(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5695526
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】ガラス溶融物を均質化するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
C03B 5/187 20060101AFI20150319BHJP
【FI】
C03B5/187
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-179527(P2011-179527)
(22)【出願日】2011年8月19日
(65)【公開番号】特開2012-41264(P2012-41264A)
(43)【公開日】2012年3月1日
【審査請求日】2014年8月1日
(31)【優先権主張番号】12/861,313
(32)【優先日】2010年8月23日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】ホジョン キム
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル エイ ノレット
【審査官】
正 知晃
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−511538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 5/187
Thomson Innovation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融ガラス溶融物を撹拌するための装置において、
撹拌容器と該撹拌容器上に配置された撹拌容器の蓋を備えた撹拌装置であって、該攪拌容器の蓋が第1の部分および第2の部分を有し、前記撹拌容器の蓋の表面が、撹拌機の軸がその中を延在する開口を画成し、それによって該撹拌機の軸と前記撹拌容器の蓋の開口画成表面との間に環状間隙を形成している撹拌装置;
前記開口画成表面に直接隣接する該開口画成表面の上部に形成された通路;
前記開口画成表面を加熱する、前記開口画成表面の上部に形成された前記通路内に配置された第1の加熱素子;
前記攪拌容器の蓋の前記第1の部分の下面に形成されるとともに、前記溶融ガラス溶融物に面し開口する通路;
前記溶融ガラス溶融物の自由表面を加熱する、前記蓋の前記第1の部分の下面に形成された前記通路内に配置された第2の加熱素子;
前記攪拌容器の蓋の前記第2の部分の下面に形成されるとともに、前記溶融ガラス溶融物に面し開口する通路;および
前記溶融ガラス溶融物の自由表面を加熱する、前記蓋の前記第2の部分の下面に形成された前記通路内に配置された第3の加熱素子;
を備えた装置。
【請求項2】
前記撹拌容器の蓋が、中に熱電対が配置された熱電対通路をさらに含み、該熱電対の検出端が前記開口画成表面に近接して配置されていることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記溶融ガラスの自由表面に面する前記撹拌容器の蓋の表面上に白金含有外装が配置されていることを特徴とする請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
前記熱電対の検出端が、前記環状間隙に隣接した前記撹拌容器の蓋の温度を検出するように配置されていることを特徴とする請求項2記載の装置。
【請求項5】
溶融ガラス溶融物を撹拌するための装置において、
撹拌容器と該撹拌容器上に配置された撹拌容器の蓋を備えた撹拌装置であって、該攪拌容器の蓋が第1の部分および第2の部分を有し、前記撹拌容器の蓋の表面が、撹拌機の軸がその中を延在する開口を画成し、それによって該撹拌機の軸と前記撹拌容器の蓋の開口画成表面との間に環状間隙を形成している撹拌装置;
前記開口画成表面に直接隣接する該開口画成表面の上部に形成された通路;
前記開口画成表面を加熱する、前記開口画成表面の上部に形成された前記通路内に配置された第1の加熱素子;
前記攪拌容器の蓋の前記第1の部分の下面に形成されるとともに、前記溶融ガラス溶融物に面し開口する通路;
前記溶融ガラス溶融物の自由表面を加熱する、前記蓋の前記第1の部分の下面に形成された前記通路内に配置された第2の加熱素子;
前記攪拌容器の蓋の前記第2の部分の下面に形成されるとともに、前記溶融ガラス溶融物に面し開口する通路;
前記溶融ガラス溶融物の自由表面を加熱する、前記蓋の前記第2の部分の下面に形成された前記通路内に配置された第3の加熱素子;および
前記攪拌容器の蓋の下面および前記攪拌容器の蓋の開口画成表面の上に形成された白金外装;
を備えた装置。
【請求項6】
前記蓋の前記第1の部分の下面に形成された前記通路および前記蓋の前記第2の部分の下面に形成された前記通路が螺旋形状を形成することを特徴とする請求項5記載の装置。
【請求項7】
前記蓋の前記第1の部分の下面に形成された前記通路および前記蓋の前記第2の部分の下面に形成された前記通路の各々が、複数の通路から形成されており、
前記蓋の前記第1の部分の下面に形成された前記通路、および前記蓋の前記第2の部分の下面に形成された前記通路の各々の複数の通路の各々に、加熱素子が配置されていることを特徴とする請求項5記載の装置。
【請求項8】
溶融ガラス溶融物を撹拌するための装置において、
撹拌容器と該撹拌容器上に配置された撹拌容器の蓋を備えた撹拌装置であって、該攪拌容器の蓋が第1の部分および第2の部分を有し、前記撹拌容器の蓋の表面が、撹拌機の軸がその中を延在する開口を画成し、それによって該撹拌機の軸と前記撹拌容器の蓋の開口画成表面との間に環状間隙を形成している撹拌装置;
前記開口画成表面に直接隣接する該開口画成表面の上部に形成された通路;
前記開口画成表面を加熱する、前記開口画成表面の上部に形成された通路内に配置された第1の加熱素子であって、耐火セメントにより、前記開口画成表面の上部に形成された前記通路内に固定される第1の加熱素子;
前記攪拌容器の蓋において前記開口に通じる熱電対通路;
前記熱電対通路内に配置され、該熱電対の検出端が前記開口画成表面に近接して配置される熱電対;
前記攪拌容器の蓋の前記第1の部分の下面に形成されるとともに、前記溶融ガラス溶融物に面し開口する通路;
前記溶融ガラス溶融物の自由表面を加熱する、前記蓋の前記第1の部分の下面に形成された前記通路内に配置された第2の加熱素子;
前記攪拌容器の蓋の前記第2の部分の下面に形成されるとともに、前記溶融ガラス溶融物に面し開口する通路;
前記溶融ガラス溶融物の自由表面を加熱する、前記蓋の前記第2の部分の下面に形成された前記通路内に配置された第3の加熱素子;および
前記攪拌容器の蓋の下面および前記攪拌容器の蓋の開口画成表面の上に形成された白金外装であって、前記熱電対の検出端と前記攪拌容器の蓋の開口との間、前記第1の加熱素子と前記攪拌容器の蓋の開口との間、前記第2加熱素子と前記溶融ガラス溶融物の自由表面との間、および前記第3加熱素子と前記溶融ガラス溶融物の自由表面との間に配置される、白金外装;
を備えた装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広く、ガラス溶融物中の汚染物を減少させる方法に関し、より詳しくは、ガラス撹拌プロセス中の凝縮により形成された汚染物の減少に関する。
【背景技術】
【0002】
化学的および熱的均質性が、良好なガラス形成操作の重大な部分である。ガラス溶融操作の機能は、一般に、ガス状または固体包有物を許容されるレベルて有するガラスを製造することであるが、このガラスは通常、化学的に異なる相の脈理(または透しむら)を有する。ガラスのこれらの不均質成分は、耐火物の溶解、溶融層化、ガラス表面の揮発、および温度差を含む溶融プロセス中の様々な正常な出来事から生じる。結果として生じた脈理は、色および/または屈折率の差のために、ガラス中に目に見える。
【0003】
ガラスの均質性を改善するための手法の1つは、溶融ガラスを、溶融装置の下流に配置された垂直に向けられた撹拌装置に通すことである。そのような撹拌装置は、モータなどの適切な駆動力により回転される中心軸を有する撹拌機を備えている。複数の翼が軸から延在し、溶融ガラスが撹拌装置の上部から下部に通過するときに、この溶融ガラスを混合する。そのような撹拌装置の動作は、結果として得られたガラス中にさらに別の欠陥、特に凝縮された酸化物から生じる欠陥を導入すべきではない。
【0004】
ガラス撹拌装置中の揮発性酸化物は、ガラスおよび撹拌装置に存在する元素のいずれからも形成され得る。最も揮発性である有害な酸化物のいくつかは、Pt、As、Sb、B、およびSnから形成される。ガラス溶融物中の凝縮可能な酸化物の主な供給源としては、PtO
2については高温の白金表面、B
2O
3、As
4O
6、Sb
4O
6、およびSnO
2については、ガラスの自由表面が挙げられる。ガラスの自由表面が意味するものとは、撹拌装置内の雰囲気に曝露されるガラスの表面である。上述したもののいずれかまたは全て、もしくは他の揮発性物質を含有するであろう、ガラスの自由表面上の雰囲気は、撹拌装置の外部の雰囲気よりも高温であるので、このガラスの自由表面上の雰囲気が、撹拌機の軸と撹拌容器の蓋との間の環状空間などの開口部を通って、上方に流れ出す傾向が当然ある。撹拌機の軸は、撹拌機の軸とガラスの自由表面との間の距離が増加するにつれて、温度がより低くなるので、撹拌装置の雰囲気内に含まれる揮発性酸化物は、その軸および/または蓋の温度が酸化物の露点より低い場合、軸の表面に凝縮し得る。結果として生じた凝縮物は臨界サイズに到達すると、離脱してガラス中に落ち、ガラス製品中に包有物または泡の欠陥を生じ得る。
【0005】
ガラスの自由表面上にある軸を加熱することは、ガラス溶融物中の粒状汚染物を減少させるのに部分的にしか成功しておらず、凝縮層を形成するだけであるのが実証されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
凝縮物によるガラス溶融物の汚染を減少させる従来技術の方法の1つは、ガラスの自由表面と撹拌室の上部との間にディスク状遮蔽板を配置することであった。しかしながら、そのような方法は、ガラス上の撹拌室の蓋を加熱することなどによる、ガラスの自由表面の温度制御を難しくするであろう。その上、遮蔽板と撹拌機の軸との間の接続部が、凝縮物汚染の追加の供給源として働くかもしれない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ある実施の形態において、撹拌容器12および撹拌容器上に配置された撹拌容器の蓋14を含む撹拌装置であって、撹拌容器の蓋14の表面40が、撹拌機の軸24がその中を延在する開口38を画成し、それによって、撹拌機の軸24と撹拌容器の蓋14の開口画成表面40との間に環状間隙52を形成している撹拌装置;開口画成表面40で撹拌容器の蓋14内に形成され
た通路48;および開口画成表面を加熱する、
開口画成表面40で撹拌容器の蓋14内に形成された通路内に配置された第1の加熱素子56;を備えた、溶融ガラスを撹拌するための装置10が開示されている。
【0008】
撹拌容器の蓋14は、さらに、中に熱電対58が配置され
た通路60を備えてもよく、ここで、熱電対の検出端62は、開口画成表面40に近接して配置されている。熱電対の検出端は、環状間隙に隣接した撹拌容器の蓋の温度を検出するように配置されていることが好ましい。
【0009】
いくつかの実施の形態において、白金含有外装を、溶融ガラス30の自由表面28に面する撹拌容器の蓋の表面34に配置してもよい。撹拌容器の蓋は、溶融ガラス30に面する撹拌容器の蓋の表面34に形成され
た通路44をさらに備え、ここで、第2の加熱素子42
が通路44内に配置される。
【0010】
別の実施の形態において、溶融ガラスを撹拌容器12中に流す工程、撹拌容器の上に配置された撹拌容器の蓋14の表面40により画成された開口38を通じて延在し、それによって、撹拌機16と撹拌容器の蓋14との間に環状間隙52を形成する撹拌機16により溶融ガラスを撹拌する工程、および撹拌容器の蓋14の開口画成表面40を、開口画成表面40に近接して位置する加熱素子により加熱する工程、を有してなる溶融ガラス30を撹拌する方法が記載されている。
【0011】
前記方法は、環状間隙52内の温度を、撹拌容器の蓋14内に配置された熱電対58により検出する工程をさらに含んでもよい。次いで、検出された温度を使用して、加熱素子に供給される電流の大きさを制御し、それによって、開口画成表面40およびその表面40と撹拌機の軸24との間の環状間隙52の温度を調節することができる。
【0012】
添付の図面を参照すると、本発明はより容易に理解され、その他の目的、特徴、詳細および利点は、制限を意味しない様式で、与えられた以下の説明の記載の過程でより明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】撹拌容器の蓋および環状間隙の加熱素子を示す、本発明のある実施の形態による例示の撹拌装置の断面図
【
図2】2つの部分で形成された、
図1の撹拌容器の蓋の実施の形態の斜視図
【
図3】蓋の中心開口を画成する表面内の、その表面を加熱するための通路、および蓋の下部の加熱素子を収容するための、蓋の下面に形成された通路を示す、
図2の撹拌容器の蓋の1つの部分の斜視図
【
図4】下面の加熱素子および蓋の開口画成表面を収容する
図3の通路を示す、蓋の表面上に配置された金属外装材をさらに示す、本発明のある実施の形態による撹拌容器の蓋の一部分の断面図
【
図5】下面の加熱素子および蓋の開口画成表面を収容する
図3の通路を示し、撹拌容器の開口画成表面の表面にある通路が蓋の上縁部よりもむしろ中央位置に配置されている、本発明の別の実施の形態による撹拌容器の蓋の一部分の断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明のある実施の形態による、ガラス溶融物を均質化する方法を実施するための例示の装置を示している。
図1の撹拌装置10は、撹拌容器12、撹拌容器の蓋14および撹拌機16を備えている。
【0015】
撹拌容器12は、好ましくは円筒形であり、実質的に垂直に向けられているが、この撹拌容器は、必要に応じて他の形状および向きを有していてもよい。撹拌容器が、白金または白金合金から構成された内面18を含むことが好ましい。耐食性を含む耐高温性、並びに導電率を有する他の材料を代わりに使用してもよい。例えば、内面18を形成するための適切な金属としては、ロジウム、イリジウム、パラジウム、ルテニウム、オスミウムおよびそれらの合金などの他の白金族の金属が挙げられる。撹拌容器12は、撹拌容器12の上部にまたはその近くに位置する溶融ガラスの入口管20、および撹拌容器の下部の近くに位置する溶融ガラスの出口管22を備えている。しかしながら、入口管20および出口管22はある実施の形態においては逆になっていてよく、よって、溶融ガラスが撹拌装置の下部から流入し、撹拌装置の上部を通じて流出することが当業者により認識されよう。適切な撹拌(すなわち、所望の量の均質化)が行われるという条件で、入口および出口管の中間位置を利用してもよい。
【0016】
撹拌機16は、撹拌機の軸24および撹拌機の軸24から延在する複数の撹拌翼26を備えている。撹拌翼26は、典型的に、撹拌装置の動作中に溶融ガラス30の自由表面28より下に沈められている。溶融ガラスの表面温度は、典型的に、約1300℃から1500℃の範囲にあるが、ガラス組成に応じて、それより高くても低くてもよい。撹拌機16は、白金から構成されることが好ましく、白金合金または分散強化白金(例えば、ジルコニア強化白金合金)であってよい。
【0017】
撹拌容器の蓋14は、撹拌容器12の上部の開放端を覆い、上面32と下面34を備えている。下面34は、溶融ガラスの自由表面上の腐食性雰囲気から下面34を保護するために下面34を覆って配置された外装材36(
図4参照)をさらに備えてもよい。例えば、下面34は、白金または白金合金(例えば、白金−ロジウム)外装を備えてもよい。撹拌容器の蓋14は、撹拌容器の蓋の厚さを通って延在し、その中に撹拌機の軸24が延在している開口38(
図2)を画成している。開口38は、撹拌容器の蓋14の開口画成表面40により境界が定められている。ある実施の形態において、撹拌容器の蓋14は、撹拌装置の組立て直し中などに、撹拌容器の蓋の取外しおよび交換をさらに容易にするために、複数の部分で形成されてもよい。例えば、
図2に示された実施の形態において、撹拌容器の第1の蓋部分14aおよび撹拌容器の第2の蓋部分14bの2つの部分を有する撹拌容器の蓋14が示されている。
【0018】
図3および4に最もよく示されているように、撹拌容器の蓋14は、撹拌容器の蓋の下面34に埋め込まれた1つ以上の加熱素子42を備えてもよい。典型的に、金属製のコイル、ロッドまたはリボンの形態にある、加熱素子42は、撹拌容器の蓋14の下面34に形成された1つ以上の通路44内に配置されている。ある実施の形態において、下面34は、1つの加熱素子42がその中を延在する1つの通路44を備えている。例えば、その通路は、略螺旋形状を形成してもよい。しかしながら、1つの加熱素子42の使用は、製造とメンテナンスの用途だけのためであり、1つ以上の通路44内に配置された複数の加熱素子を使用しても差し支えない。撹拌容器の蓋14が1つ以上の部分で形成されている場合、各部分について少なくとも1つの通路で、少なくとも2つの通路44内に少なくとも2つの加熱素子42が配置され、これにより、撹拌容器の蓋の部分の取外しが容易になる。1つ以上の加熱素子42は、耐火セメント46により通路44内に固定されてもよい。
【0019】
撹拌容器の蓋14は、開口38の少なくとも一部分の周りに形成され
た通路48をさらに備えている。すなわち、通路48は、開口38を画成する撹拌容器の蓋14の少なくとも一部分に形成されている。通路48は、撹拌装置の動作中に溶融ガラスの表面から最も遠くの開口38の上部に隣接し、かつ上面32に隣接して位置していることが好ましい。撹拌容器12内であって、溶融ガラスの自由表面28の上の内部雰囲気50の温度は、撹拌装置10の外部の外部雰囲気51の温度より著しく高いので、煙突効果が生じ、内部雰囲気50からの高温ガスが、撹拌容器の蓋14の開口画成表面40および撹拌機の軸24により形成された環状間隙52を通して排気される。これらのガスは、溶融ガラス自体からの揮発物質、または撹拌機および/または撹拌容器からの揮発物質(例えば、白金)を含み得る。これらの揮発物質は、撹拌容器の蓋の表面上に凝縮し、十分に大きく成長することができれば、離脱して、溶融ガラス中に取り込まれ得る。
【0020】
もちろん、通路48は、開口38内のどの垂直位置に配置されても差し支えない(
図5)。しかしながら、任意の他の熱源がなければ、高温の溶融ガラスから最も遠い撹拌容器の蓋14のそれらの部分は、溶融ガラスにより近い撹拌容器の蓋の部分よりも冷たく、開口の上部が最も冷たい傾向にある。それゆえ、溶融ガラスの表面から最も遠い、開口の上部に近い撹拌容器の蓋の表面で、凝縮物がより形成し易い。これらの撹拌容器の蓋の表面は、開口38を画成する表面40、および開口38内の撹拌機の軸24の表面の両方を含み得る。これらの表面を加熱するために、1つ以上の加熱素子56を通路48内に配置して、表面40、および開口38を通って延在する撹拌機の軸24の外面の両方を加熱する。1つ以上の加熱素子56を安定化させるために、耐火セメント46を通路48内に含ませて、この加熱素子を適所に保持してもよい。加えて、加熱素子56を取り囲む通路48が外装により被覆されるように、撹拌容器の蓋の一部分を覆って白金または白金合金の外装が配置されている。この外装は、下面34上に形成された外装36の延長部であってもよい。ここに用いたように、開口画成表面40は、撹拌容器の蓋自体の耐火材の表面である、または外装材が耐火表面上に配置された場合には、開口画成表面40が、開口を囲む外装表面である。
【0021】
環状間隙52の温度をモニタし、所望であれば、加熱素子56および/または加熱素子42の自動制御を支援するために、撹拌容器の蓋14内に1つ以上の熱電対58が含まれてもよい。
図4に示されるように、ある実施の形態において、通路60が、撹拌容器の蓋14の内部を通じて、表面40まで、または少なくともその近くまで延在して形成されてもよい。すなわち、熱電対は、間隙52を通って延在する雰囲気には曝露されないことが好ましいが、間隙52内の雰囲気と接触する表面の温度を妥当に決定できるほど十分に間隙の雰囲気に近い。熱電対58は通路60内に配置されている。熱電対通路60は、通路60内に熱電対を固定するために耐火セメント46を含むものとして
図4に示されている。しかしながら、耐火セメントは、熱電対58の温度検出性能を妨げるかもしれず、熱電対の交換を難しくするので、耐火セメントは、所望であれば、熱電対通路から排除されてもよい。また、
図4に示されるように、外装36は、熱電対の検出端62と撹拌機の軸24との間に配置されている。より簡単に言えば、熱電対58は、加熱素子56が外装により被覆されている様式と同様の様式で外装36により被覆されて差し支えない。
【0022】
動作中、連結部66を通じて撹拌機の軸24に接続されたモータ63が撹拌機16を回転させる。連結部66は、例えば、チェーンおよびモータと撹拌機の軸の両方に接続された関連するスプロケットを含むであろう。入口管20を通じて撹拌装置10に供給された溶融ガラス30は、撹拌機16により撹拌され、均質化され、出口管22を通じて撹拌装置から流出する。表面40での温度、および環状間隙52内の温度は、
図4に示されるように、制御回路を使用して制御することができる。表面40での温度は、熱電対58の検出端62により検出される。電気信号が熱電対により生成され、ライン68を通じて制御装置64に送達される。制御装置64は、その電気信号を所定の変換係数にしたがって温度として判断し、結果として得られた温度を所定の温度設定点と比較する。検出温度がその設定点温度未満である場合、制御装置は、ライン72を通じて電源70に命令して、ライン74を通じて加熱素子56に電流フローを送達する。検出温度が一旦設定点温度に到達したら、制御装置は電源に命令して、電流フローを減少させるかまたは停止させる。もちろん、他の制御スキームが可能であり、先は、実施の方法の1つに過ぎない。加熱素子42は、同様に、電源70およびライン76を通じて、制御装置64により制御される。
【0023】
以下に、例示の非限定的実施例を挙げる。
【0024】
C1. 溶融ガラスを撹拌するための装置において、撹拌容器とこの撹拌容器上に配置された撹拌容器の蓋を備えた撹拌装置であって、撹拌容器の表面が、撹拌機の軸がその中を延在する開口を画成し、それによって撹拌機の軸と撹拌容器の蓋の開口画成表面との間に環状間隙を形成している撹拌装置;開口画成表面で撹拌容器の蓋内に形成された第1の通路;および開口画成表面を加熱する、第1の通路内に配置された第1の加熱素子を備えた装置。
【0025】
C2. 前記撹拌容器の蓋が、中に配置された熱電対を含む第2の通路をさらに含み、この熱電対の検出端が開口画成表面に近接して配置されていることを特徴とするC1記載の装置。
【0026】
C3. 前記溶融ガラスの自由表面に面する撹拌容器の蓋の表面上に白金含有外装が配置されていることを特徴とするC1またはC2記載の装置。
【0027】
C4. 前記撹拌容器の蓋が、前記溶融ガラスに面する撹拌容器の蓋の表面に形成された追加の通路をさらに含み、この追加の通路内に第2の加熱素子が配置されていることを特徴とするC1からC3いずれか1つに記載の装置。
【0028】
C5. 前記撹拌容器の蓋が、その中に配置された熱電対をさらに含み、この熱電対の検出端が、環状間隙に隣接した撹拌容器の蓋の温度を検出するように配置されていることを特徴とするC1に記載の装置。
【0029】
C6. 溶融ガラスを撹拌する方法において、溶融ガラスを撹拌容器中に流す工程;撹拌容器の上に配置された撹拌容器の蓋の表面により画成された開口を通じて延在し、それによって、撹拌機と撹拌容器の蓋との間に環状間隙を形成する撹拌機により溶融ガラスを撹拌する工程;および撹拌容器の蓋の開口画成表面を、開口画成表面に近接して位置する加熱素子により加熱する工程;を有してなる方法。
【0030】
C7. 環状間隙内の温度を、撹拌容器の蓋内に配置された熱電対により検出する工程をさらに含むことを特徴とするC6記載の方法。
【0031】
C8. 検出された温度を使用して、加熱素子に供給される電流の大きさを制御し、それによって、開口画成表面の温度を調節する工程をさらに含むことを特徴とするC7記載の方法。
【0032】
本発明の精神および範囲から逸脱せずに、本発明の様々な他の改変および変更を行えることが当業者には明らかである。よって、本発明は、本発明の改変および変更を、それらが添付の特許請求の範囲およびその同等物に含まれるという条件で、包含することが意図されている。
【符号の説明】
【0033】
10 溶融ガラスを撹拌するための装置
12 撹拌容器
14 撹拌容器の蓋
16 撹拌機
20 入口管
22 出口管
24 撹拌機の軸
26 撹拌翼
30 溶融ガラス
36 外装
38 開口
40 開口画成表面
42,56 加熱素子
52 環状間隙
58 熱電対