特許第5695644号(P5695644)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5695644-カバーテープ 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5695644
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】カバーテープ
(51)【国際特許分類】
   B65D 73/02 20060101AFI20150319BHJP
【FI】
   B65D73/02 H
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-520313(P2012-520313)
(86)(22)【出願日】2011年4月18日
(86)【国際出願番号】JP2011059545
(87)【国際公開番号】WO2011158550
(87)【国際公開日】20111222
【審査請求日】2014年2月5日
(31)【優先権主張番号】特願2010-135800(P2010-135800)
(32)【優先日】2010年6月15日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-135799(P2010-135799)
(32)【優先日】2010年6月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】電気化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 彰
(72)【発明者】
【氏名】徳永 久次
(72)【発明者】
【氏名】藤村 徹夫
【審査官】 八木 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−263257(JP,A)
【文献】 特開2002−154573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D73/02、65/02、85/38
B32B27/18、27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層(A)、中間層(B)、熱可塑性樹脂を主成分とする剥離層(C)、及びキャリアテープにヒートシール可能な熱可塑性樹脂を主成分とするヒートシール層(D)を少なくとも含んでなり、
剥離層(C)を形成する熱可塑性樹脂の23℃における引張貯蔵弾性率(c)が1×10Pa以上で1×10Pa以下であり、
ヒートシール層(D)を形成する熱可塑性樹脂の23℃における引張貯蔵弾性率(d)が1×10以上で1×1010Pa以下であり、
(c)と(d)の比が、1×10≧(d)/(c)≧1×10である、カバーテープ。
【請求項2】
剥離層(C)を構成する熱可塑性樹脂が、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−アクリル酸共重合樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合樹脂、スチレン−ブタジエン共重合樹脂およびその水素添加樹脂、スチレン−イソプレン共重合樹脂およびその水素添加樹脂のいずれか、またはこれら二種以上の組み合わせを含んでなる、請求項1に記載のカバーテープ。
【請求項3】
ヒートシール層(D)を構成する熱可塑性樹脂が、アクリル系樹脂、エステル系樹脂、スチレン系樹脂のいずれか、またはこれら二種以上の組み合わせを含んでなる、請求項1に記載のカバーテープ。
【請求項4】
中間層(B)を構成する樹脂が、メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を含んでなる、請求項1に記載のカバーテープ。
【請求項5】
剥離層(C)、ヒートシール層(D)の少なくとも一層に、層を構成する熱可塑性樹脂100質量部に対して、カーボンナノ材料を2〜15質量部添加されている、請求項1に記載のカバーテープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の包装体に使用するカバーテープに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化に伴い、使用される電子部品についても小型高性能化が進み、併せて電子機器の組み立て工程においてはプリント基板上に部品を自動的に実装することが行われている。表面実装用電子部品は、電子部品の形状に合わせて収納しうるエンボス成形されたポケットが連続的に形成されたキャリアテープに収納される。電子部品を収納後、キャリアテープの上面に蓋材としてカバーテープを重ね、加熱したシールバーでカバーテープの両端を長さ方向に連続的にヒートシールして包装体としている。カバーテープ材としては、二軸延伸したポリエステルフィルムを基材に、熱可塑性樹脂のヒートシール層を積層したものなどが使用されている。
【0003】
近年、コンデンサや抵抗器、IC、LED、コネクタ、スイッチング素子などの様々な電子部品は著しい微小化、軽量化、薄型化が進んでおり、カバーテープを剥離する際に剥離強度の最大値と最小値との差、即ち剥離強度のバラツキが大きいと、キャリアテープが激しく振動して電子部品が飛び出し、実装不良を起こすことがある。また、実装速度の急激な高速化に伴い、カバーテープの剥離速度も0.1秒以下/タクトと極めて高速化しており、剥離の際にはカバーテープに大きな衝撃的な応力が加わる。その結果として、剥離強度が強過ぎた場合には、カバーテープが切れてしまうことがある。一方、剥離強度が弱すぎる場合には、カバーテープとキャリアテープとが十分な強さで接着されていないため、搬送時や実装時の振動によりカバーテープが剥がれてしまい、電子部品が脱落し、結果として電子部品の実装不良を起こすことがある。
テープ切れの対策として、二軸延伸したポリエステルフィルムなどの基材とヒートシール層の間にポリプロピレンやナイロンやポリウレタンなどの耐衝撃性や引裂伝播抵抗に優れた層を設ける方法(特許文献1参照)が提案されているが、これらの方法によっても前記の高速でカバーテープをキャリアテープから剥離する際には、十分にテープ切れを抑制することは困難であった。
【0004】
また、カバーテープの保管、あるいは電子部品を収納した包装体での輸送環境や保管環境により温度・湿度の影響を受けて、経時的に剥離強度が上昇、もしくは低下して適正範囲から外れる場合がある。
更に、電子部品を収納した包装体では、封止樹脂に含まれる水分を除去するために、ベーキング処理をする必要がある。このような電子部品の量産性の向上のためには、ベーキング温度を上げ、ベーキングの時間を短くする必要があり、最近ではカバーテープをキャリアテープにヒートシールした状態で、60℃の環境下で72時間または80℃の環境下で24時間程度のベーキング処理を行うようになってきている。このような場合、カバーテープのヒートシール面に電子部品が付着してしまい、基板上に部品を実装する際に実装不良を起こすことがある。
このような状況から、適度の剥離強度を有するとともに剥離強度のバラツキが十分小さく、高速剥離による衝撃によってもテープ切れが起こらないことに加えて、前記のような高温環境下においても電子部品の付着が起こらない、剥離強度の安定性の高いカバーテープが必要となってきている。
剥離強度の安定性を付与させる方法として、ヒートシール層を海島状のパターンにする方法や、中間層もしくはヒートシール層に非相溶の樹脂を混ぜ合わせることで層内を凝集破壊させる方法、ヒートシール表面にコロナ処理を施すことで表面の濡れ性を調節する方法などが提案されている(特許文献2〜5参照)。しかしながら、電子部品を収納した包装体が高温環境下で保管された際のカバーテープへの部品付着について考慮したものではなかった。
【0005】
一方、中間層とヒートシール層の間に、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル樹脂などの熱可塑性樹脂に導電性微粒子や界面活性剤を添加した静電気拡散層を設けた構成とし、中間層と静電気拡散層の層間で剥離するか、静電気拡散層を凝集破壊するか、ヒートシール層と静電気拡散層の間の層間で剥離することにより、カバーテープをキャリアテープから剥離する際に発生する静電気を抑制する蓋材が提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、特許文献2においては、キャリアテープとのシール性が良好なカバーテープについて検討されているものの、剥離強度のバラツキを抑制する方法については、検討されていない。
また、中間層とヒートシール層間に静電誘導防止層を設けることにより、剥離シール強度のバラツキが少なく、剥離帯電を抑制できるカバーテープが提案されている(特許文献6)。しかしながら、特許文献6では、中間層、静電誘導防止層、及びシーラント層を構成する樹脂について明確ではなく、剥離強度のバラツキについては言及されていない。
【0006】
また、電子部品は包装体に収納された状態で、部品の有無、部品の収納方向、リードの欠損や曲がりを検査することがある。電子部品の小型化に伴って、包装体に収納した部品の検査には、カバーテープが高い透明性を有している必要がある。
この要求に応じて、透明性を有するカバーテープが提案されているが(特許文献8参照)、静電気の帯電を防止することを目的にヒートシール層に酸化錫や酸化亜鉛といった比較的粒子の大きい導電性微粒子を添加していたため、カバーテープの透明性が低下し、曇価が20%を超えるものが殆どであり、更に透明性の高いものが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−327024号公報
【特許文献2】特開平7−223674号公報
【特許文献3】特開平4−279466号公報
【特許文献4】特開2006−219137号公報
【特許文献5】特開平8−192886号公報
【特許文献6】特開2005−178073号公報
【特許文献7】特開平8−258888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ポリスチレンやポリカーボネートなどのプラスチック製キャリアテープにヒートシールしたときに、適度の剥離強度を有するとともに剥離強度のバラツキが十分小さく、高速剥離による衝撃によってもテープ切れが起こらず、高温環境下に長時間置かれても電子部品の付着が起こらず、かつ、剥離強度の経時安定性に優れた特性を有し、必要に応じて高い透明性を有するカバーテープを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、前記の課題について鋭意検討した結果、特定の樹脂からなる中間層とヒートシール層の間に、他の樹脂組成からなる剥離層を設け、この剥離層とヒートシール層の引張貯蔵弾性率の相互の関係を適切に調整すること、また必要に応じて剥離層またはヒートシール層に添加する導電材としてカーボンナノ材を添加することによって、すべての課題を克服したカバーテープが得られることを見出し本発明に至った。
即ち本発明は、基材層(A)と中間層(B)、熱可塑性樹脂を主成分とする剥離層(C)、及びキャリアテープにヒートシール可能な熱可塑性樹脂を主成分とするヒートシール層(D)を少なくとも含んでなり、剥離層(C)を形成する熱可塑性樹脂の23℃における引張貯蔵弾性率(c)が1×10Pa以上で1×10Pa以下であり、ヒートシール層(D)を形成する熱可塑性樹脂の23℃における引張貯蔵弾性率(d)が1×10以上で1×1010Pa以下であり、(c)と(d)の比が、1×10≧(d)/(c)≧1×10であるカバーテープである。剥離層(C)を形成する熱可塑性樹脂の引張貯蔵弾性率(c)は、JIS K 7244−1−1996の9.4記載の方法で測定される。
また、本発明の一態様では、基材層(A)、中間層(B)、剥離層(C)、及びキャリアテープにヒートシール可能なヒートシール層(D)を少なくとも含んでなり、中間層(B)が、メタロセン触媒を用いて重合した引張弾性率が200MPa以下の直鎖低密度ポリエチレンを主成分として含み、剥離層(C)が、導電材を含有すると共に、芳香族ビニル基の含有量が15〜35質量%である芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の水素添加樹脂を主成分として含んでなる、カバーテープが提供される。
【0010】
中間層(B)は、密度0.900〜0.925×10 kg/mの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を含んでなることが好ましい。また、中間層(B)を構成する樹脂は、メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を含んでなることが更に好ましい。
剥離層(C)を構成する熱可塑性樹脂は、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−アクリル酸共重合樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合樹脂、スチレン−ブタジエン共重合樹脂およびその水素添加樹脂、スチレン−イソプレン共重合樹脂およびその水素添加樹脂のいずれか、またはこれら二種以上の組み合わせからなることが好ましい。またヒートシール層(D)を構成する熱可塑性樹脂は、アクリル系樹脂、エステル系樹脂、スチレン系樹脂のいずれか、またはこれら二種以上の組み合わせからなることが好ましい。
剥離層(C)、ヒートシール層(D)の少なくとも一層は、層を構成する熱可塑性樹脂100質量部に対して、カーボンナノ材料を2〜15質量部を含有することが好ましい。また、剥離層(C)、ヒートシール層(D)の少なくとも一層に添加するカーボンナノ材はカーボンナノファイバーであることが更に好ましい。
【0011】
そして、剥離層(C)、ヒートシール層(D)の少なくとも一層に、導電性微粒子として金属酸化物に導電性を付与させた微粒子を有し、剥離層(C)、及びヒートシール層(D)を積層した状態でのヒートシール層表面の表面抵抗率が、1×10〜1×1012Ωであることが好ましい。この導電性微粒子がアンチモンドーピング酸化錫であることが更に好ましい。
一方で、ヒートシール層(D)の熱可塑性樹脂100質量部に対して、メジアン径(D50)が50〜300nmの無機フィラーを20〜100質量部含むことが好ましい。そして本発明のカバーテープは、全光線透過率が70%以上であり、曇価が30%以下、好ましくは15%以下の光学特性を有することが好ましい。
また本発明は、前記のカバーテープを、熱可塑性樹脂からなるキャリアテープの蓋材として用いた電子部品包装体を包含する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のカバーテープは、ポリスチレンやポリカーボネートなどのプラスチック製キャリアテープに対するヒートシール性と、ヒートシール後長時間経っても安定した剥離強度を維持しており、またカバーテープの透明性にも優れており、加えて60〜80℃などの高温環境下の長時間のエージングによっても、収納部品のカバーテープへの付着を大幅に抑制することのできるカバーテープを提供するものである。また、本発明の一態様によれば、剥離層(C)に導電材が含有しているため、キャリアテープに微小で軽量な電子部品が収納されている場合であっても、剥離の際のカバーテープの帯電による電子部品の飛び出し等の実装工程でのトラブルを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のカバーテープの層構成の一例を示す断面図である。
図2】本発明のカバーテープの層構成の他の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のカバーテープは、少なくとも基材層(A)と中間層(B)と剥離層(C)とヒートシール層(D)を含んでなる。本発明のカバーテープの構成の一例を図1に示す。基材層(A)は、二軸延伸ポリエステル、あるいは二軸延伸ナイロンを含有してなる層であり、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)、二軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)、二軸延伸した6,6−ナイロン、6−ナイロン、二軸延伸したポリプロピレンを特に好適に用いることができる。二軸延伸PET、二軸延伸PEN、二軸延伸6,6−ナイロン、二軸延伸6−ナイロン、二軸延伸ポリプロピレンとしては、通常用いられているものの他に、帯電防止処理のための帯電防止剤が塗布または練り込まれたもの、またはコロナ処理や易接着処理などを施したものを用いることができる。基材層は薄すぎるとカバーテープ自体の引張り強度が低くなるため、カバーテープを剥離する際に「フィルムの破断」が発生しやすい。一方厚すぎるとカバーテープの接着性の低下を招くだけでなく、コスト上昇を招くため、通常12〜25μmの厚みのものを好適に用いることが出来る。
【0015】
本発明においては、基材層(A)の片面に必要に応じてアンカーコート層を介して中間層(B)を積層して設ける。中間層(B)を構成する樹脂としては、特に柔軟性を有していてかつ適度の剛性があり、常温での引裂き強度が高い直鎖状低密度ポリエチレン(以下、LLDPEと示す)であって、密度が0.900〜0.925×10kg/mの範囲の樹脂を用いる。密度が0.900×10kg/m未満では、カバーテープをヒートシールする際にヒートシールの熱および圧力によって中間層(B)がカバーテープの端部からはみ出しやすく、ヒートシールコテの汚れを引き起こしやすい。一方、0.925×10kg/mより高いとカバーテープをヒートシールする際に中間層(B)が十分に軟化しきれないためカバーテープを剥離する時の剥離強度のバラツキが大きくなる。
【0016】
LLDPEには、チグラー型触媒で重合されたもの、及びメタロセン系触媒で重合されたもの(以下、m−LLDPEと示す)がある。m−LLDPEは分子量分布を狭く制御できるため、低結晶化に伴う粘着性の発生、融点の必要以上の低下が抑えられ、とりわけ高い引裂強度を有している。なかでも、JIS K 6251のダンベル状試験片1号型を用いてフィルムの流れ方向を引張速度100mm/分で測定し、歪み量が3%〜6%の時の引張応力変化から算出した引張弾性率が200MPa以下であるものが用いられる。中間層(B)は、キャリアテープにカバーテープをヒートシールした時に、熱ゴテがカバーテープに当った時のコテ圧のバラツキを緩和し、また基材層及び剥離層と均一に接着することによって、カバーテープを剥離する際に剥離強度のバラツキを抑制する効果がある。しかしながら引張弾性率が200MPaを超える場合には、中間層を構成するm−LLDPEと剥離層(C)を構成する熱可塑性樹脂との接着が不均一となり、カバーテープを剥離する際に、剥離強度のバラツキを招く。
本発明の中間層(B)としては、m−LLDPEを用いることが好ましい。また、メタロセン触媒を用いて重合した引張弾性率が200MPa以下の直鎖低密度ポリエチレンを用いることが更に好ましい。
【0017】
上記のm−LLDPEは、コモノマーとして炭素数3以上のオレフィン、好ましくは炭素数3〜18の直鎖状、分岐状、芳香核で置換されたα−オレフィンとエチレンとの共重合体である。直鎖状のモノオレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン等が挙げられる。また、分岐状モノオレフィンとしては、例えば、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ヘキセン等を挙げることができる。また、芳香核で置換されたモノオレフィンとしては、スチレン等が挙げられる。これらのコモノマーは、単独または2種以上を組み合わせて、エチレンと共重合することができる。この共重合では、ブタジエン、イソプレン、1,3−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等のポリエン類を共重合させてもよい。中でも、コモノマーとして1−へキセン、1−オクテンを用いたものは、引張強度が強くまたコスト面でも優れていることから、好適に用いることができる。この共重合体中におけるα−オレフィン含有量は、1〜20モル%であることが、十分なテープ切れに対する改良効果を得るという点で好ましく、更に好ましくは10〜15モル%である。
【0018】
前記中間層(B)の厚みは、5〜50μmが一般的であり、好ましくは10〜40μmである。中間層(B)の厚みが5μm未満では基材層(A)と中間層(B)間の接着強度が不十分となる恐れがあり、50μmを超えるとカバーテープの総厚が厚いために、キャリアテープにカバーテープをヒートシールする際に十分な剥離強度を得ることが困難となることがある。
【0019】
本発明のカバーテープは、前記中間層(B)とヒートシール層(D)との間に、熱可塑性樹脂を主成分とする剥離層(C)を設ける。この剥離層(C)に用いる熱可塑性樹脂は、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(以下、EVAと示す)、エチレン−アクリル酸共重合樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合樹脂、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の水素添加樹脂のいずれかまたはこれらの組み合わせを含んでなる。これらの樹脂のなかでもとりわけ、引張貯蔵弾性率が23℃室温下において1×10Pa以上で1×10Pa以下の範囲のものが好ましく、更に好ましくは1×10Pa〜5×10Paのものである。1×10Pa未満だと、軟質過ぎるためにカバーテープをキャリアテープから剥離する際に剥離層の破壊が起こり易くなり、1×10Paを超えると硬過ぎるために剥離の安定性が得られ難い。尚、本発明において、この剥離層(C)と後述するヒートシール層(D)のいずれの層の引張貯蔵弾性率も、それぞれの層に用いる熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物について、JIS K 7244−1−1996の9.4の記載に基づいて以下の条件での粘弾性スペクトルの測定により求めた貯蔵弾性率の値である。
試験片厚み:200μm (パート4)
周波数 :10Hz
振動モード:I
昇温速度 :12℃/min
【0020】
剥離層(C)に用いる熱可塑性樹脂として、前記の樹脂の中でも、オレフィン成分を50〜85質量%の比率で含むオレフィン−スチレンブロック共重合樹脂を好適に用いることができる。この共重合樹脂としては、スチレン−共役ジエンブロック共重合体の水素添加樹脂、例えば、スチレン−ブタジエンジブロック共重合体の水素添加樹脂、スチレン−ブタジエン−スチレントリブロック共重合体の水素添加樹脂、スチレン−イソプレンジブロック共重合体の水素添加樹脂、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体の水素添加樹脂、スチレン−ブタジエンランダム共重合体の水素添加樹脂、スチレン−イソプレンランダム共重合体の水素添加樹脂などが挙げられる。中でもスチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体の水素添加樹脂(以下、SEPSと示す)、及びスチレン−ブタジエン−スチレントリブロック共重合体の水素添加樹脂(以下、SEBSと示す)、またブタジエンの特定部分を選択的に水素添加した樹脂(以下、SBBSと示す)を用いたものは、中間層(B)との接着性を顕著に向上させることができると共に、剥離層(C)とヒートシール層(D)との接着性も向上させることができる。また、剥離層(C)に用いる熱可塑性樹脂は、スチレン−共役ジエン共重合体の水素添加樹脂を含んでなり、密度は0.890〜0.920×10kg/mの範囲であり、好ましくは0.905〜0.920×10kg/mの範囲であってもよい。また、質量平均分子量は50,000〜150,000の間であってもよい。
【0021】
また、この剥離層(C)に用いる熱可塑性樹脂は、芳香族ビニル基の含有量が15〜35質量%の芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の水素添加樹脂であってもよい。本発明のカバーテープは、一例では、剥離層(C)とヒートシール層(D)の層間で剥離が行われるが、芳香族ビニル基の含有量が15質量%未満の時、中間層(B)を構成するm−LLDPEとの接着性は良好であるものの、ヒートシール層(D)との接着性が十分ではなく、カバーテープとして必要な剥離強度が得られない。一方、芳香族ビニル基の含有量が35質量%を超える時、ヒートシール時の熱ゴテによる熱の変化によって、剥離層(C)とヒートシール層(D)の接着性が急激に変化し易く、目的とする剥離強度を得ることが困難になりやすく、またカバーテープを剥離する際に剥離強度のバラツキを生じ易い。
【0022】
剥離層(C)の厚さは通常0.1〜3μm、好ましくは0.1〜1.5μmの範囲である。剥離層(C)の厚さが0.1μm未満の時、ヒートシール層(D)が十分な剥離強度を示さないことがある。一方、剥離層(C)の厚さが3μmを超える場合には、コストの上昇を招き易く、またカバーテープを剥離する際に剥離強度のバラツキを生じる恐れがある。尚、後述するようにこの剥離層(C)およびヒートシール層(D)は、通常はコーティングによって形成されるが、コーティング法で形成した場合、ここでいう厚みとは、乾燥後の厚みである。
【0023】
本発明のカバーテープは、剥離層(C)の表面上に熱可塑性樹脂を主成分とするヒートシール層(D)が形成される。ヒートシール層(D)の熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂などが挙げられる。なかでもアクリル系樹脂がキャリアテープを構成する素材であるポリスチレン、ポリカーボネート、及びポリエステル樹脂などに対するヒートシール性に極めて優れている。特に、ガラス転位温度が45〜80℃の樹脂を用いるのが好ましく、より好ましくは50〜75℃のアクリル系樹脂である。
そして前記の剥離層(C)の場合と同じ方法で測定した引張貯蔵弾性率が、23℃室温下において1×10以上で1×1010Pa以下であることが好ましい。このような樹脂を用いると、無機フィラーを添加することによって60〜80℃の温度環境下での電子部品付着を生じにくくなり、またポリスチレンやポリカーボネートのキャリアテープに対するヒートシール性も優れたものが得られる。
【0024】
ヒートシール層(D)を構成するアクリル系樹脂としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシルなどのメタクリル酸エステルなどの一種以上を重合した樹脂であり、これらの二種以上を共重合した樹脂であってもよい。ポリエステル系樹脂は、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸などのジカルボン酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、シクロヘキサンジメタノールなどのジアルコールを縮重合した樹脂であり、これらの二種以上を共重合した樹脂であってもよい。またジカルボン酸と、ポリエチレングリコールを縮重合したポリエチレンエラストマーを使用することもできる。また、上記のアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルなど、少なくとも一種以上のアクリル残基を50質量%以上含む樹脂であり、これらの二種以上を共重合した樹脂、例えばアクリル−スチレン共重合体のような樹脂であってもよい。
【0025】
ヒートシール層(D)の厚さは0.1〜5μm、好ましくは0.1〜3μm、更に好ましくは0.1〜0.5μmの範囲である。ヒートシールの厚さが0.1μm未満の時、ヒートシール層(D)が十分な剥離強度を示さないことがある。一方、ヒートシール層の厚さが5μmを超える場合には、コストの上昇を招くだけでなく、カバーテープを剥離する際に剥離強度のバラツキを生じやすい。
【0026】
剥離層(C)および/またはヒートシール層(D)には、必要に応じて導電材、好ましくは導電性微粒子が含有される。導電性微粒子としては、導電性酸化錫粒子、導電性酸化亜鉛粒子、導電性酸化チタン粒子等が挙げられる。中でも、アンチモンや燐、ガリウムがドーピングされた酸化錫は、高い導電性を示す上、透明性低下が少ないため、より好適に用いることができる。導電性酸化錫粒子、導電性酸化亜鉛粒子、導電性酸化チタン粒子は、球状または針状のもの、あるいはそれらの混合物を用いることができる。特にアンチモンドーピング酸化錫を用いた場合、良好な帯電防止性能を有するカバーテープが得られる。導電性微粒子の添加量は剥離層(C)および/またはヒートシール層(D)を構成する熱可塑性樹脂100質量部に対して、通常100〜1000質量部であり、好ましくは、200〜800質量部である。導電性微粒子の添加量が100質量部未満の場合、カバーテープのヒートシール層(D)側の表面抵抗率が10の12乗Ω以下のものが得られない恐れがあり、1000質量部を超えると、相対的な熱可塑性樹脂の量が減少するため、ヒートシールによる十分な剥離強度を得ることが困難となる恐れがある上に、コストの上昇を招く。
【0027】
剥離層(C)および/またはヒートシール層(D)には、導電材として、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーの少なくとも一つのカーボンナノ材料を含有させることもできる。中でも、アスペクト比が10〜10000のカーボンナノファイバーが好ましい。剥離層(C)および/またはヒートシール層(D)へのカーボンナノ材料の添加量は、層を構成する熱可塑性樹脂100質量部に対して0.5〜15質量部であり、好ましくは2〜15質量部、更に好ましくは3〜10質量部である。添加量が0.5質量部未満の場合カーボンナノ材料の添加による導電性付与の効果が十分得られず、一方15質量部を超えるとコストの上昇を招く上に、カバーテープの透明性の低下を招くため、収納部品をカバーテープを通して検査することが困難となる。本発明のカバーテープは、前記の手段によって曇度を30%以下、好ましくは15%以下とすることができ、カバーテープを通して、収納部品の不良等の検査が可能となる。
【0028】
本発明において、前記の剥離層(C)を形成する樹脂の23℃における引張貯蔵弾性率(c)と、ヒートシール層(D)の23℃における引張貯蔵弾性率(d)との比(d)/(c)は、1×10≧(d)/(c)≧1×10 の範囲である。この範囲とすることによって、キャリアテープの表面上にヒートシールした本発明の構成のカバーテープを剥離する際に、剥離の生じる位置が、中間層(B)と剥離層(C)の層間で安定して得られるので、剥離強度のバラツキの小さい剥離を行うことができる。
【0029】
本発明のカバーテープは、前記のように電子部品を入れたキャリアテープの表面にヒートシールされた状態で、封止樹脂に含まれる水分を除去するために、60℃の環境下で72時間または80℃の環境下で24時間程度の条件でベーキング処理されることがある。このような場合に内容物である電子部品がカバーテープに接着すると、カバーテープを剥離して電子部品を実装する工程でのトラブルの原因となる。前記のように本発明のカバーテープは、剥離強度のバラツキが小さく、且つ、60〜80℃のような高温度で長時間保管したときの内容物の電子部品へのヒートシール層(D)の粘着性の制御も可能となるが、更に付着の防止をより確実に行うために、ヒートシール層(D)には無機フィラーを添加することが好ましい。
添加する無機フィラーは、球状または破砕形状のタルク粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、マイカ粒子、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの無機フィラーである。特にシリカ粒子は、本願が目標とする粒子径が得られやすく、分散性が良好であり、またヒートシール層(D)に添加した際の透明性の低下が少ないことから、より好適に用いることができる。特にシリカ微粒子を、プロピレンオキサイドで変性されたポリシロキサン、あるいはエチレンオキサイドで変性されたポリシロキサンからなる群から選ばれる少なくとも1種の脂肪族オキサイド変性ポリシロキサンで表面処理することがより好ましい。無機フィラーの表面をこれらのポリシロキサンで処理することによって、ヒートシール層(D)を構成する樹脂と無機フィラー間の密着性が強くなるので、ヒートシール層(D)の機械的強度を向上させることができ、キャリアテープからカバーテープを剥離する際に安定した剥離強度が得られやすい。
【0030】
前記の無機フィラーとしては、ヒートシール層(D)を構成する熱可塑性樹脂100質量部に対して、メジアン径(D50)が50nm未満の無機フィラーを10〜50質量部、またはメジアン径(D50)が50〜300nmの無機フィラーを20〜60質量部ないしは20〜100質量部含むことが好ましい。また、無機フィラーをメジアン径(D50)が200nm未満のものとし、これを例えば10〜50質量部含めると、カバーテープの透明性が維持される。ヒートシール層(D)がこれらの粒子径の無機フィラーを含むことにより、カバーテープを巻いた時のブロッキングを抑制できるばかりでなく、電子部品が収納された包装体が高温環境に保管された場合でも、カバーテープへの電子部品の付着の防止がより確実になる。また、粒子径の異なるフィラーを添加することによって、前記の収納部品の付着抑制効果に加えてカバーテープの透明性の低下を抑制できるため、キャリアテープに収納した電子部品の印字や、電子部品のリード曲がり等の検査を、カバーテープ越しに行うことができる。
【0031】
上記カバーテープを作製する方法は特に限定されるものではなく、一般的な方法を用いることができる。例えば、ポリウレタン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリエチレンイミンなどのアンカーコート剤を基材層(A)の例えば二軸延伸ポリエステルのフィルム表面に塗布しておき、中間層(B)となるm−LLDPEを主成分とする樹脂組成物をTダイから押出し、アンカーコート剤の塗布面にコーティングすることで、基材層(A)と中間層(B)からなる二層フィルムとする。さらに中間層(B)の表面に、本発明の剥離層(C)を、例えばグラビアコーター、リバースコーター、キスコーター、エアナイフコーター、メイヤーバーコーター、ディップコーター等によりコーティングすることができる。この場合、塗工する前に、中間層(B)の表面をコロナ処理やオゾン処理しておくことが好ましく、特にコロナ処理することが好ましい。更に中間層(B)に塗布した剥離層(C)の上にヒートシール層(D)を構成する樹脂組成物を例えばグラビアコーター、リバースコーター、キスコーター、エアナイフコーター、メイヤーバーコーター、ディップコーター等によりコーティングすることで目的とするカバーテープを得ることができる。
【0032】
他の方法として、中間層(B)を予めTダイキャスト法、あるいはインフレーション法などで製膜しておき、これを基材層(A)のフィルムと、ポリウレタン、ポリエステル、ポリオレフィンなどのアンカーコート剤を介して接着するドライラミネート法により、基材層(A)と中間層(B)からなるフィルムを得ることができ、中間層(B)の表面に剥離層(C)とヒートシール層(D)を塗布することにより、目的とするカバーテープを得ることもできる。
【0033】
更に他の方法としてサンドラミネート法によっても、目的とするカバーテープを得ることができる。即ち、第一中間層を構成するフィルムをTダイキャスト法、あるいはインフレーション法などで製膜する。次にこの第一中間層のフィルムと基材層(A)フィルムとの間に、溶融したm−LLDPEを主成分とする樹脂組成物を供給して第二中間層を形成し積層し、目的とするカバーテープの基材層(A)と、第一中間層と第二中間層からなる中間層(B)で構成された積層フィルムを得た後、更に中間層(B)側の表面に剥離層(C)とヒートシール層(D)を塗布することにより、目的とするカバーテープを得ることができる。この方法の場合も、前記の方法と同様に、基材層(A)のフィルムを積層する側の面にアンカーコート剤をコーティングしたものを用いるのが一般的である。
【0034】
前記の工程に加えて、必要に応じて、カバーテープの少なくとも片面に帯電防止処理を行うことが出来る。帯電防止剤として、例えば、アニオン系、カチオン系、非イオン系、ベタイン系などの界面活性剤型帯電防止剤や、高分子型帯電防止剤及び導電材などをグラビアロールを用いたロールコーターやリップコーター、スプレー等により塗布することができる。また、これらの帯電防止剤を均一に塗布するために、帯電防止処理を行う前に、フィルム表面をコロナ放電処理やオゾン処理することが好ましく、特にコロナ放電処理が好ましい。
【0035】
カバーテープは、電子部品の収納容器であるキャリアテープの蓋材として用いる。キャリアテープとは、電子部品を収納するための窪みを有した幅8mmから100mm程度の帯状物である。カバーテープを蓋材としてヒートシールする場合、キャリアテープを構成する材質は特に限定されるものではなく、市販のものを用いることができ、例えばポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等を使用することができる。キャリアテープは、カーボンブラックやカーボンナノチューブを樹脂中に練り込むことにより導電性を付与したもの、帯電防止剤や導電材が練り込まれたもの、あるいは表面に界面活性剤型の帯電防止剤やポリピロール、ポリチオフェンなどの導電物をアクリルなどの有機バインダーに分散した塗工液を塗布することにより、帯電防止性を付与したものも用いることができる。
【0036】
電子部品を収納した包装体は、例えば、キャリアテープの電子部品収納部に電子部品等を収納した後にカバーテープを蓋材とし、カバーテープの長手方向の両縁部を連続的にヒートシールして包装し、リールに巻き取ることで得られる。この形態に包装することで電子部品等は保管、搬送される。本発明の包装体は、コネクタ、IC、ダイオード、トランジスタ、コンデンサ、抵抗器、LEDなど各種電子部品の収納及び搬送に用いることができ、特に厚みが1mm以下のサイズのLEDやトランジスタ、ダイオードなどの電子部品において、電子部品を実装する際のトラブルを大幅に抑制することができる。電子部品等を収納した包装体は、キャリアテープの長手方向の縁部に設けられた送り用の孔で搬送しながら断続的にカバーテープを引き剥がし、ピックアップ装置により電子部品等の存在、向き、位置を確認しながら取り出すことができる。
【0037】
更に、カバーテープを引き剥がす際には、剥離強度があまりに小さいとキャリアテープから剥がれてしまい、収納部品が脱落してしまう恐れがあり、あまりに大きいとキャリアテープとの剥離が困難になると共にカバーテープ剥離作業時に破断させてしまう恐れがあるため、120〜220℃でヒートシールした場合、0.05〜1.0N、好ましくは0.1〜0.7Nの剥離強度を有するものがよく、かつ剥離強度のバラツキについては0.4N、好ましくは0.3Nを下回るものが好ましい。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
実施例および比較例において、中間層(B)、剥離層(C)およびヒートシール層(D)に、以下の樹脂原料を用いた。なお、剥離層(C)の樹脂、およびヒートシール層(D)の樹脂の引張貯蔵弾性率は、それぞれの樹脂について粘弾性測定装置(Rheometric Scientific社製、SOLIDS ANALYZER RSAII)を用い、JIS K 7244−1−1996の9.4に準拠した測定方法にて求めた貯蔵弾性率の値である。
(測定条件)
試験片厚み:200μm (パート4)
周波数 :10Hz
振動モード:I
昇温速度 :12℃/min
試験片は、後述する樹脂の[c−1]〜[c−4]はシクロヘキサンに、[c−5]は水に、[d−1]〜[d−3]はMEKに、それぞれ溶解もしくは希釈させた後、ポリテトラフルオロエチレンの板上に塗布し、温度60℃環境下、12時間投入して作製し、その後に取り出し、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下に24時間放置後測定を行った。
【0039】
(中間層(B)の樹脂)
(a−1)m−LLDPE:ユメリット0520F(宇部丸善ポリエチレン社製)、厚み40μm、密度0.904×10kg/m
(a−2)m−LLDPE:ハーモレックスNF464N(日本ポリエチレン社製)、厚み40μm、密度0.918×10kg/m
(a−3)m−LLDPE:ユメリット2540F(宇部丸善ポリエチレン社製)、厚み40μm、密度0.923×10kg/m
(a−4)m−LLDPE:エボリューSP3010(プライムポリマー社製)、厚み30μm、密度0.926×10kg/m
(a−5)m−LLDPE:エクセレンFX CX1001(住友化学社製)、厚み40μm、密度0.898×10kg/m
【0040】
(剥離層(C)の樹脂)
(c−1)樹脂:タフテックH1141(旭化成ケミカルズ社製)、SEBS、23℃における貯蔵弾性率;2×10Pa
(c−2)樹脂:セプトン2002(クラレ社製)、SEPS、23℃における貯蔵弾性率1×10Pa
(c−3)樹脂:タフテックP1500(旭化成ケミカルズ社製)、SBBS、23℃における貯蔵弾性率;1×10Pa
(c−4)樹脂:タフテックH1221(旭化成ケミカルズ社製)、SEBS、23℃における貯蔵弾性率;1×10Pa
(c−5)樹脂:エバフレックスVA−45X(三井・デュポンポリケミカル社製)、EVA、23℃における貯蔵弾性率8×10Pa
(c−6)樹脂:バイロナールMD−1245(東洋紡社製)、ポリエステル樹脂、23℃における貯蔵弾性率;1×10Pa
(c−7)樹脂:バイロン630(東洋紡社製)、ポリエステル樹脂、23℃における貯蔵弾性率;2×10Pa
(c−8)樹脂:ペスレジンA−645GH(高松油脂社製)、ポリエステル樹脂、23℃における貯蔵弾性率;8×10Pa
(c−9)樹脂:タフテックH1051(旭化成ケミカルズ社製)、SEBS、23℃における貯蔵弾性率;1×10Pa
(c−10)樹脂:タフテックP2000(旭化成ケミカルズ社製)、SBBS、23℃における貯蔵弾性率;6×10Pa
(c−11)樹脂:タフテックH1043(旭化成ケミカルズ社製)、SEBS、23℃における貯蔵弾性率;3×10Pa
(c−12)樹脂:セプトン8104(クラレ社製)、SEBS、23℃における貯蔵弾性率;5×10Pa
(剥離層(C)中に配合する導電材)
(c−13)導電材:SNS−10T(石原産業社製)、球状アンチモンドープ酸化錫、メジアン径(D50)100nm、トルエン分散タイプ
(c−14)導電材:FSS−10T(石原産業社製)、針状アンチモンドープ酸化錫、数平均長径2μm、トルエン分散タイプ
(c−15)導電材:FS−10D(石原産業社製)、針状アンチモンドープ酸化錫、数平均長径2μm、水分散タイプ
【0041】
(ヒートシール層(D)の樹脂)
(d−1)アクリル樹脂1:ダイヤナールBR-116(三菱レイヨン社製)、ガラス転移温度50℃、23℃における貯蔵弾性率;2×10Pa
(d−2)アクリル樹脂2:ダイヤナールBR-113(三菱レイヨン社製)、ガラス転移温度75℃、23℃における貯蔵弾性率;1×1010Pa
(d−3)アクリル樹脂3:ダイヤナールBR−1122(三菱レイヨン社製)、ガラス転移温度27℃、23℃における貯蔵弾性率;2×10Pa
(ヒートシール層(D)の配合剤)
(ヒートシール層(D)に添加する導電材)
(d−4)導電材:CNF−T/アノン(三菱マテリアル社製)、カーボンナノファイバー、直径10〜20nm、数平均長径0.1〜10μm
(ヒートシール層(D)に添加する無機フィラー)
(e−1)無機フィラー1:MEK−ST−ZL(日産化学社製)、シリカフィラー、メジアン径(D50)100nm
【0042】
(実施例1)
原料樹脂としてメタロセン触媒にて重合された[(a−1)m−LLDPE]を用い、口径40mmの単軸押出機を用いて200℃で混練し、Tダイを通して毎分20mのライン速度で押出し、厚み40μmの中間層フィルムを得た。厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフィルムの表面に、グラビア法によってポリエステル系のアンカーコート剤を塗工した後、前記中間層フィルム[(a−1)m−LLDPE]を貼り付けることにより、二軸延伸ポリエステル層とm−LLDPE層からなる積層フィルムを得た。次にこのフィルムのm−LLDPE面にコロナ処理を施した後、シクロヘキサンにて溶解させた[(c−1)樹脂]を前記コロナ処理を施した面上に、グラビア法にて乾燥厚みが0.8μm厚みになるように塗工し剥離層とした。さらに、剥離層の塗工面上に、ヒートシール層として、メタクリル酸ブチルとメタクリル酸メチルのランダム共重合体[(d−1)アクリル樹脂]と、[(e−1)無機フィラー]との固形分質量比が(d−1):(e−1)=100:80となるように混合し、MEKに溶解した溶液を、グラビア法にて乾燥後の厚みが1.0μmになるように塗工することにより、帯電防止性能を有するキャリアテープ用カバーテープを得た。
【0043】
(実施例2)
剥離層に表1に記載したとおり(c−14)導電材を樹脂100質量部に対して400質量部配合し、表1に記載した配合比および構成とした以外は、実施例1と同様にしてカバーテープを作製した。
(実施例3〜9、比較例2〜10)
中間層、剥離層、およびヒートシール層を、表1および表2に記載した樹脂等の原料を用いて形成した以外は、実施例1と同様にしてカバーテープを作製した。
(比較例1)
中間層を設けず、厚さ50μmの基材層上に順次剥離層およびヒートシール層を形成した以外は、実施例1と同様にしてカバーテープを作製した。
(比較例11)
剥離層を設けず、中間層およびヒートシール層を、表2に記載した樹脂等の原料を用いて形成した以外は、表2に示した配合比および構成で実施例1と同様にしてカバーテープを作製した。
(比較例12)
ヒートシール層を設けず、中間層および剥離層を、表2に記載した樹脂等の原料を用いて形成した以外は、表2に示した配合比および構成実施例1と同様にしてカバーテープを作製した。
【0044】
(実施例10)
原料樹脂としてメタロセン触媒にて重合された[(a−1)m−LLDPE]を用い、口径40mmの単軸押出機を用いて200℃で混練し、Tダイを通して毎分20mのライン速度で押出し、厚み40μmの中間層フィルムを得た。厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフィルムの表面に、グラビア法によってポリエステル系のアンカーコート剤を塗工した後、前記中間層フィルム[(a−1)m−LLDPE]を貼り付けることにより、二軸延伸ポリエステル層とm−LLDPE層からなる積層フィルムを得た。次にこのフィルムのm−LLDPE面にコロナ処理を施した後、シクロヘキサンにて溶解させた[(c−1)樹脂]を前記コロナ処理を施した面上に、グラビア法にて乾燥厚みが1μm厚みになるように塗工し剥離層とした。さらに、剥離層の塗工面上に、ヒートシール層として、メタクリル酸ブチルとメタクリル酸メチルのランダム共重合体[(d−1)アクリル樹脂]、[(d−4)導電材]および[(e−1)無機フィラー]の固形分質量比が(d−1):(d−4):(e−1)=100:8:50となるように混合し、MEKに溶解した溶液を、グラビア法にて乾燥後の厚みが0.8μmになるように塗工することにより、帯電防止性能を有するキャリアテープ用カバーテープを得た。
【0045】
(実施例11〜17、比較例14、15、17〜23)
中間層、剥離層、およびヒートシール層を、表3および表4に記載した樹脂等の原料を用いて形成した以外は、実施例10と同様にしてカバーテープを作製した。
(比較例13)
中間層を設けず、厚さ50μmの基材層上に順次剥離層およびヒートシール層を形成した以外は、実施例10と同様にしてカバーテープを作製した。
(比較例16)
ヒートシール層に導電材および無機フィラーを配合しないで、表4に記載した構成とした以外は、実施例10と同様にしてカバーテープを作製した。
(比較例24)
ヒートシール層を設けず、中間層および剥離層を、表4に記載した構成とした以外は、実施例10と同様にしてカバーテープを作製した。
【0046】
(評価方法)
各実施例及び各比較例で作製した電子部品のキャリアテープ用カバーテープについて下記に示す評価を行った。これらの結果を表1、表2、表3及び表4にまとめて示す。
(1)曇価
JIS K 7105:1998の測定法Aに準じて、積分球式測定装置を用いて曇価を測定した。フィルム製膜性が著しく悪くフィルムが得られなかったため、曇価を評価できなかったものについては、「未評価」と表記した。結果を表1、表2、表3及び表4の曇価の欄に示す。
(2)部品付着性
温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下において、ポリスチレン製キャリアテープ(電気化学工業社製)に電子部品(SOD−882:1.0mm×0.6mm)を20個載せ、カバーテープのヒートシール層が部品に接するように被せ、500gの重りを用いて均等に(部品一つ当たり25g)荷重をかけた。1分後、カバーテープを持ち上げ、ヒートシール面に付着した部品の個数を数えた。カバーテープに付着した部品の数が0〜5個の範囲にあるものを「優」とし、6〜10個の範囲にあるものを「良」とし、10〜20個のものを「不良」として表記した。結果を表1、表2、表3及び表4のシール性の欄に示す。
(3)ベーキング耐性
水平に張ったカバーテープのヒートシール層面上に電子部品(スタンレー社製LED:1.6mm×0.8mm)を50個載せ、80℃環境下に24時間投入した。80℃環境から取り出した後、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下に1時間放置し、同じく温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下でカバーテープを逆さにし、電子部品がカバーテープに付着した個数を数えた。カバーテープに付着した部品の数が0〜5個の範囲にあるものを「優」とし、6〜10個の範囲にあるものを「良」とし、10個を超えるものを「不良」として表記した。結果を表1及び表2のベーキング耐性の欄に示す。尚、60℃環境下に72時間投入した条件でも同様の評価を行ったが、前記の80℃環境下に24時間投入した場合と同じ結果であった。
【0047】
(4)シール性
テーピング機(渋谷工業社、ETM−480)を使用し、シールヘッド幅0.5mm×2、シールヘッド長32mm、シール圧力0.1MPa、送り長4mm、シール時間0.1秒×8回にてシールコテ温度140℃から190℃まで10℃間隔で5.5mm幅のカバーテープを8mm幅のポリカーボネート製キャリアテープ(電気化学工業社製)、及びポリスチレン製キャリアテープ(電気化学工業社製)にヒートシールした。温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下に24時間放置後、同じく温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下にて毎分300mmの速度、剥離角度180°でカバーテープを剥離し、140℃および190℃のシールコテ温度でヒートシールした時の平均剥離強度が0.3〜0.9Nの範囲にあるものを「優」とし、140℃あるいは190℃のいずれかのシールコテ温度でヒートシールした時の平均剥離強度が0.3〜0.9Nの範囲にあるものを「良」とし、上記以外の平均剥離強度のものを「不良」として表記した。結果を表1、表2、表3及び表4のシール性の欄に示す。
(5)経時安定性
前記(4)シール性と同条件において、剥離強度を0.4Nとなるようにヒートシールを行った。温度60℃、相対湿度10%、及び温度60℃、相対湿度95%の環境下に7日間投入し、取り出し後温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下に24時間放置後、同じく温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下にて剥離強度の測定を行った。剥離強度の測定は前記(3)シール性と同条件にて実施した。平均剥離強度が0.4±0.1Nの範囲にあるものを「優」とし、0.4±0.2Nの範囲にあるものを「良」とし、上記以外の平均剥離強度のものを「不良」として表記した。結果を表1、表2、表3及び表4のシール性の欄に示す。
【0048】
(6)切れ性
前記(4)シール性と同条件において、ポリスチレン製キャリアテープに対し、シールヘッド温度を調整することにより、平均剥離強度が0.5、1.0、1.5N以上となる様に、ヒートシールを行った。カバーテープをシールしたキャリアテープを550mmの長さで切り取り、両面粘着テープを貼った垂直な壁にキャリアテープのポケット底部を貼り付けた。貼り付けてあるキャリアテープの上部からカバーテープを50mm剥がし、カバーテープをクリップで挟み、このクリップに質量1000gの重りを取り付けた。その後、重りを自然落下させた時に、剥離強度1.5Nでもカバーテープが切れなかったものを「優」、剥離強度1.0Nでカバーフィルムが切れなかったものを「良」、剥離強度が1.0Nで切れが観察されたものを「不良」として表記した。また、190℃のシール温度においても剥離強度が1.0Nに満たなかったものについては、「未評価」と表記した。結果を表1、表2、表3及び表4の切れ性の欄に示す。
(7)表面抵抗率
三菱化学社のハイレスタUP MCP−HT450を使用しJIS K6911の方法にて、温度23℃、相対湿度50%RHの雰囲気下にて、印加電圧10Vでヒートシール層表面の表面抵抗率を測定した。結果を表1、表2、表3及び表4の表面抵抗率の欄に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【符号の説明】
【0053】
1 カバーテープ
2 基材層(A)
3 アンカーコート層
4 中間層(B)
5 剥離層(C)
6 ヒートシール層(D)
図1
図2