(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5695738
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】燃料補給装置および航空機タンクシステムに燃料補給をする方法
(51)【国際特許分類】
B64D 37/18 20060101AFI20150319BHJP
【FI】
B64D37/18
【請求項の数】20
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-512768(P2013-512768)
(86)(22)【出願日】2010年6月1日
(65)【公表番号】特表2013-527077(P2013-527077A)
(43)【公表日】2013年6月27日
(86)【国際出願番号】EP2010057666
(87)【国際公開番号】WO2011150967
(87)【国際公開日】20111208
【審査請求日】2013年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】508313840
【氏名又は名称】アンテルテクニック
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(74)【代理人】
【識別番号】100129610
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 暁子
(72)【発明者】
【氏名】トラベル、 ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェイラ−マッソン、 アントワーヌ
【審査官】
黒田 暁子
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2009/0032645(US,A1)
【文献】
特開平02−267327(JP,A)
【文献】
米国特許第04591115(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0084511(US,A1)
【文献】
特表2010−506795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 37/14 − 37/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機のための航空機燃料補給装置(20)であって、
燃料供給ライン(13)を有し複数のタンク供給ラインに接続された配管(22)と、
前記配管(22)のタンク供給ラインに接続され、前記燃料供給ライン(13)を通じて燃料が補給されるように適合された燃料タンク(14、15、16)と、
前記配管(22)に配置され、各燃料タンク(14、15、16)を前記燃料供給ライン(13)から切り離すことができるように適合された第1の弁(24、25、26)と、
前記第1の弁(24、25、26)のそれぞれについて、第1の弁の流量パラメータを見積もることができるようにし、前記配管(22)に配置され、圧力または流量を示す少なくとも1つの信号を供給する、少なくとも1つのキャプター(30)であって、前記配管(22)内の圧力を検知し圧力を表す少なくとも1つの信号を供給する少なくとも1つの圧力キャプターを有する少なくとも1つのキャプター(30)と、
を備え、
第1の各弁(24、25、26)は、全開位置と閉位置との間で調整可能な複数の位置となる弁本体を有することを特徴とし、
さらに、
アクチュエータと第1の弁のアセンブリの前記第1の弁(24、25、26)のそれぞれに関連付けられ、関連付けられた当該第1の弁の開度を、全開位置、閉位置、およびその間で調整可能な複数の位置の中から選ばれる一定の位置で調整可能にする少なくとも1つのアクチュエータと、
前記アクチュエータと第1の弁のアセンブリのそれぞれに接続された電子制御ユニット(ECU)であって、前記第1の弁(24、25、26)から位置データを受信し、かつ、圧力のデータと位置データとを用いて、第1の各弁の流量パラメータを見積もる受信モジュール(M)と、第1の弁のその流量パラメータのデータを使用して、当該第1の弁の開度を調節するように適合された制御モジュール(33)とを有する電子制御ユニット(ECU)と、
を備えることを特徴とする、航空機燃料補給装置(20)。
【請求項2】
さらに、
前記燃料タンク(14、15、16)のうちの少なくとも1つに関連付けられて、対応する燃料タンクについて、燃料レベルを測定しかつ当該測定された燃料レベルを示す少なくとも1つの信号を供給するための、少なくとも1つの計測デバイス(34、35、36)を備え、
前記電子制御ユニット(ECU)が、
第1の弁の流量パラメータのデータと、燃料レベルのデータとを使用して前記開度を調節するように適合されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記電子制御ユニット(ECU)が、
前記キャプター(30)の前記信号と、
前記計測デバイス(34、35、36)の前記信号と、
前記燃料タンクのそれぞれについての所望の燃料量を表す入力データと、
を処理するように適合されており、
前記信号および入力データを処理して生じた情報を用いて、対応する燃料タンクの燃料補給完了までの残りの時間を決定することを可能にする燃料補給パラメータを作成するアルゴリズムと、
前記燃料補給パラメータに応じて、前記第1の弁(24、25、26)のうちの1つの前記アクチュエータを制御するようにそれぞれ適合された複数の制御信号を生成するように適合された制御モジュール(33)と、
を備える、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記電子制御ユニット(ECU)の前記制御モジュール(33)は、
燃料補給パラメータと閾値との比較によって前記燃料タンクの燃料補給の終了が迫っていることが示される場合に、少なくとも1つの中断制御信号を生成するように適合されており、
対応するアクチュエータが、前記燃料供給ライン(13)から前記燃料タンクを徐々に切り離すために、前記中断制御信号に応答して、前記関連付けられた第1の弁を作動させるように設けられている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記対応するアクチュエータは、所与の期間より短くない所定の期間のあいだに、徐々に切り離しが実施されることを可能にするように適合されている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記対応するアクチュエータは、10秒より短くない所定の期間のあいだに、徐々に切り離しを可能にするように適合されている、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
それぞれの前記第1の弁(24、25、26)がボール弁であって、該ボール弁には、当該第1の弁の開度をリアルタイムに調整するように適合されたアクチュエータが設けられている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記燃料供給ライン(13)に直接接続され、その燃料供給ライン(13)を介して前記配管(22)に燃料を供給する、少なくとも1つの追加の弁を備える、請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記燃料タンク(14、15、16)のうちの少なくとも1つが、
一方では、前記アクチュエータによって作動される前記第1の弁(24、25、26)のうちの1つに接続され、
他方では、第2の弁(44、45、46)に接続されている、
請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記第2の弁(44、45、46)が、電子制御ユニットによって制御されるように適合された特定のアクチュエータによって作動される、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記燃料タンク(14、15、16)のうちの少なくとも1つは、2つの別個のアクチュエータが設けられた前記第1の弁(24、25、26)のうちの1つを介して燃料が供給されるように適合されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記燃料タンク(14、15、16)のうちの1つと前記第1の弁(24、25、26)のうちの1つ目の弁との間に配置されたセレクタ弁を備え、前記セレクタ弁と前記第1の弁のうちの2つ目の弁との間にバイパスパイプが設けられており、
前記セレクタ弁は、複数の位置のうちの少なくとも1つを選択するように設けられており、前記複数の位置のうちの1つが前記第1の弁のうちの前記1つ目の弁がバイパスされることを可能にする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記配管(22)は、
前記燃料供給ラインに関してY字接続で配置された、N2の数の第1の弁を使用することによって、かつ、複数の前記燃料タンク(14、15、16)に直接接続された少なくとも1つの多方向制御弁を使用することによって、前記燃料供給ライン(13)により供給された流量を分配するように、N1の数(N1≧N2)の燃料タンクの間に配置されている、請求項1〜12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
航空機タンクシステム(21)を燃料補給する方法であって、
該システム(21)は、燃料供給ライン(13)と、配管(22)と、燃料タンク(14、15、16)と、それぞれの燃料タンクが前記燃料供給ラインから切り離されることを可能にするように適合された第1の弁(24、25、26)と、を備えるものであって、
前記燃料供給ラインを介して、決められた流量で前記配管に燃料を供給するステップ(S1)と、
前記燃料タンク間で前記決められた流量を分配するステップ(S11)と、
圧力または流量を示す少なくとも1つの信号を供給するように適合された少なくとも1つのキャプターを用いて、第1の各弁について第1の弁の流量パラメータを見積もるステップ(S2)であって、そのキャプター(30)は、前記配管(22)内の圧力を検知し圧力を表す少なくとも1つの信号を供給する少なくとも1つの圧力キャプターを有している、ステップ(S2)と、
を含み、さらに、
前記決められた流量の前記分配を実施するために、関連付けられたアクチュエータにより、それぞれの前記第1の弁(24、25、26)の開度を調整するステップであって、前記第1の弁(24、25、26)は、全開位置と閉位置との間で調整可能な複数の位置となる弁本体を有しており、該第1の弁の開度は、全開位置、閉位置、およびその間で調整可能な複数の位置の中から選ばれる一定の位置で調整されるようになっている、ステップと、
航空機タンクシステム(21)の一部を構成する電子制御ユニット(ECU)の受信モジュール(M)によって、前記第1の弁(24、25、26)から位置データを受信し、前記圧力のデータと位置データとを用いて第1の各弁の流量パラメータを見積もるステップと、
前記航空機タンクシステム(21)の一部分を構成する電子制御ユニット(ECU)の制御モジュール(33)により、第1の弁の流量パラメータのデータを用いて、それぞれの前記第1の弁(24、25、26)の開度を調節するステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項15】
燃料補給されることとなる各燃料タンクについて、所望の燃料量をプログラムするステップ(P1)と、
燃料補給されることとなる各燃料タンク(14、15、16)について燃料レベルを測定するステップ(S3)、および、少なくとも1つの計測デバイス(34、35、36)によって前記燃料タンク内の燃料レベルを示す信号を供給するステップと、
第1の弁の流量パラメータのデータおよび燃料レベルのデータを用いて、前記電子制御ユニット(ECU)によって前記開度を調節するステップと、
をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
燃料補給されることとなる前記燃料タンク(14、15、16)のうちの少なくとも1つについて、前記燃料タンク内の燃料レベルを示す前記信号と前記配管(22)内の圧力を示す前記信号とを前記電子制御ユニット(ECU)で処理するステップ(S4)、および、前記燃料タンクについて燃料補給を完了するまでの残りの時間を決定することを可能にする少なくとも1つの燃料補給パラメータを作成するステップ(S5)と、
燃料補給に最も長い時間を必要とする前記燃料タンク(14、15、16)のうちの1つの分配比率を増加させるために、前記電子制御ユニット(ECU)からの少なくとも1つの制御信号に応答して、前記電子制御ユニット(ECU)によって前記アクチュエータを制御するステップ(S7)と、
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
切り離されることになる前記燃料タンクへの燃料補給の終了を予測するために、前記電子制御ユニット(ECU)からの少なくとも1つの中断制御信号に応答して、前記燃料供給ラインから燃料タンクを徐々に切り離すステップをさらに含み、
前記中断制御信号は、前記燃料補給パラメータと閾値との比較の後に生成される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
最大の燃料量を必要とする前記燃料タンクに関連付けられた前記第1の弁(24、25、26)のうちの1つが、増加され得る初期開度によって調整され、
前記燃料タンク(14、15、16)のうちの別のタンクについて、次の条件:
燃料補給を完了するまでの残りの時間が所定値未満であること、
燃料タンクの中に注入されることになる残りの燃料量が所定値よりも少ないこと
のうちの少なくとも1つが存在することが決定されしだい、前記電子制御によって、前記初期開度を増加させるように適合された制御信号が生成される、請求項14〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
燃料補給を完了するまでの前記残り時間が、60秒を超えない所定値未満である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
燃料タンクの中に注入されることになる残りの燃料量が1トンを超えない所定値よりも少ない、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に航空機の燃料補給に関する。より詳細には、航空機に搭載された燃料補給装置に関し、特には、必ずしも限定されるものではないが、燃料弁を含む搭載式燃料補給装置を有する航空機に関する。また、本発明は、航空機を燃料補給する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
航空機に搭載された従来の燃料補給システムは、約55psigの最大燃料圧力にしたがったサイズの燃料流量制限器を有している。これは、航空機の燃料補給配管に対して7m/sの最大速度に相当することがある。通常、実際の供給圧力はその最大値よりもかなり小さいので、燃料流量制限器によって流量が不必要に制限されると、燃料補給時間が長くなる。
【0003】
米国特許出願公開第2008/0173762(A1)号は、燃料補給速度を増加させることができる航空機燃料補給システムを開示しており、そこでは、航空機の燃料補給配管の中に燃料流量制限器が取り付けられており、燃料補給配管から燃料タンクへ燃料の流量が制限されるようになっている。また、それぞれのタンクが燃料補給配管から切り離されることを可能にするために、燃料弁が設けられている。一般的な調整は、燃料補給配管の中の最大圧力を規定するために航空機に搭載された燃料圧力調節器によって実施される。
【0004】
しかし、そのようなタイプの一般的な調整を有する燃料補給システムは、特定の燃料タンクをより多く燃料を補給するという要求がある場合には適合されていない。したがって、航空機の搭載式燃料回路は、常に、具体的な要求にしたがって最適化され得るというわけではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、航空機のそれぞれの燃料タンクを燃料補給する方法を改善するという要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、航空機のための航空機燃料補給装置であって、
燃料供給ラインを有し複数のタンク供給ラインに接続された配管と、
前記配管のタンク供給ラインに接続され、前記燃料供給ラインを通じて燃料が補給されるように適合された燃料タンクと、
前記配管に配置され、各燃料タンクを前記燃料供給ラインから切り離すことができるように適合された第1の弁と、
前記第1の弁のそれぞれについて、第1の弁の流量パラメータを見積もることができるようにするキャプターであって、前記配管に配置され、圧力または流量を示す少なくとも1つの信号を供給する、少なくとも1つのキャプターと、を備え、
さらに、
アクチュエータ−第1の弁アセンブリの前記第1の弁のそれぞれに関連付けられ、関連付けられた当該第1の弁の開度の調整を可能にする少なくとも1つのアクチュエータと、
前記アクチュエータ−第1の弁アセンブリにそれぞれ接続され、第1の弁の流量パラメータのデータを使用して、当該第1の弁の開度を調節するように適合された電子制御ユニットと、
を備えることを特徴とする、航空機燃料補給装置を提供する。
【0007】
したがって、第1の弁のそれぞれが流量制御弁を画定する。そのような構成により、燃料タンクの燃料補給時間の最適化を得ることができる。第1の弁の(決められた開度での)開位置の調整によって、有利には、流量の分配をリアルタイムに制御できるようになる。そのような動的な制御により、燃料補給の終わりに生じうる乱れを防止することが可能となる。特に、民間航空機の翼内タンクの燃料補給が、バランスの取れた燃料の配分で効率的に実施されることが可能である。
【0008】
さらに、それぞれの開度の調整により、最終的な温度変動(燃料密度を変動させる)の影響を最小化することが可能となる。
【0009】
特定の特徴によれば、装置は、さらに、前記燃料タンクのうちの少なくとも1つ(好ましくは各タンク)に関連付けられて、対応する燃料タンクについて、燃料レベルを測定しかつ当該測定された燃料レベルを示す少なくとも1つの信号を供給するための、少なくとも1つの計測デバイスを備え、前記電子制御ユニットが、第1の弁の流量パラメータのデータと、燃料レベルのデータとを使用して前記開度を調節するように適合されている。したがって、燃料タンクのうちの1つまたは複数についての、および、好ましくは燃料タンクのそれぞれについての燃料補給速度の最適化が、それぞれの初期の燃料の量を考慮に入れて実施される。
【0010】
また、本発明の1つの目的は、燃料タンクシステムを燃料補給するように適合された方法を提供することである。
【0011】
したがって、本発明によれば、
航空機タンクシステムを燃料補給する方法であって、
該システムは、燃料供給ラインと、配管と、燃料タンクと、それぞれの燃料タンクが前記燃料供給ラインから切り離されることを可能にするように適合された第1の弁と、を備えるものであって、
前記燃料供給ラインを介して、決められた流量で前記配管に燃料を供給するステップと、
前記燃料タンク間で前記決められた流量を分配するステップと、
圧力または流量を示す少なくとも1つの信号を供給するように適合された少なくとも1つのキャプターを用いて、第1の各弁について第1の弁の流量パラメータを見積もるステップと、
を含み、さらに、
前記決められた流量の前記分配を実施するために、関連付けられたアクチュエータにより、それぞれの前記第1の弁の開度を調整するステップと、
前記航空機タンクシステムの一部分を構成する電子制御ユニットにより、第1の弁の流量パラメータのデータを用いて、それぞれの前記第1の弁の開度を調節するステップと、
を含むことを特徴とする、方法がさらに提案される。
【0012】
特定の特徴によれば、本方法は、
燃料補給されることとなる各燃料タンクについて、所望の燃料量をプログラムするステップと、
燃料補給されることとなる各燃料タンクについて燃料レベルを測定するステップ、および、少なくとも1つの計測デバイスによって前記燃料タンク内の燃料レベルを示す信号を供給するステップと、
第1の弁の流量パラメータのデータおよび燃料レベルのデータを用いて、前記電子制御ユニットによって前記開度を調節するステップと、をさらに含む。
【0013】
任意的に、本方法は、
燃料補給されることとなる前記燃料タンクのうちの少なくとも1つについて、前記燃料タンク内の燃料レベルを示す前記信号と前記配管内の圧力を示す前記信号とを前記電子制御ユニットで処理するステップ、および、前記燃料タンクについて燃料補給を完了するまでの残りの時間を決定することを可能にする少なくとも1つの燃料補給パラメータを作成するステップと、
燃料補給に最も長い時間を必要とする前記燃料タンクのうちの1つの分配比率を増加させるために、前記電子制御ユニットからの少なくとも1つの制御信号に応答して、前記電子制御ユニットによって前記アクチュエータを制御するステップと、をさらに含む。
【0014】
特定の特徴によれば、本方法は、切り離されることになる前記燃料タンクへの燃料補給の終了を予測するために、前記電子制御ユニットからの少なくとも1つの中断制御信号に応答して、前記燃料供給ラインから燃料タンクを徐々に切り離すステップをさらに含み、
前記中断制御信号は、前記燃料補給パラメータと閾値との比較の後に生成される。
【0015】
別の特徴によれば、最大の燃料量を必要とする前記燃料タンクに関連付けられた前記第1の弁のうちの1つが、増加され得る初期開度によって調整され、
前記燃料タンクのうちの別のタンクについて、次の条件:
燃料補給を完了するまでの残りの時間が、好ましくは60秒を超えない所定値未満であること、
燃料タンクの中に注入されることになる残りの燃料量が、好ましくは1トンを超えない所定値よりも少ないこと
のうちの少なくとも1つが存在することが決定されしだい、前記電子制御によって、前記初期開度を増加させるように適合された制御信号が生成される。
【0016】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して、非限定的な例として与えられた次に続く説明の間に、当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】従来の航空機燃料補給システムを示す図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態による航空機燃料補給装置を概略的に示す図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態による航空機燃料補給装置を概略的に示す図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態による弁の配置を示す図である。
【
図5】所望の燃料量および実際の燃料量を表示する燃料補給インターフェースの一部分を概略的に示す図である。
【
図6A】本発明の第1の実施形態による航空機燃料補給装置の流量制御弁として使用されるように適合されたボール弁を示す図である。
【
図6B】本発明の第1の実施形態による航空機燃料補給装置の流量制御弁として使用されるように適合されたボール弁を示す図である。
【
図7】本発明において実現される、燃料補給を制御するためのいつくかのステップを含む方法を示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
それぞれの図面において、同一の要素または類似の要素を指示するために同じ参照記号が使用される。
【0019】
図1は、A320などの民間航空機に燃料補給をするために従来から使用されている航空機燃料補給システム10の概略図である。この航空機燃料補給システム10には、燃料供給ライン13のための燃料供給入口部12aを画定している燃料補給連結部12と、Y字状接続したソレノイド弁11が設けられている。この例では、中央タンク14は、燃料タンクの内側で8250リットルの容量を有し、翼内タンク15、16はそれぞれ6925リットルの容量を有している。また、例えば、少なくとも1つの追加中央タンク(Additional Center Tank)ACTなどの追加の燃料タンクが設けられることもある(図示せず)。
【0020】
図2〜
図4に示されているように、本発明の実施形態は、燃料補給時間を最小化するために、航空機タンクシステム21に動的に燃料補給をする装置20を提供する。そのような装置20は、例えば
図1の例のような3つの燃料タンク14、15、16のような複数の燃料タンクを有する飛行機に対して適切に使用され得る。
【0021】
図2に図示されている第1の実施形態では、装置20は、燃料供給ライン13と、3つのタンク供給ラインと、3つの燃料タンク14、15、16とを備えている。燃料補給配管(以下、配管22という)は、各燃料タンク14、15、16に接続された個々のパイプを有している。Y字状接続は、配管22の合流点Jを介して形成されている。ここでは、1つの弁(例えばソレノイド弁23)が、燃料供給入口部13と合流点Jとの間に配置されており、複数の制御可能な弁24、25、26に対するマスター弁として機能するようになっている。第1の実施形態では、弁24は燃料タンク14に接続され、弁25は燃料タンク15に接続され、弁26は燃料タンク16に接続されている。これにより、これらの弁24、25、26がそれぞれ、それぞれの燃料タンクが燃料供給ライン13から切り離されることを可能にし、燃料が必要に応じて向かわせられ得るようになっている。当然ながら、代わりの任意の数の燃料タンクが使用される場合もあり、燃料供給ライン13に直接接続されたソレノイド弁23は任意の適切な実用的な弁によって交換される場合もある。また、オペレータによってマスター弁を開けることが可能となるように、上記マスター弁に、押しボタンまたは同様の手動要素が設けられてもよい。
【0022】
図2を参照すると、配管22内の流れの状態を表す物理的パラメータを送信するために1つまたは複数のキャプター30が設けられている。ここでは、キャプター30は圧力センサであり、その圧力センサは、合流点Jと、燃料供給ライン13に直接接続されたソレノイド弁23もしくは同様のマスター弁との間に設置されている。圧力センサまたは同様のキャプター30は、
図2の実施形態では、電子制御ユニットECUに接続されている。このキャプター30と、電子制御ユニットECUに接続された各弁アクチュエータアセンブリとによって、各燃料補給流量の調整の実施が可能となる。キャプター30に代えて、配管22に適切に配置され流量を表す信号を供給する1つまたは複数の流量計を用いてもよい。
【0023】
図2に示されている非限定的な例では、キャプター30によって検知された配管22内の圧力についてのデータと、第1の弁24、25、26の開度についてのデータとが電子制御ユニットの受信モジュールMによって受信される。このモジュールMは、圧力データおよび位置データを使用して、各第1の弁の流量パラメータを見積もるように構成されている。
【0024】
弁24、25、26はそれぞれ、燃料流量を調節する流量制御弁を画定するように、アクチュエータおよびポジショナーを装着されるものであってもよい。流量制御弁の構造について非限定的な例を概略的に示す
図6Aおよび
図6Bを参照すると、弁本体Bはボールであってもよく、このボールは、サーボモータ31または同様のサーボユニットによって駆動される従来のポジショナー(図示せず)によって回転させられるものであってもよい。ここでは、位置センサ32によって弁本体Bの位置を表す信号が供給される。サーボモータ31のモータ要素が回転型のとき、位置センサ32は、弁本体Bの角度位置または弁本体Bに接続された他のエレメントの角度位置を検知するものであってもよい。弁24、25、26の開度は、
図6Aの全開位置と
図6Bの閉位置との間で定められる開位置に選択的に調整されてもよい。結果として、流量は、ボール弁の2つの弁ポートの間で調整され得る。アクチュエータは、対応する第1の弁の開度をリアルタイムに調整できるようにする。回転駆動部Dの角度位置は、弁本体Bの開度を正確に定めることが可能である。弁アクチュエータは、同時係属出願PCT/EP2010/057656に記載されているタイプのものであってもよい。
【0025】
ここでは高速応答および長寿命を有する直線状のボール弁が説明されているが、第1の弁24、25、26は、必ずしもボール弁または同様の1/4回転ボール弁でなくてもよいことが理解されよう。より一般には、各燃料タンク14、15、16内に貯蔵されることになる燃料または同様の流体の流量もしくは圧力の調整を可能にするために、弁24、25、26はそれぞれ、全開位置と閉位置との間の複数の調整可能な位置をもつ弁本体を含んでいる。
【0026】
弁24、25、26のポジショナー(典型的にはスマートポジショナーと称される)または同様の駆動エレメントはキャプター30によって生成された信号に応じて制御される。各弁本体の位置制御には、流量パラメータのデータに加え、燃料レベルのデータをも考慮に入れてもよい。ここでは、燃料レベルのデータは、燃料補給されることになる燃料タンク14、15、16の各燃料レベルを測定することによって得ることができる。測定された燃料レベルを表す信号を電子制御ユニットECUに供給するために、1つおよび好ましくは複数の計測デバイス34、35、36が各燃料タンク14、15、16に関連付けられていてもよい。第1の各弁24、25、26の開度を動的に調節するために、燃料補給作業の間、電子制御ユニットが、キャプター30および計測デバイス34、35、36の信号を処理する。キャプター30または同様の任意のキャプターの信号は第1の弁の流量パラメータデータに変換され、一方、計測デバイス34、35、36の信号は燃料レベルデータに変換される。電子制御ユニットECUによって受け取られたこれらのデータまたは同様の任意のデータは、各燃料タンク24、25、26の個々の要求を決定するために使用される。
【0027】
図5を参照し、特定の燃料補給パネル28および/またはナビゲーションスクリーンによって、各燃料タンクについての所望の燃料量のデータが表示可能となっていてもよい。これらのデータは、オペレータによって燃料補給モードが選択されたときに既知の方式で入力される。セレクタ29は、そのようなモードが選択されることを可能にし燃料補給作業がプログラムされることを可能にする。対応するインターフェースは、従来のインターフェースであってもよく、各燃料タンク14、15、16内の燃料のプログラムされた量を示す第1の表示領域28aと、各燃料タンク14、15、16内で測定された燃料量を示す第2の表示領域28bとを含んでいる。電子制御ユニットECUは、この種の燃料補給パネル28に接続されており、有利には、各燃料タンク14、15、16についての所望の燃料量を表す入力データを考慮に入れるものであってもよい。
【0028】
非限定的な例示の実施形態において、
図2の電子制御ユニットECUによって、前記キャプターの信号、計測デバイスの信号、および、所望の燃料量を表すデータ等の追加の入力データが処理可能となり、これにより、対応する燃料タンクの燃料補給を完了するまでの残りの時間が見積もられる。電子制御ユニットECUは、上記の信号および入力データを処理することによって生じた情報を使用して燃料補給パラメータを作成するアルゴリズムを含んでいてもよい。例えば、燃料補給パラメータは、燃料タンク14、15、16のうちの1つの中の燃料補給の要求をそれぞれ表す。対応する燃料タンク14、15、16の燃料補給を完了するまでの残りの時間は、そのような燃料補給パラメータを用いて計算され得るので、アルゴリズムは、流量の最適化された配分を決定するようにさらに適合されていてもよい。
【0029】
図2を参照すると、ここでは、電子制御ユニットECUは制御モジュール33を含んでおり、このモジュールは、燃料補給パラメータに応じて、第1の弁24、25、26のうちの1つのアクチュエータを制御するようにそれぞれ適合された複数の制御信号を生成するように構成されている。これらの制御信号は、アルゴリズムによって決定された最適化された配分にしたがって生成される。当然ながら、そのような最適化は航空機の具体的な構成に依存する。制御モジュール33は、補給パラメータと所定の閾値との比較によって燃料タンク14、15、16のうちの1つの中の燃料補給の終了が迫っていることが示される場合、少なくとも1つの中断制御信号を生成するように適合されていてもよい。中断制御信号に応答して、アクチュエータは、燃料供給ライン13から関係するタンクを徐々に切り離すために、関連付けられた第1の弁を作動させる。
【0030】
全体流量(ここではソレノイド弁23を通過する流量)が一定である通常のケースでは、燃料補給の開始時の燃料タンク14、15、16の流量が同等とされていてもよく、計測デバイス14、15、16によって燃料タンク24、25、26のうちの少なくとも最初のタンクが所望レベル近くに燃料補給されたことが示された場合に、第1の弁24、25、26がそれぞれ異なった開度によって個別に調整されてもよい。
【0031】
例えば、翼内タンク15、16の燃料補給が第1のステップで完了されてもよい。翼内タンク15、16のうちの1つのタンク15の燃料レベルが、所望のレベルに近い所定のレベルになり次第、対応する第1の弁25の開度が、徐々により低い開度に減少させられてもよい。例示の非限定的な実施形態においては、所定のレベルは、燃料補給を完了するまでの残りの時間(第1の弁開度が減少する前の一定の流量の状態において、電子制御ユニットECUでの計算に基づく)が30秒または60秒よりも短いレベルに対応するものであってもよい。他の適切な閾値が、翼内タンク15の燃料補給の終了直前に第1の弁開度の減少を開始するために使用されてもよい。
【0032】
開度のそれぞれの増加量によって第1の弁25は次第に閉止されるが、他の弁24、26のうちの少なくとも1つは、関連付けられたアクチュエータによって作動させられ、これにより、第2のステップで、他の燃料タンク14、16のうちの少なくとも1つに、より速い速度で燃料補給をするようになっている。すなわち、燃料補給を加速させるために、流量の自動的な再分配が実施されてもよい。例えば、翼内タンク15、16のうちの1つが所望燃料量であって、他の燃料タンクほどの多量の燃料が必要でないときには、中央タンク14に関連付けられた流量だけが増加されてもよい。任意的に、第1の弁24、25、26の各アクチュエータにより、短い所定の期間内(好ましくは10秒を超える期間、例えば30秒以内)に、徐々に切り離しが実施されるようになっていてもよい。
【0033】
燃料補給時間を最適化するために第1の弁24、25、26の開度は様々な方式で制御されてもよく、上記例に限定されないということが理解されよう。例えば、第1の段階で翼内タンク15、16だけが燃料補給され、第2の段階で中央タンク14の燃料補給が開始されてもよい。より概括的には、燃料補給時間を最小化するために任意の自動インテリジェント制御を使用してもよい。
【0034】
図2を参照し、電子制御ユニットECUは、ソレノイド弁23および第1の弁24、25、26のアクチュエータを制御するための信号を従来の制御ラインを通じて供給するものであってもよく、少なくとも1つのバス38を介して中央コンピュータまたは同様の端末と通信するものであってもよい。複数の燃料補給の選択肢を利用することができ、オペレータは、各燃料タンク14、15、16内の所望の燃料量を選択するときに、端末において所望の選択肢を選択してもよい。また、電子制御ユニットECUに低電圧を供給するための、電源(図示せず)との接続部39が設けられている。任意的に、電子制御ユニットECU内の故障や機能停止の場合であっても燃料供給を可能にする追加の電子制御ユニットまたは任意の適切な制御装置を設けてもよい。
【0035】
図2および
図7を参照し、複数の燃料タンク14、15、16が設けられた航空機タンクシステム21を燃料供給する方法としては、ステップ(P1)において所望の燃料量をプログラムすることから始めるものであってもよい。次いで、電子中央ユニットECUは、決められた流量で燃料を配管22に供給する(S1)ことによって燃料補給を開始する。この供給は、ソレノイド弁23または同様のマスター弁の開度を有効にする (S10)ことによって実施され、複数の第1の弁24、25、26が、燃料タンク14、15、16の間で決められた流量を適切に分配する(S11)ために作動される。任意的に、燃料タンク14、15、16に関連付けられた各流量の計算が、最初に、電子制御ユニットECUによって実施され、この計算は、燃料タンク14、15、16のそれぞれの中の初期燃料量を表すデータと所望の燃料量を表すデータとを使用して実施される。電子制御ユニットECUからの初期制御信号は、アクチュエータが、前記計算にしたがって、それぞれの第1の弁24、25、26を比例的に開けることを可能にする。
【0036】
次いで、電子中央ユニットECUのモジュールM(キャプター30や第1の弁24、25、26のアクチュエータに接続している)が、前記第1の弁24、25、26のそれぞれについて第1の弁の流量パラメータを見積もる(S2)。見積り(S3)と同時または前後に、測定ステップ(S3)が、各燃料レベルを決定するために、計測デバイス34、35、36によって実施されてもよい。
【0037】
第1の弁の流量パラメータのデータおよび燃料レベルのデータが電子中央ユニットECUによって収集された後、次のステップが実施されてもよく、アルゴリズムを使用してもよい。そのようなデータの処理(S4)は、燃料補給ための個々の要求(残りの燃料量)や流量を見積もるために、リアルタイムに実施される。アルゴリズムは、燃料補給パラメータを作成する(S5)ように適合されており、このパラメータは、各燃料タンク14、15、16について、燃料補給を完了するまでの残りの時間を決定することを可能にする。代替的に、各流量の妥当性、および燃料補給について関連付けられた要求を表す任意のパラメータが計算されてもよい。その後、アルゴリズムは、燃料タンク14、15、16の優先度を確立するために、それぞれの要求を比較するようになっていてもよい。第1の弁24、25、26のうちの1つにおいて、流量のうちの1つを修正すべきであることを比較(C1)により決定する場合、アクチュエータの構成は変更されなければならない。換言すれば、アクチュエータの構成の変更についての要求が、比較(C1)中に決定されることによって、開度の調整を具体的に得ることができる。
【0038】
したがって、電子制御ユニットECUは、
図7に示されているように、制御信号を送信し、その制御信号は、第1の弁24、25、26のアクチュエータによって受信される(S6)。次いで、制御ステップ(S7)において、燃料タンク毎に流量調整のアクティブ制御が実施される。より高い流量へとの要求の変化に応じて、第1の弁24、25、26のうちの少なくとも1つの開度が調整される。この制御の結果、燃料補給に最も長い時間を必要とする燃料タンク14、15、16のうちの1つの分配比率が増加される。
【0039】
また、切り離されることになる燃料タンクへの燃料補給の終了を予測するために、比較(S1)が実施されてもよく、燃料供給ライン13から燃料タンク14、15、16のうちの1つが徐々に切り離され始める。例えば、燃料タンクがその所望のレベルに近いことを表す閾値と燃料補給パラメータとの間の比較がなされる。非限定的な方式では、漸進的な閉止を開始するための基準または閾値は、所定の期間よりも短い燃料補給を完了するまでの計算された残りの時間を表すものであってもよく、または、所定の値よりも少ない燃料タンクの中に注入される残りの燃料量を表すものであってもよい。
【0040】
燃料タンク14、15、16の燃料補給の終了を予測すると、いくつかの利点が得られる:
流量が重要であるときに、燃料タンク14、15、16の中で波が生成され、この現象は、実際の燃料の量を読み取ることを困難にすること、
図1に示されている従来の燃料補給システムではソレノイド弁11を閉止すると流量が正確に予測されることはできないが、最終量が所望の量から非常に近くにされることも可能であること。
【0041】
図2に示されている燃料補給装置20は、燃料補給が円滑に実現されることを可能にし、燃料補給時間は、各燃料タンク24、25、26の中の要求に応じて電子制御ユニットECUによって実行される開度制御をによって低減され得る。この燃料補給装置20は、航空機または適切な任意構造体において「燃料補給中心部」として実装可能である。第1の弁24、25、26は、合流点Jに接続される導管の長さを最小化するためにソレノイド弁に近接していてもよい。さらに、燃料補給装置20は、3つの燃料タンク15、15、16よりも多い燃料タンクに関連付けられていてもよい。2つのACT(図示せず)は、追加の導管および追加の第1の弁を用いて燃料補給される場合もある。また、バイパスまたは同様のものが使用されてもよい。耐故障構造を得るために、第1の弁24、25、26がバイパス手段に関連付けられていてもよい。また、1つまたは複数の燃料タンク14、15、16が、2つの別個のアクチュエータが設けられた前記第1の弁24、25、26のうちの1つによって燃料を供給されてもよい。弁本体Bが開位置に移動させられることを妨げる故障が起こった際に、そのようなバイパス手段または二次的なアクチュエータが、自動的に使用されてもよい。特定のキャプターは、そのような故障を表す信号を電子制御ユニットECUに供給するものであってもよい。
【0042】
図3を参照すると第2の実施形態が示されており、
図3では、第1の制御弁24、25、26を用いて
図2のような各燃料タンク14、15、16へ向かう流量を制御することが示されている。この第2の実施形態では、第1の弁を開けることについての故障の場合に備えて、第2の弁44、45、46がそれぞれ並列に設けられており、燃料タンク14、15、16の燃料補給を可能にしている。第1の弁24、25、26はスマート弁であると考えてもよく、第2の弁44、45、46にはそれぞれ従来の二位置アクチュエータが設けられてもよい。代替的に、第2の弁44、45、46のうちの少なくとも1つが、中央制御ユニットECUからの制御信号を受信する特定のアクチュエータによって命令されてもよい。
【0043】
任意的に、第1の弁24、25、26と並行して、開状態に構成された第2の弁44、45、46によって燃料補給が実施されてもよく、第1の弁24、25、26も活動的に使用されている。そのようなオプションでは、有利には別々の弁のサイズが有利には小型化されてもよく、これは、燃料タンク14、15、16のうちのそれぞれについての流量が2つの弁24と44、25と45、26と46を介して分配されるためである。
【0044】
図4を参照すると第3の実施形態が示されており、
図4では、マスター弁が任意的に除去されており、2つまたは3つの位置を有するセレクタ弁54、55、56が第1の弁24、25、26と各燃料タンク14、15、16との間に接続されている。キャプター30は燃料供給ライン13の始点のところに位置付けられてもよい。燃料タンクシステム21は
図2に記載されているものと同様であるが、ここでは耐故障性のものであり、その理由は、下記である:
第1の弁24、25、26のうちの1つで故障が発生し、それにより当該第1の弁が閉位置にブロックされることになると、燃料補給のいかなる中断も回避するために、セレクタ弁の位置の調整によってバイパスを提供することが可能であり、
第1の弁24、25、26のうちの関連付けられた1つが開位置にブロックされたときは、セレクタ弁54、55、56が、燃料タンク14、15、16のうちの1つに対する燃料補給を停止することが可能であるため。
【0045】
セレクタ弁54、55、56はここでは電子制御ユニットECUによって制御される四位置弁である。当然ながら、セレクタ弁54、55、56の数は、燃料タンクシステム21の構成に応じて様々であってもよい。セレクタ弁54、55、56のうちの1つについて故障が起こった場合に通常の燃料補給が可能であるように、セレクタ弁54、55、56のデフォルトの位置(開位置である)は選択可能である。第1の弁24に関して、2つのセレクタ弁54、55を結合するパイプ60を含むバイパスパイプが、中央タンク14に接続されたセレクタ弁54と、第1の弁25、26のうちのもう1つと、の間に設けられている。この第1の弁24をバイパスするために、セレクタ弁54は、中央タンク14が他の2つのセレクタ弁55、56のうちの1つから来る燃料を受け入れる位置に移動してもよい。他の2つの第1の弁25、26がそれぞれ同様にバイパスされてもよい。
【0046】
また、少なくとも1つのパイプ60および第1の弁25、26のうちの少なくとも1つが、中央タンク14の燃料補給を加速するために用いられてもよい。この特別の燃料補給モードは、任意的であり、オペレータによって有効にされ得る。
【0047】
一つの変形形態では、N1の数の燃料タンク14、15、16の間に、より少ない数または等しい数N2(N2≦N1)の燃料供給ライン13に関してY字状接続して配置された第1の弁24、25、26を使用することによって、燃料供給ライン13によって供給された流量を分配するように配管22が配置される。燃料タンク14、15、16に直接接続された1つまたは複数の多方向制御弁を使用することによって、第1の弁24、25、26の数が低減され得る。例えば、
図4に示されている第1の弁25は除去されてもよく、この場合、燃料タンク15は、2つのセレクタ弁54、55および中間パイプ60を使用することで燃料補給される。代替的に、例えばACTタンクを含むように、第1の弁24、25、26の数は維持されてもよく、燃料タンク14、15、16の数は増加されてもよい。
【0048】
図2〜
図4を参照すると、燃料供給ライン13とそれぞれの第1の弁24、25、26との間の平均距離、および、電子中央ユニットECUと燃料供給ライン13との間の平均距離は、第1の各弁24、25、26と対応する燃料タンク14、15、16との間の平均距離よりもずっと短いことが好ましい。そのような任意的な構成では、航空機燃料補給装置20の実装形態は、従来の配管の最小限の修正形態によって行われることが可能である。
【0049】
本発明は、好適な実施形態に関連して記載されてきた。しかし、これらの実施形態は、単に例示のためのものであり、本発明は、それに限定されない。他の変形形態および修正形態が、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の範囲の中で容易になされることが可能であり、したがって、本発明は、次に続く特許請求の範囲によって限定されることだけが意図されているということが、当業者には理解されるであろう。
【0050】
ある実施形態では、本発明の実施形態の上記記載で参照された燃料補給配管22は、燃料タンク14、15、16から航空機のエンジンに燃料を供給するために、または、一方の燃料タンクから別の燃料タンクに燃料を移送するために利用されることも可能である。さらに、燃料補給パラメータは、同様に、燃料タンクの中に注入されることとなる残りの燃料量を決定するために使用され得ることが理解されよう。第1の弁24、25、26が燃料を抜く操作のために作動され得ることも明らかである。
【0051】
本発明との関連で、用語「燃料」は、例えばケロシンなどのような典型的な航空機燃料に制限されるような意味で解釈されるべきではない。その代わりに、本発明の意味において、用語「燃料」は、代替流体も含むべきであり、代替流体は、100℃より高い引火点を有することが好ましい。
【0052】
次に続く特許請求の範囲の中の任意の参照符号は、特許請求の範囲を限定するように解釈されるべきではない。動詞「備える」およびその活用形の使用は、任意の請求項の中で定義されているものの他にも、任意の他の要素の存在を除外するものではないことが明らかであろう。要素の前の単語「a」または「an」は、複数のそのような要素の存在を除外するものではない。