(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ショックアブソーバのロッド先端に取り付けられる内側部材と、車体側に取り付けられる外側部材と、前記内側部材および外側部材を連結すると共にゴム状弾性体から構成される防振基体とを備え、ストッパ板部を前記内側部材が備えると共に、前記ストッパ板部を受け止めるゴムストッパ部を前記防振基体が備えるストラットマウントにおいて、
前記ゴムストッパ部は、
前記内側部材のストッパ板部へ向けて突設され周方向に連続する環状の環状基部と、
前記環状基部の突設先端面から突出されると共に周方向に分散して配置される複数の突出部と、
前記複数の突出部の間に位置する凹部の底面に凹設されると共に前記環状基部の径方向に沿って延設される溝状の溝部と、を備え、
前記ゴムストッパ部は、前記環状基部の突設先端面からの突設高さがそれぞれ異なる複数の前記突出部を備え、前記複数の突出部の内の前記突設高さが最小となる最小突出部が周方向に併設されると共に、前記併設される最小突出部の間に位置する凹部に前記溝部が凹設され、
前記最小突出部は前記凹部を介して周方向に隣設され、その隣設された2つの前記最小突出部は、前記最小突出部より突出高さの高い他の前記突出部と前記凹部を介して周方向に隣設されることを特徴とするストラットマウント。
ショックアブソーバのロッド先端に取り付けられる内側部材と、車体側に取り付けられる外側部材と、前記内側部材および外側部材を連結すると共にゴム状弾性体から構成される防振基体とを備え、径方向外方へ張り出すストッパ板部を前記内側部材が備えると共に、前記ストッパ板部を受け止めるゴムストッパ部を前記防振基体が備えるストラットマウントにおいて、
前記ゴムストッパ部は、
前記内側部材のストッパ板部へ向けて突設され周方向に連続する環状の環状基部と、
前記環状基部の突設先端面から突出されると共に周方向に分散して配置され前記環状基部の突設先端面からの突設高さがそれぞれ異なる複数の突出部と、を備え、
前記複数の突出部の内の前記突設高さが最小となる最小突出部が周方向に併設されると共に、前記複数の突出部の間に位置する複数の凹部の内で、前記併設される最小突出部の間に位置する最小間凹部の凹設深さが最大とされ、
前記最小突出部は前記最小間凹部を介して周方向に隣設され、その隣設された2つの前記最小突出部は、前記最小突出部より突出高さの高い他の前記突出部と前記凹部を介して周方向に隣設されることを特徴とするストラットマウント。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施の形態におけるストラットマウント1の上面図であり、
図2は、
図1のII−II線におけるストラットマウント1の断面図である。なお、
図1及び
図2では、内側部材10にショックアブソーバのロッドRを締結固定すると共に外側部材20にダストカバーDCを装着した状態が図示される。
【0021】
図1及び
図2に示すように、ストラットマウント1は、自動車のサスペンション機構(懸架機構、図示せず)において、ショックアブソーバのロッドRと車体側(図示せず)との間に介設されることで、車輪側から車体側へ伝達される振動を低減する防振装置であり、ショックアブソーバのロッドR先端が締結固定される内側部材10と、車体側に締結固定される外側部材20と、それら内側部材10及び外側部材20を連結する防振基体30とを備える。
【0022】
内側部材10は、外周側に防振基体3が加硫接着されると共に鉄鋼材料から軸Oを有する筒状に形成される筒部11と、その筒部11に圧入されると共に鉄鋼材料からカップ状に形成される上カップ部12と、その上カップ部12と背中合わせで(即ち、底面同士を合わせた状態で)固着されると共に鉄鋼材料からカップ状に形成される下カップ部13とを備える。
【0023】
上カップ部12の上端側(
図2上側)には、径方向外方へフランジ状に張り出すフランジ板12aが形成される。リバウンド方向(内側部材10が
図2下方へ移動する方向)への変位入力時には、フランジ板12aが防振基体30の上ストッパ部32及び外側部材20の受圧部22に受け止められることで、外側部材20に対する内側部材10の相対変位が緩衝されつつ規制される。
【0024】
下カップ部13の底板13a(
図2上側面)は、上カップ部12のフランジ板12aと略同等の外径寸法を有する円形に形成され、バウンド方向(内側部材10が
図2上方へ移動する方向)への変位入力時には、下カップ部13の底板13aが防振基体30の下ストッパ部33及び外側部材20の受圧部22に受け止められることで、外側部材20に対する内側部材10の相対変位が緩衝されつつ規制される。
【0025】
外側部材20は、鉄鋼材料から上面視略三角形状に形成されると共に軸Oに対して傾斜して配置される上面板部21と、その上面板部21の中央部に開口された開口の内周縁から垂下されると共に内側部材10の筒部11に同軸の筒状に形成される受圧部22とを備える。受圧部22は、横U字状の断面形状を有すると共に、その内径寸法が上カップ部12のフランジ板12a及び下カップ部13の底板13aの外径寸法よりも小さくされる。
【0026】
なお、外側部材20の上面板部21は、外周縁部が底面側(
図2下側)へ向けて折り曲げ形成され、その折り曲げ形成された部分と防振基体30との間でダストカバーDCを挟み込み保持する。また、上面板部21には、角部となる3箇所に締結ボルトBが上面側に突出した状態で圧入固定される。
【0027】
防振基体30は、内側部材10と外側部材20との間を連結する部材であり、ゴム状弾性体から厚肉円環状に形成される。なお、防振基体30は、内側部材10が組み立てられる前に、筒部11と外側部材20とに加硫接着される。
【0028】
即ち、ストラットマウント1は、まず、加硫工程にて、筒部11と外側部材20との間を防振基体30により接続した成形品H1(例えば、
図4参照)を加硫成形し、次いで、成形品H1に対し、圧入工程にて、筒部11に上カップ部12を軸O方向へ所定位置まで圧入した後、溶接工程にて、上カップ部12の底面に下カップ部13の底面を突き合わせて同軸状に配置し、両カップ部12,13の底面同士をプロジェクション溶接により固着することで製造される。なお、溶接工程により両カップ部12,13の底面同士が固着された状態では、第1突出部32b1及び第3突出部33b1がフランジ板12a及び底板13aの間で圧縮される(
図2参照)。
【0029】
ここで、成形品H1に基づいて、外側部材20及び防振基体30の詳細構成について、
図3から
図7を参照して説明する。
図3は、成形品H1の上面図であり、
図4は、
図3のIV−IV線における成形品H1の断面図である。また、
図5は、成形品H1の底面図である。なお、
図3から
図5では、成形品H1に締結ボルトBが圧入固定される前の状態が図示される。また、
図3及び
図5では、形状を明確化して、理解を容易とするために、上ストッパ部32及び下ストッパ部33の凹凸形状が模式的に図示される。
【0030】
図3から
図5に示すように、外側部材20の受圧部22は、最内周側に位置し断面円弧状(
図4において中心が外周面側に位置する円弧状)に湾曲する円状連結部22aと、その円状連結部22aの上端側(
図4上側)から上面板部21へ向けて上昇傾斜する断面視直線状の傾斜受圧部22bと、その傾斜受圧部22bの上端側(延設方向先端側)から軸Oに沿って延設され上面板部21の内周縁に連結される連結部22cと、円状連結部22aの下端側(
図4下側)から径方向外方(軸Oに直角方向)へ向けて直線状に張り出す平行受圧部22dとを備える。
【0031】
なお、連結部22cは、上面板部21が受圧部22(軸O)に対して傾斜配置されることに伴い、側面視を平面に展開した形状が略三角形状に形成される。即ち、上面板部21の最下降傾斜側(
図4左側)で連結部22cの高さ寸法が最小(本実施の形態では高さ寸法が0)となり、最上昇傾斜側(
図4右側)で連結部22cの高さ寸法が最大となる。
【0032】
防振基体30は、その内周面側が内側部材10の筒部11の外周面に加硫接着され、内部に外側部材20の上面板部21の内周縁部分および受圧部22が埋設されると共に、その外周面が外側部材20の上面板部21の底面側に露出した状態で、全体として軸Oに同軸の厚肉円環状に形成される。
【0033】
この防振基体30は、内側部材10の筒部11の外周面と外側部材20の受圧部22における円状連結部22aとの間を連結する連結本体部31と、その連結本体部31に連なると共に外側部材20の受圧部22における傾斜受圧部22bの上面側(
図4上側)に配設される上ストッパ部32と、連結本体部31に連なると共に外側部材20の受圧部22における平行受圧部22dの底面側(
図4下側)に配設される下ストッパ部33と、その下ストッパ部33に連なると共に外側部材20の受圧部22における外周側および上面板部21の内周縁部分の底面側に配置される外周部34とを主に備える。
【0034】
上ストッパ部32は、外側部材20の受圧部22における傾斜受圧部22bの上面から上方(
図4上側)へ向けて突設され周方向に連続する軸方向視環状に形成される上環状部32aと、その上環状部32aの突設先端面(
図4上側面)から突出されると共に周方向に分散して配置される第1突出部32b1及び第2突出部32b2と、それら各突出部32b1,32b2の間に位置する凹部32cの一部の底面に凹設されると共に上環状部32aの径方向に沿って延設される溝状の溝部32dとを備える。
【0035】
上環状部32aは、その内周面と内側部材10の筒部11における外周面との間に所定の隙間を有して形成される。よって、リバウンド方向への変位が入力され、上カップ部12のフランジ板12a(
図2参照)を受け止める際には、上記隙間により、上ストッパ部32(上環状部32a)の変形性が確保される。
【0036】
第1突出部32b1及び第2突出部32b2は、
図3に示すように、周方向に交互に複数(本実施の形態では各4個の計8個)が配設され、それら各突出部32b1,32b2の間が凹部32cにより区切られる。即ち、第1突出部32b1及び第2突出部32b2は、
図3に示す軸方向視において、上環状部32aの上面(突設先端面、
図3紙面手前側面)から突設され軸Oを中心とする円環形状を複数の凹部32cで分断した形状にそれぞれ形成される。
【0037】
なお、凹部32cは、第1突出部32b1(又は第2突出部32b2)を挟んだ一対が対称の形状に形成されると共に、各凹部32cの凹設深さ(凹部32cの底面の軸方向(
図4上下方向)位置)がそれぞれ同一とされる。また、本実施の形態では、
図3に示す軸方向視において、第1突出部32b1の中心角が最大の角度とされ、第2突出部32b2及び凹部32cの順に、軸Oを中心とする中心角が小さな角度に設定される。
【0038】
溝部32dは、上ストッパ部32と内側部材10(上カップ部12)との間に形成される内部空間を外部空間に連通させ、両空間の間での空気の流通を行わせるための空気溝であり、上環状部32aから突出する断面三角形状の部分(
図6(b)参照)の内周面側から外周面側までにわたって直線状に延設される細幅の溝として凹部32cの底面に凹設される。
【0039】
なお、溝部32dは、所定の凹部32cのみに配置される。即ち、全ての凹部32cにそれぞれ溝部32dを設けるのではなく、一部の凹部32c(本実施の形態では2ヶ所の凹部32c)のみに溝部32dを設けるので、その分、上ストッパ部32のゴムボリュームを確保して、耐久性の向上を図ることができる。また、この場合には、複数の溝部32dが(本実施の形態では2個)が、周方向等間隔(本実施の形態では180°間隔)に配置されるので、上ストッパ部32が変形する際の対称性を確保できる。よって、この点からも耐久性の向上を図ることができる。
【0040】
ここで、
図6を参照して、上ストッパ部32の詳細構成について説明する。
図6(a)は、
図3のVIa−VIa線における成形品H1の部分拡大断面図であり、
図6(b)は、
図6(a)のVIb−VIb線における成形品H1の部分拡大断面図である。なお、
図6(a)には、
図3のVIa−VIa線における断面を平面に展開した状態が図示されると共に、その平面に展開した状態を切断した断面が
図6(b)に図示される。
【0041】
図6に示すように、第1突出部32b1、第2突出部32b2、凹部32c及び溝部32dは、上環状部32aから上方(
図6(b)上側)へ向けて突設される断面三角形状の部分に形成される。なお、断面三角形の部分は、内周側(
図6(b)左側)が軸O(
図4参照)に略垂直に形成されると共に外周側(
図6(b)右側)が頂部から上環状部32aの上面(突設先端面、
図6(b)上側面)へ向けて下降傾斜して形成される。
【0042】
第1突出部32b1は、
図6(a)に示す断面視においては、周方向(
図6(a)左右方向)の略中央部で突設高さが最大となり、その略中央部から両側の凹部32cへ向けて突設高さが漸次減少する突出部として形成される。また、第1突出部32b1は、
図6(b)に示す断面形状においては、上環状部32aから突設される上記断面三角形状の部分と同形状に形成される。
【0043】
第2突出部32b2は、上環状部32aの上面(突設先端面、
図6(b)上側面)からの突設高さが第1突出部32b1よりも低い突出部であり、
図6(a)に示す断面視においては、突設高さが周方向に沿って略一定となる突出部として形成される。また、第2突出部32b2は、
図6(b)に示す断面視においては、第1突出部32b1の山頂を軸O(
図4参照)に直交する平面で山払いした形状の突出部として形成される。
【0044】
凹部32cは、隣接する第1突出部32b1及び第2突出部32b2により両側面が形成される凹部であり、両側面を接続する底面が軸O(
図4参照)に直交する平坦面として形成される。また、凹部32cの断面形状は、
図6(a)に示す形状が
図6(b)の左右方向に沿って連続する。
【0045】
溝部32dは、凹部32cの底面に凹設されると共に軸O(
図3参照)から径方向外方へ向けて直線状に延設される細幅の溝であり、
図6(a)に示す断面形状が略U字状に形成される。また、溝部32dは、凹部32cの幅方向(
図6(a)左右方向)略中央に配設される。
【0046】
溝部32dの凹設深さ(底面の軸方向(
図6(b)上下方向)位置)は、上環状部32aの上面(突設先端面、
図6(b)上側面)に達しない深さとされる。また、溝部32dの断面形状は、
図6(a)に示す形状が
図6(b)の左右方向に沿って連続する。よって、溝部32dの延設方向両端は、上環状部32aから突設される上記断面三角形状の内周面(
図6(b)左側)と外周面(
図6(b)右側)とにそれぞれ開口される。
【0047】
なお、溝部32dは、その溝幅(
図6(a)左右方向寸法)が、凹部32cの底面幅(
図6(a)左右方向幅)に対し、略20%以上かつ40%以下に設定され、凹設深さ(溝部32dの開口から底面までの寸法、
図6(a)上下方向寸法)が、第2突出部32b2の上面から凹部32cの底面までの軸方向長さ(
図6(b)上下方向寸法)に対し、略90%以上かつ110%以下に設定されることが好ましい。リバウンド方向への大変位入力時に溝部32dが塞がれることを抑制して、空気を逃がす効果を確保しつつ、溝部32d近傍の耐久性を確保するためである。
【0048】
以上のように、上ストッパ部32は、外側部材20の傾斜受圧部22b(
図4参照)の上面から上方(即ち、上カップ部12のフランジ板12a、
図2参照)へ向けて突設される上環状部32aと、上環状部32aの上面(突設先端面)から突出され周方向に分散配置される第1突出部32b1及び第2突出部32b2とを備えるので、リバウンド方向への変位入力により、内側部材10が外側部材20に対して相対変位(
図2下方向へ変位)して、内側部材10の上カップ部12におけるフランジ板12aが上ストッパ部32により受け止められる際には(
図2参照)、まず、各突出部32b1,32b2が圧縮され、次いで、上環状部32aが圧縮されるので、変位入力に伴ってばね定数が徐々に高くなる非線形特性を得ることができる。
【0049】
この場合、溝部32dは、各突出部32b1,32b2の間に位置する凹部32cの底面に凹設されるので、リバウンド方向への大変位が入力され、上ストッパ部32が内側部材10の上カップ部12におけるフランジ板12aにより大きく押し潰されても、上ストッパ部32と内側部材10との間に密閉された空間が形成されることを抑制できる。即ち、溝部32dを介して、上ストッパ部32と内側部材10との間に形成される内部空間を外部空間に連通させ空気を逃がすことができるので、内部空間内の空気が圧縮されることや負圧になることを抑制できる。その結果、リバウンド方向への大変位入力時の排出音や吸着音による異音の発生を抑制できる。
【0050】
なお、各突出部32b1,32b2は、変位入力に伴い繰り返し変形されると共にその変形量も大きい部位であるため、これらの上面や側面に溝部32dを設けたのでは耐久性の低下を招くところ、本実施の形態では、溝部32dが凹部32cの底面(即ち、変位入力に伴う変形の回数およびその際の変形量が最も少ない部位)に凹設されるので、その分、耐久性の向上を図ることができる。
【0051】
図3から
図5に戻って説明する。下ストッパ部33は、外側部材20の受圧部22における円状連結部22a、平行受圧部22d及び傾斜受圧部22bの底面(
図4下側面)から下方(
図4下側)へ向けて突設され周方向に連続する軸方向視環状に形成される下環状部33aと、その下環状部33aの突設先端面(
図4下側面)から突出されると共に周方向に分散して配置される第3突出部33b1及び第4突出部33b2と、第4突出部33b2同士の間に位置する凹部33c2の底面に凹設されると共に下環状部33aの径方向に沿って延設される溝状の溝部33dとを備える。
【0052】
下環状部33aは、上環状部32aと同様に、その内周面と内側部材10の筒部11における外周面との間に所定の隙間を有して形成される。よって、バウンド方向への変位が入力され、下カップ部13の底板13a(
図2参照)を受け止める際には、上記隙間により、下ストッパ部33(下環状部33a)の変形性が確保される。
【0053】
第3突出部33b1及び第4突出部33b2は、
図5に示すように、周方向に複数(本実施の形態では第3突出部33b1が4個および第4突出部33b2が8個の計12個)が配設され、それら各突出部33b1,33b2の間が凹部33c1,33c2により区切られる。即ち、第3突出部33b1及び第4突出部33b2は、
図5に示す軸方向視において、下環状部33aの底面(突設先端面、
図5紙面手前側面)から突設され軸Oを中心とする円環形状を複数の凹部33c1,33c2で分断した形状にそれぞれ形成される。
【0054】
なお、第3突出部33b1及び第4突出部33b2は、周方向に2個の第4突出部33b2が配設される毎に1個の第3突出部33b1が配設される。また、第3突出部33b1と第4突出部33b2との間は凹部33c1により、第4突出部33b2同士の間は凹部33c2により、それぞれ区切られる。
【0055】
凹部33c1は、第3突出部33b1を挟んで一対が対称の形状に形成される。各凹部33c1,33c2の凹設深さ(凹部33c1,33c2の底面の軸方向(
図4上下方向)位置)がそれぞれ同一とされる。また、本実施の形態では、
図5に示す軸方向視において、第4突出部33b2の中心角が最大の角度とされ、第3突出部33b1及び凹部33c1,33c2の順に、軸Oを中心とする中心角が小さな角度に設定される。
【0056】
溝部33dは、下ストッパ部33と内側部材10(上カップ部12及び下カップ13)との間に形成される内部空間を外部空間に連通させ、両空間の間での空気の流通を行わせるための空気溝であり、下環状部33aから突出する断面台形形状の部分(
図7(b)参照)の内周面側から外周面側までにわたって直線状に延設される細幅の溝として凹部33c2の底面に凹設される。
【0057】
なお、溝部33dは、全ての凹部33c2に配置される。後述するように、凹部33c2は、第4突出部33b2同士の間に位置する凹部であるため、変位入力に伴う変形が少ない。即ち、凹部33c2であれば、溝部33c2を設けても、耐久性を確保することができる。一方、このように、溝部33dを全ての凹部33c2に設けることで、空気を逃がす機能を確実に発揮させることができる。
【0058】
ここで、
図7を参照して、下ストッパ部33の詳細構成について説明する。
図7(a)は、
図5のVIIa−VIIa線における成形品H1の部分拡大断面図であり、
図7(b)は、
図7(a)のVIIb−VIIb線における成形品H1の部分拡大断面図である。なお、
図7(a)には、
図5のVIIa−VIIa線における断面を平面に展開した状態が図示されると共に、その平面に展開した状態を切断した断面が
図7(b)に図示される。
【0059】
図7に示すように、第3突出部33b1、第4突出部33b2、凹部33c及び溝部33dは、下環状部33aから下方(
図7(b)上側)へ向けて突設される断面台形形状の部分(
図7(b)参照)に形成される。なお、断面台形形状の部分は、内周側(
図7(b)右側)が軸O(
図4参照)に略垂直に形成されると共に外周側(
図7(b)左側)が上底(
図7(b)上側部分)から下環状部33aの底面(突設先端面、
図7(b)上側面)へ向けて下降傾斜して形成される。
【0060】
第3突出部33b1は、
図7(a)に示す断面視においては、周方向(
図7(a)左右方向)の略中央部で突設高さが最大となる円弧状に湾曲した形状の突出部として形成される。また、第3突出部33b1は、
図7(b)に示す断面形状においては、下環状部33aから突設される上記断面台形形状の部分と相似の台形形状に形成される。即ち、下環状部33aから突設される上記断面台形形状の部分は、第3突出部331b1の部分のみが外周側(
図7(b)左側)に大きくされる(
図5参照)。
【0061】
第4突出部33b2は、下環状部33aの底面(突設先端面、
図7(b)上側面)からの突設高さが第3突出部33b1よりも低い突出部であり、
図7(a)に示す断面視においては、周方向(
図7(a)左右方向)の略中央部で突設高さが最大となると共に第3突出部33b1よりも大きな半径で円弧状に湾曲した形状の突出部として形成される。
【0062】
凹部33c1は隣接する第3突出部33b1及び第4突出部33b2により、凹部33c2は隣接する第4突出部33b2により、それぞれ両側面が形成される凹部である。これら凹部33c1,33c2は、
図7(a)に示す断面視においては、周方向(
図7(a)左右方向)の略中央部で凹設深さが最大となる円弧状に湾曲した形状の凹部として形成されると共に、凹設深さが最大となる部位(底面)は、
図7(b)に示すように、軸O(
図4参照)に直交する方向に延設される。なお、本実施の形態では、凹部33c2が凹部33c1よりも大きな半径で円弧状に湾曲され、大変位入力時に溝部33dが塞がれることが抑制される。
【0063】
溝部33dは、凹部33c2に凹設されると共に軸O(
図5参照)から径方向外方へ向けて直線状に延設される細幅の溝であり、
図7(a)に示す断面形状が略U字状に形成される。また、溝部33dは、凹部33c2の幅方向(
図7(a)左右方向)略中央となる位置(底面)に配設される。
【0064】
溝部33dの凹設深さ(底面の軸方向(
図7(b)上下方向)位置)は、下環状部33aの底面(突設先端面、
図7(b)上側面)に達しない深さとされる。また、溝部33dの断面形状は、
図7(a)に示す形状が
図7(b)の左右方向に沿って連続する。よって、溝部33dの延設方向両端は、下環状部33aから突設される上記断面台形形状の内周面(
図7(b)左側)と外周面(
図7(b)右側)とにそれぞれ開口される。
【0065】
なお、溝部33dは、その溝幅(
図7(a)左右方向寸法)が、凹部33c2の幅(隣接する一対の第4突出部33b2の円弧と凹部33c2の円弧との交点の間の距離、
図7(b)左右方向寸法)に対し、略10%以上かつ30%以下に設定され、凹設深さ(溝部33dの開口から底面までの寸法、
図7(a)上下方向寸法)が、第4突出部33b2の頂部から凹部33c2の底面(最深部)までの軸方向長さ(
図7(b)上下方向寸法)に対し、略40%以上かつ80%以下に設定されることが好ましい。バウンド方向への大変位入力時に溝部33dが塞がれることを抑制して、空気を逃がす効果を確保しつつ、溝部33d近傍の耐久性を確保するためである。
【0066】
以上のように、下ストッパ部33は、外側部材20の受圧部22(
図4参照)の底面から下方(即ち、下カップ部13の底板13a、
図2参照)へ向けて突設される下環状部33aと、下環状部33aの底面(突設先端面)から突出され周方向に分散配置される第3突出部33b1及び第4突出部33b2とを備えるので、バウンド方向への変位入力により、内側部材10が外側部材20に対して相対変位(
図2上方向へ変位)して、内側部材10の下カップ部13における底板13aが下ストッパ部33により受け止められる際には(
図2参照)、上述したリバウンド方向への変位入力時と同様に、まず、各突出部33b1,33b2が圧縮され、次いで、下環状部33aが圧縮されるので、変位入力に伴ってばね定数が徐々に高くなる非線形特性を得ることができる。
【0067】
この場合、下ストッパ部33は、溝部33dを備えるので、上述したリバウンド方向への変位入力時と同様に、溝部33dを介して、下ストッパ部33と内側部材10(上下カップ部12、13)との間に形成される内部空間を外部空間に連通させることができ、バウンド方向への大変位入力時の排出音や吸着音による異音の発生を抑制できる。
【0068】
ここで、下ストッパ部33は、第4突出部33b2(即ち、下ストッパ部33の中で突設高さが最小となる突出部)が周方向に併設されると共に、この併設される第4突出部33b2の間に位置する凹部33c2に溝部33dが凹設される。よって、異音の発生をより確実に抑制できる。
【0069】
即ち、バウンド方向への変位入力に伴い、下カップ部13の底板13aの変位を下ストッパ部33で受け止める際には、突設高さが高い突出部から順に圧縮される(即ち、まず、第3突出部33b1が圧縮され、次いで、第4突出部33b2が圧縮される)ため、大変位入力時には、突設高さが高い突出部(即ち、第3突出部33b1)ほど圧縮率が高くなり、圧縮に伴い発生する余肉も大きくなる。
【0070】
この場合、突設高さが最小となる突出部(即ち、第4突出部33b2)は、体積が小さい上に圧縮率も最低となるため、かかる第4突出部33b2の間の凹部33c2に溝部33dを凹設することで、溝部33dが余肉によって塞がれることを抑制できる。その結果、大変位入力時でも、空気を逃がす効果を維持して、その分、異音の発生をより確実に抑制できる。
【0071】
また、このように、併設される第4突出部33b2(突設高さが最小の突出部)の間の凹部33c2に溝部33dを凹設することで、溝部33dの断面積を小さくすることができる。よって、その分、凹部33c2近傍のゴム状弾性体の体積(ゴムボリューム)を確保して、耐久性の向上を図ることができる。また、溝部33dが凹設される凹部33c2は、変位入力に伴う繰り返し変形(下カップ部13の底板13aによる押圧)の回数およびその際の変形量が最も少ない部位であるので、その分、耐久性の向上を図ることができる。
【0072】
次いで、
図8及び
図9を参照して、第2実施の形態におけるストラットマウントについて説明する。第1実施の形態では、凹部32c,33c2に溝部32d,33dを凹設して空気溝とする場合を説明したが、第2実施の形態における凹部232c3には、溝部が凹設されず、凹部232c3自体が空気溝として機能するように構成される。なお、第1実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0073】
図8は、第2実施の形態における成形品H2の上面図である。なお、
図8では、成形品H2に締結ボルトB(
図2参照)が圧入固定される前の状態が図示される。また、
図8では、形状を明確化して、理解を容易とするために、上ストッパ部232の凹凸形状が模式的に図示される。
【0074】
なお、第2実施の形態における成形品H2は、その防振基体230の構成が、第1実施の形態における成形品H1の防振基体30の構成と異なる点を除き、他の構成は第1実施の形態における成形品H1と同一である。また、第2実施の形態における防振基体230は、その上ストッパ部232の構成が、第1実施の形態における防振基体30の上ストッパ部32の構成と異なる点を除き、他の構成は第1実施の形態における防振基体30と同一である。これら同一の構成については、その説明を省略する。
【0075】
図8に示すように、上ストッパ部232は、上環状部32aと、その上環状部32aの突設先端面(
図8誌面手前側面)から突出されると共に周方向に分散して配置される高突出部232b1、中突出部232b2及び低突出部232b3と、それら各突出部232b1〜232b3の間に位置する凹部232c1〜232c3とを備える。
【0076】
高突出部232b1、中突出部232b2及び低突出部232b3は、
図8に示すように、周方向に分散して配設され、それら各突出部232b1〜232b3の間が凹部232c1〜232c3により区切られる。即ち、各突出部232b1〜232b3は、第1実施の形態の場合と同様に、
図8に示す軸方向視において、上環状部32aの上面(突設先端面、
図8紙面手前側面)から突設され軸Oを中心とする円環形状を複数の凹部232c1〜232c3で分断した形状にそれぞれ形成される。
【0077】
なお、本実施の形態では、2個の低突出部232b3の間に2個の中突出部232b2が配設されると共にそれら2個の中突出部232b2の間に1個の高突出部232b1が配設されてなる群を一組として、この群が周方向に複数組(本実施の形態では3組)配設される。
【0078】
高突出部232b1と中突出部232b2との間は凹部232c1により、中突出部232b2と低突出部232b3との間は凹部232c2により、低突出部232b3同士の間は凹部232c3により、それぞれ区切られる。凹部232c1及び凹部232c2は、高突出部232b1を挟んで対称の形状に形成されると共に、その凹設深さ(凹部232c1,232c2の底面の軸方向(
図8紙面垂直方向)位置)がそれぞれ同一とされる。一方、凹部232c3の凹設深さは、凹部232c1,232c2の凹設深さよりも深くされる(
図9(b)参照)。
【0079】
また、本実施の形態では、
図8に示す軸方向視において、中突出部232b2及び低突出部232b3の軸Oを中心とする中心角が同一とされる共に、各凹部232c1〜232c3の軸Oを中心とする中心角が同一とされる。また、この中心角は、高突出部232b1の中心角が最大で、中突出部232b2及び低突出部232b3、凹部232c1〜232c3の順に、小さな角度に設定される。
【0080】
ここで、
図9を参照して、第2実施の形態における上ストッパ部232の詳細構成について説明する。
図9(a)は、
図8のIXa−IXa線における成形品H2の部分拡大断面図であり、
図9(b)は、
図9(a)のIXb−IXb線における成形品H2の部分拡大断面図である。なお、
図9(a)には、
図8のIXa−IXa線における断面を平面に展開した状態が図示されると共に、その平面に展開した状態を切断した断面が
図9(b)に図示される。
【0081】
図9に示すように、高突出部232b1、中突出部232b2及び低突出部232b3は、上環状部32aから上方(
図9(b)上側)へ向けて突設される断面三角形状の部分に形成される。なお、断面三角形の部分は、内周側(
図9(b)左側)が軸O(
図8参照)に略垂直に形成されると共に外周側(
図9(b)右側)が頂部から上環状部32aの上面(突設先端面、
図9(b)上側面)へ向けて下降傾斜して形成される。
【0082】
高突出部232b1は、
図9(a)に示す断面視においては、周方向(
図9(a)左右方向)の略中央部で突設高さが最大となり、その略中央部から両側の凹部232c1へ向けて突設高さが下降傾斜する突出部として形成される。また、高突出部232b1は、
図9(b)に示す断面形状においては、上環状部32aから突設される上記断面三角形状の部分と同形状に形成される。
【0083】
中突出部232b2及び低突出部232b3は、上環状部32aの上面(突設先端面、
図9(b)上側面)からの突設高さが高突出部232b1よりも低い突出部であり、
図9(a)に示す断面視においては、突設高さが周方向に沿って略一定となる突出部として形成される。また、中突出部232b2及び低突出部232b3は、
図9(b)に示す断面視においては、高突出部232b1の基部側を軸O(
図8参照)に直交する平面で山払いした形状の突出部として形成される。なお、中突出部232b2の突設高さは、高突出部232b1の突設高さの半分以下の寸法に設定され、かつ、低突出部232b3の突設高さよりも大きな寸法に設定される。
【0084】
凹部232c1は隣接する高突出部232b1及び中突出部232b2により、凹部232c2は隣接する中突出部232b2及び低突出部232b3により、それぞれ両側面が形成される凹部である。これら凹部232c1,232c2は、
図9(a)に示す断面視においては、周方向(
図9(a)左右方向)の略中央部で凹設深さが最大となる円弧状に湾曲した形状の凹部として形成される。
【0085】
なお、凹部232c1,232c2の断面形状は、
図9(a)に示す形状が
図9(b)の左右方向に沿って連続する。また、凹部232c1,232c2の凹設深さ(底面の軸方向(
図9(b)上下方向)位置)は、上環状部32aの上面(突設先端面、
図9(b)上側面)に達しない深さとされる。よって、凹部232c1,232c2の延設方向両端は、上環状部32aから突設される上記断面三角形状の内周面(
図9(b)左側)と外周面(
図9(b)右側)とにそれぞれ開口される。
【0086】
凹部232c3は、隣接する低突出部232b3により両側面が形成される凹部である。凹部232c3は、
図9(a)に示す断面視においては、周方向(
図9(a)左右方向)の略中央部で凹設深さが最大となる円弧状に湾曲した底面を有する形状の凹部として形成される。また、凹部232c3の断面形状は、
図9(a)に示す形状が
図9(b)の左右方向に沿って連続する。
【0087】
ここで、凹部232c3の凹設深さ(底面の軸方向(
図9(b)上下方向)位置)は、上環状部32aの上面(突設先端面、
図9(b)上側面)を越える深さとされる。即ち、凹部232c3の
図9(a)において半円状に形成される底面側部分が少なくとも上環状部32aの上面よりも深い位置(
図9(b)下側)に配置される。また、凹部232c3の延設方向片方(
図9(b)右側)の端部は、各突出部232b1〜232b3の形成領域を越えて、上環状部32aの外周側に延設される。
【0088】
よって、凹部232c3は、上環状部32aから突設され高突出部232b1等が形成される部分の内周面および外周面に開口するだけでなく、一端側(
図9(b)左側)が上環状部32aの内周面に開口し、かつ、他端側(
図9(b)右側)が上環状部32aの上面(突設先端面、
図9(b)上側面)に開口する。
【0089】
以上のように、第2実施の形態における上ストッパ部232は、上環状部32aと、その上環状部32aの上面(突設先端面)から突出され周方向に分散配置される各突出部232b1〜232b3とを備えるので、リバウンド方向への変位入力時には、第1実施の形態の場合と同様に、各突出部232b1〜232b3と上環状部32aとがそれぞれ順に圧縮されることで、変位入力に伴ってばね定数が徐々に高くなる非線形特性を得ることができる。
【0090】
この場合、第2実施の形態における上ストッパ部232は、凹部232c3が他の凹部232c1,232c2よりも凹設深さが大きくされるので、第1実施の形態において溝部32dを介して行われたのと同様に、凹部232c3を介して、上ストッパ部232と内側部材10(上カップ部12、
図2参照)との間に形成される内部空間を外部空間に連通させることができ、その結果、バウンド方向への大変位入力時の排出音や吸着音による異音の発生を抑制できる。
【0091】
ここで、第2実施の形態では、低突出部232b3(即ち、上ストッパ部232の中で突設高さが最小となる突出部)が周方向に併設され、この併設される低突出部232b3の間に位置する凹部232c3の凹設深さが大きくされることで、空気を逃がすための空気溝として利用される。よって、異音の発生をより確実に抑制できる。
【0092】
即ち、リバウンド方向への変位入力に伴い、上カップ部12のフランジ板12aの変位を上ストッパ部232で受け止める際には、突設高さが高い突出部から順に圧縮される(即ち、まず、高突出部232b1が圧縮され、次いで、中突出部232b2が圧縮され、最後に低突出部232b3が圧縮される)ため、大変位入力時には、突設高さが高い突出部(即ち、高突出部232b1側)ほど圧縮率が高くなり、圧縮に伴い発生する余肉も大きくなる。
【0093】
この場合、突設高さが最小となる突出部(即ち、低突出部232b3)は、体積が小さい上に圧縮率も最低となるため、かかる低突出部232b3の間の凹部232c3は、余肉によって塞がれることが抑制される。よって、かかる凹部232c3の凹設深さを大きくして、空気溝として利用することで、大変位入力時でも、空気を逃がす効果を維持して、その分、異音の発生をより確実に抑制できる。
【0094】
なお、この空気溝として利用する凹部232c3は、上環状部32aの上面(突設先端面、
図9(b)上側面)よりも深い位置まで凹設されると共に、一端側が上環状部32aの内周面に開口し、かつ、他端側が上環状部32aの上面(突設先端面)に開口するので、大変位が入力され、上ストッパ部232が上カップ部12のフランジ板12aによって大きく押し潰されても、凹部232c3が余肉によって塞がれることを抑制して、空気を逃がす役割を確実に発揮させることができる。
【0095】
即ち、大変位入力時でも、内側部材10(上カップ部12、
図2参照)と上ストッパ部232との間に形成される内部空間を外部空間に連通させる通路を凹部232c3により確保して、確実に空気を逃がすことができ、その結果、異音の発生をより確実に抑制できる。
【0096】
また、凹部232c3は、変位入力に伴う繰り返し変形(上カップ部12のフランジ板12aによる押圧)の回数およびその際の変形量が最も少ない部位であるので、その分、耐久性の向上を図ることができる。
【0097】
更に、第2実施の形態では、細幅の溝部(例えば、
図6(a)に示す溝部32d)を凹設する必要がないので、応力集中による耐久性の低下を抑制することができる。また、溝部を凹設するために、加硫金型に小さな凸部を設ける必要がないので、その分、加硫金型の製造コスト及びメンテナンスコストを低減することができる。
【0098】
次いで、
図10を参照して、第3実施の形態におけるストラットマウントについて説明する。第1実施の形態では、溝部32dの凹設深さが上環状部32aの上面に達しない深さとされる場合を説明したが、第3実施の形態における溝部332dは、上環状部32aの上面を越える深さ位置まで凹設される。なお、第1実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0099】
図10(a)は、第3実施の形態における成形品H3の部分拡大断面図であり、
図10(b)は、
図10(a)のXb−Xb線における成形品H3の部分拡大断面図である。なお、
図10(a)は、
図6(a)に対応し、
図10(b)は、
図6(b)に対応する。
【0100】
第3実施の形態における成形品H3は、防振基体330の上ストッパ部332の構成が、第1実施の形態における成形品H1の防振基体30の上ストッパ部32と異なる(具体的には、第3実施の形態における溝部332dの凹設深さが、第1実施の形態における溝部32dの凹設深さよりも深くされる)点を除き、他の構成は第1実施の形態における成形品H1と同一であるので、その説明を省略する。
【0101】
図10に示すように、第3実施の形態における溝部332dは、その凹設深さ(底面の軸方向(
図10(b)上下方向)位置)が、上環状部32aの上面(突設先端面、
図10(b)上側面)を越える深さとされる。即ち、溝部332dの
図10(a)において半円状に形成される底面側部分が少なくとも上環状部32aの上面よりも深い位置(
図10(b)下側)に配置される。また、溝部332dの延設方向片方(
図10(b)右側)の端部は、各突出部32b1,32b2の形成領域を越えて、上環状部32aの外周側に延設される。よって、溝部332dは、上環状部32aから突設され第1突出部32b1等が形成される部分の内周面および外周面に開口するだけでなく、一端側(
図10(b)左側)が上環状部32aの内周面に開口し、かつ、他端側(
図10(b)右側)が上環状部32aの上面(突設先端面、
図10(b)上側面)に開口する。
【0102】
以上のように、第3実施の形態における上ストッパ部332は、空気溝として利用する溝部332dの凹設深さが第1実施の形態における場合よりも深くされ、一端側が上環状部32aの内周面に開口し、かつ、他端側が上環状部32aの上面(突設先端面)に開口するので、大変位が入力され、上ストッパ部332が上カップ部12のフランジ板12aによって大きく押し潰されても、溝部332dが余肉によって塞がれることを抑制して、内側部材10(上カップ部12、
図2参照)と上ストッパ部332との間に形成される内部空間を外部空間に連通させる通路を溝部332dにより確保できる。これにより、空気を逃がす役割を確実に発揮させることができ、その結果、異音の発生をより確実に抑制できる。
【0103】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0104】
上記各実施の形態で説明した数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。例えば、第1実施の形態では、隣接する第1突出部32b1及び第2突出部32b2を1の群とした場合に、この群の数を4とする場合を説明したが、かかる群の数を3以下としても良く、或いは、5以上としても良い。1の群を構成する突出部の数についても任意に設定できる。また、溝部32dの数を2とする場合を説明したが、溝部32dの数を1としても良く、或いは、3以上としても良い。他の実施の形態においても同様であるので説明は省略する。
【0105】
上記各実施の形態で説明した各突出部32b1等、凹部32c等および溝部32d等の形状は一例であり、他の形状を採用することは当然可能である。
【0106】
上記各実施の形態では、上ストッパ部32,232,332と下ストッパ部33とが異なる構成とされる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、同じ構成とすることは当然可能である。また、各実施の形態における上ストッパ部32,232,332と下ストッパ部33とを組み合わせて構成しても良い。
〈その他〉
〈手段〉
技術的思想1記載のストラットマウントは、ショックアブソーバのロッド先端に取り付けられる内側部材と、車体側に取り付けられる外側部材と、前記内側部材および外側部材を連結すると共にゴム状弾性体から構成される防振基体とを備え、ストッパ板部を前記内側部材が備えると共に、前記ストッパ板部を受け止めるゴムストッパ部を前記防振基体が備え、前記ゴムストッパ部は、前記内側部材のストッパ板部へ向けて突設され周方向に連続する環状の環状基部と、前記環状基部の突設先端面から突出されると共に周方向に分散して配置される複数の突出部と、前記複数の突出部の間に位置する凹部の底面に凹設されると共に前記環状基部の径方向に沿って延設される溝状の溝部と、を備える。
技術的思想2記載のストラットマウントは、技術的思想1記載のストラットマウントにおいて、前記ゴムストッパ部は、前記環状基部の突設先端面からの突設高さがそれぞれ異なる複数の前記突出部を備え、前記複数の突出部の内の前記突設高さが最小となる最小突出部が周方向に併設されると共に、前記併設される最小突出部の間に位置する凹部に前記溝部が凹設される。
技術的思想3記載のストラットマウントは、ショックアブソーバのロッド先端に取り付けられる内側部材と、車体側に取り付けられる外側部材と、前記内側部材および外側部材を連結すると共にゴム状弾性体から構成される防振基体とを備え、径方向外方へ張り出すストッパ板部を前記内側部材が備えると共に、前記ストッパ板部を受け止めるゴムストッパ部を前記防振基体が備え、前記ゴムストッパ部は、前記内側部材のストッパ板部へ向けて突設され周方向に連続する環状の環状基部と、前記環状基部の突設先端面から突出されると共に周方向に分散して配置され前記環状基部の突設先端面からの突設高さがそれぞれ異なる複数の突出部と、を備え、前記複数の突出部の内の前記突設高さが最小となる最小突出部が周方向に併設されると共に、前記複数の突出部の間に位置する複数の凹部の内で、前記併設される最小突出部の間に位置する最小間凹部の凹設深さが最大とされる。
技術的思想4記載のストラットマウントは、技術的思想1若しくは2に記載の溝部または技術的思想3記載の最小間凹部は、前記環状基部の突設先端面よりも深い位置まで凹設されると共に、一端側が前記環状基部の内周面に開口し、かつ、他端側が前記環状基部の突設先端面に開口する。
〈発明の効果〉
技術的思想1記載のストラットマウントによれば、ゴムストッパ部は、内側部材のストッパ板部へ向けて突設され周方向に連続する環状の環状基部と、その環状基部の突設先端面から突出されると共に周方向に分散して配置される複数の突出部とを備えるので、内側部材が外側部材に対して相対的に変位して、内側部材のストッパ板部がゴムストッパ部により受け止められる際には、まず、各突出部が圧縮され、次いで、環状基部が圧縮されるので、ばね定数が徐々に高くなる非線形特性を得ることができる。
この場合、技術的思想1では、複数の突出部の間に位置する凹部の底面に凹設されると共に環状基部の径方向に沿って延設される溝状の溝部を備えるので、大変位の入力により、ゴムストッパ部が内側部材のストッパ板部により大きく押し潰されても、ゴムストッパ部と内側部材との間に密閉された空間が形成されることを抑制できる。即ち、溝部を介して、ゴムストッパ部と内側部材との間の内部空間を外部空間と連通させ空気を逃がすことができるので、内部空間内の空気が圧縮されることや負圧になることを抑制できる。その結果、大変位入力時の排出音や吸着音による異音の発生を抑制できるという効果がある。
なお、突出部は、変位入力に伴い繰り返し変形されると共にその変形量も大きい部位であるため、溝部が設けられると耐久性の低下を招くところ、技術的思想1では、溝部が凹設されるのは凹部の底面であり、変位入力に伴う変形の回数およびその際の変形量が最も少ない部位であるため、その分、耐久性の向上を図ることができる。
技術的思想2記載のストラットマウントによれば、技術的思想1記載のストラットマウントの奏する効果に加え、ゴムストッパ部は、環状基部の突設先端面からの突設高さがそれぞれ異なる複数の突出部を備えるので、これら各突出部が順に圧縮されることで、ばね定数が徐々に高くなる非線形特性をより確実に得ることができる。
この場合、複数の突出部は、突設高さが最小となる最小突出部が周方向に併設されると共に、この併設される最小突出部の間に位置する凹部に溝部が凹設されるので、異音の発生をより確実に抑制できるという効果がある。即ち、突設高さが高い突出部から順に圧縮されるため、大変位入力時には、突設高さが高い突出部ほど圧縮率が高くなり、圧縮に伴い発生する余肉も大きくなるところ、最小突出部は体積が小さい上に圧縮率も最低となるため、かかる最小突出部の間の凹部に溝部を凹設することで、溝部が余肉によって塞がれることを抑制できる。その結果、大変位入力時でも、空気を逃がす効果を維持して、その分、異音の発生をより確実に抑制できる。
また、このように、併設される最小突出部の間の凹部に溝部を凹設することで、溝部の断面積を小さくすることができるので、その分、凹部近傍のゴム状弾性体の体積(ゴムボリューム)を確保して、耐久性の向上を図ることができる。また、溝部が凹設される上記凹部は、変位入力に伴う繰り返し変形の回数およびその際の変形量が最も少ない部位であるので、その分、耐久性の向上を図ることができる。
技術的思想3記載のストラットマウントによれば、ゴムストッパ部は、内側部材のストッパ板部へ向けて突設され周方向に連続する環状の環状基部と、その環状基部の突設先端面から突出されると共に周方向に分散して配置される複数の突出部とを備えるので、内側部材が外側部材に対して相対的に変位して、内側部材のストッパ板部がゴムストッパ部により受け止められる際には、まず、各突出部が圧縮され、次いで、環状基部が圧縮されるので、ばね定数が徐々に高くなる非線形特性を得ることができる。また、各突出部は、環状基部の突設先端面からの突設高さがそれぞれ異なるので、これら各突出部が順に圧縮されることで、ばね定数が徐々に高くなる非線形特性をより確実に得ることができる。
この場合、技術的思想3では、複数の突出部の内の突設高さが最小となる最小突出部が周方向に併設されると共に、複数の突出部の間に位置する複数の凹部の内で、併設される最小突出部の間に位置する最小間凹部の凹設深さが最大とされるので、かかる最小間凹部により空気を逃がし、異音の発生を抑制できるという効果がある。
即ち、突設高さが高い突出部から順に圧縮されるため、大変位入力時には、突設高さが高い突出部ほど圧縮率が高くなり、圧縮に伴い発生する余肉も大きくなるところ、最小突出部は体積が小さい上に圧縮率も最低となるため、かかる最小突出部の間に位置する最小間凹部の凹設深さを最大としておくことで、最小間凹部が余肉によって塞がれることを抑制できる。その結果、大変位入力時でも、内側部材とゴムストッパとの間に形成される内部空間から外部空間へ最小間凹部によって空気を逃がすことができるので、内部空間内の空気が圧縮されることや負圧になることを抑制できる。その結果、大変位入力時の排出音や吸着音による異音の発生を抑制できるという効果がある。
また、このように、最小突出部の間に位置する最小間凹部の凹設深さを最大として空気を逃がす構成とすることで、溝部を凹設する必要がないので、応力集中による耐久性の低下を抑制することができるという効果がある。また、溝部を凹設するために、加硫金型に小さな凸部を設ける必要がないので、加硫金型の製造コスト及びメンテナンスコストを低減することができるという効果がある。
技術的思想4記載のストラットマウントによれば、技術的思想1から3のいずれか1項に記載のストラットマウントの奏する効果に加え、技術的思想1若しくは2に記載の溝部または技術的思想3記載の最小間凹部は、環状基部の突設先端面よりも深い位置まで凹設されると共に、一端側が環状基部の内周面に開口し、かつ、他端側が環状基部の突設先端面に開口するので、大変位入力時に、ゴムストッパ部が内側部材のストッパ板部によって大きく押し潰されても、溝部または最小間凹部が余肉によって塞がれることを抑制して、空気を逃がす役割を確実に発揮させることができる。即ち、大変位入力時でも、内側部材とゴムストッパ部との間に形成される内部空間を外部空間に連通させる通路を確保して、確実に空気を逃がすことができるので、異音の発生をより確実に抑制できるという効果がある。