特許第5695510号(P5695510)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5695510
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】導電性微粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/00 20060101AFI20150319BHJP
   H01B 5/00 20060101ALI20150319BHJP
   H01B 5/16 20060101ALI20150319BHJP
   B22F 1/02 20060101ALI20150319BHJP
   H01R 11/01 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   H01B13/00 501Z
   H01B5/00 C
   H01B5/16
   B22F1/02 A
   H01R11/01 501E
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-138848(P2011-138848)
(22)【出願日】2011年6月22日
(65)【公開番号】特開2013-8474(P2013-8474A)
(43)【公開日】2013年1月10日
【審査請求日】2014年1月21日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100075409
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久一
(74)【代理人】
【識別番号】100129757
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久彦
(74)【代理人】
【識別番号】100115082
【弁理士】
【氏名又は名称】菅河 忠志
(74)【代理人】
【識別番号】100125243
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩彰
(72)【発明者】
【氏名】木太 純子
【審査官】 北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−200728(JP,A)
【文献】 特開2002−260446(JP,A)
【文献】 特開2002−363603(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/080289(WO,A1)
【文献】 特開2010−195992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/00
B22F 1/02
H01B 5/00
H01B 5/16
H01R 11/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個数平均粒子径が1μm以上、10μm以下の樹脂粒子の表面にニッケルを含む導電性金属層を形成して金属被覆粒子を製造する被覆工程、及び、
この金属被覆粒子を、非酸化性雰囲気下で180℃〜280℃の温度で加熱処理を行う熱処理工程を含むことを特徴とする導電性微粒子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法により製造されたことを特徴とする導電性微粒子。
【請求項3】
請求項2に記載の導電性微粒子を含むことを特徴とする異方性導電材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性微粒子の製造方法に関するものであり、特に、被接続体に対する圧痕形成能に優れた導電性微粒子を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器の組み立てにおいて、対向する多数の電極や配線間の電気的接続を行うために、異方性導電材料による接続方式が採用されている。異方性導電材料は、導電性微粒子をバインダー樹脂等に混合した材料であり、例えば異方性導電ペースト(ACP)、異方性導電フィルム(ACF)、異方性導電インク、異方性導電シート等がある。また、異方性導電材料に用いられる導電性微粒子としては、金属粒子や基材とする樹脂粒子の表面を導電性金属層で被覆したものが使用されている。例えば、特許文献1には、樹脂微粒子の表面に金属層を形成した導電性微粒子が記載されている。このような樹脂粒子と金属層から構成される導電性微粒子は、表面に形成された導電性を有する金属層によって、電極や配線間の電気的接続を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−260446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、導電性微粒子としては、基材となる樹脂微粒子の表面に、導電性金属層を形成したものが使用されている。ここで、導電性微粒子により電極等を加圧接続する際には、導電性微粒子の一部が被接続体へと押し込まれ、圧痕が形成されることにより、接続面積が一層増加して接続抵抗値を下げることができる。そのため、圧痕形成能に優れた導電性微粒子が望まれている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、圧痕形成能に優れた導電性微粒子を容易に製造できる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決することができた本発明の導電性微粒子の製造方法は、樹脂粒子の表面にニッケルを含む導電性金属層を形成して金属被覆粒子を製造する被覆工程、及び、この金属被覆粒子を、非酸化性雰囲気下で180℃〜350℃の温度で加熱処理を行う熱処理工程を含むことを特徴とする。本発明には、上記製造方法により製造された導電性微粒子、及び、該導電性微粒子を含む異方性導電材料も含まれる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ニッケルを含む導電性金属層が形成された金属被覆粒子に、非酸化性雰囲気下で熱処理を施すことにより、金属被覆層の硬度を高めることができ、圧痕形成能に優れた導電性微粒子が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の製造方法は、被覆工程及び熱処理工程を含み、樹脂粒子の表面にニッケルを含む導電性金属層を形成した金属被覆粒子を、非酸化性雰囲気下で180℃〜350℃の温度で加熱処理を行うことを要旨とする。非酸化性雰囲気下で熱処理することにより、導電性金属層の硬度が上昇し、得られる導電性微粒子の圧痕形成能が向上する。
【0008】
前記被覆工程では、樹脂粒子の表面に導電性金属層を形成し、金属被覆粒子を製造する。前記導電性金属層を構成する金属は特に限定されないが、例えば、金、銀、銅、白金、鉄、鉛、アルミニウム、クロム、パラジウム、ニッケル、ロジウム、ルテニウム、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、スズ、コバルト、インジウム等が挙げられる。これらの中でも、金、ニッケル、パラジウム、銀、銅、錫が導電性に優れた導電性微粒子となることから好ましい。
【0009】
前記導電性金属層としては、前記金属から形成される層や、前記金属の金属化合物又は合金から形成される層が挙げられる。また、安価な点で、ニッケル、ニッケル合金(Ni−Au、Ni−Pd、Ni−Pd−Au、Ni−Ag、Ni−P、Ni−B、Ni−Zn、Ni−Sn、Ni−W、Ni−Co、Ni−Ti);銅、銅合金(CuとFe、Co、Ni、Zn、Sn、In、Ga、Tl、Zr、W、Mo、Rh、Ru、Ir、Ag、Au、Bi、Al、Mn、Mg、P、Bからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素との合金、好ましくはAg、Ni、Sn、Znとの合金);銀、銀合金(AgとFe、Co、Ni、Zn、Sn、In、Ga、Tl、Zr、W、Mo、Rh、Ru、Ir、Au、Bi、Al、Mn、Mg、P、Bからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素との合金、好ましくはAg−Ni、Ag−Sn、Ag−Zn);錫、錫合金(たとえばSn−Ag、Sn−Cu、Sn−Cu−Ag、Sn−Zn、Sn−Sb、Sn―Bi―Ag、Sn―Bi―In、Sn−Au、Sn―Pb等)等が好ましい。なお、ニッケル合金を使用する場合、ニッケル合金中のニッケル含有率は50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
【0010】
前記導電性金属層は単層であってもよいし、多層(2層以上)でもよいが、少なくとも一層はニッケルを含む層である。また、前記導電性金属層が多層である場合、その最外層が、ニッケルを含む層であることが好ましい。
【0011】
前記導電性金属層の厚さは、0.01μm以上が好ましく、より好ましくは0.03μm以上、さらに好ましくは0.05μm以上であり、0.20μm以下が好ましく、より好ましくは0.18μm以下、さらに好ましくは0.15μm以下である。前記導電性金属層の厚さが上記範囲内であれは、導電性微粒子を異方性導電材料として用いる際に、安定した電気的接続が維持できる。
ニッケルを含む導電性金属層の厚さは、0.01μm以上が好ましく、より好ましくは0.03μm以上、さらに好ましくは0.05μm以上であり、0.20μm以下が好ましく、より好ましくは0.18μm以下、さらに好ましくは0.15μm以下である。
【0012】
前記導電性金属層を形成する方法は特に限定されず、例えば、基材粒子表面に無電解メッキ法、電解メッキ法等によってメッキを施す方法;基材表面に真空蒸着、イオンプレーティング、イオンスパッタリング等の物理的蒸着方法により金属層を形成する方法;等により形成できる。これらの中でも特に無電解メッキ法が、熱処理工程を組み合わせることで圧痕形成能に優れる導電性微粒子が得られ易い点で好ましい。また、大掛かりな装置を必要とせず容易に金属層を形成できる点でも好ましい。無電解メッキ法は、従来公知の方法を採用すればよい。
【0013】
無電解メッキ法により導電性金属層を形成する場合、エッチング工程、触媒化工程を経てから無電解メッキ工程を行うことが好ましい。
【0014】
エッチング処理工程
エッチング処理工程では、樹脂粒子をクロム酸、無水クロム酸−硫酸混合液、過マンガン酸等の酸化剤を含む溶液;塩酸、硫酸、フッ酸、硝酸等の強酸溶液;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の強アルカリ溶液;等を用いて樹脂粒子の表面に微小な凹凸を形成させ、その凹凸のアンカー効果によって、後述する無電解メッキ後の樹脂粒子と導電性金属層との密着性の向上を図る。
【0015】
触媒化工程
触媒化工程では、樹脂粒子の表面にメッキ析出の基点となるパラジウム触媒を吸着させる。パラジウム触媒を吸着させる方法は特に限定されず、無電解メッキ用として市販されている触媒化試薬を用いて行えばよい。触媒化方法としては、例えば、塩化パラジウムと塩化第一スズとを含む溶液を触媒化試薬とし、これに樹脂粒子を浸漬することにより樹脂粒子表面に触媒金属を吸着させ、その後、硫酸や塩酸等の酸や水酸化ナトリウム等のアルカリ溶液で前記パラジウムイオンを還元することにより、樹脂粒子表面にパラジウムを析出させる方法(キャタリスト−アクセレータ法)や、スズイオン(Sn2+)を含有する溶液に樹脂粒子を接触させることによりスズイオンを樹脂粒子表面に吸着させた後、パラジウムイオン(Pd2+)を含有する溶液に浸漬させることにより、樹脂粒子表面にパラジウムを析出させる方法(センシタイジング−アクチベーティング法)等が挙げられる。
【0016】
前記スズイオン含有溶液、パラジウムイオン含有溶液に樹脂粒子を浸漬する際の液温、浸漬時間は、各イオンが樹脂粒子に充分に吸着できれば特に限定されず、適宜調整すればよいが、液温は10℃〜60℃が好ましく、浸漬時間は1分〜120分が好ましい。
【0017】
無電解メッキ工程
無電解メッキ工程では、前記触媒化工程にてパラジウム触媒を吸着させた触媒化樹脂粒子表面に、導電性金属層を形成する。無電解メッキ処理は、還元剤と所望の金属塩を溶解したメッキ液中に触媒化樹脂粒子を浸漬することにより、パラジウム触媒を起点として、メッキ液中の金属イオンを還元剤で還元し、樹脂粒子表面に所望の金属を析出させて、導電性金属層を形成するものである。
【0018】
無電解メッキ工程では、まず、触媒化樹脂粒子を水に十分に分散させ、触媒化樹脂粒子の水性スラリーを調製する。ここで、安定した導電特性を発現させるためには、触媒化樹脂粒子を、メッキ処理を行う水性媒体に十分分散させておくことが好ましい。触媒化樹脂粒子を水性媒体に分散させる手段としては、例えば、通常攪拌装置、高速攪拌装置、コロイドミル又はホモジナイザーのような剪断分散装置等従来公知の分散手段を採用すればよく、必要に応じて超音波や分散剤(界面活性剤等)を併用してもよい。
【0019】
次に、所望の導電性金属の塩、還元剤、錯化剤及び各種添加剤等を含有する無電解メッキ液に、上記で調製した触媒化樹脂粒子の水性スラリーを添加することにより、無電解メッキ反応を生じさせる。無電解メッキ反応は、触媒化樹脂粒子の水性スラリーを添加すると速やかに開始する。また、この反応には水素ガスの発生を伴うので、水素ガスの発生が認められなくなった時点をもって無電解メッキ反応を終了すればよい。無電解メッキ反応の終了後、反応系内から導電性金属層が形成された樹脂粒子を取り出し、必要に応じて洗浄、乾燥を施すことにより、導電性微粒子を得ることができる。
【0020】
前記導電性金属塩としては、導電性金属層を構成する金属として例示した金属の硝酸塩、酢酸塩、塩化物、硫酸塩等が挙げられる。例えば、導電性金属層としてニッケル層を形成する場合には、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、酢酸ニッケル等のニッケル塩を無電解メッキ液に含有させればよい。無電解メッキ液中における導電性金属塩の濃度は、所望の膜厚の導電性金属層が形成されるように、樹脂粒子のサイズ(表面積)等を考慮して適宜決定すればよい。
【0021】
前記還元剤としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グリオキサール等のアルデヒド化合物;次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等の次亜リン酸化合物;ジメチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム等の水素化ホウ素化合物;グリオキシル酸、グルコン酸等のカルボン酸又はそれらのアルカリ金属塩やアンモニウム塩等のカルボン酸(塩);アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム等のアスコルビン酸類;ヒドラジン、硫酸ヒドラジン等のヒドラジン類;ヒドロキシルアミン、硫酸ヒドロキシルアミン等のヒドロキシルアミン類;グルコース、転化糖等のアルデヒド基(−CHO)を有する糖類;等が挙げられる。還元剤は1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。
【0022】
前記錯化剤としては、導電性金属のイオンに対して錯化作用のある化合物が使用できる。例えば、グリセロール、酒石酸、イミノ二酢酸、クエン酸、ヒドロキシ酢酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、コハク酸、マロン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、グルコン酸又はそれらのアルカリ金属塩やアンモニウム塩等のカルボン酸(塩);シアン化カリウム、シアン化ナトリウム等のシアン化アルカリ;D−ソルビトール、ズルシトール等の糖類;グリシン等のアミノ酸;エチレンジアミン、トリエタノールアミン、アルキルアミン等のアミン類;その他のアンモニウム、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)又はその塩(例えば、EDTA4Na(エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム)等)、2,2’−ビピリジン、ピロリン酸(塩);等が挙げられる。錯化剤は1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。
【0023】
前記各種添加剤としては、例えば、pH調整剤、緩衝剤、促進剤、安定剤等が挙げられる。pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、無機酸、有機酸等が挙げられる。緩衝剤としては有機酸、無機酸のアルカリ金属塩、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、オキシカルボン酸、リン酸二水素塩、ホウ酸、炭酸が挙げられ、メッキ中のpHの急激な変化を緩和する。促進剤は水素の発生を抑制するために添加され、硫化物、フッ化物等が挙げられる。安定剤としては鉛の塩化物、硫化物、硝化物等が挙げられる。
【0024】
無電解メッキ液のpHは、限定されないが、好ましくは4〜14である。
【0025】
無電解メッキ工程は、必要に応じて繰返し行ってもよい。例えば金属種の異なる無電解メッキ液を用いて無電解メッキ工程を繰返すことにより、樹脂粒子の表面に異種金属を幾層にも被覆できる。具体的には、樹脂粒子にニッケルメッキを施してニッケル被覆粒子を得た後、該銀被覆粒子をさらに無電解金メッキ液に投入して金置換メッキを行うことにより、最外層が金層で覆われ、その内側にニッケル層を有する導電性微粒子が得られる。
【0026】
導電性金属層の膜厚を調整するには、具体的には、無電解メッキ処理を行う際の樹脂粒子濃度(処理液あたりの樹脂粒子の量)や無電解メッキ処理で使用する無電解メッキ液の濃度、pH、あるいは無電解メッキ処理の反応温度等を調整すればよい。例えば、無電解メッキ処理の処理液に対する樹脂粒子の量を増やしたり、無電解メッキ処理で使用する無電解メッキ液の濃度を薄くしたりすると、導電性金属層の膜厚は薄くなる。
【0027】
本発明に使用する前記樹脂粒子(基材)は、樹脂成分を含んでいればよく、有機材料のみから構成される粒子に限られず、有機無機複合材料から構成される粒子でもよい。樹脂粒子を用いることで、弾性変形特性に優れた導電性微粒子が得られる。
【0028】
前記樹脂粒子を構成する有機材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン;スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル樹脂等のビニル重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類;ポリカーボネート類;ポリアミド類;ポリイミド類;フェノールホルムアルデヒド樹脂;メラミンホルムアルデヒド樹脂;メラミンベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂;尿素ホルムアルデヒド樹脂;等が挙げられる。また、有機無機複合材料としては、シリコーン樹脂、前記有機材料とポリシロキサン骨格とを含む材料(例えば、ポリシロキサン骨格とビニル重合体が複合化されてなる材料等)が挙げられる。これらの樹脂粒子を構成する材料は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0029】
前記樹脂粒子を構成する材料の中でも、ビニル重合体及び/又はポリシロキサン骨格を含むものが好ましい。ビニル重合体を含む材料は、ビニル基が重合して形成された有機系骨格を有し、加圧接続時の弾性変形に優れる。特に、ジビニルベンゼンを重合成分として含むビニル重合体は、導電性金属被覆後の粒子強度の低下が少ない。また、ポリシロキサン骨格を含む材料は、加圧接続時において被接続体に対する接触圧が優れる。特にポリシロキサン骨格とビニル重合体を複合化した材料は、弾性変形性及び接触圧に優れ、得られる導電性微粒子の接続信頼性がより優れたものとなるため好ましい。
【0030】
前記ビニル重合体はビニル系単量体(ビニル基含有単量体)を重合(ラジカル重合)することによって形成でき、このビニル系単量体はビニル系架橋性単量体とビニル系非架橋性単量体とに分けられる。また前記ポリシロキサン骨格は、シラン系単量体を用いることによって形成でき、このシラン系単量体はシラン系架橋性単量体とシラン系非架橋性単量体とに分けられる。
【0031】
なお、「ビニル基」には、炭素−炭素二重結合のみならず、(メタ)アクリロキシ基、アリル基、イソプロペニル基、ビニルフェニル基、イソプロペニルフェニル基のような官能基と重合性炭素−炭素二重結合から構成される置換基も含まれる。なお、本明細書において「(メタ)アクリロキシ基」、「(メタ)アクリレート」や「(メタ)アクリル」は、「アクリロキシ基及び/又はメタクリロキシ基」、「アクリレート及び/又はメタクリレート」や「アクリル及び/又はメタクリル」を示すものとする。
【0032】
前記樹脂粒子を構成する全単量体に占める架橋性単量体(ビニル系架橋性単量体及びシラン系架橋性単量体の合計)の割合は、5質量%以上が好ましく、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上であり、90質量%以下が好ましく、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。
【0033】
前記樹脂粒子が、ビニル重合体とポリシロキサン骨格を含む有機無機複合材料からなる場合、ビニル系単量体の使用量は、シラン系単量体100質量部に対して100質量部以上が好ましく、より好ましくは200質量部以上、さらに好ましくは300質量部以上であり、700質量部以下が好ましく、より好ましくは600質量部以下、さらに好ましくは500質量部以下である。
【0034】
前記ビニル系架橋性単量体とは、ビニル基を有し架橋構造を形成し得るものであり、具体的には、1分子中に2個以上のビニル基を有する単量体(単量体(1))、または、1分子中に1個のビニル基とビニル基以外の結合性官能基(カルボキシル基、ヒドロキシ基等のプロトン性水素含有基、アルコキシ基等の末端官能基等)を有する単量体(単量体(2))が挙げられる。ただし、単量体(2)によって架橋構造を形成させるには、当該単量体(2)の結合性官能基と反応(結合)可能な相手方単量体の存在が必要である。
【0035】
前記ビニル系架橋性単量体のうち前記単量体(1)(1分子中に2個以上のビニル基を有する単量体)の例として、例えば、アリル(メタ)アクリレート等のアリル(メタ)アクリレート類;アルカンジオールジ(メタ)アクリレート(例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレンジ(メタ)アクリレート等)、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタコンタヘクタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等)等のジ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート類;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート類;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のヘキサ(メタ)アクリレート類;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びこれらの誘導体等の芳香族炭化水素系架橋剤(好ましくはジビニルベンゼン等のスチレン系多官能モノマー);N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルサルファイド、ジビニルスルホン酸等のヘテロ原子含有架橋剤;等が挙げられる。これらの中でも、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート類(多官能(メタ)アクリレート)や、芳香族炭化水素系架橋剤(特にスチレン系多官能モノマー)が好ましい。前記1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート類の中でも、前記1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートが特に好ましく、さらにその中でも、1分子中に3個以上のアクリロイル基を有するアクリレートが好ましい。前記スチレン系多官能モノマーの中では、ジビニルベンゼンのように1分子中に2個のビニル基を有する単量体が好ましい。単量体(1)は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
前記ビニル系架橋性単量体のうち前記単量体(2)(1分子中に1個のビニル基とビニル基以外の結合性官能基を有する単量体)としては、例えば、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基を有する単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート類、p−ヒドロキシスチレン等のヒドロキシ基含有スチレン類等のヒドロキシ基を有する単量体;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有(メタ)アクリレート類、p−メトキシスチレン等のアルコキシスチレン類等のアルコキシ基を有する単量体;等が挙げられる。単量体(2)は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
前記ビニル系非架橋性単量体としては、1分子中に1個のビニル基を有する単量体(単量体(3))か、もしくは相手方単量体が存在しない場合の前記単量体(2)(1分子中に1個のビニル基とビニル基以外の結合性官能基を有する単量体)が挙げられる。
【0038】
前記ビニル系非架橋性単量体のうち前記単量体(3)(1分子中に1個のビニル基を有する単量体)には、(メタ)アクリレート系単官能モノマーやスチレン系単官能モノマーが含まれる。(メタ)アクリレート系単官能モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロウンデシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート等の芳香環含有(メタ)アクリレート類が挙げられ、メチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。スチレン系単官能モノマーとしては、スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン等のアルキルスチレン類、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン等のハロゲン基含有スチレン類等が挙げられ、スチレンが好ましい。単量体(3)は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
前記ビニル系単量体としては、少なくとも前記ビニル系架橋性単量体(1)を含む態様が好ましく、中でも前記ビニル系架橋性単量体(1)と前記ビニル系非架橋性単量体(3)とを含む態様(特に単量体(1)と単量体(3)との共重合体)が好ましい。具体的には、構成成分として、スチレン系単官能モノマーを含む態様、スチレン系単官能モノマーと1分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有する単量体とを含む態様、スチレン系単官能モノマーとスチレン系多官能モノマーとを含む態様が好ましい。中でも、スチレン系単官能モノマーとスチレン系多官能モノマーとを含む態様が好ましい。
【0040】
前記ポリシロキサン骨格は、シラン系単量体を加水分解し縮合反応によりシロキサン結合を生じさせることで形成され、特にシラン系単量体としてシラン系架橋性単量体を用いると、架橋構造を形成し得る。シラン系架橋性単量体により形成される架橋構造としては、有機重合体骨格(例えば、ビニル系重合体骨格)と有機重合体骨格とを架橋するもの(第一の形態);ポリシロキサン骨格とポリシロキサン骨格とを架橋するもの(第二の形態);有機重合体骨格とポリシロキサン骨格とを架橋するもの(第三の形態);が挙げられる。
【0041】
第一の形態(有機重合体間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体としては、例えば、ジメチルジビニルシラン、メチルトリビニルシラン、テトラビニルシラン等の2つ以上のビニル基を有するシラン化合物が挙げられる。第二の形態(ポリシロキサン間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等の4官能性シラン系単量体;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等の3官能性シラン系単量体等が挙げられる。第三の形態(有機重合体−ポリシロキサン間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体としては、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシエトキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基を有するジ又はトリアルコキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン等のビニル基を有するジ又はトリアルコキシシラン;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を有するジ又はトリアルコキシシラン;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基を有するジ又はトリアルコキシシラン;が挙げられる。これらのシラン系架橋性単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
前記シラン系非架橋性単量体として、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のジアルキルシラン等の2官能性シラン系単量体;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のトリアルキルシラン等の1官能性シラン系単量体等が挙げられる。これらのシラン系非架橋性単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
特に前記ポリシロキサン骨格は、ラジカル重合可能な炭素−炭素二重結合(例えば、(メタ)アクリロイル基等のビニル基)を有する重合性ポリシロキサン由来の骨格であることが好ましい。つまり、ポリシロキサン骨格は、構成成分として、少なくとも前記第三の形態(有機重合体−ポリシロキサン間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体(好ましくは(メタ)アクリロイル基を有するもの、より好ましくは3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン)を加水分解及び縮合することにより形成されたポリシロキサン骨格であることが好ましい。
【0044】
前記樹脂粒子の製造方法としては、乳化重合、懸濁重合、分散重合、シード重合、ゾルゲルシード重合法等が採用できるが、シード重合やゾルゲルシード重合法は粒度分布を小さくすることができるため好ましい。なお、上記ゾルゲルシード重合法とは、シード重合の一態様であって、特に、シード粒子がゾルゲル法により合成される場合を意味する。例えば、アルコキシシランの加水分解縮合反応により得られたポリシロキサンをシード粒子とする場合等が挙げられる。したがって、シード重合には、シード粒子が、有機材料からなる場合と、有機材料と無機材料とが複合された材料からなる場合(ゾルゲルシード重合法の場合)とが存在する。
【0045】
上述したように、前記樹脂粒子としては、ビニル重合体骨格とポリシロキサン骨格を有するものが好ましい。よって、樹脂粒子の製造方法としては、ラジカル重合性基を有する架橋性シラン単量体を加水分解、縮合反応を行って重合性ポリシロキサン粒子を調製した後、該重合性ポリシロキサン粒子に前記ビニル系有単量体等を吸収させ重合する方法が好ましい。
【0046】
また、前記ビニル重合体骨格とポリシロキサン骨格とを含む有機無機複合粒子の場合、基材粒子に加熱処理を施すことも好ましい態様である。前記加熱処理は空気雰囲気下又は不活性雰囲気下で行うことが好ましく、不活性雰囲気下(例えば、窒素雰囲気下)で行うことがより好ましい。前記加熱処理の温度は200℃(より好ましくは250℃、さらに好ましくは270℃)以上が好ましく、熱分解温度(より好ましくは350℃、さらに好ましくは330℃)以下が好ましい。前記加熱処理の時間は、0.3時間(より好ましくは0.5時間、さらに好ましくは0.7時間)以上が好ましく、10時間(より好ましくは5.0時間、さらに好ましくは3.0時間)以下が好ましい。
【0047】
前記基材粒子(樹脂粒子)の個数平均粒子径は、1μm以上が好ましく、より好ましくは1.5μm以上、さらに好ましくは2μm以上であり、20μm以下が好ましく、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。前記基材粒子の粒子径の個数基準の変動係数(CV値)は、10%以下が好ましく、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは6%以下、特に好ましくは4%以下である。
【0048】
前記基材粒子の熱分解温度(窒素雰囲気下)は230℃以上が好ましく、より好ましくは260℃以上、さらに好ましくは290℃以上である。基材粒子の熱分解温度が上記範囲であれば、熱処理温度をより高くすることが可能であり、基材粒子の劣化もなく、得られる導電性微粒子の圧痕形成能が向上する。
【0049】
前記熱処理工程では、樹脂粒子の表面に導電性金属層を形成した金属被覆粒子に対して、非酸化性雰囲気下で熱処理を施し導電性微粒子を得る。前記非酸化性雰囲気としては、不活性雰囲気又は還元性雰囲気が挙げられる。前記不活性雰囲気としては窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気が挙げられる。前記還元性雰囲気としては、水素ガス、一酸化炭素ガス等の還元性ガス雰囲気が挙げられる。これらの中でも、不活性雰囲気が好ましく、窒素ガス雰囲気がより好ましい。
【0050】
前記非酸化性雰囲気における酸素濃度は300volppm以下が好ましく、より好ましくは100volppm以下、さらに好ましくは50volppm以下である。窒素ガス雰囲気下で熱処理を行う場合、窒素ガス濃度は、90体積%以上が好ましく、より好ましくは95体積%以上、さらに好ましくは99体積%以上である。
【0051】
前記熱処理の温度は180℃以上、好ましくは200℃以上、より好ましくは230℃以上、さらに好ましくは260℃以上、特に好ましくは280℃以上である。熱処理温度が高いほど、得られる導電性微粒子の圧痕形成能が向上する。一方、熱処理温度が高くなり過ぎると、樹脂粒子が劣化してしまうため、熱処理温度は350℃以下が好ましく、より好ましくは330℃以下、さらに好ましくは300℃以下である。
【0052】
前記熱処理の時間は、0.3時間以上が好ましく、より好ましくは0.5時間以上、さらに好ましくは0.7時間以上である。熱処理時間が長いほど、得られる導電性微粒子の圧痕形成能が向上する。一方、熱処理時間が長くなり過ぎると、基材粒子が劣化してしまうため、熱処理時間は、10時間以下が好ましく、より好ましくは5.0時間以下、さらに好ましくは3.0時間以下である。
【0053】
本発明で製造される導電性微粒子の個数平均粒子径は、1μm以上が好ましく、より好ましくは1.5μm以上、さらに好ましくは2μm以上であり、20μm以下が好ましく、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。また前記導電性微粒子の粒子径の個数基準の変動係数(CV値)は、10%以下であることが好ましく、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは7%以下である。
【0054】
絶縁性樹脂層
前記導電性微粒子は、表面の少なくとも一部に絶縁性樹脂層を有することもできる。つまり、前記導電性金属層の表面にさらに絶縁性樹脂層を設けた態様であってもよい。このように表面の導電性金属層にさらに絶縁性樹脂層が積層されていると、高密度回路の形成時や端子接続時などに生じやすい横導通を防ぐことができる。
【0055】
異方性導電材料
本発明の導電性微粒子は、異方性導電材料として有用である。
前記異方性導電材料としては、前記導電性微粒子がバインダー樹脂に分散してなるものが挙げられる。異方性導電材料の形態は特に限定されず、例えば、異方性導電フィルム、異方性導電ペースト、異方性導電接着剤、異方性導電インクなど様々な形態が挙げられる。これらの異方性導電材料を相対向する基材同士や電極端子間に設けることにより、良好な電気的接続が可能になる。なお、本発明の導電性微粒子を用いた異方性導電材料には、液晶表示素子用導通材料(導通スペーサーおよびその組成物)も含まれる。
【0056】
前記バインダー樹脂としては、絶縁性の樹脂であれば特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、スチレン−ブタジエンブロック共重合体などの熱可塑性樹脂;グリシジル基を有するモノマーやオリゴマーおよびイソシアネートなどの硬化剤との反応により硬化する硬化性樹脂組成物;光や熱により硬化する硬化性樹脂組成物;等が挙げられる。
なお、前記異方性導電材料は、前記バインダー樹脂中に導電性微粒子を分散させ、所望の形態とすることで得られるが、例えば、バインダー樹脂と導電性微粒子とを別々に使用し、接続しようとする基材間や電極端子間に導電性微粒子をバインダー樹脂とともに存在させることによって接続してもかまわない。
【0057】
前記異方性導電材料において、導電性微粒子の含有量は、用途に応じて適宜決定すればよいが、例えば、異方性導電材料の全量に対して1体積%以上が好ましく、より好ましくは2体積%以上、さらに好ましくは5体積%以上であり、50体積%以下が好ましく、より好ましくは40体積%以下、さらに好ましくは30体積%以下である。導電性微粒子の含有量が少なすぎると、充分な電気的導通が得られ難い場合があり、一方、導電性微粒子の含有量が多すぎると、導電性微粒子同士が接触してしまい、異方性導電材料としての機能が発揮され難い場合がある。
【0058】
前記異方性導電材料におけるフィルム膜厚、ペーストや接着剤の塗工膜厚、印刷膜厚等については、使用する導電性微粒子の粒子径と、接続すべき電極の仕様とを考慮し、接続すべき電極間に導電性微粒子が狭持され、且つ接続すべき電極が形成された接合基板同士の空隙がバインダー樹脂層により充分に満たされるように、適宜設定することが好ましい。
【実施例】
【0059】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下においては、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
【0060】
1.評価方法
1−1.個数平均粒子径、変動係数(CV値)
<シード粒子、樹脂粒子>
粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製、「コールターマルチサイザーIII型」)により30000個の粒子の粒子径を測定し、個数基準の平均粒子径、粒子径の標準偏差を求めるとともに、下記式に従って粒子径の個数基準のCV値(変動係数)を算出した。
粒子の変動係数(%)=100×(粒子径の標準偏差/個数基準平均粒子径)
なお、樹脂粒子では、基材粒子0.005部に界面活性剤(第一工業製薬社製、「ハイテノール(登録商標) N−08」)の1%水溶液20部を加え、超音波で10分間分散させた分散液を測定試料とした。シード粒子では、加水分解、縮合反応で得られた分散液を、界面活性剤(第一工業製薬社製、「ハイテノール(登録商標) N−08」)の1%水溶液により希釈したものを測定試料とした。
【0061】
<導電性微粒子>
フロー式粒子像解析装置(シスメックス社製、「FPIA(登録商標)−3000」)を用いて、導電性微粒子3000個の粒子径(μm)を測定し、個数基準の平均粒子径、粒子径の標準偏差を求めるとともに、上記式に従って粒子径の個数基準のCV値(変動係数)を算出した。
【0062】
1−2.熱分解温度
熱分析装置(「DTG−50M」、株式会社島津製作所製)を使用して、試料量15mg、昇温速度10℃/分(最高到達温度500℃)、窒素雰囲気中、流量20ml/分の条件で測定した。具体的には、精密天秤を使用して、規定のアルミカップに15mgの試料を計り取り、このアルミカップを熱分析装置の所定の位置にセットし、窒素ガス(窒素純度99.9%以上)が規定流量(20ml/分)流れるように調整し、装置が安定した後、昇温を開始した。
そして、得られたTG(Thermogravimetry)曲線から、熱分解開始温度を求めた。具体的には、TG曲線について、100℃における点の接線Aを描き、また本格的な熱分解が生じている質量減少段階に相当する部分(TG値が約−10%〜−90%となる部分)において、変曲点における接線Bを描く。そして、接線Aと接線Bの交点における温度Tを読み取り、この温度を熱分解開始温度とした。
【0063】
1−3.導電性金属層膜厚
フロー式粒子像解析装置(シスメックス社製、「FPIA−3000」)を用いて、樹脂粒子3000個の粒子径、導電性微粒子3000個の粒子径を測定し、樹脂粒子の個数平均粒子径X(μm)、導電性微粒子の個数平均粒子径Y(μm)を求めた。そして、下記式に従って導電性金属層の膜厚を算出した。
導電性金属層膜厚(μm)=(Y−X)/2
【0064】
1−4.圧痕形成能
各製造例で得られた導電性微粒子又は金属被覆粒子を用い、下記の方法で異方性導電材料(異方性導電フィルム)を作製し、その性能を下記の方法で評価した。
具体的には、導電性微粒子1部に、バインダー樹脂としてのエポキシ樹脂(三菱化学製「JER828」)100部と、硬化剤(三新化学社製「サンエイド(登録商標)SI−150」)2部と、トルエン100部とを加え、さらにφ1mmのジルコニアビーズ50部を加えて、ステンレス製の2枚攪拌羽根を用いて300rpmで10分間攪拌して分散させた。そして、得られたペースト状組成物を剥離処理を施したPETフィルム上に、バーコーターにて塗布し乾燥させることにより異方性導電フィルムを得た。
得られた異方性導電フィルムを、抵抗測定用の線を有した全面アルミ蒸着ガラス基板と20μmピッチに銅パターンを形成したポリイミドフィルム基板との間に挟みこみ、2MPa)下、185℃の圧着条件で熱圧着した。熱圧着における異方性導電フィルムが接触した側の電極表面を金属顕微鏡(倍率:1000倍)で観察し、電極に形成された圧痕を任意に100個抽出し、粒子の輪郭が確認できる圧痕の個数をカウントした。そして、粒子の輪郭が確認できる圧痕の個数が90個以上である場合を「○」、90個未満である場合を「×」、と評価した。
【0065】
2.樹脂粒子の製造
2−1.合成例1
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水1800部と、25%アンモニア水24部、メタノール355部を入れ、攪拌下、滴下口から3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン100部及びメタノール245部の混合液を添加して、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解、縮合反応を行って、メタクリロイル基を有するポリシロキサン粒子(重合性ポリシロキサン粒子)の乳濁液を調製した。このポリシロキサン粒子の個数平均粒子径は3.04μmであった。
次いで、乳化剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製、「ハイテノール(登録商標)NF−08」)の20%水溶液10部をイオン交換水400部で溶解した溶液に、スチレン200部及びDVB960(新日鐡化学社製、ジビニルベンゼン含量96質量%)200部と、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製、「V−65」)4.8部とを加え、乳化分散させて単量体成分の乳化液を調製した。この乳化液を2時間攪拌後、得られた乳化液を、上記ポリシロキサン粒子の乳濁液中に添加して、さらに攪拌を行った。乳化液の添加から1時間後、混合液をサンプリングして顕微鏡で観察を行ったところ、ポリシロキサン粒子が単量体を吸収して肥大化していることが確認された。
【0066】
前記混合液に、前記ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩の20%水溶液96部、イオン交換水500部を加え、窒素雰囲気下で65℃まで昇温させて、65℃で2時間保持し、単量体成分のラジカル重合を行った。ラジカル重合後の乳濁液を固液分離し、得られたケーキをイオン交換水、メタノールで洗浄した後、窒素雰囲気下280℃で1時間焼成処理して重合体粒子を得、これを樹脂粒子(1)とした。この樹脂粒子(1)の個数平均粒子径は6.05μm、変動係数(CV値)は3.5%、熱分解温度は330℃であった。
【0067】
2−2.合成例2
合成例1のメタノール355部を555部に変更し、メタノール245部を45部に変更したこと以外は合成例1と同様にして、メタクリロイル基を有するポリシロキサン粒子(重合性ポリシロキサン粒子)の乳濁液を調製した。このポリシロキサン粒子の個数粒子平均径は1.26μmであった。
その後、合成例1と同様の単量体成分の乳化液を用いて、重合体粒子を得、これを樹脂粒子(2)とした。この樹脂粒子(2)の個数平均粒子径は2.50μm、変動係数(CV値)は8.2%、熱分解温度は330℃であった。
【0068】
3.導電性微粒子の製造
3−1.製造例1
樹脂粒子(1)に水酸化ナトリウムによるエッチング処理を施した後、二塩化スズ溶液に接触させることによりセンシタイジングし、次いで二塩化パラジウム溶液に浸漬させてアクチベーティングする方法(センシタイジング−アクチベーション法)によって、パラジウム核を形成させた。
パラジウム核を形成させた基材粒子10部をイオン交換水400部に添加し、超音波分散処理を行った後、70℃の温浴で基材粒子懸濁液を加温した。懸濁液を加温した状態で、別途70℃に加温した無電解メッキ液(日本カニゼン(株)製、「シューマーS680」)300部を加えることにより、無電解ニッケルメッキ反応を生じさせた。水素ガスの発生が終了したことを確認した後、固液分離を行い、イオン交換水、メタノールの順で洗浄した後、100℃で2時間真空乾燥して、ニッケルメッキを施した金属被覆粒子(1)を得た。得られた金属被覆粒子(1)の個数平均粒子径は6.29μm、CV値は5.5%であり、ニッケルメッキ厚は0.12μmであった。
得られた金属被覆粒子(1)を、窒素ガス雰囲気(酸素濃度10volppm以下)下、280℃で2時間熱処理を行い導電性微粒子(1)を得た。得られた導電性微粒子(1)について圧痕形成能を評価し、結果を表1に示した。
【0069】
3−2.製造例2
金属被覆粒子(1)の熱処理条件を、240℃で2時間に変更したこと以外は、製造例1と同様にして導電性微粒子(2)を得た。得られた導電性微粒子(2)について圧痕形成能を評価し、結果を表1に示した。
【0070】
3−3.製造例3
金属被覆粒子(1)の熱処理条件を、200℃で2時間に変更したこと以外は、製造例1と同様にして導電性微粒子(3)を得た。得られた導電性微粒子(3)について圧痕形成能を評価し、結果を表1に示した。
【0071】
3−4.製造例4
製造例1において、樹脂粒子(1)を樹脂粒子(2)に変更し、ニッケルメッキ厚を0.10μmとなるように無電解メッキ液の使用量を変更したこと以外は製造例1と同様にして金属被覆粒子(2)を得た。得られた金属被覆粒子(2)の個数平均粒子径は2.70μm、CV値は6.8%であり、ニッケルメッキ厚は0.10μmであった。
得られた金属被覆粒子(2)を、窒素ガス雰囲気(酸素濃度10volppm以下)下、260℃で2時間熱処理を行い導電性微粒子(4)を得た。得られた導電性微粒子(4)について圧痕形成能を評価し、結果を表1に示した。
【0072】
3−5.製造例5
金属被覆粒子(1)の熱処理条件を、160℃で2時間に変更したこと以外は、製造例1と同様にして導電性微粒子(5)を得た。得られた導電性微粒子(5)について圧痕形成能を評価し、結果を表1に示した。
【0073】
金属被覆粒子(1)、(2)に関しても、圧痕形成能を評価し、結果を表1に示した。
【0074】
【表1】
【0075】
表1に示したように、ニッケルメッキ層を形成した後、180℃〜350℃の温度で熱処理を施した導電性微粒子では、圧痕形成能に優れていることがわかる。
これに対して、ニッケルメッキ層を形成した後、熱処理を施していない金属被覆粒子や、熱処理温度が低い(160℃)導電性微粒子(5)では、圧痕形成能が劣ることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の導電性微粒子の製造方法は、圧痕形成能に優れた導電性微粒子の製造に有用である。