(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
まず構成について説明する。
【0021】
図1、
図2に示すように、金属検出装置10は、被検査物Wを搬送路20a内で搬送するコンベア20と、被検査物W中の金属mを磁化する着磁部30と、被検査物Wの搬送方向と直交する直交方向(矢印Bで示す)に鋭指向性を有するとともに、直交方向に複数配列された磁気センサ41a〜41e、42a〜42eを有し、着磁部30により着磁された被検査物W中の金属mの残留磁気の直交方向の成分を検出する検出ヘッド40と、検出ヘッド40の直交方向の両端に配置され、検出ヘッド40の内部に侵入するノイズを遮蔽する磁気シールド49と、検出ヘッド40の複数の磁気センサ41a〜41e、42a〜42eからの検出信号に基づいて被検査物W中の金属mの有無を判定する判定手段53と、を備えている。
【0022】
被検査物Wは、例えば、包装材で包装された任意の製品、例えば包装容器内に食品を収容し、直方体形状の包装箱の表面に磁化可能な個体識別用のラベル若しくはタグ、おまけのカード等を貼付又は添付したものである。被検査物Wは、金属異物、あるいは、包装箱内に薬品と磁性インクで印刷された磁気印刷物を収納したものである。
【0023】
コンベア20は、無端状のベルト21を複数対の搬送ローラ22a、22b、23aおよび23bに巻回し、そのベルト21の上走部の上面によって検出ヘッド40の入口側から出口側へと被検査物Wを搬送するようになっている。
【0024】
搬送路20aの検出ヘッド40より上流側の所定位置には、搬送路20aを挟んで上下に対向する公知の着磁部30が設置されている。着磁部30は、上下方向に磁界を印加するための図示しない磁石を備えたものである。これにより、被検査物Wは、磁気検出領域45より上流側の位置で着磁部30により直流磁界を印加され、被検査物W内の金属mが所定の残留磁化レベルで磁化されるようになっている。
【0025】
なお、着磁部30は、検出ヘッド40により被検査物W内の金属mをより高精度で検出するために設けられたものであるが、金属検出装置10の外部で予め磁化されるなどして、被検査物W内の金属mが磁気検出に足る磁性を有するような場合には、着磁部30が設置される必要はなく、着磁部30を設けない装置構成とすることができる。
【0026】
なお、複数の磁気センサ41a〜41e、42a〜42eが列設される直交方向は、厳密に90°に限定されるものではなく、ノイズの影響を受けない範囲であれば許容される。例えば、その範囲は±30°である。
【0027】
検出ヘッド40は、被検査物Wの搬送路20aを挟んで上下に対向するように配置された上側ヘッド41と下側ヘッド42とから構成されている。上側ヘッド41には、複数の磁気センサ41a〜41eが、被検査物Wの搬送方向と直交する矢印Bで示す直交方向に列設されている。また、下側ヘッド42には、複数の磁気センサ42a〜42eが、被検査物Wの搬送方向と直交する直交方向にそれぞれ列設されている。
【0028】
検出ヘッド40の上側ヘッド41と下側ヘッド42に挟まれた領域は、コンベア20により矢印Aの方向に搬送される被検査物Wが通過する磁気検出領域45を形成している。
【0029】
検出ヘッド40の直交方向の両端には、
図1、
図2(a)に示すように、検出ヘッド40の内部の磁気検出領域45に侵入するノイズを遮蔽する磁気シールド49が設けられている。
図1、
図2(a)では、磁気シールド49は、被検査物Wの搬送方向と直交する方向である矢印Bで示す方向(ベルト21の幅方向)の両端部を含み巻回されるように搬送路20aを囲んで設けられている。
【0030】
磁気センサ41a〜41e、42a〜42eは、
図2(c)に示すように、被検査物Wの搬送方向と直交する矢印Bで示す方向に鋭指向性を有している。このため、磁気センサ41a〜41e、42a〜42eは、被検査物W中の金属mの磁束のうち、この直交方向の成分のみを検出することができる。本実施の形態では、磁気センサ41a〜41e、42a〜42eは、
図3に示す直交型フラックスゲートセンサから構成されている。
【0031】
ここで、フラックスゲートセンサとは、冷却や加熱の必要がなく、静磁界から低周波の周波数帯で10pT〜地磁気レベルの磁界が計測可能な小型高感度センサである。フラックスゲートセンサにおいては、計測したい磁界に対して、細長い磁路を提供するコアと、このコアに巻かれた検出コイルがセンサヘッドの基本要素となっている。フラックスゲートセンサとしては、静磁界が計測できるようにコアの透磁率を周期的に変調する方法が異なる2つのタイプ、すなわち直交型フラックスゲートセンサと平行型フラックスゲートセンサとがある。このうち、コアの磁気モーメントがコアの長手方向に対して直交するように交流駆動し、コアの透磁率を変調するタイプのものを直交型フラックスゲートセンサと呼ぶ。直交フラックスゲートセンサの場合は、磁性ワイヤに直接交流電流を通電することにより透磁率を変調することができるため、センサヘッドの構成を簡単にできるという利点がある。また、交流励磁電流にその振幅値程度あるいはそれ以上の直流電流を重畳することにより、検出コイルに誘起する信号電圧の周波数が励磁周波数の基本波(従来のフラックスゲートセンサでは2倍周波)となり、回路が簡略化され、感度が増大し、コアの雑音が抑制される等の利点がある。(文献:電気学会マグネティックス研究会:MAG−08−133 負帰還構成にした基本波型直交フラックスゲートの動作と特性。 笹田一郎、村上雅則(九州大学))本実施の形態では、出力の線形性と感度の校正の容易化のために、U字型センサヘッドを用いた基本波型直交フラックスゲートセンサを対象として負帰還構成にする方法を採用している。また、コアの長手方向に数十〜数百kHzの交流磁界を印加して透磁率を変調するタイプのものは平行型フラックスゲートセンサと呼ばれ、平行型フラックスゲートセンサでは、変調に使用する交流励磁磁界と計測する磁界が平行または反平行であるために、通常はコアを2つ用いて交流励磁磁界を打ち消すように構成される。平行型フラックスゲートセンサでは、交流磁界を印加するための励磁コイルが必要になる。
【0032】
また、金属検出装置10は、AD変換手段52、判定手段53および結果表示手段54を有する制御部50を備えている。制御部50は、具体的なハードウェア構成を図示しないが、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェース回路に加えて、不揮発性メモリとしてのEEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)やハードディスク等を含んで構成されており、ROMやEEPROM、ハードディスク等に格納された所定の金属検出制御プログラムに従って、検出ヘッド40からの検出信号やEEPROMに不揮発に記憶保持された判定用閾値等に基づいて、被検査物Wに金属mが混入しているか否かの判定を実行するようになっている。
【0033】
磁気センサ41a〜41e、42a〜42eからの検出信号は、磁気センサ41a〜41e、42a〜42e毎に個別に設けられたAD変換手段52に信号線51を介してそれぞれ入力されるようになっており、被検査物Wが磁気検出領域45を通過する間、磁気センサ41a〜41e、42a〜42eからの検出信号が、AD変換手段52においてそれぞれアナログ信号からデジタル信号に変換され、磁気センサ41a〜41e、42a〜42e毎に個別に設けられた判定手段53により予め設定された判定用閾値を参照して金属の有無が判定されるようになっている。また、判定手段53による判定結果は、結果表示手段54により表示される。
【0034】
判定手段53は、検出ヘッド40の複数の磁気センサ41a〜41e、42a〜42eからの検出信号に基づいて被検査物W中の金属mの有無を判定するだけでなく、磁気センサ41a〜41e、42a〜42eからの検出信号の強度を比較することにより、被検査物W中の金属mの矢印Bで示す直交方向における位置を算出し、結果表示手段54に出力するようになっている。
【0035】
更に、判定手段53は、上側ヘッド41の磁気センサ41a〜41eの検出信号と、下側ヘッド42の磁気センサ42a〜42eの検出信号との信号強度の違い(差または比)に基づいて、被検査物W中の金属mの矢印Hで示す上下方向における位置を算出し、結果表示手段54に出力するようになっている。
【0036】
以下、磁気センサ41a〜41e、42a〜42eの具体的な構成を説明する。なお、磁気センサ41a〜41e、42a〜42eは、互いに同一の構成を有しているので、磁気センサ41aについて説明する。
【0037】
図3に示すように、直交型フラックスゲートセンサとして構成された磁気センサ42aにおいては、入力磁界に対してそれを打ち消すコイルを検出コイル63として設け、高感度センサで残余磁界を検出し、残余磁界がほぼゼロになるようにして、入力磁界を打ち消すのに使用した電流の大きさから入力磁界の大きさを検出するゼロ位法を採用した負帰還構成となっている。ゼロ位法を採用した負帰還構成においては、リニアリティーが良く、ダイナミックレンジが広くなるという利点がある。
【0038】
センサヘッド61はU字型のアモルファス磁性ワイヤをコア62として採用しており、検出コイル63は一端を低抵抗で接地している。構造を簡単にするために検出コイル63は、負帰還コイルとしても使用している。コア62の励磁電流は、簡単のために50Ωの出力抵抗を持つ信号発生器64から直接取っている。励磁は100kHzの正弦波電圧(Vac)に必要な直流バイアス電圧(Vdc)をかけている。検出コイル63からの検出電圧は励磁周波数と同じ100kHzであるので、交流結合によって前置増幅器65に入力し、同期検波部回路66によって平行復調し、後段の平滑フィルタ(カットオフ周波数≒100Hz)で直流へ変換している。直流に変換された信号は、0Vを参照電圧とする帯域制限した誤差増幅器67で増幅して、高抵抗Rfを介して検出巻線にはキャンセルのための負帰還電流を重畳する。ここで、高抵抗Rfの抵抗値を高くする理由は、負帰還電流を高感度に電圧に変換すること、および、検出コイル63から見て帰還回路が負荷にならないようにすることである。前置増幅器65の入力側と負帰還回路側の誤差増幅器の時定数の選択は1/(C1R1)>10/(C2R2)の範囲で設定している。高抵抗Rfの両端の電圧は、図示しないボルテージフォロワーで抽出した後、引き算回路および60Hzのノッチフィルタを通して出力している。磁気センサ42aは、
図4(a)または
図4(b)に示すように、アモルファス線から構成されるコア62がU字型にすることにより、コア62の左右個々の脚で入力磁界と無関係に発生する磁束変化が打ち消され、オフセットが発生することを防止することができるようになっている。なお、磁気センサ42aのコア62の長さは、1.5〜3cm程度とするのが最適である。コア62を長くすると分解能を高く指向性を鋭くすることができる一方、中央部に不感体が生じてしまうためである。
【0039】
図1〜
図4を参照して説明した金属検出装置10の動作に関しては、まず、
図5に示すように、被検査物Wが磁気検出領域45を通過すると、磁気センサ41a〜41e、42a〜42eからの検出信号が、AD変換手段52においてそれぞれアナログ信号からデジタル信号に変換され、磁気センサ41a〜41e、42a〜42e毎に個別に設けられた判定手段53に入力される。
【0040】
磁気センサ41a〜41e、42a〜42eからの各検出信号を、それぞれ検出信号41as〜41es、42as〜42esとすると、判定手段53は、検出信号41as〜41es、42as〜42esのそれぞれについて、判定用閾値との比較を行い、判定用閾値を超えている検出信号があれば、金属mが混入している旨の判定結果を結果表示手段54に出力する。また、判定手段53は、判定用閾値を超えている検出信号に対応する磁気センサの配置場所に金属mが混入していると判断し、被検査物W中の金属mの矢印Bで示す直交方向における位置を算出し、結果表示手段54に出力する。更に、判定手段53は、判定用閾値を超えている検出信号に対応する磁気センサの配置場所に金属mが混入していると判断し、上側ヘッド41の磁気センサ41a〜41eの検出信号41as〜41esと、下側ヘッド42の磁気センサ42a〜42eの検出信号42as〜42esとの信号強度の違い(差または比)に基づいて、被検査物W中の金属mの矢印Hで示す上下方向における位置を算出し、結果表示手段54に出力する。結果表示手段54では、判定結果を受け取ると、被検査物Wにおける金属mの混入の有無および位置を表示する。
【0041】
なお、
図6に示すように、磁気シールド49は、ベルト21の幅方向の両端だけではなく上下方向(
図1、
図2(c)に矢印Hで示す)の両端部にも配置され、搬送路を囲んで一体的に構成されている。この場合、金属mの磁化による磁力線は磁気シールド49の近傍では磁気シールド49に直角に吸い寄せられる。このため、磁気センサ41a〜41c、42a〜42cと磁気シールド49とを近接して配置する場合は、それぞれ磁気センサ41a〜41c、42a〜42cの配列方向に対して磁気センサ41a〜41c、42a〜42cを角度αもしくは−αだけ傾斜して配置することにより感度を得ることができる。シールド効果は磁気シールド49の中心部より内壁近傍が高いので、磁気センサ41a〜41c、42a〜42cは磁気シールド49の上下内壁に可能な限り接近させるのがよい。
図6では、磁気センサ41a〜41c、42a〜42cの配列方向をベルト21の幅方向と略一致する一直線としているが、これに限定されない。
【0042】
図1〜
図6を参照して説明した金属検出装置10において、外乱ノイズによる影響を更に低減しSN比を向上するためには、金属検出装置10を以下に説明するように、
図7(a)の相関型1、
図9(a)の相関型2、
図10(a)の差動型の構成とすると好ましい。なお、以下に説明する金属検出装置10においても、磁気センサ41a〜41c、42a〜42cを傾斜して配置する等の構成を適用することができる。
【0043】
[相関型1]
金属検出装置10は、
図7(a)に示すように相関型の構成とすることもできる。
【0044】
図7(a)において、金属検出装置10は、検出ヘッド40の上側ヘッド41に、磁気センサ41a〜41eに加えて磁気センサ43a〜43eも設けられている。また、検出ヘッド40の下側ヘッド42に、磁気センサ42a〜42eに加えて磁気センサ44a〜44eも設けられている。
【0045】
また、金属検出装置10は、タイミング信号発生手段73と、磁気センサ41a〜41e、42a〜42e、43a〜43e、44a〜44eの検出信号を保存する波形保存手段70と、を備え、コンベア22で搬送される被検査物Wの到来をタイミング信号発生手段73で捉え、タイミング信号を発生し、波形保存手段70に磁気センサ41a〜41e、42a〜42e、43a〜43e、44a〜44eからの信号を保存し、所定の波形を保存した後に波形保存手段70より波形を読み出し、検出信号の相関を計算することで被検査物W中の異物による信号を強調するようになっている。
【0046】
磁気センサ41a〜41e、42a〜42e、43a〜43e、44a〜44eからの検出信号は、磁気センサ41a〜41e、42a〜42e、43a〜43e、44a〜44e毎に個別に設けられたAD変換手段52に信号線51を介してそれぞれ入力されるようになっており、被検査物Wが磁気検出領域45を通過する間、磁気センサ41a〜41e、42a〜42e、43a〜43e、44a〜44eからの検出信号が、AD変換手段52においてそれぞれアナログ信号からデジタル信号に変換されるようになっている。
【0047】
AD変換手段52においてそれぞれアナログ信号からデジタル信号に変換された信号は、タイミング信号発生手段73が発生するタイミング信号に応じて、波形保存手段70に保存され、保存された信号は、相関手段55により相互相関関数を用いて相関が算出されてから、判定手段53により予め設定された判定用閾値を参照して金属の有無が判定されるようになっている。また、判定手段53による判定結果は、結果表示手段54により表示される。
【0048】
ここで、相互相関関数とは、2つの信号の類似性を確認するのに用いられる関数であり、例えば、xとyという2つの関数の相互相関関数r
xyは、以下の数式で表される。
【数1】
この式から分かるように相互相関関数は、2つの信号を少しずつずらしながら積を取っていくことで求まるものである。本実施の形態では、比較的直径が大きく検出波形の大きなものをテンプレートとしてyに用い、生データをxに代入する。テンプレートに類似した波形がxに存在すれば、相互相関関数にピークが現れ、雑音中に埋もれた波形を抽出することができる。テンプレートの代わりにセンサの信号を用いてもよい。
【0049】
相関手段55は、相互相関を算出するため、
図8(a)に示すテンプレートまたはセンサ1の信号と、
図8(b)に示すセンサ2の信号とから、相互相関を算出して、
図7(b)または
図8(c)に示すような計算結果の信号を得るようになっている。ここで、
図8(a)において、テンプレートとは、
図9(a)で例示するように予め保存された信号であり、センサ1とは、磁気センサ41a〜41eまたは磁気センサ42a〜42eに相当する。また、
図8(b)において、センサ2とは、磁気センサ43a〜43eまたは磁気センサ44a〜44eに相当する。このように、相関手段55により2つの信号の相互相関を計算することにより、各相関手段55から出力された信号は、
図7(b)、
図8(c)に示すように、ノイズ成分が抑圧されるとともに異物信号が強調されたものとなるので、外乱ノイズによる影響を排除し、被検査物W中の微小な金属mを安定して高感度で検出することができる。
【0050】
[相関型2](異物信号をメモリに保存)
また、金属検出装置10は、
図9(a)に示すように異物信号をメモリに保存する相関型の構成とすることもできる。
【0051】
図9(a)において、金属検出装置10は、
図1と同様に、検出ヘッド40の上側ヘッド41に、磁気センサ41a〜41eが設けられ、下側ヘッド42に、磁気センサ42a〜42eが設けられている。
【0052】
また、金属検出装置10は、タイミング信号発生手段73と、検出ヘッド40の複数の磁気センサ41a〜41e、42a〜42eの検出信号を保存する第1の波形保存手段71と、被検査物W中に異物が含まれているときの磁気センサ41a〜41e、42a〜42eからの検出信号を保存する第2の波形保存手段72とを備え、コンベア22で搬送される被検査物Wの到来をタイミング信号発生手段73で捉え、タイミング信号を発生し、第1の波形保存手段71に磁気センサ41a〜41e、42a〜42eからの信号を保存し、所定の波形を保存した後に第1の波形保存手段71より波形を読み出し、検出信号の相関を計算することで被検査物W中の異物による信号を強調するようになっている。
【0053】
磁気センサ41a〜41e、42a〜42eからの検出信号は、磁気センサ41a〜41e、42a〜42e毎に個別に設けられたAD変換手段52に信号線51を介してそれぞれ入力されるようになっており、被検査物Wが磁気検出領域45を通過する間、磁気センサ41a〜41e、42a〜42eからの検出信号が、AD変換手段52においてそれぞれアナログ信号からデジタル信号に変換されるようになっている。
【0054】
AD変換手段52においてそれぞれアナログ信号からデジタル信号に変換された信号は、タイミング信号発生手段73が発生するタイミング信号に応じて、第1の波形保存手段71に保存され、保存された信号は、相関手段55により相互相関関数を用いて相関が算出されてから、判定手段53により予め設定された判定用閾値を参照して金属の有無が判定されるようになっている。
【0055】
具体的には、第2の波形保存手段72には、異物を含む被検査物を搬送して磁気センサ41a〜41e、42a〜42eを通過させたときの波形信号が保存されており、異物信号強調手段としての相関手段55は、第2の波形保存手段72に保存されている波形信号と、第1の波形保存手段71に保存した波形信号とにより相互相関関数を用いて相関を算出するようになっている。このように、相関手段55により2つの信号の相互相関を計算することにより、各相関手段55から出力された信号は、
図9(b)に示すように、ノイズ成分が抑圧されるとともに異物信号が強調されたものとなるので、外乱ノイズによる影響を排除し、被検査物W中の微小な金属mを安定して高感度で検出することができる。
【0056】
[差動型]
また、金属検出装置10は、
図10(a)に示すように差動型の構成とすることもできる。
【0057】
図10(a)において、金属検出装置10は、
図7と同様に、検出ヘッド40の上側ヘッド41に、磁気センサ41a〜41eに加えて磁気センサ43a〜43eも設けられている。また、検出ヘッド40の下側ヘッド42に、磁気センサ42a〜42eに加えて磁気センサ44a〜44eも設けられている。
【0058】
上側ヘッド41において、磁気センサ41a〜41e、43a〜43eからの検出信号は、幅方向の位置が一致する磁気センサ41a〜41e、43a〜43e毎に個別に設けられた異物信号強調手段としての差動手段57により2つの入力信号の差分が算出されてから、AD変換手段52においてそれぞれアナログ信号からデジタル信号に変換され、判定手段53により予め設定された判定用閾値を参照して金属の有無が判定されるようになっている。
【0059】
下側ヘッド42において、磁気センサ42a〜42e、44a〜44eからの検出信号は、幅方向の位置が一致する磁気センサ42a〜42e、44a〜44e毎に個別に設けられた異物信号強調手段としての差動手段57により2つの入力信号の差分が算出されてから、AD変換手段52においてそれぞれアナログ信号からデジタル信号に変換され、判定手段53により予め設定された判定用閾値を参照して金属の有無が判定されるようになっている。また、判定手段53による判定結果は、結果表示手段54により表示される。このように、差動手段57により2つの信号の差分を計算することにより、各差動手段57から出力された信号は、
図10(b)に示すように、ノイズ成分が抑圧されるとともに異物信号が強調されたものとなるので、外乱ノイズによる影響を排除し、被検査物W中の微小な金属mを安定して高感度で検出することができる。
【0060】
以上のように、本実施の形態に係る金属検出装置10は、
図7(a)、
図9(a)、
図10(a)に示すように、被検査物Wを搬送するコンベア20と、被検査物W中の金属mを磁化する着磁部30と、被検査物Wの搬送方向と直交する直交方向(矢印Bで示す)に鋭指向性を有するとともに、直交方向に複数配列された磁気センサ41a〜41e、42a〜42e、43a〜43e、44a〜44eを有し、着磁部30により着磁された被検査物W中の金属mの残留磁気成分を検出する検出ヘッド40と、検出ヘッド40の直交方向の少なくとも両端に配置され、検出ヘッド40の内部に侵入するノイズを遮蔽する磁気シールド49と、検出ヘッド40の複数の磁気センサ41a〜41e、42a〜42e、43a〜43e、44a〜44eからの検出信号に基づいて被検査物W中の異物による信号を強調する異物信号強調手段としての相関手段55、差動手段57と、相関手段55、差動手段57からの信号に基づいて被検査物W中の金属mの有無を判定する判定手段53と、を備えている。
【0061】
この構成により、相関手段55により2つの信号の相互相関が計算されるか、または、差動手段57により2つの信号の差分が計算されることにより、各相関手段55または各差動手段から出力された信号は、
図7(b)、
図9(b)、
図10(b)に示すように、ノイズ成分が抑圧されるとともに異物信号が強調されたものとなるので、外乱ノイズによる影響を排除し、被検査物W中の微小な金属mを安定して高感度で検出することができる。
【0062】
また、本実施の形態に係る金属検出装置10は、
図7(a)、
図9(a)に示すように、相関手段55を備え、相関手段55により、検出ヘッド40の複数の磁気センサ41a〜41e、42a〜42e、43a〜43e、44a〜44eからの検出信号の相関を計算することで被検査物W中の異物による信号を強調することを特徴とする。
【0063】
この構成により、複数の検出信号の相関を計算することによりノイズ成分が抑圧されるとともに異物信号が強調されるので、外乱ノイズによる影響を排除し、被検査物W中の微小な金属mを安定して高感度で検出することができる。
【0064】
また、本実施の形態に係る金属検出装置10は、
図7(a)に示すように、タイミング信号発生手段73と、磁気センサ41a〜41e、42a〜42e、43a〜43e、44a〜44eの検出信号を保存する波形保存手段70と、を備え、コンベア22で搬送される被検査物Wの到来をタイミング信号発生手段73で捉え、タイミング信号を発生し、波形保存手段70に磁気センサ41a〜41e、42a〜42e、43a〜43e、44a〜44eからの信号を保存し、所定の波形を保存した後に波形保存手段70より波形を読み出し、検出信号の相関を計算することで被検査物W中の異物による信号を強調することを特徴とする。
【0065】
この構成により、複数の検出信号の相関を計算することによりノイズ成分が抑圧されるとともに異物信号が強調されるので、外乱ノイズによる影響を排除し、被検査物W中の微小な金属mを安定して高感度で検出することができる。
【0066】
また、本実施の形態に係る金属検出装置10は、
図9(a)に示すように、タイミング信号発生手段73と、検出ヘッド40の複数の磁気センサ41a〜41e、42a〜42eの検出信号を保存する第1の波形保存手段71と、被検査物W中に異物が含まれているときの磁気センサ41a〜41e、42a〜42eからの検出信号を保存する第2の波形保存手段72とを備え、コンベア22で搬送される被検査物Wの到来をタイミング信号発生手段73で捉え、タイミング信号を発生し、第1の波形保存手段71に磁気センサ41a〜41e、42a〜42eからの信号を保存し、所定の波形を保存した後に第1の波形保存手段71より波形を読み出し、検出信号の相関を計算することで被検査物W中の異物による信号を強調することを特徴とする。
【0067】
この構成により、複数の検出信号の相関を計算することによりノイズ成分が抑圧されるとともに異物信号が強調されるので、外乱ノイズによる影響を排除し、被検査物W中の微小な金属mを安定して高感度で検出することができる。
【0068】
また、本実施の形態に係る金属検出装置10は、
図10(a)に示すように、差動手段57が、検出ヘッド40の複数の磁気センサ41a〜41e、42a〜42e、43a〜43e、44a〜44eからの検出信号の差分を計算することで被検査物W中の異物による信号を強調することを特徴とする。
【0069】
この構成により、複数の検出信号の差分を計算することによりノイズ成分が抑圧されるとともに異物信号が強調されるので、外乱ノイズによる影響を排除し、被検査物W中の微小な金属mを安定して高感度で検出することができる。
【0070】
なお、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0071】
例えば、上記の実施の形態では、相関手段55、差動手段57は、2つの検出信号について相関または差分を計算しているが、3つ以上の検出信号について相関または差分を計算するようにしてもよい。