(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
単子葉植物の内乳の内因性α-グルカン水ジキナーゼ(GWD)を低下させるサイレンシングRNAをコードする核酸配列に作動できるように連結された転写制御配列を含む異種ポリヌクレオチドをゲノム内に含み、前記サイレンシングRNAが二本鎖RNAであり、内乳のGWDレベルが野生型植物に比較して低下し、前記転写制御配列が優先的に植物の内乳における発現を指令するものである、生産能力の向上した遺伝的に改変された単子葉植物であって、前記生産能力の向上が、野生植物に比較した、植物当りの種子の質量の増加、植物当りの種子の数の増加、穂またはさや当りの種子の数の増加、平均種子質量の増加、苗の成長力の増加、バイオマスの増加、種子のデンプンの含有量の増加である、前記植物。
さらに、野生型植物と比較して、成長力、発芽、成長速度、高さ、葉の総面積、葉の面積当りの光合成率、植物当りの葉の数、植物当りの穂の数、植物当りの分げつ枝の数、種子または塊茎のデンプンの含有量または組成、茎の太さ、節間の数、枝の数、花の数、花のサイズまたは形、花の色、植物当りのさやの数、さやのサイズ、植物当りの果実の数、着果、果実のサイズ、果実の形、果実の色、果実の質、耐病性、根の質量、根の数、根の長さ、収量または老化の遅さが向上または改善されている、請求項1記載の植物。
さらに、対応する野生型植物に比較して内在性グリコシラーゼが増加し、および/または、少なくとも植物体の一部の消化性が向上した、請求項1〜4のいずれか1項記載の植物。
種子、葉、茎、根、塊茎、花、果実、さや、または植物から得られた切片であり、請求項1〜5の植物のゲノム中に存在する異種ポリヌクレオチドを含む請求項1〜5のいずれか1項記載の植物の部分。
デンプンを含む、請求項1〜5のいずれか1項記載の種子であって、前記種子のデンプン中のグルコース-6-リン酸のレベルが10ng/mgデンプン未満であり、および/または、種子から得られる粉のアミラーゼ活性のレベルが少なくとも4単位/g粉である、前記種子。
請求項1〜5のいずれか1項記載の植物、請求項6または7記載の植物の部分、請求項8記載の種子の製品であって、前記製品が加工された穀粒、穀粉、全粒小麦粉または少なくとも部分的に精製したデンプンであり、前記製品中のデンプン含量が改変されており、前記デンプン中のグルコース-6-リン酸のレベルが10ng/mgデンプン未満であり、リン酸デンプン含量が0.02%未満であるか、または、野生型植物の種子のデンプンまたは野生型植物、植物の部分または種子からの対応する製品の全体のデンプン組成に比較して少なくとも50%リン酸デンプン含量が低下している、前記製品。
請求項1〜5のいずれか1項記載の植物、請求項6または7記載の植物の部分、請求項8記載の種子または請求項9記載の製品を別の食物成分と混合することを含む食品を製造する方法であって、前記混合された混合物を加熱し、焼成し、油により加熱し、蒸し、茹で、押し出し加工し、または他の態様で加工することを含んでも良い、前記食品を製造する方法。
請求項1〜5のいずれか1項記載の植物、請求項6または7記載の植物の部分、請求項8記載の種子または請求項9記載の製品を発酵させることを含む、発酵生成物を製造する方法。
核酸分子がRNAであるかまたはRNAをコードし、前記RNAがアンチセンスRNA、共抑制RNA、二重鎖RNA、ヘアピンRNAまたはリボザイムである、請求項17記載の使用。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書および後の特許請求の範囲を通して、文脈が他の解釈を要求しない限り、“含む(comprise)”という用語およびその変形(例えばその三人称単数形“comprises”または現在分詞“comprising”)は、記載の整数もしくは工程または整数群もしくは工程群を包含するが、それ以外のいずれの整数もしくは工程または整数群もしくは工程群も排除しないと理解されよう。“〜から成る”とは、“から成る”という語句に続くものはいずれも含まれ、かつ前記語句に続くものに限定されることを意味する。したがって、“〜から成る”という語句は、列挙された成分が必要であるかまたは強制であり、他の成分は存在しないことを示す。“本質的に〜から成る”とは、前記語句の後ろに列挙された一切の成分が含まれ、されに、列挙された成分について本明細書で規定した活性もしくは作用を妨げないかまたはそれらに寄与する他の成分に限定されることを意味する。したがって、“本質的に〜から成る”という語句は、列挙された成分が必要であるかまたは強制であるが、他の成分は随意であり、列挙された成分の活性もしくは作用に影響を及ぼすか否かに応じて存在することもしないこともあることを示す。
本明細書の各実施態様は、特段の指定がないかぎり、必要な変更を加えて全ての他の実施態様に応用することができる。
ヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、配列アイデンティファイアー番号(配列番号)によって照会される。配列番号は以下のように配列アイデンティファイアーと数字が一致する:<400>1(配列番号:1)、<400>2(配列番号:2)など。配列アイデンティファイアーの要旨は実施例の後の表1で提供される。配列表は請求項の後で提供される。
特段の指定がないかぎり、本明細書で用いられる全ての技術用語および学術用語は、当業者が通常的に理解するものと同じ意味を有する。本明細書に記載した方法および材料と類似するかまたは等価のいずれの方法および材料も本発明の実施または試験で用いることができるが、好ましい方法および材料を記載する。本発明の目的のためには、以下の用語は以下のように定義される。
“a”および“an”という冠詞は、前記冠詞の1つ以上(すなわち少なくとも1つ)の文法上の目的語を指すために本明細書では用いられる。例として、“an element”は1つの成分または2つ以上の成分を意味する。
“約”は、引き合いに出された量、レベル、体積、長さ、位置、サイズまたは額の大きさに対して30%ほど、好ましくは20%ほど、より好ましくは10%ほど変動する量、レベル、体積、長さ、位置、サイズまたは額を指すために本明細書では用いられる。
【0029】
デンプン
本発明は、植物(特に葉)でのデンプンリン酸化および分解に必要な遺伝子の発現の改変は、植物の生産パラメータ(例えば穀粒の収量)における驚くべき影響と密接に関係するという観察に基づく。このことは驚くべきことであった。なぜならば、以前の研究ではデンプンの合成または貯蔵の改変は収量の低下をもたらすことが示されていたからである。葉における移動デンプンのリン酸化または分解は、植物の他の部分への固定炭素の移動に必要であるが、これが収量の増加をもたらすであろうことは予測されていなかった。
“デンプン”は、本質的にα-グルコピラノースユニットで構成された多糖類と定義される。デンプンは、植物(例えばコムギを含む穀類)の主要な貯蔵炭水化物である。デンプンはアミロプラストで合成され、発育中の貯蔵器官(例えば穀粒)中で顆粒として形成され貯蔵され、前記は本明細書では“貯蔵デンプン”と称される。貯蔵デンプンは、アミロース(本質的に直鎖(分枝点は0.1%未満)のα-1,4-D-グルコピラノースポリマー)およびアミロペクチン(α-D-グルコピラノースユニットの短い鎖をもち、前記は主としてα-1,4結合によってα-1,6結合分枝と連結されている)を含む。野生型植物の穀類デンプンは約20%−30%までのアミロースおよび70%−80%のアミロペクチンを含む。アミロースとアミロペクチンとのさらに別の顕著な相違はポリマーの分子量にある。アミロースは分子量が10
4−10
6ダルトンのらせん状の形状を有し、アミロペクチンは約10
7−10
8ダルトンの分子量を有する。最近の研究は、α-1,6-グリコシド分枝部位の約0.1%までがアミロースで生じる可能性があり、したがってアミロースは“本質的に直鎖状”と記載される。本明細書では、“アミロース”は、α-1,4結合グルコシド(グルコピラノース)ユニットの本質的に直鎖状分子およびアミロース様長鎖アミロペクチン(時には“中間物質”または“アミロース様アミロペクチン”と称される(Takeda et al. 1993b;Fergason, 1994))を含むと定義される。本明細書で定義されるデンプンのアミロースの割合は、重量/重量(w/w)基準(すなわち穀粒の総デンプン重量の百分率としてのアミロース重量)である。アミロース含有量は当分野で公知の方法のいずれかによって決定することができる。前記方法には以下が含まれる:サイズ排除HPLC(例えば90%(w/v)DMSO中)、コンカナバリンA法(Megazayme Int, Ireland)、または好ましくはヨード測定法、例えば実施例1に記載したもの。
【0030】
デンプンは初めに、葉および植物の他の緑色組織で光合成生成物として合成および蓄積される。本明細書では、このデンプンは“移動デンプン”などと称される。なぜならば、種子または塊茎デンプンとは対照的に、前記は昼の間光合成組織の色素体に蓄積され、少なくとも夜間に分解されるからである。したがって、合成酵素および分解酵素の両方が同時に細胞内に存在し、さらにこの系は日周期調節を受ける。夜には移動デンプンは糖に加水分解され、この糖は主としてシュクロースとして植物の成長で使用するための代謝のエネルギー源として、または貯蔵デンプンとして組織での貯蔵のためにソース組織からシンク組織へ輸送される。葉における移動デンプンの分解について最近Zeemanら(2004)が概説している。前記分解は、酵素(例えばアミラーゼ、脱分枝酵素、α-グルカンホスホリラーゼおよびグルカノトランスフェラーゼ)の機能によって生じる。
ほとんど全ての植物デンプンが、C3およびC6ヒドロキシル基である程度リン酸化されるが、リン酸化の程度は植物の種に応じて顕著に変動する。ジャガイモの塊茎デンプンは、典型的にはデンプン1mgにつき25nmoleのグルコース-6-リン酸を0.2−0.4%(w/w)の範囲で有する。ジャガイモデンプンのリン酸基の大半はアミロペクチンと結合し、極めて少量がアミロースと結合する。ジャガイモデンプンとは対照的に、穀物の穀粒デンプンは0.02−0.04%のホスフェートを含むだけである。本明細書で用いられる、“リン酸化デンプン”は、グルコースユニットのC3および/またはC6位にモノエステルとして結合したリン酸基をもつデンプンを指す。デンプンサンプルにおけるリン酸基のレベルは、当分野で公知の方法、好ましくは実施例1で述べるマラカイトグリーン法によって容易に測定することができ、mmole/mgデンプンとして簡便に表現することできる。
【0031】
デンプンの分解
葉および発芽中の種子における分解の最初の工程は酵素エンドアミラーゼ(α-アミラーゼ、EC3.2.1.1)が関与する。発芽種子では前記酵素はデンプン層から分泌されるが、葉では葉緑体に存在する。この酵素はデンプン顆粒の特定の部位でデンプンを攻撃し、顆粒表面にくぼみを生じさせる。デンプン分子は、α-グルカンホスホリラーゼ(EC2.4.1.1)(前記酵素はα-1,4グルカン鎖の非還元末端からグルコース-1-リン酸を生成する)および脱分枝酵素、例えばイソアミラーゼ(EC3.2.1.68)およびプルラナーゼ(EC3.2.2.142)(前記酵素はα-1,6分枝点を除去する)によってさらに攻撃される。中心的に関与する他の酵素は、エクソアミラーゼ、β-アミラーゼ(EC3.2.1.2)(前記はグルカンの鎖の非還元端からマルトースを遊離させる)、不均化酵素(D-酵素、EC2.4.1.25)およびα-グルコシダーゼ(マルターゼ、EC3.2.1.20)またはマルトースホスホリラーゼ(EC2.4.1.8)(前記は直鎖に作用することができる)である。アラビドプシスおよび他の双子葉類では、β-アミラーゼ活性は他のグルカン代謝酵素よりも約一桁強く、葉緑体の内部および外部の両方に存在するらしい。
グルカン、水ジキナーゼ(GWD, EC2.7.9.4)は、他の酵素がデンプン顆粒を攻撃する強さを調節するようである。GWDは、アミロペクチン中のグリコシルユニットのC6またはC3位にATPのβ-ホスフェートを転移させ、そのようなホスフェートの存在は、分解を進行させるシグナルとなり得る。リン酸基の存在は、グルカン鎖間のまたは相互作用タンパク質との静電気的相互作用を変化させ、反応を開始させることができると考えられる。GWDは分解中に葉のデンプン顆粒と結合し(Ritte et al. 2000)、その間に活性が高まる可能性がある。GWD活性それ自体は、少なくともいくつかの植物では昼/夜周期により生物学的周期で調節されているようである。
【0032】
GWD(R1タンパク質またはOK1とも称される)の発現を低下させるジャガイモのアンチセンス実験では、デンプン結合リン酸は90%減少した(Vikso-Nielsen et al. 2001)。アラビノドプシス・タリアナの相同遺伝子の変異(デンプン過剰発現型(
starch
excess phenotype)により
sex1と称される)はデンプンのホスフェート含有量の抑制と一体的関係を有し、デンプンリン酸化にGWDが必要なことが確認された(Zeeman and Rees, 1999)。さらにまた、アラビドプシス変異体およびジャガイモの抑制系統の両方が“デンプン過剰”表現型を示し、この場合にはデンプンが正常レベルを超えて葉に蓄積し、移動デンプン分解におけるGWDの役割が確認された。前記の実験では、これらの植物でデンプン構造の改変は観察されなかった。ジャガイモの塊茎におけるデンプンホスフェート含有量の低下はジャガイモ塊茎の“低温甘化”の低下を伴い(Lorberth et al. 1998)、このことはアミラーゼまたは他のヒドロラーゼ活性の低下を示唆した。移動デンプン代謝への影響を示すアラビドプシス
sex1変異体もまた、炭水化物代謝が変化し、成長が遅く開花が遅れた(Yu et al. 2001)。
2005年にBaunsgaardらは、新しい種類の水ジキナーゼ、ホスホグルコース水ジキナーゼ(PWD)を明らかにした。この酵素(GWDと類似するが前記とは別のものである)は、すでにリン酸化されたデンプンをさらにリン酸化する活性を有する(Kotting et al. 2005)。Ritteらは、デンプンのグリコシル残基のC3またはC6位のリン酸化はそれぞれPWDおよびGWDによって触媒されると提唱した(Ritte et al. 2006)。
発芽中の穀類の種子における分解およびリン酸化は部分的には理解されているが、これは、組織の変敗および加水分解酵素の誘導を必要とする高度に特殊化された系である。
いくつかの実施態様では、本発明は、植物のデンプンリン酸化および/または分解の改変による植物の生産性または有用性の改善を提供し、本発明はこの2つの一体的関係の観察に基づくものである。デンプンのリン酸化および/または分解の改変は、移動デンプン(例えば植物の葉のデンプン)、貯蔵デンプン(例えば穀粒中のデンプン)中のデンプンまたはその両方のデンプンで生じ得る。本発明による植物(好ましくは穀類植物)の改変には、葉および/または内乳中のデンプンリン酸化および/または分解(分解)酵素の活性または量における1つ以上の変更が含まれる(ただし前記に限定されない)。
【0033】
本明細書で用いられる“改変”は物質またはその機能における変化を意味し、前記変化は、量、活性、生成速度、不活化速度、分解速度の増加もしくは低下、開始の遅延、より早い開始、物質の付加もしくは除去、変異または前記の任意の組み合わせであり得るが、ただし結果として機能における変化が存在する場合に限られる。本明細書で用いられる、“機能レベルの調節”または類似の用語は、対象の遺伝子またはタンパク質における機能レベルの増加または低下を意味する。“機能レベル”は、デンプンリン酸化またはデンプン分解を実行することができる活性タンパク質レベル(タンパク質レベルに関する場合)を指すと理解されるべきである。機能レベルは、宿主細胞に存在するタンパク質の実際のレベルと当該タンパク質の比活性の組み合わせである。したがって、機能レベルは、例えば宿主細胞における実際のタンパク質濃度を増加または低下させることによって改変することができ、前記はタンパク質をコードする遺伝子の発現を変更することによって容易に達成することができる。機能レベルはまた、タンパク質の比活性を調節することによって改変することができる。そのような比活性の増加または低下は、より高いまたは低い比活性をもつ変種タンパク質を発現させることによって、または対応するタンパク質をコードする内因性遺伝子をそのような変種をコードする対立遺伝子座で置き換えることによって達成することができる。比活性の増加または低下はエフェクター分子の発現によってもまた達成することができる。ある種の実施態様では、ある酵素の適切なコード配列の発現レベルまたは活性もしくは量は、参照発現レベルよりも少なくとも約10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも80%、または少なくとも約100%、少なくとも200%、少なくとも500%、または少なくとも1000%高くなるように、または、少なくとも約10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも92%、または少なくとも94%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%低くなるように、または非検出レベルに低下するように選択される。
【0034】
本明細書で用いられる、“改変”、“変更”、“増加”、“低下”、“阻害”、“変異体”などの用語は相対的な用語、すなわち野生型または非変更状態と比較される用語と考えられる。野生型植物は本明細書ではまた“コントロール植物”を指し、前記用語は互換性を有する。“タンパク質のレベル”は個々のタンパク質(例えばGWD)の量を指し、前記は当分野で公知の任意の手段、例えばウェスタンブロット分析または他の免疫学的手段によって測定することができる。“酵素活性のレベル”は、酵素アッセイで測定された個々の酵素の量を指す。多かれ少なかれ活性タンパク質は生成されるがタンパク質自体の発現レベル(量)が同じでない場合、酵素の活性のレベルは変異体で変更され得ることは理解されよう。逆に、タンパク質の量が変更され、その活性(単位タンパク質当りの活性)は同じであることもある。酵素をコードする遺伝子の発現が転写時にまたは転写後に低下するとき、量および活性の両方が低下する可能性がある。ある種の実施態様では、タンパク質(例えばGWD)または活性のレベルの低下は、未改変穀類(例えばコムギ)の葉または内乳のタンパク質または活性のレベルと比較して少なくとも40%または少なくとも60%、または少なくとも75%、少なくとも90%または少なくとも95%である。タンパク質または酵素活性または遺伝子発現のレベルの低下は、葉、種子または穀粒の発育の任意の段階、具体的には光合成が生じる日中、または発育中の内乳でデンプンが合成されている穀粒の充填期、または穀粒の成長期から成熟期の全段階で生じ得る。本明細書で用いられる“野生型”という用語は遺伝学分野における通常の意味を有し、本明細書で開示されるような改変を受けていない植物、好ましくは穀類、栽培種(cultivar)または遺伝子型が含まれる。一般に容易に入手できる好ましい“野生型”類は以下である:パンコムギではcv. Bob White;トウモロコシ(Zea mays)ではRoundup Ready Corn2;イネではNipponbare;ソルガム(Sorghum bicolor)ではSumac。
【0035】
ある実施態様では、変更は、植物の葉または内乳におけるGWDの量および/または活性の低下を含み、前記変更は、例えば穀類の葉および/または成熟種子のデンプン中のリン酸含有量の低下をもたらすことが観察された。別の実施態様では、改変はGWD活性と同様にPWDの低下を含む。さらに別の実施態様では、改変はGWDの低下および穀類の穀粒のアミラーゼ(好ましくはα-アミラーゼ)活性の増加を含む。上記酵素のいずれかと組み合わされて変化を示し得る他のデンプン分解酵素には、β-アミラーゼ、ホスホリラーゼまたはデンプン脱分枝酵素(例えばイソアミラーゼまたはプルラナーゼ)が含まれる。前記変更は、例えば活性の増加、活性の低下、分布の変更または活性のタイミングであってもよい。これら酵素におけるいくつかの変更が組み合わされると、ホスフェート含有量以外のデンプンの特徴もまた変更され得る。ある実施態様では、改変植物(好ましくは穀類植物)は、内乳中の多数のデンプン分解酵素の活性の変更を含み、前記変更には好ましくは穀粒デンプン中のリン酸含有量が低下するようなGWD活性の低下が含まれる。さらに別の実施態様では、1つ以上のデンプン分解酵素の活性が内乳または葉以外の植物組織で変更される。例えばGWD活性が内乳で増加し、主として葉での発現を意図したGWD-阻害分子をコードするトランスジーンによって引き起こされた活性低下がある程度代償されることがあり、あるいはアミラーゼ(好ましくはα-アミラーゼ)が内乳で低下することがある。酵素の活性の変更は、量の増加もしくは低下または発現のタイミングの変更でもよい。デンプンの合成は、GWDの低下と組み合わせた1つ以上のデンプン生合成酵素の過剰発現によってさらに改善され得る。そのような酵素をコードする遺伝子は、当分野で公知の多様な供給源、例えば細菌、穀類または他の供給源のいずれかから得ることができ、さらにそれらを改変してその触媒としての特性を変更、例えば酵素の温度依存性を変更することができる(例えばWO94/09144を参照されたい)。
【0036】
表現型の改変は、
GWD遺伝子または
GWDと
PWD遺伝子の部分的または完全な発現阻害によって達成できる。本明細書で用いられる“デンプンリン酸低含有量”表現型などは、植物または植物部分(例えば葉または穀粒)から得られる全デンプンであって、0.02%未満のデンプンリン酸含有量を有するか、あるいは対応するコントロール植物と比較して少なくとも50%低下したものを指す。遺伝子が阻害される程度によって、コムギの穀粒で生成されるデンプンの特徴がある程度決定される。改変コムギの内乳から抽出したタンパク質で実施されるいずれのゲル電気泳動技術によっても、GWDおよび/またはPWD活性に対する改変の性質および程度は明らかにされよう。改変は、GWD活性の低下、酵素活性の完全な停止、または葉もしくは内乳内のGWDまたは他の酵素の分布の変更として生じ得る。例えば、GWDまたは他の活性は、内乳内の酵素の分布に影響を与えることによって、例えばデンプン顆粒結合酵素のレベルを減少させることによって低下させることができる。これらの試験を実施するためには、例えばRahman ら(1995)の論文で概略されているように、コムギの内乳型デンプンを抽出してその中のタンパク質を分析してもよい。当分野で周知の技術、例えばSDS-PAGEおよびイムノブロッティングを可溶性分画およびデンプン結合分画で実施し、その結果を用いて、GWDまたは他の酵素に対して改変が生じた植物または穀粒が同定される。
デンプンリン酸化酵素または分解酵素の活性の変更は1つ以上の遺伝的変型を穀類(好ましくはコムギ)の植物に導入することによって達成できる。すなわち、遺伝的変型は、直接的または間接的に、生育中または発生中の植物部分で酵素活性の変更、および結果として本明細書に記載のデンプンの改変をもたらす。遺伝的変型は異種ポリヌクレオチドであってもよく、前記は、例えば形質転換または変異導入によって植物または前駆細胞に導入される。続いて、前記遺伝的変型は植物育種分野で周知のように異なる遺伝的背景に導入することができる。
組織または植物部分の酵素(例えばGWDまたはアミラーゼ)の量または活性は、当分野で公知の任意の方法、例えば酵素アッセイ、免疫的検出方法、ウェスタンブロッティングまたはELISAアッセイを用いて測定することができるが、また対応するmRNAのレベルを例えばノザンブロットハイブリダイゼーション分析または逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)のような方法によって測定してもよい。デンプンのリン酸化レベルもまたデンプン合成時の酵素レベルの表示のために測定することができる。内乳で特定のタンパク質または酵素活性レベルが変更された穀類植物または穀粒を前記タンパク質もしくは酵素のレベル低下を基準にして(直接アッセイ)スクリーニングまたは選別することができるが、前記はまた、コムギの植物の穀粒の表現型、例えばリン酸レベルの増加もしくは低下、または植物もしくは植物部分の視覚的表現型、例えば穀粒の縮小またはデンプン顆粒の特性の変更または植物の形態の変更を基準にすることもできる。本明細書で用いられるデンプンの特性の変更を示すコムギの植物は、当分野で公知の方法のいずれかを用い、デンプンの特性を直接的に決定するか、または間接的に例えば遺伝的変型の存在を植物またはその穀粒で検出して確認することができる。前記植物は、例えばコムギ育種時のコムギの植物集団中の一株の植物である。
【0037】
生産能力
本発明は生産特性が向上した植物を提供する。強化される生産特性の例には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):栽培者に有益な特質、例えば成長、収量、バイオマスおよび成長力とともに関連する特性、例えばストレス、乾燥、害虫もしくは病気に対する耐性または審美的特質の改善(例えば花または葉の特性);当該植物から採集される園芸産物の消費者にとって有益な特質、例えばヒト用食物もしくは飲料または動物飼料の栄養もしくは味覚成分の改善;または食品もしくは工業的加工業者にとって有益な特質、例えば加工特性の改善。上記のような使用では、植物は、一般的には穀粒、果実および他の植物部分(葉、茎、さや、栄養部分などを含む)をヒトもしくは動物用食品または飲料で使用するために栽培される(動物の貯蔵牧草の部分としての使用または観賞目的のための使用を含む)。ある実施態様では、本発明の植物材料は、例えば米国特許出願公開US2006/0150278(前記文献は参照により本明細書に含まれる)に記載されているように、動物飼料用貯蔵牧草としての使用における改善を示す。この実施態様では、好ましくは、異種ポリヌクレオチドは、植物の栄養部分(好ましくは葉または茎)でもっぱら発現される転写制御配列から発現される。さらに好ましくは、異種ポリヌクレオチドは、植物の種子では低レベルで検出されるか、または検出できない程度で発現される。
生産能力は、対象のパラメーターに応じて当分野で公知の方法によって測定することができる。
実施例で述べるように、GWDの産生がダウンレギュレートした結果として、デンプンリン酸化の低下を示す植物はまたα−アミラーゼレベルの増強を示した。したがって、いくつかの実施態様では、本明細書は、コントロール植物と比較してデンプンリン酸化レベルの低下および内因性グリコシラーゼの増加を示す、遺伝的に改変された植物を作製する方法を提供する。前記方法は、転写制御配列に作動できるように連結されてあり、さらに内因性デンプンリン酸化をダウンレギュレートする因子をコードする異種ポリヌクレオチドをそれらのゲノムに含む複数の植物から、デンプンリン酸化活性がダウンレギュレートされ、さらにコントロール植物と比較して内因性グリコシラーゼが増加している植物を選別する工程を含む。あるいは、前記異種ポリヌクレオチドは、変異遺伝子(例えば誘導変異を含む)、デンプンリン酸化に必要な酵素または調節タンパク質をコードする対応する野生型遺伝子であってもよく、この場合、変異の結果はデンプンリン酸化の低下である。本明細書で用いられる、“複数の植物”は、少なくとも2つの植物、好ましくは少なくとも10の植物、さらに好ましくは少なくとも50、100または200の植物を指す。典型的には、複数の植物の各々はトランスジーンまたは誘導変異を含むが、全てが同程度の改変を示すわけではなく、効果の程度に幅を示す。したがって、本発明の方法は、最適レベルの改変を示す植物を識別し選別する、選別または識別工程を含むことができる。
【0038】
いくつかの実施態様では、デンプン分解またはデンプン分解に必要な酵素のレベルもしくは機能的活性、またはデンプンリン酸化は、対応するコントロール植物と比較して、約80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%または15%未満のレベルに、適切には約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%未満にダウンレギュレートされて生産能力の増加を達成する。ある実施態様では、デンプン分解またはデンプン分解に必要な酵素のレベルもしくは機能的活性の低下、またはデンプンリン酸化は、光合成組織(例えば葉)で、あるいはまたデンプンの貯蔵器官(例えば好ましくは種子)でダウンレギュレートされて生産能力の向上が達成される。この実施態様では好ましくは、前記低下は生産能力の実質的な強化をもたらし、前記強化は、同じ環境条件下で栽培された対応するコントロール植物と比較して生産能力において一般的には少なくとも約20%、25%または30%、特に少なくとも40%、45%、50%または55%、特に少なくとも約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%の増加、または前記を超える増加である。必要とされるデンプン分解低下量またはデンプンリン酸化低下量は、他の要因、例えば植物種もしくは株、およびデンプン分解もしくはデンプンリン酸化酵素活性のレベル、分布またはタイミング、および/またはデンプン分解経路におけるそれらの基質および/または補助分子もしくは補助因子のレベルまたは活性に左右され得る。しかしながら、上記のような事象で必要とされ得るいずれの最適化も、本明細書に記載する方法を含む日常的方法を用いて達成することができる。
デンプン分解の低下は、例えば、デンプン分解をダウンレギュレートする異種ポリヌクレオチドの発現を駆動するための構成的プロモータを用いて、植物全体を通していずれの組織でも実施できる。あるいは、前記は、ソース組織(葉)で、輸送組織でまたはシンク組織(内乳)で、組織特異的にまたは発育にしたがって調節されるプロモータを用いて実施してもよい。本明細書で用いられる“シンク細胞”または“シンク組織”は、二酸化炭素の固定以外の形態、すなわち糖または他の炭水化物として細胞に入ってきた、正味の有機炭素流入物を含む細胞、組織または器官を指す。植物では、シンク組織には非光合成組織とともに光合成組織が含まれ、後者は、他の光合成細胞によって固定されたか、または二酸化炭素の直接固定以外の他の手段によって周囲の媒体もしくは環境から別の方法で得られた有機炭素の正味の流入物を有する。
【0039】
別の実施態様では、内因性デンプンリン酸化のレベルは異なる機能的活性を有するデンプンリン酸化酵素を用いて調節される。この調節は、デンプン分解が実行される細胞内区画での酵素の比活性または安定性の相違により生じ得る。ある種の実施態様では、内因性デンプンの分解に用いられるデンプン分解酵素の活性は、コントロール植物中の参照酵素のレベルと比較して少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%もしくは90%、または少なくとも約100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%もしくは1000%高いか、または少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、92%、94%、96%、98%もしくは99%、または少なくとも99.5%または99.9%低い。異なる活性をもつデンプン分解酵素は天然に存在するものでも、合成または組換え手段(例えば参照酵素もしくは親酵素の触媒部位または他の任意の部位(例えば基質結合部位、補助因子結合部位)の改変による)によって得られるものでもよい。典型的には改変は、当分野で周知のとおり、例えば論理的もしくは確立された変異導入またはコンビナトリアルケミストリーの方法を用いて、親酵素の配列内の少なくとも1つのアミノ酸の置換、付加または欠失によって達成される。デンプン分解酵素変種は保存的アミノ酸置換を含むことができる。“保存的アミノ酸置換”はアミノ酸残基が類似の側鎖をもつアミノ酸残基で置換されているものである。類似の側鎖をもつアミノ酸残基ファミリーは当分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖をもつアミノ酸(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖をもつアミノ酸(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、荷電をもたない極性側鎖をもつアミノ酸(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖をもつアミノ酸(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分枝側鎖をもつアミノ酸(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖をもつアミノ酸(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。したがって、適切には親酵素のアミノ酸残基は同じ側鎖ファミリーの別のアミノ酸残基で置き換えられる。あるいは、別の実施態様では、変異は、参照酵素をコードするポリヌクレオチドの全域または部分に、例えば飽和変異導入によってランダムに導入でき、得られた変異体を酵素活性についてスクリーニングして、親酵素と異なる活性をもつ変異体を識別することができる。
【0040】
他の実施態様では、内因性デンプン分解のレベルおよび場所は、細胞内の異なる機能的区画に誘導されるデンプン分解酵素を用いることによって調節される。例示的な例では、活性は葉および/または種子で改変される。前記は核遺伝子の発現によって達成され、他の細胞内区画への輸送のためのシグナル配列をもたない酵素形のサイトゾル内合成をもたらすことができる。他の例示的な例では、活性は、サイトゾルから所望の細胞内区画へ酵素を輸送するためのシグナルを酵素配列内に含ませることによって、貯蔵区画(例えばアミロプラストまたは空砲)へ、または貯蔵輸送区画(例えば細胞外(アポプラスミック)間隙)へ誘導される。ある種のシグナル配列は2つ以上の細胞内区画に酵素活性を配分することができる。
これらの方法は、例えば電気泳動、クロマトグラフィー(ペーパークロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、ガス-液体クロマトグラフィーおよび高速液体クロマトグラフィーを含む)技術による植物または苗木の分析を含む。分離成分は、典型的には分離プロフィルを既知の実体をもつ標準物と比較することにより、または分析技術(例えば質量分析および核磁気共鳴分光分析)により同定される。例えば以下を参照することができる:実施例9、Robinson, The Organic Constituents of Higher Plants, Cordus Press, North Amherst, USA, 1980;Adams et al. Biochem., 266:77-84, 1988;Veronese et al. Enz. Microbial. Tech. 24:263-269, 1999;Hendrix et al. J. Insect. Physiol. 47:423-432, 2001;Thompson et al. Carbohydrate Res. 331:149-161, 2001;およびそれらの中に引用された参考文献。炭水化物は、当業者に公知の標準的プロトコルを用いてアッセイすることができる。
【0041】
遺伝子
本発明は、遺伝子活性の改変および構築物およびキメラ遺伝子の使用を含む。本明細書で用いられる“遺伝子”という用語には任意のデオキシリボヌクレオチド配列が含まれ、構造遺伝子のタンパク質コード領域を含むか、または細胞内で転写されるが翻訳されないもの、並びに付随した非コードおよび調節領域である。そのような付随領域は典型的には、コード領域の5’および3’の両末端に隣接する位置に存在し、両側に約2kbの範囲にわたって位置する。これに関しては、遺伝子は制御シグナル、例えばプロモータ、エンハンサー、停止および/またはポリアデニル化シグナルを含むことができ、前記制御シグナルはある遺伝子には天然で結合しているものであるか、または異種制御シグナルである(後者の場合、遺伝子は“キメラ遺伝子”と称される)。コード領域の5’に位置し、mRNA上に存在する配列は5'非翻訳配列と称される。コード領域意の3'または下流に存在しmRNA上に存在する配列は3'非翻訳配列と称される。“遺伝子”という用語は遺伝子のcDNAおよびゲノム型の両方を包含する。
本明細書で用いられる“コムギGWD遺伝子”などという用語は、コムギでGWDをコードするヌクレオチド配列を指す(当業者はGWDをPWDまたは他のタンパク質と容易に区別することができる)。コムギGWD遺伝子には、コムギの天然に存在する変種(パンコムギのA、BおよびDゲノムによってコードされるものを含む)とともに天然に存在しない変種(遺伝子改変分野の業者によって製造され得る)が含まれる。好ましい実施態様では、コムギのGWD遺伝子は、配列番号:2に示す
GWD遺伝子のコード領域と少なくとも80%の同一性を有する配列をもつヌクレオチドを含む核酸分子を指し、前記はコムギに存在するかまたはコムギから単離されるか、またはそれらから誘導される。
同様に、本明細書で用いられる“コムギPWD遺伝子”などという用語は、コムギでPWDをコードするヌクレオチド配列を指す(当業者は前記を他のジキナーゼまたは他のタンパク質から容易に区別することができる)。コムギPWD遺伝子には、コムギの遺伝子の天然に存在する変種(パンコムギのA、BおよびDゲノムによってコードされるものを含む)とともに天然に存在しない変種(遺伝子改変分野の業者によって製造され得る)が含まれる。
【0042】
ゲノム型またはコード領域を含む遺伝子のクローンは、“イントロン”または“介在領域”または“介在配列”と呼ばれる非コード配列で中断される。本明細書で用いられる“イントロン”という用語は、一次RNA転写物の部分として転写されるが、成熟mRNA分子には存在しない。イントロンは、核内転写物または一次転写物から除去または“スプライス”される。したがってイントロンはメッセンジャーRNA(mRNA)には存在しない。イントロンは調節エレメント(例えばエンハンサー)を含むことができる。本明細書で用いられる“エクソン”は、RNA配列に対応するDNA領域を指し、前記は、成熟RNAまたはRNA分子が翻訳されない場合の成熟RNA分子に存在する。mRNAは、翻訳時に発生中のポリペプチドでアミノ酸の配列または順序を規定するために機能する。“遺伝子”という用語は、本明細書に記載する本発明のタンパク質の全部または部分をコードする合成または融合分子、および上記のいずれかに対して相補的なヌクレオチド配列を含む。遺伝子は、細胞内での染色体外維持のために、または宿主ゲノムへの組み込みのために適切なベクターに導入される。
本明細書で用いられる“キメラ遺伝子”は、本来の配置にある天然の遺伝子ではない任意の遺伝子を指す。典型的には、キメラ遺伝子は天然の状態では一緒に見出されることのない調節配列および転写またはタンパク質コード配列を含む。したがって、キメラ遺伝子は、異なる供給源に由来する調節配列およびコード配列、または同じ供給源に由来するが天然の状態で見出される態様とは異なる編成である調節配列およびコード配列を含むことができる。本明細書で用いられる“内因性”という用語は、目下研究されている植物と同じ生育段階にある未改変植物で通常的に生成される物質を指す。“内因性遺伝子”は、ある生物のゲノム中のその本来の配置にある天然の遺伝子を指す。本明細書で用いられる“組換え核酸分子”は、組換えDNA技術によって構築または改変された核酸分子を指す。“外来ポリヌクレオチド”または“外因性ポリヌクレオチド”または“異種ポリヌクレオチド”などは、実験的操作によって細胞のゲノムに導入される任意の核酸を指す。前記導入された遺伝子が天然に存在する遺伝子と比較して何らかの改変(例えば変異、選別可能マーカー遺伝子など)を含む限り、これらには当該細胞で見出される遺伝子配列が含まれる。外来または外因性遺伝子は、本来の生物ではない生物に挿入された天然に見出される遺伝子でも、本来の宿主内の新規な場所に導入された天然の遺伝子でも、またはキメラ遺伝子でもよい。“トランスジーン”は、形質転換方法によってゲノムに導入された遺伝子である。“遺伝的に改変”という用語は、細胞に遺伝子を導入し、細胞内の遺伝子を変異させ、これらの行為が実行された細胞もしくは生物またはそれらの子孫で遺伝子の調節を変更または調節することを含む。
【0043】
ポリヌクレオチド
本発明は多様なポリヌクレオチドに言及する。本明細書で用いられる“ポリヌクレオチド”または“核酸”または“核酸分子”はヌクレオチドポリマーを意味し、前記はDNAでもRNAでもその組み合わせでもよくmRNA、cRNA、cDNA、tRNA、siRNA、shRNAおよびhpRNAが含まれる。前記は、細胞起源、ゲノム起源、合成起源(例えば自動化合成装置で生成される)のDNAまたはRNAでもよく、さらに炭水化物、脂質、タンパク質もしくは他の物質と結合しているか、蛍光もしくは他の基で標識されてあるか、または固体支持体に結合されて本明細書に規定した固有の活性を発揮することもできる。前記ポリマーのヌクレオチドは、当分野で公知の方法にしたがって、例えばホスホジエステル結合の類似体(ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホロアニリデート、ホスホロアミデートを含む)に改変することもできるが、好ましくは、ポリヌクレオチドは未改変であるか、または細胞内で生じるように改変されているだけである。ポリマーは一本鎖でも、本質的に二本鎖でも、または部分的に二本鎖でもよい。部分的に二本鎖のRNA分子の例はヘアピンRNA(hpRNA)、短ヘアピンRNA(shRNA)または自己相補性RNAであり、前記は、ヌクレオチド配列とその相補鎖との間の塩基対形成によって形成される二本鎖の幹および前記ヌクレオチド配列とその相補鎖に共有結合したループを含む。本明細書で用いられる塩基対形成は、ヌクレオチド間の標準的な塩基対形成を指す(G:U塩基対を含む)。“相補的”とは、2つのポリヌクレオチドがそれらの全長の一部分でまたはそれらの一方もしくは両方の全長にわたって塩基対を形成できることを意味する。“ポリヌクレオチド”という用語は、本明細書では“核酸”という用語と相互に用いられる。
【0044】
“単離された”とは、その天然の状態において通常付随する構成要素を実質的にまたは本質的に含まない物質を指す。本明細書で用いられる“単離ポリヌクレオチド”または“単離核酸分子”は、当該核酸分子が天然の状態では結合または連結されている同じタイプのポリヌクレオチド配列から少なくとも部分的に分離されているか、好ましくは実質的にもしくは本質的にそれらを含まないポリヌクレオチドを意味する。例えば、“単離ポリヌクレオチド”には、天然に存在している状態では前記ポリヌクレオチドにフランキングしている配列から精製または分離されているポリヌクレオチドが含まれる。“単離ポリヌクレオチド”は、例えばあるDNAフラグメントに通常は隣接している配列から取り出されたDNAフラグメントである。好ましくは、単離されたポリヌクレオチドは他の構成要素(例えばタンパク質、炭水化物、脂質など)から90%分離されている。本明細書で用いられる“組換えポリヌクレオチド”という用語は、核酸を操作して天然では通常見いだされない形にすることによってin vitroで形成されたポリヌクレオチドを指す。例えば、組換えポリヌクレオチドは、発現ベクターの形であってもよい。一般的には、そのような発現ベクターは、前記ヌクレオチド配列に作動できるように連結された転写および翻訳調節核酸を含む。
本発明はオリゴヌクレオチドの使用に言及する。本明細書で用いられる“オリゴヌクレオチド”は長さが50ヌクレオチドまでのポリヌクレオチドである。それらはRNA、DNA、またはいずれかの組み合わせもしくは誘導体であり得る。典型的には。オリゴヌクレオチドは比較的短い一本鎖分子で、長さが10から30ヌクレオチド、通常は15−25ヌクレオチドである。プローブまたは増幅反応のプライマーとして用いられる時は、そのようなオリゴヌクレオチドの最小サイズは、前記オリゴヌクレオチドと相補的な配列との間で安定なハイブリッドを標的核酸分子上で形成するために必要なサイズである。好ましくは、前記オリゴヌクレオチドは少なくとも15ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも18ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも19ヌクレオチド、さらに好ましくは少なくとも20ヌクレオチド、さらに好ましくは少なくとも25ヌクレオチドである。
プローブとして用いられるポリヌクレオチドは、典型的には検出可能な標識(例えば放射性同位元素、酵素、ビオチン、蛍光分子または化学発光分子)と結合される。本発明のオリゴヌクレオチドは、GWDまたは対象の特質(例えば改変デンプン)と連関する他の遺伝子の対立遺伝子を検出する方法で有用である。そのような方法は、例えば核酸ハイブリダイゼーションを用い、多くの事例で適切なポリメラーゼ(PCRで用いられる)によるオリゴヌクレオチドプライマーの伸長を含む。
【0045】
本発明のオリゴヌクレオチドの変種は、本明細書に規定する特異的なオリゴヌクレオチド分子で様々なサイズの分子、および/または前記特異的オリゴヌクレオチド分子と近似する、例えばコムギゲノムとハイブリダイズすることができる分子を含む。例えば、変種は追加のヌクレオチド(例えば1、2、3、4または5以上)または欠失を含むことができるが、ただしそれら変種が標的分子となおハイブリダイズする場合に限られる。さらにまた、いくつかのヌクレオチドは、標的領域とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドの能力に影響を与えることなく置換され得る。さらにまた変種は、本明細書に規定する特異的オリゴヌクレオチドがハイブリダイズする植物ゲノムの領域の近くで(例えば50ヌクレオチド以内であるが、ただし前記に限定されない)ハイブリダイズする変種を容易に設計することができる。
“ポリヌクレオチド変種”および“変種”などという用語は、参照ポリヌクレオチド配列と実質的な配列同一性を示すポリヌクレオチドまたはそれらの相補的な形態を指す。これらの用語はまた、少なくとも1つのヌクレオチドの付加、欠失または置換によって参照ポリヌクレオチドと区別されるポリヌクレオチドを包含する。したがって、“ポリヌクレオチド変種”および“変種”という用語には、1つ以上のヌクレオチドが付加されているか、または欠失しているか、または異なるヌクレオチドで置換されているポリヌクレオチドが含まれる。これと関連して、変更ポリヌクレオチドが参照ポリヌクレオチドの生物学的機能または活性を維持する、変異、付加、欠失および置換を含む一定の変更を参照配列に対して実施できることは当分野では周知である。したがって、これらの用語は、酵素活性または他の調節活性を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、または選択的プローブまたは他のハイブリダイズ因子として機能することができるポリヌクレオチドを包含する。“ポリヌクレオチド変種”および“変種”という用語はまた天然に存在する対立遺伝子変種を含む。
【0046】
“一致する”とは、(a)参照ポリヌクレオチド配列の全てまたは一部分と実質的に同一または相補的であるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、または(b)ペプチドもしくはタンパク質のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを意味する。この用語はまた、参照ペプチドまたはタンパク質のアミノ酸配列と実質的に同一であるアミノ酸配列を有するペプチドまたはポリペプチドをその範囲内に含む。2つ以上のポリヌクレオチドまたはポリペプチド間の配列関係を示すために用いられる用語は、“参照配列”、“比較ウィンドウ”、“配列同一性”、“パーセント配列同一性”、“実質的同一性”および“同一”を含み、最低限の数のヌクレオチドもしくはアミノ酸残基に対してまたは完全長について規定される。“配列同一性”および“同一性”という用語は本明細書では相互に用いられ、ヌクレオチド対ヌクレオチドベースまたはアミノ酸対アミノ酸ベースで比較ウィンドウの間で配列が同一である程度を指す。したがって、“パーセント配列同一性”は、最適なアラインメントを実施した2つの配列を比較ウィンドウの間で比較し、両配列において同一の核酸塩基(例えばA、T、C、G、U)または同一のアミノ酸(例えばAla、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、ILe、Phe、Try、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、CysおよびMet)が生じる場所の数を決定して、マッチする位置の数を得て、前記マッチする位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数(すなわちウィンドウサイズ)で割り、結果に100を掛けてパーセント配列同一性を得る。
ポリヌクレオチドのパーセント同一性は、GAP(Needleman and Wunsch, 1970)解析(GCGプログラム)によりギャップ発生ペナルティ=5、およびギャップ伸長ペナルティ=0.3を用いて決定することができる。特段の記載がなければ、クェリー配列は長さが少なくとも45ヌクレオチドであり、GAP解析は2つの配列のアラインメントを少なくとも45ヌクレオチドの領域にわたって実施する。好ましくは、クェリー配列は長さが少なくとも150ヌクレオチドであり、GAP解析は2つの配列のアラインメントを少なくとも150ヌクレオチドの領域にわたって実施する。より好ましくは、クェリー配列は長さが少なくとも300ヌクレオチドであり、GAP解析は、各事例において2つの配列のアラインメントを少なくとも300ヌクレオチド、または少なくとも400、500または600ヌクレオチドの領域にわたって実施する。例えばAltschulら(Nucl. Acids Res. 25:3389, 1997)が記載したプログラムのBLASTファミリーもまた参照することができる。配列解析の詳細な考察は以下で見出すことができる:AusubelらのYnit 19.3, "Current Protocols in Molecular Biology", John Wiley & Sons Inc, 1994-1998, Chapte 15。
【0047】
ヌクレオチドまたはアミノ酸配列が、少なくとも約75%、特に少なくとも約80%、特に少なくとも約85%、特に約90%、特に約95%、特に約100%の配列同一性を有するか、特に同一であるときに、そのような配列は“本質的に類似する”と称される。RNA配列がDNA配列と本質的に類似する、または一定の配列同一性を有するというとき、DNA配列中のチミン(T)はRNA配列中のウラシル(U)と同一と考えられることは明白である。
所定のポリヌクレオチドに関連して、上記に提供した%同一性よりも高い同一性の数字は好ましい実施態様であることは理解されよう。したがって、該当する場合には、最低の%同一性の数字を考慮して、ポリヌクレオチドは、対応する指定の配列番号に対して少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも99.1%、より好ましくは少なくとも99.2%、より好ましくは少なくとも99.3%、より好ましくは少なくとも99.4%、より好ましくは少なくとも99.5%、より好ましくは少なくとも99.6%、より好ましくは少なくとも99.7より好ましくは少なくとも99.8%、およびさらに好ましくは少なくとも99.9%の配列同一性を有するポリヌクレオチドを含む。
好ましくは、GWD活性を有するポリペプチドをコードする本発明のポリヌクレオチドは、長さが400ヌクレオチドより大きい、より好ましくは500ヌクレオチドより大きい、より好ましくは600ヌクレオチドより大きい、より好ましくは700ヌクレオチドより大きい、より好ましくは800ヌクレオチドより大きい、より好ましくは900ヌクレオチドより大きい、さらに好ましくは1000ヌクレオチドより大きい。
【0048】
本発明のポリヌクレオチドは、天然に存在する分子と比較したとき、ヌクレオチド残基の欠失、挿入または置換である1つ以上の変異を有することができる。変異体は天然に存在するものでも(すなわち天然の供給源から単離されたもの)または合成でもよい(例えば核酸への部位特異的変異導入の実施によるもの)。
本発明は、2つのポリヌクレオチドの相補性の程度を規定するハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに言及する。本明細書で用いられる“ストリンジェンシー”は、ハイブリダイゼーション中の温度およびイオン強度条件、並びにある種の有機溶媒の有無を指す。ストリンジェンシーが高ければ高いほど、標的ヌクレオチド配列と標識ポリヌクレオチド配列との間の相補性の程度は高いであろう。“ストリンジェントな条件”は、高い相補性塩基頻度を有するヌクレオチド配列のみがハイブリダイズする温度およびイオン条件を指す。本明細書で用いられる“低ストリンジェンシー、中等度ストリンジェンシー、高ストリンジェンシーまたは超ストリンジェンシー下でハイブリダイズする”という語句は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄のための条件を説明する。ハイブリダイゼーション反応を実施するための手引きは以下で見出すことができる:Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1-6.3.6。前記参考文献に水性方法および非水性方法が記載されているが、どちらも用いることができる。本明細書で用いられる“低ストリンジェンシー、中等度ストリンジェンシー、高ストリンジェンシーまたは超ストリンジェンシー下でハイブリダイズする” という語句は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄のための条件を説明する。本明細書で言及する具体的なハイブリダイゼーション条件は以下のとおりである:1)6Xの塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)で約45℃、続いて0.2XのSSC、0.1%のSDS中で50−55℃にて2回の洗浄の低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件;2)6XのSSCで約45℃、続いて0.2XのSSC、0.1%のSDS中で60℃にて1回以上の洗浄の中等度ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件;3)6XのSSCで約45℃、続いて0.2XのSSC、0.1%のSDS中で65℃にて1回以上の洗浄の高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件;4)超ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は0.5Mのリン酸ナトリウム、7%SDSで約65℃、続いて0.2XのSSC、1%のSDS中で65℃にて1回以上の洗浄である。
【0049】
ポリペプチド
“ポリペプチド”および“タンパク質”という用語は一般的に互換的に用いられる。本明細書で用いられる“タンパク質”および“ポリペプチド”という用語はまた、本明細書で用いられる本発明のポリペプチドの変種、変異体、改変物、類似体および/または誘導体を含む。本明細書で用いられる“実質的に精製されたポリペプチド”は、前記ポリペプチドが天然の状態で一体化している脂質、核酸、他のペプチドおよび他の分子から分離されているポリペプチドを指す。好ましくは、実質的に精製されたポリペプチドは、前記ポリペプチドが天然の状態で一体化している他の成分から少なくとも60%、より好ましくは少なくとも75%、さらに好ましくは少なくとも90%精製されている。“組換えポリペプチド”とは、組換え技術を用いて、すなわち細胞(好ましくは植物細胞、より好ましくは穀類植物細胞)での組換えポリヌクレオチドの発現により生成されたポリペプチドを意味する。
あるポリペプチドの別のポリペプチドに対する%同一性は、GAP(Needlman and Wunsch, 1970)解析(GCGプログラム)によりギャップ発生ペナルティ=5、およびギャップ伸長ペナルティ=0.3を用いて決定することができる。クェリー配列は長さが少なくとも15アミノ酸であり、GAP解析は2つの配列のアラインメントを少なくとも15アミノ酸の領域にわたって実施する。より好ましくは、クェリー配列は長さが少なくとも150ヌクレオチドであり、GAP解析は2つの配列のアラインメントを少なくとも150ヌクレオチドの領域にわたって実施する。より好ましくは、クェリー配列は長さが少なくとも50アミノ酸であり、GAP解析は、2つの配列のアラインメントを少なくとも50アミノ酸の領域にわたって実施する。より好ましくは、クェリー配列は長さが少なくとも100アミノ酸であり、GAP解析は、2つの配列のアラインメントを少なくとも100アミノ酸の領域にわたって実施する。さらに好ましくは、クェリー配列は長さが少なくとも250アミノ酸であり、GAP解析は、2つの配列のアラインメントを少なくとも250アミノ酸の領域にわたって実施する。
【0050】
本明細書で用いられる“生物学的に活性な”フラグメントは本発明のポリペプチドの一部分であって、前記は完全長ポリペプチドの所定の活性を維持している。特に好ましい実施態様では、生物学的に活性なフラグメントはデンプンをリン酸化してC6リン酸化デンプンを生成することができる。生物学的に活性なフラグメントは、所定の活性を維持する限り任意のサイズを有することができるが、好ましくは少なくとも100または200アミノ酸残基長である。
規定のポリペプチドに関連して、上記で提供されたものよりも高い%同一性の数字は好ましい実施態様であることは理解されよう。したがって該当する場合には、最低の%同一性の数字を考慮して、ポリペプチドは、対応する指定の配列番号に対して少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも99.1%、より好ましくは少なくとも99.2%、より好ましくは少なくとも99.3%、より好ましくは少なくとも99.4%、より好ましくは少なくとも99.5%、より好ましくは少なくとも99.6%、より好ましくは少なくとも99.7より好ましくは少なくとも99.8%、およびさらに好ましくは少なくとも99.9%の同一性を有するポリペプチドを含む。
本発明のポリペプチドのアミノ酸配列変異体は、本発明の核酸に適切なヌクレオチド変化を導入することによって、または所望のペプチドのin vitro合成によって調製することができる。そのような変異体は、例えば残基の欠失、挿入および置換をアミノ酸配列内に含む。欠失、挿入および置換の組み合わせを実施して最終的な構築物に到達することができる(ただし最終生成物が所望の特徴を有することが条件である)。
【0051】
変異(改変)ペプチドは当分野で公知の任意の技術を用いて調製できる。例えば、本発明のポリヌクレオチドをin vitro変異導入に付すことができる。そのようなin vitro変異導入技術は、適切なベクターでポリヌクレオチドをサブクローニングする工程、前記ベクターで“ミュテータ”株(例えば大腸菌(E. coli)XL-1レッド(Stratagene))を形質転換させる工程、および前記形質転換細菌を適切な世代数にわたって増殖させる工程を含む。別の実施例では、本発明のポリヌクレオチドは、Harayama(1998)によって概略されているDNAシャッフリング技術に付される。これらのDNAシャッフリング技術は、本発明の遺伝子に関連する遺伝子(例えばコムギまたはオオムギ以外の植物種由来のGWD遺伝子)、および/または類似のタンパク質をコードする同じ植物由来の異なる遺伝子(例えばコムギのGWD遺伝子)を含むことができる。変異/変更DNAから誘導された生成物は、本明細書に記載した技術を用いて容易にスクリーニングして、それらが例えばGWD活性を有するか否かを決定することができる。
アミノ酸配列変異体の設計では、変異部位の位置および変異の性質は、改変されるべき特徴に左右されるであろう。変異の部位は個々にまたは連続して、例えば以下の方法によって改変することができる:(1)最初に保存的アミノ酸選択物で置換し、続いて得られた結果に応じてより過激な選択物で置換する;(2)標的残基を欠失させる;または(3)所定の部位の隣に他の残基を挿入する。
アミノ酸配列の欠失は一般的に約1から15残基、より好ましくは約1から10残基、典型的には約1から5連続残基の範囲である。
置換変異体は、ポリペプチド分子内に少なくとも1つのアミノ酸残基の除去および除去した位置に異なる残基の挿入を示す。置換的変異導入のために極めて重要な部位は活性部位と確認された部位を含む。他の重要な部位は、種々の株または種から得られる個々の残基が同一である部位である。これらの位置は生物学的活性のために重要であり得る。これらの部位、特に完全に同じであるように保存されている少なくとも3つの他の部位を含む配列内に含まれる部位が、好ましくは比較的保存された態様で置換される。そのような保存的置換は、“例示的置換”という表題の下に表3に示されている。
【0052】
さらにまた本発明の範囲内に含まれるものは、合成中にまたは合成後に、例えばビオチニル化、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/阻害基による誘導、タンパク分解切断、抗体分子または他の細胞性リガンドとの結合によって弁別的に改変された本発明のポリペプチドである。これらの改変は、本発明のポリペプチドの安定性および/または生物活性の向上のために役立ち、または別の分子の結合のためのリガンドとして役立ち得る。
本発明のポリペプチドは、天然のポリペプチドの製造および回収、組換えポリペプチドの製造および回収、並びにポリペプチドの化学合成を含む多様な方法で製造することができる。ある実施態様では、本発明の単離ポリペプチドは、前記ポリペプチドの生成に有効な条件下で前記ポリペプチドを発現させることができる細胞を培養し、前記ポリペプチドを回収することによって製造される。培養に好ましい細胞は本発明の組換え細胞である。有効な培養条件には、ポリペプチドの生成を許容する有効な媒体、バイオリアクター、温度、pHおよび酸素条件が含まれるが、ただしこれらに限定されない。有効な媒体は、本発明のポリペプチドを生成するために細胞が培養される任意の媒体を指す。そのような媒体は、典型的には消化吸収可能な炭素、窒素およびリン酸供給源、並びに適切な塩、鉱物、金属および他の栄養物(例えばビタミン)を含む水性媒体を含む。本発明の細胞は、通常の発酵バイオリアクター、振盪フラスコ、試験管、マイクロタイタープレートおよびペトリ皿で培養することができる。培養は、組換え細胞に適した温度、pHおよび酸素含有量で実施することができる。そのような培養条件は当業者の技術範囲内である。
本発明は、作動できるように結合または連結される成分に言及する。“作動できるように結合される”または“作動できるように連結される”などの語句は、機能的な関係でポリヌクレオチド成分を連結することを指す。典型的には、作動できるように結合された核酸配列は連続的に連結され、さらに、2つのタンパク質コード領域を結合させることが必要な場合には、それらは連続しかつリーディングフレーム内に存在する。RNAポリメラーゼが2つのコード配列を1本のRNAに転写し、翻訳を必要とする場合には前記を続いて両コード配列から誘導されたアミノ酸を有する1本のポリペプチドに翻訳するとき、前記コード配列は別のコード配列と“作動できるように結合”されている。発現された配列が最終的にプロセッシングにより所望のタンパク質を生じる限り、これらコード配列は互いに切れ目なく連続している必要はない。
【0053】
本明細書で用いられる“シス作用配列”、“シス作用エレメント”または“シス調節領域”または“調節領域”または同様な用語は、発現可能な遺伝的配列に対して適切に配置された場合に前記遺伝的配列の発現を少なくとも部分的に調節することができる任意のヌクレオチド配列を意味すると解されよう。シス調節領域は、遺伝子配列の発現レベルおよび/または細胞の型特異的レベルおよび/または発生特異的レベルを転写レベルでまたは転写後レベルで活性化させ、サイレンシングさせ、強化させ、抑制させ、または他の態様で変更させることができることは当業者にはよく理解されていよう。本発明のある種の実施態様では、シス作用配列は発現可能な遺伝的配列の発現を強化または刺激するアクチベータ配列である。
転写可能なポリヌクレオチドにプロモータまたはエンハンサーエレメントを“作動できるように連結する”とは、前記転写可能なポリヌクレオチド(例えばタンパク質コードポリヌクレオチドまたは他の転写物)をプロモータの調節制御下に置くことを意味する(したがって前記プロモータは前記ポリヌクレオチドの転写物を制御する)。異種プロモータ/構造遺伝子の組み合わせでは、プロモータまたはその変種を転写可能なポリヌクレオチドの転写開始部位からある距離で配置することが一般的には好ましく、この距離は、プロモータと前記プロモータがその天然の設定で制御する遺伝子(すなわち前記プロモータが得られた遺伝子)との間の距離とほぼ同じである。当分野で知られているように、この距離には、機能の低下をもたらすことなくある程度の変動が許容され得る。調節配列エレメントの制御下におかれる転写可能なポリヌクレオチドに対する当該エレメントの好ましい配置は、当該エレメントの天然の設定(すなわち前記プロモータが得られた遺伝子)における配置によって規定される。
【0054】
本明細書では “プロモータ”または“プロモータ配列”はその最も広い意味で用いられ、遺伝子のある領域、一般的にはRNAコード領域の上流(5’.)を含み、前記は転写の開始およびレベルを制御する。“プロモータ”には、古典的なゲノム遺伝子の転写調節配列(TATAボックスおよびCCAATボックス配列を含む)とともに、さらに別の調節エレメント(すなわち上流の活性化配列、エンハンサーおよびサイレンサー)が含まれ、後者は、発生的および/または環境的刺激に応答してまたは組織特異的もしくは細胞の型特異的態様で遺伝子発現を変更する。プロモータは、通常は(必ずというわけではないが、例えばいくつかのPolIIIプロモータ)構造遺伝子の上流に配置され、当該遺伝子の発現を調節する。さらにまた、プロモータを含む調節エレメントは通常遺伝子の転写開始部位の2kb以内に配置される。プロモータはさらに別の特異的調節エレメントを含むことができ、前記は開始部位からさらに遠位に位置して、細胞内での発現をさらに強化するか、および/または前記が作動できるように連結されている構造遺伝子の発現のタイミングまたは誘導性を変更することができる。
“構成的プロモータ”は、植物の多くのまたは全ての組織で作動できるように連結された転写される配列の発現を誘導するプロモータを指す。本明細書で用いられる構成的という用語は、遺伝子が全ての細胞型で必ずしも同じレベルで発現されることを示すのものではなく、当該遺伝子は、ある程度のレベルの変動がしばしば検出され得るが広範囲の細胞型で発現されることを示している。本明細書で用いられる“選択的発現”は、ほぼ例外なく植物の特定の器官(例えば内乳、胚、葉、果実、塊茎または根)で発現されることをいう。ある実施態様では、あるプロモータは全ての光合成組織(植物の全ての空気中部分に該当する)で発現される。前記は例えば、光合成に必要な遺伝子の発現に密接に関与するプロモータ、例えばルビスコ小サブユニットプロモータである。前記用語はまた、ある器官における特定の発生段階(例えば初期もしくは後期の胚発生、または種々の成熟段階)での発現、またはある種の環境条件もしくは処理によって誘導することができる発現を指す。選択的発現はしたがって構成的発現と対比させることができる(後者は植物が受けるほとんどのまたは全ての条件下での植物の多くの組織または全ての組織における発現を指す)。
選択的発現はまた、特定の植物組織、器官、または発育段階における遺伝子発現の生成物の区画化をもたらす。特定の細胞内の位置(例えばサイトゾル、液胞、またはアポプラスト間隙)における区画化は、要求される細胞区画への輸送のための適切なシグナルを遺伝子生成物の構造内に包含させることによって、または半自立的な細胞内小器官(色素体およびミトコンドリア)の場合は適切な調節配列を有するトランスジーンを前記小器官のゲノムに直接組み込むことによって達成することができる。
【0055】
“組織特異的プロモータ”または“器官特異的プロモータ”は、他の多くの組織または器官(全てでないとしたら好ましくは植物のほとんどの組織または器官)と比較して1つの組織または器官で優先的に発現されるプロモータである。前記プロモータは、他の組織または器官よりも特定の組織または器官で10倍高いレベルで発現される。例示的な組織特異的プロモータは、高分子量(HMW)グルテニン遺伝子、Bx17のためのプロモータである。“シンク組織特異的プロモータ”は、作動できるように連結された転写可能な配列の植物シンク組織(例えば内乳、果実組織、根の組織、塊茎組織、種子組織、茎組織またはシンク葉組織)における発現を、植物の他の組織(ソース組織(例えば葉)を含む)における発現と比較して優先的に誘導するプロモータを意味する。
本発明で意図されるプロモータは形質転換される宿主植物にとって天然のものであっても、または別の供給源から誘導されてもよい(この場合、当該領域は宿主植物で機能する)。他の供給源には以下が含まれる:アグロバクテリウム(Agrobacterium)T-DNA遺伝子、例えばノパリン、オクタピン、マンノピンの生合成のための遺伝子のプロモータ、または他のオピンプロモータ;植物由来のプロモータ、例えばユビキチンプロモータ、例えばトウモロコシのubi-1遺伝子のUbiプロモータ(Christensen et al. 1996)(例えば米国特許4,962,028号を参照されたい)またはアクチンプロモータ;組織特異的プロモータ(例えば以下を参照されたい:Conkling et al.の米国特許5,459,252号;Advanced TechnologiesのWO91/13992);ウイルス由来プロモータ(宿主特異的ウイルスを含む);または部分的もしくは完全合成プロモータ。単子葉植物および双子葉植物で機能する多数のプロモータが当分野ではよく知られている(例えば以下を参照されたい:Greve, 1983;Salmon et al., 1984;Garfinkel et al., 1983;Barker et al., 1983;植物およびウイルスから単離された多様なプロモータ、例えばカリフラワーモザイクウイルスプロモータ(CaMV 35S、19S)を含む)。多くの組織特異的プロモータ領域、例えばルビスコ小サブユニットプロモータが知られている(前記は葉の組織で優先的に発現される)。ある種の組織またはある種の生育条件下での転写を優先的に提供する他の転写開始領域には、ナピン、種子または葉のACP、ゼインなどに由来するものが含まれる。果実特異的プロモータもまた公知であり、そのようなプロモータの1つはE8プロモータであり、以下の文献に記載されている(Deikman et al. 1988;およびDellaPenna et al. 1989)。プロモータ活性を判定するための非限定的な方法は以下の文献に記載されている:Medberry et al. 1992, 1993;Sambrook et al. 1989;およびMcPherson et al.(米国特許5,164,316号)。
【0056】
また別にあるいは前記に加えて、プロモータは誘導性プロモータまたは発育により調節されるプロモータでもよい。後者は、導入されたポリヌクレオチドの発現を当該植物の適切な発育段階で駆動することができる。後者のこの実施態様では、転写制御エレメントは適切に発育により調節されるプロモータであり発現のタイミングを制御する。プロモータのこの選択は、発現の時期を決めて導入されたポリヌクレオチドの特異的な発現を可能にし、デンプンレベルの変動を利用することができる。前記プロモータは転写を調節するシス作用配列を含むことができ、この場合、調節は、例えば化学的もしくは物理的抑制もしくは誘発(例えば代謝物、光または他の物理化学的因子に基づく調節)または細胞分化に基づく調節(例えば植物の葉、根、種子などに密接に関与、例えば米国特許5,459,252号(根特異的プロモータを開示する)を参照されたい)を必要とする。したがって、プロモータ領域またはそのような領域の調節部分は、そのような調節を受ける適切な遺伝子から入手される。例えば、1,5-リブロース二リン酸カルボキシラーゼ遺伝子は光によって誘導され、転写開始に用いることができる。ストレス、温度、創傷、病原体の作用などによって誘導される他の遺伝子が知られている。
利用することができる他のシス作用配列には転写および/または翻訳エンハンサーが含まれる。エンハンサー領域は当業者には周知であって、ATG翻訳開始コドンおよび隣接配列を含むことができる。完全な配列の翻訳を担保するために、前記開始コドンは、外来または外因性ポリヌクレオチドに関連するコード配列のリーディングフレームと一致している必要がある。翻訳制御シグナルおよび開始コドンは多様な起源(天然および合成)が可能である。翻訳開始領域は、転写開始領域の供給源から、または外来もしくは外因性ポリヌクレオチドから提供され得る。前記配列はまた、転写の駆動のために選択したプロモータの供給源から誘導することができ、さらにmRNAの翻訳を向上させるために特別に改変することができる。
転写エンハンサーの例には、CaMV 35Sプロモータおよびオクトピンシンターゼ遺伝子由来のエレメントが含まれるが、ただしこれらに限定されない(前記は例えばLastら(米国特許5,290,924号(前記文献は参照により本明細書に含まれる))が記載している)。
【0057】
本発明の核酸構築物は典型的には、転写終止配列を含むことができる、約50から1000ヌクレオチド塩基対の3’非翻訳配列を含む。3’非翻訳配列は、転写終止および/またはポリアデニル化シグナル、およびmRNAプロセッシングまたは遺伝子発現を実行することができる他の任意の調節シグナルを含むことができる。ポリアデニル化シグナルは、ポリアデニル酸鎖のmRNA前駆体の3’末端への付加の実行を特徴とする。ポリアデニル化シグナルは一般的には標準的形態5’AATAAA-3’との相同性の存在によって認識されるが、ただし変型も珍しくない。適切な3’非翻訳配列の例は、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)のノパリンシンターゼ(nos)遺伝子由来のポリアデニル化シグナルを含む3’転写非翻訳領域(Bevan et al. 1983)およびアグロバクテリウム・ツメファシエンスのオクトピンシンターゼ遺伝子由来のT7転写物のためのターミネータである。あるいは、適切な3’非翻訳配列は、植物遺伝子、例えばジャガイモまたはトマトのプロテアーゼ阻害因子IまたはII遺伝子、ダイズの貯蔵タンパク質遺伝子、およびリブロース-1,5-二リン酸カルボキシラーゼの小サブユニット(ssRUBISCO)の遺伝子の3’末端であるが、ただし当業者に公知の他の3’エレメントもまた利用することができる。あるいは、3’非翻訳調節配列はde novoで入手することができ、これは例えばAnが記載している(Methods in Enzymology, 153:292, 1987(前記文献は参照により本明細書に含まれる))。
転写開始部位とコード配列開始部との間に挿入されたDNA配列(すなわち非翻訳5’リーダー配列(5’UTR))は遺伝子発現に影響を与えることができるので、個々のリーダー配列もまた利用することができる。適切なリーダー配列には、外来または内因性DNA配列の最適発現を誘導するために選択された配列を含むものが含まれる。例えば、そのようなリーダー配列は、例えばJoshi(1987)が記載したように、mRNAの安定性を向上または維持し、不適切な翻訳の開始を阻むことができる好ましいコンセンサス配列を含む。
さらにまた、標的誘導配列を用いて、外来または外因性ポリヌクレオチドによってコードされる酵素を植物細胞内の細胞内区画、例えば葉緑体または細胞外環境へ誘導することができる。輸送ペプチドまたはシグナルペプチド配列をコードする核酸配列は、本発明の選択酵素をコードする配列に作動できるように、前記配列が翻訳されたときに輸送ペプチドまたはシグナルペプチドが前記酵素を特定の細胞内または細胞外目的地に輸送することができるよう連結することができ、前記は場合によって翻訳後に除去することができる。輸送またはシグナルペプチドは、細胞内の膜(例えば小胞体、液胞、色素体、ミトコンドリアおよび原形質膜の膜)を貫通するタンパク質の輸送を促進することによって機能する。例えば、標的誘導配列は、所望のタンパク質を細胞質ゾルではなく特定の小器官(例えば液胞または色素体(例えば葉緑体))へ誘導することができる。したがって、本発明の核酸構築物は、プロモータ領域と外来または外因性ポリヌクレオチドとの間に作動できるように連結された、色素体輸送ペプチドコード核酸配列をさらに含むことができる。
【0058】
ベクター
本発明は遺伝的構築物の操作または転移にベクターを利用する。“ベクター”とは、核酸配列を挿入またはクローニングすることができる、例えばプラスミド、バクテリオファージまたは植物ウイルスから誘導される核酸分子、好ましくはDNA分子を意味する。ベクターは好ましくは1つ以上の固有の制限部位を含み、所定の宿主細胞(標的細胞もしくは組織または前駆細胞もしくはその組織を含む)で自立的に複製することができるか、またはクローニングされた配列が複製できるように所定の宿主細胞のゲノムに組み込むことができる。したがって、ベクターは自立的に複製するベクター(すなわち染色体外物質として存在するベクター)であり、その複製は染色体の複製に左右されない、例えば直鎖もしくは閉じた環状プラスミド、染色体外エレメント、ミニ染色体または人口染色体であり得る。ベクターは自己複製を担保するための任意の手段を含むことができる。あるいは、ベクターは、細胞に導入されたとき、レシピエント細胞のゲノムに組み込まれ、ベクターが組み込まれた染色体と一緒に複製されるものでもよい。ベクター系は、単一のベクターもしくはプラスミド、2つ以上のベクターもしくはプラスミド(宿主細胞のゲノムに導入されるべき全DNAを一緒に含有する)、またはトランスポゾンを含むことができる。ベクターの選択は、典型的にはベクターが導入されることとなる細胞とのベクターの適合性に左右されるであろう。ベクターはまた選別マーカーを含むことができる。前記は例えば、適切な形質転換体の選別に用いることができる抗生物質耐性遺伝子である。そのような耐性遺伝子の例は当業者には周知である。
本発明核酸構築物はベクター、例えばプラスミドに導入することができる。プラスミドベクターは典型的には、原核細胞および真核細胞における発現カセットの容易な選別、増幅および形質転換を提供する追加の核酸配列を含み、前記は、例えばpUC-誘導ベクター、pSK-誘導ベクター、pGEM-誘導ベクター、pSP-誘導ベクターまたはpBS-誘導ベクターである。追加の核酸配列には、ベクターの自立的複製を提供する複製起点、選別可能マーカー遺伝子(好ましくは抗生物質または除草剤耐性をコードする)、核酸構築物内にコード核酸配列または遺伝子を挿入するための多角的部位を提供する固有のマルチクローニング部位、並びに原核および真核細胞(特に植物細胞)の形質転換を強化する配列が含まれる。
【0059】
“マーカー遺伝子”とは、前記マーカー遺伝子を発現している細胞に別個の表現型を付与し、したがって前記マーカーをもたない細胞から形質転換細胞を区別することを可能にする遺伝子を意味する。選別可能マーカー遺伝子は、選別因子(例えば除草剤、抗生物質、放射線照射、熱、または非形質転換細胞に損傷を与える他の処置)に対する耐性を基にして選別することを可能にする特質を付与する。スクリーニング可能なマーカー遺伝子(またはレポータ遺伝子)は、観察または試験を通して、すなわちスクリーニングすることによって検証することができる特質(例えば非形質転換細胞には存在しないβ-グルクロニダーゼ、ルシフェラーゼ、GFPまたは他の酵素活性)を付与する。マーカー遺伝子および問題のヌクレオチド配列を連結させる必要はない。
形質転換体の識別を促進するために、核酸構築物は、望ましくは選別可能またはスクリーニング可能マーカー遺伝子を外来または外因性ポリヌクレオチドとしてまたは前記に加えて含む。実際に選択されるマーカーは、選択された植物細胞との組み合わせにおいてマーカーが機能する限り(すなわち選択性であるかぎり)重要ではない。マーカー遺伝子および問題の外来または外因性ポリヌクレオチドを結合させる必要はない。なぜならば、例えば米国特許4,399,216号に記載されているように、非結合遺伝子による同時形質転換もまた植物の形質転換では有効な方法であるからである。
細菌の選別可能マーカーの例は、抗生物質耐性(例えばアンピシリン、カナマイシン、エリスロマイシン、クロラムフェニコールまたはテトラサイクリン耐性を付与するマーカーである。植物の形質転換体の選別のための例示的な選別可能マーカーには以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):hyg遺伝子(ヒグロマイシンB耐性をコードする);Potrykusら(Mol Gen Genet., 199:183, 1985)が記載した、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(npt)遺伝子(カナマイシン、パロモマイシン、G418などに対する耐性を付与する);例えばEP-A 256 223に記載された、グルタチオン誘導除草剤に対する耐性を付与するラット肝臓由来のグルタチオン-S-トランスフェラーゼ遺伝子;例えばWO87/05327に記載された、過剰発現に際してグルタミンシンターゼ阻害物質(例えばホスフィノスリシン)に対する耐性を付与するグルタミンシンターゼ遺伝子、例えばEP-A275957に記載された、選択的因子ホスフィノスリシンに対する耐性を付与するストレプトマイセス・ヴィリドクロモゲネス(Streptomyces viridochromogenes)由来のアセチルトランスフェラーゼ遺伝子、例えばHincheeら(Biotech., 6:915, 1988)が記載した、N-ホスホノメチルグリシンに対する耐性を付与する5-エノルシキメート-3-リン酸シンターゼ(EPSPS)をコードする遺伝子、例えばWO91/02071に記載されたビアラフォスに対する耐性を付与するbar遺伝子;ブロモキシニルに対する耐性を付与するニトリラーゼ遺伝子、例えばクレブシーラ・オザエナエ(Klebsiella ozaenae)に由来するbxn(Stalker et al. Science, 242:419, 1988);メトトレキセートに対する耐性を付与するジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(Thillet et al. J Biol Dhem., 263:12500, 1988);アセチルシンターゼ(ALS)遺伝子変異体(イミダゾリノン、スルフォニルウレアまたは他のALS-阻害化学物質に対する耐性を付与する(EP-A-154204));5-メチルトリプトファンに対する耐性を付与する変異アントラニレートシンターゼ遺伝子;または除草剤に対する耐性を付与するダラポンデハロゲナーゼ遺伝子。
好ましいスクリーニング可能マーカーには以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):多様な色原体基質が知られているβ-グルクロニダーゼ(GUS)酵素をコードするuidA遺伝子、色原体基質が知られている酵素をコードするβ-ガラクトシダーゼ遺伝子、エクォリン遺伝子(Prasher et al. 1985)(前記はカルシウム感受性バイオルミネッセンス検出に利用できる);緑色蛍光タンパク質遺伝子(Niedz et al. 1995);ルシフェラーゼ(luc)遺伝子(Ow et al. 1986)(前記はビオルミネッセンス検出を可能にする)、および当分野で公知の他のもの。本明細書で用いられる“レポーター分子”とは、タンパク質生成物を照合することによってプロモータ活性の測定を容易にする分析的検証能力をもつシグナルを、その化学的性質により提供する分子を意味する。
【0060】
遺伝子発現を改変する方法
いくつかの実施態様では、内因性デンプンリン酸化および/または分解のレベルは、植物細胞でこれらの活性のためのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の発現レベルを増加させるか、または植物でこれらの活性に必要とされるタンパク質をコードする遺伝子の発現レベルを低下させることによって調節される。例えば、前記は、種々の強度を有するプロモータまたは誘導性プロモータを用いることによって転写レベルで達成することができる(前記プロモータは、コード配列から発現される転写物レベルを制御することができる)。いくつかの実施態様では、その生成物がデンプンリン酸化をダウンレギュレートする遺伝子の発現を調節または強化する転写因子をコードする異種配列が導入される。前記遺伝子の発現は、コード配列および転写制御エレメント(前記コード配列に作動できるように結合され、当該細胞内で機能する)を含む構築物の細胞当りのコピー数を変更することによって調節することができる。あるいは、複数の形質転換体を選別し、さらにトランスジーンの組み込み部位の近傍の内因性配列の影響に起因するトランスジーン発現について好ましいレベルおよび/または特異性を有するものについてスクリーニングすることができる。トランスジーン発現の好ましいレベルまたはパターンは、植物の生産能力(例えば収量およびバイオマス)の実質的な向上、または植物細胞内のデンプン分解の顕著な低下をもたらすものである。前記は、種々の発育段階の形質転換体を簡単に試験することによって検出することができる。
遺伝子発現の低下は、宿主細胞に導入される“遺伝子サイレンシングキメラ遺伝子”の導入および転写により達成することができる。遺伝子サイレンシングキメラ遺伝子は、宿主細胞のゲノム(好ましくは核内ゲノム)に安定的に導入するか、または一過性に例えばウイルスベクターとして導入することができる。本明細書で用いられる“遺伝子サイレンシング作用”は、宿主細胞(好ましくは植物細胞)における標的核酸の発現の低下を指し、前記はサイレンシングRNAを導入することによって達成することができる。そのような低下は、転写の低下(RNA再形成のメチル化によるものを含む)またはRNA分子の転写後改変の低下(RNA分解によるものを含む)またはその両方の結果であり得る。遺伝子サイレンシングは、必ずしも標的核酸または遺伝子の発現の停止と解釈されるべきではない。サイレンシングRNAの存在下における標的核酸の発現レベルは、その非存在下での発現レベルよりも低ければ十分である。発現レベルは、少なくとも約10%、または少なくとも約15%、または少なくとも約20%、または少なくとも約25%、または少なくとも約30%、または少なくとも約35%、または少なくとも約40%、または少なくとも約45%、または少なくとも約50%、または少なくとも約55%、または少なくとも約60%、または少なくとも約65%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約100%低下し得る。標的核酸には、内因性遺伝子、トランスジーンまたはウイルス遺伝子、またはウイルスベクターによって導入される遺伝子が含まれ得る。標的核酸にはさらに宿主細胞ゲノム(好ましくは宿主細胞の核内ゲノム)に安定的に導入された遺伝子が含まれ得る。
【0061】
アンチセンスRNA分子
アンチセンス技術を用いて本発明の遺伝子発現を低下させることができる。“アンチセンスRNA”という用語は、特定のmRNA分子の少なくとも一部分と相補的であり、当該mRNAをコードする遺伝子の発現を低下させることができるRNA分子を指すと考えられるであろう。そのような低下は典型的には配列依存性態様で生じ、転写後事象(例えば核から細胞質へのmRNAの輸送)の妨害、mRNAの安定性または翻訳の阻害によって生じると考えられる。アンチセンス方法の使用は当分野では周知である(例えば以下を参照されたい:G. Hartmann and S. Enders, Manual of Antisense Methodology, Kluwer 1999)。植物においてアンチセンス技術の使用はBourque(1995)およびSenior(1998)により概説されている。Bourque(1995)は、遺伝子不活化の方法としてどのようなアンチセンス配列が植物系で利用されたかについて多数の例を列挙している。著者はまた、部分的阻害が前記の系で相当な変化をほぼ確実に生じるので、いずれの酵素活性についても100%阻害を達成することは必要でないであろうと述べている。Senior(1998)は、アンチセンス方法は遺伝子発現の操作のために今やしっかりと確立された技術であると述べている。
本明細書で用いられる、“生理学的条件下でハイブリダイズするアンチセンスポリヌクレオチド”という語句は、当該ポリヌクレオチド(前記は完全にまたは部分的に一本鎖である)が、少なくとも、阻害されるべき遺伝子のRNA生成物(典型的にはタンパク質(例えば本明細書で提供されるタンパク質)をコードするmRNA)と、細胞内の通常の条件下で二本鎖ポリヌクレオチドを形成することができることを意味する。アンチセンス分子は、構造遺伝子と一致する配列または遺伝子の発現もしくはスプライシング事象に対する制御をもたらす配列のための配列を含むことができる。例えば、アンチセンス配列は本発明の遺伝子の標的コード領域、または5’-非翻訳領域(UTR)もしくは3’-UTR、または前記の組み合わせと一致し得る。前記はイントロン配列と部分的に相補性であり得る(イントロン配列は、転写時にまたは転写後にスプライシングされて標的遺伝子のエクソン配列のみとなることがある)。UTRの分岐が一般的に非常に広いことを考慮すれば、これらの領域を標的とすることによって、より強い遺伝子阻害の特異性が提供される。
アンチセンス配列の長さは、連続する少なくとも19ヌクレオチド、好ましくは少なくとも50ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも100、200、500または1000ヌクレオチドから最大で阻害されるべき遺伝子の完全長であろう。遺伝子全体の転写物と相補的な完全長の配列を用いてもよい。長さはもっとも好ましくは100−2000ヌクレオチドである。標的とされる転写物に対するアンチセンス配列の同一性の程度は、少なくとも90%より好ましくは95−100%であるべきである。アンチセンスRNA分子は、もちろん当該分子を安定化させるために機能することができる無関係の配列を含むことができる。
アンチセンスRNAを発現させるための遺伝的構築物は、プロモータ配列を“アンチセンス”の向きで標的遺伝子のある領域と結合させることによって容易に作製することができる(本明細書で用いられるアンチセンスの向きとは、当該植物細胞の標的遺伝子内の配列の転写および翻訳(翻訳が生じるとして)の向きに対して逆の向きを指す)。
【0062】
リボザイム
“リボザイム”という用語は、それぞれ別個の基質RNAを特異的に認識しその切断を触媒するRNA分子を指す。典型的には、リボザイムは、標的核酸を特異的に認識するためのアンチセンス配列および本明細書で“触媒ドメイン”と呼ぶ酵素領域を含む。本発明で特に有用なリボザイムのタイプはハンマーヘッドリボザイム(Haseloff and Gerlach, 1988;Perriman et al. 1992)およびヘアピンリボザイム(Shippy et al. 1999)である。リボザイムをコードするDNAは当分野で周知の方法を用いて化学的に合成することができる。したがって、本発明によって提供されるものはまた、本発明のリボザイムをコードする核酸分子である。典型的にはリボザイムをコードするDNAは発現カセットまたは転写カセットに挿入することができる。任意の潜在的RNA標的内の特異的リボザイム切断部位は、以下の配列(GUA、GUUおよびGUC)を含む、リボザイム切断部位について標的分子をスキャンニングすることによって識別することができる。いったん識別したら、当該切断部位を含む標的遺伝子の領域と一致する15から20リボヌクレオチドの短いRNA配列を、当該オリゴヌクレオチドが不適切となる可能性が高い、予想される構造的特色(例えば二次構造)について評価することができる。利用できる場合には、リボザイムは、ハンマーヘッドリボザイム、マサカリヘッドリボザイム、サンショウウオサテライトリボザイム、テトラヒメナリボザイムおよびRNAse Pから成る群から選択することができ、さらに標的遺伝子の配列を基にして当分野で公知の方法にしたがって設計される(例えば米国特許5,741,679号を参照されたい)。候補標的の適切性もまた、相補性オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションのためにそれら候補標的が接近しやすいかを、リボヌクレアーゼ防御アッセイを用いて試験することによって評価することができる。
本明細書に記載したアンチセンスポリヌクレオチドの場合のように、本発明のリボザイムもまた、“生理学的条件”(すなわち細胞内条件、特に植物細胞(例えばコムギまたはオオムギ細胞)内の条件)下で標的核酸分子(例えば配列番号:2、配列番号:5として提供されるポリペプチドをコードするmRNA)とハイブリダイズすることができなければならない。
【0063】
RNA干渉/二重鎖RNA
本明細書で用いられる、“人工的に導入されたdsRNA分子”は、dsRNAの直接導入を指し、前記は、例えばそのようなdsRNA分子をコードするキメラ遺伝子の転写によって生じることがあるが、しかしながら真核細胞または植物細胞内での一本鎖RNA分子からdsRNAへの変換を指すことはない。RNA干渉(RNAi)は、遺伝子の特異的な発現低下または特定のタンパク質の生成阻害に特に有用である。理論に拘束されないが、Waterhouseら(1998)は、dsRNAを用いてタンパク質生成を低下させることができるメカニズムモデルを提供した。この技術は、対象遺伝子またはその部分のmRNAと本質的に同一である配列を含むdsRNA分子の存在を必要とする。便利には、dsRNAは組換えベクターまたは宿主細胞内で単一のプロモータから生成することができる。この場合、センスおよびアンチセンス配列が転写されてヘアピンRNAが生成される。ヘアピンRNAではセンスおよびアンチセンス配列はハイブリダイズして、ループ構造を形成する無関係の配列を有するdsRNAを形成し、したがってヘアピンRNAはステム-ループ構造を含む。本発明に適したdsRNA分子の設計および生成は、特に以下を考慮しつつ当業者の技術範囲内である:Waterhouse et al. 1998;Smith et al. 2000;WO99/32619;WO99/53050;WO99/49029;およびWO01/34815。
ある実施態様では、不活化されるべき標的遺伝子に対して相同性を有する、少なくとも部分的に二本鎖であるRNA生成物の合成を指令するDNAが導入される。前記DNAはしたがって、RNAに転写されたとき、ハイブリダイズして二本鎖RNA領域を形成することができるセンスおよびアンチセンスの両配列を含む。好ましい実施態様では、センスおよびアンチセンス配列はスペーサー領域によって分離され、このスペーサー領域は、RNAに転写されたときスプライシングされるイントロンを含む。このアレンジメントは高い遺伝子サイレンシング効率を生じることが示された。この二本鎖領域は1つまたは2つのRNA分子を含み、前記はいずれか一方のDNA領域からまたは両方から転写される。dsRNAは長hpRNAとして分類されることがある。hpRNAは長いセンスおよびアンチセンス領域を有し、これらは大半が相補的であるが、必ずしも完全に相補性である必要はない(典型的には約200bpより大きく、200−1000bpの範囲である)。hpRNAはまた、サイズ範囲が約30から約42bpであるが94bpよりも大きくない二本鎖部分を有するむしろ小さなものであってもよい(WO04/073390を参照されたい(前記文献は参照により本明細書に含まれる))。二本鎖RNA領域の存在は内因性の植物系の応答の引き金となると考えることができる(前記系は、二本鎖RNAと標的植物遺伝子の相同なRNA転写物との両方を破壊し、標的遺伝子の活性を効率的に低下または排除する)。
【0064】
ハイブリダイズするセンスおよびアンチセンス配列の長さは、各々少なくとも連続する19ヌクレオチド、好ましくは少なくとも30または50ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも100、200、500または1000ヌクレオチドであるべきである。遺伝子全体の転写物と一致する完全長配列を用いてもよい。前記の長さはもっとも好ましくは100−2000ヌクレオチドである。標的転写物に対するセンスおよびアンチセンス配列の同一性の程度は、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%およびより好ましくは95−100%であるべきである。配列が長ければ長いほど、全体的な配列同一性のための要求は厳格でなくなる。RNA分子は、もちろん、分子を安定化させるために機能することができる無関係の配列を含むことができる。dsRNA形成性構築物を発現させるために用いられるプロモータは、得られるdsRNAが遺伝子生成物に特異的であるならば、いずれのタイプのプロモータであってもよい。あるいは、プロモータは、前記が特定の発生系統の細胞でのみ発現されるという点で系統特異的であってもよい。このことは、標的でない細胞系統で発現される遺伝子に関して相同性のオーバーラップがある程度観察される場合に有利であるかもしれない。プロモータはまた、外部から制御される因子によって、または細胞内環境因子によって誘導することができるものであってもよい。典型的には、RNA分子はRNAポリメラーゼIIまたはRNAポリメラーゼIIIプロモータの制御下で発現される。後者の例にはtRNAまたはsnRNAプロモータが含まれる。
GWD活性を有するポリペプチドの生成をダウンレギュレートするために用いることができるdsRNA分子の例は実施例7および10で提供される。
他のサイレンシングRNAは、標的遺伝子のRNA転写物のヌクレオチド配列の相補鎖と少なくとも95%の配列同一性を有する、連続する少なくとも20ヌクレオチドを含む“非ポリアデニル化RNA”でもよい(前記は例えばWO01/12824またはUS6423885(前記両文献は参照により本明細書に含まれる)に記載されている)。さらに別のタイプのサイレンシングRNAは、標的核酸の配列またはその相補物と少なくとも95%の配列同一性を有する連続する20ヌクレオチドを含み、さらにWO03/076619(前記文献は参照により本明細書に含まれる)に記載された大半が二本鎖の領域を含む、WO03/076619に記載のRNA分子である。サイレンシングRNAはまた、本明細書に規定したセンスおよびアンチセンス鎖を含む二本鎖RNAであってもよく、この場合、前記センスおよびアンチセンス鎖は互いに塩基対を形成して二本鎖RNA領域を形成することができる(好ましくは前記センスおよびアンチセンスRNAの連続する少なくとも20ヌクレオチドは互いに相補性である)。前記センスおよびアンチセンス領域はまた1つのRNA分子内に存在することができ、したがってセンスおよびアンチセンス領域が二本鎖RNA領域を形成するとき、ヘアピンRNA(hnRNA)を形成することができる。hpRNAは当分野では周知である(例えばWO99/53050(前記文献は参照により本明細書に含まれる)を参照されたい)。
ミクロRNA調節は、遺伝子調節に向けて進化した、明瞭に特殊化したRNAサイレンシング経路の分枝であり、通常のRNAi/PTGSから分出している。マイクロRNAは、特徴的な倒置リピートの状態で編成された遺伝子様エレメントとしてコードされる特殊な小RNA類である。転写されたとき、ミクロRNA遺伝子はステム-ループを有する前駆体RNAを生じ、続いて前記がプロセッシングされてミクロRNAが生成される。ミクロRNAは典型的には長さが約21ヌクレオチドである。遊離されたmiRNAは、タコブネ(Argonaute)タンパク質の特定のサブセットを含むRISC様複合体に取り込まれ、前記は配列特異的遺伝子抑制を示す(例えば以下を参照されたい:Millar and Waterhouse, 2005;Pasquinelli et al. 2005;Almedia and Allshire, 2005)。
【0065】
共抑制
用いることができる別の分子生物学的アプローチは共抑制である。共抑制のメカニズムはあまりよく理解されていないが、転写後遺伝子スプライシング(PTGS)を必要とすると考えられ、その点に関して、アンチセンス抑制の多くの例と非常に類似するかもしれない。共抑制は、その発現のためにプロモータに対して“センスの向き”で、ある遺伝子またはそのフラグメントの余分のコピーを植物に導入することを必要とする。本明細書で用いられるセンスの向きとは、標的遺伝子内の配列に対して当該配列の転写および翻訳(翻訳が生じる場合)の向きが同じ向きであることを指す。センスフラグメントのサイズ、標的遺伝子に対するその一致度、および標的遺伝子に対するその相同性の程度は、上記で述べたアンチセンス配列と同様である。いくつかの事例では、当該遺伝子配列の追加のコピーが標的植物遺伝子の発現に干渉する。共抑制アプローチを実施する方法については、WO97/20936特許明細書および欧州特許明細書0465572を参照できる。アンチセンス、共抑制または二重鎖RNA分子もまた、WO03/076619に記載されているように、大部分が二本鎖のRNA領域(好ましくは核内局在シグナルを含む)を含むことができる。
遺伝子発現を低下させるこれら技術のいずれも同等に用いて複数の遺伝子の活性を低下させることができる。例えば、あるRNA分子は、共通の複数遺伝子の1つの領域を標的にすることによって関連する遺伝子ファミリーを標的とすることができる。あるいは、多数の領域を1つのRNA分子内に包含させることによって(各領域は異なる遺伝子を標的とする)無関係の複数遺伝子を標的とすることができる。前記は単一プロモータの制御下に多数の領域を融合させることによって容易に達成することができる。
【0066】
植物細胞への核酸の導入/形質転換のための方法
多数の技術が、核酸分子を植物宿主細胞内へ導入するために利用可能であり、当業者に周知である。“形質転換”という用語は、外来または外因性核酸の導入による、生物(例えば細菌または植物)の遺伝子型の変更を意味する。“形質転換体”とは、そのようにして変更された生物を意味する。本明細書で用いられる、“トランスジェニック”という用語は遺伝的に改変された植物を指し、前記植物では、導入された外来もしくは外因性遺伝子または配列のランダムな組み込みまたは位置特異的組み込みによって、または複製可能な非組み込み型での安定的な維持によって、内因性ゲノムが補充または改変される。“トランスジーン”とは、植物に導入される外来もしくは外因性遺伝子または配列を意味する。核酸分子は植物のゲノムに安定的に組み込まれても、または染色体外エレメントとして複製されてもよい。“ゲノム”とは、細胞、植物または植物部分の受け継がれる遺伝的補完物の全体を指し、染色体DNA、色素体DNA、ミトコンドリアDNAおよび染色体外DNA分子が含まれる。植物材料に関して本明細書で用いられる“再生”という用語は、植物細胞、植物細胞群、植物部分、例えば種子または植物片(例えば胚、胚盤、プロトプラスト、カルスまたは他の組織に由来する)から分化した全植物を生育させることを意味する。
個々の形質転換技術の選択は、前記技術の一定の植物片の形質転換効率とともに、本発明を実施する者の選択される個々の方法論に関する経験と好みによって決定されよう。核酸構築物を植物細胞に導入する個々の形質転換系の選択は、前記が許容し得る核酸導入レベルを達成するかぎり、本発明にとって本質的ではなく本発明の制限にもなり得ない。植物の改善のために形質転換系を実際に使用するための手引きはBirch(1997)によって提供される。
基本的には、本発明の核酸構築物をレシピエント植物に導入し、本発明のポリヌクレオチドを保有しこれを発現する新規な植物を栽培することによって、形質転換しやすい双子葉および単子葉植物の両方を改変することができる。
【0067】
双子葉植物(例えばタバコ、ジャガイモおよび豆類、例えばアルファルファ)における外来または外因性ポリヌクレオチドの導入および発現は、アグロバクテリウム・ツメファシエンスの腫瘍誘導(Ti)プラスミドのT-DNAを用いて可能であることが示された(例えば以下を参照されたい:米国特許5,004,863号(Umbeck)および国際出願PCT/US93/02480)。本発明の構築物は、Tiプラスミドを含むA. ツメファシエンスを利用して植物細胞に転移させることができる。形質転換ビヒクルとしてA. ツメファシエンス培養を用いるとき、形質転換組織の正常な腫瘍非形成性分化が可能なように、アグロバクテリウムの腫瘍非形成株をベクター担体として使用するのがもっとも有利である。アグロバクテリウムは二元性Tiプラスミド系を保有するのが好ましい。そのような二元系は、(1)転移DNA(T-DNA)を植物に導入するために必須のビルレンス領域を有する第一のTiプラスミド、および(2)キメラプラスミドを含む。キメラプラスミドは、形質転換されるべき核酸にフランキングする、野生型TiプラスミドのT-DNA領域の少なくとも一方の境界領域を含む。二元性Tiプラスミド系は、例えばDe Framond(Biotechnology, 1:262, 1983)およびHoekema et al. (Nature, 303:179, 1983)によって記載されたように、植物細胞の形質転換に有効であることが示された。そのような二元系は、アグロバクテリウムでTiプラスミドへの組み込みを必要としないのでとりわけ好ましい。
アグロバクテリウムの使用を必要とする方法には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):(a)単離プロトプラスト培養とアグロバクテリウムの同時培養;(b)植物細胞または組織のアグロバクテリウムによる形質転換;(c)種子、先端部または分裂組織のアグロバクテリウムによる形質転換、または(d)in plantaでの接種、例えばBechtoldら(1993)によって記載されたフローラルディップ法。このアプローチは、アグロバクテリウム細胞懸濁物の真空浸透に基づく。
外因性核酸の導入によって遺伝的変型を導入するために、およびプロトプラストまたは未熟な植物胚を再生するために、穀類植物(例えばコムギおよびオオムギ)または他の単子葉類(例えばサトウキビ)を形質転換する方法は周知であり(例えば以下を参照されたい:Wan and Lemaux, 1994;Tingay et al. 1997;カナダ特許出願2,092,588号;オーストラリア特許出願61781/94号;オーストラリア特許667939号;米国特許6,100,447号;国際特許出願PCT/US97/10621;米国特許5,589,617号;米国特許6,541,257号)、さらに他の方法が特許明細書WO99/14314で説明されている。好ましくはトランスジェニックなコムギまたはオオムギ植物は、アグロバクテリウム・ツメファシエンス媒介形質転換方法によって作製される。所望の核酸構築物を保持するベクターは、組織培養植物または外植片の再生可能なオオムギ細胞、または適切な植物系(例えばプロトプラスト)に導入することができる。前記再生可能なコムギの細胞は、好ましくは未熟胚の胚盤、成熟胚、前記に由来するカルスまたは分裂組織由来である。
【0068】
遺伝的構築物はまた、例えばFrommら(Proc Natl Acad Sci USA, 82:5824, 1985)およびShimamotoら(Nature 338:274-276, 1989)によって記載されたようにエレクトロポレーションによって導入することができる。この技術では、植物プロトプラストは、関連する核酸配列を含むベクターまたは核酸の存在下でエレクトロポレーションが実施される。高電界強度の電気的衝撃は可逆的に膜を透過性にして核酸の導入を可能にする。エレクトロポレーションを施された植物プロトプラストは細胞壁を再構成し、分裂し、植物カルスを形成する。
植物細胞に核酸構築物を導入するまた別の方法は、例えばKleinら(Nature 327:70, 1987)によって記載された、小さなビーズもしくは粒子のマトリックス内または前記の表面に収納された、導入されるべき核酸を含む小粒子による高速弾道貫通である(前記はまた、粒子ボンバードメントまたは微小自動推進体ボンバードメントとしても知られている)。典型的には新規な核酸配列の単一導入のみが要求されるが、この方法は特に多重導入を提供する。
あるいは、核酸構築物は、機械的または化学的手段を用いて植物細胞に接触させることによって導入することができる。例えば、核酸は、マイクロピペットを用い植物細胞に直接マイクロインジョクションによって機械的に転移させることができる。あるいは、核酸はポリエチレングリコールを用いることによって植物細胞に転移させてもよい(ポリエチレングリコールは遺伝的物質と沈殿複合体を形成し前記は細胞に摂取される)。
単子葉植物の形質転換にはこれまでに知られている多様な方法が存在する。現時点では、単子葉類の形質転換の方法は、外植片または懸濁細胞の微小自動推進体ボンバードメント、アグロバクテリウム媒介遺伝子転移および、例えばShimamotoら(1989)によって記載された直接DNA取り込みまたはエレクトロポレーションである。トランスジェニックなトウモロコシ植物は、ストレプトマイセス・ヒグロスコピクス(Streptomyces hygroscopicus)のbar遺伝子をトウモロコシ懸濁培養の胚形成細胞に微小自動推進体ボンバードメントによって導入することによって得られた(Gordon-Kamm, 1990)。コムギの植物は、胚形成性懸濁培養を樹立するために日齢が進んだコンパクトで小球状の胚形成性カルス組織のみを選別することによって、胚形成性懸濁培養から再生された(Vasil, 1990)。これらの作物に適した形質転換系と組み合わせることによって、本発明を単子葉類に応用することが可能になる。トランスジェニックなサトウキビ植物は、例えばBowerら(1996)によって記載されたように胚形成性カルスから再生された。
あるいは、種々の技術の組み合わせを用いて(例えばアグロバクテリウム被覆微粒子によるボンバードメント(EP-A-486234)、または創傷の誘発に微小自動推進体ボンバードメントを実施し、続いてアグロバクテリウムと同時培養する(EP-A-486233))、形質転換プロセスの効率を高めることができる。
本発明のための好ましい植物は、重要な物質(デンプンを含む)の生産のために栽培または収穫される種である(前記重要な物質は、例えば食物、飼料、とりわけ発酵もしくは工業用フィードストックとして用いられる)。
【0069】
変異導入
本発明の植物を作製し、変異導入後に実体を確認することができる。前記によってトランスジェニックではない植物、いくつかのマーカーにおいて好ましい植物を提供することができる。
変異体は、天然に生じるもの(すなわち天然の供給源から単離されるもの)でも、合成でも(例えば核酸で位置特異的変異導入を実施することによる)、または誘導されたものでもよい。一般的には、前駆体の植物細胞、組織、種子または植物を変異導入に付し、単一変異または多重変異(例えばヌクレオチド置換、欠失、付加および/またはコドンの改変)を生じさせる。本出願の文脈では、“誘導変異”は人工的に誘導した遺伝的変型であり、前記は化学的、放射線照射的または生物学的変異導入(例えばトランスポゾンまたはT-DNA挿入)の結果であり得る。好ましい変異は、無効変異、例えばナンセンス変異、フレームシフト変異、挿入型変異またはスプライス部位変種(前記は当該遺伝子を完全に不活化する)である。ヌクレオチド挿入型誘導体は、5’および3’末端融合だけでなく単一または多重ヌクレオチドの配列内挿入を含む。挿入型ヌクレオチド配列変種は、1つ以上のヌクレオチドがヌクレオチド配列内の予め定められた部位に導入されるものであるが、ただしランダム挿入もまた得られた生成物の適切なスクリーニング下で可能である。欠失型変種は、配列から1つ以上のヌクレオチドが除去されることを特徴とする。好ましくは、変異体の遺伝子は、野生型遺伝子に対してヌクレオチド配列にただ1つの挿入または欠失を有する。置換型ヌクレオチド変種は、配列内の少なくとも1つのヌクレオチドが除去されその場所に異なるヌクレオチドが挿入されたものである。野生型遺伝子に対して、変異遺伝子で置換の作用を受けるヌクレオチドの好ましい数は、最大で10ヌクレオチド、より好ましくは最大で9、8、7、6、5、4、3または2ヌクレオチド、もっとも好ましくは1ヌクレオチドのみである。そのような置換は、当該置換がコドンによって規定されたアミノ酸を変化させないという点で“サイレント”であってもよい。あるいは、保存的置換が設計されて、あるアミノ酸が別の類似作用をもつアミノ酸に変更される。典型的な保存的置換は、“例示的置換”の上の表にしたがって実施されるものである。
本明細書で用いられる“変異”という用語は、遺伝子の活性に影響を与えないサイレントヌクレオチド置換は含まず、したがって遺伝子の活性に影響を及ぼす遺伝子配列内の変更のみが含まれる。“多形性”という用語は、上記のようなサイレントヌクレオチド置換を含む、ヌクレオチド配列内の一切の変化を指す。
【0070】
好ましい実施態様では、植物は
GWD遺伝子の少なくとも部分の欠失を含む。当分野で知られているように、6倍体コムギ、例えばパンコムギは通常A、BおよびDゲノムと称される3つのゲノムを含み、一方、4倍体コムギ、例えばデュラムコムギは通常AおよびBゲノムと称される2つのゲノムを含む。各ゲノムは7対の染色体を含み、当分野で周知のように、これらは減数分裂時に細胞学的方法によって観察することができ、したがって実体を確認することができる。
変異導入は、当分野で周知のように、化学的手段または放射線照射手段、例えば種子のEMSまたはアジ化ナトリウム(Zwar and Chandler, 1995)処置、またはガンマ線照射によって実施できる。変異体の単離は、変異導入植物または種子をスクリーニングすることによって実施できる。例えば、変異導入コムギ集団を、葉または穀粒デンプン中の低リン酸含有量について、GWD遺伝子の変異はPCRもしくはヘテロデュープレックス系アッセイで、またはGWDタンパク質の低下はELISAによってスクリーニングすることができる。倍数体植物では、スクリーニングは、好ましくはすでに1つまたは2つのGWD活性を欠く遺伝子型で(例えば前記3つのゲノムの2つでGWD遺伝子が既に変異体であるコムギ植物で)実施され、したがって完全に機能的活性を欠く変異体を探索することができる。あるいは、変異は、変異集団で例えばEMSのような物質を用い例えば“チリング(tilling)”のような技術により実体を検証することができる(Slade et al. 2005)。続いて、前記変異体と所望の遺伝的バックグラウンドをもつ植物とを交配し、さらに適切な回数の戻し交雑を実施して本来望ましくない親のバックグラウンドを消去することによって、上記の変異を所望の遺伝的バックグラウンドに導入することができる。
【0071】
変異(改変)ペプチドは当分野で公知の技術を用いて調製することができる。例えば、本発明のポリヌクレオチドをin vitro変異導入に付すことができる。そのようなin vitro変異導入技術は以下の工程を含む:適切なベクターでポリヌクレオチドをサブクローニングする;前記ベクターで“ミュテータ”株(例えば大腸菌XL-1レッド(Stratagene))を形質転換させ、さらに前記形質転換細菌を適切な世代数にわたって増殖させる。別の実施例では、本発明のポリヌクレオチドは、Harayama(1998)によって概略されたDNAシャッフリング技術に付される。これらのDNAシャッフリング技術は、本発明の遺伝子に関連する遺伝子(例えばコムギまたはオオムギ以外の植物種由来のGWD遺伝子)、および/または類似のタンパク質をコードする同じ植物由来の異なる遺伝子を含むことができる。変異/変更DNAから誘導された生成物は、本明細書に記載した技術を用いて容易にスクリーニングして、それらが例えばGWD活性を有するか否かを決定することができる。
変異は、変異導入によって植物に直接導入するか、または2つの親(その一方が導入された変異を含む)の交配によって植物に間接的に導入することができる。改変植物(例えばコムギ植物)はトランスジェニックでも非トランスジェニックでもよい。変異導入を用いて、対象の機能を欠く非トランスジェニック植物を作製できる。本発明はまた、前記植物から生産される穀粒または他の植物部分、および所望の特徴を有する植物の作製に用いることができる植物の増殖材料、例えば培養組織または細胞にも及ぶ。本発明は明らかに、そのような植物またはそのような植物によって生産される穀粒を生産する方法またはその実体を検証する方法に及ぶ。
本発明の植物はチリング(TILLING)(標的誘導によるゲノム内誘導局所損傷、
Targeting
Induced
Local
Lesions
IN Genomes)として知られているプロセスを用いて作製することができる。第一の工程で、導入変異(例えば新規な単一塩基対変化)が、種子(または花粉)を化学変異原で処理することによって植物集団で誘導され、続いて植物を1世代前進させて変異を安定的に受け継がせる。DNAを抽出し、当該集団の全メンバーの種子を保存し、長期間にわたって繰り返し入手できる供給源を作製する。
TILLINGアッセイのために、対象のただ1つの遺伝子標的を特異的に増幅させるためのPCRプライマーを設計する。標的が遺伝子ファミリーの1メンバーである場合、または倍数体ゲノムの部分である場合は、特異性は特に重要である。次に、色素標識プライマーを用いて、多数の個体のプールDNAからPCR生成物を増幅させることができる。これらのPCR生成物を変性させ、再度アニーリングさせてミスマッチ塩基対を形成させる。ミスマッチ(またはヘテロデュープレックス)は、天然に存在する単一ヌクレオチド多形性(SNP)(すなわち集団のいくつかの植物は同じ多形性を保有する可能性が高い)および誘導SNP(すなわち極めてまれな特定の植物が前記変異を示す可能性が高い)の両方を提示する。ヘテロデュープレックス形成後に、ミスマッチDNAを認識しこれを切断するエンドヌクレアーゼ(例えばCel I)を使用することが、TILLING集団内の新規なSNPを発見するために重要である。
【0072】
このアプローチを用いて、数千もの植物をスクリーニングして、任意の遺伝子またはゲノムの特定領域内の単一塩基変化だけでなく小さな挿入または欠失(1−30bp)を有する一切の個体を識別することができる。アッセイされるゲノムフラグメントは、0.3から1.6kbのいずれかのサイズ範囲であり得る。8倍濃縮プールで、1.4kbフラグメント(SNP検出がノイズのために困難な場合フラグメントの末端を勘定から除いておく)およびアッセイ当り96レーンというこの組み合わせは、1回のアッセイ当り100万塩基対までのゲノムDNAのスクリーニングを可能にし、TILLINGを高処理技術にした。
TILLINGはさらにSlade and Knauf(2005)およびHenikoffら(2004)によって記載されている。
効率的な変異の検出を可能にするだけでなく、高処理TILLING技術は天然の多形性の検出にも理想的である。したがって、既知の配列とヘテロデュープレックスを形成させて未知の相同なDNAを調べることによって、多形性部位の数および場所が明らかになる。ヌクレオチドの変化並びに小さな挿入および欠失(少なくともいくつかの反復数多形性(repeat number polymorphism)を含む)の両方が識別される。前記はエコチリング(Ecotilling)と呼ばれた(Comai et al. 2004)。
各SNPは数ヌクレオチド内でのそのおおよその位置によって記録される。したがって、その流動性を基準にして各ハプロタイプはその記録を保管することができる。配列データは、ミスマッチ切断アッセイのために用いられる同じ増幅DNAのアリコットを用い比較的わずかな努力の上乗せにより入手できる。多形性に近いほうの左または右シークェンシングプライマーが単一反応のために選択される。シークェンチャーソフトによって何度もアラインメントが実施され、塩基変化が発見される(前記塩基変化は各事例でゲルバンドにより確認された)。
エコチリングは完全配列決定よりも安価に実施することができ、本方法は現在ほとんどのSNPの発見に用いられている。変異導入植物から得たDNAプールではなく、エコタイプDNAアレイを含むプレートをスクリーニングすることができる。検出はゲル上でほぼ塩基対解析だけであり、バックグラウンドパターンもレーンを通して均質であるので、同一サイズのバンドを対比させることができ、したがって単一工程でSNPを発見し遺伝子型を決定することができる。このようにして、究極のSNPの配列決定が簡単でかつ効率的であるうえに、スクリーニングに用いられる同じPCR生成物のアリコットをDNAシークェンシングに付すことができるという事実によってさらにその利点が高められる。
【0073】
本明細書で用いられる、“遺伝的に連関している”という語句は、マーカーの遺伝子座と第二の遺伝子座が、減数分裂において50%を超えて(例えばランダムではなく)それらが一緒に受け継がれるように染色体上で十分に近接していることを指す。この定義は、マーカー遺伝子座と第二の遺伝子座が同じ遺伝子の部分を形成するという状況を含む。さらにまた、この定義は、マーカー遺伝子座が対象の特質と関連する多形性を含む(換言すれば、マーカー遺伝子座は前記表現型と直接的に“連関”している)状況を含む。したがって1世代につき遺伝子座間で観察される組換えの百分率(センチモルガン(cM))は50未満であろう。本発明の特別な実施態様では、遺伝的に連結された遺伝子座は、染色体上で45、35、25、15、10、5、4、3、2、もしくは1cMまたは前記未満、好ましくは約0cM離れている。
本明細書で用いられる、“他の遺伝的マーカー”は、穀類植物(例えばコムギ)の所望の特質と連結された任意の分子であり得る。そのようなマーカーは当業者には周知であり、特質を決定する遺伝子に連結された分子マーカーが含まれる。前記特質は、例えば耐病性、収量、植物の形態、穀粒の質、他の休止状態の特質、例えば穀粒の色、種子のギベレリン酸含有量、植物の高さ、花の色などである。コムギのそのような遺伝子の例は、茎さび病耐性遺伝子
Sr2または
Sr38、縞状さび病耐性遺伝子Yr10またはYr17、線虫耐性遺伝子、例えば
Cre1および
Cre3、ドウの強度を決定するグルテニン遺伝子座の対立遺伝子、例えば
Ax、
Bx、
Dx、
Ay、
Byおよび
Dy対立遺伝子、半矮小生育性(したがって倒れにくい)を決定する
Rht遺伝子(Eagles et al. 2001;Langridge et al. 2001;Sharp et al. 2001)である。
マーカー支援選別は、古典的育種プログラムで反復親との戻し交雑時に必要なヘテロ接合植物の選別のためによく知られた方法である。各戻し交雑世代の植物集団は、対象の遺伝子について通常は戻し交雑集団で1:1の比で存在するヘテロ接合体で、分子マーカーは当該遺伝子の2つの対立遺伝子を区別するために用いることができる。例えば若いシュートからDNAを抽出し、移入された特質について特異的マーカーにより試験することによって、更なる戻し交雑のための植物の初期選別が達成され、一方、エネルギーおよび供給源はより少数の植物に集中される。
GWDまたは他の遺伝子の対立遺伝子を検出することができる当分野で公知の分子生物学的技術を、本発明の方法で用いることができる。そのような方法には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):核酸の増幅、核酸のシークェンシング、適切に標識したプローブによる核酸のハイブリダイゼーション、一本鎖構造解析(SSCA)、変性グラディエントゲル電気泳動(DGGE)、ヘテロデュープレックス解析(HET)、化学的切断解析(CCM)、触媒的核酸切断または前記の組み合わせの使用(例えば以下を参照されたい)Lemieux, 20007;Langridge et al. 2001)。本発明はまた、デンプンリン酸化および/または分解の変更を付与する(例えば)GWD遺伝子の対立遺伝子と連結された多形性を検出するために分子マーカー技術を使用することを含む。そのような方法は、制限フラグメントの長さにおける多形性(RFLP)、RAPD、増幅フラグメントの長さにおける多形性(AFLP)およびミクロサテライト(単純配列リピート、SSR)多形性の検出または解析を含む。近接して連結されたマーカーは、当分野で周知の方法、例えばLangridgeら(2001)が概説したバルクセグリガント分析によって容易に入手できる。
【0074】
“ポリメラーゼ連鎖反応”(“PCR”)は、複製コピーが、“上流”および“下流”プライマーから成る“プライマー対”または“プライマーセット”およびポリマー化触媒(例えばDNAポリメラーゼおよび典型的には熱安定性酵素)を用いて、標的ポリヌクレオチドから生成される反応である。PCRの方法は当分野で公知であり、例えば“PCR”については以下で教示されている:Ed. M.J. McPheeson and S.G. Moller (2000) BIOS Scientific Publishers Ltd, Oxford。PCRは、ABA 8’-ヒドロキシラーゼ遺伝子を発現する植物細胞から単離したmRNAを逆転写して入手したcDNAで実施することができる。しかしながら、一般的には、植物から単離したゲノムDNAでPCRが実施されるならばいっそう容易であろう。
プライマーは、標的配列と配列特異的態様でハイブリダイズし、PCR中に伸長され得るオリゴヌクレオチドである。アンプリコンまたはPCR生成物またはPCRフラグメントまたは増幅生成物は、プライマーおよび新規に合成された標的配列のコピーを含む伸長生成物である。多重PCR系は、2つ以上のアンプリコンの同時生成をもたらすプライマーの複数セットを含む。プライマーは完璧に標的配列とマッチするか、またはそれらは内部ミスマッチ塩基を含み、前記ミスマッチ塩基は、制限酵素または触媒性核酸認識/切断部位を特異的な標的配列内に導入することができる。プライマーはまた、アンプリコンの捕捉または検出を容易にするために、追加の配列を含むか、および/または改変もしくは標識ヌクレオチドを含むことができる。DNAの加熱変性、プライマーとそれらの相補性配列とのアニーリングおよびアニールしたプライマーのポリメラーゼによる伸長の反復サイクルによって標的配列の指数関数的増幅がもたらされる。標的または標的配列または鋳型という用語は、増幅される核酸配列を指す。
ヌクレオチド配列の直接的配列決定の方法は当業者には周知であり、例えばAusubelらおよびSambrookらの著書で見出すことができる。配列決定は、任意の適切な方法、例えばジデオキシシークェンシング、化学的配列決定または前記の変型によって実施することができる。直接的配列決定は個々の配列の一切の塩基対における変型を決定するという利点を有する。
【0075】
植物
名詞として本明細書で用いられる“植物”という用語は植物体全体を指すが、形容詞として用いられる前記用語は、植物に存在するか、植物から得られるか、植物から誘導されるか、または植物に関連する任意の物質、例えば植物器官(例えば葉、茎、根、花)、単一の細胞(例えば花粉)、種子、植物細胞などを指す。根およびシュートが出現した苗木および発芽種子もまた“植物”の意味に含まれる。本明細書で用いられる“植物部分”という用語は、植物体から得られさらにデンプンを含む1つ以上の植物組織または器官を指す。植物部分には栄養性構造物(例えば葉、茎)、根、花の器官/構造、種子(胚、内乳および種皮を含む)、植物組織(例えば維管束組織、地中組織など)、細胞および前記の子孫が含まれる。本明細書で用いられる“植物細胞”という用語は、植物から得られる細胞または植物内の細胞を指し、プロトプラストまたは植物から誘導される他の細胞、配偶子生産細胞、および全植物を再生する細胞が含まれる。植物細胞は培養細胞でもよい。“植物組織”とは、植物中のまたは植物から得られる(“外植片”)分化組織、または未成熟もしくは成熟胚から誘導される未分化組織、種子、根、シュート、果実、塊茎、花粉、腫瘍組織(例えばクラウンゴール)、および培養植物細胞凝集塊の多様な形態、例えばカルスが含まれる。種子中のまたは種子から得られる例示的植物組織は、内乳、胚盤、デンプン層および胚である。
本明細書で用いられる“穀粒”という用語は、植物の成熟した収穫種子を指すが、前記はまた文脈にしたがい浸潤または発芽後の穀粒も指す。成熟した穀粒(例えばコムギ)は通常約18−20%未満の水分含有量を有する。
本明細書で用いられる“トランスジェニック植物”は、同じ種、変種または栽培種の野生型植物では見いだされない遺伝子構築物を含む植物を指す。すなわち、トランスジェニック植物(形質転換植物)は、形質転換前には含んでいなかった遺伝的物質を含む。本明細書でいう“トランスジーン”は生物工学の分野での通常の意味を有し、組換えDNAまたはRNA技術によって生成または変更され、植物細胞に導入された遺伝的配列を指す。トランスジーンは、植物の細胞もしくは別の植物の細胞、または非植物供給源、または合成配列から入手されるかもしくは前記から誘導された遺伝的配列を含むことができる。典型的には、トランスジーンは人間による操作(例えば形質転換)によって植物に導入されるが、当業者が認知するいずれの方法も用いることができる。遺伝的物質は、好ましくは安定的に植物ゲノムに組み込まれる。導入される遺伝的物質は、同じ種で天然に存在する配列を含むことができるが、それらはエレメントが再編成された順序にあるか、または異なる編成を有し、例えばアンチセンス配列である。そのような配列を含む植物は、“トランスジェニック植物”として本明細書に含まれる。“非トランスジェニック植物”は、組換えDNA技術による遺伝的物質の導入によって遺伝的に改変されていない植物である。好ましい実施態様では、トランスジェニック植物は、導入されたそれぞれまたは全ての遺伝子(トランスジーン)についてホモ接合体であり、したがってそれらの子孫は所望の表現型をセグリゲートすることはない。
【0076】
本明細書で用いられる“対応する非トランスジェニック植物”は、トランスジェニック植物に対して同質遺伝子系統であるが対象のトランスジーンをもたない植物を指す。好ましくは、対応する非トランスジェニック植物は、対象のトランスジェニック植物の前駆体植物と同じ栽培種または変種、または当該構築物を欠く兄弟植物系統(しばしば“セグリガント”と称される)と同じ栽培種または変種であるか、または“空ベクター”構築物で形質転換された、非トランスジェニック植物であり得る、栽培種または変型植物と同じ植物である。本明細書で用いられる“野生型”は、本発明により改変されていない細胞、組織または植物を指す。野生型細胞、組織または植物は、外因性核酸の発現レベルまたは特質改変の程度および性質を、本明細書に記載したように改変した細胞、組織または植物と比較するためのコントロールとして用いることができる。
本発明の文脈で規定されるトランスジェニック植物には組換え技術を用いて遺伝的に改変した植物の子孫が含まれ、この場合、子孫は対象のトランスジーンを含んでいる。そのような子孫は、一次トランスジェニック植物の自家受粉によって、またはそのような植物と同じ種の別の植物との交配によって入手することができる。前記は、本明細書に規定した少なくとも1つのタンパク質/酵素の所望の植物または植物器官における生産を調節することができよう。トランスジェニック植物部分には、トランスジーンを含む前記植物の全ての部分および細胞、例えば培養組織、カルスおよびプロトプラストが含まれる。
いくつかの任意の方法を用いて、形質転換植物中のトランスジーンの存在を決定することができる。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、形質転換植物に固有の配列を増幅し、増幅生成物をゲル電気泳動または他の方法によって検出することができる。DNAを通常の方法を用いて植物から抽出し、特異的DNAを増幅するプライマーを用いてPCR反応を実施する(前記特異的DNAの存在は形質転換植物と非形質転換植物を区別するであろう)。例えば、構築物に読み込まれている形質転換ベクターのDNA領域を増幅するプライマーが設計され、リバースプライマーは対象の遺伝子から設計される。これらのプライマーは、植物の形質転換が成功している場合はフラグメントのみを増幅するであろう。陽性形質転換を確認するまた別の方法は、当分野で周知のサザンブロットハイブリダイゼーションによるものである。形質転換された植物がまた識別され得る。すなわち、非形質転換または野生型植物から、それらの表現型、例えば選別可能マーカー遺伝子の存在によって付与される表現型、または植物の種子から得られるデンプンのリン酸含有量の低下という表現型によって付与される表現型、または関連する表現型、例えば生産能力の向上によって形質転換植物が区別される。
本明細書で用いられる“発芽”は、浸潤後の種皮から根端が出現することを指す。“発芽率”は、浸潤後一定の期間で(例えば7または10日)発芽した種子の集団内の百分率を指す。種子集団を数日にわたって毎日判定し、一定期間の発芽百分率を決定することができる。
本発明の種子に関連して、本明細書で用いられる“実質的に同じ発芽率”という語句は、トランスジェニック種子の発芽率が同質遺伝子系で非トランスジェニックな種子の発芽率の少なくとも90%であることを意味する。発芽率は当分野で公知の技術を用いて算出できる。
【0077】
本発明の実施によって提供される植物または本発明の実施で用いることが意図される植物には被子植物および裸子植物が含まれ、被子植物内では単子葉植物および双子葉植物の両方が含まれる。好ましい実施態様では、本発明の植物は作物植物、例えば穀類および豆類、トウモロコシ、コムギ、ジャガイモ、タピオカ、コメ、ソルガム、アワ、カッサバ、オオムギまたはエンドウである。前記植物は、食用の根、塊茎、葉、茎、花または果実の生産のために栽培することができる。
いくつかの実施態様では、トランスジェニック植物は穀類植物である。穀類植物の例には、コムギ、オオムギ、イネ、トウモロコシ、ソルガム、エンバクおよびライムギが含まれるが、ただしこれらに限定されない。より好ましくは、穀類植物はコムギ、オオムギ、トウモロコシまたはソルガムである。例示的な例にはコムギ、イネおよびソルガムが含まれる。
本明細書で用いられる“コムギ”という用語はトリチクム(Triticum)属の任意の種を指す(その前駆植物と同様に他の種との交雑により生じた前記の子孫を含む)。コムギは“六倍体コムギ”および“四倍体コムギ”を含み、前者は、42の染色体を含むAABBDDのゲノム編成を有し、後者は28の染色体を含むAABBのゲノム編成を有する。六倍体コムギには、T. アエスチヴム(T. aestivum)、T. スペルタ(T. spelta)、T. マチャ(T. macha)、T. コンパクツム(T. compactum)、T. スファエロコックム(T. sphaerococcum)、T. ヴァヴィロヴィー(T. vavilovii)、および前記の種間雑種が含まれる。四倍体コムギには、T.デュルム(T. durum)(デュラムコムギまたはトリチクム・ツルギドゥムssp.デュルム(Triticum turgidum ssp. Durum)とも称される)、T. ジコッコイデス(T. dicoccoides)、T. ジコックム(T. dicoccum)、T. ポロニクム(T. polonicum)および前記の種間雑種が含まれる。さらにまた、“コムギ”という用語には六倍体または四倍体の潜在的祖先、トリチクムsp.、例えば、AゲノムのためにはT. ウアルツ(T. uartu)、T. モノコックム(T. monococcum)またはT. ボエオチクム(T. boeoticum)、Bゲノムのためにはアエギロプス・スペルトイデス(Aegilops speltoides)、およびDゲノムのためにはT. タウシー(T. tauschii)(アエギロプス・アクアローサ(Aegilops squarrosa)またはアエギロプス・タウシー(Aegilops tauschii)としても知られている)が含まれる。本発明で使用されるコムギの栽培種はまた上記に列挙した種のいずれか(ただしこれらに限定されない)に属し得る。さらに含まれるものは、有性交雑の親としてトリチクムsp.を非トリチクム種(トリチカーレ(Triticale)を含むが、ただし前記に限定されない)(例えばライムギ[ SEcale cereal])とともに用い通常の技術によって作製される植物である。好ましくは、前記コムギ植物は穀粒の産業的生産に適切で、例えば、当業者に公知の農学的特徴を有する、六倍体コムギまたはデュラムコムギの流通変種である。
本明細書で用いられる“オオムギ”という用語はホルデウム(Hordeum)属の任意の種を指し、その祖先とともに他の種との交雑によって作製されるその子孫も含まれる。好ましくは、前記植物は、産業的に栽培されるホルデウム種であり、例えば、ホルデウム・ヴルガレ(H. vulgare)の株または栽培種または変型、または穀粒の産業的生産に適したものである。
【0078】
食品製造
本発明は生産能力が向上した改良植物を提供する。いくつかの実施態様では、前記は、食品用に収穫される植物で有用である。
明らかに食用植物には果実、ナッツ、または葉、茎、果実、塊茎、種子およびさやが収穫される野菜が含まれる。
別の特徴では、本発明は、食品または飼料製造に有用な穀類植物および穀粒(好ましくはコムギ)を提供し、前記穀粒はリン酸含有量が改変され、さらに場合によってデンプン分解酵素レベルの改変を示す。好ましくは前記穀粒が得られる植物は、発育中の内乳のGWD活性レベルの低下を示す。本発明の植物は食物生産、特に産業的食品製造に有用である。そのような食品製造は、粉、ドウまたは産業的食品製造の成分となり得る他の製品の製造を含むことができよう。食品製造での使用に所望される実施態様では、前記植物の種子または穀粒は、野生型植物と比較して本質的に同じかまたは増加したリン酸含有量を示し、分解酵素、特に1つ以上のアミラーゼ(例えばα-アミラーゼまたはβ-アミラーゼ)の活性レベルは、トランスジーンの存在または導入された変異(穀粒中のそのような分解酵素をコードする遺伝子の発現を低下させる)によって低下する。そのような穀粒から得られた粉またはドウは、デンプンの粘性の改変および/またはアミラーゼレベルの低下により焼成または他の食品製造のために望ましい特性を有する。動物飼料のためにまたは例えばバイオエタノール製造のような工業的使用のために所望されるまた別の実施態様では、前記植物の種子または穀粒は、野生型植物と比較して低いリン酸含有量を示し、分解酵素、特に1つ以上のアミラーゼ(例えばα-アミラーゼまたはβ-アミラーゼ)の活性レベルは、本明細書で具体的に示すようにリン酸含有量の低下と一体化して増加する。そのような植物から得られる穀粒またはデンプン製品は、飼料として用いられたとき消化性の向上を示すか、またはエタノール製造に用いられたときは変換速度または変換効率の向上を示す。
前記植物の望ましい遺伝的バックグラウンドでは農学的収量および他の特徴が考慮されるであろう。そのような特徴には、冬型もしくは春型を有することが望ましいか否か、農学的成果、耐病性および非生物学的ストレスへの耐性が含まれよう。オーストラリア人が使用するについては、コムギ植物の変更されたデンプンの特質をコムギ栽培種、例えばBaxter、Kennedy、Janz、Frame、Rosella、Cadoux、Diamondbirdまたは他の一般的に栽培されている変型と交雑させたいと考えるかもしれない。他の栽培領域については、他の変型が適合するであろう。好ましくは、前記植物(好ましくはコムギ、本発明の変型)は、少なくともいくつかの栽培領域の対応する種々の野生型の105%未満、より好ましくは110%未満、さらに好ましくは115%未満の収量を提供する。収量は管理された野外試験で容易に測定することができる。
さらに別の実施態様では、穀粒のデンプン含有量は少なくとも約25%、35%、45%または55%から65%(w/w)であり、好ましくは野生型と比較して増加する。産業的に栽培される野生型コムギは、いくぶん栽培される栽培種に左右されるが通常は55−65%の範囲のデンプン含有量を有する。あるいは、本発明の種子または穀粒は、野生型植物の穀粒のデンプン含有量と比較して少なくとも90%の含有量、好ましくは少なくとも95%、100%、102%または105%のデンプン含有量を有する。他の望ましい特徴には穀粒の製粉性能、特に穀粒の硬さが含まれる。コムギ植物の価値をより高くすることができる別の特徴は、穀粒からデンプンが抽出される程度であり、抽出率が高いものがより有用である。穀粒の形状もまた植物の産業的有用性に影響を与えることができる別の特徴であり、したがって、穀粒の形状は製粉の容易さまたは製粉の仕方に影響を及ぼすことができる。
デンプンは、標準的な方法、例えばSchulmanら(1991)の方法を用いて本発明の穀粒(例えばコムギの穀粒)から容易に単離される。工業的な規模では、湿潤または乾燥製粉を用いることができる。デンプン顆粒のサイズはデンプン加工工業では重要で、この場合より小さなB顆粒からより大きなA顆粒が分離される。
【0079】
食物製品
本発明はまた、本発明の植物または穀粒から得られる生成物、好ましくはデンプンを含む生成物を用いて製造される食品、飲料または医薬調製物を包含する。そのような食物製品の製造は、粉、ドウ、または産業的食品製造における成分となり得る他の生成物の製造を含むことができよう。本発明の穀粒または前記から誘導される生成物を、ヒトにより消費される多様な食品での利用に用いることができる。本明細書で用いられる“ヒト”はホモ・サピエンス(Homo sapiens)を指す。
変更コムギ植物から得られる穀粒は食物加工工程で容易に使用することができ、したがって、本発明は、本発明の植物の加工穀粒または全粒から得られる、製粉し、粉砕し、粗引きし、小粒にし、または圧延した穀粒もしくは製品(粉を含む)を含む。これらの製品は続いて多様な食物製品、例えば穀粉製品(例えばパン、ケーキ、ビスケットなど)または食品添加物(例えば膨張剤または結合剤)で使用されるか、または飲料、麺、パスタまたは即席スープの製造に使用することができる。穀粒または本発明の穀粒から得られる製品は、特に朝食用シリアルまたは押し出し製品で所望される。本発明のデンプンはまた、菓子工業で有用であるか、または弱い力での成形および短い硬化時間を可能にする、高強度ゲルの生成に用いることができる。本発明のデンプンはまた、例えばたっぷりの油で揚げるジャガイモまたは他の食品の油の吸収を低下させるためのコーティングとして用いることができる。前記デンプンは、脂肪または油製品(例えばマーガリンまたはショートニング、サラダドレッシング)、卵製品(例えばマヨネーズ)、酪農製品(例えばアイスクリーム、ヨーグルトまたはチーズ)、穀類製品(例えばトウモロコシまたはコムギ粉)、果実ジュース、他の食品または食品材料に加えることができる。また変更デンプンは、飲料または食品(例えばパン、ケーキ、ビスケット、朝食用シリアル、パスタ、麺、またはソース)に加工することができる。
パンでは、小麦粉または全粒小麦粉の形のデンプン製品は、10%(w/w)以上の非変更小麦粉または全粒小麦粉で代替することができ、好ましくは少なくとも30%、さらに好ましくは少なくとも50%の非変更小麦粉または全粒小麦粉で代替することができる。したがって、処方は、粉90部、変更コムギデンプン10部、脂肪2部、塩2部、改善剤1部、イースト2.5部であり得る。パン製造は、迅速ドウ技術または当業者に公知の他の技術によって実施できる。
あるいは、本発明のデンプン製品は穀粉系パスタ製品に加えることができる。このパスタ組成物に用いることができる本発明のデンプンの量は、穀粉材料の全量を基準にして10−100%(w/w)の範囲、特に10から80%の範囲であり得る。適切な他の穀粉系材料は当業者には容易に選択されるであろう。他の材料(例えば乾燥もしくは液状卵(卵黄、白味または両方)または高タンパク質物質(例えば牛乳タンパク質または魚類タンパク質))もまた前記組成物に添加することができる。ビタミン、ミネラル、カルシウム塩、アミノ酸、緩衝剤(例えばリン酸水素二ナトリウム)、香料、ゴム、グルテンまたはグリセリルモノステアレートもまた添加することができる。
本発明の食用植物の他の部分をヒトの消費用食品または動物が使用する飼料として用いることができる。例えば、葉、茎、根、塊茎、果実、さやまたは前記のいずれかに由来する本発明の細胞を含む前記の部分をヒトまたは動物の消費のために用いることができる。未加工もしくは加工果実または野菜としての植物の使用は当分野で周知であり、そのような使用は本発明に包含される。本発明の植物およびその部分の消化性の向上は、動物の飼料として、例えばブタ、ウシ、ウマ、家禽(例えばニワトリ)および他の動物のための飼料として前記の材料の使用に利点を提供することができる。特に、前記製品のデンプンの消化性の向上から動物飼料の変換効率、したがって生長速度の向上に対して利点が期待される。
前記食品もしくは飲料または医薬調製物は小売用にまたは大容量販売形として容易に包装することができる。本発明はまた、本発明の食品、飲料または医薬調製物を調製する方法、およびそのような食品または飲料を調製するための手段または指示を提供する。前記方法は、植物または植物の部分を採集する工程、穀粒を他の植物部分から分離する工程、粉砕し、抽出し、製粉し、すり潰し、調理し、缶詰にするか、または当分野で公知の他の加工工程を含むことができる。前記方法または手段もしくは指示には、本発明の植物の生成物を加工するか、および/または前記を他の食品成分と混合する工程、例えば混合物または生成物を例えば少なくとも100℃に加熱または焼成する工程を含むことができる。前記方法は、前記製品を販売しやすいように前記を包装する工程を含むことができる。
【0080】
飼料および動物の使用
本発明の植物およびそれらから得られるかまたはそれらから生産された生成物、好ましくは採集された生成物(例えば穀粒)は動物用飼料として利点を有する。理論に拘束されないが、前記は、本発明の生成物の消化性および生体利用性の向上によると考えられる。好ましい実施態様では、前記は、本発明の生成物のアミラーゼレベルの増加と一体である。本発明の生成物中のデンプンのリン酸含有量の低下それ自体は消化性を低下させるかもしれないが、これは、アミラーゼ(特にα-アミラーゼ)レベルの増加によって代償され、正味の効果は消化性を向上させた。このことは、動物生成物への飼料の変換効率に対して特別な利益を有し、したがって前記は、未改変の対応する野生型生成物と比較して少なくとも2%、好ましくは少なくとも5%、少なくとも7%の増加を提供する。この利点は、若い動物、例えば雛、子牛もしくは子羊または完全なサイズへ育成されつつあるより齢の進んだ動物について観察され得る。飼料変換効率は当分野で公知の方法を用いて容易に測定することができる。
【0081】
工業的使用
本発明の植物生成物(好ましくは穀粒)は、工業製品、例えばエタノールの製造に特別な利点を有する。本明細書に記載したように、生産パラメータの向上(例えば収量の向上)と観察されたデンプンの糖への変換の向上との一体化は特別な利点を提供する。例えば、デンプンから糖への変換で発酵のために本発明の生成物を使用することによって、外部から添加されるアミラーゼの必要量は低下し、さらにより低い温度での稼動、したがってエネルギーコストの削減が可能になる。
本発明を以下の非限定的実施例によってさらに説明する。
【実施例1】
【0082】
材料と方法
穀粒からデンプンの抽出:
成熟種子をMicroMill(プロトタイプ)(Metefem)で製粉し、製粉材料を0.5mmのふるいに通した。得られた全粒小麦粉を秤量し、50%重量に等しい水を添加して組織を軟化させた。水と粉を機械的に混合して生地を作った。過剰の水を添加し、グルテンからデンプンを抽出し、続いてデンプン懸濁物を100μmのフィルターでろ過し残屑を除去した。抽出を4回繰り返すか、または生地に残ったデンプンがなくなるまで繰り返した。遠心(5000rpm、4℃にて10分)によってデンプンをペレットにした。タンパク質キャップを除去し、デンプンを過剰な水に再度懸濁させた。この洗浄を3回繰り返した。抽出デンプンはFTS Freeze Drier(モデル番号FD-3-55D-MP)で凍結乾燥させた。この方法によって、10グラムの穀粒から6gの粉が得られ、続いて3gのデンプンが得られた。
葉の材料からデンプンの抽出:
Delvalleら(2005)が記載した方法を用いて植物の葉からデンプンを抽出した。葉のサンプルを凍結乾燥させ、続いて15−25mLの抽出緩衝液(MOPS 100mM(pH7.2)、EDTA 5mM、エチレングリコール10%(w/v))にてPolytronブレンダーですり潰し、この間サンプルを氷上で冷却し続けた。前記混合物を2層のMiraclothフィルターでろ過し、遠心してデンプンを含むペレットを保持した。続いてこのデンプンを4℃にて40分、4000rpmで遠心することにより90%Percollグラディエントを通過させて精製した。
デンプンサンプル中のリン酸およびグルコース-6-リン酸レベルの測定:
デンプン中の全リン酸含有量をEkman and Jager(1993)から改変したマラカイトグリーン法を用いて決定した。10mgの乾燥デンプンを500μLの10% DMSOに再懸濁させることによって溶解させ、この混合物を10分間煮沸した。200μLの溶液を200μLのClark and Lub緩衝液(0.054M KCl、0.145M HCl);120μLのH
2O;80μLのHCl(4M)および200μLのマラカイトグリーン溶液3:1(マラカイトグリーン0.2%溶液:4MのHCl中の(NH
4)
6Mo
7O
24(4H
2O)の10%溶液)と混合した。前記の酸はC6およびC3からリン酸基を加水分解し、遊離リン酸基をマラカイトグリーンアッセイで測定する。分光光度計を用い660nmで光学密度を測定した。標準曲線もまた、デンプンサンプルのように処理した0.01から5mMのG1P溶液標準物を用いて調製した。リン酸含有量は通常トリプリケートサンプルで決定し、平均はデンプン1mg当りのnmoleとして表した。
グルコース-6-リン酸(G6P)レベルは、Delrueら(1992)の方法を応用したアミログルコシダーゼアッセイによって測定された。グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼをこのアッセイで以下のように特異的に用いた。水に10%のDMSOの500μLに5mgの乾燥デンプンを溶解し、10分間煮沸して前記デンプンを溶解させた。希釈シリーズをデュープリケートで作成した。70μLのアミログルコシダーゼ溶液(AGS、Enzytecのデンプンアッセイキット)による55℃で2時間の作用によって各サンプルのデンプンを分解した。前記の反応は、350μLの水および350μLの溶液1(TEA緩衝液(pH7.6)、NADP、ATP(Enzytecのデンプンアッセイキットから))を添加することによって停止させた。以下の試薬を添加する前に340nmでOD(OD
oと呼ぶ)を測定した。デンプン量の測定を目的とする第一のシリーズのために、5μLの溶液混合物(ヘキソキナーゼおよびG6PdH(0.7mL当り200U/100U(Enzytecのデンプンアッセイキットから))を添加した。G6P量の測定を目的とする第二のシリーズのために、5μLのG6PdHをヘキソキナーゼの非存在下で添加した(G7877-2KU(Sigma)、18ユニット/mL)。前記混合物を25℃で15分インキュベートし、ODを340nmで測定した。この測定をODが安定するまで10分毎に繰り返した(ODf)。
デンプンの量またはG6Pの量は以下の等式を用いて算出した:
[デンプンまたはG6P][mg. mL
-1]=(ODf−ODo)x1.069/希釈係数
第一のシリーズでは各サンプルにおけるデンプンの濃度および量が測定され、一方、第二のシリーズではデンプンに存在するG6Pの量が測定された。
【0083】
デンプン顆粒のサイズ分布:
単離デンプンサンプル(水のデンプンスラリーとして調製)の顆粒サイズ分布は、レーザー回折粒子サイズ分析装置(Model 2600c Droplet and Particle Sizer, Malvern Instruments, Malvern, UK)を用いて決定した。“A顆粒”は、前記分析装置で決定したとき、直径が10μmより大きいものと定義された。“B顆粒”は直径が10μm未満と定義された。実施例で明らかにした顆粒サイズはB顆粒の頻度として表し、デンプン顆粒の全体積の百分率として示した(Stoddard, 1999)。
デンプンの特性:
デンプンサンプルをイソアミラーゼで脱分枝しアミロペクチンからグルコシド鎖を前記サンプル中に遊離させた後、デンプンの鎖の長さの分布を分析した。O’Sheaら(1998)が記載したように、アルゴン-LIF検出によるP/ACE 5510キャピラリー電気泳動系(Beckman)を用い、発蛍光団支援炭水化物電気泳動(FACE)を実施した。
Pyris 1示差走査熱量計(Perkin Elmer, Norwalk CY, USA)で、各デンプンサンプルのゼラチン化温度プロフィルを測定した。この分析は、デンプンをゼラチン化するために必要なエネルギーを直接測定する。サンプルは、デンプンを水に1:2(乾燥デンプン:水)の割合で予め混合することによって調製した。DSC皿に前記混合物を満たし密封する。使用した参照は、空の皿であった。2つの内乳(ゼラチン化およびアミロース-脂質解離)の各々について4つの測定を実施した:最初の(開始)温度、ピーク温度、最終温度およびエンタルピー。
デンプン溶液の粘性をRapid-Visco-Analyser(RVA, Newport Scientific Pty Ltd, Warriewood, Sydney)で、例えばBateyら(1997)が報告した条件を用いて測定した。測定したパラメータにはピーク粘性(最大高温ペースト粘性)、保持強度、最終粘性およびペースト形成温度が含まれる。
小麦粉またはデンプンの膨潤体積をKonik-Roseら(2001)の方法にしたがって決定した。水の取り込みは、小麦粉またはデンプンを水と90℃で混合しゼラチン化した材料を採集する前および後でサンプルを秤量することによって測定した。
ゲル浸透クロマトグラフィーによるデンプンの分画:
セファロースカラムでのゲル浸透クロマトグラフィーを用いて、デンプンをアミロペクチン(より大きな分子)およびアミロース(より小さな分子)分画に分離させた。500μLの10mM NaOHに溶解した1から2.5mgの量のデンプンを、10mMのNaOHで平衡化したセファロースCL2Bカラム(内径0.5cmx長さ65cm)に適用し、前記溶液を用いてクロマトグラフィーを実施した。250から300μLの分画を1分画/1.5分の速度で採集した。各分画のグルカンをBanksら(Starch/die Starke, 23:118-124, 1971)にしたがってヨード-多糖類相互作用によって、またはグルコースアッセイ(Enzytec)によって検出した。
デンプンサンプルのアミロース含有量もまた、以下のようにわずかに改変したMorrison and Laignelet(1983)の比色(ヨード測定)法によって決定した。ほぼ2mgのデンプンを厳密に(0.1mgの精度)2mLチューブ(蓋にゴムのパッキングを取り付けたねじ蓋付き)で秤量した。脂質を除去するために、85%(v/v)のメタノール1mLを前記デンプンと混合し、このチューブを65℃の水浴中で1時間、時々ヴォルテックスミキサーで攪拌しながら加熱した。13,000gで5分間遠心した後、上清を注意深く取り除き、抽出工程を繰り返した。続いてデンプンを65℃で1時間乾燥させ、尿素-ジメチルスルホキシド溶液(UDMSO;9体積のジメチルスルホキシド:1体積の6M尿素)に、2mgのデンプン(上記のように秤量)につき1mLのUDMSOを用いて溶解させた。前記混合物を直ちにヴォルテックスミキサーで激しく攪拌しデンプンを完全に溶解させた。デンプン-UDMSO溶液のアリコット(50μL)を20μLのI
2-KI試薬(水1mL当り2mgのヨウ素および20mgのヨウ化カリウムをふくむ)で処理した。前記混合物を水で1mLにした。200μLをマイクロプレートに移し、Emax Precision Microplate Reader(Molecular Devices, USA)を用いて吸収を読むことによって、650nmでの混合物の吸収を測定した。0から100%のアミロースおよび100から0%のアミロペクチンを含む標準サンプルをジャガイモアミロースおよびトウモロコシ(またはジャガイモ)アミロペクチン(Sigma)から作成し、試験サンプルのように処理した。アミロース含有量(アミロース百分率)を、標準サンプルの吸収から誘導した回帰等式を用いて前記吸収値から決定した。
【0084】
アルファ-アミラーゼ酵素アッセイ:
小麦粉または全粒小麦粉サンプルのアルファアミラーゼ活性を、Ceralph Amylaseアッセイキット(Megazyme International Ireland Ltd)を製造業者の推奨にしたがって用い決定した。試薬ミックスから添加されたオリゴ糖のアルファアミラーゼのエンド作用による加水分解に際して、混合物に存在する過剰量のアルファ-グルコシダーゼはオリゴ糖の定量的加水分解をもたらし、グルコースおよび遊離p-ニトロフェノールを生じる。本質的には、穀類抽出物のアリコットを基質混合物と40℃で20分インキュベートし、さらにこの反応を停止させ、弱アルカリ溶液の添加によって発色させた。400nmでの吸収(分析サンプル中のアルファ-アミラーゼレベルに比例する)を測定した。結果は、粉または抽出物1g当りのCU(セラルファ(ceralpha)ユニット)で表した。
コムギ未成熟胚の粒子ボンバードメントによるコムギの形質転換:
Caoら(Plant Cell Reporter, 11:586-591, 1992)が以前に記載したCaCl
2/スペルミジン沈殿によって、金粒子を以下の2つのプラスミドの精製DNAで被覆した:選別可能マーカー遺伝子(
npt)をコードする2μgのプラスミドDNA、この事例ではpCMneoSTLS2(Mass et al. Mol Breeding, 3:15-28, 1997)および対象の遺伝子をコードする2μgのプラスミドDNA、この事例ではpBx17-GWD_IR。この金粒子/DNA混合物は、平均サイズ1.5−3.0μmの金粒子30mg/mLを含んでいた。ボンバードメントのために、50の未成熟胚(開花後12日、長さが約1.5−2mm)を単離し、胚軸を除去した。前記を高浸透圧培地MSM(150g/Lのマルトースおよび0.1g/Lのミオイノシトールを含むMS培地)を含む寒天プレートの中心に置き、直径が約3cmの標的エリアを作成した。Vainら(Plant Cell Reporter, 12:84-88, 1993)が記載したように、この標的胚をMSMプレートで4時間インキュベートし(前処理し)、続いて部分的真空下(約85kPa)でPDS-1000/Heバイオリスティックデリバリ系を用いて、5μLの被覆金粒子混合物のボンバードメントを実施した。ロードDNAと標的胚との間の距離は9cmで、用いた圧力は900kPaであった。
形質転換体の再生/選別:
プラスミド混合物のボンバードメントの24時間後に、胚をMSR培地(30g/Lのシュクロース、0.1g/Lのミオイノシトールおよび2.5mg/Lの2,4-Dを含むMS培地、pH5.9)に移し、体細胞胚の誘導のために暗所にて14日間24℃でインキュベートした。続いて培養を、選別物質として50mg/Lのジェネチシン(G418)を含む選別培地MSWG50(30g/Lのシュクロース、0.1g/Lのミオイノシトールを含むMS培地、pH5.9)に移し、明(約25μE m
-2s
-1)16時間/暗8時間の様式で維持した。続いて前記を選別培地MSWG50の新しいプレートに3週間毎に移しかえた。形成された苗を更なる生育のために新しいMSWG50に1回継代した。高さが約10から15cmの苗を養液栽培ベンチの土壌に2週間移植し、続いて24℃(昼)および18℃(夜)の温度様式のガラスハウスに移した。再生植物内のトランスジーンの存在は、組織サンプルからDNAを抽出し、トランスジーン特異的プライマーを用いてPCRを実施することによって確認した。
植物サンプルのRNA抽出および定量的RT-PCR:
RNeasy Plant Mini Kit(QIAGEN, Hilden, Germany)を用い供給業者の指示にしたがいながら、葉のサンプルから全RNAを抽出した。Invitrogenの第一鎖合成キットをOligodTプライマーとともに用いてcDNA合成を実施した。ブリリアントSYBR Green QPCR MasterMix(STRATAGENE)を用いることによって、特異的増幅が検出された。特異的な蛍光が520nmで検出され、MX4000解析ソフトを用い特異的な標準曲線と比較することによって解析した。一工程RT-PCRもまたQiagen一工程RT-PCRキット(QIAGEN, Hilden, Germany)を用いて実施した。
【実施例2】
【0085】
コムギおよび他の穀類のGWDおよびPWD遺伝子の識別
ジャガイモのR1タンパク質配列のアミノ酸配列(アクセッション番号AAK11735)およびアラビドプシスのPWDタンパク質のアミノ酸配列(NP_194176)をクェリー配列として用いて、BLASTNプログラムによりNCBIデータベースのコムギのEST配列を調べた。一緒にアラインメントを実施して2273塩基対配列(配列番号:1)にアッセンブリングできる17のEST(下記に列挙)が識別された。
dbj|CJ626658.1| CJ626658 Y.Ogihara未公開cDNAライブラリー.
gb|CV773056.1| FGAS067452 Triticum aestivum FGASライブラリー.
dbj|CJ694861.1| CJ694861 Y.Ogihara未公開cDNAライブラリー.
gb|CA743865.1| wri1s.pk006.k23 wri1s Triticum aestivum cDNA.
gb|BQ240991.1| TaE05010D07R TaE05 Triticum aestivum cDNA.
dbj|CJ696711.1| CJ696711 Y.Ogihara未公開cDNAライブラリー.
dbj|CJ730334.1| CJ730334 Y.Ogihara未公開cDNAライブラリー.
gb|BQ237936.1| TaE05010D07F TaE05 Triticum aestivum cDNA
.
gb|CK197520.1| FGAS005996 Triticum aestivum FGAS library.
dbj|CJ650741.1| CJ650741 Y.Ogihara未公開cDNAライブラリー.
dbj|CJ542660.1| CJ542660 Y.Ogihara未公開cDNAライブラリー.
gb|CK197837.1| FGAS006317 Triticum aestivum FGAS library.
dbj|CJ590517.1| CJ590517 Y.Ogihara未公開cDNAライブラリー.
gb|BE516396.1| WHE609_A08_A15ZAコムギABA-処理胚.
gb|DY742247.1| EST0817低温処理コムギcDNAライブラリー.
dbj|CJ673389.1| CJ673389 Y.Ogihara未公開cDNAライブラリー.
dbj|CJ566400.1| CJ566400 Y.Ogihara未公開cDNAライブラリー.
【0086】
この配列を用いてTIGrデータベース(http://www.tigr.org/tdb/e2k1/tae1/)でコムギの配列を調べた。この調査によって、2273塩基対配列とオーバーラップする3677塩基対cDNA配列(配列番号:2)(TIGrアクセッション番号TA53350_4565)が得られた。これら2つの配列は、オーバーラップ領域で99%同一性を示した。3677ヌクレオチド配列によってコードされる予想アミノ酸配列をNCBIタンパク質データベースのタンパク質配列と比較したとき、前記はジャガイモおよびアラビドプシス由来のR1タンパク質配列と高い類似性示すことが観察された(ぞれぞれ71%および67%同一性)。前記コムギの配列はまた、イネゲノムの配列(Os06g0498400)と高度の類似性を示し、おそらくイネの同族体とであると考えられた。コムギのcDNA配列はイネのヌクレオチド配列と87%同一であり、アミノ酸配列は88%同一であった。コムギのGWDヌクレオチド配列は配列番号:2として提供され、アミノ酸配列は配列番号:3として提供されている。
コムギのcDNA配列をイネのゲノム配列(Os06g0498400)と比較すると、イネの遺伝子のエクソン/イントロン構造を決定することができ、コムギの推定エクソン構造が決定された(表8)。
オオムギのEST配列の調査によって、エクソン23および3’の領域でコムギおよびイネのGWD配列との類似性を示す、663ヌクレオチドのオオムギEST BU993423(配列番号:4)が同定され、これは相同なオオムギ遺伝子に対応すると考えられる。4302ヌクレオチド別のコムギcDNA(配列番号:5)が同定され、これはジャガイモR1タンパク質に類似するデンプン結合ドメインを有するタンパク質をコードしていた。
3677bpのコムギcDNA配列は、ヌクレオチド382から3409までの3027bpのオープンリーディングフレーム(ORF)を含んでいた。前記cDNAをイネのcDNAとアラインメントを実施したとき、2つの配列がイネのcDNAの完全長にわたって類似していたということで、このcDNAは完全長であると思われる。このORFは1009アミノ酸の配列のタンパク質をコードし、計算による分子量は112.8kDであった。前記タンパク質配列は、以下の仮定的機能を有する3つの保存的ドメインを含んでいた:約アミノ酸100から300までのデンプン結合ドメイン、約アミノ酸200から300までのリン酸受容部位、および約アミノ酸740からC-末端までのPEP/ピルビン酸結合ドメイン(このドメインはATPからAMPへの変換を可逆的に触媒すると考えられる)。
PWDをコードするアラビドプシス配列と相同性を有する、他の2つのコムギEST、CA484881およびCO347457が確認された。これらは前記2273bpの配列とマッチしなかったが、アラビドプシスのデンプン結合ドメインおよびPWDタンパク質と相同性を示すポリペプチドをコードしていた。特に、これら2つのPWD EST配列は、遺伝子ATGWD2/GWD3/PWD(ホスホグルカン、水ジキナーゼ)[アラビドプシス・タリアナ](NP_194176)のアミノ酸973−1153(82%同一性)およびアミノ酸1172から1196(88%同一性)とそれぞれ類似性を示した。それらはまたイネのPWD(Os12g0297500)と相同性を示した。コムギPWD遺伝子の完全長配列は、EST配列を基にしたプライマーをもちいる5’-および3’-RACE技術、または当分野で公知の他の方法によって単離することができる。
更なる検索によって、コムギGWD cDNA配列(配列番号:2)と相同であり、したがってソルガムGWD遺伝子の部分と思われるソルガムの4つのESTが同定された。前記は以下のとおりである:アクセッション番号BI245998(配列番号:11)、コムギGWDヌクレオチド配列(配列番号:2)のヌクレオチド2057から2542位と83%同一性のヌクレオチド配列を有する;アクセッション番号CF074015、コムギGWDのヌクレオチド874から1559と89%同一の配列を有する;アクセッション番号EH406623、コムギGWDのヌクレオチド1323から1885と89%同一の配列を有する;およびアクセッション番号CD423248、コムギGWDのヌクレオチド2517から3434と85%同一の配列を有する。ソルガムGWD遺伝子の完全長配列は、上記EST配列を基にしたプライマーをもちいる5’-および3’-RACE技術、または当分野で公知の他の方法によって単離することができる
【実施例3】
【0087】
GWD遺伝子発現を阻害する構築物で形質転換された植物の作製
GWD遺伝子発現を阻害する作用を試験するために、デンプン結合ドメインに対応する領域を標的とする、GWD相同遺伝子をコムギで阻害する二本鎖RNA分子を発現する遺伝子構築物を設計した。
前記構築物は、dsRNAを発現するためにコムギのBx17 HMWグルテニン遺伝子のプロモータを含んでいた。このプロモータは、穀類の内乳でもっぱら発現される組織特異的プロモータとして選択した。したがって、遺伝子発現の阻害はもっぱら内乳で生じると期待された。
阻害性遺伝子構築物は、以下のようにpBx17IRcasNOTクローニングベクターでアッセンブリングした。前記ベクター以下のエレメントを順番に含んでいた:Reddyら(1993)が報告した、Bx17ゲノム配列の最初の1897ヌクレオチドを含む、コムギHMWG Bx17遺伝子の内乳特異的プロモータ;BamHI部位をその5’末端におよびEcoRI部位を3’に有する、attRのフォワード配列(
ccdB陰性の選別可能遺伝子を含む1447bp);プロモータに対して逆向きのイネデンプン分枝酵素Iイントロン4(アクセッション番号D10838のヌクレオチド6201からヌクレオチド6674までの507bp);フォワード方向のイネ分枝酵素Iイントロン9(D10838のヌクレオチド9112からヌクレオチド9605までの429bp);SpeI部位ををその5’末端におよびKpnI部位をその3’に有する、attRのリバース配列(
ccdBの第二のコピーを含む1435bp);および最後にnos3’転写ターミネータ配列(pEmu由来267p(Chamberlain et al. 1994))。前記ベクターは選別可能マーカーを含まず、
npt遺伝子を含む第二のプラスミドで同時に形質転換が実施されて形質転換細胞の選別を可能にする。上記アクセッション番号によって言及したヌクレオチド配列は参照により本明細書に含まれる。
コムギGWD遺伝子の部分に一致するPCRフラグメントは、プライマーGWDF:5’-AAAAGGATCCGGTACCGCCTTCTGGCTCAACAGTTC-3’(配列番号:6)およびGWDR:5’-AAAAGAATTCACTAGTATCACCTTCACCTCCACGAC-3’(配列番号:7)並びに62℃のアニーリング温度を用いて標準的な条件下でコムギの内乳cDNAから増幅させた。PCR反応は、GWDの配列番号:2のヌクレオチド581から1020位に対応するコムギGWD cDNAの597bpフラグメントを増幅させた。転写配列の5’末端に向かうコムギ遺伝子のこの領域は、アクセッション番号AAK11735(このアクセッション番号は参照により本明細書に含まれる)のアミノ酸470から670をコードするジャガイモ遺伝子の部分に一致する。ジャガイモポリペプチドのこの領域は、GWDタンパク質のデンプン結合ドメインと大雑把に一致すると考えられた。
PCR生成物をSpeIおよびKpnIで消化しベクターpIRBx17casNOTのDNA(同じ一対の制限酵素で消化)に連結し、それによって中間体pBx17-GWD_R構築物を形成した。さらに前記PCRのフラグメントを続いてBamHIおよびEcoRIで消化し、同じ酵素で消化したpBx17-GWD_R DNAに連結してpBx17-GWD_IRを形成した。
この構築物のDNAを実施例1に記載したように金粒子を用いる小麦未成熟胚(cv. Bob White)のバイオリスティック媒介形質転換のために使用した。約1100の胚をバイオリスティクス法で処理し、これらから25の苗を再生した。18植物が生存し、ガラスハウスで成熟まで成長させた。これらをジェネチシンに対する耐性について試験したとき、選別可能マーカー遺伝子の存在が示唆され、PCRスクリーニングによって、pBx17-GWD_IRを含む13の陽性コムギトランスジェニック植物(T0世代、rsGWD系統と称した)が識別された。PCRスクリーニングは葉のサンプルから単離したDNAで実施し、構築物のプロモータ内に位置するプライマーZLBx17proおよびGWDRプライマー5’-AAAAGAATTCACTAGTATCACCTTCACCTCCACGAC-3’(配列番号:7)を用いた。PCRはpBx17-GWD_IRで形質転換した植物から713bpフラグメントを増幅させた。
【実施例4】
【0088】
ダウンレギュレートされるジキナーゼ遺伝子および形質転換コムギ植物の解析
T0植物を温室で成長させ、自家受粉させてT1種子を得た。各トランスジェニック系統の個々のT1種子を播種してT1子孫植物を得た。トランスジーンの存在について陽性であったT1植物を識別し、自家受粉させてT2種子を得た。このようなT1植物はトランスジーンについてホモ接合体またはヘテロ接合体であると予想される。これらは各系統についてT2世代を解析することによって識別することができよう。トランスジーンについて陰性であるT1植物(セグリガント)もまた維持し、自家受粉させてトランスジーンを欠く植物のT2世代を提供した(前記は表現型特性の比較のためのコントロール(野生型)として機能することができよう)。
実施例1に記載したように、トランスジェニック系統の乾燥T2穀粒からデンプンを単離した。トランスジェニック穀粒のデンプン含有量は野生型穀粒のそれと類似するように思われ、顕著な相違はデンプン含有量では観察されなかった。実施例1に記載したEnzytecデンプンアッセイキットのプロトコルを改変して、グルコース-6-リン酸(G6P)含有量についてT2デンプンサンプルを解析した。12のrsGWD T1系統から得たデンプンサンプルをアッセイした。これらの系統のうち、8系統がRNAi構築物を含み、3つが空のセグリガントであり、前記をコントロール(野生型)として供した。8つの形質転換rsGWD系統のうち、7つが野生型の親(cv. Bob White)およびそれらの野生型セグリガントと比較して穀粒デンプンでG6Pレベルの明瞭な低下を示した(
図1参照)。1つの系統(GWD5-9X)は、Bob Whiteと比較してG6Pレベルの低下を示したが、対応する空セグリガント(rsGWD5-9A)と比較してG6Pレベルは顕著には低下しなかった。これらのデータは、標的遺伝子はコムギで機能的GWDをコードすることを示していた。
デンプンの構造分析および分子分析:
これらトランスジェニック系統の穀粒のデンプンサンプルをまた、それらの鎖の長さの分布、アミロース含有量および顆粒サイズの分布について解析した。鎖の長さの分布プロフィルは、実施例1に記載したデンプンのイソアミラーゼによる脱分枝の後で、キャピラリー電気泳動によって得られた。解析した12系統について、鎖の長さの分布に顕著な改変は観察されず、主要ピークの位置は各サンプルについて同じ重合度(DP)で生じ、重ね合わせたとき曲線は実質的に同一であった。顆粒サイズ分布を比較したとき、穀粒中のB顆粒の頻度(%)はトランスジェニック系統と非トランスジェニック系統との間で同様に顕著な変化は観察されなかった。大部分のトランスジェニック系統についてデンプンサンプルのアミロース含有量(穀粒から抽出された全デンプンの百分率として表示)は、対応するコントロールまたは親系統Bob White よりもわずかに低かった(2−3%低い)(
図2)。トランスジェニック系統rsGWD5-9Xは、そのコントロールと統計的に異ならないアミロース含有量を示した。
デンプンの物理化学的特性:
トランスジェニック系統のデンプンサンプルの物理化学的特性(ペースト形成特性、粘性および膨潤インデックスを含む)を調べた。
トランスジェニック系統由来のデンプンの膨潤力を実施例1に記載したように試験し、データをコントロールサンプルのデータと比較した(
図3)。デンプン結合G6P含有量の最大の低下(すなわち表現型レベルにおける最高度の遺伝子サイレンシング)を示すトランスジェニック穀粒のデンプンは、95℃におけるその膨潤インデックスで顕著な低下(少なくとも20%)を示し、一方、他の系統については顕著な改変は観察されなかった。
デンプンのペースト形成特性は、9%(w/v)のデンプン懸濁物(3gのデンプンおよび25mLの水を用いて調製)およびRapid Visco Analyser(Newport Scientific, Sydney, Australia)を用い、α-アミラーゼの阻害剤としての硝酸銀(最終濃度4μg/mL)の存在下または前記添加阻害剤の非存在下で分析した。代表的なデータは
図4および表4に示されている。これらは、選択した5つのトランスジェニック系統およびコントロールBob Whiteから単離したデンプンについてのビスコグラムを示している。G6Pの最高度の低下を示す系統はまた、穀粒デンプンのペースト形成値で、特にピーク粘性およびピーク時間で最大の低下を示した。しかしながら、G6P含有量に対してより少ない影響を示すトランスジェニック系統は、それらのRVAプロフィルでわずかな改変しか示さないか、またはまったく改変を示さなかった。rsGWD4-1系統について観察された粘性の低下は少なくとも30%であった。他の穀粒デンプン解析に対する態様と同様に、rsGWD5-9X系統のデンプンはコントロールと同じ粘性プロフィルを示した。
デンプンに関する酵素活性の解析:
予想に反して、(上記の精製デンプンの使用と対照的に)トランスジェニック植物由来の全粒小麦粉サンプルについてアルファ-アミラーゼ阻害剤の非存在下で実施した同じタイプの解析は、はっきりとした固有の表現型を明らかにした(
図4)。この実験でアミラーゼ阻害剤を添加する理由は、ビスコグラムのより良好な解像を得るためおよび親系統(BW26)について観察されたアミロース分解酵素による一切のきっかけを回避するためであった。しかしながら、驚いたことに、トランスジェニックな穀粒から生成された全粒小麦粉のRVAプロフィルは完全に崩壊し、非常に低い粘性ピークおよび最終粘性を示すことが観察された。親系統由来の全粒小麦粉について得られたプロフィルは、解析前にアミラーゼ阻害剤として硝酸銀またはEDTAを懸濁物に添加することによって回復し、単離デンプンのRVAプロフィルと類似する形状のプロフィルが得られた。
この結果は、トランスジェニックな穀粒ではアルファ-アミラーゼプールの増加が存在することを示唆した。この仮説を試験するために、実施例1に記載したように、種子内のアルファ-アミラーゼ活性のレベルをアッセイした。選択系統(これらの系統のその後の(T3)世代を含む)についてのデータは
図5に示されている。rsGWD系統の分析については、アルファ-アミラーゼ活性は、親系統またはコントロール系統と比較して少なくとも約2倍から5倍上昇しているようであった。β-アミラーゼ活性を測定したとき、非形質転換コントロールと比較して小麦粉で少なくとも20%の増加が観察された。植物におけるGWDの低下は、トランスジェニックな穀粒ではアミラーゼ(α-アミラーゼおよびβ-アミラーゼの両方)の蓄積増加と一体であると結論した。
デンプン分解に必要な他の酵素レベルもまた、Zeemanら(Plant Journal, 15:357-365, 1998)が記載したプロトコルを用いてトランスジェニックな穀粒で測定した。酵素α-グルコシダーゼ、β-グルカナーゼ、D-酵素、セルラーゼ、リケナーゼおよびキシレナーゼは全て、コントロール種子と比較して類似の量でトランスジェニック種子に存在したが、いくつかの種子は個々の酵素活性でわずかな増加を示した。酵素活性に対する主要な影響は、アミラーゼ、特にα-アミラーゼに対する影響であると結論した。
トランスジェニックおよびコントロール植物の生育中の種子(25DPA)および成熟穀粒を糊粉および果皮、内乳並びに胚組織に切り分けて分離し、続いてこれら組織のアミラーゼ活性を測定したとき、α-アミラーゼ活性の増加は主として糊粉および果皮に局在することが示された。ほんの低レベルの活性が内乳で、非常に低いレベルの活性が胚で観察された。
糊粉層を単離し、ヨウ化プロピジウム(無傷の細胞膜を有する生細胞には進入することができない蛍光化合物)またはカルボキシフルオレセインジアセテート(CFDA)(細胞膜を通過し細胞に進入できる)で染色したとき、コントロールの糊粉層と比較してトランスジェニックな穀粒にはプログラムされた細胞死に進行するはるかに多くの細胞が存在することが観察された。
他の炭水化物:
25DPAの植物の葉、穂および茎のいくつかの炭水化物レベルを解析した。2つのそれぞれ別個の実験でアッセイを実施した。前記の解析で、野生型Bob White植物と比較して、トランスジェニック植物の茎でフルクトース、シュクロースおよびグルコースレベルが実質的に増加したことが示された。茎ではデンプンレベルも増加したが、フルクタンレベルは低下した。
植物表現型の変更:
驚いたことに、さらに予想に反して、形質転換されたコムギ系統のGWD遺伝子発現のダウンレギュレーションは、温室で成長させたとき植物の形態および発育に大きな改変をもたらすことが観察された。最も重要なことには、光、温度および灌水を含む同じ環境条件下で成長させたとき、対応するコントロール植物よりも、トランスジェニック植物は外観的により元気があり健康的で、さらにより多くのバイオマス(より多くの葉、穂、小穂を含む)を生産した。植物当り生産される穀粒量は、親またはコントロール植物と比較して実質的に少なくとも50%増加した(種子の生産については表5のデータ(植物当りの種子のグラム数)を、および典型的な穂サイズを示す
図6を参照されたい)。
これらの観察を確認するために、選択したトランスジェニック系統、コントロールおよび親植物についてさらに別の生育実験を実施して、統計的解析を可能にした。測定パラメータには発芽率、種々の成長段階における葉の面積、および植物当りの穂の数が含まれていた。これらの解析を各植物系統で5レプリケートについて実施した。データは表6に示されている。これらのデータから、トランスジェニック植物のバイオマス生産は、発芽後の初期段階(例えば双葉期)から穂が形成される全時期を通して増加すると結論した。バイオマスは平均して30%、いくつかの植物では40%を超える増加を示した。葉の面積は少なくとも50%、いくつかの系統では60%を超える増加を示した。植物当りの分げつ枝の数は15%を超える増加、時には20%を超える増加を示した。植物当りの穂の数は少なくとも40%、いくつかの事例では少なくとも50%の増加を示した。典型的には、植物当りの種子の生産は、同様な個々の種子の重量に関して少なくとも40%、または少なくとも50%の増加を示した。
さらに驚いたことには、トランスジェニック系統rsGWD5-9Xの植物の成長および発生もまた実質的に影響を受けた。上記に示したように、この系統の穀粒デンプンは、そのG6Pレベルまたは粘性では顕著な改変を示さなかった。したがって、この植物系統の成長および発生がなぜ影響を受けたのかはすぐには明らかにならなかった。これらの観察の前には、RNAi阻害性構築物を作製するために用いられたHMWグルテニンプロモータは内乳での発現に限定されるであろうと考えられた。しかしながら、観察された成長プロフィルは、プロモータ発現は“リークしやすい”こと、殊に植物の葉(そこでは光合成に続いて移動デンプン代謝が発生する)ではリークしやすいことを強く示唆した。RNAi構築物の移動デンプン代謝における影響についてこの可能性を試験するために、選択したトランスジェニックおよびコントロール系統から得た葉に存在するデンプンG6Pのレベルを昼間期の終りに測定した。この時点はGWDの最大活性および24時間周期での移動デンプンの蓄積に一致しており、さらに前記酵素活性は概日変動を示すので選択した。
得られたデータは
図7に示されている。この系統の成長および発生に関する観察を続けたとき、葉のデンプンに存在するG6Pレベルはcv. Bob Whiteまたはコントロール植物と比較して劇的に減少した。この結果によって、RNAi構築物は、葉のGWD調節を混乱させ、したがって移動デンプン代謝に影響を与えるには十分なほど葉で発現されたに違いないことが確認された。
結論:
GWDコード遺伝子の発現阻害因子をコードする構築物を含むトランスジェニックコムギにおけるグルコース-水-ジキナーゼの減少は、貯留デンプン(この事例では穀粒デンプン)におけるグルコース-6-リン酸含有量を低下させることが示された。前記は、標的遺伝子が機能的なGWDをコードすることを証明した。リン酸モノエステルレベルの低下は、デンプンのペースト形成特性の改変および膨潤インデックスの低下の一因となった。新規で予想に反した観察では、これらのトランスジェニック植物由来の穀粒はまた、α-アミラーゼの極めて大きな増加レベルおよびβ-アミラーゼの顕著な増加レベルを示し、これらはまた全粒小麦粉の生来のペースト形成特性にも影響を与えた。これら両アミラーゼは、通常主として穀粒のデンプン層で、特に穀粒の浸潤後および発芽中に発現され、したがって、増加したアミラーゼの大半がまたおそらくデンプン層で発現されるのであろうと考えられた。そのような作用は、タンパク質が除去された精製デンプンを分析したときには軽微であった。小麦粉におけるそのような作用は、製パンおよび他の食品への適用に対して大きな影響を有すると予想されよう。しかしながら、もっとも予想に反した観察は、RNAi構築物は植物の成長および発生に強い影響を与え、バイオマス生産および穀粒収量の実質的な増加をもたらすということであった。バイオマスおよび種子の生産は、移動性デンプン中のグルコース-6-リン酸レベルの低下と一体になって30から40%またはそれ以上増加した。トランスジェニック系統rsGWD5-9Xの植物に関して得られた結果を基にすれば、成長および収量に対する作用は、主として緑色組織(発育中の穀粒ではなく)における遺伝子の発現を改変することによって仲介された。このことは予想に反した。なぜならば、RNAi構築物を駆動させるために用いられたプロモータは内乳特異的であり他の組織では非常に低い発現を有するために選択されたからであった。さらにまた、植物の生育および形態に対する影響は種子の生育のはるか前に観察された。
【実施例5】
【0089】
種々の遺伝的バックグラウンドにおけるGWD遺伝子発現阻害の影響
種々の遺伝的バックグラウンドにおけるGWD遺伝子のダウンレギュレーションの影響を確かめるために、pBx17-GWD_IR構築物を含むトランスジェニック植物を市販のパンコムギ栽培種、Westonia、HumeおよびSunstateの植物と交雑させた。成熟F1種子を得た。これらの種子を管理条件下の温室で播種したとき、3つの市販の栽培種の各々との交雑から生じたF1植物は、各系統の4または5つの植物について、植物当りの小穂数の増加を示した(例えば
図8のデータを参照されたい)。生産パラメータの増加は種々の遺伝的バックグラウンドに及ぶと結論した。
これらの種子から得られた植物および更なる戻し交雑から得られた植物は、成長および発生について、さらにデンプン特性について上記に記載したようにさらに解析されるであろう。cv. Bob Whiteバックグラウンドをもつトランスジェニック系統について観察された表現型を確認するために、種子の発芽および植物の成長が親植物と比較されるであろう。例えば発芽時間、初期生長速度および葉の面積のような特徴のほかに、分げつ枝の数、穂数および収量が測定されるであろう。野外での性能を評価するために野外試験もまた実施されるであろう。
【実施例6】
【0090】
GWDの発現の調節
GWDの過剰発現:
コムギまたは他の植物におけるGWDの過剰発現は、GWDをコードするcDNAまたはゲノムDNAの使用を必要とする。この目的のために、プロモータに作動できるように結合させた、完全長のコムギcDNA配列(配列番号:2)のタンパク質コード領域を用いることができる(プロモータはGWDコード領域に対して異種プロモータであってもよい)。
種々の組織における、および植物の全成長期間におけるGWDおよびPWDをコードする遺伝子の発現レベル:
定量的逆転写PCR(RT-PCR)アッセイを、植物の全成長期間の種々の植物組織、特に葉および内乳から単離したRNAサンプルで実施し、GWDおよびPWD遺伝子の発現パターンを測定する。葉の発現レベルは24時間周期の全体を通して3時間毎に測定し、C. reinhardiiモデル(Ral et al. 2005)について記載された発現レベルの概日リズムを明らかにする。リン酸含有量、デンプン含有量の変動およびアルファ-アミラーゼ活性もまた葉でモニターし、移動炭水化物代謝を分析する。
種々の生育段階の野生型植物から内乳を収集してRNAの単離に用い、内乳の全発育を通してGWDおよびPWDの発現を定量的RT-PCRによって調べた。
類似のアミロペクチン/アミロース比をもつ多数の遺伝子型をそれらの個々の物理化学的特性について選択した。いくつかの栽培種は焼成および麺製造に適していることが経験的に知られている(Chara)。いくつかは、アジア系蒸しパンに適していることが知られており(Baxter)、他のものはスポンジおよびドウブレッド用焼成特性のために適切である(AC BarrieおよびAlsen)。
【実施例7】
【0091】
GWDおよびPWDの発現の調節
イネのPWDの変異:
アラビノドプシス・タリアナのPWDタンパク質のアミノ酸配列(NP_194176)をクェリー配列として用いイネTos17挿入変異体データベースを調査した。3つの異なるTos17系統(NG0294、ND9050_0_701_1AおよびT29717T)を識別し、これらの系統の種子を入手した。これら3つの挿入と関連する標的イネゲノム配列(配列番号:8から10)は各々、アラビドプシスPWD配列と相同性(約75%同一性)を示し、挿入がイネPWD遺伝子内に存在することを示した。
【0092】
NG0294
TGCTGGAGCAGCAGTATATGATAGGTTAGAGAAAGTCCGCCATAATTTTT
GTAGTTTGCTCAAGAATTTATTTGGCATTACAACTAAGCTGACTGCTTGT
TTCAGTGTCCCTATGGATGAGGAAGATGAAGTCGTACTCGACTACACCAC
AGACCCCCTCATTACAGATCAGGGATCCAAAAATCAATCCTCTCGAGCAT
TGCACGGGCTGGTCATGCCATTGAGGATTTCTATGGGTCACCACAGGGCA
CAGGATGTTGAGGGTGCAGTGAAGGAAGGGAAGCTATAAGTAGTACAGAC
AAGACCACAAATGTAATCTATATGTATATTTTATAGCCAAGTCAATCAGG
AAATGTTGTAGAGTAAGATATACGGGCCGTGGGACATGTATAACACGTTA
TGCTCCTTTTTTT(配列番号:8)
ND9050_0_701_1A
TCTACAACTACAACTTTTTAGAATCTGGACCAAAAGCTGGACTGTTTGAG
GGAGCTTCTGATTCTGAGAGAAGCTGCAGCAGCTAGAAGCTCCCCCAAAC
AGGCCCTTAGGTAGCTGGTTACAAGTCTGATCACACTGTTTTAGGTTTGT
CTGTTGTTGTATATCAGATAGCTAAATGCATAGCTGTGAGCTAGAGTTGT
GATAAACTGGAAATAGGTCAGGGAACGTCTTTTTTTGCCAAAGTATGGGT
AAAGATAAACTTGGTGAGCTCAGCTGGGGACAAAATCATCAGATTTTGTA
TTCTCCCAGCAGAGCAAATAGGGATTTGCCTGTGAGTGCATGCCTGACTT
GTCTGTTGGTCTATGAAATGGGCCGTGAAGTGTGCTTCTATGGGCCTTGT
CACTACTNACCAGGCGGTATTGCAGAGCAGATTTCTTGGCCCATTTTGTC
CTTTTTCTCTCT(配列番号:9)
【0093】
T29717T
CTTGGGAAGACGGTGCGTGTTAGATTTGTGCTGAAGAGGGAATGCACGTT
CGGCCAGAGCTTCCACCTTGTCGGCGACGACCCGGCGCTCGGCCTCTGGG
ATCCGTCGAAGGCAGTGCCTTTGGATTGGTCAGAAGGACACGACTGGACT
GTGGAGAAAGTGAGCCTTGCATCGTGCGCATTGTTTGATGTACTCTCCTT
TTGAGGTAATCATCACCCCTTTTCTTCTGTACAGGACTTGCCAGCCAACA
AGTTGATTGAGTACAAGTTCGTGCTGCAAGATTTGTCGGGCAAGTTGCAT
TGGCAGAATGGTCGTAATAGAAGCGTACAGACAGGTGAAACTGCAAACAT
TCTAGTCGTATATGAAGATTGGGGTAATGCAAATAGTCAGACAGTAGAAG
AGGAGGGTAAAGTGTCCATTGGGATGGAGGAGGGTAAATTGTCCGTTGGG
ATGGAGGAGGCTGTAGTTCCAGATGATAGTGAAAGCAGAG(配列番号:10)
【0094】
これらのTos17挿入変異は劣性であると予想されたので、ホモ接合体の変異体をそれらの各々について単離した。前記単離はまず初めに、野生型と変異体の対立遺伝子の各々についてホモ接合体とヘテロ接合体を識別し、植物を野生型、ヘテロ接合変異体またはホモ接合変異体と識別するためのスクリーニング方法の開発を必要とした。前記は以下のように達成された。
2つのプライマー対を設計し以下のように各系統について作製した。各プライマー対Aで用いられるTos17プライマーは、Tos17エレメント内の配列に相補的なヌクレオチド配列を有し、したがって前記エレメントは増幅が発生するために存在する必要があった。したがって、プライマー対Aを用いたときの陽性PCRの結果は、植物が変異体の対立遺伝子を有するとの認定をもたらし、一方、プライマー対Aの陰性PCRの結果は植物がPWD遺伝子について野生型であることを示した。各プライマー対Bは、ヘテロ接合型の変異体系統をホモ接合型から区別し、野生型の状態であることを確認させた。各プライマー対BはTos17挿入部位にフランキングしていた。プライマー対Bでの陰性PCRの結果は、植物がホモ接合体であることを示した。なぜならば、Tos17が存在すると予想される増幅生成物のサイズは非常に大きいので増幅されることは期待されなかったからである。
両プライマー対について2つの陽性PCRの結果が得られたとき、植物を野生型と変異体対立遺伝子とのヘテロ接合体と認識した。
【0095】
【0096】
この方法を用いて、前記3つの挿入系統の各々についてホモ接合変異体を同定した。コムギについて上記で述べた方法を用いてこれらの植物から得た種子を解析し、さらに管理された条件下で播種し植物の表現型を調べた。野生型の変型種Nipponbareと比較して、デンプンのリン酸含有量のわずかな低下が1つの挿入変異体で観察された。しかしながら、挿入を欠く系統に由来するセグリガントのデンプンと比較して低下が存在したのかそうでないのかは、解析における大きな誤差範囲のために明らかではなかった。挿入を欠くセグリガントまたは野生型と比較して、挿入系統の穀粒から得た4つの粉のデンプン含有量、膨潤インデックス、λmax、鎖の長さの分布またはα-アミラーゼには顕著な相違は存在しなかった。これらのデータは、イネにおけるPWD単独不活化からはわずかな影響を超えるものは生じないことを示唆した。しかしながら、Baunsgaardら(2005)のデータは、GWDとPWDを一緒にしたとき、GWD単独と比較してアラビドプシスで影響の増加があることを示唆している。
いくつかの他のイネ挿入系統がOrigeneデータベース(http://orygenesdb.cirad.fr/index.html)で同定された。前記系統はイネGWD遺伝子にT-DNA挿入を含んでいるようであった。これらは以下のとおりであった:
FST A29424に対応する3A-51160
FST A16348に対応する3A-07997
FST A07158に対応する2A-40470
FST A27803に対応する3A-17981
これらの系統はposTECH(大韓民国)から入手できる。さらにまた、デンプンホスホリラーゼをコードするイネSEX4遺伝子に挿入を有すると思われる以下の2つの系統が確認された:FST A3204に対応する1B-06142およびFST D08500に対応する2D41347。これらは、前記に記載した特性と同じ特性について解析されるであろう。
【実施例8】
【0097】
穀類におけるさらに別のGWD変異体
コムギGWD遺伝子のゲノム特異的プライマー:
ゲノム特異的プライマーを設計して、
GWD遺伝子フラグメント(特にA、BおよびDゲノム由来)を増幅し、それによって六倍体コムギの3つの相同遺伝子を区別した。前記は以下のようにして達成された。六倍体コムギのGWD遺伝子のいくつかのイントロン領域をPCRによって増幅し、フラグメントをクローニングして配列を決定した。ほとんどの事例で、3つの配列変種が識別され、前記はA、BおよびDゲノム由来のGWD遺伝子に対応したが、各変種を特定のゲノムに割り当てることはできなかった。この割り当てを達成するために、鋳型として所定の染色体欠失系統に由来するゲノムDNAを用いて、同じPCR反応を実施し、増幅したフラグメントを同じようにクローニングして配列を決定した。これらの系統は2つのゲノムについてだけGWD遺伝子を含み、3番目は失われていた。例えば、染色体欠失系統N7At7Bは染色体7Aについてゼロであり、したがってAゲノムGWD遺伝子を欠くが、2コピーの染色体7D GWD遺伝子および4コピーの染色体7B GWD遺伝子を有していた。したがって、N7AT7B、N7BT7DおよびN7DT7A欠失系統由来イントロン配列の増幅は、各々特定のゲノムをもつ配列変種の割り当てを可能にした。
各増幅から得た15のクローン化フラグメントの配列を決定し、それによってA、BおよびDゲノムに相関する固有のゲノム特異的改変を識別した。例えば、TによるCの置換は、Aゲノムが存在する欠失系統では観察されるが、Aゼロ系統では観察されなかった。前記は、Tを有するGWD配列変種はAゲノム特異的であることを意味していた。続いて、そのような多形性を用いて、以下のような特異的プライマー対を設計した:
【0098】
A ゲノム:
プライマーGWD1ForA* 5'-GAAACACATAGTCTG-3' (配列番号:20)
プライマーIB_GWD2rev 5'-TTGCGGTGCCTTTACC-3' (配列番号: 21)
Bゲノム:
プライマーGWD1ForB*_HTM 5'-GAAAGAAACACATAGTCTG-3' (配列番号:22)
プライマーIB_GWD3rev 5'-ATCTGTAAACCTGTCTTGTG-3' (配列番号:23)
D ゲノム:
プライマーGWD2for2 5'-TTGCGGTGCCTTTACC-3' (配列番号:24)
プライマーIB_GWD3rev 5'-ATCTGTAAACCTGTCTTGTG-3' (配列番号:25)
【0099】
これらのプライマー対をコムギゲノムDNAとともにPCR反応で用い、以下のPCRサイクリング条件を使用し(94℃で5分、続いて94℃で30秒、53℃で30秒、72℃で40秒の40サイクル、その後72℃で5分)、さらに生成物をゲル電気泳動で分画したところ、以下の増幅生成物を区別することができた:AゲノムのGWD遺伝子については、ほぼ600bpの固有のフラグメントが観察され、BゲノムのGWD遺伝子については、ほぼ1000bpのフラグメントが観察され、一方、DゲノムのGWD遺伝子については、ほぼ500bpのフラグメントが生成された。3つのプライマー対の全てを用いて前記3つのPCR反応を単一の多重PCR反応にまとめ、変異導入種子および植物の集団の高処理スクリーニングを可能にした。
特異的な染色体セグメントを欠く、より限定された所定の染色体欠損を有するコムギ欠失系統で、上記のPCR反応を繰り返したとき、一定の欠失系統の増幅生成物が存在しないことによって、コムギの
GWD遺伝子は7番染色体の短腕の末端、すなわち染色体7Sに存在することが示された。
【0100】
コムギのGWD遺伝子の変異:
Shitsukawaら(Genes Genet Syst 82:167-170, 2007)の方法と本質的に同じ方法による重イオンボンバードメントによって、cv. Charaのコムギの種子に変異を導入した。この変異導入種子を栽培してM1植物を生産し、個々の植物から得た種子を採集し維持し、それによって8000の個々の変異導入系統を提供した。
この8000系統を上記に記載したゲノム特異的プライマー対を用いてスクリーニングし、3つのGWD遺伝子のいずれかを欠く変異体を以下のように識別した。BゲノムGWD遺伝子に対応する遺伝子セグメントを欠く2つの変異体を識別し、DゲノムGWD遺伝子セグメントを欠く1つの変異体を識別した。これらの変異植物(おそらくGWD遺伝子についてゼロ変異体であると推定される)を温室で栽培したところ、表現型は正常のようであった。これらの植物を交雑し、BおよびDゲノムGWD遺伝子を欠く二重変異体を作った。
AゲノムのGWD遺伝子についてのゼロ変異体を識別するために、更なる変異を導入した系統を調査している。識別できたら、そのような植物をBおよびDゲノム二重変異体と交雑して、A、BおよびDゲノムの各々についての三重変異体を作ることができる。
【0101】
本明細書に記載した発明は、具体的に記載した変型および改変以外のものも許容し得ることは当業者には理解されよう。本発明は全てのそのような変型および改変を含むことは理解されるべきである。本発明にはまた、本明細書で個々にもしくは包括的に言及または指摘した工程、特色、組成および化合物、並びに前記工程または特色のいずれか2つもしくは3つ以上のいずれかの組合せおよび全ての組合せも含まれる。
【0102】
表1:配列アイデンティファイアーの概要
【表1】
【0103】
表2:アミノ酸の細分類
【表2】
【0104】
表3:例示的および好ましいアミノ酸置換
【表3】
【0105】
【表4】
【0106】
表5:トランスジェニックおよびコントロール(wt)植物由来のT2種子のための種子パラメータ
【表5】
【0107】
【表6】
【0108】
【表7-1】
【表7-2】
【0109】
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