特許第5695622号(P5695622)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5695622
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】黒色硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20150319BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   G03F7/004 505
   G03F7/027 502
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-209199(P2012-209199)
(22)【出願日】2012年9月24日
(65)【公開番号】特開2014-63091(P2014-63091A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2013年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】柿内 直也
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 一彦
(72)【発明者】
【氏名】飯島 俊之
【審査官】 倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−294131(JP,A)
【文献】 特開2001−100410(JP,A)
【文献】 特開2007−017644(JP,A)
【文献】 特開2008−225244(JP,A)
【文献】 特開2012−141605(JP,A)
【文献】 特開2012−027368(JP,A)
【文献】 特開2011−257711(JP,A)
【文献】 特開2011−075678(JP,A)
【文献】 特開2001−324801(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/084714(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/062053(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004−7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基含有感光性樹脂と、(B)光重合開始剤と、(C)希釈剤と、(D)エポキシ化合物と、(E)ウレタン(メタ)アクリレートと、(F)ペリレン系黒色着色剤と、を含有する黒色硬化性樹脂組成物であって、
前記(E)ウレタン(メタ)アクリレートが、3官能ウレタン(メタ)アクリレートを含有する黒色硬化性樹脂組成物
【請求項2】
前記(E)ウレタン(メタ)アクリレートが、3官能ウレタン(メタ)アクリレートと、1官能ウレタン(メタ)アクリレート及び/または2官能ウレタン(メタ)アクリレートと、を含有する請求項に記載の黒色硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(E)ウレタン(メタ)アクリレートが、3官能ウレタン(メタ)アクリレート1質量部に対して、1官能ウレタン(メタ)アクリレート及び/または2官能ウレタン(メタ)アクリレートを0.5〜2.0質量部含有する請求項1または2に記載の黒色硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(F)ペリレン系黒色着色剤の波長400〜700nmの光の透過率が、20%以下である請求項1乃至のいずれか1項に記載の黒色硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(F)ペリレン系黒色着色剤の波長300〜400nmの光の透過率が、3.0%以上である請求項1乃至のいずれか1項に記載の黒色硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(F)ペリレン系黒色着色剤が、赤外線吸収スペクトル測定にて、少なくとも、1691〜1693cm−1の間、1655〜1657cm−1の間、1591〜1593cm−1の間、1402〜1404cm−1の間、1366〜1370cm−1の間及び1281〜1285cm−1の間の吸収位置に、合計3つ以上の赤外線吸収ピークを有する請求項1乃至のいずれか1項に記載の黒色硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の黒色硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物。
【請求項8】
厚さ20μmにて、550nm以下の波長領域における透過率の最大ピークが、5%以上である請求項に記載の硬化物。
【請求項9】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の黒色硬化性樹脂組成物をソルダーレジストとして塗布したフレキシブルプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性に優れた硬化物が得られる黒色硬化性樹脂組成物に関するものであり、例えば、光吸収剤用塗料やフレキシブルプリント配線板のソルダーレジストとして使用した場合に、柔軟性に優れた硬化塗膜を形成できる黒色硬化性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板は、基板の上に導体回路のパターンを形成し、そのパターンのはんだ付けランドに電子部品をはんだ付けにより搭載するために使用され、そのはんだ付けランドを除く回路部分は永久保護被膜としてのソルダーレジスト膜で被覆される。これにより、プリント配線板に電子部品をはんだ付けする際に、はんだが不必要な部分に付着するのを防止すると共に、回路導体が空気に直接曝されて酸化や湿度により腐食されるのを防止する。
【0003】
また、近年、電子機器の小型化、内部構造の複雑化等が進んだことから、やわらかい構造を有するフレキシブルプリント配線板にソルダーレジスト膜が使用されている。この場合、フレキシブルプリント配線板にやわらかい構造を与えるために、ソルダーレジスト膜には、柔軟性が求められる。そこで、ソルダーレジスト膜の可撓性を向上させるために、1分子中に1個以上の内部エポキシド基を有するポリブタジエンとポリウレタン微粒子とを配合した光硬化性・熱硬化性樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。
【0004】
このようなソルダーレジスト膜の一つに黒色のものがある。黒色のソルダーレジスト膜を形成する材料として、カルボキシル基含有樹脂に配合される着色剤が、黒色着色剤と、黒色着色剤以外の1種以上の着色剤である樹脂組成物が提案されている(特許文献2)。特許文献2では、黒色着色剤として、カーボンブラックが特に好ましいとしている。
【0005】
しかし、黒色着色剤にカーボンブラックを使用した樹脂組成物の硬化塗膜は、十分な柔軟性を有しておらず、フレキシブルプリント配線板のソルダーレジスト膜として使用すると、フレキシブルプリント配線板にやわらかい構造を与えることができないという問題があった。
【0006】
また、可視光領域の波長(例えば、400〜700nm)を吸収しつつ、紫外線領域の波長と赤外線領域の波長の透過率が高い光吸収剤用塗料、特に紫外線領域の波長の透過率が高い光吸収剤用塗料も求められており、さらに、硬化した光吸収剤用塗料には、柔軟性も要求されている。光吸収剤用塗料の黒色着色剤にカーボンブラックを使用すると、十分な柔軟性が得られないという問題の他、可視光領域の波長を吸収するだけでなく紫外線領域の波長の吸収率も高いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−293882号公報
【特許文献2】特開2008―257045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記事情に鑑み、本発明の目的は、柔軟性に優れ、紫外線領域の波長の透過率が高い黒色の硬化物が得られる黒色硬化性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様は、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂と、(B)光重合開始剤と、(C)希釈剤と、(D)エポキシ化合物と、(E)ウレタン(メタ)アクリレートと、(F)ペリレン系黒色着色剤と、を含有する黒色硬化性樹脂組成物であって、 前記(E)ウレタン(メタ)アクリレートが、3官能ウレタン(メタ)アクリレートを含有する黒色硬化性樹脂組成物である。
【0010】
上記態様では、着色剤として、ペリレン系黒色着色剤、すなわち、ペリレン骨格を有する黒色着色剤を配合する。ペリレン系黒色着色剤は、波長300〜400nmの光の透過率がカーボンブラックよりも高い特性を有している。また、ウレタン(メタ)アクリレートは、硬化物中において相互に架橋構造を形成している。
【0011】
本発明の態様は、前記(E)ウレタン(メタ)アクリレートが、3官能ウレタン(メタ)アクリレートを含有する黒色硬化性樹脂組成物である。この態様では、ウレタン(メタ)アクリレートは、3官能のウレタン(メタ)アクリレートのみで構成されているか、または3官能ウレタン(メタ)アクリレートと3官能ウレタン(メタ)アクリレート以外のウレタン(メタ)アクリレートとから構成されている。また、3官能ウレタン(メタ)アクリレートにより、硬化物中に3次元の架橋構造が形成されると考えられる。
【0012】
本発明の態様は、前記(E)ウレタン(メタ)アクリレートが、3官能ウレタン(メタ)アクリレートと、1官能ウレタン(メタ)アクリレート及び/または2官能ウレタン(メタ)アクリレートと、を含有する黒色硬化性樹脂組成物である。
【0013】
本発明の態様は、前記(E)ウレタン(メタ)アクリレートが、3官能ウレタン(メタ)アクリレート1質量部に対して、1官能ウレタン(メタ)アクリレート及び/または2官能ウレタン(メタ)アクリレートを0.5〜2.0質量部含有する黒色硬化性樹脂組成物である。
【0014】
本発明の態様は、前記(F)ペリレン系黒色着色剤の波長400〜700nmの光の透過率が、20%以下である黒色硬化性樹脂組成物である。
【0015】
本発明の態様は、前記(F)ペリレン系黒色着色剤の波長300〜400nmの光の透過率が、3.0%以上である黒色硬化性樹脂組成物である。
【0016】
本発明の態様は、前記(F)ペリレン系黒色着色剤が、赤外線吸収スペクトル測定にて、少なくとも、1691〜1693cm−1の間、1655〜1657cm−1の間、1591〜1593cm−1の間、1402〜1404cm−1の間、1366〜1370cm−1の間及び1281〜1285cm−1の間の吸収位置に、合計3つ以上の赤外線吸収ピークを有する黒色硬化性樹脂組成物である。
【0017】
本発明の態様は、前記(F)ペリレン系黒色着色剤のアスペクト比が、1.1〜1.8である黒色硬化性樹脂組成物である。
【0018】
本発明の態様は、上記黒色硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物である。
【0019】
本発明の態様は、厚さ20μmにて、550nm以下の波長領域における透過率の最大ピークが、5%以上である上記黒色硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物である。
【0020】
本発明の態様は、上記黒色硬化性樹脂組成物をソルダーレジストとして塗布したフレキシブルプリント配線板である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の態様によれば、硬化性樹脂組成物に、ウレタン(メタ)アクリレートとペリレン系黒色着色剤を使用することにより、柔軟性に優れた黒色の硬化物を得ることができる。また、柔軟性に優れた硬化物を得ることができるので、フレキシブルプリント配線板のソルダーレジスト膜として使用すると、フレキシブルプリント配線板にやわらかい構造を与えることができる。また、着色剤として、ペリレン系黒色着色剤を使用することにより、可視光領域の波長を吸収しつつ、紫外線領域の波長と赤外線領域の波長の透過率、特に、紫外線領域の波長の透過率が高い黒色の硬化物を得ることができる。
【0022】
本発明の態様によれば、ウレタン(メタ)アクリレートとして3官能ウレタン(メタ)アクリレートを使用することにより、硬化物の柔軟性がさらに向上する。この態様では、3官能ウレタン(メタ)アクリレートに起因して硬化物に3次元の架橋構造が形成されることにより硬化物の硬直化が促進される、との予想に反し、2官能以下のウレタン(メタ)アクリレートのみを使用する場合と比較して、硬化物の柔軟性により優れる。
【0023】
本発明の態様によれば、ウレタン(メタ)アクリレートとして3官能ウレタン(メタ)アクリレートと1官能ウレタン(メタ)アクリレート及び/または2官能ウレタン(メタ)アクリレートとを併用することにより、3官能ウレタン(メタ)アクリレートを使用する場合と比較して、硬化物の柔軟性がより向上する。
【0024】
本発明の態様によれば、波長400〜700nmの光の透過率が、20%以下、波長300〜400nmの光の透過率が、3.0%以上のペリレン系黒色着色剤を使用することにより、可視光領域の波長を吸収するだけでなく紫外線領域の波長の透過率が高い硬化物を得ることができる。
【0025】
本発明の態様によれば、ペリレン系黒色着色剤のアスペクト比が、1.1〜1.8であることにより、硬化物に撓りを付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の黒色硬化性樹脂組成物の各成分について説明する。本発明の黒色硬化性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有感光性樹脂と、(B)光重合開始剤と、(C)希釈剤と、(D)エポキシ化合物と、(E)ウレタン(メタ)アクリレートと、(F)ペリレン系黒色着色剤と、を含有する。
【0027】
(A)カルボキシル基含有感光性樹脂
カルボキシル基含有感光性樹脂は、特に限定されず、例えば、感光性の不飽和二重結合を1個以上有するカルボキシル基含有樹脂を挙げることができる。(A)成分の例として、1分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部にアクリル酸又はメタクリル酸等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させてエポキシ(メタ)アクリレート等の不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を得て、生成した水酸基に多塩基酸又はその無水物を反応させて得られる、多塩基酸変性エポキシ(メタ)アクリレート等の多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を挙げることができる。
【0028】
前記多官能エポキシ樹脂は、2官能以上のエポキシ樹脂であればいずれでも使用可能である。エポキシ当量の制限は特にないが、柔軟性と感光性の点から1000以下が好ましく、100〜500が特に好ましい。多官能エポキシ樹脂には、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂等のゴム変性エポキシ樹脂、ε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、о−クレゾールノボラック型等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族多官能エポキシ樹脂、グリシジルエステル型多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型多官能エポキシ樹脂、複素環式多官能エポキシ樹脂、ビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂、多官能変性ノボラック型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物型エポキシ樹脂、フルオレン骨格を含有するエポキシ樹脂、アダマンタン骨格を導入したエポキシ樹脂等を挙げることができる。また、これらの樹脂にBr、Cl等のハロゲン原子を導入したものも使用可能である。これらのエポキシ樹脂は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0029】
使用するラジカル重合性不飽和モノカルボン酸は、特に限定されず、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸など、アクリロイル基またはメタクリロイル基をエポキシ樹脂に導入できるカルボン酸を挙げることができる。このうち、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも一方が好ましく、特にアクリル酸が好ましい。エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させたものがエポキシ(メタ)アクリレートである。エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応方法は特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂とアクリル酸を適当な希釈剤中で加熱することにより反応できる。これらのラジカル重合性不飽和モノカルボン酸は単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0030】
多塩基酸又は多塩基酸無水物は、前記多官能エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応で生成した水酸基に反応し、樹脂に遊離のカルボキシル基を導入するためのものである。使用する多塩基酸又はその無水物としては、特に限定されず、飽和、不飽和のいずれも使用可能である。多塩基酸には、例えば、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、クエン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、3−メチルテトラヒドロフタル酸、4−メチルテトラヒドロフタル酸、3−エチルテトラヒドロフタル酸、4−エチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、3−メチルヘキサヒドロフタル酸、4−メチルヘキサヒドロフタル酸、3−エチルヘキサヒドロフタル酸、4−エチルヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸及びジグリコール酸等が挙げられ、多塩基酸無水物としてはこれらの無水物が挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
【0031】
本発明においては、上記の多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂も感光性樹脂として使用できるが、上記の多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の有するカルボキシル基に、1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを持つグリシジル化合物を反応させることにより、ラジカル重合性不飽和基を更に導入し、感光性をより向上させた樹脂としてもよい。
【0032】
この感光性のより向上させた樹脂は、グリシジル化合物の反応によってラジカル重合性不飽和基が、その前駆体の感光性樹脂の高分子骨格の側鎖に結合するため、光重合反応性が高く、優れた感光特性を有する。1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを持つ化合物としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリアクリレートモノグリシジルエーテル等が挙げられる。なお、グリシジル基は1分子中に複数有していてもよい。上記した1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基を持つ化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0033】
カルボキシル基含有感光性樹脂の酸価は特に限定されないが、その下限値は、確実なアルカリ現像の点から30mgKOH/gが好ましく、40mgKOH/gが特に好ましい。一方、酸価の上限値は、アルカリ現像液による露光部の溶解防止の点から200mgKOH/gが好ましく、硬化物の耐湿性と電気特性の劣化防止の点から150mgKOH/gが特に好ましい。
【0034】
カルボキシル基含有感光性樹脂の重量平均分子量は特に限定されないが、その下限値は、硬化物の強靭性及び指触乾燥性の点から3000が好ましく、特に好ましくは5000である。一方、重量平均分子量の上限値は、(C)成分である希釈剤等との相溶性及び円滑なアルカリ現像性の点から200000が好ましく、特に好ましくは50000である。
【0035】
カルボキシル基含有感光性樹脂として市販されているものには、例えば、ZFR−1124、FLX−2089(以上、日本化薬(株)製)、サイクロマーP(ACA)Z−250(ダイセル化学工業(株)製)、リポキシ SP−4621(昭和高分子(株)製)等を挙げることができる。これらの樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0036】
(B)光重合開始剤
光重合開始剤は、一般的に使用されるものであれば特に限定されず、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン‐n‐ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2‐ジメトキシ‐2‐フェニルアセトフェノン、2,2‐ジエトキシ‐2‐フェニルアセトフェノン、2‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐1‐フェニルプロパン‐1‐オン、1‐ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2‐メチル‐1‐〔4‐(メチルチオ)フェニル〕‐2‐モルフォリノ‐プロパン‐1‐オン、4‐(2‐ヒドロキシエトキシ)フェニル‐2‐(ヒドロキシ‐2‐プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p‐フェニルベンゾフェノン、4,4′‐ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロルベンゾフェノン、2‐メチルアントラキノン、2‐エチルアントラキノン、2‐ターシャリーブチルアントラキノン、2‐アミノアントラキノン、2‐メチルチオキサントン、2‐エチルチオキサントン、2‐クロルチオキサントン、2,4‐ジメチルチオキサントン、2,4‐ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、P‐ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、2、4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2、4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド、(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルフォスフィンオキサイド、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、2−プロパンジオン−2−O−ベンゾイルオキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−O−ベンゾイルオキシム、エタノン,1‐[9‐エチル‐6‐(2‐メチルベンゾイル) ‐9H‐カルバゾール‐3‐イル] ‐ ,1‐(O‐アセチルオキシム)等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0037】
波長300〜450nmの光(紫外光)が本発明の黒色硬化性樹脂組成物に照射されると、上記光重合開始剤からフリーラジカルが生成して、本発明で使用するカルボキシル基含有感光性樹脂のエチレン性不飽和基のラジカル重合を開始させて、感光性樹脂組成物を硬化させることができる。光重合開始剤の配合量は、特に限定されないが、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、2〜20質量部が好ましく、5〜15質量部が特に好ましい
【0038】
(C)希釈剤
希釈剤は、例えば、反応性希釈剤である光重合性モノマーであり、カルボキシル基含有感光性樹脂の光硬化を十分にして、耐酸性、耐熱性、耐アルカリ性などを有する硬化物を得るために使用する。光重合性モノマーとしては、例えば、1,4‐ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6‐ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性燐酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の反応性希釈剤が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。上記した反応性希釈剤の配合量は、特に限定されないが、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、2.0〜40質量部が好ましく、10〜25質量部が特に好ましい。
【0039】
また、希釈剤として、黒色硬化性樹脂組成物の粘度や乾燥性を調節するために、上記反応性希釈剤に代えてまたは上記反応性希釈剤とともに、非反応性希釈剤である有機溶剤を用いてもよい。有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール、などのアルコール類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ等の石油系溶剤類、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等の酢酸エステル類等を挙げることができる。有機溶剤を用いる場合の配合量は、特に限定されないが、カルボキシル基含有感光性樹脂100重量部に対して、40〜500重量部が好ましい。
【0040】
(D)エポキシ化合物
エポキシ化合物は、硬化物の架橋密度を上げて、十分な機械的強度を有する硬化塗膜を得るためのものである。エポキシ化合物には、例えば、エポキシ樹脂がある。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、p−tert−ブチルフェノールノボラック型など)、ビスフェノールFやビスフェノールSにエピクロルヒドリンを反応させて得られたビスフェノールF型やビスフェノールS型エポキシ樹脂、さらにシクロヘキセンオキシド基、トリシクロデカンオキシド基、シクロペンテンオキシド基などを有する脂環式エポキシ樹脂、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のトリアジン環を有するトリグリシジルイソシアヌレート、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂を挙げることができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。エポキシ化合物の配合量は、特に限定されないが、硬化後に十分な機械的強度の塗膜を得る点から、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、10〜50質量部が好ましく、20〜30質量部が特に好ましい。
【0041】
(E)ウレタン(メタ)アクリレート
ウレタン(メタ)アクリレートは、ウレタン樹脂にラジカル重合性不飽和モノカルボン酸である(メタ)アクリル酸を反応させて得られるものである。ウレタン(メタ)アクリレートと後述するペリレン系黒色着色剤とを併用することで、柔軟性に優れた黒色の硬化塗膜等の硬化物を得ることができる。
【0042】
ウレタン樹脂は、1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物と1分子中に2つ以上のヒドロキシル基を有するポリオール化合物を反応させて得られるものである。
【0043】
1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物には、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチレンジイソシアネート(MDI)、メチレンビスシクロヘキシルイソシアネート、トリメチルヘキサメチルジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート、ヘキサメチルアミンジイソシアネート、メチレンビスシクロヘキシルイソシアネート、トルエンジイソシアネート、1,2−ジフェニルエタンジイソシアネート、1,3−ジフェニルプロパンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメチルジイソシアネートなどのジイソシアネートが挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
【0044】
1分子中に2つ以上のヒドロキシル基を有するポリオール化合物には、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,18−オクタデカンジオールなどのC2−C22アルカンジオールや、2−ブテン−1,4−ジオール、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオールなどのアルケンジオール等の脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール;グリセリン、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)ペンタン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−3−ブタノール等の脂肪族トリオール;テトラメチロールメタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、キシリトール等の水酸基を4つ以上有するポリオールなどが挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
【0045】
ウレタン(メタ)アクリレートの構造は、特に限定されないが、硬化収縮の防止と柔軟性のバランスの点から、1分子中の(メタ)アクリル官能基数は2〜4個、すなわち、2〜4官能ウレタン(メタ)アクリレートが好ましく、柔軟性をより向上させてフレキシブルプリント配線板に良好なフレキシブル性を付与する点から、1分子中の(メタ)アクリル官能基数は3個、すなわち、3官能ウレタン(メタ)アクリレートがより好ましく、柔軟性をさらに向上させてフレキシブルプリント配線板に優れたフレキシブル性を付与する点から、1官能ウレタン(メタ)アクリレート及び/または2官能ウレタン(メタ)アクリレートと、3官能ウレタン(メタ)アクリレートと、の混合物が特に好ましい。
【0046】
ウレタン(メタ)アクリレートとして、1官能ウレタン(メタ)アクリレート及び/または2官能ウレタン(メタ)アクリレートと3官能ウレタン(メタ)アクリレートとの混合物を使用するにあたり、その混合割合は特に限定されないが、確実に柔軟性を向上させる点から、3官能ウレタン(メタ)アクリレート1質量部に対して、1官能ウレタン(メタ)アクリレート及び/または2官能ウレタン(メタ)アクリレート0.1〜5.0質量部の割合が好ましく、0.5〜2.0質量部の割合が特に好ましい。
【0047】
ウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、特に限定されないが、その下限値は、予備乾燥後の塗膜表面のべたつき防止の点で500が好ましく、柔軟性の向上の点で1000が特に好ましい。一方、その上限値は、光硬化性の点で10000が好ましく、柔軟性の向上の点で3000が特に好ましい。また、ウレタン(メタ)アクリレートの使用量は、特に限定されないが、その下限値は、確実に柔軟性を付与する点から、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対して、5質量部が好ましく、柔軟性の向上の点で10質量部が特に好ましい。一方、その上限値は、膜厚20〜30μmの場合における内部硬化性と柔軟性とのバランスの点から40質量部が好ましく、柔軟性の向上の点で35質量部が特に好ましい。
【0048】
(F)ペリレン系黒色着色剤
ペリレン系黒色着色剤は、ウレタン(メタ)アクリレートとともに使用することで、黒色硬化性樹脂組成物から形成した硬化物に柔軟性を付与することができる。一方で、カーボンブラック等、他の黒色着色剤では、上記ウレタン(メタ)アクリレートとともに樹脂組成物に配合しても、黒色硬化性樹脂組成物から形成した硬化物に十分な柔軟性を付与することができない。また、ペリレン系黒色着色剤は、黒色硬化性樹脂組成物に紫外光の透過性を付与することができる。一方で、カーボンブラック等、他の黒色着色剤では、黒色硬化性樹脂組成物に紫外光の吸収性が付与されてしまう。
【0049】
ペリレン系黒色着色剤の種類は、特に限定されないが、紫外光の透過性の点から波長300〜400nmの光の透過率が、3.0%以上であるペリレン系黒色着色剤が好ましい。また、可視光領域の光吸収性の点から波長400〜700nmの光の透過率が、20%以下でもあるペリレン系黒色着色剤がより好ましい。さらに、漆黒性付与の容易性の点から、赤外吸収スペクトル測定にて、少なくとも、1691〜1693cm−1の間、1655〜1657cm−1の間、1591〜1593cm−1の間、1402〜1404cm−1の間、1366〜1370cm−1の間、1281〜1285cm−1の間の吸収位置に、3つ以上の赤外線吸収ピークを有するペリレン系黒色着色剤が好ましい。
【0050】
ペリレン系黒色着色剤のアスペクト比は、特に限定されないが、硬化物の柔軟性と漆黒性とのバランスの点から1.1〜1.8が好ましい。
【0051】
波長300〜400nmの光の透過率が3%以上のペリレン系黒色着色剤としては、ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト社製の「Paliogen Black S 0084」、「Paliogen Black L 0086」、「Lumogen Black FK 4280」、「Lumogen Black FK 4281」等を挙げることができる。これらは、いずれも、赤外線吸収スペクトル測定にて、少なくとも、1691〜1693cm−1の間、1655〜1657cm−1の間、1591〜1593cm−1の間、1402〜1404cm−1の間、1366〜1370cm−1の間、1281〜1285cm−1の間の吸収位置に、3つ以上の赤外線吸収ピークを有している。このうち、波長300〜400nmの光の透過率が3%以上、かつ波長400〜700nmの光の透過率が20%以下であるペリレン系黒色着色剤には、「Paliogen Black L 0086」、「Lumogen Black FK 4280」、「Lumogen Black FK 4281」が挙げられる。なお、「Paliogen Black S 0084」は、波長680nmよりも短波長側の光の透過率は20%以下であるが、波長680nm以上の光の透過率が20%超である。また、「Paliogen Black L 0086」は、波長710nmよりも短波長側の光の透過率は20%以下、波長710nm以上の光の透過率が20%超である。「Lumogen Black FK 4280」は、波長300〜750nmの光の透過率が20%以下である。「Lumogen Black FK 4281」は、波長300〜900nmの光の透過率が20%以下である。これらペリレン系黒色着色剤は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0052】
本発明の黒色硬化性樹脂組成物では、上記成分の他に、必要に応じて、種々の添加成分、例えば、消泡剤、各種添加剤、体質顔料、ウレタンビーズ、光増感剤などを適宜配合することができる。
【0053】
消泡剤には、公知のものを使用でき、例えば、シリコーン系、炭化水素系、アクリル系等を挙げることができる。各種添加剤には、例えば、シラン系、チタネート系、アルミナ系等のカップリング剤といった分散剤、三フッ化ホウ素−アミンコンプレックス、ジシアンジアミド(DICY)及びその誘導体、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル(DAMN)及びその誘導体、メラミン及びその誘導体、グアナミン及びその誘導体、アミンイミド(AI)並びにポリアミン等の潜在性硬化剤、アセチルアセナートZn及びアセチルアセナートCr等のアセチルアセトンの金属塩、エナミン、オクチル酸錫、第4級スルホニウム塩、トリフェニルホスフィン、イミダゾール、イミダゾリウム塩並びにトリエタノールアミンボレート等の硬化促進剤を挙げることができる。体質顔料は、硬化物の物理的強度を上げるためのものであり、例えば、シリカ、硫酸バリウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、タルク、マイカ等を挙げることができる。
【0054】
ウレタンビーズは、粉末状のウレタン樹脂であり、硬化物の柔軟性をより向上させることができる。ウレタン樹脂の種類は、1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物と1分子中に2つ以上のヒドロキシル基を有するポリオール化合物を反応させて得られるものであれば、特に限定されない。また、ウレタンビーズの平均一次粒子径は、例えば、0.1〜30μmである。
【0055】
光増感剤には、例えば、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート等のアミン化合物や、チオキサントン化合物、ベンゾフェノン化合物等を挙げることができる。
【0056】
上記した本発明の黒色硬化性樹脂組成物の製造方法は、特定の方法に限定されないが、例えば、上記各成分を所定割合で配合後、室温にて三本ロールにより混合分散させて製造することができる。
【0057】
次に、上記した本発明の黒色硬化性樹脂組成物の塗工方法について説明する。ここでは、本発明の黒色硬化性樹脂組成物をソルダーレジストとしてフレキシブルプリント配線板に塗工する場合を例にとって説明する。
【0058】
上記のようにして製造した本発明の黒色硬化性樹脂組成物を、例えば、銅箔をエッチングして形成した回路パターンを有するフレキシブルプリント配線板上に、スクリーン印刷法、ロールコータ法、バーコータ法、スプレーコータ法、カーテンフローコータ法、グラビアコータ法等の公知の方法を用いて所望の厚さに塗布する。溶剤を配合している場合には、必要に応じて、硬化性樹脂組成物中の溶剤を揮散させるために60〜80℃程度の温度で15〜60分間程度加熱する予備乾燥を行う。その後、塗布した硬化性樹脂組成物上に、前記回路パターンのランド以外を透光性にしたパターンを有するネガフィルムを密着させ、その上から紫外線を照射させる。そして、前記ランドに対応する非露光領域を希アルカリ水溶液で除去することにより塗膜が現像される。現像方法には、スプレー法、シャワー法等が用いられ、使用される希アルカリ水溶液としては、特に限定されず、例えば、0.5〜5%の炭酸ナトリウム水溶液が挙げられる。次いで、130〜170℃の熱風循環式の乾燥機等で20〜80分間ポストキュアを行うことにより、フレキシブルプリント配線板上に目的とするソルダーレジスト膜を形成させることができる。
【0059】
このようにして得られた硬化塗膜によって被覆されたフレキシブルプリント配線板に、噴流はんだ付け方法、リフローはんだ付け方法等により電子部品がはんだ付けされることで、電子回路ユニットが形成される。
【0060】
本発明の黒色硬化性樹脂組成物は、上記用途の他に、適宜の塗工方法にて、街灯用バックライト、美感を重視した太陽電池用バックシート表面、LEDのバックシート表面等にも利用可能である。
【実施例】
【0061】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、これらの例に限定されるものではない。
【0062】
実施例1〜10、比較例1〜4
下記表1に示す各成分を下記表1に示す配合割合にて配合し、3本ロールを用いて室温にて混合分散させて、実施例1〜10、比較例1〜4にて使用する黒色硬化性樹脂組成物を調製した。そして、調製した黒色硬化性樹脂組成物を後述する試験片作製工程を用いて基板上に塗工し、試験片を作成した。下記表1に示す各成分の配合量は、特に断りの無い限り質量部を示す。
【0063】
【表1】
【0064】
なお、表1中の各成分についての詳細は以下の通りである。
(A)カルボキシル基含有感光性樹脂
・FLX−2089:日本化薬(株)社製、ウレタン変性エポキシ構造の樹脂を使用した感光性カルボキシル基含有樹脂。
・ZFR−1124:日本化薬(株)社製、ビスフェノールF構造の多官能性エポキシ樹脂を使用したカルボキシル基含有感光性樹脂。
(B)光重合開始剤
・イルガキュア907:チバ スペシャルティケミカルズ社製、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノープロパン-1-オン。
・イルガキュア369:2‐ベンジル‐2‐ジメチルアミノ‐1‐(4‐モルフォリノフェニル)‐ブタノン‐1。
(C)希釈剤
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:日本化薬(株)製。
(D)エポキシ化合物
・EPICRON 860:大日本インキ化学工業(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂。
【0065】
(E)ウレタン(メタ)アクリレート
・EBECRYL8411:ダイセル・サイテック(株)製、1官能ウレタンアクリレート10質量部と2官能ウレタンアクリレート10質量部との混合物、重量平均分子量1000。
・KRM8296:3官能ウレタンアクリレート、重量平均分子量2770。
(F)ペリレン系黒色着色剤
・Paliogen Black S 0084:ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト社製。
・Paliogen Black L 0086:ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト社製。
・LUMOGEN BLACK FK4280:ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト社製。
・LUMOGEN BLACK FK4281:ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト社製。
【0066】
その他、カーボンブラックは旭カーボン(株)製、DICY−7はジャパンエポキシレジン(株)製のジシアンジアミド、メラミンは日産化学工業(株)製、硫酸バリウムは堺化学工業(株)製、シリカ(二酸化ケイ素)は(株)トクヤマ製である。
【0067】
試験片作製工程
上記のように調製した黒色硬化性樹脂組成物を、以下のように塗工して試験片を作成した。ポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製 カプトン100H)に回路パターンを形成したフレキシブルプリント配線板用基板を希硫酸(3%)により表面処理後、スクリーン印刷法にて、各調製した黒色硬化性樹脂組成物を塗布後、BOX炉にて80℃で20分の予備乾燥を行った。予備乾燥後、塗膜上に紫外線を露光装置(オーク社製HMW−680GW)にて500mJ/cm露光した。その後、BOX炉にて150℃で60分のポストキュアを行うことで、上記基板上に硬化塗膜を形成した。この硬化塗膜の厚み(膜厚)は、20μmの試験片と30μmの試験片との2種を用意した。
【0068】
(1)折り曲げ性
上述の硬化塗膜を形成した試験片をハゼ折りにより180°折り曲げを繰り返して行い、その際の硬化塗膜のクラック発生状況を目視及びx200の光学顕微鏡で観察し、クラックが発生しなかった回数を計測した。
(2)透過率(%)
ポリイミドフィルムに代えてガラス基板上に、上記と同様にして形成した硬化塗膜(ポストキュア後の膜厚20μm)について、波長380nmの光の透過率を測定し、別途測定したガラス基板単体の波長380nmの光の透過率をベースラインに用いることで、硬化塗膜の透過率を測定した。透過率の測定には、UV分光光度計U−3310(日立ハイテクノロジー(株))を使用した。
【0069】
実施例1〜10、比較例1〜4の折り曲げ性と透過率の結果を表2に示す。
【0070】
【表2】
【0071】
表2の実施例1〜10から、ウレタンアクリレートとペリレン系黒色着色剤を併用することにより、クラックの発生しなかった回数が、膜厚20μmでは3回以上かつ膜厚30μmでは2回以上と、折り曲げ性に優れた、つまり、柔軟性に優れた黒色の硬化塗膜を得ることができた。また、実施例1〜10から、黒色着色剤として、ペリレン系黒色着色剤を使用することにより、380nmの波長の透過率が5.1%以上と、紫外線領域の透過率の高い黒色の硬化塗膜を得ることができた。実施例6、7から、3官能ウレタンアクリレートを使用することで、1官能ウレタンアクリレートと2官能ウレタンアクリレートとの混合物を使用した実施例1〜5、8〜10と比較して、クラックの発生しなかった回数が、膜厚20μmでは9回以上かつ膜厚30μmでは7回以上と、折り曲げ性がより向上した。さらに、実施例7から、3官能ウレタンアクリレートと、1官能ウレタンアクリレートと2官能ウレタンアクリレートとの混合物と、を併用することにより、3官能ウレタンアクリレートのみを使用した実施例6と比較して、クラックの発生しなかった回数が、膜厚20μmでは14回かつ膜厚30μmでは11回と、折り曲げ性がさらに向上し、柔軟性に特に優れた黒色の硬化塗膜を得ることができた。実施例10から、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対してウレタンアクリレートを20質量部配合すると、カルボキシル基含有感光性樹脂100質量部に対してウレタンアクリレートを10質量部配合した場合と比較して、膜厚20μmの折り曲げ性がより向上した。
【0072】
一方で、比較例1〜4から、黒色着色剤としてカーボンブラックを使用すると、ウレタンアクリレートを配合しても、十分な折り曲げ性は得られなかった。比較例3から、3官能ウレタンアクリレートと、1官能ウレタンアクリレートと2官能ウレタンアクリレートとの混合物と、を併用しても、クラックの発生しなかった回数は、膜厚30μmでは1回にとどまり、依然として、十分な折り曲げ性は得られなかった。黒色着色剤として、カーボンブラックを使用することにより、380nmの波長の透過率が2.7〜2.8%にとどまり、紫外線領域の透過率の高い黒色の硬化塗膜を得ることはできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の黒色硬化性樹脂組成物は、優れた柔軟性を有し、紫外線領域の透過率の高い黒色の硬化塗膜を得ることができるので、例えば、ソルダーレジスト、カバーレイ、光吸収剤用塗料の分野で利用価値が高い。