【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
なお、実施例1〜8、13、18〜20、24、29〜31は参考例である。
≪実施例1〜8、比較例1〜3≫
[叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の物性値]
叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維について、
(1)ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度0.1%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した変法濾水度:「変法濾水度」
(2)長さ加重平均繊維長:「平均繊維長」
を表3に示す。なお、叩解されてなる各状態の溶剤紡糸セルロース繊維は、叩解されていない溶剤紡糸セルロース短繊維(繊度1.7dtex、繊維長6mm、コートルズ社製)を、ダブルディスクリファイナーを用いて処理して作製した。
【0041】
表1に、本発明の実施例及び比較例で使用した繊維を示した。A1〜A11は叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維を意味し、叩解されていない溶剤紡糸セルロース短繊維(繊度1.7dtex、繊維長6mm、コートルズ社製)を、ダブルディスクリファイナーを用いて処理して作製した。B1は繊度0.1dtex、繊維長3mmのアクリル短繊維(三菱レイヨン製、商品名:ボンネル(登録商標))、B2は繊度0.4dtex、繊維長5mmのアクリル短繊維(三菱レイヨン製、商品名:ボンネル(登録商標))、B3は繊度1.0dtex、繊維長5mmのアクリル短繊維(三菱レイヨン製、商品名:ボンネル(登録商標))を意味する。B4は溶剤紡糸セルロース短繊維(リヨセル(登録商標)短繊維、繊度1.7dtex、繊維長6mm))を意味する。C1はフィブリル化リンター繊維を意味する。各種変法濾水度の溶剤紡糸セルロース繊維、溶剤紡糸セルロース短繊維、リンター繊維の比重は1.50とした。アクリル短繊維の比重は1.17とした。表2に、本発明の実施例1〜8及び比較例1〜3に対応するスラリーを構成する繊維と配合率を示した。表2の繊維の記号は、表1の記号に該当する。
【0042】
実施例1
繊維B2をパルパーで水に分散させた後、繊維A1を添加して所定時間攪拌し、スラリー1を調製した。これを所定濃度に希釈して、円網抄紙機に送液して湿式抄紙し、ヤンキードライヤー温度を120℃にして乾燥させて、実施例1のセパレータを作製した。
【0043】
実施例2〜7
スラリー1の調製と同様にして、アクリル短繊維をパルパーで水に分散させた後、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維を添加して所定時間攪拌し、スラリー2〜7を調製した。スラリー2〜7を所定濃度に希釈して、実施例1と同様にして湿式抄紙し、実施例2〜7のセパレータを作製した。
【0044】
実施例8
繊維C1をパルパーで水に分散させた後、繊維B1を添加して所定時間攪拌し、さらに繊維A8を添加して所定時間攪拌し、スラリー8を調製した。これを所定濃度に希釈して、実施例1と同様にして湿式抄紙し、実施例8のセパレータを作製した。
【0045】
(比較例1)
繊維B2をパルパーで水に分散させた後、繊維A9を添加して所定時間攪拌し、スラリー9を調製した。これを所定濃度に希釈して、円網抄紙機に送液して湿式抄紙し、ヤンキードライヤー温度を120℃にして乾燥させて、比較例1のセパレータを作製した。
【0046】
(比較例2、3)
スラリー9と同様にして、アクリル短繊維をパルパーで水に分散させた後、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維を添加して所定時間攪拌し、スラリー10、11を調製した。スラリー10、11を所定濃度に希釈して、円網抄紙機に送液して湿式抄紙し、比較例2、3のセパレータを作製した。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
実施例1〜8及び比較例1〜3のセパレータについて、下記の試験方法により評価を行い、結果を表3に示した。
【0050】
<厚み>
セパレータの厚みをJIS P8118に準拠して測定した。
【0051】
<密度>
セパレータの密度をJIS P8124に準拠して測定した。
【0052】
<空孔率>
セパレータの空孔率は、セパレータの比重からセパレータの密度を差し引いて得られる値をセパレータの比重で除して100倍して算出した。
【0053】
<ガーレー透気度>
外径28.6mmの円孔を有するガーレー透気度計を用いて、100mlの空気がセパレータを通過するに要した時間を1試料につき任意の5箇所以上で計測し、その平均値とした。
【0054】
<吸液性>
セパレータを、20mm巾、長さ150mmに切り揃えた試料を用意した。このとき、150mm長さに切る方向はCD方向、すなわち、セパレータ巻取りの巻き長さ方向に対して直角方向(巾方向)とした。1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム・フタル酸塩の濃度を30質量%になるようにγ−ブチロラクトンに溶解させた電解液にセパレータ試料の下端10mmだけ浸漬して固定し、10分間静置したときの吸い上げ高さを計測した。吸い上げ高さが高いほど、好ましい。
【0055】
【表3】
【0056】
<電解コンデンサ>
陽極に化成エッチングされたアルミニウム箔、陰極に未化成のエッチングアルミニウム箔を用い、これらの間に、実施例1〜8及び比較例1〜3のセパレータをそれぞれ挟んで巻回し、巻回素子を作製した。1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム・フタル酸塩の濃度を30質量%になるようにγ−ブチロラクトンに溶解させた電解液を巻回素子に注入し、封口して、実施例1〜8及び比較例1〜3の電解コンデンサを作製した。
【0057】
実施例1〜8及び比較例1〜3の電解コンデンサについて、下記の試験方法により評価を行い、その結果を表4に示した。
【0058】
<ESR>
電解コンデンサのESRを20℃、1kHzの周波数でLCRメーターを用いて測定し、1000個の平均値を算出した。
【0059】
<ばらつき>
電解コンデンサのESRの標準偏差をばらつきの指標とした。標準偏差の値が小さいほどばらつきが小さく優れている。
【0060】
<ショート不良率>
陽極と陰極の間に実施例及び比較例のセパレータを挟んで巻回素子を作製し、電解液を含浸しないで両極間の導通の有無をテスターで確認した。1000個の巻回素子に占める導通した巻回素子の割合をショート不良率とした。
【0061】
【表4】
【0062】
実施例1〜8のセパレータは、アクリル短繊維と、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維を必須成分として含有する湿式不織布からなり、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の変法濾水度が0〜400mlで、且つ、長さ加重平均繊維長が0.20〜2.00mmであるため、電解液の吸液性に優れていた。実施例1〜8のセパレータを具備した電解コンデンサは、ショート不良率とESRが低く、ESRのばらつきが小さく、優れていた。
【0063】
比較例1のセパレータは、アクリル短繊維と、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維を含有するが、溶剤紡糸セルロース繊維の長さ加重平均繊維長が0.20mm未満であるため、繊維間隙が狭く、吸液性が悪かった。比較例1のセパレータを具備した電解コンデンサは、ショート不良率とESRのばらつきが小さかったが、ESRが高かった。
【0064】
比較例2のセパレータは、アクリル短繊維と、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維を含有するが、溶剤紡糸セルロース繊維の長さ加重平均繊維長が2.00mmを超えているため、繊維径の太い溶剤紡糸セルロース繊維が多く混在し、表面平滑性が悪く、吸液性が悪かった。また、セパレータの貫通孔が大きくなり、電極箔のバリが貫通しやすくなったため、比較例2のセパレータを具備した電解コンデンサは、ショート不良率がやや高かった。また、ESRが高く、ESRのばらつきが大きかった。
【0065】
比較例3のセパレータは、アクリル短繊維と、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維を含有するが、溶剤紡糸セルロース繊維の変法濾水度が400mlを超え、且つ、長さ加重平均繊維長が2.00mmより長いため、繊維径の太い溶剤紡糸セルロース繊維が多く混在し、表面平滑性が悪く、吸液性が悪かった。また、セパレータの貫通孔が大きくなり、電極箔のバリが貫通しやすくなったため、比較例3のセパレータを具備した電解コンデンサは、ショート不良率が高く、ESRが高く、ESRのばらつきが大きかった。
【0066】
≪実施例9〜20≫
[叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の物性値]
叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維について、
(1)繊維長分布ヒストグラムにおける最大頻度ピークの繊維長:「最大頻度ピークの繊維長」
(2)1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合:「1.00mm以上の繊維割合」
(3)繊維長分布ヒストグラムにおいて、1.00〜2.00mmの間における0.05mm毎の繊維長を有する繊維の割合の傾き:「割合の傾き」
(4)長さ加重平均繊維長:「平均繊維長」
(5)ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度0.1%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した変法濾水度:「変法濾水度」
を表5に示す。なお、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維A12〜A23は、叩解されていない溶剤紡糸セルロース短繊維(繊度1.7dtex、繊維長6mm、コートルズ社製)を、ダブルディスクリファイナーを用いて処理して作製した。
【0067】
【表5】
【0068】
スラリー1又は8と同様にして、表6に示したスラリー12〜23を調製した。表6の繊維の記号は、表1及び表5の記号に該当する。実施例9〜20に対応するスラリーを円網抄紙機に送液して湿式抄紙し、ヤンキードライヤー温度を120℃にして乾燥させて、実施例9〜20のセパレータを作製した。実施例1と同様の方法でセパレータの評価を行い、評価の結果を表7に示した。
【0069】
【表6】
【0070】
【表7】
【0071】
実施例9〜20で作製したセパレータを用いて、実施例1と同様にして電解コンデンサを作製し、実施例1と同様の方法で電解コンデンサの評価を行い、評価の結果を表8に示した。
【0072】
【表8】
【0073】
実施例9〜18で作製したセパレータは、アクリル短繊維と叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維を必須成分として含有する湿式不織布からなり、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の変法濾水度が0〜400mlで、且つ、長さ加重平均繊維長が0.20〜2.00mmで、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、0.00〜1.00mmの間に最大頻度ピークを有し、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が10%以上であるため、電解液の吸液性に優れていた。実施例9〜18で作製したセパレータを具備してなる電解コンデンサは、ショート不良率とESRが低く、ESRのばらつきが小さく、優れていた。
【0074】
実施例19で作製したセパレータは、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、0.00〜1.00mmの間に最大頻度ピークを有さないため、繊維間隙が狭く、吸液性が実施例9〜18より劣っていた。
【0075】
実施例20で作製したセパレータは、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が10%未満であるため、繊維間隙が狭く、吸液性が実施例9〜18より劣っていた。
【0076】
実施例9〜12、14〜17で作製したセパレータは、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、1.00〜2.00mmの間における0.05mm毎の繊維長を有する繊維の割合の傾きが−3.0以上−0.5以下であるため、より吸液性に優れていた。
【0077】
実施例13で作製したセパレータは、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、1.00〜2.00mmの間における0.05mm毎の繊維長を有する繊維の割合の傾きが−3.0よりマイナス側であるため、繊維間隙が狭く、実施例9〜12、14〜17より吸液性が劣っていた。
【0078】
実施例18で作製したセパレータは、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、1.00〜2.00mmの間における0.05mm毎の繊維長を有する繊維の割合の傾きが−0.5よりプラス側であるため、実施例9〜12、14〜17より吸液性が劣っていた。
【0079】
≪実施例21〜31≫
[叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の物性値]
叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維について、
(1)1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合:「1.00mm以上の繊維割合」
(2)繊維長分布ヒストグラムにおける最大頻度ピークの繊維長:「最大頻度ピークの繊維長」
(3)最大頻度ピーク以外のピークの繊維長:「第2ピークの繊維長」
(4)長さ加重平均繊維長:「平均繊維長」
(5)ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度0.1%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した濾水度:「変法濾水度」
を表9に示す。なお、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維A
24〜A
34は、叩解されていない溶剤紡糸セルロース単繊維(繊度1.7dtex、繊維長6mm、コートルズ社製)を、ダブルディスクリファイナーを用いて処理して作製した。
【0080】
【表9】
【0081】
スラリー1又は8と同様にして、表10に示したスラリー
24〜
34を調製した。表10の繊維の記号は、表1及び表9の記号に該当する。実施例21〜31に対応するスラリーを円網抄紙機に送液して湿式抄紙し、ヤンキードライヤー温度を120℃にして乾燥させて、実施例21〜31のセパレータを作製した。実施例1と同様の方法でセパレータの評価を行い、評価の結果を表11に示した。
【0082】
【表10】
【0083】
【表11】
【0084】
実施例21〜31で作製したセパレータを用いて、実施例1と同様にして電解コンデンサを作製し、実施例1と同様の方法で、電解コンデンサの評価を行い、評価の結果を表12に示した。
【0085】
【表12】
【0086】
実施例21〜29で作製したセパレータは、アクリル短繊維と、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維を必須成分として含有する湿式不織布からなり、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の変法濾水度が0〜400mlで、且つ、長さ加重平均繊維長が0.20〜2.00mmで、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、0.00〜1.00mmの間に最大頻度ピークを有し、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が50%以上であるため、電解液の吸液性に優れていた。実施例21〜29で作製したセパレータを具備してなる電解コンデンサは、ショート不良率とESRが低く、ESRのばらつきが小さく、優れていた。
【0087】
実施例30で作製したセパレータは、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、最大頻度ピークが1.00mmを超えているため、繊維間隙が広く、吸液性が実施例21〜29より劣っていた。該セパレータを具備してなる電解コンデンサは、ショート不良率は低かったが、実施例21〜29よりESRが高く、ESRのばらつきが大きかった。
【0088】
実施例31で作製したセパレータは、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、1.00mm以上の繊維長を有する繊維の割合が10%未満であるため、繊維間隙が狭く、吸液性が実施例21〜29より劣っていた。該セパレータを具備してなる電解コンデンサは、ESRのばらつきは小さく、ショート不良率が低かったが、実施例21〜29よりESRが高かった。
【0089】
実施例21〜23、25〜28で作製したセパレータは、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長分布ヒストグラムにおいて、最大頻度ピーク以外に1.50〜3.50mmの間にピークを有するため、より吸液性に優れていた。
【0090】
実施例24で作製したセパレータは、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の第2ピークが1.50mm未満であるため、繊維間隙がやや狭く、実施例21〜23、25〜28より吸液性がやや劣っていた。そのため、該セパレータを具備してなる電解コンデンサのESRは、実施例21〜23、25〜28よりやや劣っていた。
【0091】
実施例29で作製したセパレータは、叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維の第2ピークが3.50mmを超えているため、繊維間隙が広く、吸液性が実施例21〜23、25〜28より劣っていた。該セパレータを具備してなる電解コンデンサのショート不良率は低かったが、ESRとESRのばらつきが実施例21〜28より劣っていた。