(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5695794
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】履物の底部材
(51)【国際特許分類】
A43B 13/14 20060101AFI20150319BHJP
【FI】
A43B13/14 B
A43B13/14 A
A43B13/14 Z
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-500198(P2014-500198)
(86)(22)【出願日】2013年5月22日
(86)【国際出願番号】JP2013064269
【審査請求日】2014年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】391038501
【氏名又は名称】株式会社卑弥呼
(74)【代理人】
【識別番号】100096426
【弁理士】
【氏名又は名称】川合 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100129469
【弁理士】
【氏名又は名称】池山 和生
(72)【発明者】
【氏名】柴田 一
(72)【発明者】
【氏名】柴田 政男
【審査官】
村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】
実開平5−88305(JP,U)
【文献】
特開2003−144204(JP,A)
【文献】
特開2007−301275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板、カバー、複数のブレード及び液体を備え、
上記底板は、足裏に相当する形状の第1領域と、この第1領域の全周を囲む第1水平フランジ部とを有し、
上記カバーは、上記第1領域に対向する形状の第2領域と、上記第1水平フランジ
部に対向する形状の第2水平フランジ部とを有し、
上記ブレードは、上記第1領域の上面から起立するように形成され、
上記ブレードは、互に所定の間隔を隔てて上記底板のつま先側から踵側に至る中心線に略直交するように配置され、
上記ブレードは、互にスリットによって隔てられた複数の平板ブレード要素からなり、
上記平板ブレード要素は、上記ブレード毎に、つま先側または踵側のいずれかに向って傾斜しており、
上記ブレードにおいて、上記第1領域の横幅方向の両端側に位置する平板ブレード要素は、上方から見て、つま先側または踵側に向かって末広がりになるように配置され、
上記第1水平フランジ部と第2水平フランジ部とは、相互に接合されて上記第1領域と第2領域とによって挟まれた空間を形成し、
上記液体は、上記空間に密封されている
ことを特徴とする履物の底部材。
【請求項2】
上記複数のブレードは、上記第1領域の長手方向の中央部からつま先側に至る範囲に位置する複数のつま先側ブレードと、この中央部から踵側に至る範囲に位置する複数の踵側ブレードとから構成され、
上記つま先側ブレードを構成する複数の平板ブレード要素は、このつま先側ブレード毎に、それぞれつま先側または踵側のいずれかに向って傾斜しており、
上記踵側ブレードを構成する複数の平板ブレード要素は、この踵側ブレード毎に、それぞれ上記つま先側ブレードを構成する平板ブレード要素とは逆の方向に向って傾斜しており、
上記つま先側ブレードにおいて、上記第1領域の横幅方向の両端側に位置する平板ブレード要素は、上方から見て、つま先側または踵側に向かって末広がりになるように傾斜し、
上記踵側ブレードにおいて、上記第1領域の横幅方向の両端側に位置する平板ブレード要素は、上方から見て、上記つま先側ブレードを構成する平板ブレード要素とは逆の方向に向かって末広がりに傾斜している
ことを特徴とする請求項1に記載の履物の底部材。
【請求項3】
つま先側または踵側のいずれかに最も近い上記ブレードは、スリットのない1枚の平板ブレード要素からなる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の履物の底部材。
【請求項4】
上記第1領域の内周壁と上記複数のブレードの横幅方向の両端側との間には、第1仕切り壁がこの第1領域の上面から起立するように形成され、
上記第1仕切り壁の内周側または外周側のいずれかにおいて、この第1仕切り壁と所定の間隔を隔てた位置に、第2仕切り壁が上記第2領域の下面から起立するように形成され、
上記第1仕切り壁と第2仕切り壁とには、それぞれ複数の箇所に溝または切欠き部が設けてあり、
上記第1仕切り壁に設けた溝または切欠き部と、上記第2仕切り壁に設けた溝または切欠き部とは、この溝または切欠き部の中心線に沿う方向から見て、互いに重ならないように配置されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の履物の底部材。
【請求項5】
上記第1領域の内周壁と上記複数のブレードの横幅方向の両端側との間には、第1仕切り壁がこの第1領域の上面から起立するように形成され、
上記第1仕切り壁の内周側または外周側のいずれかにおいて、この第1仕切り壁と
所定の間隔を隔てた位置に、第2仕切り壁が上記第2領域の下面から起立するように形成され、
上記第1仕切り壁と第2仕切り壁とには、それぞれ複数の箇所に溝または切欠き部が設けてあり、
上記第1仕切り壁に設けた溝または切欠き部と、上記第2仕切り壁に設けた溝または切欠き部とは、この溝または切欠き部の中心線に沿う方向から見て、互いに重ならないように配置されている
ことを特徴とする請求項3に記載の履物の底部材。
【請求項6】
上記履物の底部材は、履物の中底または履物の本底のいずれかである
ことを特徴とする請求項1または2に記載の履物の底部材。
【請求項7】
上記履物の底部材は、履物の中底または履物の本底のいずれかである
ことを特徴とする請求項3に記載の履物の底部材。
【請求項8】
上記履物の底部材は、履物の中底または履物の本底のいずれかである
ことを特徴とする請求項4に記載の履物の底部材。
【請求項9】
上記履物の底部材は、履物の中底または履物の本底のいずれかである
ことを特徴とする請求項5に記載の履物の底部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、履物の底部材に関し、特に安定感のある快適な歩行感を得つつ歩行時の衝撃を吸収すると共に、足裏を刺激してマッサージ効果を発揮し、さらには底部材に密封した液体の漏れを防止し得る履物の底部材に関する。
【背景技術】
【0002】
歩行において踵(かかと)が地面に着地するときには、踵に加わる衝撃力は体重の約1.25倍、また、ジョギングにおいては、約3倍にもなるといわれている。この衝撃は踵、くるぶし、膝、さらに腰へと伝達され、これらの部位に負担が生じる。また踵が地面に着地したときに加わる衝撃に比べて、足指で地面を蹴り上げるときの衝撃の方が大きいことも判明している。
【0003】
そこで本発明者は、歩行時に足裏が地面に着地する際に加わる衝撃を分散吸収するとともに、足裏を刺激してマッサージ効果を発揮し得る靴の中底を提案した(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
図17を参照しつつ、上記特許文献1に記載の靴の中底Aの構成を説明する。すなわち上記特許文献1に記載の靴の中底Aは、靴底の形状に相似する底板1とカバー2とを備えている。なお底板1とカバー2とは、いずれも熱可塑性樹脂を使用する。底板1には、足裏が接地する形状に相当する第1の凹部11が形成してあり、カバー2には、この第1の凹部に対向する第2の凹部21が形成されている。
【0005】
底板1の第1の凹部11には、複数のブレード3が一体的に起立して形成してある。複数のブレード3は、それぞれ底板1の長手方向と略直交する方向に所定間隔で整列配置してあり、踵またはつま先に向かって傾斜している。底板1の第1の凹部11の内周壁14と、複数のブレード3の横幅方向の両端との間には、この底板から一体的に起立する仕切り壁15が設けてある。
【0006】
なお複数のブレード3は、底板1に平行な方向であって踵からつま先に向かって見たときには、それぞれブレードの横幅方向の両端部が下方に傾斜する略台形形状に形成してあり、この横幅方向の中途部には、液体4が移動可能な溝31が2箇所形成されている。
【0007】
底板1とカバー2とは、第1の凹部11と第2の凹部21との外周を取り巻く接合部6において相互に溶着されており、この第1の凹部と第2の凹部とで挟まれた密閉空間5に、水やプロピレン・グリコール等の液体4が密封されている。
【0008】
次に上記靴の中底Aの作用を説明する。さて歩行においては、最初に足の踵の部分が着地する。次いで土踏まずの外側へと接地面が広がり、さらに足指の付け根の膨らみ部分(ボール部)に体重が移動する。ボール部に体重を乗せ終わると、左右や前後へのふらつきを抑えようとして、各足指は左右方向に広がる。次に重心を前方向に移動させながら、ボール部から足裏が屈曲してゆき、踵の部分が浮き上がって、足指全体で地面を蹴り上げる。
【0009】
以上の一連の歩行動作において、例えば踵が着地する際には、中底Aにおいて踵が当接する部分に、体重による押圧力が集中的に加わり、その押圧力は、いわゆるパスカルの原理により、第1の凹部11と第2の凹部21とで挟まれた密閉空間5に密封された液体4を介して、この密閉空間のあらゆる内面に等しく伝わる。
【0010】
ところで液体4を密封した密閉空間5に、例えば踵の部分が当接すると、この当接した部分は下方に変位して、その位置にある液体4を押圧する。ここで水やプロピレン・グリコール等の液体4は、非圧縮性であるため、それ自体は収縮しない。したがって例えば踵の部分が当接した部分にある液体4は、他の押圧されていない部分に移動しようとする。
【0011】
しかるに押圧された液体4が、他の押圧されていない部分に移動するためには、密閉空間5が変形したり膨らんだりしなければならない。密閉空間5が変形したり膨らんだりするためには、この密閉空間を構成するシート状の第1の凹部11と第2の凹部21とを、引き伸ばしたり変形させたりする必要があり、そのためには、液体4の圧力が増大することが必要となる。
【0012】
すなわち押圧された液体4が、他の押圧されていない部分に移動すると、密閉空間5内の液体4の圧力は増大し、押圧された部分は、この増大した液体4の圧力による反力を受けることになる。したがって例えば踵が地面に着地する際に加わる衝撃を、この液体4の反力によって吸収することができる。
【0013】
ところで中底Aがブレード3を備えていない場合は、例えば踵が接地するときには、密封された液体4は、密閉空間5内を四方八方に容易に移動するため、カバー2において踵によって押圧された部分が底板1に容易に底付きし、踵が接地するときの衝撃力を、ほとんど緩和することができない。また密封された液体4が、密閉空間5内を四方八方に容易に移動すると、中底Aが足裏を支える力が不安定になって、履き心地が悪くなる。
【0014】
しかるに中底Aが複数のブレード3を備える場合には、例えば踵が接地するときに、この複数のブレードによって、密封された液体4の移動が妨げられる。液体4の移動が妨げられると、カバー2において踵によって押圧された部分が沈むことに対して抵抗力が生じ、底板1に底付きし難くなって、踵が接地するときの衝撃力を緩和することができる。
【0015】
ところで複数のブレード3は、踵またはつま先に向かって傾斜している。ここで複数のブレード3が踵に向かって傾斜する場合について説明すると、踵が接地するときには、中底Aにおいて踵によって押圧された部分の液体4は、密閉空間5内において、つま先に向かって移動しようとする。しかるにブレード3は、液体4がつま先に向かう移動方向とは逆の方向、すなわち踵に向かう方向に傾斜しているため、この液体の移動を妨げる抵抗力がより強くなり、したがって踵が接地するときの衝撃力を、より効果的に緩和することができる。
【0016】
なお複数のブレード3がつま先に向かって傾斜する場合には、つま先が接地するときの衝撃力を、より効果的に緩和することができる。さらには、複数のブレード3の一部が踵に向かって傾斜し、他のブレードがつま先に向かって傾斜する場合には、踵及びつま先が接地するときの衝撃力を、それぞれより効果的に緩和することができる。
【0017】
以上に加えて複数のブレード3は、それぞれ底板1に起立するように形成されており、上述したように踵またはつま先に向かって傾斜している。したがって例えば踵によって中底Aが押圧されると、ブレード3の弾性力による反発力が生じる。よって上述した液体4の作用に加え、ブレード3の反発力によって、カバー2において押圧された部分が沈むことに対して、より強い抵抗力を発揮する。
【0018】
このため、例えば踵によって中底Aが押圧されたときに、カバー2を底板1に底付きし難くして、踵が接地するときの衝撃力を、さらに効果的に緩和することができる。また足裏を支える力が安定し、履き心地が良い状態になる。
【0019】
さらには歩行に際して、複数のブレード3の先端が、順次カバー2を介して足裏を刺激するため、足裏をマッサージする効果を発揮する。ここで液体4が密封されていない場合には、複数のブレード3の先端がカバー2を介して足裏に当接する力が強くなり、足裏を過度に刺激して、痛みを生じる場合がある。
【0020】
しかるに液体4が密封されている場合には、この液体の抵抗力によって、複数のブレード3の先端がカバー2を介して足裏に当接する力が適度に抑えられるため、心地よいマッサージ効果が得られる。
【0021】
以上説明したように、特許文献1に記載の靴の中底Aは、この中底内に密封した液体4と、底板1から起立する複数の傾斜したブレード3によって、歩行時に足裏が地面に着地する際に加わる衝撃を分散吸収するとともに、足裏を刺激して優れたマッサージ効果を発揮する。
【0022】
しかるに上述した中底Aには、歩行またはジョギングの一連の動作において、踵、土踏まずの外側、ボール部及び足指が接地する際に、繰り返し大きな押圧力が掛かる。また中底Aの一部が押圧されると、その部分に位置する液体4も押圧され、この押圧力によって、密閉された液体4の圧力が急激に増大する。さらに押圧された部分の液体4は、他の押圧されていない部分に急速に移動して衝撃力を生み出す。
【0023】
すなわち歩行等に際しては、中底Aを構成する底板1及びカバー2に、引張応力、圧縮応力、せん断応力あるいは曲げ応力の他、急激に上昇する液体4の高い圧力と、この液体の急速な移動による衝撃力とが、繰り返し発生する。このため底板1及びカバー2には、液体4が外部に漏れ出ることを防止する手段を講じる必要があった。特に底板1とカバー2との接合部6から、液体4が漏れることを防止することが必要であった。
【0024】
そこで本発明者は、靴の中底Aにおいて密封した液体4の漏洩を防止すべく、次のような手段を提案した。
【0025】
底板1の第1の凹部11、及びカバー2の第2の凹部21の外周であって、両者を接合する接合部6の板厚を厚くした(特許文献1及び2参照。)。接合部6の強度を増すためである。
【0026】
また接合部6の幅を、全周にわたって均一にした(特許文献1及び3参照。)。接合部6の単位面積当りの接合強度を、全周にわたって均一にすることにより、接合強度が弱くなる部分が生じることを回避するためである。
【0027】
さらには、ブレード3の横幅方向の両端と、底板1の第1の凹部11の内周壁14との間に、この底板から一体的に起立する仕切り壁15を、全周にわたって形成した(特許文献1参照。)。中底Aが押圧されることによって急速に移動する液体4が、接合部6に直接当たることを回避して、液体4の漏れを生じ難くするためである。
【特許文献1】国際公開公報 WO2010/023793
【特許文献2】特開平6−14805号公報
【特許文献3】特開2000−236908号公報
【発明の開示】
【0028】
しかるに上述した液体の漏れを防止する手段を講じても、底板とカバーとの接合部から、液体が漏れる事例が生じた。したがって密封した液体が外部に漏れることを防止するためには、さらなる改良が必要であることが判明した。
【0029】
本発明者は、鋭意研究の結果、密封した液体が外部に漏れることを防止するためには、液体の急激な移動を抑制することによって、液体が接合部に当たる衝撃力を小さくすること、及び液体の流れを妨げることによって生じる局部的な圧力の上昇を抑えることが有効であることに着目し、この知見に基づき本発明を完成した。
【0030】
すなわち本発明による履物の底部材は、底板、カバー、複数のブレード及び液体を備えている。上記底板は、足裏に相当する形状の第1領域と、この第1領域の全周を囲む第1水平フランジ部とを有している。上記カバーは、上記第1領域に対向する形状の第2領域と、上記第1水平フランジ部に対向する形状の第2水平フランジ部とを有している。
【0031】
上記ブレードは、上記第1領域の上面から起立するように形成されている。上記ブレードは、互に所定の間隔を隔てて、上記底板のつま先側から踵側に至る中心線に略直交するように配置されている。上記ブレードは、互にスリットによって隔てられた複数の平板ブレード要素からなる。上記平板ブレード要素は、上記ブレード毎に、つま先側または踵側のいずれかに向って傾斜している。
【0032】
上記ブレードにおいて、上記第1領域の横幅方向の両端側に位置する平板ブレード要素は、上方から見て、つま先側または踵側に向かって末広がりになるように配置されている。上記第1水平フランジ部と第2水平フランジ部とは、相互に接合されて上記第1領域と第2領域とによって挟まれた空間を形成し、上記液体は、上記空間に密封されている。
【0033】
ここで「底板」、「カバー」及び「ブレード」の材質は、その種類を問わないが、弾性を有することが望ましい。例えば熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、合成ゴム、天然ゴム材が該当する。また「底板」、「カバー」及び「ブレード」は、射出成形あるいはプレス成形することが望ましい。さらには「底板」と「ブレード」とは、一体成形することが望ましい。
【0034】
「足裏に相当する形状」とは、歩行、ジョギング、及び立ち止まった状態において、足裏が接地する形状に略相似する形状を意味する。なお5本の足指及びこれらの足指の付け根を含まないようにすることが望ましい。
【0035】
「第1領域」及び「第2領域」は、底板とカバーとが互いに対応する平面に、それぞれ設けた凹状の窪みであることが望ましいが、凹状の窪みを形成しない平面の場合も含む。「第1水平フランジ部」及び「第2水平フランジ部」の外周形状は、それぞれ靴底の内周形状に略相似することが望ましいが、外周辺を切り落として靴底のサイズに合わせることができるように、大きめの形状にすることが、より望ましい。
【0036】
「スリット」は、ブレードを上端から根本まで分離するものが望ましいが、ブレードを上端から根本までの高さの50%以上にわたって分離する場合も含む。
【0037】
「上記ブレードにおいて、上記第1領域の横幅方向の両端側に位置する平板ブレード要素は、上方から見て、つま先側または踵側に向かって末広がりになるように配置されている。」とは、例えばブレードが4枚の平板ブレード要素からなる場合には、少なくとも両端の2枚の平板ブレード要素が、上方から見て、つま先側または踵側に向かって末広がりになるように配置されていることを意味している。すなわち残りの2枚の平板ブレード要素は、互いに末広がりになるように配置されている場合と、互いに一列になるように配置されている場合との双方を含む。
【0038】
なお「履物の底部材」の「履物」には、紳士靴及び婦人靴の双方を含み、スポーツシュ
ーズ、スニーカー、ストラップ付き又はストラップ無しサンダル、業務用靴、スキー靴、ゴルフ靴、ハイキング靴、ウォーキング靴、ブーツ、長靴、上履き、草履、スリッパ及びソックス等も該当する。また「底部材」には、いわゆる中底及び本底を含む。
【0039】
次に本発明の作用効果を説明する。すなわち本発明による履物の底部材は、上述した従来技術と同様に、中底内に密封した液体と、底板から起立する複数の傾斜したブレードとによって、歩行時に足裏が地面に着地する際に加わる衝撃を分散吸収するとともに、足裏を刺激して優れたマッサージ効果を発揮する。以上に加えて本発明による履物の底部材は、この底部材内に密封した液体の漏れを、より効果的に防止する。
【0040】
次に密封した液体の漏れを防止する作用効果について、例えば踵が接地する場合を例に挙げて説明する。すなわち本発明による履物の底部材は、ブレードを互にスリットによって隔てられた複数の平板ブレード要素によって構成し、横幅方向の両端側に位置する平板ブレード要素を、上方から見て、つま先側または踵側に向かって末広がりになるように配置している。
【0041】
例えば踵によってカバーの表面の一部が押圧されると、その押圧された箇所にある液体も押圧され、密閉空間において押圧されていない部分に急激に移動する。しかるに密閉空間内には、複数のブレードが、互いに所定の間隔を隔てて設けてある。このため押圧された液体は、この複数のブレードによって移動を妨げられ、ブレード間の間隙に沿って中底の横幅方向に急激に移動する。
【0042】
ここで底部材の横幅方向の両端側に位置する平板ブレード要素は、上方から見て、つま先側または踵側に向かって末広がりになるように配置されている。したがってブレード間の間隙に沿って横幅方向に急激に移動する液体は、両端側に位置する平板ブレード要素によって進路を曲げられ、ブレード間の間隙の両端から、つま先側または踵側に向かって斜めに流出する。
【0043】
したがって、ブレード間の間隙の両端から流出する液体は、その外側に位置する底板とカバーとの接合部に、斜めの角度で衝突する。すなわち急速に移動する液体を、底板とカバーとの接合部に斜めに衝突させれば、この接合部に直交するように衝突させる場合に比べて、この衝突部分に掛る液体の衝撃力を、大幅に低くすることができる。
【0044】
また液体を底板とカバーとの接合部に斜めに衝突させれば、この接合部に直交するように衝突させる場合に比べて、液体を、踵またはつま先方向に向けて、スムーズに変更させることができる。すなわち液体を底板とカバーとの接合部に直交するように衝突させると、衝突した液体は、踵またはつま先方向に向かって逃げ難くなって流れが堰き止められ、これにより衝突部分における液体の静圧が上昇する。
【0045】
したがって、液体を底板とカバーとの接合部に斜めに衝突させれば、衝突した液体は、踵またはつま先方向に向かって逃げ易くなり、液体の静圧が衝突部分において上昇することを抑制することができる。
【0046】
なおブレードを互にスリットによって隔てられた複数の平板ブレード要素によって構成することによって、次の作用効果を発揮させることができる。すなわち末広がりに配置した平板ブレード要素において、スリットを設けない場合には、平板ブレード要素は、上方から押圧されても容易には曲がらないため、足裏への刺激が強くなりすぎて、痛みを生じる恐れがある。そこでスリットを設けることによって、平板ブレード要素の曲げ剛性が高くなり過ぎることを回避し、足裏に適度な刺激を与えるようにして、心地よいマッサージ効果を発揮させることができる。
【0047】
また複数の平板ブレード要素の間にスリットを設けることによって、踵等で押圧された液体を、このスリットを介して、踵またはつま先側に流出させることができる。したがってブレード間の間隙に沿って、横幅方向に液体が移動する速度、及び封じ込め圧力が抑えられて、接合部への液体の衝撃力を低くすることができる。
【0048】
なおブレードを構成する複数のブレード要素を平板で形成することによって、ブレード要素自体の曲げ剛性を抑え、足裏に適正な刺激を与えて、心地よいマッサージ効果を発揮させることができる。
【0049】
さて底板の第1領域の長手方向の中央部を境にして、境の両側に位置するブレードについて、傾斜方向を相互に逆にすれば、踵が着地するとき、及びつま先で蹴り上げるときの双方において、衝撃力を効果的に緩和させることができる。
【0050】
そこで本発明による他の履物の底部材では、上記複数のブレードを、
上記第1領域の長手方向の中央部からつま先側に至る範囲に位置する複数のつま先側ブレードと、この中央部から踵側に至る範囲に位置する複数の踵側ブレードとから構成する。上記つま先側ブレードを構成する複数の平板ブレード要素を、このつま先側ブレード毎に、それぞれつま先側または踵側のいずれかに向って傾斜させる。
【0051】
上記踵側ブレードを構成する複数の平板ブレード要素を、この踵側ブレード毎に、それぞれ上記つま先側ブレードを構成する平板ブレード要素とは逆の方向に向って傾斜させる。上記つま先側ブレードにおいて、上記第1領域の横幅方向の両端側に位置する平板ブレード要素を、上方から見て、つま先側または踵側に向かって末広がりになるように傾斜させる。上記踵側ブレードにおいて、上記第1領域の横幅方向の両端側に位置する平板ブレード要素を、上方から見て、上記つま先側ブレードを構成する平板ブレード要素とは逆の方向に向かって末広がりに傾斜させる。
【0052】
ところで、つま先側または踵側に最も近いブレードについて、平板ブレード要素を隔てるスリットから液体が流出すると、そのスリットに対向する位置にある接合部に、液体の衝撃力が直接加わる。特に、つま先側に最も近い平板ブレード要素が、踵側に向かって末広がりに傾斜している場合、あるいは踵側に最も近い平板ブレード要素が、つま先側に向かって末広がりに傾斜している場合には、スリットから液体がより早く流出し、液体の衝撃力はより強くなる。
【0053】
そこでつま先側または踵側に最も近いブレードについては、スリットのない1枚の平板ブレード要素とすることによって、スリットから流出する液体の衝撃力が生じないようにできる。
【0054】
ところで、例えば踵によって密閉された液体の一部が押圧されると、押圧された部分の液体は、ブレード間の間隙に沿って底板の横幅方向に移動し、ブレード間の間隙の両端から流出して、外側に位置する底板とカバーとの接合部に衝突する。したがってブレード間の間隙の両端から流出する液体を、直接接合部に衝突させなければ、液体の漏れを効果的に防止できる。そこで本発明者は、特許文献1に記載されているような、ブレードの横幅方向の両端と、底板の第1の凹部の内周壁の間に、この底板から一体的に起立する1重の仕切り壁を、全周にわたって形成する手段を採用した。
【0055】
しかるに1重の仕切り壁だけでは、必ずしも、その外側に位置する接合部から液体が漏れることを防止することができないことが判明した。すなわち、例えば踵によって密封された液体を押圧すると、押圧された液体は、他の押圧されていない部分に移動し、その部
分の密封空間を変形及び膨張させる。
【0056】
このため押圧されていない部分において、1重の仕切り壁の上端とカバーの下面との接触部分が開き、移動してきた液体が、この開いた隙間を通って、その外側に位置する接合部に直接衝突する。したがって接合部から液体が漏れ易くなる。
【0057】
そこで本発明による他の履物の底部材では、上記第1領域の内周壁と上記複数のブレードの横幅方向の両端側との間に、第1仕切り壁を、この第1領域の上面から起立するように形成する。また上記第1仕切り壁の内周側または外周側のいずれかにおいて、この第1仕切り壁と所定の間隔を隔てた位置に、第2仕切り壁を上記第2領域の下面から起立するように形成する。
【0058】
さらに上記第1仕切り壁と第2仕切り壁とには、それぞれ複数の箇所に溝または切欠き部を設ける。また上記第1仕切り壁に設けた溝または切欠き部と、上記第2仕切り壁に設けた溝または切欠き部とを、この溝または切欠き部の中心線に沿う方向から見て、互いに重ならないように配置する。
【0059】
すなわち仕切り壁を2重にして、一方の仕切り壁を底板から起立して形成し、所定の間隙を隔てて、他方の仕切り壁をカバーから垂設するように形成することによって、液体の移動によって、例え双方の仕切り壁の上端とカバーの下面との間に隙間が生じても、内側に位置する仕切り壁の上端に開口する隙間を通過する液体は、外側に位置する仕切り壁の根元部分に妨げられるため、その外側に位置する接合部に直接衝突することを回避できる。
【0060】
また第1仕切り壁と第2仕切り壁とに、それぞれ複数の箇所に溝または切欠き部を設けることによって、外側に位置する仕切り壁と接合部の内周側との間の間隙に流入した液体が、溝または切欠き部から第1仕切り壁や第2仕切り壁の内側に逃げ易くして、この間隙内に封じ込められることを回避し、この封じ込めによる圧力の上昇を抑えることができる。
【0061】
さらに第1仕切り壁に設けた溝または切欠き部と、第2仕切り壁に設けた溝または切欠き部とを、この溝または切欠き部の中心線に沿う方向から見て、互いに重ならないように配置することによって、押圧されてブレード間の間隙の両端から流出する液体が、溝または切欠き部を通じて、底板とカバーとの接合部に直接衝突することを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】カバーの一部を切り取ったときの靴の中底を示す上面図である。
【
図2】底板とカバーとを分離した状態において、長手方向に沿って切断した断面図である。
【
図3】底板とカバーとを接合した状態において、長手方向に沿って切断した断面図である。
【
図4】底板とカバーとを接合した状態において、横幅方向に沿って切断した断面図である。
【
図5】平板ブレード要素を分離するスリットの一部拡大正面図である。
【
図6】第1仕切り壁及び第2仕切り壁の一部拡大上面図である。
【
図7】第1仕切り壁及び第2仕切り壁に設けた溝及び切欠き部を、溝及び切欠き部の中心線に沿う方向から見たときの拡大図である。
【
図8】平板ブレード要素の配置の例を示す上面図である。
【
図9】平板ブレード要素の他の配置の例を示す上面図である。
【
図10】平板ブレード要素の末広がり方向の例を示す上面図である。
【
図11】平板ブレード要素の末広がり方向と傾斜方向との関係を示す上面図及び断面図である。
【
図12】平板ブレード要素の末広がり方向と傾斜方向との他の関係を示す上面図及び断面図である。
【
図13】第1仕切り壁及び第2仕切り壁の例を示す拡大断面図である。
【
図14】第1仕切り壁及び第2仕切り壁において、溝または切欠き部を設けないことが望ましい箇所を示す靴の中底の上面図である。
【
図15】中底の位置を示す靴の一部分解斜視図である。
【
図16】本底の位置を示す靴の一部分解斜視図である。
【
図17】カバーの一部を切り取ったときの従来例による靴の中底を示す上面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 底板
2 カバー
3、3c、3d ブレード
3a つま先側ブレード
3b 踵側ブレード
4 液体
5 密閉空間
6 接合部
11 第1領域
12 第1水平フランジ部
14 内周壁
15 第1仕切り壁
21 第2領域
22 第2水平フランジ部
31 スリット
32、33 平板ブレード要素
A 中底
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
図1〜
図7を参照しつつ、本発明による履物の底部材について、靴の中底を例に挙げて説明する。さて
図1に示すように、本発明による靴の中底Aは、底板1、カバー2、複数のブレード3及び液体4を備えている。
【0065】
底板1は、足裏に相当する形状の第1領域11と、この第1領域の全周を囲む第1水平フランジ部12とを有している。またカバー2は、底板1に設けた第1領域11に対向する第2領域21と、第1水平フランジ部12に対向する第2水平フランジ部22とを有している。なお
図1から明らかなように、底板1の第1領域11は、踵から足指の付け根の手前までの長さであって、横幅は、足裏が接地する幅に形成してある。
【0066】
なお
図2〜
図4に示すように第1領域11は、第1水平フランジ部12の上面から僅かに下方に窪んだ凹部形状となるように形成してあり、第2領域21は、第2水平フランジ部22の下面から僅かに上方に窪んだ凹部形状となるように形成してある。また第1領域11の上面と第2領域21の下面とは、第1水平フランジ部12と第2水平フランジ部22との合せ面に向かって、緩やかに傾斜する内周壁14、24を介して連結しており、応力集中を回避している。
【0067】
図1〜
図4に示すように、底板1の第1領域11には、複数のブレード3が、この底板
から起立するように一体的に形成されている。複数のブレード3は、互いに所定の間隔を隔てて、底板1のつま先側から踵側に至る中心線に略直交するように配置されている。
図1及び
図4に示すようにブレード3は、互いに中心に位置するスリット31によって隔てられた、2枚の平板ブレード要素32、33によって構成してある。
【0068】
さて
図2及び
図3に示すようにブレード3は、第1領域11の長手方向の中央部を境にして、それぞれ逆方向に傾斜している。
【0069】
すなわち長手方向の中央部からつま先側に至る範囲に位置するブレード(以下「つま先側ブレード3a」と呼ぶ。)は、踵側に向かって傾斜しており、中央部から踵側に至る範囲に位置するブレード(以下「踵側ブレード3b」と呼ぶ。)は、つま先側に向かって傾斜している。
【0070】
なお全てのブレード3を、つま先側に向かって傾斜させ、あるいは踵側に向かって傾斜させてもよく、またつま先側ブレード3aをつま先側に向かって傾斜させ、踵側ブレード3bを踵側に向かって傾斜させてもよい。さらにはつま先側ブレード3aと踵側ブレード3bとの境を、長手方向中央部に替えて、つま先側寄り、または踵側寄りに設定してもよい。
【0071】
図1に示すように、ブレード3を構成する2枚の平板ブレード要素32、33は、上方から見て、それぞれのブレード毎に、つま先側または踵側のいずれかに向かって末広がりになるように配置されている。
【0072】
すなわちつま先側ブレード3aを構成する平板ブレード要素32、33は、踵側に向かって末広がりになるように配置され、踵側ブレード3bを構成する平板ブレード要素32、33は、つま先側に向かって末広がりになるように配置されている。
【0073】
図1に示すように、つま先側及び踵側に最も近いブレード3c、3dは、それぞれスリットのない1枚の平板ブレード要素によって形成されている。つま先側に最も近いブレード3cは、踵側に向かって傾斜しており、踵側に最も近いブレード3dは、つま先側に向かって傾斜している。
【0074】
なお靴の使用態様によっては、スリットのない1枚の平板ブレード要素を省いてもよく、2枚以上隣接させて設けてもよく、また踵側からつま先側に至る任意の位置に設けてもよい。
【0075】
また
図4に示すスリット31は、
図5の(A)に示すように、平板ブレード32と33とを、上端から根本まで分離するものが望ましい。但し
図5の(B)に示すように、ブレード32と33とを、上端から根本までの高さの50%以上にわたって分離して、根本部分に両者を連結する部分を残すように形成してもよい。
【0076】
さて
図1〜
図4に示すように、底板1の第1領域11の内周壁14とブレード3の横幅方向の両端側との間には、第1仕切り壁15がこの第1領域の上面から起立するように形成されている。また第1仕切り壁15の内周側には、この第1仕切り壁と所定の間隔を隔てた位置に、第2仕切り壁25が第2領域21の下面から起立するように形成されている。なお
図2〜
図4に示す第1仕切り壁15及び第2仕切り壁25は、形状や構成を解り易くするため、実際より大きいサイズで示してある。
【0077】
また
図6及び
図7の(A)に示すように、第1仕切り壁15と第2仕切り壁25とには、それぞれ複数の箇所に溝151、251が設けてある。第1仕切り壁15に設けた溝1
51と、第2仕切り壁25に設けた溝251とは、この溝または切欠き部の中心線に沿う方向から見て、互いに重ならないように配置されている。
【0078】
なお第1仕切り壁15と第2仕切り壁25とにそれぞれ設けた溝151、251に替えて、
図7の(B)に示すように、それぞれ切欠き部151、251を設けてもよい。
【0079】
また第1仕切り壁15と第2仕切り壁25との位置を、互いに取り換えた構成にしてもよい。さらには第1仕切り壁15と第2仕切り壁25とに加え、所定の間隔を隔てて第3仕切り壁、あるいはさらに第4仕切り壁を設けてもよい。
【0080】
図1及び
図3に示すように、底板1の第1水平フランジ部12と、カバー2の第2水平フランジ部22とは、帯状の接合部6によって相互に接合されて、第1領域11と第2領域21とによって挟まれた密閉空間5を形成する。密閉空間5には、踵側の注入口(図示せず。)から液体4を注入し、注入後に注入口を塞いで密封する。
【0081】
なお帯状の接合部6は、第1水平フランジ部12と第2水平フランジ部22との内周端部において、全周にわたって均一な幅となるようにする。また接合部6は、高温プレスによって熱溶着させることが望ましいが、接合剤を使用して接合してもよい。
【0082】
底板1とカバー2とは、塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂を素材として、射出成形によって成形する。液体4は、水透過性が低く蒸発し難い特性のもの、かつ腐敗しないものを使用することが望ましい。さらに液体4は、寒冷地においても凍結しないような、例えばプロピレン・グリコールを使用することがより望ましい。
【0083】
また
図4に示すように、平板ブレード要素32、33の横幅方向の外側端部は、上端から根本部分に至る緩やかなカーブを描く形状に形成してあり、第2仕切り壁25の内周面とは連結しない。平板ブレード要素32、33が押圧されたときに曲り易くして、快適なマッサージ効果を発揮させるためである。また第2仕切り壁25の内周面と、平板ブレード要素32、33の横幅方向の端部との間に形成された間隙7を介して、液体4を前後方向に流れ易くし、これによって液体4の封じ込め圧力が高くなることを回避するためである。
【0084】
なお
図4に示すように、密閉空間5に液体4を密封した状態において、ブレード3の高さは、このブレードの上端が第2領域21の下面に当接する高さに形成することが望ましいが、この当接する高さよりも、高くまたは低くしてもよい。また第1仕切り壁15及び第2仕切り壁25の高さは、それぞれの先端が、第2領域21の下面、及び第1領域11の上面に当接する高さに形成することが望ましいが、この当接する高さよりも、高くまたは低くしてもよい。
【0085】
次に
図8〜
図10を参照しつつ、ブレード3及び平板ブレード要素32、33の配置について、他の実施の形態の例を説明する。さて
図8に、平板ブレード要素32、33の枚数と、配置とを示す。すなわち
図8(A)に示すブレード3は、相互にスリット31で分離された、3枚の平板ブレード要素32、34、33からなる。平板ブレード要素32、33は、踵側に向かって末広がりになるように配置されており、中央の平板ブレード要素34は、第1領域11の長手方向の中心線に直交するように配置されている。
【0086】
図8(B)に示すブレード3は、相互にスリット31で分離された4枚の平板ブレード要素32、35、36、33からなる。平板ブレード要素32、33は、踵側に向かって末広がりになるように配置されており、中央の平板ブレード要素35、36も、踵側に向かって末広がりになるように配置されている。なお中央の平板ブレード要素35、36を
、第1領域11の長手方向の中心線に直交するように配置してもよい。
【0087】
図8(C)に示すブレード3は、相互にスリット31で分離された5枚の平板ブレード要素32、37、38、39、33からなる。平板ブレード要素32、33は、踵側に向かって末広がりになるように配置されており、内側の平板ブレード要素37、39も、踵側に向かって末広がりになるように配置されている。中央の平板ブレード要素38は、第1領域11の長手方向の中心線に直交するように配置されている。なお内側の平板ブレード要素37、39を、第1領域11の長手方向の中心線に直交するように配置してもよい。
【0088】
図9は、相互に隣接するブレード3のスリット31を、スリット31の中心線に沿う方向から見て、互いに重ならない位置に設ける形態を示している。相互に隣接するブレード3のスリット31を、互いに重なる位置に設けると、押圧された液体4が、前後方向に流出し易くなり過ぎて、液体4の反力によって衝撃力を緩和する効果が低くなるからである。
【0089】
なお平板ブレード要素32、33の末広がりの角度は、170〜120度が好ましく、160〜140度がさらに好ましい。170度を超過する場合は、ブレード3の相互の間隙の両端から流出して、底板1とカバー2との接合部6に衝突する液体4の衝撃力を緩和する効果が低下し、120度未満では、歩行等において足裏等が接地する際に、横幅方向の安定感が低下するからである。本実施の形態では、略150度に設定してある。
【0090】
図10に平板ブレード要素32、33の末広がりの形態例を示す。すなわち
図10(A)は、つま先側ブレード3aの平板ブレード要素32、33を、つま先側に向かって末広がりするように配置し、踵側ブレード3bの平板ブレード要素32、33を、踵側に向かって末広がりするように配置する形態を示す。
【0091】
図10(B)は、つま先側ブレード3a及び踵側ブレード3bの平板ブレード要素32、33を、共に踵側に向かって末広がりするように配置する形態を示す。さらに
図10(C)は、つま先側ブレード3a及び踵側ブレード3bの平板ブレード要素32、33を、共につま先側に向かって末広がりするように配置する形態を示す。
【0092】
図11〜
図12に平板ブレード要素32、33の末広がりの方向と、傾斜の方向との関係を示す。
図11(B)と
図12(B)とは、それぞれ平板ブレード要素32、33の末広がりの方向と傾斜の方向とが同じ方向である場合を示している。すなわち
図11(B)では、平板ブレード要素32、33の末広がりの方向と傾斜の方向とが、いずれもつま先側に向かうように配置されている。また
図12(B)では、平板ブレード要素32、33の末広がりの方向と傾斜の方向とが、いずれも踵側に向かうように配置されている。
【0093】
一方
図11(C)と
図12(C)とは、それぞれ平板ブレード要素32、33の末広がりの方向と傾斜の方向とが、互いに逆の方向である場合を示している。すなわち
図11(C)では、平板ブレード要素32、33は、つま先側に向かって末広がりになっているが、踵側に向かって傾斜している。また
図12(C)では、平板ブレード要素32、33は、踵側に向かって末広がりになっているが、つま先側に向かって傾斜している。
【0094】
なお
図10に示すつま先側ブレード3aに最も近いブレード3cについては、踵側に向かって傾斜させ、踵側ブレード3bに最も近いブレード3dについては、つま先側に向かって傾斜させるのが望ましいが、それぞれ逆の方向に傾斜させてもよい。
【0095】
平板ブレード要素32、33等の傾斜角度は、垂直面からの傾き角度が、30〜60度
が望ましく、40〜50度がさらに望ましい。30度未満では、足裏で押圧したときに平板ブレード要素32、33等が倒れ難くなって、足裏への刺激が強くなりすぎるからであり、60度を超えると、この平板ブレード要素32,33が倒れ易くなって、足裏への刺激が弱くなりすぎるからである。本実施の形態では、略45度に設定している。
【0096】
また平板ブレード要素32、33等の上端の断面形状は、円弧曲線等によって囲まれた形状とすることが望ましい。足裏への刺激が柔らかくなって、快適なマッサージ効果が得られるからである。
【0097】
さて
図13に、第1仕切り壁15と第2仕切り壁25の断面形状を、例示する。すなわち
図13(A)は、矩形の根本部分に半円形の先端を形成した断面形状を示している。また
図13(B)は、先端の角部を丸くした矩形の断面形状を示している。さらに
図13(C)は、先端の角部を丸くした台形の断面形状を示している。なお第1仕切り壁15と第2仕切り壁25は、以上の断面形状に限られない。
【0098】
図14においてCの文字を付した5箇所は、従来例による靴の中底Aにおいて、底板1とカバー2との接合部6から液体4の漏れが生じやすい位置を示している。したがって、
図6及び
図7に示す第1仕切り壁15の溝または切欠き部151、及び第2仕切り壁25の溝または切欠き部251は、これらのCの文字を付した5箇所から外れた位置に設けることが望ましい。Cの文字を付した5箇所に位置する接合部6に、急速に移動する液体4が直接当たらないようにするためである。
【0099】
図15は、本発明による履物の底部材を、上述した靴の中底Aとして適用する場合を示している。また
図16は、本発明による履物の底部材を、靴の本底Bとして適用する場合を示している。
【0100】
歩行等において安定感を得つつ衝撃を吸収すると共に、足裏を刺激してマッサージ効果を発揮し、さらには密封した液体の漏れを防止できるため、履物に関する産業に、広く利用可能である。
【要約】
靴の中底を、底板(1)、カバー(2)、複数のブレード(3)及び液体(4)で構成する。ブレード(3)を、底板(1)に設けた第1領域(11)に起立するように形成する。ブレード(3)を、互にスリット(31)によって隔てられた複数の平板ブレード要素(32、33)から構成し、つま先側または踵側のいずれかに向って傾斜させる。平板ブレード要素(32、33)を、つま先側または踵側に向って末広がりになるように配置する。底板(1)とカバー(2)とを相互に接合して密閉空間(5)を形成し、この密閉空間に液体(4)を密封する。