特許第5695576号(P5695576)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5695576
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】DDR型ゼオライトの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 37/02 20060101AFI20150319BHJP
   C01B 39/48 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   C01B37/02
   C01B39/48
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-545152(P2011-545152)
(86)(22)【出願日】2010年11月5日
(86)【国際出願番号】JP2010069726
(87)【国際公開番号】WO2011070879
(87)【国際公開日】20110616
【審査請求日】2013年8月14日
(31)【優先権主張番号】特願2009-280294(P2009-280294)
(32)【優先日】2009年12月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100089347
【弁理士】
【氏名又は名称】木川 幸治
(74)【代理人】
【識別番号】100154379
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】内川 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】谷島 健二
【審査官】 田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−083375(JP,A)
【文献】 特開2003−159518(JP,A)
【文献】 特開2005−067991(JP,A)
【文献】 特開昭63−040718(JP,A)
【文献】 M.J. den Exter et al.,"Separation of Permanent Gases on the All-Silica 8-Ring Clathrasil DD3R",Studies in Surface Science and Catalysis,1994年,Vol.84,p.1159-1166
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 37/00−39/54
B01J 20/00−38/74
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1−アダマンタンアミン塩酸塩とシリカ(SiO)と水とを、モル比において1−アダマンタンアミン塩酸塩/SiOを0.002〜0.5かつ水/SiOを10〜500にて含む原料溶液を調製する原料溶液調製工程と、
前記原料溶液とDDR型ゼオライト粉末とが接触している状態で加熱処理することにより、前記DDR型ゼオライト粉末を種結晶としてDDR型ゼオライトを結晶成長させる結晶成長工程と、を有するDDR型ゼオライトの製造方法。
【請求項2】
前記原料溶液は、エチレンジアミンを含まない請求項1に記載のDDR型ゼオライトの製造方法。
【請求項3】
前記原料溶液調製工程は、シリカゾルを用いて前記シリカ(SiO)を含有する前記原料溶液を調製する工程と、前記原料溶液のpHを調整するpH調整工程とを含む請求項1又は2に記載のDDR型ゼオライトの製造方法。
【請求項4】
前記原料溶液調製工程は、シリカゾルを用いて前記シリカ(SiO)を含有させて、水酸化ナトリウム(NaOH)をNaOH/1−アダマンタンアミン塩酸塩のモル比で1.0以下にて含む前記原料溶液を調製する請求項1〜3のいずれか一項に記載のDDR型ゼオライトの製造方法。
【請求項5】
前記結晶成長工程は、前記原料溶液に前記DDR型ゼオライト粉末を分散させることにより、前記原料溶液と前記DDR型ゼオライト粉末とを接触させる請求項1〜4のいずれか一項に記載のDDR型ゼオライトの製造方法。
【請求項6】
前記結晶成長工程は、前記DDR型ゼオライト粉末を分散させた前記原料溶液に支持体を浸漬させることにより、前記支持体上でDDR型ゼオライトを結晶成長させる請求項1〜5のいずれか一項に記載のDDR型ゼオライトの製造方法。
【請求項7】
前記結晶成長工程は、前記DDR型ゼオライト粉末を付着せしめた支持体を前記原料溶液に浸漬させることにより、前記原料溶液と前記DDR型ゼオライト粉末とを接触させる請求項1〜4のいずれか一項に記載のDDR型ゼオライトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒、触媒担体、吸着剤、ガス分離膜、浸透気化膜などに利用することのできるDDR型ゼオライトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトは、その結晶構造から分類される、LTA、MFI、MOR、AFI、FER、FAU、DDRと称される数多くの種類(型)が存在する。
【0003】
これらの中でDDR(Deca−Dodecasil 3R)は、主成分がシリカからなる結晶であり、その結晶構造内には酸素8員環を含む多面体によって細孔が形成されている。DDR型ゼオライトの細孔径は、4.4×3.6オングストロームであり、各種のゼオライトの細孔径の中でも比較的小さい。
【0004】
DDR型ゼオライトは、小さな細孔径に加え、低分子ガスに対する固有の吸着特性を有している。そのため、DDR型ゼオライトは、特定の低分子ガスのみを分離する吸着剤として適用されている。例えば、DDR型ゼオライトは、膜状にすることにより、低分子ガスに対する分子篩膜として使用することができる。
【0005】
DDR型ゼオライトの製造方法には、構造規定剤として1−アダマンタンアミンを用い、さらにコロイダルシリカ、エチレンジアミン、および水を原料とし、これらの原料にDDR型ゼオライトの種結晶を添加して水熱合成することにより、DDR型ゼオライトを結晶成長させる方法が知られている。この製造方法では、アルミニウムを含まないオールシリカのDDR型ゼオライトを作ることができる(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−83375号公報
【特許文献2】特開2005−67991号公報
【0007】
しかしながら、従来のDDR型ゼオライトの製造方法では、水熱合成に長時間を費やし、またDDR型ゼオライトの単結晶を作るには水熱合成中に原料溶液を常時攪拌する必要もある。
【0008】
また、従来のDDR型ゼオライトの製造方法では、1−アダマンタンアミンが水に難溶性であるため、1−アダマンタンアミンをエチレンジアミンに溶解させることにより、水熱合成の条件を改善している。しかし、エチレンジアミンはPRTR制度[Pollutant Release and Transfer Register:人の健康や生態系に有害なおそれのある化学物質について、環境(大気、水、土壌)への排出量などを国に届け出をし、国が化学物質の排出量などを集計・公表する制度]の対象物質であり、環境に与える影響をより少なくするため、エチレンジアミンを使用しなくてもよいDDR型ゼオライトの製造方法が望まれている。
【0009】
さらに、DDR型ゼオライトを低いコストで製造することも求められている。
【0010】
上記の問題に鑑みて、本発明の課題は、環境に与える影響の低い材料での実施が可能であり、水熱合成の時間が短く原料溶液の常時攪拌を要さず、さらに製造コストの低いDDR型ゼオライトの製造方法を提供することにある。
【発明の概要】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明者等は、1−アダマンタンアミン塩酸塩を使用したDDR型ゼオライトの合成方法を見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明によれば、以下に示すDDR型ゼオライトの製造方法が提供される。
【0012】
[1] 1−アダマンタンアミン塩酸塩とシリカ(SiO)と水とを、モル比において1−アダマンタンアミン塩酸塩/SiOを0.002〜0.5かつ水/SiOを10〜500にて含む原料溶液を調製する原料溶液調製工程と、前記原料溶液とDDR型ゼオライト粉末とが接触している状態で加熱処理することにより、前記DDR型ゼオライト粉末を種結晶としてDDR型ゼオライトを結晶成長させる結晶成長工程と、を有するDDR型ゼオライトの製造方法。
【0013】
[2] 前記原料溶液は、エチレンジアミンを含まない前記[1]に記載のDDR型ゼオライトの製造方法。
【0014】
[3] 前記原料溶液調製工程は、シリカゾルを用いて前記シリカ(SiO)を含有する前記原料溶液を調製する工程と、前記原料溶液のpHを調整するpH調整工程とを含む前記[1]又は[2]に記載のDDR型ゼオライトの製造方法。
【0015】
[4] 前記原料溶液調製工程は、シリカゾルを用いて前記シリカ(SiO)を含有させて、水酸化ナトリウム(NaOH)をNaOH/1−アダマンタンアミン塩酸塩のモル比で1.0以下にて含む前記原料溶液を調製する前記[1]〜[3]のいずれかに記載のDDR型ゼオライトの製造方法。
【0016】
[5] 前記結晶成長工程は、前記原料溶液に前記DDR型ゼオライト粉末を分散させることにより、前記原料溶液と前記DDR型ゼオライト粉末とを接触させる前記[1]〜[4]のいずれかに記載のDDR型ゼオライトの製造方法。
【0017】
[6] 前記結晶成長工程は、前記DDR型ゼオライト粉末を分散させた前記原料溶液に支持体を浸漬させることにより、前記支持体上でDDR型ゼオライトを結晶成長させる前記[1]〜[5]のいずれかに記載のDDR型ゼオライトの製造方法。
【0018】
[7] 前記結晶成長工程は、前記DDR型ゼオライト粉末を付着せしめた支持体を前記原料溶液に浸漬させることにより、前記原料溶液と前記DDR型ゼオライト粉末とを接触させる前記[1]〜[4]のいずれかに記載のDDR型ゼオライトの製造方法。
【0019】
本発明のDDR型ゼオライトの製造方法は、水熱合成の時間が短く原料溶液の常時攪拌を要さない。また、本発明のDDR型ゼオライトの製造方法は、環境に影響を与えることが指摘されるエチレンジアミンを使用しなくても実施することが可能である。また、本発明のDDR型ゼオライトの製造方法は、流通量が多く安価な1−アダマンタンアミン塩酸塩を使用することにより、製造コストを低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例1の粉末状のDDR型ゼオライトのX線回折パターンを示す図である。
図2】実施例2の粉末状のDDR型ゼオライトのX線回折パターンを示す図である。
図3】実施例3の水熱合成後アルミナ製支持体のX線回折パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0022】
1.本発明のDDR型ゼオライトの製造方法の概要:
本発明のDDR型ゼオライトの製造方法は、1−アダマンタンアミン塩酸塩とシリカ(SiO)と水とを含む原料溶液を調製する原料溶液調製工程と、原料溶液とDDR型ゼオライト粉末とが接触している状態で加熱処理することにより、DDR型ゼオライト粉末を種結晶としてDDR型ゼオライトを結晶成長させる結晶成長工程とを有する。なお、上記の原料溶液は、1−アダマンタンアミン塩酸塩、SiO、及び水を含み、また1−アダマンタンアミン塩酸塩/SiOのモル比が0.002〜0.5かつ水/SiOのモル比が10〜500である。
【0023】
1−アダマンタンアミンは、DDR型ゼオライトが結晶成長する際に、DDR型ゼオライトの結晶構造を形成するための鋳型となる物質、いわゆる構造規定剤として働く。ところが、1−アダマンタンアミンは水に難溶である。そこで、本発明のDDR型ゼオライトの製造方法は、原料溶液に対する溶解性の高い1−アダマンタンアミン塩酸塩を使用する。1−アダマンタンアミンは、塩酸塩の形態にて原料溶液に溶解させても、DDR型ゼオライトの結晶成長では構造規定剤として機能することが可能である。
【0024】
したがって、本発明のDDR型ゼオライトの製造方法では、1−アダマンタンアミンに代わって1−アダマンタンアミン塩酸塩を使用することにより、十分な量の構造規定剤を原料溶液に溶解させることが可能になっている。
【0025】
本発明のDDR型ゼオライトの製造方法では、原料溶液に十分な量の構造規定剤が溶解しているため、結晶成長工程においてDDR型ゼオライトの結晶成長が効率良く進行する。その結果として、ゼオライト結晶は、DDR型以外の結晶相との混相が極めて少ない状態で作られる。
【0026】
1−1.原料溶液調製工程:
原料溶液調製工程では、1−アダマンタンアミン塩酸塩とシリカ(SiO)と水とを含む原料溶液を調製する。
【0027】
本工程では、1−アダマンタンアミン塩酸塩/SiOのモル比が0.002〜0.5となるように原料溶液を調製する。1−アダマンタンアミン塩酸塩/SiOのモル比が0.002以上であることにより、原料溶液中に溶解する構造規定剤の量の不足が生じなくなり、その結果としてDDR型ゼオライトの結晶成長の速度が低下しなくなる。一方、1−アダマンタンアミン塩酸塩/SiOのモル比が0.5まであれば、1−アダマンタンアミン塩酸塩の量はDDR型ゼオライトの結晶成長の速度の維持には十分である。よって、1−アダマンタンアミン塩酸塩/SiOのモル比が0.5以下のとき、1−アダマンタンアミン塩酸塩を必要最小限の使用量にとどめることができ、1−アダマンタンアミン塩酸塩を節約できるため、製造コストの面から好ましい。
【0028】
また、本工程では、水/SiOのモル比が10〜500となるように原料溶液を調製する。この数値範囲であることがDDR型ゼオライトの結晶成長に適している。
【0029】
原料溶液調製工程では、原材料にシリカゾルを使用することにより、原料溶液にシリカ(SiO)を含有させることもできる。シリカゾルは、微粉末状のシリカを水に溶解させて調製したものを用いても、市販のコロイダルシリカを用いてもよい。
【0030】
シリカゾルは、pHが高すぎても、逆にpHが低すぎても、ゲル化する傾向がある。原料溶液調整工程では、シリカゾルを用いて原料溶液を調製する場合、シリカゾルがゲル化しないようにするため、原料溶液のpHを調整するpH調整工程を行うことが好ましい。
【0031】
pH調整工程の具体例としては、水酸化溶液の添加などがある。
【0032】
上記のpH調整工程などによって、水酸化ナトリウム(NaOH)をNaOH/1−アダマンタンアミン塩酸塩のモル比が1.0以下にて含まれるように原料溶液を調製することが好ましい。これにより、原料溶液が過度な高pHの状態や過度な低pHの状態になりにくくなり、その結果として、原料溶液はゲル化する傾向が極めて低くなる。
【0033】
なお、原料溶液調製工程では、種結晶となるDDR型ゼオライト粉末を原料溶液中に予め分散させることもできる。
【0034】
本発明のDDR型ゼオライトの製造方法では、水に溶解しやすい1−アダマンタンアミン塩酸塩を使用する。そのため、本発明のDDR型ゼオライトの製造方法は、1−アダマンタンアミンを原料溶液に溶解させるための添加物(例えば、エチレンジアミンなど)を使用しなくても実施することができる。
【0035】
1−2.結晶成長工程:
結晶成長工程では、原料溶液とDDR型ゼオライト粉末とが接触している状態で加熱処理を行う水熱合成によりDDR型ゼオライト粉末を種結晶としてDDR型ゼオライトを結晶成長させる。
【0036】
この水熱合成では、原料溶液の温度が通常100〜170℃であり、結晶成長速度を高める観点からは120〜170℃であるとより好ましい。
【0037】
また、水熱合成の時間は、通常8〜120時間であり、製造コストを低くする観点からは12〜24時間であることが好ましい。
【0038】
ここまでに説明した特徴を備えつつ、本発明のDDR型ゼオライトの製造方法は、以下に述べる実施形態を適用することもできる。
【0039】
2.原料溶液にエチレンジアミンを含まない実施形態:
本発明のDDR型ゼオライトの製造方法では、1−アダマンタンアミンを水に溶解しやすい塩酸塩の形態で原料溶液に含有させることにより、1−アダマンタンアミンを原料溶液に溶解させるためにエチレンジアミンを使用する必要がなくなる。よって、本発明のDDR型ゼオライトの製造方法では、エチレンジアミンを原料溶液に含まない実施形態を適用することができる。
【0040】
この実施形態は、PRTR制度対象物質であるエチレンジアミンを使用しないため、環境に与える影響がより少なくなっている。
【0041】
3.原料溶液にDDR型ゼオライト粉末を分散させる実施形態:
結晶成長工程は、原料溶液に種結晶となるDRR型ゼオライト粉末を分散させて実施することができる。この実施形態では、結晶成長の結果、粉末状のDDR型ゼオライトを作ることができる。
【0042】
また、結晶成長工程では、DDR型ゼオライト粉末を分散させた原料溶液に支持体を浸漬させることによって、支持体上でDDR型ゼオライトを結晶成長させることもできる。この実施形態では、支持体にDDR型ゼオライトの結晶粒子が付着したものを作ることができる。
【0043】
さらに、この実施形態では、原料溶液に浸漬させる前の支持体にDDR型ゼオライト粉末が付着していても、付着していなくてもよい。
【0044】
4.DDR型ゼオライト粉末を付着せしめた支持体を用いる実施形態:
結晶成長工程は、DDR型ゼオライト粉末を付着せしめた支持体を原料溶液に浸漬させて実施することもできる。この実施形態では、結晶成長の結果、DDR型ゼオライト膜が支持体上に形成される。また、この実施形態では、原料溶液にDDR型ゼオライト粉末が含まれていても、含まれていなくてもよい。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0046】
(実施例1、2)
(原料溶液調製工程)
フッ素樹脂製の100ml広口瓶に、水、1−アダマンタンアミン塩酸塩(出光興産社製)0.81gを入れて混合することにより、1−アダマンタンアミン塩酸塩水溶液を調製した。このとき1−アダマンタンアミン塩酸塩は、スターラーを使用して撹拌することにより、水に完溶させた。この1−アダマンタンアミン塩酸塩水溶液に10質量%水酸化ナトリウム水溶液を添加し、スターラーで混ぜた。続いて、この液にシリカゾル(商品名:スノーテックスS、日産化学社製、固形分濃度30質量%)を添加して、シェイカーを使用して撹拌し、原料溶液を得た。実施例1、2の原料溶液における1−アダマンタンアミン塩酸塩/SiOのモル比、水/SiOモル比、および原料溶液におけるNaOH/1−アダマンタンアミン塩酸塩のモル比を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
(結晶成長工程)
粒径5μm以下の粒子から構成されるDDR型ゼオライト粉末を固形分濃度0.34質量%にて水に分散させて、DDR型ゼオライト種結晶分散液を調製した。このDDR型ゼオライト種結晶分散液0.8gを、原料溶液の入った広口瓶に添加し、軽く撹拌した。その後、この原料溶液を、内容積100mlのフッ素樹脂製内筒付きステンレス製耐圧容器に移し、160℃で16時間、水熱合成を行った。なお、この水熱合成の間、液の攪拌をしなかった。水熱合成後、フッ素樹脂製内筒底面には白色の合成粉末が堆積していた。この合成粉末をフッ素樹脂製内筒底面から採取した。採取した合成粉末を、水洗し、次いで80℃で乾燥させた。以上により、粉末状のDDR型ゼオライトを得た。以下、実施例1により得られた粉末状のDDR型ゼオライトを、実施例1の粉末状のDDR型ゼオライトと称する。なお、実施例2についても同様に称する。
【0049】
(結晶相の評価)
実施例1、2の粉末状のDDR型ゼオライトについて、X線回折により結晶相の評価を行った。結果、DDR型ゼオライトの回折ピークのみが明瞭に検出され、2θ=20〜30゜(CuKα)の領域にかけてハローは認められなかった。よって、実施例1、2では、DDR型ゼオライトの完全結晶が得られたことを確認した。図1に示すグラフは、実施例1の粉末状のDDR型ゼオライトをX線回折装置(装置名:MiniFlex、理学電機社製)を使用して測定したX線解析結果である。同様に、図2に示すグラフは、実施例2の粉末状のDDR型ゼオライトについてのX線解析結果である。なお、X線回折における「DDR型ゼオライトの回折ピーク」とは、International Center for Diffraction Data(ICDD)、「Powder Diffraction File」に示されるDeca−dodecasil 3Rに対応するNo.38−651、又は41−571に記載される回折ピークである。
【0050】
(実施例3)
(原料溶液調製工程)
フッ素樹脂製の100ml広口瓶に、水61ml、1−アダマンタンアミン塩酸塩(ダイセル化学工業社製)0.71gを入れて混合することにより、1−アダマンタンアミン塩酸塩水溶液を調製した。このとき1−アダマンタンアミン塩酸塩は、スターラーを使用して撹拌することにより、水に完溶させた。この1−アダマンタンアミン塩酸塩水溶液にシリカゾル(商品名:スノーテックスS、日産化学社製、固形分濃度30質量%)を添加した。続いて、この液をシェイカーを使用して撹拌し、原料溶液を得た。実施例3の原料溶液における1−アダマンタンアミン塩酸塩/SiOのモル比、水/SiOのモル比を表1に示す。
【0051】
(結晶成長工程)
原料溶液の入った広口瓶に、実施例1、2と同じDDR型ゼオライト種結晶分散液を0.3g添加し、軽く撹拌した。その後、この原料溶液を、内容積100mlのフッ素樹脂製内筒付きステンレス製耐圧容器に移した。この原料溶液中にアルミナ製多孔質支持体を浸漬し、135℃で120時間、水熱合成を行った。なお、この水熱合成の間、液の攪拌をしなかった。水熱合成後、フッ素樹脂製内筒からアルミナ製支持体を取り出した。取り出したアルミナ製支持体を、水洗し、次いで80℃で乾燥した。以上の実施例3により得られたアルミナ製支持体を、これ以降では実施例3の水熱合成後アルミナ製支持体と称する。
【0052】
(微構造観察)
実施例3の水熱合成後アルミナ製支持体について、走査型電子顕微鏡(以下SEM)を使用して微構造観察を行った。結果、実施例3の水熱合成後アルミナ製支持体上に多数の結晶粒子が付着していることを確認した。
【0053】
(結晶相の評価)
実施例3の水熱合成後アルミナ製支持体について、X線回折により結晶相の評価を行った。図3に示すグラフは、実施例3の水熱合成後アルミナ製支持体をX線回折装置を使用して測定したX線解析結果である。結果、支持体の成分であるアルミナ(コランダム)の回折ピーク(図3、クロス(×)で示すピーク)、DDR型ゼオライトの回折ピーク(図3、丸印(○)で示すピーク)、およびハローが検出された。よって、実施例3の水熱合成後アルミナ製支持体には、アルミナ製支持体上にDDR型ゼオライトの結晶が形成されていることを確認した。また、実施例3では、原料溶液中に水酸化ナトリウム(NaOH)を含まなくても、DDR型ゼオライトを結晶成長させることができた。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、触媒、触媒担体、吸着剤、ガス分離膜、浸透気化膜などに利用することのできるDDR型ゼオライトの製造方法として利用できる。
図1
図2
図3