【実施例】
【0095】
以下の調製例及び試験例により、本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の範囲はこれらの具体例により限定されるものではない。調製例及び試験例中、特に断らない限り、%表示は重量基準によるものとする。また、分析により求める各成分値について、粗タンパク質はケルダール法を(窒素のタンパク質換算係数は6.25とした。)用いて、粗脂肪はジエチルエーテルを抽出溶媒としたソックスレー抽出法を用いて測定した。食物繊維の含量は、AOAC法に基づいて求めた。
【0096】
〔調製例1〕(ビール仕込み粕⇒ロールミル)
湿体状態のビール仕込み粕(水分:77.6重量%)をロールミル(ロール回転数:100rpm、ロール間隙:0.08mm)で圧扁剥離処理後、水中で16メッシュ篩い(ASTM規格:篩い目開き1.18mm)を用いて篩い分けし、通過画分をさらに50メッシュ(ASTM規格:篩い目開き0.300mm)篩いを用いて篩い分けし、通過しない画分を回収して凍結乾燥に供した後、不溶性食物繊維含有物質を得た。これを調製試料1とした。この分析値は下記表1に示すとおりである。また、調製試料1に含まれるアロイロン層部分の走査型電子顕微鏡写真像を
図1に示す。
【0097】
〔調製例2〕(ビール仕込み粕⇒ロールミル+ヘミセルラーゼ)
湿体状態のビール仕込み粕(水分:77.6重量%)をロールミル(ロール回転数:100rpm、ロール間隙:0.08mm)で圧扁剥離処理後、水中で16メッシュ篩い(ASTM規格:篩い目開き1.18mm)を用いて篩い分けし、通過画分をさらに50メッシュ(ASTM規格:篩い目開き0.300mm)篩いを用いて篩い分けし、通過しない画分を回収した。回収した画分にヘミセルラーゼ製剤(新日本化学工業社(日本)製スミチームNX)1.0%を50mM酢酸緩衝液中(pH4.5、50℃)で1晩反応させて、植物組織のアロイロン層を完全に分解した後、水中で200メッシュ(篩い目開き:0.075mm)篩いを用いて篩い分けし、通過しない画分を回収して凍結乾燥に供した後、不溶性食物繊維含有物質を得た。これを調製試料2とした。この分析値は下記表1に示すとおりである。また、調製試料2に含まれるアロイロン層部分の走査型電子顕微鏡写真像を
図2に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
〔調製例3〕(裸麦芽⇒澱粉分解)
発芽した裸大麦(裸麦芽)を原料とした。佐竹製作所製の醸造用テスト精米機TDB2A(使用回転数500rpm)により穀皮を除去した後に、それをディスクミルにより粉砕した。その後、加水して65℃で3時間保持して、裸麦芽の持つアミラーゼを利用して澱粉を分解した。澱粉分解後、水中で12メッシュ篩い(ASTM規格:篩い目開き1.68mm)を用いて篩い分けし、通過画分をさらに200メッシュ(ASTM規格:篩い目開き0.075mm)篩いを用いて篩い分けし、通過しない画分を回収して凍結乾燥に供した後、不溶性食物繊維含有物質を得た。これを調製試料3とした。この分析値は下記表2に示すとおりである。また、調製試料3に含まれるアロイロン層部分の走査型電子顕微鏡写真像を
図3に示す。ちなみにアミラーゼを65℃で作用させず冷水で澱粉のみを除去した場合のアロイロン層は、
図4のような状態となる。
【0100】
〔調製例4〕(裸麦芽⇒澱粉分解+ロールミル+ヘミセルラーゼ)
発芽した裸大麦(裸麦芽)を原料とした。佐竹製作所製の醸造用テスト精米機TDB2A(使用回転数500rpm)により穀皮を除去した後に、それをディスクミルにより粉砕した。その後、加水して65℃で3時間保持して、裸麦芽の持つアミラーゼを利用して澱粉を分解した。澱粉分解後、水中で12メッシュ篩い(ASTM規格:篩い目開き1.68mm)を用いて篩い分けし、通過画分をさらに200メッシュ(ASTM規格:篩い目開き0.075mm)篩いを用いて篩い分けし、通過しない画分を回収した。次に、回収した画分を湿体状態でロールミル(ロール回転数:100rpm、ロール間隙:0.08mm)で圧扁剥離処理後、水中で200メッシュ(ASTM規格:篩い目開き0.075mm)篩いを用いて篩い分けし、通過しない画分を回収し、ヘミセルラーゼ製剤(新日本化学工業社製スミチームNX)1.0%を50mM酢酸緩衝液中(pH4.5、50℃)で1晩反応させて、植物組織のアロイロン層を完全に分解した。再度、水中で200メッシュ(ASTM規格:篩い目開き0.075mm)篩いを用いて篩い分けし、通過しない画分を回収して凍結乾燥に供した後、不溶性食物繊維含有物質を得た。これを調製試料4とした。この分析値は下記表2に示すとおりである。また、調製試料4に含まれるアロイロン層部分の走査型電子顕微鏡写真像を
図5に示す。
【0101】
【表2】
【0102】
〔調製例5〕(裸大麦⇒澱粉分解)
未発芽の裸大麦(裸大麦)を原料とした。佐竹製作所製の醸造用テスト精米機TDB2A(使用回転数800rpm)により穀皮を除去した後に、それをディスクミルにより粉砕した。その後、アミラーゼ製剤(新日本化学工業社製スミチームAS)2.0%を50mM酢酸緩衝液中(pH4.5、65℃)で3時間反応させて、裸大麦中の澱粉を分解した。澱粉分解後、水中で12メッシュ篩い(ASTM規格:篩い目開き1.68mm)を用いて篩い分けし、通過画分をさらに200メッシュ(ASTM規格:篩い目開き0.075mm)篩いを用いて篩い分けし、通過しない画分を回収して凍結乾燥に供した後、不溶性食物繊維含有物質を得た。これを調製試料5とした。この分析値は下記表3に示すとおりである。また、調製試料5に含まれるアロイロン層部分の走査型電子顕微鏡写真像を
図6に示す。
【0103】
〔調製例6〕(裸大麦⇒澱粉分解+ロールミル+ヘミセルラーゼ)
未発芽の裸大麦(裸大麦)を原料とした。佐竹製作所製の醸造用テスト精米機TDB2A(使用回転数800rpm)により穀皮を除去した後に、それをディスクミルにより粉砕した。その後、アミラーゼ製剤(新日本化学工業社製スミチームAS)2.0%を50mM酢酸緩衝液中(pH4.5、65℃)で3時間反応させて、裸大麦中の澱粉を分解した。澱粉分解後、水中で12メッシュ篩い(ASTM規格:篩い目開き1.68mm)を用いて篩い分けし、通過画分をさらに200メッシュ(ASTM規格:篩い目開き0.075mm)篩いを用いて篩い分けし、通過しない画分を回収した。回収した画分を湿体状態でロールミル(ロール回転数:100rpm、ロール間隙:0.08mm)で圧扁剥離処理後、水中で200メッシュ(ASTM規格:篩い目開き0.075mm)篩いを用いて篩い分けし、通過しない画分を回収した。次に、回収した画分にヘミセルラーゼ製剤(新日本化学工業社製スミチームNX)1.0%を50mM酢酸緩衝液中(pH4.5、50℃)で1晩反応させて、植物組織のアロイロン層を完全に分解した。再度、水中で200メッシュ(ASTM規格:篩い目開き0.075mm)篩いを用いて篩い分けし、通過しない画分を回収して凍結乾燥に供した後、不溶性食物繊維含有物質を得た。これを調製試料6とした。この分析値は下記表3に示すとおりである。また、調製試料6に含まれるアロイロン層部分走査型電子顕微鏡写真像を
図7に示す。
【0104】
【表3】
【0105】
〔調製例7〕(裸麦芽⇒澱粉分解+ロールミル)
発芽した裸大麦(裸麦芽)を原料とした。佐竹製作所製の醸造用テスト精米機TDB2A(使用回転数500rpm)により穀皮を除去した後に、それをディスクミルにより粉砕した。その後、加水して65℃で3時間保持して、裸麦芽の持つアミラーゼを利用して澱粉を分解した。澱粉分解後、水中で12メッシュ篩い(ASTM規格:篩い目開き1.68mm)を用いて篩い分けし、通過画分をさらに200メッシュ(ASTM規格:篩い目開き0.075mm)篩いを用いて篩い分けし、通過しない画分を回収した。回収した画分を湿体状態でロールミル(ロール回転数:100rpm、ロール間隙:0.08mm)で圧扁剥離処理後、水中で200メッシュ(ASTM規格:篩い目開き0.075mm)篩いを用いて篩い分けし、通過しない画分を回収して凍結乾燥に供した後、不溶性食物繊維含有物質を得た。これを調製試料7とした。この分析値は下記表4に示すとおりである。
【0106】
〔調製例8〕((裸麦芽⇒澱粉分解+ヘミセルラーゼ)
発芽した裸大麦(裸麦芽)を原料とした。佐竹製作所製の醸造用テスト精米機TDB2A(使用回転数500rpm)により穀皮を除去した後に、それをディスクミルにより粉砕した。その後、加水して65℃で3時間保持して、裸麦芽の持つアミラーゼを利用して澱粉を分解した。澱粉分解後に、ヘミセルラーゼ製剤(新日本化学工業社製スミチームNX)1.0%を50mM酢酸緩衝液中(pH4.5、50℃)で1晩反応させて、植物組織のアロイロン層を完全に分解した後、水中で200メッシュ(ASTM規格:篩い目開き0.075mm)篩いを用いて篩い分けし、通過しない画分を回収して凍結乾燥に供した後、不溶性食物繊維含有物質を得た。これを調製試料8とした。この分析値は下記表4に示すとおりである。
【0107】
〔調製例9〕(裸麦芽⇒澱粉分解+ロールミル+ヘミセルラーゼ)
再度、調製例4と同様の処理を行い、不溶性食物繊維含有物質を得た。これを調製試料9とした。この分析値は下記表4に示すとおりである。
【0108】
【表4】
【0109】
〔調製例10〕(米糠⇒澱粉分解+ヘミセルラーゼ)
米糠を原料とした。アミラーゼ製剤(新日本化学工業社製スミチームAS)2.0%を50mM酢酸緩衝液中(pH4.5、65℃)で3時間反応させて、米糠中の澱粉を分解した。澱粉分解後、水中で200メッシュ(ASTM規格:篩い目開き0.075mm)篩いを用いて篩い分けし、通過しない画分を回収した。次に、ヘミセルラーゼ製剤(新日本化学工業社製スミチームNX)1.0%を50mM酢酸緩衝液中(pH4.5、50℃)で1晩反応させて、植物組織のアロイロン層を完全に分解した後、再び水中で200メッシュ(ASTM規格:篩い目開き0.075mm)篩いを用いて篩い分けし、通過しない画分を回収して凍結乾燥に供した後、不溶性食物繊維含有物質を得た。これを調製試料10とした。この分析値は下記表5に示すとおりである。
【0110】
【表5】
【0111】
〔調製例11〕(米糠⇒澱粉分解+ヘミセルラーゼ)
再度、調製例10と同様の処理を行い、不溶性食物繊維含有物質を得た。これを調製試料11とした。この分析値は下記表6に示すとおりである。
【0112】
〔調製例12〕(米糠⇒澱粉分解+ヘミセルラーゼ⇒脱脂処理)
米糠を原料とした。アミラーゼ製剤(新日本化学工業社製スミチームAS)2.0%を50mM酢酸緩衝液中(pH4.5、65℃)で3時間反応させて、米糠中の澱粉を分解した。澱粉分解後、水中で200メッシュ(ASTM規格:篩い目開き0.075mm)篩いを用いて篩い分けし、通過しない画分を回収した。次に、ヘミセルラーゼ製剤(新日本化学工業社製スミチームNX)1.0%を50mM酢酸緩衝液中(pH4.5、50℃)で1晩反応させて、植物組織のアロイロン層を完全に分解した後、再び水中で200メッシュ(ASTM規格:篩い目開き0.075mm)篩いを用いて篩い分けし、通過しない画分を回収した。回収した画分をエタノールにより脱脂処理を行い、凍結乾燥に供した後、不溶性食物繊維含有物質を得た。これを調製試料12とした。この分析値は下記表6に示すとおりである。
【0113】
【表6】
【0114】
〔調製例13〕(ふすま⇒澱粉分解+ヘミセルラーゼ)
ふすまを原料とした。アミラーゼ製剤(新日本化学工業社製スミチームAS)2.0%を50mM酢酸緩衝液中(pH4.5、65℃)で3時間反応させて、ふすま中の澱粉を分解した。澱粉分解後、水中で200メッシュ(ASTM規格:篩い目開き0.075mm)篩いを用いて篩い分けし、通過しない画分を回収した。次に、ヘミセルラーゼ製剤(新日本化学工業社製スミチームNX)1.0%を50mM酢酸緩衝液中(pH4.5、50℃)で1晩反応させて、植物組織のアロイロン層を完全に分解した後、再び水中で200メッシュ(ASTM規格:篩い目開き0.075mm)篩いを用いて篩い分けし、通過しない画分を回収して凍結乾燥に供した後、不溶性食物繊維含有物質を得た。これを調製試料13とした。この分析値は下記表7に示すとおりである。
【0115】
【表7】
【0116】
〔調製例14〕(米糠⇒澱粉分解+ヘミセルラーゼ)
米糠を原料とした。アミラーゼ製剤(新日本化学工業社製スミチームAS)2.0%を50mM酢酸緩衝液中(pH4.5、65℃)で3時間反応させて、米糠中の澱粉を分解した。澱粉分解後、水中で200メッシュ(ASTM規格:篩い目開き0.075mm)篩いを用いて篩い分けし、通過しない画分を回収した。次に、ヘミセルラーゼ製剤(新日本化学工業社製スミチームNX)1.0%を50mM酢酸緩衝液中(pH4.5、50℃)で1晩反応させて、植物組織のアロイロン層を完全に分解した後、再び水中で200メッシュ(ASTM規格:篩い目開き0.075mm)篩いを用いて篩い分けし、通過しない画分を回収して凍結乾燥に供した後、不溶性食物繊維含有物質を得た。これを調製試料14とした。この分析値は下記表8に示すとおりである。また、調製試料14に含まれるアロイロン層部分の走査型電子顕微鏡写真像を
図8に示す。
【0117】
〔調製例15〕(米糠⇒ホモジナイズ攪拌による澱粉除去)
米糠を原料として水に懸濁し、特殊機化工業株式会社製(現プライミクス株式会社)攪拌機T.k.ロボミックスに常温で供した後(10,000RPM、約20分)、水中で200メッシュ(ASTM規格:篩い目開き0.075mm)篩いを用いて篩い分けし、通過しない画分を回収することにより澱粉を除去した。この操作を2回繰り返し、澱粉の除去効率を高めた。また、2回目の操作時には、80℃加温という殺菌工程を組み入れた。最後に、200メッシュ(ASTM規格:篩い目開き0.075mm)篩いを用いて篩い分けし、回収した通過しない画分を凍結乾燥に供した後、不溶性食物繊維含有物質を得た。これを調製試料15とした。この分析値は下記表8に示すとおりである。また、調製試料15に含まれるアロイロン層部分の走査型電子顕微鏡写真像を
図9に示す。
【0118】
〔調製例16〕(脱脂米糠⇒澱粉分解+ヘミセルラーゼ)
脱脂米糠(築野食品工業株式会社製)を原料とした。アミラーゼ製剤(新日本化学工業社製スミチームAS)2.0%を50mM酢酸緩衝液中(pH4.5、65℃)で3時間反応させて、米糠中の澱粉を分解した。澱粉分解後、水中で200メッシュ(ASTM規格:篩い目開き0.075mm)篩いを用いて篩い分けし、通過しない画分を回収した。次に、ヘミセルラーゼ製剤(新日本化学工業社製スミチームNX)1.0%を50mM酢酸緩衝液中(pH4.5、50℃)で1晩反応させて、植物組織のアロイロン層を完全に分解した後、再び水中で200メッシュ(ASTM規格:篩い目開き0.075mm)篩いを用いて篩い分けし、通過しない画分を回収して凍結乾燥に供した後、不溶性食物繊維含有物質を得た。これを調製試料16とした。この分析値は下記表8に示すとおりである。
【0119】
【表8】
【0120】
〔調製例17〕(米糠⇒澱粉分解+ヘミセルラーゼ⇒200メッシュを通過しない画分)
米糠を原料とした。アミラーゼ製剤(新日本化学工業社製スミチームAS)2.0%を50mM酢酸緩衝液中(pH4.5、65℃)で3時間反応させて、米糠中の澱粉を分解した。澱粉分解後、水中で200メッシュ(ASTM規格:篩い目開き0.075mm)篩いを用いて篩い分けし、通過しない画分を回収した。次に、ヘミセルラーゼ製剤(新日本化学工業社製スミチームNX)1.0%を50mM酢酸緩衝液中(pH4.5、50℃)で1晩反応させて、植物組織のアロイロン層を完全に分解した後、再び水中で200メッシュ(ASTM規格:篩い目開き0.075mm)篩いを用いて篩い分けし、通過しない画分を回収して凍結乾燥して、不溶性食物繊維含有物質を得た。これを調製試料17とした。この分析値は下記表9に示すとおりである。
【0121】
〔調製例18〕(米糠⇒澱粉分解+ヘミセルラーゼ⇒200〜500メッシュ画分)
米糠を原料とした。アミラーゼ製剤(新日本化学工業社製スミチームAS)2.0%を50mM酢酸緩衝液中(pH4.5、65℃)で3時間反応させて、米糠中の澱粉を分解した。澱粉分解後、水中で200メッシュ(ASTM規格:篩い目開き0.075mm)篩いを用いて篩い分けし、通過しない画分を回収した。次に、ヘミセルラーゼ製剤(新日本化学工業社製スミチームNX)1.0%を50mM酢酸緩衝液中(pH4.5、50℃)で1晩反応させて、植物組織のアロイロン層を完全に分解した後、再び水中で200メッシュ(ASTM規格:篩い目開き0.075mm)篩いを用いて篩い分けし、通過する画分を回収してそれをさらに500メッシュ(ASTM規格:篩い目開き0.025mm)篩を用いて篩分けし、通過しない画分を回収して凍結乾燥して、不溶性食物繊維含有物質を得た。これを調製試料18とした。この分析値は下記表9に示すとおりである。
【0122】
【表9】
【0123】
〔調製例19〕(米糠⇒澱粉分解+ヘミセルラーゼ⇒200メッシュを通過しない画分)
脱脂米糠(築野食品工業株式会社製)を原料とした。アミラーゼ製剤(新日本化学工業社製スミチームAS)2.0%を50mM酢酸緩衝液中(pH4.5、65℃)で3時間反応させて、米糠中の澱粉を分解した。澱粉分解後、水中で200メッシュ(ASTM規格:篩い目開き0.075mm)篩いを用いて篩い分けし、通過しない画分を回収した。次に、ヘミセルラーゼ製剤(新日本化学工業社製スミチームNX)1.0%を50mM酢酸緩衝液中(pH4.5、50℃)で1晩反応させて、植物組織のアロイロン層を完全に分解した後、再び水中で200メッシュ(ASTM規格:篩い目開き0.075mm)篩いを用いて篩い分けし、通過しない画分を回収して凍結乾燥に供した後、不溶性食物繊維含有物質を得た。これを調製試料19とした。この分析値は下記表10に示すとおりである。
【0124】
〔調製例20〕(調製例19⇒微粉砕⇒500メッシュを通過画分)
調製例19において得られた不溶性食物繊維含有物質を微粉砕化(マイクロフーズジャパン株式会社加工)した後に、水に懸濁させ、水中で500メッシュ(ASTM規格:篩い目開き
0.025mm)篩いを用いて篩い分けし、通過する画分を回収後、凍結乾燥して不溶性食物繊維含有物質を得た。これを調製試料20とした。この分析値は下記表10に示すとおりである。
【0125】
【表10】
【0126】
〔試験例1〕 上記調製例16に従って調製した不溶性食物繊維含有物質を用いてIBSに関連する症状又はパラメータ値を改善できるかについて試験した。
下記試験に使用した対照飼料、実験飼料の組成は表11に示す通りである。
【0127】
【表11】
【0128】
実験動物に対照飼料、実験飼料を投与し、順化したのちに、広くIBSモデル作成に使用されている方法のうち、IBS治療薬の動物評価にも使用されている拘束ストレス法(Miyata K, Kamato T, Nishida A, Ito H, Yuki H, Yamano M, Tsutsumi R, Katsuyama Y, Honda K., J Pharmacol Exp Ther. 1992; 261: 297-303.)を用いて本発明の不溶性食物繊維含有物質のIBS抑制作用について評価した。具体的には、拘束ケージを用いて動物に拘束ストレスを1日4時間、連続3日与えて、ストレス負荷時の糞便排泄量、大腸での痛覚閾値、及び大腸粘膜のセロトニン含量を評価した。
【0129】
〔糞便排泄量評価〕
本試験では、5週令の雄のSDラットを各群10匹用い、群は対照群、実験群の2群とした。1週間環境順化後に、体重で組分けした。その後10日間各飼料で飼育し、各群半分の5匹をストレス負荷あり、残り半分をストレス負荷なしとした。10日の飼育後に連続3日の拘束ストレス負荷を行い、1回のストレスは4時間とし、連続3日の負荷とした。詳細は宮田らの方法(前掲)を参考にした。簡潔に説明すると、夏目製作所(日本)のラット用拘束ケージにラットを4時間保定した。その後解放して通常の飼育ケージにもどした。なお、ストレス負荷をしない個体はそのままの飼育を継続した。
【0130】
本試験ではストレス負荷開始時から終了時まで、すべての個体から採便し、乾燥重量を測定し、3日分の平均値を4時間当たりの糞便排泄量とした。結果を
図10に示す。
図10に示すように、拘束ストレスを負荷すると、対照群では糞便排泄が有意に増加するが、実験群ではその増加を抑制し、抗ストレス作用が確認された。
【0131】
〔大腸における痛覚閾値評価〕
試験例2では、5週令の雄のSDラットを各群10匹用い、群は対照群、実験群、陽性対照としてのコロネルの3群とした。1週間環境順化後に、体重で組分けする。その後10日間各飼料で飼育し、各群半分の5匹をストレス負荷あり、残り半分をストレス負荷なしとした。10日の飼育後に連続3日の拘束ストレス負荷を行い、1回のストレスは4時間とし、連続3日の負荷とした。3日目のストレス負荷終了直後にバロスタット法により痛覚閾値の測定を行った。痛覚閾値はAWR(abdorminal withdrawal reflex; Al-Chaer ED, Kawasaki M, Pasricha PJ., Gastroenterology. 2000 Nov;119(5):1276-85)により判定した。ストレス負荷をしない個体は別の日に痛覚閾値測定を実施した。結果を
図11に示す。
【0132】
図11に示すように、拘束ストレスを負荷すると、対照群ではCRD(大腸の拡張による痛覚閾値)の有意な低下が確認されたが、実験群、および陽性対照のコロネルではその有意な低下が生じず、IBSで確認されている痛覚閾値の低下が抑制された。
【0133】
〔大腸粘膜のセロトニン含量の評価〕
本試験では、上記と同じように飼育、ストレス負荷を行い、3日目のストレス負荷終了直後に麻酔下で解剖に供し、大腸を摘出し、大腸粘膜中のセロトニン含量を市販のELISAキット(Serotonin EIA, Labor Diagnostika Nord GmbH)で測定した。結果を
図12に示す。
【0134】
図12に示すように、拘束ストレスを負荷すると、対照群では大腸粘膜では消化管運動に関係するセロトニンの急激な放出が生じる。対照群ではストレスの負荷により有意な上昇が認められるが、実験群、コロネルではその上昇は有意なものではなく、抗ストレス作用が確認された。
【0135】
〔調製例21〕(脱脂米糠⇒澱粉分解+ヘミセルラーゼ)
脱脂米糠を原料とし、調製例16と同様にして不溶性食物繊維含有物質を調製した。すなわち、アミラーゼ製剤(新日本化学工業社製スミチームAS)1.0%で、乳酸を添加してpHを調製後(pH4.5、65℃)、3時間反応させて、米糠中の澱粉を分解した。澱粉分解後、水中で200メッシュ(ASTM規格:篩い目開き0.075mm)篩いを用いて篩い分けし、通過しない画分を回収した。次に、ヘミセルラーゼ製剤(新日本化学工業社製スミチームNX)0.5%で、乳酸を添加してpHを調製後(pH4.5、50℃)、1晩反応させて、植物組織のアロイロン層を分解した後、水中で200メッシュ(ASTM規格:篩い目開き0.075mm)篩いを用いて篩い分けし、通過しない画分を回収して凍結乾燥に供した後、不溶性食物繊維含有物質を得た。これを調製試料21とした。この分析値は下記表12に示すとおりである。
また、調製試料21に含まれるアロイロン層部分の走査型電子顕微鏡写真像を
図13に示す。
【0136】
〔調製例22〕(脱脂米糠⇒澱粉分解+ヘミセルラーゼ、酵素量を調製例21より低減化)
脱脂米糠を原料として、アミラーゼ製剤(新日本化学工業社製スミチームAS)0.5%で、乳酸を添加してpHを調製後(pH4.5、65℃)、3時間反応させて、米糠中の澱粉を分解した。澱粉分解後、水中で200メッシュ(ASTM規格:篩い目開き0.075mm)篩いを用いて篩い分けし、通過しない画分を回収した。次に、ヘミセルラーゼ製剤(新日本化学工業社製スミチームNX)0.2%で、乳酸を添加してpHを調製後(pH4.5、50℃)、1晩反応させて、植物組織のアロイロン層を分解した後、水中で200メッシュ(ASTM規格:篩い目開き0.075mm)篩いを用いて篩い分けし、通過しない画分を回収して凍結乾燥に供した後、不溶性食物繊維含有物質を得た。
【0137】
これを調製試料22とした。この分析値は下記表12に示すとおりである。また、調製試料22に含まれるアロイロン層部分の走査型電子顕微鏡写真像を
図14に示す。
【0138】
【表12】
【0139】
〔調製例23〕(調製試料の再ヘミセルラーゼ処理)
再度、調製試料22をヘミセルラーゼ製剤(新日本化学工業社製スミチームNX)1.0%、乳酸を添加してpHを調整後(pH4.5、50℃)、1晩反応させ、再び水中で200メッシュ(ASTM規格:篩い目開き0.075mm)篩いを用いて篩い分けし、通過しない画分を回収して凍結乾燥に供し、不溶性食物繊維含有物質を得た。これを調製試料23とした。調製試料23の分析値は下記表13に示すとおりである。また、調製試料23に含まれるアロイロン層部分の走査型電子顕微鏡写真像を
図15に示す。
【0140】
【表13】
【0141】
〔試験例2〕
調製試料21、22を、再度、ヘミセルラーゼ製剤(新日本化学工業社製スミチームNX)4.0%で、50mM酢酸緩衝液中(pH4.5、50℃)で1晩反応させ、再び水中で200メッシュ(ASTM規格:篩い目開き0.075mm)篩いを用いて篩い分けし、通過しない画分を回収して凍結乾燥に供した後、回収率を算出した。また、ヘミセルラーゼ処理の際にアロイロン層を構成する主だった糖として、アラビノース、キシロースの遊離量も調査した。
【0142】
〔試験例2の結果〕
調製試料21をヘミセルラーゼで再分解した際の回収率は78%であり、調製試料22を同様に分解した際の回収率は69%であった(
図16)。また、各試料を分解した際の遊離のアラビノース、キシロース量を調査した結果、いずれも調製試料22を分解した場合の方が遊離のアラビノース、キシロースが多いことが判明した(
図17)。アラビノース、キシロースは、アロイロン層を構成する主要な糖であり、ヘミセルラーゼ処理によりこれらの糖が遊離しているということは、ヘミセルラーゼ処理により、アロイロン層が分解されていると推察できる。
【0143】
調製試料21は、試験例1において実際にそのIBS抑制効果が立証された調製例16と同様にして調製されたものである。上記結果から、当該試験例と同様の条件下でのヘミセルラーゼ処理による再分解に供した際に、回収率が少なくとも約70%以上、好ましくは約80%以上である調製試料にはIBS抑制効果が認められると推認できる。また、この指標をもって、アロイロン層の分解度合いを表現することができる。
【0144】
〔試験例3〕(過敏性腸症候群患者における臨床所見改善効果)
患者選択基準としてRome III基準に準拠したIBS患者のうち、下痢型の患者とし、16〜74歳の男女で、医師により試験参加が判断した通院患者で、上記調製例16に従って調製した不溶性食物繊維含有物質の摂取を受けることに対して十分な説明を受けた後に承諾し、摂取試験に協力する事に同意する者を対象とした。(除外基準としては、他の合併症を有する症例のうち、薬効に影響すると考えられる薬剤の摂取を必要とする症例、癌或いはdysplasiaを合併している症例、妊娠している可能性のある婦人、妊婦、胃腸管切除歴のある症例、腸管の閉塞症状が認められる症例、米に対してアレルギー症状を有する症例、その他、医師が摂取試験の対象として不適切と判断した症例とした。)当該不溶性食物繊維含有物質を1日10〜15g、4週間摂取して、摂取後の臨床所見、患者の生活印象などを以下の項目にしたがって評価した。試験参加者は男性4、女性1(平均年齢31歳)が試験に参加し、全員がIBS治療薬の摂取を受けているが、抵抗性を有する症例であった。評価方法は表14のとおりAm J Gastroenterol 101; 1581-1590, 2006に記載の方法に準じて行った。
【0145】
【表14】
【0146】
各項目について1:著明改善、2:中等度改善、3:軽度改善、4:不変、5:悪化、6:判定不能の6段階で判定した。また、臨床所見総合改善度は上記指標に安全性に関する結果も踏まえ、総合的に勘案して試験を担当する医師が同じく6段階で評価した。結果を
図18に示す。
【0147】
図18に示すように、当該不溶性食物繊維含有物質の摂取を4週間継続(平均12g/日の摂取量であった)することで、全般改善度、ならびに臨床所見総合評価が改善することが確認された。さらに、この試験においては、当該不溶性食物繊維含有物質の摂取との関連性を示す有害事象は認められず、過敏性腸症候群患者においても安全性に問題となる懸念はないと考えられた。