(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5695416
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】ガス解放及び/または調節装置
(51)【国際特許分類】
F16K 1/44 20060101AFI20150319BHJP
【FI】
F16K1/44 A
【請求項の数】11
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-513962(P2010-513962)
(86)(22)【出願日】2008年7月1日
(65)【公表番号】特表2010-531965(P2010-531965A)
(43)【公表日】2010年9月30日
(86)【国際出願番号】EP2008058424
(87)【国際公開番号】WO2009003994
(87)【国際公開日】20090108
【審査請求日】2011年6月27日
(31)【優先権主張番号】07111498.7
(32)【優先日】2007年7月2日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509351926
【氏名又は名称】ルクセンブルク パテント カンパニー ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100089266
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 陽一
(72)【発明者】
【氏名】リセ、クロード
【審査官】
石井 孝明
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭61−028950(JP,U)
【文献】
実開昭51−028821(JP,U)
【文献】
米国特許第04275764(US,A)
【文献】
欧州特許出願公開第00545846(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/44
F16K 31/145
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス解放及び/または調節装置であって、
通路並びに前記通路に接続されている吸気口(2)及び排気口(3)を備えた本体(1)と、
前記通路内のシャッタ手段(5、6、7、8)と、
前記装置の本体(1)とともに、前記シャッタ手段(5、6、7、8)の下流に低圧チャンバ(11)を画定する可動手段(9、12)とを備え、前記可動手段(9、12)が前記低圧チャンバ(11)内の圧力に応じて前記シャッタ手段(5、6、7、8)を作動させ、
前記シャッタ手段(5、6、7、8)が、第1のシャッタ(5、6)と、前記通路内で前記第1のシャッタ(5、6)の下流に配置された第2のシャッタ(7、8)とを備え、
開いているときには前記第2のシャッタ(7、8)が前記第1のシャッタ(5、6)を押すように、両方のシャッタが閉じているときには前記2つのシャッタ間の機械的連結部に僅かなゆとりがあるように、第1の機械的係止構造によって、前記第1及び第2のシャッタ(5、6、7、8)が、前記第1のシャッタ(5、6)が前記第2のシャッタ(7、8)の前に閉じるように機械的に連結されていることを特徴とするガス解放及び/または調節装置。
【請求項2】
前記第1及び第2のシャッタが、前記装置の本体(1)に固定された前記第1及び第2のシャッタのそれぞれの弁座(6、8)と協働するシャッタ可動要素(5、7)を備えていることを特徴とする請求項1に記載のガス解放及び/または調節装置。
【請求項3】
前記第1のシャッタ(5、6)が、前記通路を閉じるためにガス流の正常方向に前記第1のシャッタ(5、6)の前記弁座(6)に向かってスプリング(4)が前記第1のシャッタ(5、6)を押すように設計されていることを特徴とする請求項2に記載のガス解放及び/または調節装置。
【請求項4】
前記第2のシャッタ(7、8)の前記シャッタ可動要素(7)がガス流の正常方向に前記第2のシャッタ(7、8)の前記弁座(8)上に置かれているときに、前記第2のシャッタ(7、8)が前記通路を閉じることを特徴とする請求項3に記載のガス解放及び/または調節装置。
【請求項5】
前記第2のシャッタ(7、8)の前記シャッタ可動要素(7)が前記可動手段(9,12)の可動要素(9)に牽引されるように連結されていることを特徴とする請求項4に記載のガス解放及び/または調節装置。
【請求項6】
前記第2のシャッタ(7、8)の前記シャッタ可動要素(7)が、前記装置の本体(1)上に置かれているスプリングによって前記第2のシャッタ(7、8)の前記弁座(8)に向かって押され、好適には第2の機械的係止構造によって前記可動手段(9、12)に接続されていることを特徴とする請求項4のガス解放及び/または調節装置。
【請求項7】
前記第1のシャッタ(5、6)の前記シャッタ可動要素(5)が、前記第1のシャッタ(5、6)の前記弁座(6)と協働する円錐部分と、前記円錐部分の下で前記弁座(6)を横切って延在する長寸部分とを備えていることを特徴とする請求項2ないし6のいずれか1項に記載のガス解放及び/または調節装置。
【請求項8】
前記第2のシャッタ(7、8)の前記シャッタ可動要素(7)が、前記第2のシャッタの前記弁座(8)と協働する円錐部分と、前記円錐部分の下で前記弁座(8)を横切って延在する長寸部分とを備えていることを特徴とする請求項7に記載のガス解放及び/または調節装置。
【請求項9】
前記第1のシャッタ(5、6)の前記シャッタ可動要素(5)の前記長寸部分が、前記第2のシャッタ(7、8)の前記シャッタ可動要素(7)の前記円錐部分と協働することを特徴とする請求項8に記載のガス解放及び/または調節装置。
【請求項10】
前記第2のシャッタ(7、8)の前記シャッタ可動要素(7)の前記円錐部分が、前記第2のシャッタの開動作を前記可動手段(9、12)から前記第1のシャッタ(5、6)の前記シャッタ可動要素(5)へ伝達するために、前記第1のシャッタ(5、6)の前記シャッタ可動要素(5)の前記長寸部分を受容し、該長寸部分を係止可能な係止底部を有する空洞部を備えていることを特徴とする請求項9に記載のガス解放及び/または調節装置。
【請求項11】
前記第1のシャッタ(5、6)の前記シャッタ可動要素(5)の長寸部分が、前記両方のシャッタが閉じているときには、該部分を受容する前記第2のシャッタの前記空洞部の前記係止底部から離れて配置されることを特徴とする請求項10に記載のガス解放及び/または調節装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば水素などの加圧されたガスのための
ガス解放及び/または調節装置(機構
)に関する。
【0002】
加圧されたガスのための解放または調節機構は特許文献1によって公知である。この機構は、弁座と協働して気密を可能にするガス遮断要素を含む解放機構を備えている。この要素は、一方では第1の調整可能なスプリングの圧力を受け、他方では遮断要素と弁座の間を通過するガスの圧力を受けるようなピストンによって作動する。この圧力は、遮断要素の下流にある低圧チャンバを画定する気密性メンブレン(膜)によって印加される。
【背景技術】
【0003】
スプリングによって印加される圧力は、第1のスプリングの事前圧縮つまみを回すことによって調整され得る。理論的には、それにより、機構の動作圧力を調整することができる。機構は、つまみをスプリングの減圧の方向に最大まで回すことによって遮断される。逆方向に作用する第2のスプリングは、ピストンを最上部に向かって押す。第1のスプリングを減圧することによって、第2のスプリングが、ピストンを持ち上げ、ひいては機構を遮断することができる。
【0004】
遮断要素とその弁座間の気密性が低下すると、機構の完全な遮断はもはや保証されない。
【0005】
特許文献1に示されているのと原理が類似しており、かつ解放機構の弁座の気密性不足に備えて安全装置が設けられているガス解放機構が、特許文献2にも示されている。実際には、追加の遮断要素が解放機構の上流に配置されており、すなわち高圧下にあり、これは、機構の出口に設けられた、過剰圧力が生じたら崩壊するように寸法を決められた圧縮軸によって、開に維持されている。実際には、追加の遮断要素は、圧縮軸に圧縮力を加える解放機構の出口圧力を受けるメンブレンに接続されている。解放機構に埃や氷が詰まった場合、機構の出口圧力は許容限界を超えて増大することがあり、その結果、圧縮軸が崩壊し、追加の遮断要素がスプリングの力を受けて遮断方向に閉じることになる。
【0006】
特許文献2において提唱されているような、起こり得る解放機構の遮断要素の故障の問題を解決する方策は、閉塞性及び複雑さ故に満足できるものではない。さらに、この安全装置は、機構の出口圧力が一定の閾値に達したときにしか作動しない。このことは、安全装置が機構に接続されていないときには安全装置が作動しないことを意味する。このように、特許文献2の安全装置は、安全弁としては作動しないが、解放機構のユーザ側圧力を制限するための防護装置として作動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願公開1031900号明細書
【特許文献2】英国特許出願公開2267950号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題の簡単かつコンパクトな解決策を実現し、安全遮断装置を備えた解放機構を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に従って、ガス解放及び/または調節機構
(装置)であって、通路、吸気口及び排気口を備え、吸気口及び排気口が通路に接続されているような本体と、通路を遮断する要素
(シャッタ手段)と、機構の本体に関連付けられ、遮断要素の下流に低圧チャンバを画定する複数の可動要素
(可動手段)と備え、可動要素が、低圧チャンバ内の圧力に応じて遮断要素を作動させ、遮断要素が、第1のシャッタと、通路内で第1のシャッタの下流に配置された第2のシャッタから構成され、第1及び第2のシャッタは、第1のシャッタが第2のシャッタの前に閉じるように機械的に連結されているような機構を提供する。
【0010】
第1及び第2のシャッタは、各々、機構の本体に取り付けられたそれぞれの弁座と協働する可動遮断要素
(シャッタ可動要素)を備え得る。
【0011】
第1のシャッタは、通路を閉じるためにガス流の正常方向に第1のシャッタの弁座に向かってスプリングが第1のシャッタを押すように設計され、かつ、開いているときには第2のシャッタが第1のシャッタを押すように、そして両方のシャッタが閉じているときには2つのシャッタ間の機械的接続部に僅かなゆとりがあるように、単純な機械的止め具
(第1の機械的係止構造)によって第2のシャッタに機械的に接続されているのが好ましい。
【0012】
第2のシャッタは、第2のシャッタの可動遮断要素がガス流の正常方向に第2のシャッタの弁座内に置かれているときに、ガス流を遮断するのが好ましい。
【0013】
第2のシャッタは、可動要素に結合され得る。
【0014】
第2のシャッタの可動要素は、機構の本体上に置かれているスプリングによって第2のシャッタの弁座に向かって押されるのが好ましく、機械的止め具
(第2の機械的係止構造)によって可動要素に接続されているのが好ましい。
【0015】
第1のシャッタの可動要素は、第1のシャッタの弁座と協働する円錐部分と、円錐部分の下で弁座を横切って延在する長寸部分とを備え得る。
【0016】
第2のシャッタの可動要素は、第2のシャッタの弁座と協働する円錐部分と、円錐部分の下で弁座を横切って延在する長寸部分とを備え得る。
【0017】
第1のシャッタの可動要素の長寸部分は、第2のシャッタの可動要素の円錐部分と協働する。
【0018】
第2のシャッタの可動要素の円錐部分は、第2のシャッタの開動作を第2のシャッタの可動要素から第1のシャッタの可動要素へ伝達する等のために、第1のシャッタの可動要素の長寸部分を受容する空洞部を止め具
(係止底部)として備え得る。
【0019】
第1のシャッタの可動要素の長寸部分は、両方のシャッタが閉じているときには、当該部分を受容する第2のシャッタの空洞部止め具から離れて配置され得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明のガス解放及び/または調節機構の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のガス解放及び/または調節機構は、吸気口2と、排気口3と、吸気口を排気口に接続する通路とを備えた本体1で構成されている。この通路は、直列に配置されかつ機構の本体の主軸に従って整合された2つのシャッタによって閉じられる。第1のシャッタは、気密に弁座6と協働する円錐形状の可動要素5を備えている。弁座6は、本体に直接取り付けられるかまたは取り外され得る。スプリング4は、可動要素5に、第1のシャッタの閉鎖方向に圧力を印加する。可動要素5は、円錐部分から弁座6のオリフィスを横切って延在する長寸部分を備えている。閉じた状態で、第1のシャッタは、2つのゾーン、すなわち、機構が接続されている容器または配管内の圧力に対応する第1のシャッタより上
流の高圧ゾーンと、ガスが既に部分的に解放(放出)された第1のシャッタより下流の低圧ゾーンとを画定する。第2のシャッタは、第1のシャッタと直列に第1のシャッタの下流に配置される。第2のシャッタは、気密に弁座8と協働する円錐形状の可動要素7を備えている。第1のシャッタと同様に、弁座8は、取り外されるかまたは本体に直接取り付けられ得る。第1及び第2のシャッタが閉じているとき、機構の本体内の両シャッタ及び通路は中間チャンバ20を画定する。この中間チャンバでは、第2のシャッタの可動要素7の円錐部分は、可動要素5の長寸部分の先端を摺動式に受容する空洞部を備えている。可動要素7はまた、円錐部分から弁座8のオリフィスを横切って延在する長寸部分を備えている。この長寸部分の先端は、可動要素9と協働する。これは、機構の本体及び第2のシャッタとともに、機構の出口3と連通する低圧のチャンバを画定する。
【0022】
可動要素9に固定されたメンブレン12が、低圧チャンバの上部を気密に分ける。可動要素9は、機構の本体上に置かれているスプリング10などの弾性要素から圧力を受けている。
図1及び
図2の例の場合、スプリング10は、最上部に向かって垂直な力を加える。それゆえ、スプリング10は要素9を持ち上げる傾向がある。この要素は、メンブレン12によってピストン13に接続されており、機構の本体の最上部で摺動することができ、ピストン13はそれ自体がスプリング14などの弾性要素から垂直な力を受けている。このスプリングは、玉軸受止め具上に置かれており、その位置は、機構の(及びスプリングの)主軸によって決まり、つまみ15によって調整され得る。このつまみは、機構の解放圧力の調整及び機構の遮断を可能にする。
【0023】
圧力計16は、高圧と直接連通して配置されることになる。機構のユーザ側には、接続部17が設けられている。
図2はまた、低圧チャンバひいては機構の出口と直接連通している過剰圧力弁18を示す。機構の、高圧と直接連通する側には、容器のための充填機構19が設けられている。
【0024】
作動中、スプリング4及び10の反力と、通路部分に対応する第1のシャッタの可動要素5の部分に作用する高圧下のガスの圧力により生じる反力とのバランスを取るために、つまみ15は、スプリング14に十分な圧力を印加するように動く。可動要素9はそのとき、底部に向かって僅かに移動する。この動きは、機械的止め具によって第2のシャッタの可動要素7及び第1のシャッタの可動要素5に直接伝達される。ひとたび両方のシャッタが開くと、低圧チャンバ11内のみならず中間チャンバ20内の圧力が高まる。低圧チャンバ内で圧力が高まるにつれて、メンブレン12は最上部に係合され、スプリング14を圧縮することによってピストン13を最上部に向かって僅かに移動させる。可動要素9はこのとき、シャッタの2つの可動要素7及び5を動かすために、そして、ガス流を調節し、ひいては低圧チャンバ内の作動圧力を調節するために、最上部に向かって移動し得る。
【0025】
可動要素5及び7の結果、可動要素が機構を閉じるために最上部に向かって移動する際に第2のシャッタ7、8より少し前に第1のシャッタ5、6が閉じる。このことは、可動要素5が弁座6のところで止まるときに可動要素7は未だ弁座8に触れていないことを示している。第2のシャッタが閉じているとき、第1のシャッタの可動要素5の長寸軸の先端とそれを受容する可動要素7の止め具の空洞底部との間には僅かなゆとりがある。
【0026】
機構が遮断される際に、スプリング14から最大の力を解放
するために、かつその止め具をスプリング14の上限まで上昇させるために、操作者がつまみを調整する。スプリング4及び10からの圧力は、可動要素9及びピストン13を持ち上げるためにスプリング14と平衡を保つのに十分である。第2のシャッタの可動要素7は可動要素
9に
牽引可能に連結されているので、後者を上昇させると結果的に可動要素7も上昇する。同様に、可動要素7を上昇させると、スプリング4の影響下で閉まで可動要素5を上昇させることができる。ひとたび第1のシャッタが閉じられると、第2のシャッタが未だ完全に閉じていないときに、第1のシャッタの下流の圧力、ひいては中間チャンバ20内の圧力が低下する。操作者は、スプリング14の予め与えられた圧縮力を、例えば機械的止め具に到達するまで解放し続けるので、可動要素9はさらに上昇し、ひいては第2のシャッタを閉じることができる。その点から、機構は第1及び第2のシャッタによって二重に閉じられる。第2のシャッタは、理論的には常に低圧下で作動し、一方、第1のシャッタは常に容器の高圧下にある。第2のシャッタは、このとき、理論的には第1のシャッタに漏れが生じるときにさえ係合されていれば、安全シャッタとして十分に働き得る。
【0027】
第2のシャッタは、必ずしも解放機構の可動要素9に連結されている訳ではないことに留意されたい。実際には、可動要素7は、第1のシャッタの可動要素と同じように機構の本体に置かれているスプリングの力を受け得る。この場合には、可動要素9と可動要素7の長寸部分の先端との間には、「止め具」などの単純な装置で十分足りるであろう。
【0028】
可動要素5及び7は、必ずしもそれぞれの弁座と協働する円錐形状のものでなくてもよい。実際には、一方または両方の可動要素が、例えば平らな弁座と協働する平らでかつ円形の要素を備えていると考えることができる。逆に、シャッタ要素ではなく弁座が可動であると考えることもできる。
【0029】
メンブレンと協働する可動要素9は、全く異なるが同等の解放命令機構に置き換えられ得る。実際には、例えば低圧チャンバを形成するために金属製ブロワに気密に接続された同様な可動要素と可動要素9を置き換えることができる。こうすると、金属製ブロワがチャンバの気密性を保証することになるので、メンブレン12が不要になる。