(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5695790
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】大容量送水システム
(51)【国際特許分類】
F04D 15/00 20060101AFI20150319BHJP
A62C 27/00 20060101ALI20150319BHJP
G01F 23/00 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
F04D15/00
A62C27/00
G01F23/00
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-211320(P2014-211320)
(22)【出願日】2014年10月16日
【審査請求日】2014年10月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000215822
【氏名又は名称】帝国繊維株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(72)【発明者】
【氏名】倉田 稔
(72)【発明者】
【氏名】阿部 和弘
【審査官】
所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−105144(JP,A)
【文献】
特表2008−505701(JP,A)
【文献】
特開昭61−131765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 15/00
A62C 27/00
G01F 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)取水用水中ポンプ、油圧ホースを介して該取水用水中ポンプを駆動するディーゼルエンジン、該ディーゼルエンジンの燃料を貯蔵するタンクでありかつ該タンク内の燃料残量レベルを常時検知する燃料残量計センサーが付設された燃料タンク、および前記取水用水中ポンプにより取水した水を吐水する吐水機構を少なくとも積載した大容量送水車輌、
(b)該大容量送水車輌と別個に設けられた燃料備蓄タンク、
(c)該燃料備蓄タンクと前記大容量送水車輌の間に設けられ、かつ、前記燃料残量計センサーによって常時検知されて送られる燃料残量レベル信号に基づいて、前記燃料備蓄タンク内に備蓄されている燃料の前記燃料タンクへの供給と停止をオン・オフ制御により自動的に行う自動供給ポンプ機構、
を少なくとも有して構成されてなることを特徴とする大容量送水システム。
【請求項2】
前記大容量送水車輌に積載された燃料タンク内の燃料残量レベル信号が、予め設定されたレベルまでに燃料残量が減少したことを示したときに、前記燃料備蓄タンク内の燃料の該燃料タンクへの供給を開始するように設定されてなることを特徴とする請求項1記載の大容量送水システム。
【請求項3】
前記大容量送水車輌に積載された燃料タンク内の燃料残量レベル信号が、予め設定されたレベルまでに燃料残量が増加したことを示したときに、前記燃料備蓄タンク内の燃料の該燃料タンクへの供給を停止するように設定されてなることを特徴とする請求項1または2記載の大容量送水システム。
【請求項4】
請求項2記載の燃料備蓄タンク内の燃料の前記燃料タンクへの供給開始方式と、請求項3記載の燃料備蓄タンク内の燃料の前記燃料タンクへの供給停止方式を採用するとともに、請求項2記載の燃料備蓄タンク内の燃料の前記燃料タンクへの供給開始からの累積燃料供給量を検知して、予め設定された累積燃料供給量に達したときに、前記燃料備蓄タンク内からの燃料供給を停止するように設定した第二の燃料供給停止方式を採用してなることを特徴とする請求項1記載の大容量送水システム。
【請求項5】
請求項4に記載の予め設定された累積燃料供給量が、前記大容量送水車輌に積載された燃料タンク容量の80%以上100%以下に相当して設定されたものであることを特徴とする請求項4記載の大容量送水システム。
【請求項6】
請求項1に記載の大容量送水システムを用いた大容量の送水方法であって、大容量送水車輌に積載された燃料タンク内の燃料残量レベル信号が、該燃料タンク容量100%に対して、残量15%〜45%を含む特定範囲に対応して予め設定されたレベル以下にまで減少したことを示したときに、燃料備蓄タンクからの、該大容量送水車輌に積載された前記燃料タンクへの燃料供給を開始するように構成したことを特徴とする大容量送水方法。
【請求項7】
請求項1に記載の大容量送水システムを用いた大容量の送水方法であって、大容量送水車輌に積載された燃料タンク内の燃料残量レベル信号が、該燃料タンク容量100%に対して、残量80%〜90%を含む特定範囲に対応して予め設定されたレベル以上にまで増加したことを示したときに、燃料備蓄タンクからの、該大容量送水車輌に積載された前記燃料タンクへの燃料供給を停止するように構成したことを特徴とする大容量送水方法。
【請求項8】
請求項6に記載された大容量送水車輌に積載された燃料タンクへの燃料供給開始方法と、請求項7に記載された大容量送水車輌に積載された燃料タンクへの燃料供給停止方法を採用してなることを特徴とする大容量送水方法。
【請求項9】
請求項6に記載された大容量送水車輌に積載された燃料タンクへの燃料供給開始方法と、請求項7に記載された大容量送水車輌に積載された燃料タンクへの燃料供給停止方法を採用し、かつ、請求項6に記載の燃料備蓄タンク内の燃料の燃料タンクへの供給開始を始めたときからの累積燃料供給量を検知して、予め設定された累積燃料供給量に達したときに、前記燃料備蓄タンク内からの燃料供給を停止する第二の燃料供給停止方法を併用してなることを特徴とする大容量送水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大容量送水システムに関する。
【0002】
さらに詳しくは、大型機器・設備の冷却あるいは消火活動等のために必要となる大量の水を、川や海、湖沼などの無限水利ポイントからたとえ短時間でも途切れることなく、確実に連続して、無人運転のもとで取水と送水を行うことや、洪水地帯等からの大量の水の排出・送水を可能にする大容量送水システムに関する。
【背景技術】
【0003】
近年、大型機器・設備の冷却をするため、あるいは消火活動等のために必要な大量の水を、川や海、湖沼などの無限水利ポイントから所望の地点に送水することが要請される場合があり、そうした送水装置に関する提案もされている(特許文献1−2)。
【0004】
こうした送水装置を稼働させる場合、特に長期間にわたり稼働させて長期にわたる連続的な送水を行うような場合、たとえ短時間であってもその送水が途切れないことが要請されるケースがある。
【0005】
たとえば、原子力関係の大型機器・設備においては、それら機器・設備の冷却を継続してすることが重要な意味を有する場合があり、たとえ短時間であっても、送水が途切れて冷却作用が途絶えることは絶対に避けなければならないケースがある。
【0006】
さらに、近年、局地的な非常に強い豪雨などにより、過去に経験したことのないような洪水・冠水状態が発生することがある。このような場合、降りしきる雨の中、一刻も早く大量の水の排出・送水を連続的に行うことが要請されるケースがある。こうした要請に対して、特許文献1、2では、十分な対応ができていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−185031号公報
【特許文献2】特開2008−93199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上述したような点に鑑み、大型機器・設備の冷却やあるいは消火活動等のために必要な大量の水を、たとえ短時間でも途切れることなく、確実に連続的に大量に送水することを実現する大容量送水システムを提供することにあり、特に、取水用のポンプの稼働を短時間でも途切れることなく、確実に継続して実現する大容量送水システムと、該システムを使用した具体的な大容量送水方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成する本発明の大容量送水システムは、以下の(1)の構成を有する。
(1)(a)取水用水中ポンプ、油圧ホースを介して該取水用水中ポンプを駆動するディーゼルエンジン、該ディーゼルエンジンの燃料を貯蔵するタンクでありかつ該タンク内の燃料残量レベルを常時検知する燃料残量計センサーが付設された燃料タンク、および前記取水用水中ポンプにより取水した水を吐水する吐水機構を少なくとも積載した大容量送水車輌、
(b)該大容量送水車輌と別個に設けられた燃料備蓄タンク、
(c)該燃料備蓄タンクと前記大容量送水車輌の間に設けられ、かつ、前記燃料残量計センサーによって常時検知されて送られる燃料残量レベル信号に基づいて、前記燃料備蓄タンク内に備蓄されている燃料の前記燃料タンクへの供給と停止をオン・オフ制御により自動的に行う自動供給ポンプ機構、
を少なくとも有して構成されてなることを特徴とする大容量送水システム。
【0010】
また、かかる本発明の大容量送水システムにおいて、下記(2)〜(5)のいずれかの構成を有することが好ましい。
(2)前記大容量送水車輌に積載された燃料タンク内の燃料残量レベル信号が、予め設定されたレベルまでに燃料残量が減少したことを示したときに、前記燃料備蓄タンク内の燃料の該燃料タンクへの供給を開始するように設定されてなることを特徴とする上記(1)記載の大容量送水システム。
(3)前記大容量送水車輌に積載された燃料タンク内の燃料残量レベル信号が、予め設定されたレベルまでに燃料残量が増加したことを示したときに、前記燃料備蓄タンク内の燃料の該燃料タンクへの供給を停止するように設定されてなることを特徴とする上記(1)または(2)記載の大容量送水システム。
(4)上記(2)記載の燃料備蓄タンク内の燃料の前記燃料タンクへの供給開始方式と、上記(3)記載の燃料備蓄タンク内の燃料の前記燃料タンクへの供給停止方式を採用するとともに、上記(2)記載の燃料備蓄タンク内の燃料の前記燃料タンクへの供給開始からの累積燃料供給量を検知して、予め設定された累積燃料供給量に達したときに、前記燃料備蓄タンク内からの燃料供給を停止するように設定した第二の燃料供給停止方式を採用してなることを特徴とする上記(1)記載の大容量送水システム。
(5)上記(4)に記載の予め設定された累積燃料供給量が、前記大容量送水車輌に積載された燃料タンク容量の80%以上100%以下に相当して設定されたものであることを特徴とする上記(4)記載の大容量送水システム。
【0011】
また、本発明の大容量送水方法は、上記(1)の大容量送水システムを使用し、その運転方法を具体的に特定した下記(6)〜(9)のいずれかの構成を有するものである。
(6)上記(1)に記載の大容量送水システムを用いた大容量の送水方法であって、大容量送水車輌に積載された燃料タンク内の燃料残量レベル信号が、該燃料タンク容量100%に対して、残量15%〜45%を含む特定範囲に対応して予め設定されたレベル以下にまで減少したことを示したときに、燃料備蓄タンクからの、該大容量送水車輌に積載された前記燃料タンクへの燃料供給を開始するように構成したことを特徴とする大容量送水方法。
(7)上記(1)に記載の大容量送水システムを用いた大容量の送水方法であって、大容量送水車輌に積載された燃料タンク内の燃料残量レベル信号が、該燃料タンク容量100%に対して、残量80%〜90%を含む特定範囲に対応して予め設定されたレベル以上にまで増加したことを示したときに、燃料備蓄タンクからの、該大容量送水車輌に積載された前記燃料タンクへの燃料供給を停止するように構成したことを特徴とする大容量送水方法。
(8)上記(6)に記載された大容量送水車輌に積載された燃料タンクへの燃料供給開始方法と、上記(7)に記載された大容量送水車輌に積載された燃料タンクへの燃料供給停止方法を採用してなることを特徴とする大容量送水方法。
(9)上記(6)に記載された大容量送水車輌に積載された燃料タンクへの燃料供給開始方法と、上記(7)に記載された大容量送水車輌に積載された燃料タンクへの燃料供給停止方法を採用し、かつ、上記(6)に記載の燃料備蓄タンク内の燃料の燃料タンクへの供給開始を始めたときからの累積燃料供給量を検知して、予め設定された累積燃料供給量に達したときに、前記燃料備蓄タンク内からの燃料供給を停止する第二の燃料供給停止方法を併用してなることを特徴とする大容量送水方法。
【発明の効果】
【0012】
請求項1にかかる本発明の大容量送水システムによれば、無限水利ポイントなどから取水を行う取水用水中ポンプの駆動を行うディーゼルエンジンへの燃料供給を、たとえ短時間であっても途絶えることなく、確実に連続無人運転を行うことができる。その点で、大型機器・設備の冷却やあるいは消火活動等のために必要な大量の水を、たとえ短時間でも途切れることなく、確実に連続的に大量に送水することを実現する大容量送水システムが提供される。
【0013】
すなわち、本発明によれば、取水用水中ポンプを油圧駆動させるディーゼルエンジンの燃料がなくなるという事態に起因する取水・送水の停止という事態発生を確実になくすことができ、途切れることなく、連続的に大量に送水することを実現できる。
【0014】
したがって、本発明の大容量送水システムを用いれば、例えば、
(a)原子力関係設備の冷却等を連続的に行うのに必要な、大量の水の連続的な取水・送水、
(b)泡混合消火方式や通常の消火活動等でその消火活動を連続的に行うのに必要な、大量の水の連続的な取水・送水、
(c)洪水・冠水などの災害対応時(災害発生前、災害発生後)で必要な、緊急かつ連続的な大量の水の排出と水輸送、
など、各種の連続した大容量送水が要請される事態などに対応し、その要請に極めて有効に応えることができるものである。
【0015】
これら(a)、(b)または(c)などにより、原子力関係設備の安全な稼働運転を実現することや、大規模な石油コンビナート火災等の消火を効果的に行うこと、あるいは自然災害の未然発生防止や災害からの早期の復旧回復を行い得るようにすることなどは、すべて、自然環境の破壊防止、自然環境の回復、CO
2 の削減などの効果にも繋がるものであり、意義は大きい。
【0016】
また、請求項2〜請求項5のいずれかにかかる本発明の大容量送水システムによれば、上述した請求項1にかかる本発明の大容量送水システムがもたらす効果を、より一層確実にかつより大きく得ることができる大容量送水システムが提供される。
【0017】
また、請求項6〜請求項9のいずれかにかかる本発明の大容量送水方法によれば、上述した請求項1にかかる本発明の大容量送水システムがもたらす効果を、より一層確実にかつより大きく得ることができる具体的な大容量送水方法が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明にかかる大容量送水システムの構成をモデル的に示した概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、更に詳しく本発明の大容量送水システムについて、説明する。
【0020】
図1にシステム構成の全体概要を示したように、本発明の大容量送水システム1は、以下の要件(a)、(b)および(c)を少なくとも有して構成されていることを特徴とする。
【0021】
すなわち、
(a)取水用水中ポンプ3、油圧ホース(油圧ホース(送り)5A、油圧ホース(戻り)5B)を介して該取水用水中ポンプ3を駆動するディーゼルエンジン6、該ディーゼルエンジン6の燃料を貯蔵するタンクであってかつ該タンク内の燃料残量レベルを常時検知する燃料残量計センサー(図示せず)が付設された燃料タンク4、および前記取水用水中ポンプ3により取水した水を吐水する吐水機構7を少なくとも積載した大容量送水車輌2、(b)該大容量送水車輌2と別個に設けられた燃料備蓄タンク8、
(c)該燃料備蓄タンク8と前記大容量送水車輌2の間に設けられ、かつ、前記燃料残量計センサーによって常時検知されて送られる燃料残量レベル信号に基づいて、前記燃料備蓄タンク8内に備蓄されている燃料の前記燃料タンク4への供給と停止をオン・オフ制御により自動的に行う自動供給ポンプ機構10、
である。
【0022】
図1において、2個の取水用水中ポンプ3によって川や海、湖沼などの無限水利ポイント15から取水された水は、取水用水中ポンプ3から取水送水ホース9を介して大容量送水車輌2に送られる。
【0023】
大容量送水車輌2には、取水用水中ポンプ3を駆動するディーゼルエンジン6、該ディーゼルエンジン6の燃料を貯蔵するタンクであってかつ該タンク内の燃料残量レベルを常時検知する燃料残量計センサー(図示せず)が付設された燃料タンク4、および取水用水中ポンプ3により取水した水を吐水する吐水機構7が設けられている。吐水機構7は、具体的には、例えば、送水用ブーストポンプ(図示せず)や吐水口(図示した7は、この吐水口である)等からなる。
【0024】
11、12は、送燃料(送油)ホースであり、燃料備蓄タンク8内に備蓄されている、大容量送水車輌2に積載されているディーゼルエンジン6の燃料(軽油)を、自動供給ポンプ機構10に送り(送油ホース11)、さらに、自動供給ポンプ機構10から大容量送水車輌2に積載された燃料タンク4に燃料を送る(送油ホース12)ものであり、例えば直径が1インチなどの軽油用の送油ホースである。
【0025】
14は、燃料タンク4内の燃料残量レベルを常時検知する燃料残量計センサーによって検知された燃料タンク4内の燃料残量を示すレベル信号を自動供給ポンプ機構10に送る信号ケーブルであって、かつ、大容量送水車輌2に積載されているバッテリー13から自動供給ポンプ機構10に駆動電力を送る電源ケーブルである。
【0026】
自動供給ポンプ機構10は、受信した燃料タンク4内の燃料残量を示す残量レベル信号に基づいて、燃料備蓄タンク8内から燃料タンク4への燃料の供給と停止をオン・オフ制御によって電磁弁の開閉を自動的に行うように設定されている。
【0027】
標準的と言える本発明の大容量送水システムでは、大容量送水車輌2と燃料備蓄タンク8との間の距離は100m〜数100mが一般的なものである。ただし、該距離は送水が必要な対象物の状況で変更されるべきものであり、特に限定されるものではない。
【0028】
取水用水中ポンプ3は、非稼働時は、例えば2台が大容量送水車輌2に積載されているものであり、出動・稼働時には、
図1にモデルを示したように、川や海、湖沼などの無限水利ポイント15に投下されて使用される。取水用水中ポンプ3は、非稼働時には大容量送水車輌2内に積載されているものなので、稼働時の移動と水上配備のためフロートと車輪が取り付けられたフレームに取付け固定されていることが望ましい。
【0029】
上述したように大容量送水システム1を構成することにより、自動供給ポンプ機構10は、受信した燃料タンク4内の燃料残量を示す残量レベル信号に応じて、燃料備蓄タンク8内から燃料タンク4へのディーゼルエンジン6の燃料の供給と停止をオン・オフ制御によって自動的に行うことができる。これにより、取水水中ポンプ3を油圧駆動させるディーゼルエンジン6の燃料がなくなるという事態に起因する取水・送水の停止という事態発生を確実になくすことができ、取水水中ポンプ3の運転を途切れることなく連続的な大容量送水システムの無人稼働と無人での取水・送水ができるものである。
【0030】
このシステムは、ディーゼルエンジン6、バッテリー13ともに大容量送水車輌2自体を駆動する機構とは独立しているものであり、該大容量送水車輌2本体からの動力をとらない自己完結型のシステムであり、車輌2本体の排ガス対応などに関わらずに長時間の連続運転を可能にするものである。
【0031】
特に、短時間でも途切れることなくシステムの長時間の確実に連続した運転を可能にする上で、本発明者らの知見によれば、本発明の大容量送水システムを具体的に以下のように構成して稼働させることが好ましい。
【0032】
すなわち、大容量送水車輌2に積載された燃料タンク4内の燃料残量レベル信号が、予め設定されたレベルまでに燃料残量が減少したことを示したときに、燃料備蓄タンク8内の燃料の該燃料タンクへの供給を開始するように燃料供給開始方法(上記(2)の供給開始方法)を構成することが好ましく、また、大容量送水車輌2に積載された燃料タンク4内の燃料残量レベル信号が、予め設定されたレベルまでに燃料残量が増加したことを示したときに、燃料備蓄タンク8内の燃料の燃料タンク4への供給を停止するように燃料供給停止方法(上記(3)の供給停止方法)を構成することが好ましい。
【0033】
そして、上記(2)の供給開始方式と、上記(3)の供給停止方式を採用した上であっても、さらに、燃料の過剰供給という事態発生を確実に防ぐための供給停止のダブルチェックとして、燃料備蓄タンク8内の燃料の燃料タンク4への供給開始からの燃料供給総量を検知して、予め設定された燃料供給総量に達したときにも、燃料備蓄タンク8内からの燃料供給を停止するように自動供給ポンプ機構10を制御する第二の燃料供給停止方法(上記(4)の供給停止方法)を採用して構成されていることが好ましい。
【0034】
その場合、「予め設定された累積燃料供給量」は、上記(3)の方法にて記載の「予め設定された一定レベル」の時点に対応した累積燃料供給量と、最大で同等のものであることが好ましく、かつ、前記大容量送水車輌2に積載された燃料タンク4の容量の80%以上100%以下に相当して設定されたものであることが好ましい。
【0035】
上記(2)の供給開始方法と、上記(3)の供給停止方法は、いずれも燃料残量レベル信号に基づいて制御されるものであって、「タンク内の油面の高さ位置」を検知して、残量情報として制御に利用するものであるが、油面の高さ位置情報は、残量の絶対量の値を数値的に示すものではないので、検知精度の限界、それによる検知誤差も考えられる。そうした点から、上記(4)の第二の供給停止方法は、「供給燃料量の累積量」としての数値(絶対量)に基づいたオン・オフ制御によっても、電磁弁の開閉を自動的に行い供給停止をするように構成されているものである。
【0036】
このようにして、燃料タンク4への燃料過剰供給という事態の発生を、ダブルチェック機能を有して構成した自動供給停止方法(上記(3)および(4)を併用した自動供給停止方法)を採用することにより確実に防ぐことができ、より確実に連続した無人運転を支障なく継続することができるようになる。
【0037】
上述したように、上記(2)の供給開始方法と、上記(3)の供給停止方法は、いずれも燃料残量レベル信号に基づいて制御されるものであり、「タンク内の油面の高さ位置」を検知して、残量情報として制御に利用するものであるが、本発明者らの知見によれば、上記(2)の供給開始方法においては、大容量送水車輌2に積載された燃料タンク4内の燃料残量レベル信号が、燃料タンク4の容量100%に対して、残量15%〜45%を含む特定範囲に対応して予め設定されたレベル以下にまで減少したことを示したときに、燃料備蓄タンク8からの燃料タンク4への燃料供給を開始するように構成することが好ましい。
【0038】
また、上記(3)の供給停止方法においては、大容量送水車輌2に積載された燃料タンク4内の燃料残量レベル信号が、燃料タンク4の容量100%に対して、残量80%〜90%を含む特定範囲に対応して予め設定されたレベル以上にまで増加したことを示したときに、燃料備蓄タンク8からの燃料タンク4への燃料供給を停止するように構成することが好ましい。
【0039】
本発明の上記説明において、「(燃料)残量(%)」とは、燃料タンク4の全容量(単位は、例えばリットル)に対する、タンク内に残っている燃料の絶対量(単位は、例えばリットル)の百分率をいうものであり、油面の高さ位置(単位は、例えばセンチメートル)を基準としていうものではない。本来、燃料タンク4の立体的形状、大容量送水車輌の傾き等によって、残量と油面の高さ位置は相対関係を有さない場合もあるからである。ただし、経験的に「その燃料タンク4の残量」と「油面の高さ位置」の相対関係が把握できるのであれば、その燃料タンク4の残量をいちいち計量しなくても、油面の高さレベル情報だけに対応させて、本発明の大容量送水システムによる上記(6)、(7)の送水方法を適切に実施することができるものであり実際的である。
【0040】
なお、上記説明において、「残量15%〜45%を含む特定範囲」、「残量80%〜90%を含む特定範囲」とは、その数値範囲の全域を丸々含む範囲であることを意味しているのではなく、その数値範囲に含まれる一点でも含むのであれば、該特定範囲に該当するものであることを意味している。
【0041】
本発明の大容量送水システムにおいて、燃料備蓄タンク8および自動供給ポンプ機構10は、大容量送水車輌2には車載されないものであるが、移動が可能なように、それぞれ他の車輌に積載されるように構成しても構わない。このように構成すると、自然災害による洪水・冠水状態に対して、特に排水設備などが予め設けられていない地点でも、必要設備を全て車載式で運ぶことができて、場所を問わずに、早期に連続的に稼働する水の排出・送水システムを構築することができる。
【0042】
本発明の大容量送水システムによれば、無限水利ポイントなどから取水を行う取水用水中ポンプを油圧駆動させるディーゼルエンジンの燃料がなくなるという事態に起因する取水・送水の停止という事態発生を確実になくすことができ、途切れることなく、連続的に無人運転で大量の送水をすることが実現できる。
【0043】
したがって、本発明の大容量送水システムは、例えば、原子力関係設備の冷却用水の送水、泡混合消火方式での消火、災害時の水輸送などに際して使用することができるものである。
【0044】
また、近年、増加している洪水、冠水などの自然災害に対応して、災害発生直前(河川等の氾濫防止)や災害発生後などにおいて要請される、緊急かつ連続的な大量の水の排出(取水)と水輸送を、極めて有効に行うことができるものである。
【0045】
しかして、本発明によれば、原子力関係設備の安全な稼働運転を実現することや、大規模な石油コンビナート火災等の消火を効果的に行うこと、あるいは自然災害の未然発生防止や自然災害からの早期の復旧回復を行い得るようにでき、これらのことは、自然環境の破壊防止と維持、自然環境の回復、CO
2 の削減などの効果にも繋がるものであり、意義は大きい。
【符号の説明】
【0046】
1:大容量送水システム
2:大容量送水車輌
3:取水用水中ポンプ
4:燃料タンク
5A:油圧ホース(送り)
5B:油圧ホース(戻り)
6:ディーゼルエンジン
7:吐水機構
8:燃料備蓄タンク
9:取水送水ホース
10:自動供給ポンプ機構
11:送燃料(送油)ホース
12:送燃料(送油)ホース
13:バッテリー
14:信号ケーブル・バッテリー電源ケーブル
15:無限水利ポイント
【要約】
【課題】大型機器・設備の冷却やあるいは消火活動等のために必要な大量の水を、途切れることなく、確実に連続的に大量に送水することを実現する大容量送水システムを提供する。特に取水用のポンプの稼働を短時間でも途切れることなく確実に継続して運転できる大容量送水システムを提供する。
【解決手段】(a)取水用水中ポンプ、油圧ホースを介して該取水用水中ポンプを駆動するディーゼルエンジン、該ディーゼルエンジンの燃料を貯蔵するタンクでありかつ該タンク内の燃料残量レベルを常時検知する燃料残量計センサーが付設された燃料タンク、および前記取水用水中ポンプにより取水した水を吐水する吐水機構を少なくとも積載した大容量送水車輌、
(b)該大容量送水車輌と別個に設けられた燃料備蓄タンク、
(c)該燃料備蓄タンクと前記大容量送水車輌の間に設けられ、かつ、前記燃料残量計センサーによって常時検知されて送られる燃料残量レベル信号に基づいて、前記燃料備蓄タンク内に備蓄されている燃料の前記燃料タンクへの供給と停止をオン・オフ制御により自動的に行う自動供給ポンプ機構、
を少なくとも有して構成されてなる大容量送水システム。
【選択図】
図1