはそれ以上の間、最大パワー状態にある可能性がある。UEは、送信パワー能力を超えたTFCのパワー要件に対してのみ利用可能なTFCを縮小することになる。UEはその後、次に低い送信パワー要件のTFCを選ぶ可能性が高いことになる。しかし、TFCの縮小されたセットが、最大パワーを超えるパワーを要求しないという保証はない。このため、TFCのセットをさらに縮小するために、処理がもう1度繰り返され、追加の遅延が生じる。排除される各TFCについて、所与のTTIに対するデータおよび無線資源が失われる。結局、最大パワー条件の期間中、システムのパフォーマンスは劣化する。
【0013】
UEが最大パワー条件のためにブロックされていたTFCを回復しようとするときに、さらなるフォーマンス上の問題が生じる。UEが使用するための利用可能なTFCのセットをより完全にするために、できるだけ素早くTFCをブロック解除(すなわち回復)することが望ましい。結局、システムのパフォーマンスは、TFCが効率的に回復される場合に改善される。
【0014】
したがって、UEがその最大パワー状態にある状況に対処する従来技術の方法は、満足の行くシステムパフォーマンスには程遠い。最大UEパワー条件に達している期間中にTFCのセットを迅速に縮小し、最大UEパワー条件がなくなった時にTFCを迅速に復元する改善された方法があることが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、パワーおよびデータ要件の範囲内にとどまりながら、所望の送信をサポートするためにTFCS内のTFCの効率的縮小を可能にするためのシステムおよび方法である。UE送信パワー要件が最大または許容送信パワーを超える場合、TFCのセットを、パワー制限を現在超えていない受容可能なTFCのみに縮小する。そして、UEは、TFCの受容可能な縮小セットのうちから選択を行うことになる。
【0016】
また、本発明は、非サポートTFCの事前判定もサポートする。最大または許容UE送信パワーより大きい送信パワーを要求するTFCは、最大パワーを超えるTTIだけでなく、毎TTIごとに継続的に判定される。TFC選択プロセスは、送信に先立って送信パワー能力を超えるTFCの選択を避けるように調節される。
【0017】
また、本発明は、最大パワー条件がもはや存在しない場合に、TFCSにおけるTFCの復元も可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明によるTFCの効率的な除去の流れ図である。
【
図2】TFCSにおけるTFCの復元の流れ図である。
【
図3】本発明によるTFCの事前除去の流れ図である。
【
図4】定期的にTFC送信パワー要件を判定することに対応する代替法の流れ図である。
【
図5】定期的にTFC送信パワー要件を判定することに対応する代替法の流れ図である。
【
図6】MACエンティティおよび物理エンティティのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照して本発明を説明する。全体を通じて同一番号は同一要素を表す。
【0020】
本発明によるダイナミックリンクアダプテーションには3つの基本的な態様がある。第1に、UE送信パワー要件がUEの最大パワーまたは最大許容パワーを超える条件が存在する場合、最大パワー制限を超えるパワーを要求するTFCが効率的にブロックされる。その後のTFC選択のために、この制限を現在超えているすべてのTFCがMACに通知される。その後は、UE送信パワー制限能力を超えるパワーを要求しないTFCのみが選択のために利用可能である。
【0021】
第2に、本発明は、最大パワー条件がもはや存在しない時に、TFCSにおけるTFCの効率的回復をサポートする。
【0022】
最後に、本発明は、非サポートTFC、すなわち最大または許容UE送信より大きい送信パワーを要求するTFCの事前判定をサポートする。これらのTFCは、最大パワー条件が存在するTTIだけでなく、毎TTIごとなど、継続的かつ定期的に判定される。毎TTIには、データが送信されないTTIを含むことも含まないこともある。TFC要件は時間にわたって変化するので、これにより、サポートされないことになるTFCの事前判定が可能となる。
【0023】
なお、本発明はTFCの除去および復元に関係しているが、設定されたTFCS内のTFCの最小セットは常に送信のために利用可能であるべきことに留意されたい。好ましくは、この最小セットは、以下で説明するTFCの除去および復元のプロセスから除外される。
【0024】
TFCの除去および復元のプロセスは定期的に実行される。これらのプロセスの期間は、1つのTTIに基づくものとして以下で説明されるが、ほぼ毎TTI(すなわち、TTI当たり複数回)ごと、または数個のTTIごとにアクションを実行することも可能である。また、毎TTIには、データが送信されないTTIを含むことも含まないこともあることに留意されたい。
【0025】
図1を参照すると、本発明によるTFCの効率的な除去の手続き10が示されている。手続き10は、利用可能なTFCのセットを用いてTFCを選択するで始まる(ステップ16)。利用可能なTFCのセットは、CCTrCHの確立のために設定された初期の完全なトランスポートフォーマットコンビネーションセット(TFCS)である。選択されたTFCは物理エンティティ14に送られる(ステップ18)。物理エンティティ14は、TFC送信パワー要件を判定し(ステップ22)、このTFCに要求されるUE送信パワーが最大または最大許容のUEパワーを超えているかどうかの判定を行う(ステップ24)。超えていない場合、TFCに対する送信パワー要件が最大許容パワーを超えるまでステップ16、18、22および24が繰り返される。TFCの送信について、UEパワー要件が最大許容パワーを超えている場合、物理エンティティ14は、TFCS内で「超過パワー状態」にあるすべてのTFCを判定する(ステップ25)。物理エンティティ14は、TFCの利用可能または利用不可の(すなわちブロックされた)ステータスをMACエンティティ12に示す(ステップ26)。なお、物理エンティティ14は、利用可能なTFCか、利用不可のTFCか、またはその両方かのステータスを示すことができることに留意されたい。MACエンティティ12は、物理層エンティティ14によって示された超過パワー状態にあるTFCを利用可能なTFCのセットから除去する(ステップ28)。そして手続き10は各TTIについて繰り返される。
【0026】
機能が物理層で実行されるものとして具体的に特定されているが、これらのアクションの一部はMAC層で実行することも可能である。
【0027】
図2を参照すると、超過パワー状態にあるTFCの復元の手続き50が示されている。MACエンティティ12は、利用可能なTFCのセットを用いてTFCを選択する(ステップ52)。利用可能なTFCのセットは、CCTrCHの確立時に設定された初期の完全なトランスポートフォーマットコンビネーションセット(TFCS)、または物理エンティティ14から以前に示された、TFCSから縮小された利用可能なTFCのセットのいずれかである。選択されたTFCが物理エンティティ14に送られる(ステップ53)。
【0028】
物理エンティティ14は、任意のTFCが超過パワー状態にあるかどうかを判定する(ステップ54)。この判定は、設定されたTFCS内で超過パワー状態にあるTFCについてのみ定期的に実行される。この周期は、例えば、毎TTIとしてもよい。次に、物理エンティティ14は、超過パワー状態にあったTFCのいずれかが最大または最大許容パワーをもはや超えておらず、利用可能なTFCのセットに復元することができるかどうかを判定する(ステップ55)。次に、物理エンティティ14は、復元されるTFCをMACエンティティ12に示す(ステップ56)。利用可能なTFCに変化がある場合(すなわち、TFCがブロック解除される場合)、MACエンティティ12は、自己の利用可能なTFCのリストを更新する(ステップ58)。ステップ52〜58は、MACおよび物理層エンティティ12、14によって継続的に繰り返される。この手続き50は、TFCがブロックされている時に、利用可能なTFCの回復が最大パワーを超えているTTIだけでなく、毎TTIごとに、継続的に判定されることを確実にする。
【0029】
TFCの復元は、送信信号に関してUEが計算する送信パワー測定によって判定されるよりも、ブロック解除されるTFCが定期的に示される場合のほうがはるかに効率的である。というのは、通常の測定報告および処理のメカニズムは遅いからである。これによりUEは、送信レートを、現在のチャネル条件によってサポートされているデータレートより低下させないようにすることができる。UEは、送信前に予測される送信パワー要件に基づいて所望のTFCを復元することができ、TFCを復元するのに要する時間を1つまたは複数のTTIだけ短縮する。
【0030】
図3を参照すると、本発明によるTFCの事前除去の手続き150が示されている。手続き150は、CCTrCh確立および完全なTFCSの設定を開始する(ステップ151)。次に、利用可能なTFCのセットからTFCを選択する(ステップ152)。MACエンティティ12が、選択されたTFCを物理エンティティ14に送る(ステップ154)。物理エンティティ14は、定期的に、例えば
図3に示されているように毎TTIごとに、利用可能なTFCを継続的に判定する(ステップ156)。すべての利用可能なTFCを送信できることが確認される。いずれかの以前にブロック解除されたTFCが現在超過パワー状態にあるかどうかについて判定が行われる(ステップ157)。そうでない場合、手続き150はステップ152に戻って、手続き150を繰り返す。そうである場合、現在超過パワー状態にある新しいTFCがMACエンティティ12に示される(ステップ158)。MACエンティティ12はすべての利用可能なTFCのリストを更新する(ステップ160)。なお、MACエンティティ12によって実行されるステップ152、154および160ならびに物理エンティティ14によって実行されるステップ156、157、158は継続的に繰り返されるが、必ずしも
図3に示すように各TTIである必要はないことに留意されたい。
【0031】
時間にわたって変化するTFC送信パワー要件が定期的に、例えば各TTI、復元のためにチェックされるので、この方法150にり、サポートされないTFCの事前判定が可能となる。TFCパワー要件はステップ156で各TTIでチェックされ、最大または最大許容パワーを超えているかどうかが判定される。現在ブロックされていないTFCに対してパワー要件を満たすことができない場合、物理エンティティ14はこのTFCがブロックされるべきことをMACエンティティ12に示す(ステップ158)。TFC選択プロセスは、そのTFCの送信に先立って、送信パワー能力を超えるTFCを選択しないように調節される。さらに、現在ブロックされているTFCに対してパワー要件を満たすことができる場合、以前にブロックされたTFCが復元されるように、許容可能なTFCのリストが継続的に更新される。
【0032】
事前判定は、時間にわっての無線伝搬条件の変化を判定するロジックを追加的に使用してもよい。例えば、受信したリファレンスチャネルからの経路損失の変化や、報告されるアップリンク干渉の変化がある。これらおよびその他の無線伝搬条件の変化により、UEは、将来の送信パワー要件を予測し、TFCが超過パワー状態に入るような干渉、経路損失、その他の条件に先立ってTFCをブロックすることができる。
【0033】
事前判定方法150は、正常な送信のための適切なTFC選択によってULデータ損失の低減および無線資源の効率的使用という結果となる。TFCの選択および送信の前にTFCをブロックすることによって、BLERの低減によりユーザのQoSが改善され、再送の必要が減ることにより物理資源がより良く利用される。TrCHのBLERが低減されるので、対応する不必要なULのSIRターゲットの上昇が回避され、UL送信パワーの低減によりさらに全体の無線資源効率を高める。
【0034】
利用可能なTFCを継続的に更新する方法10、50および150はパフォーマンスを改善するが、毎TFC、毎TTIごとにパワー要件を計算するのに要する計算資源は多大である。そこで、
図4および5を参照すると、定期的、またはTTIごとに、TFC送信パワー要件を判定する2つの代替法が示されている。
【0035】
図4の方法70は、MACエンティティ12が、CCTrCHの確立または再設定時に決定されたTFCのセットを使用するで始まる(ステップ72)。CCTrCHの確立または再設定時に、設定されるTFCSは送信パワー要件に従ってTFC別にソートされる(ステップ74)。なお、ここでは物理層14に示されているが、ソートされるTFCリストはレイヤ2またはレイヤ3のエンティティのいずれかで決定されてもよいことに留意されたい。TDDシステムでは、TFCのこのリストは、タイムスロットごとにソートされたTFCリストのように、タイムスロット固有であってもよい。物理エンティティ14は、最高の送信パワー要件を有するTFCを送信する能力を定期的に検証する(ステップ76)。TFCを送信することができるかどうかについて判定が行われる(ステップ77)。このTFCを送信することができる場合、ブロックされたTFCがあったかどうかについて判定が行われる(ステップ79)。あった場合、すべての以前にブロックされたTFCを利用可能にし(ステップ81)、物理層エンティティ14はステップ82に進み、TFCS内のすべてのTFCがブロック解除されるべきであり、現在利用可能であることをMACエンティティ12に示す。なかった場合、手続き70はステップ76に戻る。
【0036】
一方、最高送信パワー要件を有するTFCを送信することができないと判定される場合(ステップ77)または最高送信パワーを有するTFCが最大許容パワーより大きい送信パワーを要求する場合、ソートされたリスト内の各TFCのステータスを見積もる手続きが実施される(ステップ78)。どのTFCがブロックされるべきであるかを効率的に判定する具体的なプロセスは、本発明にとって中心的ではない。というのは、利用することのできる数多くの代替法の選択肢があるからである。例えば、本発明の第1の代替法では、ソートされたTFCリストがあるので、リスト内の真中のTFCを送信することができるかどうかを判断するためにチェックする。それを送信することができない場合、リストの下半分の真中のTFCを送信することができるかどうかを判断するためにチェックする。同様に、そのリストの真中のTFCを送信することができる場合、リストの上半分の真中のTFCを送信することができるかどうかを判断するためにチェックする。このプロセスを、送信することができる最高パワー要件を有するTFCまで繰り返す。別の代替法では、ハッシュ関数を適用して、パワー能力を超えるリストインデックスを見積もる。
【0037】
物理エンティティ14は、サポートされていないTFCおよび以前にブロックされ現在はサポートされているTFCを判定し(ステップ80)、更新された利用可能なTFC、およびブロックされたTFCをMACエンティティに示す(ステップ82)。
【0038】
ブロック解除されたTFCの更新された完全なリスト、または新たにブロック解除されたTFCのリストを物理エンティティ14からMACエンティティ12へ送ることの代替法として、ソートされたTFCリストへの「インデックス」のみを送信することがある。例えば、TFCリストがソートされているとき、インデックスより上のエントリがブロックされ、下のエントリがブロック解除される。インデックスの送信は、物理エンティティ14とMACエンティティ12との間に必要な制御シグナリングの量を低減することになる。
【0039】
ブロック解除されたTFCの更新された完全なリスト、または新たにブロック解除されたTFCのリストを物理エンティティ14からMACエンティティ12へ送ることの第2の代替法として、測定または計算された値を物理エンティティ14からMACエンティティ12(または他のレイヤ2エンティティ)に送り、これによりレイヤ2エンティティが、利用可能なTFCの新しいセットを判定できるようにすることがある。なお、物理エンティティ14によって実行されるように
図4に示されたステップの多くは、ステップ78および80のように、MACエンティティ12によって実行することも可能であることに留意されたい。
【0040】
その後、ステップ76〜82が繰り返される。物理エンティティ14が、許容可能なTFCの更新されたリスト(またはTFCSインデックスまたは測定/計算値)をMACエンティティ12へ送信すると、MACエンティティ12は利用可能なTFCのリストを更新する(ステップ84)。
【0041】
図5を参照すると、TFC送信パワー要件を定期的に判定することの第2の代替法100が示されている。MACエンティティ12は、最初に、CCTrCHの確立または再設定時に設定されたTFCのセットを使用する(ステップ102)。CCTrCHの確立または再設定時に、各TFCは相対感度と関連づけられる。これは、MACエンティティ12、物理エンティティ14、または任意のレイヤ2もしくはレイヤ3エンティティによって行なうことができる。この感度は、ある種の伝搬チャネルの仮定の下でのEn/No要件、チャネル/送信パワーの仮定の下での最大の許容可能な経路損失または他の方法で整数0〜Nにマッピングすることができる。さらにTDDシステムでは、この相対感度はタイムスロット固有とすることもできる。
【0042】
MACエンティティ12は、選択されたTFCを物理エンティティ14に転送する(ステップ104)。物理エンティティ14は、TFCを送信し(ステップ106)、最大パワーに対してマージンを決定する(ステップ108)。物理エンティティ14は、そのマージンを用いて、ブロックされるTFCおよびブロック解除されるTFCを識別する(ステップ110)。なお、このマージンは負であっても(これは潜在的なブロッキングを示す)、または正であってもよい(これは潜在的な回復を示す)ことに留意されたい。そして、これらのブロックされるTFCおよびブロック解除されるTFCがMACエンティティ12に示される(ステップ112)。その後、物理エンティティ14は、各TFC送信時にステップ106〜112を繰り返す。MACエンティティ12は、物理エンティティ14からブロックされるTFCおよびブロック解除されるTFCの指示を受け取ると、ブロックされるTFCおよびブロック解除されるTFCのリストを更新する(ステップ114)。その後、ステップ104および114がMACエンティティ12によって繰り返される。
【0043】
図6を参照すると、MACエンティティ12および物理エンティティ14のブロック図が示されている。MACエンティティ12は、所望のTrCHをサポートする特定のCCTrCHに関連する送信のためにTFCを選択するTFC選択プロセッサ13を含む。同様に、物理エンティティ14は、ブロックされるTFCおよびブロック解除されるTFCを判定し、ブロックされるTFCおよびブロック解除されるTFCをTFC選択プロセッサ13に示す許容TFCプロセッサ15を有する。物理層処理が好ましいが、上記の処理の一部をMAC層または他のレイヤ2エンティティ内で実行することも可能である。
図4および5に示した実施形態によれば、TFCプロセッサ15は、UE送信パワー要件別にTFCをソートすることも行う。ソートされるリストまたは相対感度の決定は、TFC選択プロセッサ13で決定することもできる。したがって、この処理は、物理層、MACもしくは他のレイヤ2エンティティ、またはレイヤ3エンティティでも実行可能である。MACエンティティ12は選択されたTFC17(設定されたTFCS内の利用可能なTFCから選択された)を物理エンティティ14に転送する。これに応答して、物理エンティティ14は、TFCのブロックおよびブロック解除(除去および復元)を示す19。
【0044】
なお、方法10、50、150は別個の手続きとして上記で説明されているが、当業者には明らかに理解されるように、これらの方法は特定の用途にて所望されるように組み合わせてもよく、処理は同時に実行されてもよいことに留意されたい。方法10、50および150内のロジックを組み合わせる場合、各方法について規定されたロジックのいくつかの変更が、これらの方法を統合して適切な動作を達成するために必要である。このように、本発明は好ましい実施形態に関連して説明されているが、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲内にある他の変形形態は当業者には明らかであろう。