(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱エネルギーと電気エネルギーとの間のエネルギーを交換するための少なくとも1個の熱電素子(1,2)であって,上記少なくとも1個の熱電素子(1,2)は,第1の面(13)と,当該第1の面と反対側の第2の面を備えるものと;
上記第1の面(13)の上に直接配置される少なくとも第1の領域(17)を有する第1の電極(3)と;
上記第2の面(14)に直接配置される少なくとも第2の領域(18)を含む第2の電極(4)とを備え,
上記第1の領域(17)および上記第2の領域(18)の少なくとも一方はインバー効果を発揮する金属合金を備え,
上記第1の電極(3)および上記第2の電極(4)の上記少なくとも1個は,上記金属合金を含む第1の層と,第2の層とを備え,
上記第1の層及び上記第2の層は互いに溶接もしくはハンダ付けされる,
熱電モジュール。
熱エネルギーと電気エネルギーとの間のエネルギーを交換するための少なくとも1個の熱電素子(1,2)であって,上記少なくとも1個の熱電素子(1,2)は,第1の面(13)と,当該第1の面と反対側の第2の面を備えるものと;
上記第1の面(13)の上に直接配置される少なくとも第1の領域(17)を有する第1の電極(3)と;
上記第2の面(14)に直接配置される少なくとも第2の領域(18)を含む第2の電極(4)とを備え,
上記第1の領域(17)および上記第2の領域(18)の少なくとも一方はインバー効果を発揮する金属合金を備え,
上記金属合金はある破壊靭性K1cを有し,ここでK1c ≧50MPa m1/2である,
熱電モジュール。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は,温度差が大きい場合でも信頼性のある動作を可能とすると共に,製造もしくは工程の促進が容易である熱電モジュールを提供することである。本発明の他の目的は,相当する熱電モジュールの製造方法を提供することである。
【0011】
これらの目的は独立項の対象により達成される。本発明における有益な進展は,請求項に基づいて評価される。
【0012】
本発明に基づき,熱エネルギーと電気エネルギーとの間のエネルギー変換を行う,少なくとも1個の熱電素子を備える熱電モジュールが提供される。少なくとも1個の熱電素子は,第1の面と,この第1の面と反対側の第2の面を備えている。熱電モジュールは,更に,第1の面に直接配置される少なくとも第1の領域を有する第1の電極と,第2の面に直接配置される少なくとも第2の領域を含む第2の電極とを備えている。第1の領域と第2の領域の少なくとも一方は,インバー効果を発揮する金属合金を備えている。
【0013】
この例,およびこれ以降の本文において,用語“インバー効果を発揮する合金”は,自身の元素組成により,結晶格子の負磁気体積圧縮(体積磁歪)を示す合金のことである。結果として,温度上昇における磁気体積圧縮の減少が,少なくとも部分的に,格子振動がもたらす膨張を補うため,対応する合金は,特定の温度範囲において,きわめて小さいか,または負である熱膨張係数(熱膨張の係数あるいはCTE)を示すと考えられる。
【0014】
本発明は,有利な点として,温度差が大きい場合でも確実に操作可能な熱電モジュールを提供する。高い温度差は熱電モジュールの動作中生ずるため,熱電モジュールが発電機構造の内部にあるか,または発電機として用いられる場合,動作の信頼性・確実性には特に有益である。このことは,本発明によれば,第1の電極または第2の電極の第1の領域および第2の領域,すなわち,第1の領域かつ/または第2の領域のうち少なくとも一つが,インバー効果を発揮する金属合金を備えていることよって達成される。それによって,熱電モジュールの部品として使用される熱電材料に適合した熱膨張係数を有する電極材料を提供することが可能である。特に,本発明は,比較的小さな熱膨張係数,一般的には12・10
−61/Kの極大値を有する熱電材料,例えば方コバルト鉱やHalf Heusler合金,に適合した電極材料の提供を可能にした。銅,ニッケル,銀,または金などの金属を含む適合した電極は,特に入手が困難である。
【0015】
第1の電極および/または第2の電極における膨張係数の適合により,本発明は,熱電モジュールの高温側と低温側において,温度差調整に伴い膨張段階の差に応じて発生する,熱電素子と第1の電極または第2の電極の接触面における熱機械学的負荷を最少化するという有益な効果をもたらす。そのため,温度差が大きい場合でも,熱機械学的負荷による損傷を受けることなく熱電モジュールの動作が可能となる。その結果,使用される熱電材料の可能性をできる限り最大限引き出すことが可能となる。さらに,高い温度差の適用により,熱電モジュールの効率を上げることができる。
【0016】
加えて,膨張係数の適合により熱負荷が減少するため,特に熱サイクル負荷の存在下において,熱電モジュールの使用可能寿命を延ばすことができる。
【0017】
米国第2010/0167444号公開公報に開示された,熱電材料としてのスクッテルド鉱に関する方法を利用するため,タングステン,モリブデン,ニオブ,タンタル,ジルコニウム,クロム,バナジウム,チタンなどの耐熱金属のみを,比較的低い膨張係数を持つ金属としてみなすことができる。不利な点は,耐熱金属は概してもろく,融点が高い点である。合金の膨張係数を望ましい値に調整するために,耐熱金属の割合が高いこと,例えば,合金WxCu−x中におけるW(タングステン)の割合が少なくとも50%を占めること,が必要である。得られた合金は結果的に加工が困難であるため,熱電モジュールの製造コストはさらに増加する。
【0018】
これに対して,本発明に係る金属合金は,米国第2010/0167444号公開公報に開示されたCu‐WまたはCu‐Mo電極材料に比べ,製造が容易で且つ工程を促進することができる。それによって,本発明に係る熱電モジュールの製造コストを削減することは有益に可能である。
【0019】
第1の領域及び第2の領域の少なくとも1つは,インバー効果を発揮する金属合金によって全体的に構成されていてもよい。また,相当する領域,すなわち,第1の電極および第2の電極のうち少なくとも一つか,もしくは双方の電極は,インバー効果を発揮する金属合金によって全体的に構成されていてもよい。しかしながら,更に以下に説明するように,第1の電極および第2の電極のうち少なくとも一つが,インバー効果を発揮する合金に加えて,他の導電性材料,特に他の金属ないし合金を含んでいてもよい。
【0020】
好ましい態様としては,熱電モジュールが第1の電極を熱源から電気的に絶縁する第1の絶縁層を含み,該第1の絶縁層は,少なくとも部分的には第1の電極の上に直接配置されている。
【0021】
熱電モジュールはさらに,第2の電極をヒートシンクから電気的に絶縁する第2の絶縁層を含み,該第2の絶縁層は,少なくとも部分的には第2の電極の上に直接配置されている。
【0022】
先に述べた実施例は,対応する絶縁層の設置により,電気的短絡を信頼性高く避けることを可能にする。本発明に係る電極材料の使用は,さらに,第1の電極または第2の電極における熱膨張係数の,望ましい形として熱電モジュールにおける絶縁層として用いられる,セラミック材料に対する適合を可能にする。それによって,熱電素子の高温部と低温部の間における温度差調整に伴い膨張段階の差に応じて発生する,第1の電極または第2の電極と第1の絶縁層または第2の絶縁層それぞれの接触面における熱機械学的負荷を最小化することができる。
【0023】
金属合金は,望ましくは,FePt,FeNiPt,FeMn,CoMn,FeNiMn,CoMnFe,CrMn,CrCo,CrFe,NiFe,及びNiCoFeからなる群から選択された合金系の1つである。これらの合金系は,特に,本発明に基づき,膨張係数の適合のため,インバー効果を有効に用いるのに適している。
【0024】
本発明の1つの実施の形態においては,金属合金は次に述べる成分で実質的に構成される。
【0025】
Ni
aMn
bSi
cCr
dC
eFe
f
ここで,
0.1重量% ≦ b ≦ 0.5重量%
0.05重量% ≦ c ≦ 0.3重量%
0重量% ≦ d ≦ 8.0重量%
0重量% ≦ e ≦ 0.03重量%
43.0重量% ≦ f ≦ 67.0重量%
付随的な不純物 ≦ 1.0重量%; 残余Ni
【0026】
次に示す範囲の場合,より望ましい。
0.2重量% ≦ b ≦ 0.4重量%
0.1重量% ≦ c ≦ 0.2重量%
0.9重量% ≦ d ≦ 6.0重量%
0重量% ≦ e ≦ 0.02重量%
44.5重量% ≦ f ≦ 65.0重量%
【0027】
特に以下の式が適用されてもよい:
43.0重量% ≦ f ≦ 50.0重量%
【0028】
金属合金は,特にNi
51Fe
49,Ni
54Fe
46,Ni
47.3Mn
0.2Si
0.2Cr
6Fe
45.9,Ni
51.3Mn
0.4Si
0.1Cr
0.9Fe
46.4,Ni
50.5Mn
0.4Si
0.1Fe
48.7,Ni
51.25Mn
0.4Si
0.1Fe
48.1及びNi
54.4Mn
0.2Si
0.1Fe
44.5,から構成される群のうちいずれでもよく,ここで重量比100%に満たない残余は,群Cr,C,Co,Cu,Al,Mo,Ti及び他の不純物から構成される。
【0029】
本発明における他の実施形態において,金属合金は次に述べる成分で実質的に構成される。
【0030】
Ni
aCo
bSi
cCr
dFe
eMn
f
ここで,
26.0重量% ≦ a ≦ 32.0重量%
15.0重量% ≦ b ≦ 25.0重量%
0重量% ≦ c ≦ 0重量%
0重量% ≦ d ≦ 2.0重量%
0重量% ≦ f ≦ 2.0重量%
付随的な不純物 ≦ 1.0重量%; 残余Fe
【0031】
次に示す範囲の場合,より望ましい。
28.0重量% ≦ a ≦ 30.0重量%
17.0重量% ≦ b ≦ 23.0重量%
0重量% ≦ c ≦ 1.0重量%
0重量% ≦ d ≦ 1.0重量%
0重量% ≦ f ≦ 1.0重量%
【0032】
金属合金は,特にNi
28Co
21Fe
51,Ni
28Co
23Fe
49,Ni
29Co
18Fe
53,Ni
28.95Co
17.4Fe
53,Ni
29.5Co
17.1Fe
53及びNi
28Co
22.8Fe
48.4から構成される群のうちいずれでもよく,ここで重量比100%に満たない残余は,群Si,Cr,C,Mn,Cu,Al,Mo,Ti及び他の不純物から構成される。
【0033】
異なった材料の温度依存性の熱膨張を比較するために,一般的に参照温度T
0に関連した平均線膨張係数α(T)が使用される。これはα(T)=(L−L
0)/[L
0(T−T
0)] として定義され,ここでLは温度Tにおけるサンプルの長さであり,そしてL
0は参照温度T
0におけるサンプルの長さである。周囲の温度(室温,RT)は,本実施の形態及び明細書の残りの部分において基準として用いられる。
【0034】
縦方向の熱膨張係数,または熱膨張としても言及される平均線膨張係数α(T)に加えて,比較として,空間の膨張係数,体積の膨張係数もまたは立方体の膨張係数としても言及される熱空間的な膨張係数 g が用いられる。以下の式が等方性の固体材料に適用される。
【0036】
好ましい実施態様として,金属合金は,少なくとも1個の熱電素子の熱膨張係数αTEと,第1および/または第2の絶縁層との間の熱膨張係数αE1を有する。その結果,この実施の形態においてはα
Max ≧ α
E1 ≧ α
Minであり,ここで α
Min は α
Iso及びα
TEからの最小値であり, α
Max はα
Iso及び α
TEからの最大値である。すなわち,α
Min = Min{α
TE;α
Iso}及びα
Max= Min{α
TE;α
Iso}である。特に,α
Max > α
E1>α
Minが成り立つ可能性もある。ある実施態様においては,α
TE≧ α
E1 ≧α
Isoである。前述した実施態様により,第1および/または第2の電極における熱膨張の,熱電素子の熱電材料および好ましくは第1および/または第2の絶縁層のセラミック材料に対する同時的適合を可能にする電極材料,または第1および/または第2の電極の構成が提供される。前述した各関係式における,特に好ましい温度範囲は100°Cから600°までであり,すなわち,α
Max(T) ≧ α
E1 (T)≧ α
Min(T)より,100°C ≦ T ≦ 600°Cと表すことができる。特に,熱電モジュールが発電機の一部または発電機として動作する場合,動作中に大きな温度差が生じるため,特に有益である。
【0037】
また,好ましくは,|α
TE−α
E1| ≦ |α
E1−α
Iso|で示される式も適用される。熱電材料の破壊靱性が,好ましくはセラミック絶縁層のそれよりも一般的に低く,これによって,熱電材料は一般的に絶縁層より小さな熱負荷に耐える,と言う考察が基本になっている。この状況は,前述した条件に従って適合された金属合金の熱膨張係数α
E1によって特定的に考慮される。
【0038】
例えば,金属合金5・10
−61/K ≦ α
E1 ≦ 12・10
−61/K の熱膨張係数α
E1に適用される。それによって,熱膨張係数α
E1は,実質的に,スクッテルド鉱及び色々な半オイスラー合金の熱膨張係数に相当する。
【0039】
本発明の他の態様においては,第1の電極及び第2の電極の少なくとも一方が,金属合金を含む第1の層および第2の層を有している。この実施態様は,電極の膨張係数が境界面の電極/熱電物質と電極/絶縁層との間に電極の膨張係数がある勾配を有する場合,第1の電極と,第2の電極の少なくとも1個と熱電物質との間の境界面と,第1の電極と第2の電極の少なくとも1個と第1もしくは第2の絶縁層との間の境界面における複数の熱的な負荷を同時に最小化することが,特に容易に可能である。それゆえ,電極は同質的な物質から構成されていないものの,少なくとも第1の層および第2の層とを含む構造体を有し,少なくとも第1の層の膨張係数は,インバー効果を用いることによって調整される。
【0040】
第1の層は熱膨張係数α
E11,第2の層は熱膨張係数α
E12を有する第2の物質をそれぞれ含む。ここで,α
Max ≧ α
E11 ≧ α
E12 ≧ α
Minであり,α
Min は同様にα
Isoおよび α
TE の最小値を,およびα
Maxはα
Iso及び α
TE の最大値を,それぞれ示す。例えば,α
TE ≧ α
E11 ≧ α
E12 ≧ α
Isoが適用される。熱負荷は,電極/熱電材料,および電極/絶縁層間の境界面によってより改善された吸収されるとともに,電極内において実質上完全に局在化できる。特に好ましい方法では,前述した関係式は100°Cから600°Cの温度範囲に適用可能で,すなわち,100°C ≦ T ≦ 600°C の時,α
Max (T)≧ α
E11 (T)≧ α
E12 (T)≧ α
Min (T)が成り立つ。
【0041】
第1の層および第2の層は互いに溶接されるかもしくはハンダ付されることが好ましい。このことは前述した層の簡単かつ信頼性のある接続を可能にする。
【0042】
本発明の他の実施形態においては,第1の電極および第2の電極の少なくとも1個は複数の層(1からn,n≧3),を含み,第1の層は熱膨張係数α
E11を有する第1の物質を含み,第nの層は熱膨張係数α
E1nを有する第nの物質を含む。この時熱膨張係数はα
Max ≧ α
E11 ≧ α
E12 > K > α
E1n―1 ≧ α
E1n ≧ α
Min で表されるが,α
Min はα
Isoおよび α
TE からの最小値,α
Maxはα
Isoおよび α
TE からの最大値をそれぞれ示し,上記における複数の層の少なくとも1個金属合金を含む。電極に対し複数の層を導入することによって,熱負荷を更に減少させることが可能である。例えば,α
TE ≧ α
E11 ≧ α
E12 > K > α
E1n―1 ≧ α
E1n ≧ α
Iso が適用される。前述した各関係式は,特に好ましい方法において,100°Cから600°Cの温度範囲に適用される。すなわち,100°C ≦ 600°C の時,α
Max (T)≧ α
E11 (T)> α
E12 (T)> ・・・ > α
E1n−1(T)> α
E1n(T)≧ α
Min(T)が成り立つ。
【0043】
さらに,第1の電極および第2の電極のうち少なくとも1個は,第1の層を有していてもよく,この第1の層は,金属合金および,第1の組成から第2の組成へ移行に伴って厚さが変化する変化する第1の層の化学的組成を有する。境界面の化学的組成は,電極の境界面における熱膨張係数が,熱電材料,または第1および/または第2の絶縁層にそれぞれ適合するやり方に応じて選択される。その結果,電極における膨張係数勾配は,層内の組成を変化することによって,境界面の電極/熱電材料,および電極/絶縁層との間において達成される可能性がある。
【0044】
少なくとも1個の熱電素子は,好ましくはスクッテルド鉱,半オイスラー合金,ジントル相,シリサイド,クラスレート,SiGeおよび酸化物からなる群から選択された物質を有している。これらの物質は,熱電素子において使用されるために特に適している。
【0045】
本発明の他の実施形態においては,第1の絶縁層および/または第2の絶縁層は,AlN,Al
2O
3及びSi
3N
4から構成される群から選択される物質を含んでいる。これらの物質は良好な熱伝導度を有し,それによって熱源から,またはヒートシンクへの,効率的な熱伝導が可能となる。
【0046】
好ましい実施形態においては,金属合金はTc>400°Cであるキューリー温度Tcを有する。その結果,400°Cから600°Cのスカットル及び半オイスラー合金の使用における一般的な最大温度まで,および熱電モジュールの最大適用/動作可能温度まで,インバー効果の利用が可能である。あるいは,言い換えるならば,キューリー温度が熱電モジュールの動作の間超過する場合,インバー効果を発揮する金属合金の膨張係数は急激に増加し,熱機械的負荷を生じる可能性がある。
【0047】
他の実施形態において,金属合金は破壊靱性K
Icを有し,ここでK
Ic ≧ 50MPa m
1/2である。特に,K
Ic ≧ 80MPa m
1/2 である可能性がある。この金属合金は高レベルの延性を有している。それによって,電極材料における弾性的及び可塑的な膨張を用いた膨張係数の不完全な適合の場合には,残りの熱機械負荷を散逸することが容易に可能となり,熱電モジュールへのダメージはより軽減されうる。
【0048】
熱電モジュールは好ましくは熱電発生器として提供される。この熱電モジュールは更にペルチェモジュールとして提供されてもよい。両タイプのモジュールの基本的な構成は実質的に同じであるため,結果として,ペルチェモジュールは熱電発生器として典型的に動作する他その逆も可能であり,熱電発生器動作の間実質的により高い温度差が生じる。電流は,外部の温度勾配を適用することによって熱電発生器内で発生するが,外部の直流電流はペルチェモジュール内で発生する。一方のモジュール側の熱はその電流によって吸収され,そして冷却効果及び加熱効果を生じる他方の側で放出される。電流の方向が逆向きになると,熱フローの方向も変化しうる。
【0049】
本発明は,更に,上記記載の実施形態の一つに基づく,少なくとも1個の熱電モジュールを有する熱機関に関する。この熱機関は特に内燃機関の形式であってもよい。熱電発生器としての熱電モジュールの構成において,熱機関もしくは内燃機関の浪費する熱は電流発生のために使用されてもよい。
【0050】
本発明は,更に,上記記載の実施形態の一つに基づく,少なくとも1個の熱電モジュールを有する車輌に関する。特にこの車輌は,モーターで駆動される車輌として,例えば乗用車もしくはトロッコとして提供されてもよい。
【0051】
一実施形態において,少なくとも一つの熱電モジュールが熱電発生器として提供され,そして車輌の内燃機関の排気系内に配置されている。他の実施形態において,少なくとも1個の熱電モジュールが熱電発生器として提供され,そして車輌の内燃機関の冷却系内に配置されている。更に,前述した2個の実施の形態の組み合わせもまた可能である。車輌の排気系または冷却系内の浪費熱を使用して,車両用の電流を発生させることが可能であり,それによって車輌の燃料消費,そして燃焼ガスの発生を有益に減少させることができる。
【0052】
本発明は,更に,上記記載の実施形態の一つに基づく,少なくとも一つの熱電モジュールを有する加熱素子に関する。それによって,加熱素子によって発生する熱の一部を使用し,熱電発生器として熱電モジュールの構成内においてそこから電流を発生させることが可能である。
【0053】
上記記載の実施形態の一つに基づく,熱電モジュールの他の適用分野は,低温状態における温度差を電流発生に用いる,低温または低温応用によって提供される。
【0054】
本発明は,更に,上記記載の実施形態の一つに係る熱電モジュールの製造方法,第1のおよび第2の電極の少なくとも一つに適用される前に変形される金属合金,および変形した金属合金のソフトアニーリングに関わる。
【0055】
インバー効果を有する合金の膨張係数は可塑的な変形の度合いに依存しているという考察が基本となっている。合金は,例えば,コールドロール巻きストリップとして変形された状態において存在している場合,高温状態において推進される回復および再結晶化効果は,合金の使用中における膨張係数の変化をもたらす可能性がある。これを避けるために,本発明において,使用前に合金をソフトア二ーリングして変形を中性化することが有益だと認識されてきた。それによって,経年変化による,電極物質の熱膨張の振る舞いの揺らぎを阻止し,結果として発電モジュールの長期安定性を改善することができる。
【0056】
変形した金属合金のソフトアニーリングは,水素大気下で実行されることが望ましい。変形した金属合金のソフトアニーリングは,700°C ≦ T ≦ 1200°C,あるいはさらに好ましい範囲として,900°C ≦ T ≦ 1000°Cである温度Tにおいて実行されてもよい。
【0057】
本発明は,更に,熱電モジュールの少なくとも1個の電極材料としてインバー効果を発揮する金属合金の使用に関する。
【0058】
本発明は,以下の図面によって更に詳しく説明される。
【発明を実施するための形態】
【0060】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る熱電発生器(TEG)の形式における熱電モジュールを例示している。
【0061】
図1において概略的に例示されているように,例示された実施形態における熱電モジュール10は,複数の部材として言及され,そして電極3と4の形式における導電性のコンタクト層によって互いに接続され,一対に配置された熱電素子1と2を有している。例示された実施形態において,熱電素子1及び2は,各々第1の面13と,この第1の面13と反対側の第2の面14を含んでいる。この第1の電極3は部分的かつ直接的に,すなわち熱電素子1と2の第1の面13の上に直接並列され,そして第2の電極4は部分かつ直接的に,すなわち熱電素子1及び2の第2の面14の上に直接配置されている。その結果,第1の電極3の第1の領域17が第1の面13に接触しており,そして第2の電極4の第2の領域18が第2の面14に接触している。
【0062】
例えば,素子対の第1の部材のためには負のゼーベック係数を有するn−ドープト半導体物質,そして素子対の第2の部材のためには正のゼーベック係数を有するp−ドープト半導体物質が使用される。その結果,の実施形態において,熱電素子1はn−ドープト半導体物質を有し,そして熱電素子2はp−ドープト半導体物質を有する。
【0063】
熱電モジュール10の第1の側は熱源5に結合され,熱電モジュール10と反対側の第2の側12はヒートシンク6に結合されている。その結果,第1の側11は熱電モジュール10の動作の間高温側を形成し,そして反対側の第2の側12は熱電モジュール10の動作の間低温側を形成する。
【0064】
素子対の部材,すなわち熱電素子1および熱電素子2は,上記の実施形態において,電気的に直列に接続されている。部材の,対抗した,または相補的な添加は,n型部材およびp型部材に電流を生じさせる。n型部材,すなわち熱電素子1では,電流はゼーベック効果に従って低温側から高温側に流れ,一方p型部材,すなわち熱電素子2では,電流は高温側から低温側に流れる。熱電モジュール10の外部接続は,結果として共に低温側に位置されてもよい。電流の流れの方向は,
図1の矢印によって概略的に例示される。
【0065】
単一の素子対によって発生さする電流および電圧は,一般に比較的小さいため,複数の熱電素子1および2は,熱電モジュールにおいて互いに接続されるのが好ましい。
図1では,図を簡単にするため,熱電素子1および2を有する素子は,2対のみ例示されている。
各応用例にとって適切な複数の電流/電圧特性を,並列接続及び直列接続の様々な組み合わせによって提供されてもよく,直列接続が
図1において例示されている。
図1において,電気消費9が,電気抵抗の形で,概略的に例示されている。
【0066】
温度勾配は,熱電モジュール10の第1の側11が熱源5に結合され,かつ,反対側の第2の側12がヒートシンク6に結合されている点において,熱電発生器として動作する熱電モジュール10における複数の部材にわたって生ずる。短絡を阻止するために,複数の素子1及び2と,電極3と4の形式のコンタクト層は,熱源5とヒートシンク6についての絶縁層7および8によって,図示された実施形態において電気的に絶縁される。第1の絶縁層7は,第1の電極3の上に少なくとも部分的かつ直接的に配置されており,そして,第2の絶縁層8は第2の電極4の上,に少なくとも部分的かつ直接的に配置されている。熱源5から熱電素子1および2,または熱電素子1および2からヒートシンク6への効率的な熱の伝導をそれぞれ実現させるために,絶縁層7及び8は優れた熱伝導度を有する。したがって,典型的にはAl
2O
3,Si
3N
4もしくはAlNに基づく複数のセラミック物質が,絶縁層7及び8のために使用されるのが好ましい。
【0067】
二つの要素,すなわち,使用する際の温度または温度サイクルの間における,熱電発生器の効率および機械的または熱的な安定性が,熱電発生器の応用に関わる。
【0068】
熱電発生器の効率の獲得可能な度合いは,熱の電気エネルギーへの変換プロセスの効率の可能な最大の度合いによって限定される。これはカルノー効率レベルh
Calnot = DT/T
h によって与えられ,ここでDTは高温側と低温側,すなわち,実施形態において,第1の側11と第2の側12との間の温度差を示し,そしてT
hは高温側,すなわち,第1の側11の温度を示す。
【0069】
熱電発生器によって利用可能なカルノー効率レベルの比例は,各部材のために使用される熱電材料(TE物質)の熱電効率に特に影響される。ある温度Tにおいては,極めて効率的な物質が,可能な限り高く優れた電気伝導度sと低い熱伝導度kであるゼーベック係数Sを有している。これは熱電効率式ZTにおいて示されている。
【0071】
特に,熱電素子1および2に合致した熱電材料は,CoSb
3に基づくいわゆるスクッテルダイト,もしくはTiNiSnに基づく半オイスラー(HH)合金である。熱電材料における熱電効率ZTの最大値は,それぞれ1.4(スクッテルダイト)および1.5(HH)である。ビスマステルル化合物(Bi
2Te
3),鉛テルル化合物(PbTe),およびシリコンゲルマニウム(SiGe)として熱電材料に用いられるその他の原材料Te,Pb及びGeと比較して,前述した熱電材料は,原材料コストの低さ(特にTe及びGeと比較して),入手可能性の高さ(特にTeと比較して),および環境や健康との優れた両立性(特にPbと比較して)等の利点を有する。従って,熱電素子1及び2は,好ましくは例示した実施形態において,上で記載した複数の物質の少なくとも一つを有する。
【0072】
適切な熱電材料に加え,熱電発生器のための効率を増加するためにできるだけ大きな温度差の利用を可能にすることは,基本となるカルノー効率レベルを増大させるため,さらに有益である。その目的のために,図示された実施形態において,電極3と4はインバー効果を発揮する金属合金から構成されている。他の実施形態において,第1の電極3の少なくとも第1の領域17,および第2の電極4の第2の領域18は,インバー効果を発揮する金属合金を含む。
【0073】
熱機械的負荷は,一般的に,大きな温度差が適用される時,かつ周期的ローディングの間に生ずるという考察がベースとされている。熱電モジュールに使用される従来の材料は,脆弱な,もしくは延性の乏しい物質であるため,それらの物質は,まったく,あるいは限定的にしか,可塑的な変形に耐えることはできない。それらの物質に対する前述のような負荷がある臨界値を超える場合,破砕により熱電モジュールへの永久的なダメージが生ずる可能性がある。熱電材料における熱機械的負荷は,特に重要であるということができる。
【0074】
破砕による熱電モジュールの考えうる失敗に加え,熱負荷の発生も,熱電モジュールを構成する異なる材料間の接続を困難にしている。境界面において負荷が集中するため,特定レベルの負荷に対応して,領域を構成する個々の層が分離する結果となる。
【0075】
上記部材のための熱電材料,すなわち電極3と4,及び層7と8が異なった熱膨張係数(AK)を有する場合,熱電モジュール10が加熱される時,熱負荷が生ずる可能性がある,という考察をベースとして取り上げる。二つの物質の境界領域において,熱膨張の程度が大きい物質は,より低い熱膨張を示す物質内に引っ張り強度が生ずる間,圧縮応力の下にある。生ずる負荷の大きさは,電極3および4に用いられる,インバー効果を示す金属合金を用いることで,ある度合まで減少させることが可能である。
【0076】
上で説明した,本発明に関わる電極物質としての金属合金の使用は,インバー効果の発生を通じて,可能な限り選択的に,電極3および4の膨張係数を有益に調節することが可能である。特に,インバー効果により,比較的小さな熱膨張係数,すなわち最大で12×10
−61/K,を有する熱電材料,および,絶縁層7および8に使用されるセラミック材料に対して,適合的な熱膨張係数を持つ電極材料の提供が可能になる。
【0077】
特に,スクッテルダイト及びHH合金は,PbTe及びBi
2Te
3よりも実質的に小さな熱膨張,約9−12×10
−61/K,を有している。この熱膨張は,また公知の様々な電極材料,例えばCu,Ni,Ag,もしくはAu等の熱膨張より実質的に低い。スクッテルダイトもしくはHH合金が,それらの電極材料に組み込まれた場合,温度が上に挙げた熱電材料の加熱温度を超える間電極は膨張する。その膨張により,前述の電極材料において,複数の部材における強力な引っ張り応力が生じるため,ひび割れや破砕の伝播によって特に損傷する可能性がある。電極物質として発明に係る,インバー効果を示す金属合金の使用により,有益なやり方で,熱電モジュール10における上記のような失敗を阻止することが可能である。
【0078】
熱電モジュール10の信頼性のある動作を可能にするために,接触している複数の物質の熱膨張係数は互いに適合される。図示された実施形態において,熱電物質及び絶縁層7及び8の膨張に対する電極の適合化が実行される。
【0079】
特に,熱電モジュール10が,例えば浪費ガスエネルギーを回収するため,自動車の排気ラインにおける使用の間,変化する温度負荷の影響を受ける応用例においては,上記のような熱負荷の効果が生ずる可能性がある。周期的なローディングにより,サブクリテイカルロード振幅における,失敗をもたらす疲労メカニズムが生ずる。そのような物質の失敗は,熱電モジュール10の,電極物質として発明に係る,インバー効果を発揮する金属合金の使用により,有益に阻止することができる。
【0080】
インバー効果の物理的基盤は,結晶格子の負の体積変化(体積磁歪)であり,すなわち,磁気モーメントの存在が,互いに遠ざかる原子同士の付加的な反発を引き起こす
【0081】
温度上昇に伴い,磁気モーメントおよび反発力が減少するため,この効果により,温度が物質のキューリー温度に達するまで,膨張係数の負方向の変化がもたらされる。これに対して,温度上昇に伴い,格子結晶における従来の熱膨張が,格子振動により引き起こされる。体積磁歪効果の振幅を調節することによって,結晶格子の熱膨張を選択的に補償することが可能なため,結果として,熱膨張係数を特定の範囲に収めることができる。
【0082】
インバー効果を発揮する適切な合金系として,例えば,FePt,FeNiPt,FeMn,CoMn,FeNiMn,CoMnFe,CrMn,CrCo,CrFe,そして,特にNi−Fe合金やNiCo−Fe合金等が挙げられる。Ni−Fe物質およびNiCo−Fe物質の利点は,比較的不純物の含有率が低い状態で製造可能なため,比較的高レベルの伝導性を実現可能な点である。NiまたはCo含有量の変化に応じて,上記の合金におけるインバー効果の振幅は調節されうる。
【0083】
図5に示されるように,Ni含有量に対するNi−Fe合金の膨張係数は,10・10
−6から12・10
−61/Kまでの間にあり,その結果スカットルダイト及びHH合金の複数の膨張係数の範囲内にある。Ni及びCo含有量に対するNi−Co−Fe合金の膨張係数は,更に,5・10
−6から8・10
−61/Kまでの範囲にあり,これは絶縁層として好ましく使用されるセラミック物質の膨張に類似している。
【0084】
表1において記載されているように,
図5に例示した本発明の合金の各キューリー温度は,例外なく400°Cより大きい。その結果インバー効果の利用は,400°Cから600°Cまでのスカットルダイト及びHH合金を利用する際の最大温度まで可能である。
【0086】
熱電モジュ−ル10を長期間安定させるために,電極物質の熱膨張挙動の経年変化を阻止することも,また有益である。上記した,本発明に係るインバー効果を有する合金の膨張係数は,可塑的な変形の度合いに典型的に依存している。例えば,合金が冷間溶接されたストリップとして変形状態となっている場合,高い適用温度において推進される回復効果及び再結晶効果によって,結果として使用の間膨張係数が変化し得る。
【0087】
これを阻止するために,本発明の属性において,使用の前に,水素雰囲気下で約950°Cの温度において,例えば30分間合金のソフト−アニーリングを行い,変形を中性化することが有益であることが認識されてきた。また,経年変化プロセスは,適用例の温度以上の,少なくとも50°Cから100°Cにおいて,典型的には2時間から4時間にわたる充分な期間,熱処理を行うことによって改善され得る。
【0088】
ソフトアニ―リングされた状態において,インバー効果を有する合金は,米国特許出願2010/0167444 A1において提案された,高い不燃性金属比率を有する合金と比べ,高いレベルの柔軟性という更なる利点を生ずる。それらの破壊靱性は100MPa m
1/2の次数において存在している。柔軟性及び電極物質におけるプラスチックの膨張を利用することによって,膨張係数が不完全に適合することで生じる残留熱機械負荷を散らすことが,容易に可能となる。かくして熱電モジュール10への損傷を阻止することができる。
【0089】
上記したように,熱電素子の膨張係数,したがって熱電素子1と2の熱膨張に適合され,かつ,セラミック絶縁層の熱膨張,すなわち実施形態において示されている絶縁層7と8の熱膨張係数に適合される電極物質及び電極3と4を,インバー効果を用いて製造することが可能である。
【0090】
しかしながら,均質な物質から構成される電極が用いられる時,接続において含まれる双方の素子,すなわち熱電物質と絶縁層への電極の膨張を適合化することは,通常はほとんど不可能である。したがって,この場合,熱電負荷を完全に阻止することはできない。このため,発生し得る負荷全体を最小化する電極3と4の膨張係数を調整することは,特に有益である。熱電物質(α
TE)の膨張が絶縁層7と8(α
ISO)の膨張係数よりも通常は大きいため,インバー効果を利用することによる膨張係数α
E1は,熱電物質の膨張係数と絶縁層7と8の膨張係数との間に存在し,電極物質によって発明の好ましい実施形態をもたらすことが可能である。すなわち,好ましくは,α
E1はα
Max ≧ α
E1 ≧ α
Mn であり,ここでα
Mnは,α
Iso及びα
TEの最小値を示し,そしてα
Maxはα
Iso及びα
TEの最大値を示す。例えば,α
TE ≧ α
E1 ≧ α
Iso が適用される。
【0091】
表2に記載されているように,熱電物質の破壊靱性は好ましくはセラミック絶縁層7と8のそれよりも通常は低く,それによって熱電物質は絶縁層7と8よりも低い熱電負荷に通常は耐えることができる。したがって,本発明の他の実施形態において,電極物質もしくは電極3と4の膨張係数α
E1は,インバー効果によって調整され,かつ,熱電物質,すなわち熱電素子1と2および絶縁層7と8の膨張係数との間に存在する。しかし,膨張係数α
E1は絶縁層7と8の膨張係数よりも熱電物質の膨張係数により密接に適合される。すなわち,この構成において|α
TE−α
E1| ≦ |α
E1−α
Iso| が適用される。
【0093】
熱電モジュール10の高温側,すなわち第1の側11における使用時の典型的な最大温度は,最大値が比較的高い温度に達した後,通常はZT値が後発的に減少するために,熱電物質の熱安定性およびそのZT値によって制限される。特に,上記したスクッテルダイト及びHH合金,更にPbTeは,400°から600°Cの高い使用温度に適している。
【0094】
熱電物質及び絶縁層7と8として作用するセラミック物質の異なった組み合わせを有する熱電モジュール10の例示的な電極物質負荷を,以下に記載する。
【0095】
均一な物質から構成される電極3と4に関し
図1に記した実施形態において,例えば表3に記載されている物質の組み合わせは,α
Max ≧ α
E1 ≧ α
Mn ,特にα
TE ≧ α
E1 ≧ α
Iso を満たす。ここで,電極物質の膨張係数は,熱電物質,すなわち熱電素子1と2の膨張係数とインバー効果に示される絶縁層7と8の膨張係数との間に存在している。表3及び以下の表において,周囲温度と100°Cとの間の平均膨張係数のみが,それぞれかっこ書きで記載されている。表5において,最大600°Cの係数の比較を記載する。
【0097】
以下に記載される表4における本発明に係る物質の例示的な組み合わせにより,α
Max ≧ α
E1 ≧ α
Mn ,特に,α
TE ≧ α
E1 ≧ α
Isoが満たされる。電極3と4の膨張係数は,熱電物質の膨張係数に実質的に近づくように,更に適合化されている。
【0099】
図2は本発明の第2の実施形態に係る熱電モジュール10を示している。
図1に示される機能と同様の機能を有する各構成要素が同じ参照番号を用いて示されており,以下に再度説明しない。
【0100】
第2の実施形態に係る熱電モジュール10は,
図2においては1つの電極3が示されている熱電モジュール10の電極が,2層を有する点において,
図1に示された第1の実施形態とは相違する。電極3は第1の層3’および第2の層3”を有する。
【0101】
本実施形態は,電極3の膨張係数が境界面の電極3/熱電物質および電極3/絶縁層7との間に勾配を有する場合,2つの境界面,すなわち電極3と熱電物質との間の境界面15および電極3と絶縁層7との間の境界面16を,同時に最小化することが容易に可能であるという知見に基づく。したがって,電極3は均一な物質を有さないが,代わりに
図2に例示される2個の層3’及び3”を備えた構造を有し,層3’及び3”の少なくとも1つの膨張係数はインバー効果を用いることによって調整される。上記に示した実施の形態において,層3’のインバー効果を発揮する第1の金属合金を有し,そして層3”は第1の金属合金とは相違すると共にインバー効果を発揮する,第2の金属合金を有する。この層3’は第1の電極3の第1の領域17に配置されている。
【0102】
熱電物質に接続される層3’については,その膨張係数が熱電物質の膨張に適合している電極物質を使用することがしたがって可能である。同時に,その膨張係数が絶縁層7の膨張に適合している電極物質は,絶縁層7に接続されている層3”のために使用することができる。その結果,図示される本発明の第2の実施形態によれば,α
Max ≧ α
E11 ≧ α
E12 ≧ α
Mnが,電極層の膨張係数α
E11 及び α
E12に適用され,ここでα
Mnはα
Iso及びα
TEの最小値を示し,α
Maxは,α
Iso及びα
TEの最大値を示す。例えば,α
TE ≧ α
E11 ≧ α
E12 ≧ α
Isoが適用される。熱負荷は,境界面の電極3/熱電物質及び電極3/絶縁層7によって更に改善されるまで取り上げられ,完全に実際的に電極3内に局在できる。
【0103】
上記に説明した電極物質は,ソフト状態において延性の高いレベルを有しているので,負荷は,熱電モジュール10に対する永久的な損傷を生むことなく,弾性的なもしくは可塑的な変形によって散らされる。そのような2層系は,例えば,冷間溶接及び溶接もしくはハンダ付けによって製造されてもよい。
【0104】
2つの層を備えた電極3の構成においては,以下の表5において記載される物質の組み合わせが,本発明ついて特に利用可能である。
【0106】
図3は,本発明の第3の実施形態に係る熱電モジュール10の一部を示している。先行する各図に示される機能と同様の機能を有する各構成要素は同じ参照番号を用いて示されており,以下に再度説明しない。
【0107】
第3の実施形態に係る熱電モジュール10は,
図3においては1つの電極3が示されている熱電モジュール10の電極が,複数の層を有する点において,
図1に示される第1の実施形態とは相違する。
図3はn個の層3’,3”,・・・3
nを含む電極3の構成を示しており,ここでn≧3である.
【0108】
複数の中間層が電極3に導入されることによって,熱負荷を更に減少させることができる。図示される発明の第3の実施形態によれば,電極3の複数の層3’,3”,・・・3
nの膨張係数α
E11からα
E1nに対して,α
Max ≧ α
E11 > α
E12α > K > α
E1n−1 > α
E1n ≧ α
Minが適用される。ここで,α
Minはα
Iso及びα
TEの最小値であり,α
Maxはα
Iso及びα
TEの最大値であり,少なくとも1つの層の膨張係数がインバー効果を用いて調節される。例えば,α
TE ≧ α
E11 > α
E12 > K > α
E1n−1 > α
E1n ≧ α
Isoが適用される。上記に示された実施形態において,層3’はインバー効果を発揮する第1の金属合金から構成され,層3”は第1の金属の合金と異なるとともにインバー効果を発揮する第2の金属合金から構成され,層3
nは他の金属合金と異なるとともにインバー効果を発揮する第nの金属合金から構成される。この層3’は,第1の電極3の第1の領域17に配置されている。
【0109】
本発明に係る電極3の三層構成の例を,次の表6に記載する。
【0111】
図4は本発明の第4の実施形態に係る熱電モジュール10の一断面を示す。前述した図面における機能と同じ機能を有する構成要素は,同じ参照番号を用いて示されており,以下に再度説明しない。
【0112】
第4の実施形態に係る熱電モジュール10は,
図4においては1つの電極3が示されている電極の組成が,2つの組成の境界間の厚さにわたって連続的に変化する点で,前述した図に示される実施形態とは相違する。
【0113】
その結果,層内における組成を変化させることによって,境界面の電極3/熱電物質および電極3/絶縁層7との間で電極3の膨張係数の勾配を得ることが可能である。境界面の組成は,境界面15及び16における電極3の膨張係数が熱電物質及び絶縁層7にそれぞれ適合するように,選択される。濃度勾配の調整は,例えば,スパッタリング被着法等の層被着法によって,電極を製造する間に実行されてもよい。
【0114】
熱電物質に対する境界面15と絶縁層7に対する境界面16との間の膨張係数が濃度勾配によって変化する,本発明の電極3の例は,11.5の膨張係数を有する熱電物質としてのTiNiSn,5.8の膨張係数を有する絶縁層7としてのAl
2O
3,および熱電物質に対する境界面15における11.2の膨張係数を有する54−NiFe(Ni
54Fe
残余)から,絶縁層7に対する境界面16における7.9の膨張係数を有する46−NiFe(Ni
46Fe
残余)までの電極3の組成の変化によって示される。
【0115】
図5は,上記において既に説明されているように,基板セラミック物質および熱電物質と比較した,周囲温度に関連して本発明に係る数多くのNi−Fe合金およびNi−Co−Fe合金の平均線膨張係数を示している。