(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5695599
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】エンジン用排気マフラ
(51)【国際特許分類】
F01N 1/08 20060101AFI20150319BHJP
【FI】
F01N1/08 V
F01N1/08 H
F01N1/08 J
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-114279(P2012-114279)
(22)【出願日】2012年5月18日
(65)【公開番号】特開2013-241852(P2013-241852A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2014年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000138521
【氏名又は名称】株式会社ユタカ技研
(74)【代理人】
【識別番号】100071870
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 健
(74)【代理人】
【識別番号】100097618
【弁理士】
【氏名又は名称】仁木 一明
(74)【代理人】
【識別番号】100152227
【弁理士】
【氏名又は名称】▲ぬで▼島 愼二
(72)【発明者】
【氏名】大越 克紀
(72)【発明者】
【氏名】奥原 直樹
【審査官】
中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−200835(JP,A)
【文献】
特開2004−124708(JP,A)
【文献】
特開2009−013902(JP,A)
【文献】
特開2007−085312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェル胴部(3)、並びにこのシェル胴部(3)の両端に接続される第1及び第2シェル端板(4,5)よりなるシェル(2)と、このシェル(2)内を複数の膨張室(6〜8)に仕切る隔壁(9,10)と、この隔壁(9,10)を貫通して、エンジン(E)の排ガスを所定の膨張室(7)に誘導する第1消音パイプ(14)と、この第1消音パイプ(14)から流出した排ガスを、別の所定の膨張室(8)から外部に排出する第2消音パイプ(15)とを備え、前記第1消音パイプ(14)は、U字状の屈曲部(14c)を前記第2シェル端板(5)側へ向けたU字状パイプで構成され、また前記第2消音パイプ(15)は、U字状の屈曲部(15c)を前記第1シェル端板(4)側へ向けたU字状パイプで構成される、エンジン用排気マフラにおいて、
前記隔壁を、前記シェル(2)を第1シェル端板(4)側から第1,第2及び第3膨張室(6〜8)に仕切る第1及び第2隔壁(9,10)で構成して、前記第1,第2膨張室(6,7)間を仕切る第1隔壁(9)を無孔に形成すると共に、前記第2,第3膨張室(7,8)間を仕切る第2隔壁(10)にこれら2室間を連通する多数の孔(12)を設け、
前記第1消音パイプ(14)の上流端を前記第1膨張室(6)に開口させると共に、その下流端を前記第2膨張室(7)に開口させ、また前記第1消音パイプ(14)より流路長の長い前記第2消音パイプ(15)の上流端を前記第3膨張室(8)に開口させると共に、その下流端を前記第2シェル端板(5)外に開放し、
エンジン(E)の排気管(1)に接続されてそれの下流端が前記第1隔壁(9)で閉鎖されるインレットパイプ(13)を前記第1膨張室(6)に配置して、このインレットパイプ(13)に前記第1膨張室(6)に開口する多数の孔(16)を穿設し、
前記第1及び第2消音パイプ(14,15)を、これらが前記シェル(2)の軸方向と直交する投影面上で交差するように配置したことを特徴とする、エンジン用排気マフラ。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジン用排気マフラにおいて、
前記第1及び第2端板(4,5)の少なくとも一方には、それに対向する前記第1消音パイプ(14)又は第2消音パイプ(15)のU字状の屈曲部(15c)を収容する外方膨出部(4a)を形成したことを特徴とする、エンジン用排気マフラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シェル胴部、並びにこのシェル胴部の両端に接続される第1及び第2シェル端板よりなるシェルと、このシェル内を複数の膨張室に仕切る隔壁と、この隔壁を貫通して、エンジンの排ガスを所定の膨張室に誘導する第1消音パイプと、この第1消音パイプから流出した排ガスを、別の所定の膨張室から外部に排出する第2消音パイプとを備え、前記第1消音パイプは、U字状の屈曲部を前記第2シェル端板側へ向けたU字状パイプで構成され、また前記第2消音パイプは、U字状の屈曲部を前記第1シェル端板側へ向けたU字状パイプで構成される、エンジン用排気マフラの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
かゝるエンジン用排気マフラは、特許文献1に開示されるように、既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−200835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かゝるエンジン用排気マフラでは、エンジンの排ガスを所定の膨張室に誘導すべく、U字状の屈曲部を第2シェル端板側へ向けた第1消音パイプが中周波数域で消音効果を発揮し、また第1消音パイプから流出した排ガスを、別の所定の膨張室から外部に排出すべく、U字状の屈曲部を第1シェル端板側へ向けたU字状の第2消音パイプが低周波数域で消音効果を発揮するので、比較的広い周波数域で排気騒音を低減することができる。
【0005】
しかしながら、従来のものでは、第1及び第2消音パイプを、互いに挟み合うようにして一平面上に配置しているので、それらを収容する筒状のシェルが前記一平面方向で大型化することになる。
【0006】
本発明は、かゝる事情に鑑みてなされたもので、U字状の第1及び第2消音パイプを備えながら、筒状のシェルの小型化を可能にする前記エンジン用排気マフラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、シェル胴部、並びにこのシェル胴部の両端に接続される第1及び第2シェル端板よりなるシェルと、このシェル内を複数の膨張室に仕切る隔壁と、この隔壁を貫通して、エンジンの排ガスを所定の膨張室に誘導する第1消音パイプと、この第1消音パイプから流出した排ガスを、別の所定の膨張室から外部に排出する第2消音パイプとを備え、前記第1消音パイプは、U字状の屈曲部を前記第2シェル端板側へ向けたU字状パイプで構成され、また前記第2消音パイプは、U字状の屈曲部を前記第1シェル端板側へ向けたU字状パイプで構成される、エンジン用排気マフラにおいて、
前記隔壁を、前記シェルを第1シェル端板側から第1,第2及び第3膨張室に仕切る第1及び第2隔壁で構成して、前記第1,第2膨張室間を仕切る第1隔壁を無孔に形成すると共に、前記第2,第3膨張室間を仕切る第2隔壁にこれら2室間を連通する多数の孔を設け、前記第1消音パイプの上流端を前記第1膨張室に開口させると共に、その下流端を前記第2膨張室に開口させ、また前記第1消音パイプより流路長の長い前記第2消音パイプの上流端を前記第3膨張室に開口させると共に、その下流端を前記第2シェル端板外に開放し、エンジンの排気管に接続されてそれの下流端が前記第1隔壁で閉鎖されるインレットパイプを前記第1膨張室に配置して、このインレットパイプに前記第1膨張室に開口する多数の孔を穿設し、前記第1及び第2消音パイプを、これらが前記シェルの軸方向と直交する投影面上で交差するように配置したことを第1の特徴とする。
【0008】
また本発明は、第1の特徴に加えて
、前記第1及び第2端板の少なくとも一方には、それに対向する前記第1消音パイプ又は第2消音パイプのU字状の屈曲部を収容する外方膨出部を形成したことを第
2の特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の特徴によれば、
エンジンEから排出された排ガスは、インレットパイプの多数の孔から第1膨張室に広く分散されることで、高周波の騒音を吸収することができる。また、第1膨張室に分散した排ガスは、第1消音パイプに流入して第2膨張室へと流出するが、この第1消音パイプは、U字状の屈曲部を第2シェル端板側へ向けたU字状パイプで構成されて、その流路長はシェルの軸方向長さより充分に長いので、中周波数の騒音に対して消音効果を発揮することができる。また、第1消音パイプから第2膨張室に出た排ガスは、第2隔壁の多数の孔を通過することで第3膨張室に広く分散し、これにより残余の高周波騒音を吸収することができる。また更に、第3膨張室に分散した排ガスは、U字状の屈曲部を第1シェル端板側へ向けたU字状パイプで構成された第2消音パイプに流入した後、大気中へ排出されるが、第2消音パイプの流路長は第1消音パイプよりも長いので、低周波数の騒音に対して消音効果を発揮することができて、高周波数から低周波数までの広い周波数域において消音効果を発揮することができる。
【0010】
また、中周波数の騒音に対して消音効果を発揮するU字状の第1消音パイプと、低周波数の騒音に対して消音効果を発揮するU字状の第2消音パイプとを、これらがシェルの軸方向と直交する投影面上で交差するように配置したことで、有効長さの長い第1及び第2消音パイプをシェル内にコンパクトに収容することができ、これによって排気マフラのシェルの小型化を図ることができる
。
【0011】
本発明の第
2の特徴によれば、第1及び第2端板の少なくとも一方には、それに対向する第1消音パイプ又は第2消音パイプのU字状の屈曲部を収容する外方膨出部を形成したことで、端板の剛性の強化と、シェルのコンパクト化を図りながら消音パイプの有効長さを充分に得ることができて、その消音機能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る排気マフラを備えた自動車用エンジンの排気系の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を添付図面に基づいて以下に説明する。
【0014】
先ず、
図1において、エンジンEのシリンダヘッドに接続される排気管1の下流端に本発明の排気マフラMの一端部が接続される。
【0015】
図2〜
図4において、上記排気マフラMのシェル2は、筒状のシェル胴部3と、このシェル胴部3の両端にかしめ又は溶接により結合される第1及び第2シェル端板4,5とで構成される。また各端板4,5は、その中心部を外方へ向けた球状の外方膨出部4a,5aを有し、この外方膨出部4a,5aにより各端板4,5の剛性が強化される。
【0016】
上記シェル胴部3の内周壁には、シェル2の内部を第1シェル端板4側から第1,第2及び第3膨張室6〜8に仕切る第1及び第2隔壁9,10が溶接され、第1隔壁9は無孔であるが、第2隔壁10には、第2及び第3膨張室7、8間を連通する多数の孔12,12…が設けられる。
【0017】
またシェル2内には、インレットパイプ13と、それぞれU字状パイプよりなる第1及び第2消音パイプ14,15とが配設される。インレットパイプ13は、第1シェル端板4を貫通して第1膨張室6に配置される。このインレットパイプ13は第1シェル端板4と第1隔壁9とに溶接して固着されると共に、その下流端は第1隔壁9により閉鎖され、その上流端に前記排気管1の下流端が接続される。このインレットパイプ13には、第1膨張室6に開口する多数の孔16,16…が穿設されている。
【0018】
第1消音パイプ14は、上流端を第1膨張室6に開口させる上流側直線部14aと、下流端を第2膨張室7に開口させる下流側直線部14bと、これら上流側直線部14a及び下流側直線部14b間を第3膨張室8において接続するU字状の屈曲部14cとで構成され、上流側直線部14aは、第1及び第2隔壁9,10を貫通すると共に、それらに溶接して固着され、下流側直線部14bは、第2隔壁10を貫通すると共に、それに溶接して固着される。
【0019】
第2消音パイプは、上流端を第3膨張室8に開口させる上流側直線部15aと、下流端を第2シェル端板5外に開放する下流側直線部15bと、これら上流側直線部15a及び下流側直線部15b間を第1膨張室6において接続するU字状の屈曲部15cとで構成され、上流側直線部14aは、第2隔壁9,10を貫通すると共に、それに溶接して固着され、下流側直線部15bは、第1及び第2隔壁9,10を貫通すると共に、それらに溶接して固着され、U字状の屈曲部15cは、第1シェル端板4の外方膨出部4a内に臨むように配置される。第2消音パイプ15の下流端には、第2シェル端板5の外方へ突出するテールパイプ17が接続される。
【0020】
而して、上記第1及び第2消音パイプ14,15は、シェル2の軸方向と直交する投影面上で交差するように配置される。そして、これら第1及び第2消音パイプ14,15を効率良く収容すべく、シェル2は、断面楕円形に形成される。
【0021】
次に、この実施形態の作用について説明する。
【0022】
エンジンEの運転中、それから排気管1へ排出された排ガスは、排気管1を通過した後、インレットパイプ13に流入し、そのインレットパイプ13の多数の孔16,16…から第1膨張室6に広く分散されることで、高周波の騒音を吸収することができる。
【0023】
第1膨張室6に分散した排ガスは、第1消音パイプ14に流入して、第2膨張室7へと流出する。この第1消音パイプ14は、第1及び第2隔壁9,10を貫通し、第3膨張室8でUターンして再び第2隔壁10を貫通するようにU字状に形成され、第1及び第2膨張室6,7間を連通するので、その流路長は、シェル2の軸方向長さより充分に長い。したがって、この第1消音パイプ14は、中周波数の騒音に対して消音効果を発揮することができる。
【0024】
第1消音パイプ14から第2膨張室7に出た排ガスは、第2隔壁10の多数の孔12,12…を通過することで、第3膨張室8に広く分散し、これにより残余の高周波騒音を吸収することができる。
【0025】
第3膨張室8に分散した排ガスは、第2消音パイプ15に流入して、それを通過した後、テールパイプ17を介して大気中へ排出される。上記第2消音パイプ15は、第1及び第2隔壁9,10を貫通し、第1膨張室6でUターンして再び第1及び第2隔壁10を、更に第2シェル端板5を貫通するようにU字状に形成され、第3膨張室8を大気に開放するので、その流路長は、第1消音パイプ14よりも長い。したがって、この第2消音パイプ15は、低周波数の騒音に対して消音効果を発揮することができる。
【0026】
かくして、排気マフラMは、高周波数から低周波数までの広い周波数域において、消音効果を発揮することができる。
【0027】
しかも、第1及び第2消音パイプ14,15は、シェル2の軸方向と直交する投影面上で交差するように配置されるので、シェル2内にコンパクトに収容することができ、これによってシェル2、即ち排気マフラMの小型化を図ることができる。
【0028】
また前記第1シェル端板4には、それに対向する第2消音パイプ15のU字状の屈曲部15cを収容する外方膨出部4aが形成されるので、第1シェル端板4の剛性を強化と、シェル2のコンパクト化を図りながら第2消音パイプ15の有効長さを充分に得ることができて、その消音機能を高めることができる。
【0029】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば
、第1消音パイプ14を、そのU字状の屈曲部14cを第2シェル端板5の外方膨出部5a内に配置するように形成することもできる。
【符号の説明】
【0030】
E・・・・・・エンジン
M・・・・・・排気マフラ
1・・・・・・排気管
2・・・・・・シェル
3・・・・・・シェル胴部
4・・・・・・第1シェル端板
5・・・・・・第2シェル端板
6・・・・・・第1膨張室
7・・・・・・第2膨張室
8・・・・・・第3膨張室
9・・・・・・第1隔壁
10・・・・・第2隔壁
12・・・・・第2隔壁の多数の孔
13・・・・・インレットパイプ
14・・・・・第1消音パイプ
15・・・・・第2消音パイプ
16・・・・・インレットパイプの多数の孔