(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも1つの帯電可能導体と前記第1のリターン導体および第2のリターン導体とは、垂直に積み重ねられた構成を有する実質的に平坦な導電層を含む、請求項1に記載の電気ワイヤ。
前記電気ワイヤの外部表面を貫入する物体は、前記少なくとも1つの帯電可能導体に接触する前に、前記第1の接地導体及び前記第2の接地導体の一方と、前記第1のリターン導体及び前記第2のリターン導体の一方とに接触する、請求項1に記載の電気ワイヤ。
前記第1のリターン導体及び前記第2のリターン導体は、機械的処理、化学的処理、及び熱的処理のうちの少なくとも1つによって処理されて、前記電気ワイヤの保護的長手方向縁部が形成され、
該保護的長手方向縁部は、異物が前記電気ワイヤに貫入することを防止し、異物が前記第1のリターン導体及び前記第2のリターン導体の一方に接触することなしに前記帯電可能導体に接触することを防止する、請求項1に記載の電気ワイヤ。
前記第1のリターン導体及び前記第2のリターン導体の間の領域は、ホットゾーンを形成し、前記少なくとも1つの帯電可能導体は、前記ホットゾーン内に配置され、前記少なくとも1つの帯電可能導体は、前記ホットゾーン内に形成されると共に前記電気ワイヤの幅にわたる複数の水平セグメントと前記電気ワイヤの厚さにわたる複数の垂直セグメントとを有する複数の帯電可能導体を備える、請求項3に記載の電気ワイヤ。
前記少なくとも1つの帯電可能導体と前記第1のリターン導体及び前記第2のリターン導体との間に形成されたキャパシタンスは、C=1.5・W・L・ε/dとして与えられ、Wは前記第1のリターン導体及び前記第2のリターン導体と前記帯電可能導体との幅であり、Lは前記第1のリターン導体及び前記第2のリターン導体と前記帯電可能導体との長さであり、εは前記第1の絶縁層及び前記第2の絶縁層についての誘電定数であり、dは前記第1のリターン導体及び前記第2のリターン導体と前記帯電可能導体とのそれぞれとの間の距離である、請求項1に記載の電気ワイヤ。
前記電気ワイヤの一端に前記能動安全装置が接続され、前記電気ワイヤの終端に受け側の装置が接続され、前記能動安全装置は、前記第1の接地導体上への信号の通信と前記第2の接地導体上のリターン信号の検出とによって、前記第1の接地導体と前記第2の接地導体との適切な終端を前記電気ワイヤの帯電前に検出するように構成されている、請求項14に記載の電気ワイヤシステム。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図1A及び
図1Bに示されるように、家庭及びオフィスで一般に使用される従来の電気ワイヤは、今日、(接地ワイヤを除いて)PVCで個々に絶縁された中実(solid)の円形ワイヤから成り、外側PVCジャケットは内部ワイヤを囲んでいる。火災は、ワイヤの過熱、絶縁破壊、及び貫入によってさらに引き起こされる。従来の壁内又は天井内配線によって与えられる開いた空間は、電気火災に伴う火の点火及び膨張のために大量の酸素を供給する。
【0010】
さらに、そのような従来の電気ワイヤは、電気衝撃の危険を呈し、したがって、安全性の懸念を生じる。すなわち、そのような従来の電気ワイヤには、釘、ねじ、ドリルビット等のような物体が貫入されることが多く、深刻な傷害又は死をもたらすことが多い。そのため、こうした従来の電気ワイヤは、上述した導電性の任意の物体が貫入されると、深刻なを傷害起こす可能性が高い。
【0011】
従来の配線システムが、変わりつつある市場において不適当であるという他の重要な例には、
(a)中実の壁(及び天井)構築技術の急増と、
(b)ワイヤインタフェースを必要とすると共に多くの場合これらの装置の表面取り付け用に設計される、新しい家庭及びオフィス環境と、特に既存の家庭及びオフィス環境とに設けられた新しい技術及び装置の急増と
が含まれる。
【0012】
打ち込み式コンクリート壁(poured concrete wall)、取り外し可能型(removable form)打ち込み式コンクリート壁用の発泡材ブロック形態のような新しい材料や、中実の壁(及び天井)パネルに成形される木材及びリサイクル材料に対する組み立て式(fabricated)代替材料は全て、現在の「中空」外壁及び内壁(及び天井)構築技術よりも、優れた長期の特性及び利点を提示する。これらの中実材料構築技術は、現場で行われる或る種の貫入型溝堀り(invasive channeling)を必要とする。この溝堀りは、多くの欠点、安全性の懸念、及び関連するコストを伴う。この溝堀りはまた、通常、配線を仕上がった表面の近くに配置し、先に述べたようなさらなる貫入によって、衝撃又はアーチ故障の可能性及び火災の可能性がもたらされる場合がある。大局的に見ると、構築問題は、構築技術の違いに基づいて長年にもわたって存在してきた。
【0013】
さらに、オーディオ、ビデオ、及びコンピュータ/インターネットアプリケーションにおける進歩の到来は、家庭及びオフィス装置のパラダイムを劇的に変えてきた。サラウンドサウンド家庭用劇場及びマルチメディア会議室オーディオシステム、フラットパネルプラズマ及び液晶ディスプレイ(LCD)テレビ、ネットワーク接続された家庭及びオフィス、照明の新しいアプリケーション、空気品質及び制御システムは、かなり重い負荷をかけており、多くの場合、配線システムを損なう。交流(AC)又は直流(DC)電力インタフェース及び関連する配線についての要求は、設置者及びユーザに対してこれまで問題を生じてきた。
【0014】
[発明の概要]
従来の方法の、上述の及び他の問題、短所、及び欠点を考慮して、本発明の実施形態の例示的な態様は、電気ワイヤ及び電気ワイヤを作製する方法を提供し、これにより、容易に作製される安全で使いやすい電気ワイヤを提供することができる。
【0015】
本発明者らは、本質的に安全であり、装置と、技術と、それらが設置され使用される方法とについての現在及び将来のニーズに対処するように設計された新しい配線システムが、次の長期の配線危機、及び、多くの場合、短期の配線危機に対する唯一の解決策であり得ると判断した。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の例示的な態様は、少なくとも1つの帯電可能導体と、少なくとも1つの帯電可能導体の対向する側にそれぞれ形成された第1のリターン導体及び第2のリターン導体(たとえば、少なくとも1つのリターン導体)であって、少なくとも1つの帯電可能導体が第1のリターン導体及び第2のリターン導体によって少なくとも実質的に封じ込められる(entrapped)、第1のリターン導体及び第2のリターン導体とを備える電気ワイヤを含む。「実質的に封じ込められる」とは、電気ワイヤの外側表面に貫入する物体は、リターン導体に接触することなしに帯電可能導体に接触することを、実質的に防止されることを意味する。
【0017】
さらに、電気ワイヤは、表面取り付け可能であってもよく、実際にあらゆる電圧(たとえば、0V〜240Vまたはそれ以上)を印加することについて、安全に使用することができる。
【0018】
電気ワイヤは、少なくとも1つの帯電可能導体と第1のリターン導体及び第2のリターン導体との間のそれぞれに形成された第1の絶縁層及び第2の絶縁層をさらに備えてもよい。さらに、少なくとも1つの帯電可能導体と第1のリターン導体及び第2のリターン導体とは、積重ね配置(stacked arrangement)を有する実質的に平坦な導電層を備えてもよい。電気ワイヤはまた、第1のリターン導体及び第2のリターン導体上に形成された外側絶縁層(たとえば、第3の絶縁層及び第4の絶縁層)を備えてもよい。
【0019】
さらに、少なくとも1つの帯電可能導体と第1のリターン導体及び第2のリターン導体のそれぞれとの間の距離(たとえば、これら導体間の絶縁層の厚さ)は、約0.762mm(約0.030インチ)以下である。たとえば、1つの例示的実施形態では、この距離は、約0.127mm(約0.005インチ)以下である。さらに、第1のリターン導体及び第2のリターン導体は、電気ワイヤの長手方向縁部に沿って(たとえば、幅の縁部において)互いに接触して、帯電可能導体が第1のリターン導体及び第2のリターン導体によって完全に封じ込められる(たとえば、完全に囲まれる)ようになっていてもよい。
【0020】
さらに、絶縁層、リターン導体及び/又は接地導体の長手方向縁部を加工する(たとえば、処理する)ことによって、付加的な保護を施してもよい。たとえば、第1のリターン導体及び第2のリターン導体は、機械的処理、熱的処理、又は化学的処理のうちの少なくとも1つの方法によって処理されて、電気ワイヤの保護的(protective)長手方向縁部が形成され、保護的長手方向縁部は、異物が電気ワイヤに貫入することを防止し、異物が第1のリターン導体及び第2のリターン導体の一方に接触することなしに帯電可能導体に接触することを防止するようにしてもよい。
【0021】
同様に、第1の絶縁層及び第2の絶縁層は、電気ワイヤの長手方向縁部に沿って互いに接触してもよい。さらに、第1の絶縁層及び第2の絶縁層は、機械的処理、熱的処理、又は化学的処理のうちの少なくとも1つの方法によって処理されて、電気ワイヤの保護的長手方向縁部が形成され、保護的長手方向縁部は、異物が電気ワイヤに貫入することを防止し、異物が帯電可能導体に接触することを防止するようにしてもよい。
【0022】
本発明の別の態様は、少なくとも1つの帯電可能導体と、少なくとも1つの帯電可能導体の対向する側に形成された第1の絶縁層及び第2の絶縁層と、第1の絶縁層及び第2の絶縁層上にそれぞれ形成された第1のリターン導体及び第2のリターン導体であって、少なくとも1つの帯電可能導体が第1のリターン導体及び第2のリターン導体によって少なくとも実質的に封じ込められるようになっている、第1のリターン導体及び第2のリターン導体と、第1のリターン導体及び第2のリターン導体上にそれぞれ形成された第3の絶縁層及び第4の絶縁層と、第3の絶縁層及び第4の絶縁層上にそれぞれ形成された第1の接地導体及び第2の接地導体と、第1の接地導体及び第2の接地導体上にそれぞれ形成された第5の絶縁層及び第6の絶縁層とを備える電気ワイヤを含む。
【0023】
さらに、少なくとも1つの帯電可能導体は、電気ワイヤの幅にわたる複数の水平セグメントと電気ワイヤの厚さにわたる複数の垂直セグメントとに形成された複数の帯電可能導体を備えてもよい。また、帯電可能導体の複数の水平セグメントのうちの少なくとも1つのセグメントは、通信信号(たとえば、音声通信信号及び/又はデータ通信信号)を伝送するのに使用し、帯電可能導体の複数の水平セグメントのうちの少なくとも1つのセグメントは、交流電力及び直流電力の一方を供給するのに使用してもよい。
【0024】
さらに、少なくとも1つの帯電可能導体と第1のリターン導体及び第2のリターン導体との間に形成されるキャパシタンスは、C=1.5・W・L・ε/dとして与えられてもよく、Wはリターン導体及び帯電可能導体の幅であり、Lはリターン導体及び帯電可能導体の長さであり、εは絶縁層についての誘電定数(たとえば、リターン導体と帯電可能導体との間の誘電定数)であり、dはリターン導体と帯電可能導体のそれぞれとの間の距離である。
【0025】
さらに、第1の接地導体及び第2の接地導体は、電力伝送信号及び負荷により生成される(load-generated)電気的ノイズが電気ワイヤにおいて発生するのを防止するようにしてもよい。さらに、第1のリターン導体及び第2のリターン導体と第1の接地導体及び第2の接地導体とは、少なくとも1つの帯電可能導体から熱を放散するために、(たとえば、実質的に)熱伝導性があってもよい。特に、第1のリターン導体及び第2のリターン導体と第1の接地導体及び第2の接地導体とは、所与の断面積について、円形導体の熱放散速度(rate of heat dissipation)より大きい熱放散速度を有してもよい(たとえば、それぞれが有してもよい)。
【0026】
本発明の例示的な実施形態の重要な利点は、実質的に平坦な導体は、(たとえば、所与の導体断面積について)円形導体より大きな表面積を有してもよいことである。表面積の増加は、より大きな熱伝達速度を提供する。断面幾何形状(cross-sectional geometry)が、長手方向に関して実質的に変わることができないため、関連する変動要素(pertinent variable)は、任意の導体の縁部に沿った周囲長、及び総断面積が一定に維持される時の周囲長の変わり方である。
【0027】
したがって、結果として得られる定常状態温度が一定に保たれると共に周囲環境が一定に保たれるならば、実質的に平坦な導体は、(たとえば、導体の)所与の断面積について、より多くの電気を伝達することができる。あるいは、電流が一定に維持されると共に他の全ての因子が同じままであるならば、定常状態温度は、(円形導体に比べて)実質的に平坦な導体上でより低くなるであろう。
【0028】
さらに、好ましくは、電気ワイヤが約1以上の厚さ比を有してもよい。すなわち、第1のリターン導体及び第2のリターン導体はそれぞれ厚さT
Gを有し、第1の接地導体及び第2の接地導体はそれぞれ厚さT
Nを有し、帯電可能導体は厚さT
Hを有して、厚さの比R=(T
G+T
N)/T
Hは約1.00以上であってもよい(たとえば、好ましくは、Rが最大であってもよい)。
【0029】
本発明の別の態様は、少なくとも1つの帯電可能導体と、少なくとも1つの帯電可能導体の周りに形成された第1の絶縁層と、第1の絶縁層の周りに形成されたリターン導体であって、少なくとも1つの帯電可能導体がリターン導体によって少なくとも実質的に封じ込められるようになっている、リターン導体と、リターン導体の周りに形成された第2の絶縁層とを備える電気ワイヤを含む。電気ワイヤは、第2の絶縁層の周りに形成された接地導体と、接地導体の周りに形成された第3の絶縁層とをさらに備えてもよい。
【0030】
電気ワイヤのこの態様は、たとえば、実質的に曲線状の断面幾何形状及び実質的に直線状の断面幾何形状の一方を有する導体(たとえば、帯電可能導体、リターン導体、及び接地導体)を有するワイヤを備えてもよく、実質的に平行平面(parallel planes)に形成してもよい。たとえば、電気ワイヤは、円形状又は楕円形状の断面を有してもよい。すなわち、帯電可能導体、リターン導体、及び接地導体は、平行な長手方向軸に(たとえば、同軸に)配列された実質的に円形状の導体(たとえば、円形状の断面を有する)を備えてもよく、又は、帯電可能導体、リターン導体、及び接地導体は、実質的に楕円形状の導体を(たとえば、同じ空間配置で)備えてもよい。
【0031】
本発明の別の態様は、電気ワイヤを作製する方法であって、少なくとも1つの帯電可能導体を形成することと、少なくとも1つの帯電可能導体の対向する側に第1のリターン導体及び第2のリターン導体を形成することであって、少なくとも1つの帯電可能導体がリターン導体によって少なくとも実質的に封じ込められる、第1のリターン導体及び第2のリターン導体を形成することとを含む。
【0032】
本発明の別の態様は、電気ワイヤを備えた電流送出システムを含む。さらに、本発明の別の態様は、電気ワイヤを備えた電気信号伝送システムである。
【0033】
本発明の独特且つ新規な特徴により、本発明は、電気ワイヤ及び電気ワイヤを作製する方法を提供し、これにより、容易に作製される安全で使いやすい電気ワイヤを提供することができる。
【0034】
上述の、また、他の目的、態様、及び利点は、図面を参照した、本発明の例示的な実施形態の以下の詳細な説明から、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図2A】本発明の例示的な実施形態による電気ワイヤ200の一態様を示す図である。
【
図2B】本発明の例示的な実施形態による電気ワイヤ200の一態様を示す図である。
【
図2C】本発明の例示的な実施形態による電気ワイヤ200の一態様を示す図である。
【
図2D】本発明の例示的な実施形態による電気ワイヤ200の一態様を示す図である。
【
図2E】本発明の例示的な実施形態による電気ワイヤ200の一態様を示す図である。
【
図2F】本発明の例示的な実施形態による電気ワイヤ200の一態様を示す図である。
【
図3A】本発明の例示的な実施形態による電気ワイヤ200の1つの可能な導体構成を示す図である。
【
図3B】本発明の例示的な実施形態による電気ワイヤ200の1つの可能な導体構成を示す図である。
【
図3C】本発明の例示的な実施形態による電気ワイヤ200の1つの可能な導体構成を示す図である。
【
図3D】本発明の例示的な実施形態による電気ワイヤ200の1つの可能な導体構成を示す図である。
【
図3E】本発明の例示的な実施形態による電気ワイヤ200の1つの可能な導体構成を示す図である。
【
図3F】本発明の例示的な実施形態による電気ワイヤ200の1つの可能な導体構成を示す図である。
【
図3G】本発明の例示的な実施形態による電気ワイヤ200の1つの可能な導体構成を示す図である。
【
図3H】本発明の例示的な実施形態による電気ワイヤ200の1つの可能な導体構成を示す図である。
【
図3I】本発明の例示的な実施形態による電気ワイヤ200の1つの可能な導体構成を示す図である。
【
図3J】本発明の例示的な実施形態による電気ワイヤ200の1つの可能な導体構成を示す図である。
【
図3K】本発明の例示的な実施形態による電気ワイヤ200の1つの可能な導体構成を示す図である。
【
図3L】本発明の例示的な実施形態による電気ワイヤ200の1つの可能な導体構成を示す図である。
【
図3M】本発明の例示的な実施形態による電気ワイヤ200の1つの可能な導体構成を示す図である。
【
図3N】本発明の例示的な実施形態による電気ワイヤ200の1つの可能な導体構成を示す図である。
【
図3O】本発明の例示的な実施形態による電気ワイヤ200の1つの可能な導体構成を示す図である。
【
図3P】本発明の例示的な実施形態による電気ワイヤ200の1つの可能な導体構成を示す図である。
【
図3Q】本発明の例示的な実施形態による電気ワイヤ200の1つの可能な導体構成を示す図である。
【
図3R】本発明の例示的な実施形態による電気ワイヤ200の1つの可能な導体構成を示す図である。
【
図3S】本発明の例示的な実施形態による電気ワイヤ200の1つの可能な導体構成を示す図である。
【
図3T】本発明の例示的な実施形態による電気ワイヤ200の1つの可能な導体構成を示す図である。
【
図3U】本発明の例示的な実施形態による電気ワイヤ200の1つの可能な導体構成を示す図である。
【
図3V】本発明の例示的な実施形態による電気ワイヤ200の1つの可能な導体構成を示す図である。
【
図3W】本発明の例示的な実施形態による電気ワイヤ200の1つの可能な導体構成を示す図である。
【
図4A】本発明の例示的な実施形態によるホットゾーン295を有する電気ワイヤ200の態様を示す図である。
【
図4B】本発明の例示的な実施形態によるホットゾーン295を有する電気ワイヤ200の態様を示す図である。
【
図4C】本発明の例示的な実施形態によるホットゾーン295を有する電気ワイヤ200の態様を示す図である。
【
図5】本発明の例示的な実施形態による電気ワイヤ200の別の態様を示す図である。
【
図6】本発明の例示的な実施形態による電気ワイヤ200用の可能な終端構成を示す図である。
【
図7】等価容量性回路と共に一連の静電容量を形成するとみなすことのできる本発明の例示的な実施形態による電気ワイヤを示す図である。
【
図8】本発明の例示的な態様による、一般的な2つの平板コンデンサの概略図である。
【
図9】本発明の例示的な態様による、一般的な4つの平板コンデンサの概略図である。
【
図10】本発明の例示的な態様による、一般的な3つの平板コンデンサの概略図である。
【
図11】本発明の例示的な態様による、容量的に結合した電流を電気ワイヤ内で相殺することのできる方法を示す図である。
【
図12】本発明の例示的な態様による、容量的に結合した電流を電気ワイヤ内で相殺することのできる方法を示す図である。
【
図13】本発明の例示的な態様による、電気ワイヤを使用して接地ループ連続性を検出する例示的な構成の概略図である。
【
図14】本発明の例示的な態様による、分割接地送信を提供する概念図である。
【
図15】本発明の例示的な態様による電気ワイヤを作製する方法1500を示す図である。
【
図16】本発明の例示的な態様による電気ワイヤ200の例示的な構成を示す図である。
【
図17】本発明の例示的な態様による電気ワイヤ200の例示的な構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
[発明の例示的な実施形態の詳細な説明]
ここで、図面、より詳細には、
図2A〜
図17を参照すると、本発明は、電気ワイヤ200と、電気ワイヤを作製する方法1500とを含む。
図2Aに示されるように、本発明の例示的な実施形態は、少なくとも1つの帯電可能導体210と、少なくとも1つの帯電可能導体210の対向する側にそれぞれ形成された第1のリターン導体及び第2のリターン導体221であって、少なくとも1つの帯電可能導体が第1のリターン導体及び第2のリターン導体221によって少なくとも実質的に封じ込められる、第1のリターン導体及び第2のリターン導体221とを備える電気ワイヤ200を対象とする。電気ワイヤ200はまた、第1の絶縁層215及び第2の絶縁層225を備えてもよい。
【0037】
特に述べない限り、本発明の、また、本明細書で説明される層(たとえば、導体、絶縁層等)の任意の層は、複数の層で形成してもよいことに留意すべきである。したがって、たとえば、絶縁層215は少なくとも1つの絶縁層215として解釈すべきであり、帯電可能導体は少なくとも1つの(たとえば、複数の)帯電可能導体を意味すると解釈すべきであり、その他も同様である。
【0038】
電気ワイヤは、基本的に制限の無い範囲の電圧用途(たとえば、0V〜240V及びそれ以上)に使用してもよい。たとえば、電気ワイヤは、クラス1又はクラス2の能力及び他の低電圧/電流能力を含んでもよく、120V交流電圧及び240V交流電圧のような商業用のユーティリティ電圧に使用してもよく、クラス1若しくはクラス2又はこれらの商業用の電圧以外の他の用途に使用してもよい。
【0039】
図2Bに示されるように、電気ワイヤ200は、長手(たとえば、縦)方向L及び横(たとえば、幅)方向Wを有してもよい。これらの方向はまた、電気ワイヤの水平寸法と呼んでもよい。電気ワイヤはさらに、垂直寸法と呼んでもよい厚さ(たとえば、積重ねた層の全ての合計厚さ)を有するものとみなしてもよい。
【0040】
電気ワイヤ200はまた、長手方向の電気ワイヤ200の端部に形成された端子部分(たとえば、終端)(たとえば、
図2Bには図示しない)を備えてもよい。たとえば、電気ワイヤ200の一端(たとえば、端子部分)は、供給源モジュール(たとえば、電力源、音声/データ伝送源等)に接続してもよく、他端(たとえば、端子部分)は、受け側モジュール(たとえば、スイッチ、コンセント、電子装置等)に接続してもよい。本発明は、任意の特定の形態の終端(たとえば、電流源、アース等)を必ずしも備えなくてもよく、2つの終端の間に形成されたワイヤの長手部分を含んでもよいことに留意すべきである。
【0041】
さらに示されるように、第1のリターン導体及び第2のリターン導体221は、少なくとも1つの帯電可能導体が第1のリターン導体及び第2のリターン導体によって少なくとも実質的に封じ込められる(たとえば、包まれる、囲まれる、収容される)ように形成される。「実質的に封じ込められる」ことによって、全ての実用的な目的で、帯電可能導体210は、リターン導体221の一方に最初に接触しなければ、異物(たとえば、釘、ねじ、ホッチキス等)と接触することができないことを意味する。「実質的に封じ込められる」という語句は、リターン導体221が帯電可能導体を完全に囲むことを必ずしも意味するものではない(こうした設計は可能であるが)。その代わりに、リターン導体と帯電可能導体との間の任意の距離(たとえば、帯電可能導体とリターン導体との間の絶縁層の厚さ)は、こうした異物が、リターン導体に接触しなければ、リターン導体と帯電可能導体との間をなかなか進むことができないほど小さい(たとえば、約0.762mm(0.030インチ)以下)ことを意味する。
【0042】
たとえば、
図2Bに示されるように、電気ワイヤ200は、積重ね配置を有する層(たとえば、実質的に平坦な層)に形成してもよい。これらの層の少なくとも一部(たとえば、リターン導体221、絶縁層215,225)は、電気ワイヤ200の長手方向縁部Tに沿って、重ね合わせてもよい(たとえば、圧着する、接合する等により嵌め合わせてもよい)。
【0043】
リターン導体221間に距離Sを残してもよいことに留意することが重要である。すなわち、帯電可能導体210は、リターン導体221によって完全に封じ込められる必要はない。本発明者らは、リターン導体と帯電可能導体との間の任意の距離(たとえば、帯電可能導体とリターン導体との間の絶縁層の厚さ)が十分に小さい(たとえば、約0.762mm(0.030インチ)以下)限り、物体はおそらく電気ワイヤ200に貫入することができず、リターン導体221に最初に接触しなければ、物体は帯電可能導体210に接触することができないと判断した。
【0044】
さらに、帯電可能導体は、電気ワイヤの長手方向部分に沿って、少なくとも「実質的に封じ込められている」。すなわち、電気ワイヤ200の端子部分において、帯電可能導体は、装置(たとえば、供給源又は受け側モジュール)へ接続するために、露出しなくてもよいが封じ込まれなくてもよい。
【0045】
また、留意すべきこととして、「帯電可能な」という語句は、供給源又は電流に接続し、電流又は電気信号(たとえば、交流電源若しくは直流電源、又は音声若しくはデータ伝送信号のような電気通信信号)を伝達する能力(たとえば、目的)を有することを意味することを意図している。帯電可能導体は、「非リターン導体」と呼んでもよい。帯電可能導体はまた、「熱導体」と呼んでもよい。さらに、「リターン」という語句は、電流を戻す目的を有する(電流又は電源を負荷に送出する目的を有さない)ことを意味することを意図している。リターン導体はまた、接地された導体又は中性導体と呼んでもよい。
【0046】
特に、「帯電可能」導体は、本明細書で定義される「ホットゾーン」内の任意の導体とみなしてもよい。帯電可能導体(たとえば、ホットゾーン内の導体)は、動作時に「熱」導体であってもよいが、必ずしもそうでなくてもよい。たとえば、3方向スイッチの場合、帯電可能導体(たとえば、「ホットゾーン」内の導体)は、ある条件では熱導体としてふるまうが、別の条件では接地された導体としてふるまう。
【0047】
さらに、「接地」という語句は、「地面(earth ground)」に接続する能力又は目的を有することを意味することを意図している。接地された導体はまた、単に「接地導体」と呼んでもよい。接地導体は、接地導体上に任意のリターン電流を有することを意図していない。さらに、「導体」という語句は、電流を伝達することが可能な導電性媒体を意味するものと定義される。
【0048】
図2C及び
図2Dは、本発明の別の例示的な実施形態を示している。
図2Cに示される例示的な態様では、電気ワイヤ200は、帯電可能である少なくとも1つの第1の導体210と、少なくとも1つのリターン導体221と、少なくとも1つの接地導体222とを備えている。
【0049】
この態様では、電気ワイヤ200はまた、第1の絶縁層215と、第2の絶縁層225と、第3の絶縁層230とを備えてもよい。
図2Cに示されるように、第1の絶縁層215は、少なくとも1つの帯電可能導体210と少なくとも1つのリターン導体221との間に形成してもよく、第2の絶縁層225は、少なくとも1つのリターン導体221と少なくとも1つの接地導体222との間に形成してもよく、第3の絶縁層230は、少なくとも1つの接地導体222上に形成してもよい。
【0050】
図2Dは、電気ワイヤ200の例示的な態様の分解組立図を示す。
図2Dに示されるように、電気ワイヤ200の導体は、積重ね配置を有してもよい。電気ワイヤ200はまた、電気ワイヤ内で隣接する絶縁層と導体とを接合する接着剤290を含んでもよい。
【0051】
図面は、例示的に示すことを意図していることに留意すべきである。本発明の実際の電気ワイヤでは、導体、絶縁物、及び接着成分の間に、目に見える間隔(たとえば、
図2Dの白い領域)は存在しなくてもよい。導体、絶縁物、及び接着成分については、以下でさらに述べる。
【0052】
図2E及び
図2Fは、電気ワイヤ200のさらなる例示的な態様を示している。たとえば、
図2Eの例示的な態様では、帯電可能導体210、リターン導体221、接地導体222は、実質的に円形状の(たとえば、同軸状に配列した)導体でもよい。
図2Fの態様では、帯電可能導体210、リターン導体221、接地導体222は、実質的に楕円形状の導体でもよい。
【0053】
一般に、本発明の電気ワイヤ(たとえば、保護層状のワイヤ)は、種々の方法で、かつ、種々の位置に適用することのできる代替を提供すると共に、他の全ての電気配線システムについてのパラダイムシフトを示している。電気ワイヤは、平行な長手方向軸を有する導体(たとえば、曲線断面を有する導体)を有することのできる保護層状のワイヤを備えてもよく、又は、電気ワイヤは、それぞれの導体が実質的に平行平面(たとえば、平行軸)を有するように、実質的に積重ねられてもよい。しかしながら、導体断面は、必ずしも一致する(たとえば、同心である)か、又は、同軸であるとは限らない。
【0054】
たとえば、一つの態様では、内部(熱)導体は、絶縁体と、次に中間(中性)導体と、第2の絶縁体と、次に外側(接地)導体と、そして外側絶縁体とによって囲まれるか、又は、境界を付けられている。
【0055】
電気ワイヤの例示的な実施形態は、円(たとえば、同心円)、楕円、長円のような実質的に曲線幾何形状から平坦な(たとえば、線形状又は直線状の)層までの範囲の断面形状を有することができる。同心フォーマット(たとえば、
図2E)(たとえば、主軸と副軸とがほぼ同じ)は、比較的小さい表面積を有する最も内側の(たとえば、熱/帯電可能)導体に関して対称である。楕円又は長円フォーマット(たとえば、
図2F)(たとえば、主軸と副軸とが等しくない)は、比較的平坦な最も内側の導体を支持する。平坦フォーマット(たとえば、
図2B〜
図2D)(主軸=1、副軸=0)は、全ての平坦な導体と絶縁体と(たとえば、複数平面の平坦な導体ワイヤ)を支持する。
【0056】
電気ワイヤの例示的な実施形態は、安全性、応用方法(application methodology)、コスト、及び製造の容易さに関する種々の利点を提供することができる。同心及び楕円フォーマットは、非常に優れた安全性態様(たとえば、貫入の危険が非常に低い)を有することができる。一方、平坦フォーマットは、各導体の表面積が大きいために、非常に優れた電流伝達能力を有し、どんな貫入の場合にも、任意の安全切断装置(safety disconnect device)(たとえば、ブレーカ、GFCI等)がおそらく作動することになるであろう。さらに、電気ワイヤ(たとえば、保護層状のワイヤ)の使用は、安全性、電気的干渉遮蔽、及び可燃性を含む複数の観点から利点がある。
【0057】
感電死のリスクに関して、必然的な問題は、釘、ねじ、ドリルビット等のような物体による、帯電導体(たとえば、帯電可能導体)の貫入に集中する。従来の壁内及び天井内配線は、上述した物体のいずれかによる貫入の可能性があり、結果として感電死の可能性がある。
【0058】
本発明の電気ワイヤは表面取り付けされてもよいが(たとえば、壁又は天井又はカーペットの下のような床の上)、貫入物体が帯電可能(たとえば、熱/最も内側の)導体と接触する前に少なくとも1つの非帯電可能導体(たとえば、リターン導体及び/又は接地導体)を最初に通過することを確保することによって、その電気ワイヤは従来の電気ワイヤより明瞭な利点を有する。したがって、貫入動作が進むにつれて、接地導体及び中性導体を通して、熱導体上に大電流が生成されて、回路遮断器が迅速に作動する。
【0059】
特に、電気ワイヤ(たとえば、積重ね電気ワイヤ)のこの貫入動力学解決策(penetration dynamics solution)に関して、貫入物体の帯電の可能性を減らすために、帯電可能導体(たとえば、熱導体)の導体厚さは、外側層(たとえば、接地導体とリターン導体)の合計厚さに対して小さく(たとえば、できる限り小さく)なければならない。試験結果によって、1.00の良好な層の厚さ比Rが実証された。ここで、R=(T
G+T
N)/T
H=1.00であり、T
G、T
N、及びT
Hはそれぞれ、接地導体、被接地導体、及び帯電可能導体の導体厚さであり、Rは層厚さ比である。たとえば、1つの例示的な実施形態では、接地導体及びリターン導体の厚さは0.0254mm(0.001インチ)であり、帯電可能導体の厚さは0.0508mm(0.002インチ)であり、比R=(T
G+T
N)/T
H=(0.0254mm(0.001インチ)+0.0254mm(0.001インチ))/0.0508mm(0.002インチ)=1.00であった。
【0060】
さらに、電気ワイヤの貫入動力学において、対向する被接地層及び接地層はまた、比Rに有利に寄与することができ、より安全な状況をもたらす。釘のような導電性物体による貫入中に、この比Rが大きいほど、電気ワイヤはより安全であることが示された。
【0061】
短絡中、電気ワイヤは、供給源から貫入点までの電圧分割器の役割を果たすことができる。層厚さ比は、内部から貫入物体までに印加される電圧の計量比倍率変更(ratio-metric scaling)を生成する。したがって、より安全な条件が、釘等における低電圧から生じる。
【0062】
貫入中、作動の確率を高めると共に安全装置(たとえば、回路遮断器、回路断続器(circuit interrupter)(たとえば、GFCI)、又は他の安全切断装置)の作動時間を減らすために、外側(たとえば、接地導体及びリターン導体)層の導体厚さは、貫入点において確実な短絡を生じるのに実質的に十分でなければならない。短絡は、安全装置が最も速い応答時間で作動する大電流をもたらさなければならない。これは、時間に基づいてより安全な条件をもたらす。低電圧と短時間の組み合わせは、いずれかの条件よりも大幅に安全な条件を生じる。
【0063】
貫入点において、安全装置が電源から取り外された後、全ての層が比較的低抵抗の関係のままであると考えることができる。これは、貫入物体の存在及び/又は種々の層の絶縁除去損傷(insulation displacement damage)のためである。さらに、貫入の引火点によって、貫入の周辺部に多少の融合(melded)又は融解(fused)領域を生じる場合がある。損傷領域内に電力を繰り返し供給する場合、周辺部のサイズは、(たとえば、特に、貫入物体が取り除かれた場合)増加する場合があるが、リセットされると安全装置の再起動を繰り返すのに十分な抵抗が残るであろう。
【0064】
損傷領域内に電力を繰り返し供給することを回避する方法は、電力を電気ワイヤに供給する前に、接地導体への実質的に短いリターンを検出することのできる能動安全装置(Active Safety Device)(ASD)内の回路を有することであると思われる。この特別能力(feature capability)は、電気ワイヤの設計によって支持される。
【0065】
したがって、本発明の電気ワイヤ(たとえば、保護層状のワイヤ)は、回路遮断器又はヒューズに関して本来的に安全であると考えることができる。さらに、電気ワイヤが、安全装置(たとえば、回路遮断器、回路断続器(たとえば、接地故障回路断続器(GFCI))、又は他の安全切断装置)と共に使用されると、安全性をさらに改善することができる。
【0066】
本発明の例示的な実施形態はまた、電気ワイヤが熱導体と外部世界との間に(任意の方向に)3層の絶縁物を含むことができるという点で、本発明の例示的実施形態(たとえば、保護層状の電気ワイヤ)によって、偶発的な接触及び起こりうる感電死をもたらす絶縁の摩滅がよりよく解決されるように、他の電気的な安全性の問題に関して利点を提供する。これは一般に、現代の二重絶縁方式の従来ワイヤに対して、「三重絶縁方式」と呼ばれる。
【0067】
電気的遮蔽に関して、本発明の電気ワイヤ(たとえば、保護層状の電気ワイヤ)の外側接地層は遮蔽を提供することができ、これにより、電力伝達信号又は負荷によって生成される電気的ノイズは、ケーブルを通過して放送信号と干渉することができず、又はケーブルを通過してオーディオ機器において「ハム」を生じることができない。
【0068】
さらに、可燃性に関して、本発明の電気ワイヤは、従来の電気ワイヤ及び配線システムに比べていくつかの利点を提供する。特に、本発明の電気ワイヤは、熱放散のために比較的大きな表面積を提供することができる。したがって、外側導体(たとえば、リターン導体及び接地導体)は、外部供給源から加熱される薄膜絶縁物から熱を容易に伝導させることができ、熱によって引き起こされる火災のリスクが減る。さらに、熱伝達速度は、燃焼速度を超えることができ、したがって、局所的な燃焼領域を消失する。
【0069】
さらなる「保護層」を、本発明の電気ワイヤに付加することができる。たとえば、衝撃、感電死、又は火災の可能性をさらに減らすために、電気ワイヤ(たとえば、保護層状のワイヤ)及び回路遮断器の構成に加え、GFCI、アーク故障検出器、及び特別に開発された「能動安全装置」を備えてもよく、電気ワイヤと共に使用してもよい。
【0070】
さらに、本発明の帯電可能導体はリターン導体と接地導体との間(たとえば、内部)に設けることができるため、リターン導体と接地導体と絶縁層とは、帯電可能導体の磨耗防護を提供することができる。すなわち、帯電可能導体上に形成された層(たとえば、絶縁層、リターン導体、及び接地導体)は、電気ワイヤが取り付けられる壁(又は天井)が紙やすり又は他の任意の研磨剤で磨かれる時のように、帯電可能導体の磨耗を防止することができる。
【0071】
さらに、本発明の電気ワイヤは、ユーザが部屋の壁又は天井の任意の領域に電気をもたらすことを可能にする、平坦で柔軟性のあるワイヤを備えてもよい。電気ワイヤは非常に薄くてもよく(たとえば、1.27mm(0.050インチ)以下の合計厚さを有する)、壁、天井、又は床の表面に(たとえば、接着剤を使用して)取り付けることができ、これにより、費用のかかる内壁、天井、又は床の再配線の必要性をなくす。電気ワイヤはまた、表面の残りに合うように、塗装されるか、又は紙を張られてもよい。
【0072】
本発明の電気ワイヤの導体はそれぞれ、約0.01016mm(0.0004インチ)〜約0.508mm(0.020インチ)の厚さ、好ましくは、約0.0254mm(0.001インチ)以下の厚さである1つ又は複数の導電層(たとえば、導電性の銅、アルミニウム、又は他の導電性材料層)を含んでもよい。
【0073】
導体は、種々の材料で形成してもよく、種々のパターン、寸法、及び間隔を有してもよい。たとえば、導体は、金属(たとえば、銅、アルミニウム、銀、他の導電性材料等)、ポリシリコン、セラミック材料、炭素繊維、又は導電性インクのような導電性材料で形成してもよい。さらに、導体は非常に薄い。
【0074】
導体の厚さは、その長さ及び幅にわたって一定であるべきであり、これにより、どんな抵抗「ホットスポット」もなくす。特定の用途の電流伝達仕様は、3つの方法のいずれかを、個々に、又は組み合わせて達成してもよい。第1に、導体の幅が変わってもよい。第2に、各導体について、付加的な薄い導電層(たとえば、銅、アルミニウム、又は他の導電性材料)を積重ねてもよい。第3に、導体の厚さを増加してもよい。
【0075】
たとえば、1つの例示的な負荷及び電流の供給では、各導体は約2つの導電層(たとえば、銅、アルミニウム、又は他の導電性材料層)を含んでもよい。しかしながら、以下で開示する実施形態のそれぞれについて、より多いか、又は、より少ない層を利用することは、本発明の範囲内にあることが理解される。
【0076】
電気ワイヤの絶縁層は、種々の材料で形成してもよい。たとえば、絶縁層は、高分子材料(たとえば、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム等)を含んでもよい。さらに、絶縁層は、たとえば、0.00635mm(0.00025インチ)〜0.762mm(0.030インチ)の範囲の厚さを有してもよい。
【0077】
導体間に形成された絶縁層はまた、導電層を配向させることができる。さらに、絶縁材料は、単独で、又は内部接着剤と組み合わせて使用してもよく、導体を分離し、異なる目的の導体間において安全な距離を維持する(たとえば、接地導体対リターン導体又は帯電可能導体(たとえば、熱導体))。さらに、電気ワイヤは、(たとえば、天井又は壁に取り付けられる時に)光吸蔵(optical occlusion)を容易にするために、テーパ付き縁部を有してもよい(たとえば、横幅方向にテーパが付けられる)。たとえば、層(たとえば、導体層及び/又は絶縁層)は、そのようなテーパ付き縁部を容易にするために異なる幅を有してもよい。
【0078】
さらなる絶縁材料は、本発明の範囲内にあると考えられると共に、絶縁物が表面に対して適合性があり、塗装可能で、接合可能である限り、おそらく使用されることが理解される。絶縁材料はまた、隠蔽(concealing)(たとえば、接続)化合物と親和性があり、UV耐性があり、絶縁材料が固着される導体及び表面の特性と同じ熱膨張及び収縮特性を有するべきである。
【0079】
他の望ましい特性は、絶縁材料が作製プロセスにおいて加えられた引張り力に耐えて、保管状況下で収縮(retract)又は緩和(relax)せず、使用が終了した時に絶縁材料が除去可能であるべきことである。任意の磨耗、割れ、切断、穿孔、又は他の任意の絶縁損傷(たとえば、危険な露出を身体的な障害又は損傷にさせることになる損傷、又は構造体に対するように物理的又は構造上の損傷)は、電子的故障検出手段を使用して安全になり、電子的故障検出手段は、ある時間枠内で、有害であるか、又は損傷を与える可能性のある電流をユーザから切り離して、永続的な故障を防止することになる。
【0080】
さらに、接着剤290(たとえば、
図2D)は、絶縁層及び導体に接合することができなければならない。たとえば、接着テープ、液体接着剤、熱接着剤、圧力に敏感な接着剤又はUVに敏感な接着剤、あるいは、任意のこうした接着剤又は接着方法の組み合わせを、内部接着剤として使用してもよい。内部接着性材料はまた、導電層のグループを分離するように機能し、異なる目的の導体間の安全な誘電体距離を維持することができる。
【0081】
外部接着剤層はまた、電気ワイヤを所望の表面に固着させるために、電気ワイヤの最も外側の絶縁層上に形成してもよい。外部接着剤層は、たとえば、両面テープであってもよく、一方の面が電気ワイヤの背面に固定されると共に他方の面が壁(若しくは天井)又は表面に固定される。あるいは、化学接着剤は、個別に塗布してもよく、また電気ワイヤが固着される絶縁層及び所望の表面の両方に対する良好な接合品質を有する任意の接着剤から構成してもよい。絶縁層はまた、いずれの接着剤を添加することなく、機械的変形及び熱融着によって接合してもよい。
【0082】
再び図面を参照すると、
図3A〜
図3Wは、本発明の例示的な態様による電気ワイヤ200の可能な構成の断面図を示している(簡略化のために、
図3A〜
図3Wにおいて、絶縁層は識別されない)。
【0083】
たとえば、
図3A及び
図3Mの電気ワイヤはそれぞれ、
図2B及び
図2Cのワイヤと同じである。
図3B、
図3E、及び
図3Nに示されるように、導体は、互い違いの配置を有してもよく、(たとえば、横方向に)不均一な幅を含んでもよい。
【0084】
図3Cに示されるように、導体(たとえば、熱導体210)は、それ自体を折り畳んでもよい。さらに、
図3Dに示されるように、別の導体(たとえば、リターン導体221)は、折り畳まれた導体(たとえば、帯電可能導体210)を覆って折り畳まれてもよい。
【0085】
図3Fに示されるように、導体は、ある側部上である方法によって、(たとえば、熱的に、化学的に、又は機械的に)処理するか、又は接合してもよい。たとえば、
図3Fにおいて、上方の接地導体222は、下方の接地導体222に(たとえば、縫い合わせ、シーム溶接、化学接合、又は他の機械的手段によって)接合される。これは、電気ワイヤの長手方向縁部に沿ってより高い保護性のある障壁を提供するのに使用してもよく、物体がそのような長手方向縁部から電気ワイヤに貫入して帯電可能導体に接触することをより難しくさせる。
【0086】
図3G〜
図3Iは、帯電可能導体210が円い形状を有する一方でリターン導体221及び接地導体222が波形又は実質的に平坦であるワイヤを示している。さらに、
図3J〜
図3Lは、2つ以上の平面に形成されるように導体を曲げることのできるワイヤを示している。たとえば、
図3Jにおいて、リターン導体221は、帯電可能導体210を実質的に囲むための湾曲構成を有している。
【0087】
図3O及び
図3Sは、帯電可能導体210が実質的に長円(たとえば、楕円)形状を有する一方で他のリターン導体221、接地導体222が実質的に平坦又は湾曲することのできるワイヤを示している。
図3P〜
図3R及び
図3Tでは、導体のあるものが実質的に平坦であってもよく、導体の他のものがその平坦な導体の周り(たとえば、部分的な周り)に形成されてもよい。さらに、
図3U〜
図3Wに示されるように、導体(たとえば、
図3Uの帯電可能導体210)は、連結方法で互いの周りに湾曲してもよい。
【0088】
図4A〜
図4Cは、本発明による電気ワイヤの別の例示的な態様を示している。これらの図面は、本発明によって導入された重要な概念である「ホットゾーン」を記載している。特に、「ホットゾーン」は、リターン導体によって少なくとも「実質的に封じ込められた」ゾーンとみなしてもよい。
図4Aに示されるように、ホットゾーンは、電気ワイヤの用途に応じて、任意の水平及び垂直フォーマットに配列された層セグメントを含んでもよい。
【0089】
たとえば、
図4Aは、導体の配向についての一般的な場合の断面図を示している。簡略化のために、絶縁層(及び接着剤)が、
図4A〜
図4Cに示されていないことを留意すべきである。
【0090】
図4Aに示されるように、電気ワイヤ200は、ホットゾーン295の対向する側(たとえば、上又は下)に形成された接地導体222及びリターン導体221を備えてもよい。さらに、ホットゾーン295には、帯電可能導体の「M」個の垂直セグメント及び「N」個の水平セグメントが含まれる。より具体的には、ホットゾーン295は、セグメント(1,1)296からセグメント(1,M)297及びセグメント(N,1)298からセグメント(M,N)299を含むことができる。MとNは特に限定しないことに留意すべきである。
【0091】
さらに、本発明の例示的な態様による電気ワイヤの用途は、音声及びデータ通信信号のような電気通信信号の伝送を含んでもよい。たとえば、電気ワイヤを、電気ワイヤ(たとえば、電気ワイヤの一部分)が交流電力を提供するのに使用される電力線搬送通信(PLC)システムの一部として使用してもよく、また音声及び/又はデータ通信信号を伝送するネットワーク媒体として使用してもよい(たとえば、電気ワイヤの一部分が使用される)。したがって、電気ワイヤは、交流電気コンセントが存在する場合はいつでも、高速ネットワークアクセスポイントを提供するのに使用することができる。
【0092】
特に、電気ワイヤは、交流電源のゼロ交差に近接する時間(time proximity of zero-crossing)中に電気通信信号を伝送することができる。さらに、本発明に従ったRS485、HDTV等を含む電気ワイヤによって伝送される多くの異なるタイプ(たとえば、フォーマット)の通信信号が存在する可能性がある。
【0093】
たとえば、
図4Aに示されるように、電気ワイヤ200はまた、「ホットゾーン」によって他の所に供給される電力に加えて、電気信号(たとえば、通信信号)用に確保しておくことのできる部分450を備えてもよい。たとえば、この確保された部分450内の導体は、2002年5月28日に出願され、2003年12月4日に発行され、本出願に関して同一譲受人に譲渡され、参照により本明細書に援用される、マックカーディー(McCurdy)らの米国特許第6,688,912号明細書(不均一伝送線及びその伝送線を作成する方法(NON-UNIFORM TRANSMISSION LINE AND METHOD OF FABRICATING THE SAME))に開示されたもののようなパターニングされた導体を含んでもよい。さらに、電気ワイヤ200は、それぞれが同じか、又は異なるタイプ(たとえば、フォーマット)の通信信号を伝送するのに専用であってもよく、複数のそのような部分450を含んでもよい。
【0094】
本発明の例示的な態様による電気ワイヤは、任意の電流から独立して通信信号を伝送するのに使用してもよいことに留意すべきである。すなわち、帯電可能導体は、通信信号に完全に専用であるか、又は電源に完全に専用であってもよい。
【0095】
光の3方向切り換えの場合、リターン導体から帯電可能導体へ(又は、中性導体から熱導体へ)交互に切り換えられるホットゾーン内の2つの導体の必要性が存在する場合がある。
図4Bは、本発明によってこれを達成するための2つの可能な実施形態を示している。
【0096】
たとえば、第1の実施形態(左側)は、リターン導体221及び接地導体222を備えている。さらに、この実施形態は、ホットゾーン295内で実質的に同じ平面上にある2つの帯電可能導体210を備えている。第2の実施形態(右側)は、帯電可能導体が積重ね配置を有する以外は、第1の実施形態と同じである。
【0097】
第1の実施形態が厚さの小さい(たとえば、薄い)電気ワイヤを提供する一方で、第2の実施形態が幅の小さい(たとえば、狭い)電気ワイヤを提供することに留意すべきである。先に述べたように、電気ワイヤの例示的な実施形態は、基本的に制限のない範囲の電圧用途(たとえば、0V〜240V及びそれ以上)に使用してもよい。たとえば、電気ワイヤは、標準的な交流240Vのような2相電力を供給するのに使用することができる。
【0098】
さらに、
図4Cは、別の例示的な態様による電気ワイヤ200を示している。
図4Cに示されるように、電気ワイヤ200は「N」個の複数の水平な積重体460を含んでもよく、各積重体が「M」個の帯電可能導体210を有している。
【0099】
この態様は、たとえば、複数の分岐回路に使用してもよい。水平セグメントは、層の間と接地導体222の外側とに、共通絶縁体を共有してもよいことに留意すべきである。
【0100】
再び図面を参照すると、
図5は、本発明の電気ワイヤ200の別の例示的な態様を示している。(
図5の電気ワイヤが
図2Dの電気ワイヤと同じであることに留意されたい)。
図5に示されるように、電気ワイヤ200は、14AWG(たとえば、米国ワイヤゲージ)電気ワイヤを含んでもよい。たとえば、接着剤290が、図示されるように含まれてもよい。
【0101】
さらに、電気ワイヤ200は、ポリエステルで形成され、0.0254mm(0.001インチ)の厚さであり、完全に焼きなました絶縁層215、225、及び230を備えてもよい。電気ワイヤ200はまた、0.0254mm(0.001インチ)の厚さを有する、銅(又は、アルミニウム、又は他の導電性材料)CDA102又はCDA110で形成された帯電可能導体210、リターン導体221、及び接地導体222を備えている。
【0102】
図5から明らかなように、層の幅は変わる。たとえば、帯電可能導体210は41.15mm(1.620インチ)の幅を有する一方、リターン導体221及び接地導体222は44.45mm(1.750インチ)の幅を有している。絶縁層215は50.8mm(2.000インチ)の幅を有し、絶縁層225は57.15mm(2.250インチ)の幅を有し、絶縁層230は63.5mm(2.500インチ)の幅を有している。
【0103】
本発明の例示的な態様による電気ワイヤは、2つの端子部分の間に形成された長手方向部分を含んでもよい。
図6は、電気ワイヤ200についての可能な終端を示している。
【0104】
図6のライン側610は電力が発生するところであり、負荷側620は電力が送出されるところである。ライン側電力は、通常、一般的なコンセント又は他の供給源(たとえば、従来の供給源)によって発生してもよい。(たとえば、電気ワイヤのいずれかの端部における)終端技術は、はんだ付け、圧着(crimping)、表面接触、締め付け(clamping)、及び絶縁置換(insulation displacement)を含むことができる。
【0105】
ライン側の終端に関して、電力コードの末端(tail)を有するコンセント内に設置された雄型プラグは、ライン側終端ボックス615内で終端することができる。この場合、ライン側終端ボックスは、コンセント差し込み口近くの壁(又は天井)に取り付けてもよい。さらに、ライン側終端ボックスは、能動安全装置(ASD)に対する機械式インタフェースとしての「供給源モジュール」であることができ、プラグはコンセントに差し込まれる。さらに、ライン側終端ボックスは、コンセントの上方にあり、プラグをコンセントに差し込むことができる。
【0106】
負荷側の終端に関して、3つの「フライングヘッド(flying head)」のセット又は従来のワイヤのセットは、ユーザが必要に応じて(たとえば、壁掛け灯、天井ファン等に)所定の長さに切断して、終端にするために設けてもよい。さらに、小型プリント回路板上に搭載されると共にワイヤに取り付けられる端子ストリップは、ユーザにねじ端子を提供することができる。さらに、負荷側終端(受け側)ボックス625は、ユーザがプラグを差し込むためのコンセントを含むことができる。
【0107】
本発明の例示的な態様による電気ワイヤの別の態様は、それが静電容量の解決策を提供することができることである。すなわち、リターン導体に非常に接近し得る帯電可能導体から生じる静電容量は、任意の負荷電流と重ね合わさった無効電流を表す場合がある。この静電容量は、印加電圧(たとえば、交流又は直流)に基づいて充電される。リターン導体は帯電可能導体に対して低い電圧を有するため、非常にわずかな電荷が、リターン導体と接地導体との間に形成された任意のコンデンサ内に蓄積されることになる。
【0108】
特に、電気ワイヤ(たとえば、層状の平坦ワイヤ)は、
図7に示される等価回路(たとえば、容量性回路)とともに一連の静電容量(たとえば、コンデンサ)を形成するとみなすことができる。
図7に示されるように、帯電可能導体210、接地導体221、及び接地導体222を備える電気ワイヤ200は、コンデンサC1、C2A、及びC2Bを形成することができる。
【0109】
この場合、コンデンサC1は、帯電可能(たとえば、内部(熱))導体210に非常に接近したリターン導体221(たとえば、中性層)によって形成された平行平板コンデンサである。コンデンサC2は、非常に接近したリターン(たとえば、中性)導体221と接地導体222とによって形成されている。
【0110】
コンデンサC1とC2の影響に関して、コンデンサC1(C1A/C1B)によって、帯電可能導体(たとえば、平坦ワイヤの熱導体)210とリターン導体(たとえば、平坦ワイヤの中性導体)221との間に形成される誘電体(及び接着剤が無い場合に存在する任意の空気)を介して、両者の間に電流が流れる可能性があることを留意すべきである。したがって、空気の誘電定数が低い(s=1.0)ため、電気ワイヤ200(たとえば、平坦ワイヤ)の最終的な固定(たとえば、隠蔽化合物、壁紙、塗料等)の後に、層の間に閉じ込められたままになる任意の空気によって、静電容量が急激に減少する場合があることがわかる。電気ワイヤの長手方向(たとえば、縦方向)の距離が増加するにつれて、電気ワイヤ200(たとえば、交流平坦ワイヤ)にかなりの静電容量を生成することができ、したがって、比較的大きな電流を生成することができる。
【0111】
さらに、リターン(たとえば、中性)導体221と帯電可能(たとえば、熱)導体210上のコンデンサC1からの電流は、H−N CTに対する均衡した負荷電流を表し(たとえば、リターン電流から熱電流を引いた電流はゼロである)、したがって、ライン供給源GFCIの誤作動(false tripping)に関する問題となるとは考えられない。リターン導体及び帯電導体(たとえば、中性導体及び熱導体)上の容量性電流が問題となる場合、電流をゼロにするために、「相殺(cancellation)」回路を実施してもよい。
【0112】
さらに、電圧差が通常1ボルト未満であるため、コンデンサC2(C2A/C2B)によって、リターン(たとえば、中性)導体221と帯電可能(たとえば、熱)導体210(たとえば、平坦ワイヤの中性導体と平坦ワイヤの接地導体)との間にそれほど大きな電流が流れないであろう。さらに、先に述べたように、リターン導体及び帯電可能導体(たとえば、中性導体及び熱導体)上の容量性電流がやはり問題となる場合、電流をゼロにするために、「相殺」回路(たとえばインダクタンスを有する回路)を実施してもよい。
【0113】
再び図面を参照すると、コンデンサC1Aの静電容量値は、実際には、平行平板コンデンサモデルから導出してもよい。
図8〜
図10はそれぞれ、一般的な2つの平板コンデンサ、4つの平板コンデンサ、及び3つの平板コンデンサを示しており、Pはコンデンサの平板を特定し、Dはコンデンサ平板間の誘電体を特定している。
【0114】
平行平板コンデンサC(たとえば、静電容量計、Cメータによって表示される)は、C=εA/dで与えることができ、導体間の誘電体Dの誘電定数はε=ε
0・ε
Rとして与えられ、Aは平板コンデンサの面積であり、dは平板表面間の距離であり、ε
0は自由空間の誘電定数(たとえば、誘電率)であり、ε
Rは誘電材料の比誘電率である。
【0115】
したがって、
図8に示されるように、2つの平板コンデンサの場合、平行平板コンデンサの面積Aは、A=L・Wとして与えられ、Lは平板の長さであり、Wは平板の幅であり、
図9に示されるように、4つの平板コンデンサの場合、面積Aは、A=L・W・2として与えられる。
【0116】
図10は、各帯電可能(たとえば、内部)導体に対して短縮された遮蔽を有する電気ワイヤ200(たとえば、平坦電気ワイヤ)をエミュレートする3つの平板コンデンサの積重体の配線/構成を示している。
図10の構成は、
図9に示される構造体から1つの平板(たとえば、導体)と1つの誘電体セパレータ(たとえば、絶縁層)とをなくすことによって導出することができることに留意すべきである。
【0117】
さらに、
図10に示されるように、平板コンデンサの面積Aは、A=W・L・kとして与えられ、平板乗算定数kは実際には、平板の数(n)を2で割った数である。したがって、3つの平板コンデンサの場合、定数k=1.5である。
【0118】
したがって、電気ワイヤ(たとえば、積重ね平坦電気ワイヤ)の場合、帯電可能導体と2つの隣接するリターン導体(たとえば、層)との間に形成されたコンデンサの静電容量は、C=ε(W・L・1.5)/d、又は、C=1.5・W・L・ε/dとして与えられる。
【0119】
導体(たとえば、層)が必ずしも互いに完全に接触する状態にあるわけではないため、上記式を使用して計算された静電容量値は最悪の場合であることがわかることにさらに留意すべきである。接着剤が存在しない空気スペーサ及び間隙は、より大きな「d」の値を生じ、したがって、より小さな静電容量の値となる。この静電容量は、層間の表面接着の割合及び電気ワイヤ(たとえば、平坦ワイヤ)の外側表面に加えることのできる圧縮力の量に基づいて変わることができる。
【0120】
再び図面を参照すると、
図11〜
図12は、本発明の例示的な態様に従った電気ワイヤ内で、容量的に結合した電流をどのようにして相殺することができるかを示している。具体的に、
図11は、帯電可能導体210と2つのリターン導体221とを有する電気ワイヤ200が、能動安全装置(ASD)又は供給源モジュール1100で終端される場合を示している。
【0121】
この場合、容量的に結合した電流CCは、
図11で示されるように表すことができる。リターン導体(たとえば、中性導体)はそれほど帯電しない(たとえば、低い交流電圧)ため、遮蔽に結合する電流に対してほとんど影響を及ぼさない。しかしながら、帯電可能導体(たとえば、熱導体)210は、著しく帯電すると共に電気ワイヤ(たとえば、平坦ワイヤ)の長さ全体を通して容量性電流を接地導体221(たとえば、中性導体)に結合させている。
【0122】
図12は、容量性電流相殺図を示しており、相殺回路を使用して、静電容量に関して、帯電可能導体210及び接地導体(たとえば、熱導体及び中性導体)上で正味ゼロの電流がどのようにして生成されるかを示している。
図12に示されるように、相殺回路1200は、能動安全装置1100の一部として含まれてもよく、又は能動安全装置1100と共に使用してもよい。
【0123】
具体的に、相殺回路1200の適用後の電流I
Lは、I
L=I
N1+I
N2−I
Cによって与えられ、I
N1とI
N2はリターン導体221上の電流であり、I
Cは相殺電流である(たとえば、相殺回路によって提供される)。たとえば、I
Lは0mAであってもよい。
【0124】
本発明の例示的な実施形態による電気ワイヤの別の態様は、接地(たとえば、外側、アース)導体の「遮蔽」能力の双方向の性質である。たとえば、先に述べたように、少なくとも1つの接地層は、電力伝送信号及び負荷によって生成された電気的ノイズが、電気ワイヤから転送される/放出されることを防止する。さらに、接地導体によって提供された遮蔽は、外部で生成した電気的ノイズのリターン導体又は帯電可能導体上への侵入を妨げ、これも貴重な特徴である。
【0125】
同様に、接地層に関する安全性及び通信のために、電気ワイヤ(たとえば、積重ね配置)の2つ以上の接地導体222(たとえば、絶縁された(外側の)接地層)は、通信タイプの信号を、接地導体222の他の終端まで長手方向に送出し、受け側「モジュール」における配線された「ジャンパ(jumper)」を通して、長手方向に供給源まで戻る機会を提供する。これは、たとえば、「接地ループ連続性のチェック(ground loop continuity check)」を提供するために使用してもよい。
【0126】
したがって、電気ワイヤは、帯電可能導体又は帯電可能導体のセグメントを帯電させる前に、「能動安全装置」によって連続性のチェックをする能力を提供することができる。この特徴についての1つの実用的な用途は、電気技師が電気ワイヤの受け側の露出した端部を終端処理している間、安全を提供することである。
【0127】
図13は、電気ワイヤを使用して接地ループ連続性を検出する例示的な構成の概略図を提供している。
図13に示されるように、接地導体222と対向する接地導体222とは、供給源1310と受け側1320との間の閉ループの一部とみなしてもよい。
【0128】
電気ワイヤは、伝送用変流器(CT)及び検知用変流器(CT)を提供するような付加的な通信タスクに対応することができる。対向する接地導体222が検知用CTを介して信号リターンを検知しながら、交流ライン周波数より(たとえば、好ましくは)大きい周期信号を、接地導体222の一方に注入することができる。
【0129】
図14は、分割接地送信(split ground signaling)を提供する概念図を提供しており、電気ワイヤが供給源モジュール(たとえば、電流タップ)1410と受け側モジュール1420との間に配設され、送信及び受信電子機器によって処理された電気信号を送受信することができる。2つ以上のリターン導体222(たとえば、積重ね又は横方向(平面)配置の絶縁された(外側)接地層)は、さらに分割されるか、又は横方向に分離されて、分割導体の間で、長手方向で且つ差動的に通信タイプの信号を送出する機会を提供することができる。
【0130】
再び図面を参照すると、
図15は、本発明の例示的な態様による電気ワイヤを作製する方法1500を示している。方法1500は、少なくとも1つの帯電可能導体を形成すること(1510)と、少なくとも1つの帯電可能導体の対向する側に一対のリターン導体を形成すること(1520)であって、少なくとも1つの帯電可能導体がリターン導体によって少なくとも実質的に封じ込められるようにする、リターン導体を形成することとを含んでいる。
【0131】
特に、電気ワイヤの導体(たとえば、帯電可能導体、リターン導体、及び設置導体)は、実質的に導電性媒体で形成してもよく、たとえば、銅、アルミニウム、鋼、銀、金、プラチナ、ニッケル、錫、グラファイト、シリコン、これらのうちの任意のものを含む合金、導電性気体、金属、合金を含んでもよい。すなわち、導体は、電子を運ぶ時の効率に関係なく、電子を運ぶことのできる任意の材料を含んでもよい。「導体」における電子を運ぶ相対的な能力が「絶縁体」よりも実質的によい限り、これが当てはまる。
【0132】
さらに、絶縁層は、実質的に非導電性媒体(「絶縁体」)で形成してもよく、たとえば、有機、無機、複合、金属、炭素、均質、不均質、熱可塑性(たとえば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポロプロピレン、ポリ塩化ビニル(PVC))、熱硬化性、木材、紙、アノード形成、腐食層、又はその他の材料を含んでもよい。
【0133】
絶縁層は、導体ほど電気を比率計量的に(ratiometrically)伝導できない(たとえば、比例して低く)任意の材料で作製してもよい。(示唆された比率を決定する)絶縁層の目立った特徴は、絶縁層のサイズ、形状、及び絶縁強度が独立変数であり、結果として得られる従属変数は、絶縁特性の破壊のために、絶縁媒体を通して実質的な電流が流れる前の、上述した「導体」間の最大設計電圧である。
【0134】
実質的な電流は、通常、電気ワイヤの突発的な故障をもたらす可能性がある状況を作り出す。絶縁層は、電気ワイヤの一般的な用途又は意図された使用において、絶縁層(たとえば、実質的に非導電性の媒体)を通して、導体(たとえば、実質的に導電性の媒体)間の破壊が全く無いように設計すべきである。
【0135】
電気ワイヤは、導体と絶縁層(たとえば、実質的に導電性の媒体と実質的に非導電性の媒体(たとえば、積層材))とを層状にする(たとえば、積層する)ことによって形成してもよい。さらに、製造前の(pre-manufactured)材料を含む積層材は、バルク圧延(bulk rolling)を容易にする。
【0136】
ほとんどの電気ワイヤは、ヘリックスの形態で、丸いワイヤ束の軸の周りに平坦な絶縁体を巻くことによって作製される。同様に、ほとんどの個々のワイヤは、丸いワイヤの周りに押出し成形されたプラスチックPVC外装を有することによって絶縁される。
【0137】
しかしながら、本発明の例示的な態様による電気ワイヤは、所望の幅に分割された圧延シート又は圧延箔を含んでもよい。絶縁材料についても同じことが当てはまる。圧延技術によって処理されたこれらの導体及び絶縁体は、その後、異なる材料を連続送りプロセスで他の材料に接合することを可能にする接着剤でコーティングしてもよい。裁断(slitting)は、幾何形状構成に応じて、異なる材料の接合前後に行うことができる。たとえば、本発明の1つの好ましい実施形態では、絶縁体及び導体は、材料を接合する前に裁断される。
【0138】
さらに、
図16に示されるように、帯電可能導体210、リターン導体221、接地導体222は、絶縁層(たとえば、個々の絶縁物1620及び/又は絶縁物のグループ1630)によって密閉されるか、又はカプセル化され、接着剤1650は、絶縁物層1620,1630間に形成してもよい。絶縁体は、導体に接合すると共に絶縁体が絶縁体に接合するように導体の横幅を覆っている。絶縁材料間の相互接合は、さらに強く且つ永続的な接合を作り出し、さらに、全体の断面周囲の周りで導体をカプセル化している。
【0139】
任意の数の絶縁体が、導体間に存在してもよい。個々の導体についての絶縁体は、互いに並んで(背中合わせに)終わってもよい。または、通常、結線化(connectorization)の要求と関係のある目的で、絶縁体の多層結合体が存在することができる。
【0140】
さらに、
図17に示されるように、個々の絶縁物1720のグループで形成された複数絶縁物グループ1710(たとえば、絶縁積層材)は、任意の2つの帯電可能導体210、リターン導体221、接地導体222の間に配置してもよい。絶縁物のグループの層1730はまた、複数絶縁物グループ1710及び帯電可能導体210、リターン導体221、接地導体222を含む構造体の周りに形成してもよい。
【0141】
導体の層が絶縁材料の層によって分離されると、絶縁材料内に欠陥が存在する可能性が存在する。1つのこうした欠陥は、積層材の場合、絶縁材料の開口(たとえば、ピンホール開口)である。その開口は、意図された絶縁が生じることを妨げると共に積層材開口の領域に導電性経路をもたらすことができる。任意の2つの導体間に、2つの積層材又は2つのシート又は2つのリボン(実質的に平坦な絶縁層であればどんな名前でもよい)を配置することによって、2つの開口(たとえば、欠陥)を、一致する位置に配置する統計的な可能性は、実質的に最小になる。
【0142】
(たとえば、
図16及び17に示される)個々に絶縁された導体は、絶縁材料を導体と実質的に平行平面に配置し、次に、固定のために絶縁材料を導体に接合することによって形成してもよい。導体は、絶縁物のグループ1630,1730によってまとめてもよい。個々に絶縁された導体は、可能な接着剤1650又は代替の結合方法によって接合してもよい。これによって、本発明は、終端のために接着剤又は層状構成が個々の導体の剥離及び折り畳みを可能にする絶縁ワイヤを、提供することが可能になる。
【0143】
本発明の独特且つ新規な特徴に関して、本発明は、電気ワイヤ及び電気ワイヤを作製する方法を提供し、電気ワイヤは、外部から損傷を受けると、従来の電気ワイヤと比べて、身体的な障害又は損傷、あるいは、特性上の(たとえば、構造上の)損傷に寄与するリスクが減る。
【0144】
本発明は、1つ以上の実施形態によって述べてきたが、本発明は添付の特許請求の範囲の精神及び範囲内で変更して実施できることを、当業者は認識するであろう。特に、本明細書の図面は例示することを意図しており、本発明の組み立て品の設計は本明細書で開示した設計に限定するものではなく、本発明の精神及び範囲内で変更してもよいことを、当業者は理解するであろう。
【0145】
さらに、出願人の意図は全ての特許請求の範囲の要素の等価物を包含し、本出願が補正された請求項の任意の要素又は特徴の等価物における利害又は等価物に対する権利を否認するものと解釈されることになるような任意の請求項に対する補正を全く包含しないことである。