(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記絶縁層は、前記周縁部と前記固定電極との間から、前記固定電極の外周側面と前記可動電極の周囲との間に位置する前記固定電極の延出表面の全域にかけて形成される請求項1記載の静電容量型圧力センサ。
感圧ダイヤフラムと、前記感圧ダイヤフラムの周囲に広がる接合領域とを備える第1シリコン基板と、固定電極となる第2シリコン基板とを用意し、前記接合領域と前記接合領域に高さ方向で対向する前記固定電極との間を、前記第1シリコン基板の表面を熱酸化して形成した絶縁層を介してシリコンフュージョンボンディングにより接合するとともに、前記接合領域の内側に位置する前記感圧ダイヤフラムと、前記感圧ダイヤフラムに前記高さ方向で対向する前記固定電極との間には前記絶縁層を形成しないで、前記感圧ダイヤフラムと前記固定電極との間に前記高さ方向への間隔を空ける工程、
前記感圧ダイヤフラム及び、前記接合領域のうち前記感圧ダイヤフラムの周縁部を、前記固定電極の外周側面よりも内側に残した状態で、前記接合領域の不要部分を除去し、このとき、前記感圧ダイヤフラム及び前記周縁部からなる前記可動電極の外側に位置する前記固定電極の表面であって前記可動電極の周囲全周にまではみ出すように前記絶縁層を残す工程、
を有する静電容量型圧力センサの製造方法であって、
前記感圧ダイヤフラムに、前記第1シリコン基板の表面を除去して凹ませた薄肉部を形成する工程、
前記第1シリコン基板の表面を熱酸化した後、前記薄肉部と前記周縁部との間の側壁面に熱酸化による前記絶縁層が残るように、前記感圧ダイヤフラムの凹み表面の前記絶縁層を除去する工程、
をさらに有することを特徴とする静電容量型圧力センサの製造方法。
前記第1シリコン基板の不要部分を除去する際、前記可動電極とともに、前記固定電極の表面に、前記可動電極の前記周縁部から一体となって引き出された引き出し配線層と、前記可動電極から分離された分離層とを残し、
前記第1シリコン基板の不要部分を除去する工程の前後であって、前記第1シリコン基板と前記第2シリコン基板とを前記絶縁層を介して接合した工程以後に、前記分離層の位置に、前記分離層及び前記絶縁層を貫通して前記第2シリコン基板からなる前記固定電極の表面にまで通じるコンタクトホールを形成する工程、
前記引き出し配線層の表面及び前記コンタクトホール内に電極パッドを形成する工程、
を有する請求項7ないし9のいずれか1項に記載の静電容量型圧力センサの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、特に、良好な封止性及び感度を得ることができるとともに、寄生容量を低く抑えることが可能な静電容量型圧力センサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における静電容量型圧力センサは、シリコンからなる可動電極及び固定電極と、両電極間を接合する絶縁層と、を有して構成され、
前記可動電極は、前記固定電極との間に高さ方向への間隔を有して変位が可能な感圧ダイヤフラムと、前記感圧ダイヤフラムの周囲に位置し、前記固定電極と前記絶縁層を介して接合される周縁部と、を有し、前記感圧ダイヤフラムと前記固定電極との間の静電容量変化に基づき圧力検知が可能とされており、
前記可動電極は前記固定電極の外周側面よりも内側に形成されており、前記絶縁層は、前記周縁部と
前記周縁部に前記高さ方向で対向する前記固定電極との間から
前記可動電極の外側に位置する前記固定電極の表面であって、少なくとも前記可動電極の周囲全周にはみ出して形成されて
おり、
前記周縁部の内側に位置する前記感圧ダイヤフラムと、前記感圧ダイヤフラムと前記高さ方向で対向する前記固定電極との間には前記絶縁層が形成されておらず、前記感圧ダイヤフラムと前記固定電極とが前記高さ方向で前記間隔を空けて対向している静電容量型圧力センサであって、
前記感圧ダイヤフラムは、前記周縁部よりも前記固定電極との対向面が前記固定電極から離れる方向に凹む薄肉部を有しており、前記薄肉部と前記周縁部との間の側壁面から前記周縁部と前記固定電極間にかけて前記絶縁層が形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明では、絶縁層を、可動電極の周縁部と固定電極との間から固定電極の表面であって、少なくとも前記可動電極の周囲全周にはみ出して形成した。よって本発明では絶縁層の膜厚を薄くして感圧ダイヤフラムと固定電極間の高さ方向への間隔を小さくし、可動電極の周縁部と固定電極間に介在する絶縁層の幅を狭くしても、機械的な強度の高い絶縁層を固定電極と可動電極の周縁部間に介在させることができる。したがって、可動電極と固定電極間の封止性を向上させることができる。また、感圧ダイヤフラムと固定電極間の高さ方向への間隔を狭くでき、良好な感度を得ることができる。そして、可動電極の周縁部と固定電極間の絶縁層を介した対向面積を狭くでき、寄生容量を低くできる。以上により、本発明によれば、良好な封止性及び感度を得ることができるとともに、寄生容量を低く抑えることができる。
【0009】
なお特許文献2には、電極パッドを形成するために絶縁層を可動電極よりも外側に広がる固定電極の表面にまで延ばした断面図が掲載されているが(例えば特許文献2の
図2参照)、可動電極を固定電極の外周側面の内側に形成して可動電極の周囲全周にまで絶縁層をはみ出して形成した構成は開示されていない。また特許文献2には、本発明における従来課題については何も記載されていない。
【0010】
本発明では、前記絶縁層は、前記周縁部と前記固定電極との間から、前記固定電極の外周側面と前記可動電極の周囲との間に位置する前記固定電極の延出表面の全域にかけて形成されることが好ましい。これにより、可動電極と固定電極間の封止性をより効果的に向上させることが可能である。
【0011】
また本発明では、
上記のように、前記感圧ダイヤフラムは、前記周縁部よりも前記固定電極との対向面が前記固定電極から離れる方向に凹む薄肉部を有しており、前記薄肉部と前記周縁部との間の側壁面から前記周縁部と前記固定電極間にかけて前記絶縁層が形成されてい
る。
【0012】
これにより、絶縁層を介した固定電極と可動電極の周縁部間の接合力を効果的に高めることができ、より効果的に封止性を高めることができる。
【0013】
また本発明では、前記感圧ダイヤフラムの前記固定電極との対向面には、前記薄肉部の平面方向の内側に位置し前記固定電極に近づく方向に突出する凸部が形成されていることが好ましい。感圧ダイヤフラムと固定電極間の高さ方向の間隔をより狭めることができ感度をより効果的に向上させることができる。
【0014】
また本発明では、前記固定電極の表面には、前記可動電極とともに第1端子部及び第2端子部が設けられ、前記第1端子部は、前記可動電極の前記周縁部から前記シリコン基板により一体となって引き出された部分を備えて前記固定電極と前記絶縁層を介して形成されており、前記第2端子部は、前記可動電極から分離され前記固定電極と前記絶縁層を介して形成された前記シリコン基板からなる分離層と、前記分離層及び前記絶縁層を貫通し前記固定電極の表面に通じるコンタクトホール内に設けられ前記固定電極と電気的に接続される電極パッドとを備えて形成されることが好ましい。これにより、簡単な構造で第1端子部及び第2端子部を形成できる。
【0016】
上記において、前記絶縁層は、前記可動電極を構成する側の前記シリコン基板の表面を熱酸化したものであることが好ましい。これにより、可動電極の周縁部と固定電極間の接合力を効果的に向上させることができ高く且つ安定した封止性を得ることができる。
【0017】
本発明における静電容量型圧力センサは、
感圧ダイヤフラムと、前記感圧ダイヤフラムの周囲に広がる接合領域とを備える第1シリコン基板と、固定電極となる第2シリコン基板とを用意し、
前記接合領域と前記接合領域に高さ方向で対向する前記固定電極との間を、前記第1シリコン基板の表面を熱酸化して形成した絶縁層を介してシリコンフュージョンボンディングにより接合するとともに、前記接合領域の内側に位置する前記感圧ダイヤフラムと、前記感圧ダイヤフラムに前記高さ方向で対向する前記固定電極との間には前記絶縁層を形成しないで、前記感圧ダイヤフラムと前記固定電極との間に前記高さ方向への間隔を空け
る工程、
前記感圧ダイヤフラム及び、前記接合領域のう
ち前記感圧ダイヤフラムの周縁部を、前記固定電極の外周側面よりも内側に残した状態で、前記接合領域の不要部分を除去し、このとき、
前記感圧ダイヤフラム及び前記周縁部からなる前記可動電極の外側に位置する前記固定電極の表面であって
前記可動電極の周囲全周にまではみ出すように前記絶縁層を残す工程、
を有する
静電容量型圧力センサの製造方法であって、
前記感圧ダイヤフラムに、前記第1シリコン基板の表面を除去して凹ませた薄肉部を形成する工程、
前記第1シリコン基板の表面を熱酸化した後、前記薄肉部と前記周縁部との間の側壁面に熱酸化による前記絶縁層が残るように、前記感圧ダイヤフラムの凹み表面の前記絶縁層を除去する工程、
をさらに有することを特徴とするものである。
【0018】
本発明では、可動電極を備える第1シリコン基板と、第2シリコン基板(固定電極)を絶縁層を介して接合した後、第1シリコン基板の不要部分を除去する工程により、絶縁層を、可動電極の周囲全周にはみ出して残している。このため、感圧ダイヤフラムと固定電極間の高さ方向への間隔を小さくし、可動電極の周縁部と固定電極間に介在する絶縁層の幅を狭くしても、機械的な強度の高い絶縁層を固定電極と可動電極の周縁部間に介在させることができる。したがって、良好な封止性及び感度を得ることができるとともに、寄生容量を低く抑えることが可能な静電容量型圧力センサを製造することが可能である。
【0019】
本発明の静電容量型圧力センサの製造方法によれば、例えば特許文献1に示す構成に比べて、アライメントの許容範囲を広げることができ、製造工程を容易化できる。また本発明では特別な設備投資等が必要でなく製造コストの上昇を抑制できる。
【0020】
また本発明では、前記絶縁層を、前記固定電極の外周側面と前記可動電極の周囲との間に位置する前記固定電極の延出表面の全域に残すことが好ましい。これにより、可動電極と固定電極間の封止性をより効果的に向上させることが可能である。
【0021】
また本発明では、
上記のように、前記第1シリコン基板の表面を熱酸化して前記絶縁層を形成し、前記第1シリコン基板と前記第2シリコン基板とをシリコンフュージョンボンディングにより接合
しているので、簡単な工程で絶縁層の形成とともに封止性を向上させることができる。可動電極を備える第1シリコン基板側を熱酸化し、両シリコン基板間をシリコンフュージョンボンディングにより接合したことで、第1シリコン基板の不要部分を除去したときに、可動電極の周縁部の幅を狭くしても周縁部と絶縁層間の接合力(結合力)を十分に高い状態にでき、一方、固定電極と絶縁層間は広い接合面積を有しているため、優れた封止性を得ることができる。
【0022】
また本発明では、
上記のように、前記感圧ダイヤフラムに、前記第1シリコン基板の表面を除去して凹ませた薄肉部を形成する工程、
前記第1シリコン基板の表面を熱酸化した後、前記薄肉部と前記周縁部との間の側壁面に熱酸化による前記絶縁層が残るように、前記感圧ダイヤフラムの凹み表面の前記絶縁層を除去する工程、
を
さらに有す
る。
【0023】
これにより、絶縁層を介した固定電極と可動電極の周縁部間の接合力をより高めることができ、より効果的に封止性を高めることができる。
【0024】
また本発明では、前記薄肉部を形成する際、前記薄肉部よりも平面方向の内側に前記凹み表面から突出する凸部を残すことが好ましい。
【0025】
また本発明では、前記第1シリコン基板の不要部分を除去する際、前記可動電極とともに、前記固定電極の表面に、前記可動電極の前記周縁部から一体となって引き出された引き出し配線層と、前記可動電極から分離された分離層とを残し、
前記第1シリコン基板の不要部分を除去する工程の前後であって、前記第1シリコン基板と前記第2シリコン基板とを前記絶縁層を介して接合した工程以後に、前記分離層の位置に、前記分離層及び前記絶縁層を貫通して前記第2シリコン基板からなる前記固定電極の表面にまで通じるコンタクトホールを形成する工程、
前記引き出し配線層の表面及び前記コンタクトホール内に電極パッドを形成する工程、
を有することが好ましい。
【0026】
これにより簡単な工程で、可動電極と同じ形成面側に、前記引き出し配線層及び電極パッドを備える第1端子部と、前記分離層及びコンタクトホール内に設けられた電極パッドを備える第2端子部とを形成できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の静電容量型圧力センサによれば、良好な封止性及び感度を得ることができるとともに、寄生容量を低く抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明の実施形態における静電容量型圧力センサの斜視図、
図2は、
図1のA−A線に沿って高さ方向に切断した本実施形態の静電容量型圧力センサの縦断面図である。なお
図2は
図1に対して寸法比を変えて図示した。
【0030】
図1,
図2に示す静電容量型圧力センサ10は、シリコン基板からなる可動電極11及び固定電極12と、可動電極11と固定電極12間を接合する絶縁層13とを有して構成される。
【0031】
図1,
図2に示すように、可動電極11は、固定電極12と高さ方向(Z)への間隔15を有して高さ方向への変位が可能な感圧ダイヤフラム14と、感圧ダイヤフラム14の周囲に位置し、固定電極12と絶縁層13を介して接合される周縁部16とを有して構成される(
図1に示す感圧ダイヤフラム14と周縁部16との間の点線は両者間の境界を示し、便宜上図示したものである)。
【0032】
感圧ダイヤフラム14に高さ方向(Z)から圧力が作用すると、感圧ダイヤフラム14が高さ方向に変位する。これにより感圧ダイヤフラム14と固定電極12間の静電容量が変化する。したがって静電容量変化に基づいて圧力を検出することが可能である。
【0033】
図2に示すように感圧ダイヤフラム14は、周縁部16よりも固定電極12との対向面14aが、固定電極12から離れる方向(Z1)に凹む薄肉部17を有している。また、感圧ダイヤフラム14の中央には、対向面14aが薄肉部17よりも固定電極12に近づく方向(Z2)に突出する凸部18が形成されている。すなわち
図2に示す感圧ダイヤフラム14は略中央に凸部18があり、その周囲に対向面14aが凹んだ薄肉部17が形成された構造である。
図2の構成は一例であり、例えば凸部18を複数個、形成することも可能である。
図2に示すように感圧ダイヤフラム14に薄肉部17を設けることで、感圧ダイヤフラム14を高さ方向(Z)に変位させやすい。また薄肉部17よりも固定電極12に近づく方向に突出する凸部18を設けたことで、感圧ダイヤフラム14と固定電極12間の間隔15が、前記凸部18の位置で狭くなる。静電容量は電極間の距離に反比例するため、間隔15を狭くすることで、感圧ダイヤフラム14が高さ方向に変位した際の静電容量変化に基づく出力変化を大きくでき感度を上げることが可能になる。
【0034】
図1に示すように感圧ダイヤフラム14は平面形状が略円形状であり、ほぼ固定電極12の中央に位置しているが、感圧ダイヤフラム14及び周縁部16を有してなる可動電極11が固定電極12の外周側面12aよりも内側に形成されれば、形状、位置、及び大きさを限定するものではない。なお可動電極11の大きさについては、後述の実験結果によると、大きくなるほど寄生容量が増加することがわかったため、出力特性や製造効率等を考慮して可動電極11をできる限り小さく形成することで寄生容量を低減できる。
【0035】
上記のように、可動電極11は、固定電極12の外周側面12aよりも内側に形成されるため、可動電極11の周囲に固定電極12の延出表面20が広がっている。
【0036】
図1,
図2に示す絶縁層13はほぼ一定の膜厚により形成される。特に後述するように絶縁層13を熱酸化で形成するため、絶縁層13を一定厚で形成しやすい。絶縁層13の膜厚は、0.5〜2.0μm程度である。
【0037】
図2に示すように、絶縁層13は、感圧ダイヤフラム14と固定電極12との間には形成されていない。
図2に示すように絶縁層13は、可動電極11の周縁部16と固定電極12間に介在し、可動電極11と固定電極12間を接合している。
【0038】
さらに
図1,
図2に示すように、本実施形態の絶縁層13は、固定電極12の延出表面20の全域に形成されている。
【0039】
本実施形態では、これにより、絶縁層13の膜厚を薄くして感圧ダイヤフラム14と固定電極12間の高さ方向(z)への間隔15を小さくし、可動電極11の周縁部16と固定電極12間に介在する絶縁層13の幅(
図2のT1)を狭くしても、絶縁層13を固定電極12の延出表面20の全域にまで形成したため、機械的な強度の高い絶縁層13を固定電極12と可動電極11の周縁部16との間に介在させることが可能である。したがって、可動電極11と固定電極12間の封止性を向上させることができる。また、感圧ダイヤフラム14と固定電極12間の高さ方向(Z)への間隔15を狭くでき、良好な感度を得ることができる。そして、可動電極11の周縁部16と固定電極12間の絶縁層13を介した対向面積を狭くでき、寄生容量を低くできる。以上により、本実施形態によれば、良好な封止性及び感度を得ることができるとともに、寄生容量を低く抑えることができる。
【0040】
絶縁層13の幅寸法T1は、薄肉部17の幅寸法T6より小さいことが好ましい。薄肉部17の幅寸法T6も寄生容量に寄与し、幅寸法T6が小さいほど寄生容量を小さくできる。薄肉部17の幅寸法T6は、寄生容量や出力特性等を考慮して決められる。一方、絶縁層13の幅寸法T1も小さいほど寄生容量を小さくできる。このとき、絶縁層13の幅寸法T1を固定値にして、薄肉部17の幅寸法T6を変化させた場合と、薄肉部17の幅寸法T6(最小幅寸法で規定)を固定値して、絶縁層13の幅寸法T1を変化させた場合とでは、後者のほうが前者よりも寄生容量の変動が大きい。すなわち、絶縁層13の幅寸法T1をより小さくしたほうが、寄生容量を効果的に小さくできる。
【0041】
図2に示すように、絶縁層13は、薄肉部17と周縁部16との間に位置する側壁面17aから周縁部16と固定電極12との間にかけて形成されることが好ましい。このように絶縁層13が感圧ダイヤフラム14の内側までやや入り込むことで、絶縁層13を介した固定電極12と可動電極11の周縁部16間の接合力を効果的に高めることができ、より効果的に封止性を高めることができる。また側壁面17aは
図2のように傾斜していてもあるいは、垂直面であってもよい。
【0042】
図1,
図2に示すように、可動電極11と同じ形成面側であって延出表面20には第1端子部22及び第2端子部23が形成されている。第1端子部22は、可動電極11の周縁部16からシリコン基板により一体になって引き出された引き出し配線層24と、引き出し配線層24の先端部24aの表面24bに形成された第1電極パッド25とを有して構成される。また、第2端子部23は、可動電極11から分離し絶縁層13の表面に形成された分離層26と、分離層26及び絶縁層13を貫通し固定電極12の表面に通じるコンタクトホール27内に設けられ固定電極12と電気的に接続される第2電極パッド28とを有して形成される。電極パッド25,28は、Al、Au等の金属層を蒸着、スパッタ、めっき等で形成したものである。
【0043】
各端子部22,23を固定電極12の裏面側から出すことも可能であるが、その場合には新たに固定電極12の裏面に絶縁層が必要になるため、固定電極12の延出表面20の全域に広がって形成された絶縁層13を利用して各端子部22,23を形成することで、簡単な構造で、各端子部22,23を形成することが出来る。
【0044】
本実施形態では、後述する静電容量型圧力センサ10の製造方法で説明するように、固定電極12の延出表面20の全域に形成された絶縁層13は、可動電極11の周囲にシリコン基板の不要部分が絶縁層13を介して固定電極12と接合された状態から前記不要部分を除去して露出したものである。かかる場合、絶縁層13は可動電極11を構成する側のシリコン基板の前記固定電極12との対向面を熱酸化したものであることが好適である。後述するように本実施形態では、一方のシリコン基板の表面を熱酸化した状態で、二つのシリコン基板間をシリコンフュージョンボンディングにより接合している。このような構成により、絶縁層13の形成が容易化し、さらに可動電極11の周縁部16の固定電極12との対向面に形成された絶縁層13は前記対向面を熱酸化したものであるから、絶縁層13の幅寸法T1(
図2参照)が狭くなっても絶縁層13と周縁部16との接合力(結合力)は強く、一方、シリコンフュージョンボンディングにより接合された絶縁層13と固定電極12との間は、接合面積が広いため十分な接合力を得ることができる。したがって、固定電極12と可動電極11の周縁部16間の接合力を十分に高めることが可能であり、より効果的に封止性を高めることが可能である。
【0045】
図3に示す静電容量型圧力センサでは、
図2と異なって、感圧ダイヤフラム14の全体が
図2での薄肉部17であり、
図2に示す凸部18が形成されていない。また、
図3に示す静電容量型圧力センサでは、
図2と異なって、薄肉部17と周縁部16との間の側壁面17aに絶縁層13が形成されていない。
図3に示す静電容量型圧力センサも本発明の一形態であるが、
図2のほうが、感圧ダイヤフラム14に凸部18があることでより効果的に間隔15を狭くでき、感度を向上させることができ、また絶縁層13が側壁面17aまで延びることで、絶縁層13と周縁部16間の接合力(あるいは結合力)が増し、封止性を向上させることが可能である。
【0046】
また、感圧ダイヤフラム14が高さ方向に変位し、且つ感圧ダイヤフラム14と固定電極12間の間隔15が感圧ダイヤフラム14の最大変位量以上あれば、
図4のように、感圧ダイヤフラム14と周縁部16とを一定厚で形成することも可能である。
【0047】
図3、
図4の各実施形態においても
図2と同様に、固定電極12と可動電極11の周縁部16との間を接合する絶縁層13が固定電極12の延出表面20の全域にまで形成されている。
【0048】
固定電極12の表面12b(可動電極11との対向面;
図2参照)であって感圧ダイヤフラム14と対向する位置に凹部を設けることも可能であるが、かかる場合、可動電極11と固定電極12間のアライメントの許容範囲が小さくなるため、固定電極12の表面20aは平坦面であることが好ましい。
【0049】
また、本実施形態では、絶縁層13が固定電極12の延出表面20の全域に形成されたことを特徴点とし、ここで「全域」とは、延出表面20の全ての領域、すなわち平面視にて固定電極12が見えない状態であることが望ましいが、絶縁層13が可動電極11の全外周から外方にはみ出しており、このとき、多少、延出表面20の例えば角付近に絶縁層13の無い部分があったり、あるいは
図13に示すように、固定電極12の外周に沿って絶縁層13が形成されておらず、絶縁層13の外周が前記固定電極12の外周より一回り小さい形態であっても、「全域」と定義する。また、延出表面20の90%以上の領域が絶縁層13で覆われていれば全域と判断する。絶縁層13を固定電極12の外周に沿ってから削除すると、プロセスは増加するが、後でダイシングする際に絶縁層13のチッピング等を防止することができる。このような問題が無ければ、絶縁層13が固定電極12の延出表面20の表面全体に設けた方がプロセスもその分少なくなるため、好ましい。
【0050】
また形態によっては、固定電極12の外周に低い段差を設けるなどして、もともと絶縁層13の形成が成されない領域があれば、その領域は「延出表面20」に含まれない。
【0051】
また
図14に示すように、絶縁層13が可動電極12の周囲全周に沿ってはみ出しており、固定電極12の延出表面20の全域を覆っていない状態であってもよい。
図14では、絶縁層13は、各端子部22,23の周囲全周にもはみ出している。
【0052】
図14に示す実施形態であっても、固定電極12と可動電極11間の封止性を従来に比べて向上させることができる。なお、固定電極12の延出表面20の全域に絶縁層13を設けたほうが、より効果的に封止性を向上させることができるし、また製造プロセスも楽である。
【0053】
図5ないし
図12を用いて
図1,
図2に示す本実施形態の静電容量型圧力センサの製造方法について説明する。
【0054】
図5に示す工程では、第1シリコン基板30の表面30aにレジスト層31をパターン形成し、レジスト層31に覆われていない表面30aを、RIEなどのイオンエッチング手段により一定厚だけ削り込む。これにより表面30aに凹部32を形成できる。第1シリコン基板30は後に可動電極11となる側の基板であり、表面20aは固定電極12との対向面側である。そして凹部32を形成した部分は将来、感圧ダイヤフラム14の薄肉部17となる部分である。
図5では、凹部32をリング状で形成し、凹部32の中心部分30bを削らずに残したが、この中心部分30bが、感圧ダイヤフラム14の凸部18となる。
【0055】
図6に示す工程では、
図5のレジスト層31を除去した後、第1シリコン基板30の表面を熱酸化する。これにより、第1シリコン基板30の表面30a及び裏面30c側も熱酸化による絶縁層(SiO
2)33,34が形成される。第1シリコン基板30の表面30aに形成される絶縁層33は、表面30aの凹凸に倣ってほぼ一定厚で形成できる。なお
図6では図示を省略したが、実際には第1シリコン基板30の側面も熱酸化され、最終的に前記側面は除去される。
【0056】
次に
図7に示す工程では、第1シリコン基板30の表面30aに形成された絶縁層33上にレジスト層35を形成し、レジスト層35に覆われていない絶縁層33をイオンエッチング等の既存方法で除去する。
図7に示す点線部分の絶縁層33が除去される。レジスト層35を、後に感圧ダイヤフラム14となる表面に形成しない。また、
図7に示すように、凹部32の外周に位置する側壁面32a、後に、感圧ダイヤフラム14の薄肉部17と周縁部16との間の側壁面17aとなる部分に一部、絶縁層33が残るように、レジスト層35の形状やエッチング条件を規制する。例えばレジスト層35の内側側面35aを、凹部32の側壁面32aと高さ方向でやや重なるか、あるいは側壁面32aの上端部32a1と高さ方向で一致するように調整することで、レジスト層35の内側側面35aが壁になってその近辺の絶縁層33は削られにくく、側壁面32a上に絶縁層33を残すことができる。
【0057】
絶縁層33が残された部分が、次工程で第2シリコン基板40(固定電極)と接合される接合領域である。
【0058】
なお
図8以降、残された絶縁層33を
図2で使用した絶縁層13として説明する。
図8の工程では、
図7のレジスト層35を除去した後、
図7の第1シリコン基板30をひっくり返し、第1シリコン基板30の凹部32及び絶縁層13が形成された側を固定電極12となる第2シリコン基板40上に当接させる。そして両シリコン基板30,40間をシリコンフュージョンボンディングにより接合する。シリコンフュージョンボンディングはシリコン直接接合の一種であり、例えば熱酸化による絶縁層13を備える第1シリコン基板30と、シリコン基板40とを水素結合により貼り合わせた後、加熱処理してSi−O−Siにより接合する技術である。熱処理温度としては、700〜1100℃程度で、熱処理時間は、1時間以上とする。
【0059】
次に
図9の工程では、第1シリコン基板30及び第2シリコン基板40の双方を所定厚にまで切削加工等により削り込む。点線部分が削り込まれたシリコン基板を示す。これにより所定厚の固定電極12が完成する。以降、第2シリコン基板40を固定電極12として説明する。
【0060】
図10に示す工程では、第1シリコン基板30の表面にレジスト層41を形成し、レジスト層41に覆われていない、第1シリコン基板30及び絶縁層13をディープRIE等のイオンエッチング技術を用いて削り込み、固定電極12の表面にまで通じるコンタクトホール27を形成する。
【0061】
ここでコンタクトホール27の形成位置は、後に
図1,
図2に示す分離層26となる部分である。
【0062】
そして前記レジスト層41を除去して新たなレジスト層(図示しない)を設けたり、あるいはレジスト層41をそのまま利用して、コンタクトホール27内にAl等の金属層からなる第2電極パッド28をスパッタ、蒸着、あるいはめっき等の既存方法により形成する。またこのとき、
図1に示す第1電極パッド25も引き出し配線層24の先端部24aとなる表面に形成する。
【0063】
次に
図12に示す工程では、第1シリコン基板30の表面にレジスト層42を形成し、レジスト層42に覆われていない第1シリコン基板30をRIE等のイオンエッチング技術を用いて除去する。レジスト層42の平面パターンは、
図1に示す可動電極11、引き出し配線層24及び分離層26の平面形状である。第1シリコン基板30を削り込むとき、絶縁層13まで除去されないように選択的なエッチング処理を行うことが必要である。
【0064】
また
図12の工程では、可動電極11が、固定電極12の外周側面12aよりも内側に形成されるように、第1シリコン基板30を削り込む。
【0065】
これにより可動電極11の周囲に広がる固定電極12の延出表面20の全域に絶縁層13を残すことが出来る。
【0066】
可動電極11は、高さ方向に変位可能な感圧ダイヤフラム14とその周囲の周縁部16とを有し、周縁部16と固定電極12との間が絶縁層13により接合されている。
【0067】
図12の工程で、できる限り(可能な範囲で)可動電極11の幅T2を狭めることで寄生容量を低減でき、一方、絶縁層13は、固定電極12の延出表面20の全域に残されるので、絶縁層13の機械的な強度を十分に保つことができ、可動電極11と固定電極12間の封止性を効果的に高めることができる。
【0068】
また
図6工程に示したように本実施形態では可動電極11を形成する第1シリコン基板30の表面を熱酸化して絶縁層33を形成し、
図7工程で、感圧ダイヤフラム14の部分の絶縁層33を除去した後、
図8工程で、第1シリコン基板30と第2シリコン基板40とをシリコンフュージョンボンディングにより接合している。これにより
図12の工程で、第1シリコン基板30の不要部分を除去したときに、可動電極11の周縁部16の幅が狭くなっても、周縁部16と絶縁層13との接合力(結合力)は十分に高く、一方、固定電極12と絶縁層13間は広い接合面積を有しているため、絶縁層13を介した可動電極11と固定電極12間の接合力を効果的に高めることができ、封止性を向上させることが可能である。
【0069】
特に
図7で説明したように、絶縁層33を側壁面32a、後に、感圧ダイヤフラム14の薄肉部17と周縁部16との間の側壁面17aとなる部分に一部、残すことで、
図12の状態で、固定電極12と可動電極11間の絶縁層13を介した接合力をより高めることができ、より効果的に封止性を向上させることが可能になる。
【0070】
また本実施形態では、
図8工程における両シリコン基板30,40の貼り合わせの際にアライメントが必要であるものの、第2シリコン基板40の全体が固定電極12であるから、例えば特許文献1に示す構造に比べて、両シリコン基板30,40間のアライメントの許容範囲を広げることができ、製造工程を容易化できる。また本実施形態では、特別な設備投資等が必要でなく製造コストの上昇を抑制することができる。
【実施例】
【0071】
図15に示す静電容量型圧力センサを作製した。符号50が感圧ダイヤフラム50であり、符号50aがリング状の薄肉部であり、符号50b薄肉部50aの中心に位置する凸部50bである。符号51が感圧ダイヤフラム50の周囲に位置する周縁部である。符号52が固定電極である。符号53が絶縁層である。絶縁層53は、周縁部51に熱酸化により形成されたものであり、膜厚は約0.8μmであった。そして可動電極と固定電極とをシリコンフュージョンボンディングにより接合した。
【0072】
実験では、凸部50bの幅寸法(直径)T3を350μm、400μm、500μm、及び600μmと変化させ、薄肉部50aの幅寸法T4、及び絶縁層53(周縁部51の幅は絶縁層53よりも5μm大きい)の幅寸法T5を夫々、10μm、30μm、50μm、70μmと変化させ、寄生容量(pF)を測定した。
その実験結果を下記の表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
薄肉部50aの幅寸法T4及び、及び絶縁層53の幅寸法T5を一定として、凸部50bの幅寸法(直径)T3を小さくしていくと、寄生容量は小さくなることがわかった。
【0075】
また、凸部50bの幅寸法(直径)T3及び薄肉部50aの幅寸法T4を一定として、絶縁層53の幅寸法T5を小さくしていくと、寄生容量は小さくなることがわかった。
【0076】
また、凸部50bの幅寸法(直径)T3及び絶縁層53の幅寸法T5を一定として、薄肉部50aの幅寸法T4を小さくしていくと、寄生容量は小さくなることがわかった。
【0077】
ただし、絶縁層53の幅寸法T5を小さくしたほうが、薄肉部50aの幅寸法T4を同じように小さくするよりも効果的に、寄生容量を小さくできることがわかった。
【0078】
実験結果を踏まえて、凸部50bの幅寸法(直径)T3及び薄肉部50aの幅寸法T4を、出力特性等を考慮して限界まで小さく形成し、可能な限り絶縁層53の幅寸法T5を、薄肉部50aの幅寸法T4以下に小さく形成することで、効果的に寄生容量を低減でき、さらに、本実施形態では、可動電極の周囲に広がる固定電極の延出表面に絶縁層を残すことで封止性を向上させた。