【実施例1】
【0016】
図1は本発明の油圧ポンプの故障診断装置の第1の実施の形態が適用される油圧ポンプの縦断面図、
図2は本発明の油圧ポンプの故障診断装置の第1の実施の形態の構成を示す構成図、
図3は本発明の油圧ポンプの故障診断装置の第1の実施の形態におけるポンプ内部圧力と油タンク圧力との関係を示す特性図、
図4は本発明の油圧ポンプの故障診断装置の第1の実施の形態の処理内容を示すフローチャート図である。
【0017】
図1に示す油圧ポンプ1は、可変容量型斜板式の油圧ポンプであって、例えば油圧ショベル等の建設機械に用いられ、原動機等で回転駆動される。油圧ポンプ1は、大略、ケーシング3と、回転軸8と、シリンダブロック9と、ピストン11と、シュー12と、斜板13と、弁部材としての弁板15とを備えて構成されている。
【0018】
ケーシング3は、有底筒状に形成されたケーシング本体4と蓋体5とからなり、蓋体5はケーシング本体4との間にドレン油室6を形成している。また、ケーシング本体4にはドレンポート4Aが穿設され、ドレンポート4Aはドレン管路7を介して密閉型の油タンク2に接続されている。
【0019】
回転軸8は、ケーシング3に回転可能に設けられている。シリンダブロック9は、回転軸8の外周側にスプライン結合され、ケーシング本体4の筒部内で回転軸8と一体に回転する。また、シリンダブロック9は、一端側端面を後述する斜板13に対向させ、他端側端面を後述する弁板15に摺接させている。
【0020】
シリンダ10は、シリンダブロック9に複数個設けられている。各シリンダ10は、回転軸8を中心にしてシリンダブロック9の周方向に一定の間隔をもって離間し、シリンダブロック9の軸方向と平行に配設されている。各シリンダ10の先端側は、シリンダブロック9の一端側端面に開口している。各シリンダ10の基端側には、後述の吸入ポート15A、又は排出ポート15Bと連通するシリンダポート10Aが形成されている。
【0021】
ピストン11は、各シリンダ10内に摺動可能に挿嵌されている。これらのピストン11は、シリンダブロック9の回転に伴ってシリンダ10内を往復動し、このときに後述する吸入通路16A側からシリンダポート10Aを介してシリンダ10内に作動油を吸込み、吸込んだ作動油を高圧の圧油として後述する排出通路16B側に吐出させる。また、各シリンダ10から突出する各ピストン11の突出端側にはシュー12がそれぞれ揺動可能に取付けられている。これらのシュー12は斜板13に対して円軌道を描くように摺接している。
【0022】
ここで、シリンダ10とピストン11との間には、ピストン11の摺動特性を高めるために図示しない微小隙間が形成されている。シリンダ10内の圧油は一部がこの微小隙間を介してケーシング3のドレン油室6内へと漏洩する。そして、この漏洩油によりケーシング3内のドレン油室6は作動油でほぼ満たされた状態となり、ドレン油室6から溢れた作動油はドレン管路7を介して密閉型の油タンク2に戻される。
【0023】
斜板13は、ケーシング3内の蓋体5側の斜板支持部材14に傾転可能に支持されている。斜板13の表面側はシュー12が摺接する平滑面になっている。シュー12は、斜板13の平滑面上を円軌道を描くように摺接する。このことにより、ピストン11をシリンダ10の摺動面に沿って往復動させている。また、斜板13の裏面側には凸湾曲面からなる一対の脚部13A(一方のみ図示)が形成され、斜板支持部材14の表面側には、これらの脚部13Aに対応した一対の凹湾曲部14A(一方のみ図示)が形成されている。
【0024】
弁部材としての弁板15は、シリンダブロック9の他端側端面に摺接するように、ケーシング本体4の底部側に固着して設けている。弁板15には円弧形状をなす一対の吸入ポート15A、排出ポート15Bが形成されている。吸入ポート15A及び排出ポート15Bは、シリンダブロック9内の各シリンダ10にシリンダポート10Aを介して間欠的に連通し、吸入通路16A側からタンク2内の作動油をシリンダ10内に吸込ませつつ、排出通路16B側から高圧の圧油を外部の油圧アクチュエータに向けて吐出させている。
【0025】
吸入通路16A及び排出通路16Bは、ケーシング本体4の底部に形成されている。吸入通路16Aは油タンク2に吸入配管18(
図2参照)を介して接続され、排出通路16Bは油圧アクチュエータに向けて高圧の圧油を供給するための吐出配管19(
図2参照)と接続されている。
【0026】
ケーシング3の内圧検出手段としての圧力センサ17は、ドレンポート4Aと密閉型の油タンク2とを接続するドレン管路7に設けられている。圧カセンサ17は、ドレン管路7の圧力(ドレン圧)と等しいドレン油室6内の圧力をケーシング3の内圧として検出し、その検出信号を後述の信号処理装置21(故障診断手段)に出力している。
【0027】
本発明の油圧ポンプの故障診断装置の第1の実施の形態の構成を
図2に示す。
図2において、
図1に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
図2において、油圧ポンプ1の吸入通路16Aとドレンポート4Aは、それぞれ吸入配管18とドレン配管7を介して密閉型の油タンク2に接続されている。油圧ポンプ1の排出通路16Bは、吐出配管19の一端側が接続され、吐出配管19の他端側は、油圧ポンプ1からの圧油を図示しないブームシリンダ等の油圧アクチュエータに分配する制御弁20に接続されている。また、油タンク2にはリターン配管22の一端側が接続されていて、リターン配管22の他端側は、各アクチュエータからの戻り油を排出する制御弁20の排出ポートに接続されている。
【0028】
ドレン管路7には、油圧ポンプ1のドレンポート4Aから流出した作動油の圧力(PD)を計測するための圧力センサ17が設けられていて、内圧検出手段を構成している。吐出配管19には、油圧ポンプ1の排出通路16Bから流出した圧油の圧力(Pa)を計測するための圧力センサ25が設けられていて、吐出圧検出手段を構成している。また、油タンク2の上部には、油タンク2の気相部の圧力(PT)を計測するための圧力センサ23が設けられていて、タンク圧検出手段を構成している。さらに圧力センサ17,25,23の各出力信号は信号処理装置21に入力されている。信号処理装置21は、第1の基準圧値を記憶する記憶部と、圧力センサ17,23からの検出値を取込み、ケーシング3内の圧力と油タンク2内の気相部の圧力との差を算出する第1の演算部と、第1の演算部で算出した差圧と記憶部に記憶した第1の基準圧値とを比較演算する第2の演算部とを備え、後述する演算処理を実行して、油圧ポンプ1の摩耗状態を判定する。また、信号処理装置21からは、運転室のモニタ等の報知装置24へ診断内容を表す信号が出力されている。
【0029】
次に、本発明の油圧ポンプの故障診断装置の第1の実施の形態の動作を
図1乃至
図4を用いて説明する。
まず、油圧ポンプ1における内部作動油の圧力の概要について説明する。
図1において、油圧ポンプ1が原動機等により駆動されると、ケーシング3内でシリンダブロック9が回転駆動し、ピストン11をシリンダ10内で往復動させる。このとき、シリンダ10内で発生した圧油の一部は、シリンダ10とピストン11との微小隙間を介してケーシング3のドレン油室6内へと漏洩する。また、ピストン11の吸入行程において、何らかの原因によりピストン11とシリンダ10との間の摺動抵抗が高まると、シリンダブロック9を弁板15から引離す方向に乖離力が生じる。この乖離力によって、シリンダブロック9と弁板15との間の摺接面に隙間が生じ、圧油がドレン油室6内へと漏洩する。このような漏洩油は、ドレン油室6内に一時的に溜められた状態で、通常はドレン管路7を通じてタンク2側に排出されている。
【0030】
しかし、シリンダ10とピストン11との間に摩耗、カジリ等が発生し、これによって漏洩油の油量が急激に増大した場合には、ドレン管路7内に多量の圧油が流入するため、その流路途中に絞り抵抗が発生してケーシング3の内圧であるドレン圧(PD)は急激に上昇する。したがって、油圧ポンプ1のドレンポート4Aから流出した作動油の圧力(ドレン圧)を計測し、所定の閾値と比較することで、油圧ポンプ1の故障診断が可能となる。
【0031】
しかしながら、上述したように、油圧ポンプ1のケーシング3の内圧は、油タンク2の圧力変動を受けることがあるため、油圧ポンプ1が稼働した状態で、油圧ポンプ1の故障を精度良く確実に検出するためには、油タンク2の圧力変動を考慮することが必要になる。
【0032】
図3に示す、本発明の油圧ポンプの故障診断装置の第1の実施の形態におけるポンプ内部圧力と油タンク圧力との関係特性において、特性線aは、圧カセンサ17が検出したドレン管路7の圧力(ドレン圧力PD)を、特性線bは、圧力センサ23が検出した油タンク2の気相部の圧力(タンク圧力PT)を、特性線cは、ドレン圧力とタンク圧力との差圧(PΔ)をそれぞれ示している。
【0033】
図3に示す特性線bのタンク圧力(PT)は、大きく変動しているが、これは、油圧ポンプ1稼働中に、油タンク2から油圧ポンプ1に供給される作動油の流量と油タンク2に戻ってくる作動油の流量とが、時々刻々で異なるためである。一方、特性線aのドレン圧力(PD)は、特性線bのタンク圧力(PT)の変動周期に追従するように変化している。これは、油圧ポンプ1のドレンポート4Aがドレン管路7を介して油タンク2と接続されているためである。そこで、ドレン圧力(PD)に対するタンク圧力(PT)の影響を排除するため、ドレン圧力とタンク圧力との差圧(PΔ)を検討すると、特性線cの差圧(PΔ)の挙動は、ピーク圧力を除くと、その変動幅が小さくなることがわかる。この差圧(PΔ)を基に、油圧ポンプ1の故障診断を行うことで、油圧ポンプ1の稼働状態における故障を精度良く確実に検出することができる。
【0034】
本実施の形態において、油圧ポンプの故障診断装置は、圧力センサ17及び23によって計測した油圧ポンプ1のドレンポート4Aから流出した作動油の圧力(ドレン圧力)と油タンク2の気相部の圧力(タンク圧力)とに基づき、信号処理装置21で演算処理を行うことで、油圧ポンプ1の故障を検出する。
【0035】
次に、信号処理装置21の処理内容について
図4を用いて説明する。
【0036】
まず、信号処理装置21は、油圧ポンプ1の吐出圧力を計測する(ステップS100)。具体的には、圧力センサ25で検出する油圧ポンプ1の排出通路16Bから流出した圧油の圧力Paを取込む。
【0037】
信号処理装置21は、圧力センサ25からの油圧ポンプ1の吐出圧力Paが、リリーフ操作時のポンプ吐出圧力に相当する設定圧力Pa0以上か否かの判断を行う(ステップS101)。油圧ポンプの吐出圧力Paが、リリーフ操作時相当に達すると、ドレン圧力(PD)の挙動は、タンク圧力(PT)の挙動に追従しなくなるので、設定圧力Pa0未満の場合に故障診断を実行する。油圧ポンプ1の吐出圧力Paが設定圧力Pa0以上の場合には、リターンに進み再度スタートから演算を開始し、それ以外の場合には(ステップS102)に進む。
【0038】
信号処理装置21は、ドレン圧力(PD)とタンク圧力(PT)とを計測する(ステップS102)。具体的には、圧力センサ17で検出する油圧ポンプ1のドレンポート4Aから流出した作動油の圧力と、圧力センサ23で検出する油タンク2の気相部の圧力とを取込む。
【0039】
信号処理装置21は、ドレン圧力(PD)とタンク圧力(PT)の差圧(PΔ)を算出する(ステップS103)。具体的には、信号処理装置21において、油圧ポンプ1のドレンポート4Aから流出した作動油の圧力の値から油タンク2の気相部の圧力の値を減算して差圧(PΔ)を算出している。
【0040】
信号処理装置21は、ステップS103で算出した差圧(PΔ)が、予め定めた基準差圧(P0)以上か否かの判断を行う(ステップS104)。ここで、基準差圧P0は、通常の油圧ポンプ1運転稼働時における差圧を基に定めるものであるが、油圧ポンプ1の仕様や油圧回路の構成によって異なるものであり、例えば、予め実施する試験結果等から決められる。差圧(PΔ)が基準差圧(P0)以上の場合には、(ステップS105)に進み、それ以外の場合には(ステップS106)に進む。
【0041】
信号処理装置21は、油圧ポンプ1を故障と診断する(ステップS105)。具体的には、信号処理装置21が、油圧ポンプ1の摺動部材に異常があると判断し、報知装置24へ摩耗状態異常信号を出力する。報知装置24は、例えば、オペレータへ油圧ポンプ1の摩耗状態が異常であることを報知する。信号処理装置21は、リターンに進み再度スタートから演算を開始する。
【0042】
一方、(ステップS104)において、差圧(PΔ)が基準差圧(P0)未満の場合には、信号処理装置21は、油圧ポンプ1を正常と診断する(ステップS106)。具体的には、信号処理装置21が、油圧ポンプ1の摺動部材は正常であると判断し、報知装置24へ摩耗状態正常信号を出力する。報知装置24は、例えば、オペレータへ油圧ポンプ1の摩耗状態が正常であることを報知する。信号処理装置21は、リターンに進み再度スタートから演算を開始する。
【0043】
上述した本発明の油圧ポンプの故障診断装置の第1の実施の形態によれば、油圧ポンプ1が稼働した状態で、油圧ポンプ1のドレン圧力(PD)と油タンク2の圧力(PT)等とに基づいて故障診断を行うので、油圧ポンプ1摺動部材の損傷を精度良く確実に検出することができる。このことにより、部品の修理交換等の対策を事前に実行できるので、修理等に伴うダウンタイムを短縮することができる。この結果、建設機械の生産効率が向上する。
【実施例2】
【0044】
以下、本発明の油圧ポンプの故障診断装置の第2の実施の形態を図面を用いて説明する。
図5は本発明の油圧ポンプの故障診断装置の第2の実施の形態の構成を示すシステム構成図、
図6は本発明の油圧ポンプの故障診断装置の第2の実施の形態の処理内容を示すフローチャート図である。
図5及び
図6において、
図1乃至
図4に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0045】
本実施の形態においては、油タンク2の気相部の圧力(PT)を計測するための圧力センサ23に代えて、油圧ポンプ1の吸込み圧力(PS)を計測する圧力センサ27を設けて構成した点が、上述した第1の実施の形態と異なる。
【0046】
図5において、吸込配管18には、油圧ポンプ1の吸入通路16Aに流入する作動油の圧力(吸込み圧力)である油圧ポンプ1の吸込み圧力(PS)を計測する為の圧力センサ27が設けられていて、圧力センサ27の出力信号は信号処理装置21に入力されている。信号処理装置21は、第2の基準圧値を記憶する記憶部と、圧力センサ17,27からの検出値を取込み、ケーシング3内の圧力と油圧ポンプ1の吸込み圧力との差を算出する第1の演算部と、第1の演算部で算出した差圧と記憶部に記憶した第2の基準圧値とを比較演算する第2の演算部とを備え、後述する演算処理を実行して、油圧ポンプ1の摩耗状態を判定する。また、信号処理装置21からは、運転室のモニタ等の報知装置24へ診断内容を表す信号が出力されている。
【0047】
油タンク2が密閉型の場合、上述した第1の実施の形態のように、油圧ポンプ1稼働中に、油タンク2から油圧ポンプ1に供給される作動油の流量と油タンク2に戻ってくる作動油の流量とが異なって、油タンク2内の油面が上昇すると、油タンク2の気相部の容積が小さくなるので、油タンク2の気相部の圧力であるタンク圧力(PT)は上昇する。このとき、油タンク2内の作動油は、気相部の空気に押圧されるので、油圧ポンプ1の吸込み圧力(PS)も上昇する。逆に、油タンク2内の油面が降下すると、油タンク2の気相部の容積が大きくなるので、タンク圧力(PT)は降下する。このとき、油タンク2内の作動油が受ける気相部からの圧力が降下するので、油圧ポンプ1の吸込み圧力(PS)も降下する。
【0048】
このように、油タンク2が密閉型の場合、油圧ポンプ1の吸込み圧力(PS)は、タンク圧力(PT)と同様な挙動を示すことが実験結果から判明している。そこで、第1の実施の形態におけるドレン圧力(PD)に対するタンク圧力(PT)の影響を排除するため、ドレン圧力と吸込み圧力(PS)との差圧(PΔ1)を基に、油圧ポンプ1の故障診断を行うことで、油圧ポンプ1の稼働状態における故障を精度良く確実に検出することができる。
【0049】
本実施の形態において、油圧ポンプ1の故障診断装置は、圧力センサ17及び27によって計測した油圧ポンプ1のドレンポート4Aから流出した作動油の圧力(ドレン圧力)と油圧ポンプ1の吸入通路16Aに流入する作動油の圧力(吸込み圧力)とに基づき、信号処理装置21で演算処理を行うことで、油圧ポンプ1の故障を検出する。
【0050】
次に、信号処理装置21の処理内容について
図6を用いて説明する。
【0051】
まず、信号処理装置21は、油圧ポンプ1の吐出圧力を計測する(ステップS200)。具体的には、圧力センサ25で検出する油圧ポンプ1の排出通路16Bから流出した圧油の圧力Paを取込む。
【0052】
信号処理装置21は、圧力センサ25からの油圧ポンプ1の吐出圧力Paが、リリーフ操作時のポンプ吐出圧力に相当する設定圧力Pa0以上か否かの判断を行う(ステップS201)。油圧ポンプの吐出圧力Paが、リリーフ操作時相当に達すると、ドレン圧力(PD)の挙動は、吸込み圧力(PS)の挙動に追従しなくなるので、設定圧力Pa0未満の場合に故障診断を実行する。油圧ポンプ1の吐出圧力Paが設定圧力Pa0以上の場合には、リターンに進み再度スタートから演算を開始し、それ以外の場合には(ステップS202)に進む。
【0053】
信号処理装置21は、ドレン圧力(PD)と吸込み圧力(PS)とを計測する(ステップS202)。具体的には、圧力センサ17で検出する油圧ポンプ1のドレンポート4Aから流出した作動油の圧力と、圧力センサ27で検出する油圧ポンプ1の吸入通路16Aに流入する作動油の圧力とを取込む。
【0054】
信号処理装置21は、ドレン圧力(PD)と吸込み圧力(PS)の差圧(PΔ1)を算出する(ステップS203)。具体的には、信号処理装置21において、油圧ポンプ1のドレンポート4Aから流出した作動油の圧力の値から油圧ポンプ1の吸入通路16Aに流入する作動油の圧力の値を減算して差圧(PΔ1)を算出している。
【0055】
信号処理装置21は、ステップS203で算出した差圧(PΔ1)が、予め定めた基準差圧(P1)以上か否かの判断を行う(ステップS204)。ここで、基準差圧P1は、通常の油圧ポンプ1運転稼働時における差圧を基に定めるものであるが、油圧ポンプ1の仕様や油圧回路の構成によって異なるものであり、例えば、予め実施する試験結果等から決められる。差圧(PΔ1)が基準差圧(P1)以上の場合には、(ステップS205)に進み、それ以外の場合には(ステップS206)に進む。
【0056】
信号処理装置21は、油圧ポンプ1を故障と診断する(ステップS205)。具体的には、信号処理装置21が、油圧ポンプ1の摺動部材に異常があると判断し、報知装置24へ摩耗状態異常信号を出力する。報知装置24は、例えば、オペレータへ油圧ポンプ1の摩耗状態が異常であることを報知する。信号処理装置21は、リターンに進み再度スタートから演算を開始する。
【0057】
一方、(ステップS204)において、差圧(PΔ1)が基準差圧(P1)未満の場合には、信号処理装置21は、油圧ポンプ1を正常と診断する(ステップS206)。具体的には、信号処理装置21が、油圧ポンプ1の摺動部材は正常であると判断し、報知装置24へ摩耗状態正常信号を出力する。報知装置24は、例えば、オペレータへ油圧ポンプ1の摩耗状態が正常であることを報知する。信号処理装置21は、リターンに進み再度スタートから演算を開始する。
【0058】
上述した本発明の油圧ポンプの故障診断装置の第2の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態と同様な効果を得ることができる。