(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5695513
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】熱交換ユニット
(51)【国際特許分類】
F01N 5/02 20060101AFI20150319BHJP
F01N 13/08 20100101ALI20150319BHJP
【FI】
F01N5/02 B
F01N13/08 B
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-143799(P2011-143799)
(22)【出願日】2011年6月29日
(65)【公開番号】特開2013-11211(P2013-11211A)
(43)【公開日】2013年1月17日
【審査請求日】2013年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】カルソニックカンセイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100114236
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 史朗
(72)【発明者】
【氏名】保田 正義
(72)【発明者】
【氏名】角倉 盛義
【審査官】
中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】
仏国特許出願公開第02924162(FR,A1)
【文献】
特開2009−228930(JP,A)
【文献】
実開昭63−113715(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 5/02
F01N 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流入した場合に、前記流体と冷媒との間で熱交換を行い、外周壁で囲まれた熱交換器と、
前記熱交換器のみを収容するケースと、
前記熱交換器に前記流体を導入するバルブケースと、
前記熱交換器と並列に配置されたバイパス部とを備える熱交換ユニットであって、
前記バルブケースは、
前記熱交換器に前記流体を導入する導入部と、
前記熱交換器側の前記導入部の端部から前記導入部と交差する方向に延設される連結部と、
前記連結部の延設方向と交差する方向であり、前記ケース側の前記連結部の端部から前記熱交換器側に向けて延設され、前記ケースに溶接される溶接部とを備え、
前記溶接部と前記ケースとを溶接固定し、
前記ケースの開口部の端部は、前記バイパス部の外壁に接合されることを特徴とする熱交換ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換ユニットであって、
前記熱交換器側から前記バルブケースを見た場合に、前記熱交換器側の前記導入部の端部の内壁と、前記熱交換器の流体流路の内壁とは一致することを特徴とする熱交換ユニット。
【請求項3】
請求項1に記載の熱交換ユニットであって、
前記熱交換器側の前記導入部の端部の内壁は、前記熱交換器の流体流路の内壁よりも内側に位置することを特徴とする熱交換ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱交換ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される内燃機関の排気ガスから熱を回収し、この熱エネルギーを他の用途(内燃機関の暖機、車室内の暖房や発電)に利用することにより、内燃機関の燃費効率を高めるものが知られている。また、排気ガスの一部を内燃機関の吸気側に再循環させるEGRにおいて、再循環される排気ガスの温度を下げて内燃機関の燃費効率を高めるものも知られている。
【0003】
特許文献1には、熱交換器とバイパス通路とを並列に配置し、フラップを動作させて排気ガスの流れ方向を切り替えることで、排気ガスを熱交換器またはバイパス通路に流入させるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007−536465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の発明では、熱交換器通路を熱交換器側に延設し、熱交換器通路の端部を熱交換器の外側までオーバーラップさせているので、熱交換器通路の端部を熱交換器に溶接した場合には、溶接する時の熱が熱交換器通路に伝達し、熱交換器通路が変形する、といった問題点がある。
【0006】
本発明はこのような問題点を解決するために発明されたもので、熱交換器通路を熱交換器に溶接した場合に、熱交換通路の変形を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様に係る熱交換ユニットは、流体が流入した場合に、流体と冷媒との間で熱交換を行
い、外周壁で囲まれた熱交換器と、熱交換器
のみを収容するケースと、熱交換器に流体を導入するバルブケースと、熱交換器と並列に配置されたバイパス部とを備える熱交換ユニットであって、バルブケースは、熱交換器に流体を導入する導入部と、熱交換器側の導入部の端部から導入部と交差する方向に延設される連結部と、連結部の延設方向と交差する方向であり、ケース側の連結部の端部から熱交換器側に向けて延設され、ケースに溶接される溶接部とを備え、
溶接部とケースとを溶接固定し、ケースの開口部の端部は、バイパス部の外壁に接合されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この態様によると、溶接部をケースに溶接した場合に、導入部への熱伝達を抑制することができ、導入部の変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態の熱交換ユニットの斜視図である。
【
図2】本実施形態の熱交換ユニットの分解斜視図である。
【
図3】導入部と連結部と溶接部との関係を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の第1実施形態における熱交換ユニットについて
図1、
図2を用いて説明する。
図1は熱交換ユニット1の斜視図である。
図2は熱交換ユニット1の分解斜視図である。以下においては、エンジンから排出される排気ガスを熱交換ユニット1に流入させる場合について説明する
。
熱交換ユニット1は、熱交換部2と、バイパス部3と、バルブ部4と、ディフューザ部5とを備える。
【0011】
熱交換部2は、熱交換器14と、ケース15とを備える。
【0012】
熱交換器14は、流入した排気ガスと冷媒導入路16から導入された冷媒との間で熱交換を行う。熱交換器14で冷媒と熱交換を行い、温度が低くなった排気ガスはディフューザ部5へ排出される。また、排気ガスと熱交換を行い、温度が高くなった冷媒は冷媒排出路17から排出される。冷媒は、冷却水、フロン類などである。温度が高くなった冷媒は、エンジンの暖機などに使用される。
【0013】
ケース15は、熱交換器14を収容する。ケース15は、バルブ部4側から見た場合に、開口部18がバイパス部3側に位置する略コの字状となる。
【0014】
バイパス部3は、熱交換部2と並列に配置される。バイパス部3を流れる排気ガスは、熱交換器14において冷媒と熱交換を行わずに外部へ排出される。バイパス部3は、バルブ部4側から見た場合に略D字状となる。ケース15の開口部18の端部がバイパス部3の外壁に接合され、熱交換部2とバイパス部3とが一体化される。
【0015】
バルブ部4は、バルブケース6と、フラッパー7とを備える。バルブ部4は、フランジ8を介してエンジン側の排気管に接続し、エンジン側の排気管から排気ガスが導入される。
【0016】
フラッパー7は、バルブケース6に設けた孔12に挿入されたバルブ軸13に連結し、バルブ軸13の軸芯を中心としてバルブケース6内を回動する。図示しないモータなどのアクチュエータによってバルブ軸13を回動させることで、フラッパー7はバルブ軸13と共に回動する。フラッパー7が回動することで、バルブ部4に流入する排気ガスの流れは、熱交換部2側またはバイパス部3側に選択的に切り替えられる。具体的には、フラッパー7が熱交換部2側に回動すると、フラッパー7は、バルブケース6に設けた第1突出部(図示せず)に当接し、バルブケース6内に流入した排気ガスはフラッパー7によって熱交換部2への流入が妨げられ、バイパス部3へ流入する。また、フラッパー7がバイパス部3側に回動すると、フラッパー7は、バルブケース6に設けた第2突出部(図示せず)に当接し、バルブケース6内に流入した排気ガスはフラッパー7によってバイパス部3への流入が妨げられ、熱交換部2へ流入する。
【0017】
バルブケース6は、導入部9と、連結部10と、溶接部11とを備える。
【0018】
導入部9は、フラッパー7によって流れ方向を選択された排気ガスを熱交換部2またはバイパス部3に導く。導入部9は、
図3に示すように熱交換部2側の端部の内壁9aと熱交換器14のガス流路の内壁14aとの位置が一致するように形成される。つまり、熱交換部2側から導入部9を見た場合に、導入部9の端部の内壁9aが、熱交換器14の内壁14aと一致するように導入部9は形成されている。
【0019】
連結部10は、熱交換部2側の導入部9の端部から導入部9と交差する方向であり、熱交換部2側の導入部9の端部よりも外側に向けて直線状に延設される。連結部10には熱交換器14およびケース15の端部が当接し、連結部10は、バルブケース6と熱交換部2とを一体化する場合にはバルブケース6と熱交換部2との位置決めの役割を果たす。
【0020】
溶接部11は、外側に位置する連結部10の端部から連結部10の延設方向と交差する方向、具体的には直交する方向であり、連結部10の端部からケース15に沿って延設される。溶接部11はケース15に溶接される。これによって、バルブケース6と熱交換部2とが一体化される。
【0021】
導入部9と連結部10との断面、および連結部10と溶接部11との断面は、それぞれ
図3に示すように略L字状となる。
【0022】
バルブケース6は、プレス成型によって導入部9、連結部10および溶接部11が形成される。
【0023】
ディフューザ部5は、フランジ25を介して外部側の排気管に接続し、熱交換部2またはバイパス部3から排出された排気ガスを外部側の排気管に流入させる。
【0024】
次に本実施形態の作用について説明する。
【0025】
本実施形態では、バルブケース6に略L字状となる連結部10および溶接部11を形成し、溶接部11をケース15に溶接する。溶接部11とケース15とを溶接すると溶接部11付近の温度が高くなるが、溶接部11と連結部10とは略L字状に形成されているので、連結部10および導入部9への熱伝達が抑制される。さらに、連結部10と導入部9とも略L字状に形成されているので、導入部9への熱伝達がさらに抑制される。
【0027】
導入部9と溶接部11との間に、導入部9および溶接部11に交差するように連結部10を設けることで、溶接部11をケース15に溶接する際の導入部9への熱伝達を抑制することができ、熱による導入部9の変形を抑制することができる。導入部9が変形すると、フラッパー7の動作が悪くなるおそれがあるが、本実施形態では、導入部9の変形を抑制することで、フラッパー7の動作を正確に行うことができ、製造コストを抑制することができる。
【0028】
本実施形態を用いずに、熱交換部側の導入部の端部の内壁が、熱交換器のガス流路の内壁よりも外側に位置する場合には、導入部から熱交換器のガス流路へ流入する際の流路抵抗が大きくなる。これにより、排気ガスを外部へ排出するためにエンジンで消費されるエネルギーが大きくなり、エンジンの燃費が悪くなる。
【0029】
本実施形態では、熱交換部2側の導入部9の端部の内壁9aと、熱交換器14のガス流路の内壁14aとを一致させることで、流路抵抗を小さくすることができ、エンジンの燃費を向上することができる。
【0030】
また、導入部9を流れる排気ガスは熱交換部2側の導入部9の端部付近で滞留することなく、熱交換器14に流入する。そのため、高温の排気ガスが滞留することによる導入部9の熱変形を抑制することができる。
【0031】
また、熱交換部2側における導入部9の長さを短くすることができる。
【0032】
このように本実施形態では、温度が高い排気ガスを熱交換器14に流入させることができ、熱交換器14における冷媒への熱伝達量を大きくすることができ、熱交換器14における熱回収量を大きくすることができる。
【0033】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内でなしうるさまざまな変更、改良が含まれることは言うまでもない。
【0034】
なお、熱交換部2側の端部の内壁9aが、熱交換器14のガス流路の内壁14aよりも内側に位置するように形成してもよい。
【0035】
また、連結部10は直線状でなくてもよく、例えば断面が円弧、S字状となる形状であってもよく、溶接部11から導入部9への熱伝達を抑制できればよい。
【0036】
これらによっても上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 熱交換ユニット
2 熱交換部
6 バルブケース
9 導入部
9a 内壁
10 連結部
11 溶接部
14 熱交換器
14 内壁
15 ケース