(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フィルム状基材を繰り出すフィルム繰り出しロールと巻き取るフィルム巻き取りロールを用いて、前記フィルム状基材を搬送させながら、前記転写ロールの前記凹凸パターンを転写することを特徴とする請求項2に記載の光学基板の製造方法。
前記フィルム巻き取りロールに巻き取られた前記ロール形態の長尺のフィルム状モールドが前記押圧ロールに対して繰り出されて移動することを特徴とする請求項3または4に記載の光学基板の製造方法。
前記凹凸パターン面に形成された前記塗膜を加熱しながら、前記押圧ロールを前記凹凸パターン面と反対側の面に押しつけることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学基板の製造方法。
前記塗膜を前記基板に密着させる工程と前記フィルム状モールドを前記塗膜から剥離する工程の間または前記フィルム状モールドを前記塗膜から剥離する工程において、前記塗膜を加熱することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学基板の製造方法。
前記長尺のフィルム状モールドに連続的にゾルゲル材料を塗布しながら前記フィルム状モールドを前記押圧ロールの下方に送り込むとともに、複数の基板を前記押圧ロールに搬送し、前記複数の基板に順次前記フィルム状モールドの凹凸パターン面に形成された前記塗膜を前記押圧ロールで押し付けることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学基板の製造方法。
前記フィルム状モールドの前記凹凸パターンが不規則な凹凸パターンであり、凹凸の平均ピッチが、100〜1500nmの範囲であり、凹凸の深さ分布の平均値が20〜200nmの範囲であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の光学基板の製造方法。
請求項1〜12のいずれか一項に記載の光学基板の製造方法を用いて光学基板としての凹凸表面を有する回折格子基板を作製し、前記回折格子基板の前記凹凸表面上に、透明電極、有機層及び金属電極を、順次積層して有機EL素子を製造することを特徴とする有機EL素子の製造方法。
請求項1〜12のいずれか一項に記載の光学基板の製造方法を用いて凹凸表面を有する光学基板を作製し、前記光学基板の前記凹凸表面と反対側の面上に、透明電極、有機層及び金属電極を、順次積層して有機EL素子を製造することを特徴とする有機EL素子の製造方法。
前記長尺状のフィルム状モールドの前記凹凸パターン面の一部を前記押圧ロールにより押し付けられた前記塗膜から剥離するための剥離ロールを備えることを特徴とする請求項15に記載の光学基板の製造装置。
前記モールド搬送部は、さらに、前記フィルム状モールドを巻き取るモールド巻き取りロールを備え、前記モールド繰り出しロールから前記所定位置に連続的に前記フィルム状モールドを繰り出すと共に前記フィルム状モールドを前記モールド巻き取りロールで巻き取ることで前記フィルム状モールドを前記所定位置に対して搬送することを特徴とする請求項15または16に記載の光学基板の製造装置。
前記押圧ロールと対向する位置に設けられて前記基板を下側から支持する支持ロールを備えることを特徴とする請求項15〜21のいずれか一項に記載の光学基板の製造装置。
前記フィルム状モールドの前記凹凸パターンが不規則な凹凸パターンであり、凹凸の平均ピッチが、100〜1500nmの範囲であり、凹凸の深さ分布の平均値が20〜200nmの範囲であることを特徴とする請求項15〜22のいずれか一項に記載の光学基板の製造装置。
さらに、前記長尺状のフィルム状モールドを形成するロールプロセス装置を備え、当該ロールプロセス装置が、基板フィルムを搬送する搬送系と、搬送中の前記基板フィルムに凹凸形成材料を塗布する塗布機と、前記塗布機の下流側に位置してパターンを転写する転写ロールと、前記基板フィルムに光を照射するための照射光源とを有することを特徴とする請求項15〜24のいずれか一項に記載の光学基板の製造装置。
前記搬送系が、前記基板フィルムを繰り出すフィルム繰り出しロールと、前記基板フィルムを前記転写ロールに付勢するニップロールと、前記基板フィルムの前記転写ロールからの剥離を促進する剥離ロールと、前記パターンが転写された前記基板フィルムを巻き取るフィルム巻き取りロールとを有することを特徴とする請求項25に記載の光学基板の製造装置。
前記基板フィルムを巻き取った前記フィルム巻き取りロールが、前記フィルム状モールドを繰り出す前記モールド繰り出しロールとして使用されることを特徴とする請求項26に記載の光学基板の製造装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明の目的は、基板に対して高い密着性を有すると共に耐熱性及び耐候性を有する微細凹凸パターンを備えた光学基板を、高いスループットで量産することができる新規な製造方法及び製造装置並びにそれらから得られる新規な光学基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様に従えば、凹凸パターンを有する光学基板を製造する方法であって、
凹凸パターン面を有する長尺のフィルム状モールドを用意する工程と、
前記フィルム状モールドの凹凸パターン面にゾルゲル材料の塗膜を形成する工程と、
前記ゾルゲル材料の塗膜が形成されたフィルム状モールドの前記凹凸パターン面と基板を対向させて、押圧ロールをフィルム状モールドの前記凹凸パターン面と反対側の面に押し付けて前記凹凸パターン面に形成された前記塗膜を前記基板に密着させる工程と、
前記フィルム状モールドを塗膜から剥離する工程と、
前記基板に密着した塗膜を硬化する工程とを備えることを特徴とする光学基板を製造する方法が提供される。
【0012】
前記光学基板を製造する方法において、前記長尺のフィルム状モールドを用意する工程は、長尺のフィルム状基材に凹凸形成材料を塗布することと、前記塗布された凹凸形成材料に、凹凸パターンを有する転写ロールを回転しながら押し付けて凹凸形成材料に前記凹凸パターンをロール転写することと、前記凹凸パターンがロール転写された凹凸形成材料を硬化することによりロール形態の前記長尺のフィルム状モールドを得ることを含んでいてもよい。また、前記硬化した凹凸形成材料を有するフィルム状基材をフィルム巻き取りロールにより巻き取ってもよく、及び/または、前記フィルム状基材を繰り出すフィルム繰り出しロールと巻き取るフィルム巻き取りロールを用いて、前記フィルム状基材を搬送させながら、前記転写ロールの凹凸パターンを転写してもよい。いずれの場合においても、前記フィルム巻き取りロールに巻き取られたロール形態の前記長尺のフィルム状モールドが前記押圧ロールに対して繰り出されて移動し得る。さらに、前記剥離された前記長尺のフィルム状モールドをモールド巻き取りロールで巻き取ってもよい。
【0013】
前記光学基板を製造する方法において、前記凹凸パターン面に形成された前記塗膜を加熱しながら、前記押圧ロールを前記凹凸パターン面と反対側の面に押し付け得る。こうすることで、ゾルゲル材料の仮焼成も同時に行われ、凹凸パターンの形成を確実にすると共に押圧後の凹凸パターン面の塗膜からの剥離を容易にすることができる。また、前記密着工程と前記剥離工程の間または前記剥離工程において、前記押圧された塗膜を加熱して押圧後のパターン面の塗膜からの剥離を一層容易にすることができる。
【0014】
前記光学基板を製造する方法において、前記長尺のフィルム状モールドに連続的にゾルゲル材料を塗布しながら前記フィルム状モールドを押圧ロールの下方に送り込むとともに、複数の基板を前記押圧ロールに搬送し、前記複数の基板に順次前記フィルム状モールドの凹凸パターン面に形成された塗膜を押圧ロールで押し付けてもよい。長尺のフィルム状モールドを用いているので、このような基板の連続処理が可能となり、基板製造のスループットを向上することができる。フィルム状モールドの長さは、1ロット分の光学基板、例えば、数百枚〜数千枚の光学基板を製造するのに足りる長さ、例えば数百メートルから数千メートルに調整することができる。
【0015】
前記光学基板を製造する方法に用いる前記フィルム状モールドの前記凹凸パターンは、例えば、不規則な凹凸パターンであり、凹凸の平均ピッチが、100〜1500nmの範囲であり、凹凸の深さ分布の平均値が20〜200nmの範囲にすることができ、前記基板はガラス基板にしてよい。ゾルゲル材料は無機材料から形成されているので、ガラス基板と屈折率が近いために好ましい。前記ゾルゲル材料はシリカ前駆体を含み得る。
【0016】
本発明の第2の態様に従えば、第1の態様の光学基板を製造する方法を用いて光学基板としての凹凸表面を有する回折格子基板を作製し、前記回折格子基板の凹凸表面上又は凹凸表面と反対側の面上に、透明電極、有機層及び金属電極を、順次積層して有機EL素子を製造することを特徴とする有機EL素子の製造方法が提供される。
【0017】
本発明の第3の態様に従えば、光学基板を製造する装置であって、
凹凸パターン面を有する長尺上のフィルム上モールドの凹凸パターン面上にゾルゲル材料の塗膜を形成する塗膜形成部と、
基板を所定位置に搬送する基板搬送部と、
フィルム状モールドを繰り出すモールド繰り出しロールを備え、前記繰り出しロールから前記所定位置に連続的に前記フィルム状モールドを繰り出すことで前記フィルム状モールドを所定位置に対して搬送するモールド搬送部と、
前記所定位置に設置され、前記モールド搬送部で前記所定位置に繰り出された前記長尺状のフィルム状モールドの凹凸パターン面に形成された塗膜の一部を、前記基板搬送部により前記所定位置に搬送された前記基板に押し付けるための押圧ロールとを備えることを特徴とする光学基板の製造装置が提供される。
【0018】
前記光学基板の製造装置は、さらに、前記長尺状のフィルム状モールドの凹凸パターン面の一部を前記押圧ロールにより押し付けられた前記塗膜から剥離することを促進するために、剥離ロールを備え得る。
【0019】
前記光学基板の製造装置において、前記モールド搬送部は、さらに、前記フィルム状モールドを巻き取るモールド巻き取りロールを備えてもよい。前記モールド繰り出しロールから前記所定位置に連続的に前記フィルム状モールドを繰り出すと共に前記フィルム状モールドを前記モールド巻き取りロールで巻き取ることで前記フィルム状モールドを前記所定位置に対して搬送しうる。
【0020】
前記光学基板の製造装置は、前記押圧ロールで前記基板に押し付けたフィルム状モールドの一部を切断するために、カッターを備えてもよい。
【0021】
前記光学基板の製造装置は、さらに、前記基板に押つけられた前記塗膜を加熱する
第1加熱手段を備えてよく、この
第1加熱手段は前記押圧ロール内にヒータとして設けてもよい。さらに、前記フィルム状モールドが前記塗膜から剥離されるときに前記塗膜を加熱する
第2加熱手段を備えてもよい。
【0022】
前記光学基板の製造装置は、さらに、前記押圧ロールと対向する位置に設けられて基板を下側から支持する支持ロールを備えてよい。
【0023】
前記光学基板の製造装置に用いる前記フィルム状モールドの前記凹凸パターンは、例えば、光の回折または散乱のために用いられる不規則な凹凸パターンであり、凹凸の平均ピッチが、100〜1500nmの範囲であり、凹凸の深さ分布の平均値が20〜200nmの範囲であり得る。また、前記基板がガラス基板であり、前記ゾルゲル材料がシリカ前駆体を含んでもよい。
【0024】
前記光学基板の製造装置は、さらに、前記長尺状のフィルム状モールドを形成するロールプロセス装置を備えてよく、このロールプロセス装置は、基板フィルムを搬送する搬送系と、搬送中の基板フィルムに凹凸形成材料を塗布する塗布機と、塗布機の下流側に位置してパターンを転写する転写ロールと、前記基板フィルムに光を照射するための照射光源とを有することができる。前記搬送系は、前記基板フィルムを繰り出すフィルム繰り出しロールと、前記基板フィルムを前記転写ロールに付勢するニップロールと、前記基板フィルムの転写ロールからの剥離を促進する剥離ロールと、前記パターンが転写された基板フィルムを巻き取るフィルム巻き取りロールとを有し得る。この場合、前記基板フィルムを巻き取ったフィルム巻き取りロールが、前記フィルム状モールドを繰り出すモールド繰り出しロールとして使用されることができる。
【0025】
本発明の第4の態様に従えば、基板と、
凹凸パターンを有するフィルム状モールドを用いて前記基板上に転写された凹凸パターンを有するゾルゲル材料層と、
前記フィルム状モールドの凹凸パターンが前記ゾルゲル材料層の凹凸パターンに嵌合したままで前記ゾルゲル材料層上に配置されている前記凹凸パターンを有するフィルム状モールドを備える光学基板が提供される。
【発明の効果】
【0026】
本発明の光学基板を製造する方法においては、凹凸パターン形成材料としてゾルゲル材料を用い、このようなゾルゲル材料による凹凸パターン形成のために長尺のフィルム状モールドによるロールプロセスを用いることで、パターン転写を正確に且つ確実に行いつつも高いスループットで光学基板を製造することができる。本発明の製造方法により製造された光学基板の凹凸パターンはゾルゲル材料から形成されているので耐熱性、耐候性(耐光性を含む概念)及び耐食性に優れ、その光学基板を組み込んだ素子の製造プロセスにも耐性があり、また、それらの素子を長寿命化することができる。それゆえ、本発明の製造方法により得られた光学基板は、有機EL素子や太陽電池のなどの各種デバイスにきわめて有効となり、このようにして得られた光学基板を用いて耐熱性、耐候性及び耐食性に優れた有機EL素子を製造することができる。本発明の光学基板の製造方法を実施する上で、本発明の光学基板の製造装置は最適となる。
【0027】
また、本発明では長尺のフィルム状モールドを用いているので次のような利点がある。金属や石英などから形成された硬質のモールドは、その凹凸パターンに欠陥が見つかった場合に、その欠陥部の洗浄やリペア(欠陥補修)が可能であり、それにより、欠陥部が基板へ転写されることによる不良を防ぐことができる。しかし、フィルム状モールドの場合は、そのような洗浄・リペアが容易ではない。一方で、金属や石英などのモールドはロール状であり、モールドが目詰まりなどで欠陥が生じた際、直ぐに転写装置を止めてモールドの交換を行わなければならない。これに対して、フィルム状モールドでは枚葉でガラス基板に対応させながら転写するので、目詰まりなどの不良がある箇所は検査段階でマークしておき、その不良箇所がガラス基板と塗膜が押圧される所定位置を通過するまでガラス基板側の搬送を待機させることができる。このため、全体的に見ると不良品の発生を低減でき、それによりスループットを向上させることができる。さらに、金属や石英などの硬質モールドから直接基板へ凹凸パターンを転写しようとすると、次に示すように種々の制限が生じ、所望の性能を十分に引き出せないことがある。例えば、基板としてガラスなどの硬質の基板を用いる場合、硬質同士のためモールドの押し圧を強めると基板が割れるなどのダメージが入り、逆に弱めると凹凸パターン転写が浅くなるなど押し圧の調整が難しい。そのため、基板に柔軟な材料を用いるか、モールドに柔軟な材料を用いることを強いられる。フィルム状モールド(ソフトモールド)を用いた場合、金属モールドから一旦、フィルム状モールドを作製する工程と、これを用いてゾルゲル側へ転写するという工程の二工程に分け、それぞれの工程に適した材料を選定することで、所望の基板に、所望の材料を使用することができ、必要特性のみならず、パターン欠陥がなく離形性が良好な転写が行える。
【0028】
本発明では、予めゾルゲル材料の塗膜が形成されたフィルム状モールドの凹凸パターンを基板に押しつけて転写するため、塗膜を形成した基板上にモールドの凹凸パターンを押し付けて転写する場合と比べて次のような利点がある。第一の利点として、本発明では、より均一な塗膜を高スループットで形成することができる。均一な塗膜を形成するためには、塗膜の吐出中にゾルゲル材料を吐出するノズルの先端と塗布面の間の距離を一定にする必要がある。基板とノズルを相対移動させながら基板上に塗膜を形成する場合、ノズルや基板の移動の平行精度や基板を搬送する基板ステージの平滑性が十分でないと、ノズルの先端と塗布面の間の距離を一定に保つことができず、均一な塗膜を形成することができない。これに対してフィルム状モールドをノズルに相対移動させながらフィルム状モールドに塗膜を形成する場合、ノズルが固定できるため、ノズルとフィルム状モールドの塗布面間の距離の安定化が容易である。また、基板とノズルを相対移動させながら基板上に塗膜を形成する場合には、基板の端部に合わせてゾルゲル材料の吐出の開始・停止を行わなければならないが、フィルム状モールドに塗膜を形成する場合、フィルム状モールドをノズルに相対して連続移動させながらゾルゲル材料の連続吐出が可能であるため、吐出の開始・停止時にゾルゲル材料の吐出速度の変化による、ムラやスジ状の膜厚異常を避けることができ、更に加速・減速時間が無くなるため、塗膜を高スループットで形成することが可能である。
【0029】
第二の利点として、本発明では装置構成が単純化できる。基板へ塗膜を形成する場合は塗工部をフィルムモールド搬送装置外に設けなければならないが、本発明では塗工部をフィルム状モールド搬送装置内に組み込むことができるため、装置構成が単純になる。第三の利点として、本発明では、モールドの凹凸パターンに忠実な凹凸パターンを基板に形成することができる。基板にゾルゲル材料の塗膜を形成してからモールドの凹凸パターンを基板に転写する場合、塗膜を形成してからモールドを密着させるまでの間に塗膜が乾燥し粘度が高くなる。そのため、モールドの凹凸パターンを忠実に塗膜に転写するためには、塗膜の乾燥状態を精密に制御し塗膜の粘度を一定に保つ必要がある。さらに、凹凸パターンと塗膜間へ空気が混入しパターン欠陥が発生する可能性がある。一方、本発明では、ノズルから吐出されたままのゾルゲル材料を直接モールドの凹凸パターン上に塗布するため、モールドに塗布するときの粘度は比較的低粘度で一定に保たれる。そのため凹部及び凸部を隙間なく覆うように塗布することができ、塗布後の乾燥状態に関わらずモールドの凹凸パターンを忠実に塗膜に転写することが可能である。特に毛管現象によって凹凸パターン内にゾルゲル材料が入り込んでいくため、フィルム状モールドと塗膜の間に空気が入り込みにくく、空気の入り込みによるパターン欠陥も抑制される。また、フィルム状モールドは帯電しやすいため、フィルム繰り出しロールから繰り出してから基板へ押圧するまでの間にフィルム状モールドに異物が付着しやすいが、本発明ではフィルム状モールドにゾルゲル材料を塗布することによりフィルムが帯電しにくくなり、異物の付着が抑制される。さらに、異物が付着した場合においても、基板にゾルゲル材料の塗膜を形成してからモールドの凹凸パターンを基板に転写する場合、フィルムと塗膜の間への空気入り込みなどによって、付着した異物よりも面積の大きいパターン欠陥ができる可能性があるが、本発明ではモールドに直接ゾルゲル材料を塗布するため、付着した異物が塗膜に包埋されて空気の入り込みが起きにくく、パターン欠陥の面積が小さくなる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の光学基板の製造方法及び製造装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。本発明の凹凸パターンを有する光学基板の製造方法は、
図1に示すように、主に、フィルム状モールドを用意する工程S0、ゾルゲル材料を調製する調製工程S1、調製されたゾルゲル材料をフィルム上モールドの凹凸パターン上に塗布する塗布工程S2、塗布した塗膜に、基板を押圧ロールにより押し付ける密着工程S3、モールドを塗膜から剥離する剥離工程S4、及び塗膜を本焼成する本焼成工程S5を有する。以下、各工程について順に説明する。
【0032】
[フィルム状モールドを用意する工程]
本発明の光学部材の製造に用いるフィルム状モールドは、長尺で可撓性のあるフィルムまたはシート状であり、表面に凹凸の転写パターンを有するモールドである。例えば、シリコーン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンテレナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリイミド(PI)、ポリアリレートのような有機材料などで形成される。また、凹凸パターンは、上記材料に直接形成されていてもよいし、上記材料を基材(基板シート)として、その上に被覆された被覆材料に形成されてもよい。被覆材料としては、光硬化性樹脂や、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が使用できる。
【0033】
フィルム状モールドは、例えば、長さ100m以上の長尺なモールドであり、幅は、50〜3000mm、厚み1〜500μmにし得る。フィルム状モールドの寸法、特に長さは量産する光学基板の寸法や、1回の製造プロセスで連続的に製造する光学基板の数(ロット数)によって適宜設定することができる。基材と被覆材料の間には、密着性を高めるために表面処理や易接着処理を施してもよい。また、必要に応じて、それらの凹凸パターン面上に離型処理を施してもよい。凹凸パターンは、任意の形状を任意の方法で形成し得る。
【0034】
フィルム状モールドの凹凸パターンは、最終的に得られる光学基板の用途により異なるが、任意の形状を任意の方法で形成し得る。例えば、マイクロレンズアレイ構造や光拡散や回折等の機能を有する構造など、任意のパターンにし得る。例えば、凹凸のピッチが均一ではなく、凹凸の向きに指向性がないような不規則な凹凸パターンにしてよい。凹凸の平均ピッチとしては、例えば、光学基板を可視光の回折や散乱の用途に用いる場合には、100〜1500nmの範囲にすることができ、200〜1200nmの範囲であることがより好ましい。凹凸の平均ピッチが前記下限未満では、可視光の波長に対してピッチが小さくなりすぎるため、凹凸による光の回折が不十分になる傾向にあり、他方、上限を超えると、回折角が小さくなり、回折格子のような光学素子としての機能が失われてしまう傾向にある。同様な用途においては、凹凸の深さ分布の平均値は、20〜200nmの範囲であることが好ましく、30〜150nmの範囲であることがより好ましい。凹凸深さの標準偏差は、10〜100nmの範囲内であることが好ましく、15〜75nmの範囲内であることがより好ましい。このような凹凸パターンから散乱及び/または回折される光は、単一のまたは狭い帯域の波長の光ではなく、比較的広域の波長帯を有し、散乱光及び/または回折される光は指向性がなく、あらゆる方向に向かう。
【0035】
本願において、凹凸の平均ピッチとは、凹凸が形成されている表面における凹凸のピッチ(隣り合う凸部同士又は隣り合う凹部同士の間隔)を測定した場合において、凹凸のピッチの平均値のことをいう。このような凹凸のピッチの平均値は、走査型プローブ顕微鏡(例えば、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の製品名「E−sweep」等)を用いて、下記条件:
測定方式:カンチレバー断続的接触方式
カンチレバーの材質:シリコン
カンチレバーのレバー幅:40μm
カンチレバーのチップ先端の直径:10nm
により、表面の凹凸を解析して凹凸解析画像を測定した後、かかる凹凸解析画像中における、任意の隣り合う凸部同士又は隣り合う凹部同士の間隔を100点以上測定し、その算術平均を求めることにより算出できる。
【0036】
また、本願において、凹凸の深さ分布の平均値及び凹凸深さの標準偏差は以下のようにして算出できる。表面の凹凸の形状を、走査型プローブ顕微鏡(例えば、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の製品名「E−sweep」等)を用いて凹凸解析画像を測定する。凹凸解析の際、前述の条件で任意の3μm角(縦3μm、横3μm)または10μm角(縦10μm、横10μm)の測定領域を測定して凹凸解析画像を求める。その際に測定領域内の16384点(縦128点×横128点)以上の測定点における凹凸高さのデータをナノメートルスケールでそれぞれ求める。なお、このような測定点の数は、用いる測定装置の種類や設定によっても異なるものではあるが、例えば、測定装置として上述のエスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の製品名「E−sweep」を用いた場合には、3μm角または10μm角の測定領域内において65536点(縦256点×横256点)の測定(256×256ピクセルの解像度での測定)を行うことができる。そして、このようにして測定される凹凸高さ(単位:nm)に関して、先ず、全測定点のうち、透明支持基板の表面からの高さが最も高い測定点Pを求める。そして、かかる測定点Pを含み且つ透明支持基板の表面と平行な面を基準面(水平面)として、その基準面からの深さの値(測定点Pにおける透明支持基板からの高さの値から各測定点における透明支持基板からの高さを差し引いた差分)を凹凸深さのデータとして求める。なお、このような凹凸深さデータは、測定装置(例えばエスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の製品名「E−sweep」)によっては測定装置中のソフト等により自動的に計算して求めることが可能でき、このような自動的に計算して求められた値を凹凸深さのデータとして利用できる。このようにして、各測定点における凹凸深さのデータを求めた後、その算術平均及び標準偏差を求めることにより算出できる値をそれぞれ凹凸の深さ分布の平均値及び凹凸深さの標準偏差として採用する。本明細書において、凹凸の平均ピッチ、凹凸の深さ分布の平均値及び凹凸深さの標準偏差は、凹凸が形成されている表面の材料に関わらず、上記のような測定方法を通じて求めることができる。
【0037】
このような凹凸パターンから散乱及び/または回折される光は、単一のまたは狭い帯域の波長の光ではなく、比較的広域の波長帯を有し、散乱光及び/または回折される光は指向性がなく、あらゆる方向に向かう。但し、「不規則な凹凸パターン」には、表面の凹凸の形状を解析して得られる凹凸解析画像に2次元高速フーリエ変換処理を施して得られるフーリエ変換像が円もしくは円環状の模様を示すような、すなわち、上記凹凸の向きの指向性はないものの凹凸のピッチの分布は有するような疑似周期構造を含む。それゆえ、このような疑似周期構造を有する基板においては、その凹凸ピッチの分布が可視光線を回折する限り、有機EL素子のような面発光素子などに使用される回折基板や太陽電池の透明導電性基板など好適である。
【0038】
本発明に用いる長尺状のフィルム状モールドの製造方法の一例について、
図2を参照しながら説明する。
図2に示したロールプロセス装置(第1ユニット)70は、長尺の基板フィルムに被覆された被膜上に凹凸パターンを形成することによりフィルム状モールドを製造するための装置であり、基板フィルム(基材またはフィルム状基材)80の搬送系86と、搬送中の基板フィルム80に凹凸形成材料を塗布するダイコータ82と、ダイコータ82の下流側に位置してパターンを転写する転写ロール(金属モールド)90と、基板フィルム80を挟んで転写ロール90と対向して設けられ、基板フィルム80にUV光を照射するための照射光源85とを主に備える。基板フィルム80の搬送系86は、基板フィルム80を繰り出すフィルム繰り出しロール72と、転写ロール90の上流及び下流側にそれぞれ配置されて基板フィルムを転写ロール90に付勢するニップロール74及び剥離ロール76と、パターンが転写された基板フィルム80a(フィルム状モールド)を巻き取るフィルム巻き取りロール87と、基板フィルム80を搬送する複数の搬送ロール78とを有する。
【0039】
ロールプロセス装置70を用いて、以下のような製造プロセスによってフィルム状モールドが製造される。予めフィルム繰り出しロール72に巻き付けられている基板フィルム80は、フィルム繰り出しロール72及びフィルム巻き取りロール87などの回転により下流側に繰り出される。基板フィルム80がダイコータ82を通過するときに、ダイコータ82により凹凸形成材料84が基板フィルム80の一面に塗布されて所定の厚みの塗膜が形成される。次いで、基板フィルム80の塗膜がニップロール74にて転写ロール90の外周面に押し付けられて、転写ロール90の外周面のパターンが塗膜に転写される。それと同時またはその直後に照射光源85からのUV光が塗膜に照射されて凹凸形成材料84が硬化する。UV光の波長は、凹凸形成材料84により異なるが、一般に200〜450nmであり、照射量は10mJ/cm
2〜5J/cm
2にし得る。硬化したパターンを有する凹凸形成材料付き基板フィルム80は剥離ロール76で転写ロール90から引き離された後、フィルム巻き取りロール87により巻き取られる。こうして、長尺のフィルム状モールド80aが得られる。このような長尺のフィルム状モールド80aは、ロール状に巻き取られた形態で得られるため、後述する押圧ロールを用いた光学基板の量産プロセスに好適であり、この押圧ロールを用いた光学基板の量産プロセスを行う装置への搬送にも好適な形状である。また、フィルム状モールドを作製して一旦ロール状に巻取ることで、保管、エージング処理ができる。
【0040】
上記製造プロセスにおいて、基板フィルム80は、例えば、シリコーン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンテレナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリイミド(PI)、ポリアリレート等の有機材料からなる基材が挙げられる。基板フィルムの厚みは、1〜500μmの範囲にし得る。
【0041】
凹凸形成材料84としては、例えば、エポキシ系、アクリル系、メタクリル系、ビニルエーテル系、オキセタン系、ウレタン系、メラミン系、ウレア系、ポリエステル系、フェノール系、架橋型液晶系、フッ素系、シリコーン系等の各種UV硬化性樹脂のような硬化性樹脂が挙げられる。硬化性樹脂の厚みは0.5〜500μmの範囲であることが好ましい。厚みが前記下限未満では、硬化樹脂層の表面に形成される凹凸の高さが不十分となり易く、前記上限を超えると、硬化時に生じる樹脂の体積変化の影響が大きくなり凹凸形状が良好に形成できなくなる可能性がある。
【0042】
上記製造プロセスにおいては、凹凸形成材料84を塗布するためにダイコータによるダイコート法を用いたが、これに代えて、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、滴下法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、カーテンコート法、インクジェット法、スパッタ法等の各種コート方法を採用することができる。さらに、硬化性樹脂のような凹凸形成材料84を硬化させる条件としては、使用する樹脂の種類により異なるが、例えば、硬化温度が室温〜250℃の範囲であり、UV照射量が10mJ/cm
2〜5J/cm
2の範囲であることが好ましい。また、UV光に代えて電子線のようなエネルギー線を照射することで硬化させてもよい。
【0043】
上記製造プロセスで用いた転写ロール90は、例えば、ロール表面に直接パターンが形成された転写ロールでも良いし、パターンを有する金属基板などの基板をロール上に巻き付け固定した転写ロールでも良いし、また、パターンを有する円筒状の基板を作製し、これをロールにはめ込んで固定した転写ロール等でも良い。なお、転写ロール90は金属以外の硬質材料から形成されていてもよい。
【0044】
ここで、転写ロール90の表面に設けられる凹凸パターンの形成方法について説明する。凹凸パターンは、例えば、本出願人らによるWO2012/096368A1に記載されたブロック共重合体の自己組織化(ミクロ相分離)を利用する方法(以下、適宜「BCP(Block Copolymer)法」という)や、本出願人らによるWO2011/007878A1に開示されたポリマー膜上の蒸着膜を加熱・冷却することにポリマー表面の皺による凹凸を形成する方法(以下、適宜「BKL(Buckling)法」という)を用いて形成することが好適である。BCP法及びBKL法に代えて、フォトリソグラフィ法で形成してもよい。BCP法でパターンを形成する場合、パターンを形成する材料は任意の材料を使用することができるが、ポリスチレンのようなスチレン系ポリマー、ポリメチルメタクリレートのようなポリアルキルメタクリレート、ポリエチレンオキシド、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリビニルピリジン、及びポリ乳酸からなる群から選択される2種の組合せからなるブロック共重合体が好適である。
【0045】
パターンの凹凸のピッチ及び高さは、任意であるが、例えば、パターンを可視領域の光を散乱または回折する回折格子の用途に用いる場合には、凹凸の平均ピッチとしては、100〜1500nmの範囲にあることが好ましく、200〜1200nmの範囲であることがより好ましい。凹凸の平均ピッチが前記下限未満では、可視光の波長に対してピッチが小さくなりすぎるため、凹凸による光の回折が生じなくなる傾向にあり、他方、上限を超えると、回折角が小さくなり、回折格子のような光学素子としての機能が失われてしまう傾向にある。凹凸の深さ分布の平均値は、20〜200nmの範囲であることが好ましく、30〜150nmの範囲であることがより好ましい。凹凸の深さ分布の平均値が前記下限未満では、可視光の波長に対して高さが低すぎるために必要な回折が生じなくなる傾向にあり、他方、上限を超えると、回折光強度にむらが生じ、この結果、例えば、この凹凸パターンを有機EL素子の光取り出し用の光学素子として利用した場合に、EL層内部の電界分布が不均一となって特定の箇所に電界が集中することによってリークが生じ易くなったり、寿命が短くなる傾向にある。
【0046】
パターンの母型をBCP法やBKL法により形成した後、以下のようにして電鋳法などにより、パターンをさらに転写したモールドを形成することができる。最初に、電鋳処理のための導電層となるシード層を、無電解めっき、スパッタまたは蒸着等により形成するパターンを有する母型上に形成することができる。シード層は、後続の電鋳工程における電流密度を均一にして後続の電鋳工程により堆積される金属層の厚みを一定にするために10nm以上が好ましい。シード層の材料として、例えば、ニッケル、銅、金、銀、白金、チタン、コバルト、錫、亜鉛、クロム、金・コバルト合金、金・ニッケル合金、ホウ素・ニッケル合金、はんだ、銅・ニッケル・クロム合金、錫ニッケル合金、ニッケル・パラジウム合金、ニッケル・コバルト・リン合金、またはそれらの合金などを用いることができる。次に、シード層上に電鋳(電界めっき)により金属層を堆積させる。金属層の厚みは、例えば、シード層の厚みを含めて全体で10〜3000μmの厚さにすることができる。電鋳により堆積させる金属層の材料として、シード層として用いることができる上記金属種のいずれかを用いることができる。金属基板のモールドとしての耐摩耗性や、剥離性などの観点からは、ニッケルが好ましく、この場合、シード層についてもニッケルを用いることが好ましい。形成した金属層は、後続のモールドの形成のための樹脂層の押し付け、剥離及び洗浄などの処理の容易性からすれば、適度な硬度及び厚みを有することが望ましい。
【0047】
上記のようにして得られたシード層を含む金属層を、凹凸構造を有する母型から剥離して金属基板を得る。剥離方法は物理的に剥がしても構わないし、パターンを形成する材料を、それらを溶解する有機溶媒、例えば、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルムなどを用いて溶解して除去してもよい。金属基板を母型から剥離するときに、残留している材料成分を洗浄にて除去することができる。洗浄方法としては、界面活性剤などを用いた湿式洗浄や紫外線やプラズマを使用した乾式洗浄を用いることができる。また、例えば、粘着剤や接着剤を用いて残留している材料成分を付着除去するなどしてもよい。こうして母型からパターンが転写された金属基板が得られる。こうして得られた金属基板をロール体の表面に巻きつけることで凹凸パターンを有する転写ロール90が得られる。この転写ロール90を用いて前述のような製造プロセスでフィルム状モールドを形成することができる。なお、長尺状のフィルム状モールドは、自ら製造する必要がなく、フィルムメーカなどの製造業者に作製させたものを使用してもよいことは言うまでもない。また、フィルム状モールドを用意する工程は、後述する塗布工程S2の前であればよく、ゾルゲル材料調整工程(S1)の前に行う必要はない。
【0048】
[ゾルゲル材料調製工程]
本発明の光学基板の製造方法において、ゾルゲル法によりパターンを転写する塗膜を形成するために用いるゾルゲル材料(ゾル溶液)を調製する(
図1の工程S1)。例えば、基板上に、シリカをゾルゲル法で合成する場合は、金属アルコキシド(シリカ前駆体)のゾルゲル材料を調製する。シリカの前駆体として、テトラメトキシシラン(MTES)、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−ブトキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン等のテトラアルコキシドモノマーや、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、イソプロピルトリプロポキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、プロピルトリイソプロポキシシラン、イソプロピルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、トリルトリエトキシシラン等のトリアルコキシドモノマー、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジメチルジ−i−ブトキシシラン、ジメチルジ−sec−ブトキシシラン、ジメチルジ-t-ブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジ−n−ブトキシシラン、ジエチルジ−i−ブトキシシラン、ジエチルジ−sec−ブトキシシラン、ジプロピルジ−t−ブトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジプロピルジプロポキシシラン、ジプロピルジイソプロポキシシラン、ジプロピルジ−n−ブトキシシラン、ジプロピルジ−i−ブトキシシラン、ジプロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジプロピルジ−t−ブトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジプロポキシシラン、ジイソプロピルジイソプロポキシシラン、ジイソプロピルジ−n−ブトキシシラン、ジイソプロピルジ−i−ブトキシシラン、ジイソプロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジイソプロピルジ−t−ブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジプロポキシシラン、ジフェニルジイソプロポキシシラン、ジフェニルジ−n−ブトキシシラン、ジフェニルジ−i−ブトキシシラン、ジフェニルジ−sec−ブトキシシラン、ジフェニルジ−t−ブトキシシラン等のジアルコキシドモノマーや、これらモノマーを少量重合したポリマー、前記材料の一部に官能基やポリマーを導入したことを特徴とする複合材料などの金属アルコキシドが挙げられる。また、これらのアルキル基やフェニル基の一部あるいは全部がフッ素で置換されていてもよい。さらに、金属アセチルアセトネート、金属カルボキシレート、オキシ塩化物、塩化物や、それらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されない。また、金属種としては、Si以外にTi、Sn、Al、Zn、Zr、Inなどや、これらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されない。上記酸化金属の前駆体を適宜混合したものを用いることもできる。また、これらの表面に疎水化処理を行ってもよい。疎水化処理の方法は知られている方法を用いればよく、例えば、シリカ表面であれば、ジメチルジクロルシラン、トリメチルアルコキシシラン等で疎水化処理することもできるし、ヘキサメチルジシラザンなどのトリメチルシリル化剤とシリコーンオイルで疎水化処理する方法を用いてもよいし、超臨界二酸化炭素を用いた金属酸化物粉末の表面処理方法を用いてもよい。
【0049】
TEOSとMTESの混合物を用いる場合には、それらの混合比は、例えばモル比で1:1にすることができる。このゾルゲル材料は、加水分解及び重縮合反応を行わせることによって非晶質シリカを生成する。合成条件として溶液のpHを調整するために、塩酸等の酸またはアンモニア等のアルカリを添加する。pHは4以下もしくは10以上が好ましい。また、加水分解を行うために水を加えてもよい。加える水の量は、金属アルコキシド種に対してモル比で1.5倍以上にすることができる。ゾルゲル材料としてシリカ以外の材料を用いることができ、例えばTi系の材料やITO(インジウム・スズ・オキサイド)系の材料、Al
2O
3、ZrO
2、ZnO等を使用し得る。
【0050】
ゾルゲル材料の溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、ブタノール等のアルコール類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン類、ブトキシエチルエーテル、ヘキシルオキシエチルアルコール、メトキシ−2−プロパノール、ベンジルオキシエタノール等のエーテルアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類、フェノール、クロロフェノール等のフェノール類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、クロロホルム、塩化メチレン、テトラクロロエタン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、2硫化炭素等の含ヘテロ元素化合物、水、およびこれらの混合溶媒が挙げられる。特に、エタノールおよびイソプロピルアルコールが好ましく、またそれらに水を混合したものも好ましい。
【0051】
ゾルゲル材料の添加物としては、粘度調整のためのポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコールや、溶液安定剤であるトリエタノールアミンなどのアルカノールアミン、アセチルアセトンなどのβ−ジケトン、β−ケトエステル、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキサンなどを用いることが出来る。
【0052】
なお、加熱による硬化するゾルゲル材料以外に光硬化性ゾルゲル材料を用いてもよい。この場合、例えば、光によって酸を発生する6フッ化リン系芳香族スルホニウム塩などの光酸発生剤を用いたり、アセチルアセトンに代表されるβジケトンをゾル液に添加することで、化学修飾(キレート化)させ、光照射によって化学修飾を外すなどの方法を用いることができる。
【0053】
[塗布工程]
上記のように調製したゾルゲル材料を前述の工程S0で用意したフィルム状モールドの凹凸パターン上に塗布する(
図1の工程S2)。例えば、
図3に示すようにダイコータ30の先端付近にフィルム状モールド80aを送り込み、ダイコータ30からゾルゲル材料41を吐出することで、フィルム状モールド80aの凹凸パターン上に塗膜(ゾルゲル材料層)42を形成することができる。量産性の観点から、複数のフィルム状モールド80aを連続的に搬送させながら所定位置に設置したダイコータ30でゾルゲル材料41をフィルム状モールド80aに連続的に塗布することが好ましい。塗布方法として、バーコート法、スプレーコート法、ダイコート法、インクジェット法などの任意の塗布方法を使用することができるが、比較的大きな幅のフィルム状モールドにゾルゲル材料を均一に塗布可能であること、ゾルゲル材料がゲル化する前に素早く塗布を完了させることができることからすれば、ダイコート法が好ましい。
【0054】
[密着工程]
前述の工程S2で塗布したフィルム状モールド上の塗膜を押圧ロール(ラミネートロール)により基板に押し付けることでフィルム状モールドの凹凸パターン上の塗膜を基板上に密着させる(
図1の工程S3)。例えば、
図3に示すように押圧ロール22とその直下に搬送されている基板40との間に塗膜42を形成したフィルム状モールド80aを送り込むことでフィルム状モールド80aの凹凸パターン上の塗膜42を基板40に密着させることができる。すなわち、フィルム状モールド80a上の塗膜42を押圧ロール22により基板40に押し付ける際に、フィルム状モールド80aと基板40を同期して搬送しながらフィルム状モールド80a上の塗膜42を基板40の表面に被覆する。この際、押圧ロール22をフィルム状モールド80aの裏面(凹凸パターンが形成された面と反対側の面)に押しつけることで、フィルム状モールド80a上の塗膜42と基板40が進行しながら密着する。なお、長尺のフィルム状モールド80aを押圧ロール22に向かって送り込むには、工程S0にて長尺のフィルム状モールド80aが巻き取られたフィルム巻き取りロール87(
図2参照)からそのままフィルム状モールド80aを繰り出して用いるのが有利である。
【0055】
このような押圧ロールを用いたロールプロセスでは、プレス式と比較して以下のような利点がある。i)ロールプロセスであるため生産性が向上し、さらに長尺のフィルム状モールドを用いることで生産性を一層向上することができる。ii)ゾルゲル材料中の溶媒の突沸によってパターン中にガスの気泡が発生したり、ガス痕が残ることを防止することができる。iii)基板と塗膜とが線接触するため、密着圧力及び剥離力を小さくでき、大面積化に対応し易い。iv)押圧時に気泡をかみ込むことがない。さらに、本発明の製造方法では、モールドとして可撓性のあるフィルム状モールドを用いているので、比較的硬質な基板40にモールドの凹凸パターン上に形成されたゾルゲル材料層42を密着させるときに、ゾルゲル材料層を基板全面に渡って均一に押圧することができる。これにより、ゾルゲル材料層が基板に均一に密着され、密着不良を抑制することができる。
【0056】
この密着工程において、塗膜を加熱しながら塗膜を基板に押し付けてもよい。塗膜を加熱する方法として、例えば、加熱を押圧ロールを通じて行ってもよく、或いは、塗膜の加熱を直接あるいは基板側から行ってもよい。加熱を押圧ロールを通じて行う場合には、押圧ロール(密着ロール)の内部に加熱手段を設けてもよく、任意の加熱手段を使用することができる。押圧ロールの内部に加熱ヒータを備えるものが好適であるが、押圧ロールとは別体のヒータを備えていてもよい。いずれにしても塗膜を加熱しながら押圧が可能であれば、どのような押圧ロールを用いてもよい。押圧ロールは、表面に耐熱性のあるエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)やシリコーンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴムなどの樹脂材料の被膜を有するロールが好ましい。また、押圧ロールで加えられた圧力に抗するために押圧ロールに対向して基板を挟むように支持ロールを設けてもよく、あるいは基板を支持する支持台を設置してもよい。
【0057】
押圧の際の塗膜の加熱温度は、室温〜200℃にすることができ、押圧ロールを用いて加熱する場合には押圧ロールの加熱温度は、同様に室温〜200℃にすることができる。このように押圧ロールを加熱することにより、モールドにより押圧が行われた塗膜からモールドをすぐに剥離することができ、生産性を向上することができる。塗膜または押圧ロールの加熱温度が200℃を超えると、樹脂材料からなるモールドの耐熱温度を超える恐れがある。また、塗膜を加熱しながら押圧することにより、後述するゾルゲル材料層の仮焼成と同様な効果が期待できる。
【0058】
塗膜を基板に押し付けた後、塗膜を仮焼成してもよい。塗膜を加熱しないで押圧する場合には、仮焼成を行うことが好ましい。仮焼成することにより塗膜のゲル化(硬化)を進め、パターンを固化し、剥離の際に崩れにくくする。仮焼成を行う場合には、大気中で室温〜200℃の温度で加熱することが好ましい。ゾルゲル材料層42に光硬化性ゾルゲル材料を使用した場合、塗膜の加熱・焼成の代わりに光照射を行うことでゲル化(硬化)を進めてもよい。
【0059】
基板としては、ガラスや石英、シリコン基板等の無機材料からなる基板やポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンテレナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリイミド(PI)、ポリアリレート等の樹脂基板を用い得る。基板は透明でも不透明でもよいが、この基板上にゾルゲル材料層が密着され、さらには光学基板がデバイスに組み込まれるときにさらにその上に機能層が形成されることからすれば、比較的硬質の基板が好ましい。また、この基板から得られた凹凸パターン基板を後述する有機EL素子の製造に用いるのであれば、基板は耐熱性、UV光等に対する耐候性を備える基板が望ましい。これらの点で、ガラスや石英、シリコン基板等の無機材料からなる基板がより好ましく、これらの無機材料からなる基板は、密着されるゾルゲル材料層が無機材料であることからすれば、基板とゾルゲル材料層との間で屈折率の差が少なく、光学基板内での意図しない屈折や反射を防止することができる点からも好ましい。基板と塗膜の密着性を向上させるために、基板上に表面処理や易接着層を設けるなどをしてもよいし、水分や酸素等の気体の浸入を防ぐ目的で、ガスバリア層を設けるなどしてもよい。なお、後の工程でゾルゲル材料層による所望の凹凸パターンが形成されるため基板表面(表面処理や易接着層がある場合にはそれらも含めて)は平坦でよく、この基板自体は所望の凹凸パターンを有さない。
【0060】
[剥離工程]
転写工程または仮焼成工程後の塗膜(ゾルゲル材料層)からモールドを剥離する(工程S4)。前述のようにロールプロセスを使用するので、プレス式で用いるプレート状モールドに比べて剥離力は小さくてよく、塗膜がモールドに残留することなく容易にモールドを塗膜から剥離することができる。特に、塗膜を加熱しながら押圧するので反応が進行し易く、押圧直後にモールドは塗膜から剥離し易くなる。さらに、モールドの剥離性の向上のために、剥離ロールを使用してもよい。
図3に示すように剥離ロール23を押圧ロール22の下流側に設け、剥離ロール23によりフィルム状モールド80aを塗膜42に付勢しながら回転支持することで、フィルム状モールド80aが塗膜に付着された状態を押圧ロール22と剥離ロール23の間の距離だけ(一定時間)維持することができる。そして、剥離ロール23の下流側でフィルム状モールド80aを剥離ロール23の上方に引き上げるようにフィルム状モールド80aの進路を変更することでフィルム状モールド80aが塗膜42から引き剥がされる。なお、フィルム状モールド80aが塗膜に付着されている期間に前述の塗膜の仮焼成や加熱を行ってもよい。なお、剥離ロール23を使用する場合には、例えば室温〜200℃に加熱しながら剥離することにより塗膜の剥離を一層容易にすることができる。さらに、剥離ロールの加熱温度を押圧ロールの加熱温度や仮焼成温度よりも高温にしてもよい。その場合、高温に加熱しながら剥離することにより塗膜から発生するガスを逃がし、気泡の発生を防ぐことができる。ガラス基板40に密着されなかった塗膜部分、すなわち、基板40と続いて搬送される基板40との間隔に相当する長さの塗膜についてはそのままフィルム状モールド80aに付いたままフィルム状モールド80aとともに搬送される。
【0061】
[本焼成工程]
基板40の塗膜42からモールドが剥離された後、塗膜を本焼成する(
図1の工程S5)。本焼成により塗膜を構成するシリカのようなゾルゲル材料層中に含まれている水酸基などが脱離して塗膜がより強固となる。本焼成は、200〜1200℃の温度で、5分〜6時間程度行うのが良い。こうして塗膜は硬化してモールドの凹凸パターンに対応する凹凸パターン膜を有する基板、すなわち、平坦な基板上に凹凸パターンを有するゾルゲル材料層が直接形成された基板が得られる。この時、ゾルゲル材料層がシリカである場合は、焼成温度、焼成時間に応じて非晶質または結晶質、または非晶質と結晶質の混合状態となる。この実施形態ではゾルゲル材料層を本焼成により硬化させるが、それ以外の方法で硬化させ得る。例えば、ゾルゲル材料層42に光硬化性ゾルゲル材料を使用した場合、塗膜の焼成の代わりに光照射を行うことで塗膜を硬化させることができる。
【0062】
[光学基板製造装置]
本発明の光学基板の製造方法を実施するために、例えば、
図4に示すような光学基板を製造する光学基板製造装置(第2ユニット)100を使用することができる。光学基板製造装置100は、主に、基板を搬送する基板搬送部130と、フィルム状モールド80aを搬送するモールド搬送部140と、フィルム状モールド80a上にゾルゲル材料41を塗布する塗布部(塗膜形成部)120とを備え、モールド搬送部140には、フィルム状モールド80a上の塗膜42(
図3参照)を基板40に押圧密着させる押圧部150とフィルム状モールド80aを基板40から剥離する剥離部160とが含まれる。
【0063】
基板搬送部130は、搬送方向(図面左から右側)に沿って配列された複数の回転ロール36を備え、回転ロールの回転駆動によりその上に載置された基板40を搬送方向に搬送する。
【0064】
モールド搬送部140は、主に、長尺のフィルム状モールド80aを繰り出すモールド繰り出しロール21と、基板の搬送路上の所定位置に設けられ、フィルム状モールド80aの凹凸パターン面の反対側から、後述の塗布部(塗膜形成部)120でフィルム状モールド80a上に形成された塗膜を基板40に押し付ける押圧ロール22と、押圧ロール22の下流に設けられてフィルム状モールド80a上の塗膜が基板40に押し付けられた状態を所定距離だけ維持した後にフィルム状モールド80aを剥離する剥離ロール23と、剥離ロールの下流に設けられてフィルム状モールドを巻き取るモールド巻き取りロール24と、フィルム状モールド80aを進行方向に搬送するための搬送ロール29を有する。モールド繰り出しロール21とモールド巻き取りロール24は、それらを着脱可能にする支持台(不図示)に回転可能に取り付けられている。なお、モールド繰り出しロール21は、ロールプロセス装置70によって先に製造したフィルム状モールド80aが巻き取られたフィルム巻き取りロール87(
図2参照)を、この装置100に適宜搬送してそのまま使用することが有利である。
【0065】
押圧部150には、押圧ロール22に対向して支持ロール26が設けられ、支持ロール26は押圧ロール22とともにフィルム状モールド80a及び基板40を挟み込んで基板下側から基板40を押圧するとともに回転駆動して基板40を基板搬送方向の下流側に送り出す。押圧ロール22の内部には加熱ヒータ22aが設けられている。支持ロール26にも加熱ヒータを備えていてもよい。剥離部160には、フィルム状モールド80aの搬送路上に剥離ロール23が設けられ、その下流の搬送ロール29によりフィルム状モールド80aを上方に引き上げることにより、フィルム状モールド80aの基板40からの剥離を促進する。押圧部150と剥離部160との間には加熱炉(ヒータ)28が設けられている。加熱炉28には、例えば赤外線ヒータや熱風加熱、ホットプレートを使用することができる。光学基板製造装置100には、さらに、モールド繰り出しロール21から繰り出されたフィルム状モールド80a及びモールド巻き取りロール24に巻き取られる前のフィルム状モールド80aをそれぞれ除電するための除電器142,144と、フィルム状モールド80aが剥離された基板40を除電するための除電器146が設けられている。
【0066】
塗布部120は、モールド搬送部140のモールド繰り出しロール21の下流側かつ押圧部150の上流側に位置し、フィルム状モールド80aの凹凸パターン面にゾルゲル材料41を塗布するダイコータ30を備える。均一な塗膜を形成するためには、ダイコータ30とフィルム状モールド80aの間隔が一定であることが求められる。このため、塗布部においてフィルム状モールド80aを保持する保持ロール29aが、フィルム状モールド80aの凹凸パターン面と反対側に接し、且つフィルム状モールド80aをダイコータ30に向かって付勢するように設けられている。即ち、フィルム状モールド80aは保持ロール29aによって張力を与えられた状態で、保持ロール29aとダイコータ30の先端の吐出口との間を通過するように移動する。ダイコータ30とフィルム状モールド80aの塗布面との間の距離を安定させるため、保持ロールの回転振れを抑制することが望ましい。特に、ダイコータ30とフィルム状モールドの間隔を10〜500μmに維持することが望ましい。
図4ではダイコータ30の先端の吐出口から吐出されるゾルゲル材料41の吐出方向は、基板搬送方向に対して平行になっているが、ゾルゲル材料41の吐出方向は任意の向きにすることができる。また、
図4ではフィルム状モールド80aが基板搬送方向に対して垂直になっている位置でゾルゲル材料41の塗布を行っているが、ゾルゲル材料41の塗布はフィルム状モールド80aの任意の向きまたは位置で行うことができる。
【0067】
光学基板製造装置100は、基板搬送部130、押圧部150及び剥離部160を含むモールド搬送部140、並びに塗布部120の各動作と装置全体の動作とを総括する制御部(不図示)を備える。この制御部は、特に、基板搬送部130により搬送される基板40と、モールド搬送部140により搬送されるフィルム状モールド80aとが押圧部150で同期されて搬送されるように、基板搬送部130、モールド搬送部140及び押圧ロール22の駆動速度を制御する。光学基板製造装置100は、さらに、塗布部120で形成された塗膜の厚さや状態を観察する検査装置や、フィルム状モールド80aが剥離された後の塗膜の凹凸パターンを観察する検査装置などを備えることができる。
【0068】
光学基板製造装置100により基板40を処理する動作を説明する。基板搬送部130において、基板40がモールド搬送部140の上流側の回転ロール36上に受け渡されて押圧部150、特に所定位置に設けられた押圧ロール22に向けて搬送される。一方、モールド搬送部140において、フィルム状モールド80aはモールド繰り出しロール21から送り出され、搬送ロール29間に設置された除電器142を通過して除電された後、塗布部120において、保持ロール29aで保持されながらダイコータ30によりゾルゲル材料41が塗布される。それにより、フィルム状モールド80a上に幅方向及び長さ方向に渡って均一に、例えば、0.2〜100μmの膜厚でゾルゲル材料41が塗布される。次いで、ゾルゲル材料41の塗膜が形成されたフィルム状モールド80aが搬送ロール29を介して押圧部150に至る。押圧部150では、室温〜200℃に加熱された押圧ロール22が、その下方に搬送されてきたフィルム状モールド80aを基板40に重ねて押圧する。これにより、フィルム状モールド80aの凹凸パターン上の塗膜42が基板40に押し付けられて密着される。また、押圧ロール22の加熱により塗膜のゲル化が進行する。次いで、押圧ロール22により凹凸パターンが転写された基板40は、フィルム状モールド80aが押し付けられたままの状態で加熱炉28内を通過して剥離部160に搬送される。加熱炉28内で基板40は、フィルム状モールド80aの塗膜からの剥離を促進するために、室温〜200℃に加熱される。剥離部160では、フィルム状モールド80aが剥離ロール23を通過するときに搬送ロール29を介してモールド巻き取りロール24によって上方に引き上げられ、フィルム状モールド80aは塗膜から剥離する。この後、フィルム状モールド80aは除電器144により除電されてモールド巻き取りロール24に巻き取られる。フィルム状モールド80aが剥離された基板40は、除電器146により除電されて、光学基板製造装置100を出る。こうして、フィルム状モールド80aの凹凸パターンが塗膜に転写された基板40が得られる。この後、パターンが形成された基板40がオーブンなど(不図示)で本焼成される。本焼成用オーブンは、装置100内に設けてもよい。
【0069】
光学基板製造装置100において、支持ロール26に代えて、基板を支持して移動する移動テーブルなどの他の駆動手段を用いることができる。また、押圧ロール22によりフィルム状モールド80aの凹凸パターンが塗膜42押し付けられたままの状態を維持するために剥離ロール23を用いたが、そのような状態を維持するために剥離ロール23に代えて、表面が滑らかで角部が曲面を有する板状部材などの他の支持部材を用い得る。なお、第2ユニットしての光学基板製造装置100は、
図2に示した第1ユニットとしてのロールプロセス装置70を備えていてもよい。例えば、第2ユニットとしての光学基板製造装置100に第1ユニットとしてのロールプロセス装置70を一体として組み込み、ロールプロセス装置70のフィルム巻き取りロール87をそのまま光学基板製造装置100のモールド繰り出しロール21として用いてもよい。この場合、フィルム巻き取りロール87を駆動する回転機構を光学基板製造装置100の制御装置により制御して回転方向を切り替えるように構成することができる。あるいは、第2ユニットとしての光学基板製造装置100が第1ユニットとしてのロールプロセス装置70を別体として備えていてもよい。この場合には、ロールプロセス装置70でフィルム状モールド80aが巻き取られたフィルム巻き取りロール87を、光学基板製造装置100のモールド繰り出しロール21が設けられる位置に運搬してモールド繰り出しロール21として使用することができる。必要に応じて、光学基板製造装置100とロールプロセス装置70を切り離して、一方または両方を適所で使用することができる。
【0070】
以下に、上記実施形態の光学基板製造装置の変形形態を説明する。
<変形形態1>
上記実施形態の光学基板製造装置100において剥離ロールを設けたが、
図5に示すように剥離ロールを省略してもよい。
図5に示した装置では、モールド繰り出しロール21(
図4参照)から繰り出されたフィルム状モールド80aが加熱押圧ロール22で塗膜42に押圧された後に、基板40より上方に位置するモールド巻き取りロール24(
図4参照)により巻き上げられる。押圧ロール22を加熱したり、他の加熱手段を用いたりすることで、押圧直後のモールドの塗膜からの剥離が促進するとともに塗膜の仮焼成を行うことができる。
【0071】
<変形形態2>
上記実施形態の光学基板製造装置100において、フィルム状モールド80aを塗膜42からの剥離を一層容易にするために、フィルム状モールド80aの剥離角度を適宜変更してもよい。例えば、
図6に示すように剥離部160の上流から回転ロール36を設置する高さを変えて基板40の搬送方向に傾斜をつけ、さらに剥離部160において剥離ロール23とフィルム状モールド80aと基板40が接するように剥離ロール23の設置位置を基板40の搬送方向の傾斜に合わせて変えることで、フィルムモールド80aの剥離角度を変更することができる。また、搬送ロール29の位置を搬送方向、例えば、
図6の矢印で示した方向に変更することによっても剥離角度を調整することができる。
【0072】
<変形形態3>
上記実施形態の光学基板製造装置100において、加熱ヒータ22aを押圧ロール22の内部に設けたが、押圧ロール22を加熱する加熱ヒータの設置について、
図7に示すような構成を採用してもよい。
図7に示すように加熱ヒータ22bを押圧ロール22の内部ではなく押圧部150の押圧ロール22の周辺部に設けたヒートゾーン35内に備えることができる。ヒートゾーン35の内部に加熱ヒータが設けられているので、ヒートゾーン内部が加熱温度に維持される。この場合には、ヒートゾーン35の内部において塗膜42が仮焼成される。なお、ヒートゾーン35に加えて押圧ロール22や支持ロール26の内部に加熱ヒータを設けてもよい。ヒートゾーンの代替に加熱ヒータを内部に備えた加熱ロールを支持ロールに対向して数本設けてもよい。また塗膜のゾルゲル材料として光照射によりゲル化反応が起こる材料を用いる場合、ヒートゾーンの代替に、光照射ゾーンを設けてもよい。また、加熱ヒータの設置の別の変形形態として、加熱ヒータ22aを押圧ロール22の内部に設ける代わりに支持ロール26の内部に備えていてもよい。この場合には、支持ロール26内部の加熱ヒータ22aから発生する熱により塗膜42が仮焼成される。あるいは、加熱ヒータ22aを押圧ロール22と支持ロール26の両方の内部に設けてもよい。
【0073】
<変形形態4>
上記実施形態の光学基板製造装置100において、押圧ロール22を一本設けたが、
図8に示すように押圧ロール22の下流に搬送方向に沿ってさらに複数本の押圧ロール22を設けて、複数本の押圧ロール22で、フィルム状モールド80aの凹凸パターン面の反対側から塗膜42を基板40に押し付けてもよい。この場合、塗膜の硬度変化に対応して押圧ロール22の押圧力を調整してもよい。例えば下流ほど塗膜の硬度が高くなるのに合わせて下流ほど押圧ロール22の押圧を高くしてもよい。
【0074】
<変形形態5>
上記実施形態の光学基板製造装置100において、剥離ロール23とモールド巻き取りロール24を設けてフィルム状モールド80aを基板40および塗膜42から剥離して巻き取ったが、
図9に示すように、剥離ロール23とモールド巻き取りロール24を設けず、加熱炉28の下流にカッター38を設けてもよい。本変形形態では、フィルム状モールド80aの剥離を行わずフィルム状モールド80aをカッター38によって基板40の端部に沿って切断する。この方法によりフィルム状モールド付き光学基板を作製して製品とした場合、フィルム状モールドが基板の保護膜となり、搬送中などの基板への異物の付着を防止することができる。なお、この場合、搬送先でフィルム状モールドを基板のゾルゲル材料層から剥離した後、ゾルゲル材料層の本焼成を行うことになる。
【0075】
<変形形態6>
上記実施形態の光学基板製造装置100において、ゾルゲル材料を熱により硬化させたが、光硬化性のゾルゲル材料を用いて光照射による硬化を行ってもよい。この場合、加熱ロール22aは使用しなくてもよい。加熱炉28の代わりに光照射機を設置してもよい。
【0076】
上記のようにしてロールプロセスを経てゾルゲル材料層からなるパターンが形成された基板は、例えば、有機EL素子用の回折格子基板、ワイヤグリッド偏光子、反射防止フィルム、あるいは太陽電池の光電変換面側に設置することにより太陽電池内部への光閉じ込め効果を付与するための光学素子として使用することができる。あるいは、上記パターンを有する基板をモールド(マザー)として用いて上記パターンをさらに別の樹脂に転写してもよい。この場合、転写された樹脂パターンは基板上のパターンの反転パターンであるために、転写された反転パターンをさらに別の樹脂に転写することで基板のレプリカとしてのモールドを作製してもよい。それらのモールドにNi等による電鋳処理を施して金属モールドを形成することもできる。それらのモールドを用いることにより、有機EL素子用の回折格子基板などの光学部品を一層効率よく量産することができる。
【0077】
<有機EL素子の製造方法>
上記のようにしてロールプロセスを経てゾルゲル材料層からなるパターンが形成された基板を用いて有機EL素子を製造する製造方法の一例について、
図10を参照しながら説明する。先ず、ゾルゲル材料層からなるパターンが形成された基板に付着している異物などを除去するために、ブラシで洗浄し、次いで、アルカリ性洗浄剤および有機溶剤で有機物等を除去する。次いで、
図10に示すように、基板40のゾルゲル材料層42上に、透明電極92を、ゾルゲル材料層42の表面に形成されている凹凸構造が維持されるようにして積層する。透明電極92の材料としては、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、金、白金、銀、銅が用いられる。これらの中でも、透明性と導電性の観点から、ITOが好ましい。透明電極92の厚みは20〜500nmの範囲であることが好ましい。厚みが前記下限未満では、導電性が不十分となり易く、前記上限を超えると、透明性が不十分となり発光したEL光を十分に外部に取り出せなくなる可能性がある。透明電極92を積層する方法としては、蒸着法、スパッタ法、スピンコート法等の公知の方法を適宜採用することができる。これらの方法の中でも、密着性を上げるという観点から、スパッタ法が好ましく、その後、フォトレジストを塗布して電極用マスクパターンで露光した後、現像液でエッチングして所定のパターンの透明電極を得る。なお、スパッタ時には基板が300℃程度の高温に曝されることになる。得られた透明電極をブラシで洗浄し、アルカリ性洗浄剤および有機溶剤で有機物等を除去した後、UVオゾン処理することが望ましい。
【0078】
次に、透明電極92上に、
図10に示す有機層94を積層する。このような有機層94は、有機EL素子の有機層に用いることが可能なものであれば特に制限されず、公知の有機層を適宜利用することができる。また、このような有機層94は、種々の有機薄膜の積層体であってもよく、例えば、
図10に示すような正孔輸送層95、発光層96、及び電子輸送層97からなる積層体であってもよい。ここで、正孔輸送層95の材料としては、フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、N,N’−ビス(3ーメチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)や4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)等の芳香族ジアミン化合物、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、テトラヒドロイミダゾール、ポリアリールアルカン、ブタジエン、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0079】
また、発光層96は、透明電極92から注入された正孔と金属電極98から注入された電子とを再結合させて発光させるために設けられている。発光層96に使用できる材料としては、アントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、アルミニウムキノリノール錯体(Alq3)などの有機金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ピラン、キナクリドン、ルブレン、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ジスチリルアミン誘導体及び各種蛍光色素等を用いることができる。またこれらの化合物のうちから選択される発光材料を適宜混合して用いることも好ましい。また、スピン多重項からの発光を示す材料系、例えば燐光発光を生じる燐光発光材料、およびそれらからなる部位を分子内の一部に有する化合物も好適に用いることができる。なお、前記燐光発光材料はイリジウムなどの重金属を含むことが好ましい。上述した発光材料をキャリア移動度の高いホスト材料中にゲスト材料としてドーピングして、双極子−双極子相互作用(フェルスター機構)、電子交換相互作用(デクスター機構)を利用して発光させても良い。また、電子輸送層97の材料としては、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレンなどの複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アルミニウムキノリノール錯体(Alq3)などの有機金属錯体などが挙げられる。さらに上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。なお、正孔輸送層95もしくは電子輸送層97が発光層96の役割を兼ねていてもよい。この場合、透明電極92と金属電極98の間の有機層は2層となる。
【0080】
さらに、金属電極98からの電子注入を容易にするという観点から、有機層94と金属電極98の間に電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)、Li
2O
3等の金属フッ化物や金属酸化物、Ca、Ba、Cs等の活性の高いアルカリ土類金属、有機絶縁材料等からなる層を設けてもよい。また、透明電極92からの正孔注入を容易にするという観点から、有機層94と透明電極92の間に正孔注入層として、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、または導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマーなどからなる層を設けても良い。
【0081】
また、有機層94が正孔輸送層95、発光層96、及び電子輸送層97からなる積層体である場合、正孔輸送層95、発光層96、及び電子輸送層97の厚みは、それぞれ1〜200nmの範囲、5〜100nmの範囲、及び5〜200nmの範囲であることが好ましい。有機層94を積層する方法としては、蒸着法、スパッタ法、スピンコート法、ダイコート法等の公知の方法を適宜採用することができる。
【0082】
有機EL素子形成工程においては、次いで、
図10に示すように、有機層94上に金属電極98を積層する。金属電極98の材料としては、仕事関数の小さな物質を適宜用いることができ、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、MgAg、MgIn、AlLiが挙げられる。また、金属電極98の厚みは50〜500nmの範囲であることが好ましい。厚みが前記下限未満では、導電性が低下し易く、前記上限を超えると、電極間の短絡が発生した際に、修復が困難となる可能性がある。金属電極98は、蒸着法、スパッタ法等の公知の方法を採用して積層することができる。こうして、
図10に示すような構造の有機EL素子200が得られる。
【0083】
前述のように、本発明の方法に従い製造した光学基板の凹凸パターンはゾルゲル材料から形成されているために、以下に説明するように種々の点で硬化性樹脂から凹凸パターンが形成されている基板に比べて有利となる。ゾルゲル材料は、機械的強度に優れるため、有機EL素子の製造プロセスにおいて基板及び透明電極形成後に凹凸パターン面にブラシ洗浄を行っても傷、異物の付着、透明電極上の突起などが発生しにくく、それらに起因する素子不良を抑制できる。それゆえ、本発明の方法により得られた有機EL素子は、凹凸パターンを有する基板の機械的強度という点で硬化性樹脂基板を用いる場合に比べて優れる。
【0084】
本発明の方法に従い製造したゾルゲル材料から形成された基板は、耐薬品性に優れる。それゆえ、基板及び透明電極の洗浄工程に用いるアルカリ液や有機溶媒に対しても比較的耐食性があり、種々の洗浄液を使用することができる。また、前述のように透明基板のパターニング時にアルカリ性の現像液を用いることがあり、このような現像液に対しても耐食性がある。この点でアルカリ液に対して耐性が比較的低い硬化性樹脂基板に比べて有利となる。
【0085】
本発明の方法に従い製造したゾルゲル材料から形成された基板は、耐熱性に優れる。このため、有機EL素子の透明電極製造プロセスにおけるスパッタ工程の高温雰囲気にも耐えることができる。さらに、本発明の方法に従い製造したゾルゲル材料から形成された基板は、硬化性樹脂基板に比べて、耐UV性、耐候性にも優れる。このため、透明電極形成後のUVオゾン洗浄処理に対しても耐性を有する。
【0086】
本発明の方法により製造された有機EL素子を屋外で使用した場合には、硬化性樹脂に凹凸パターンを形成した基板を用いた有機EL素子を使用した場合に比べて太陽光による劣化が抑制できる。さらに、上記のような硬化樹脂では発光時の発熱などで高温下に長期間置かれると劣化して黄変やガスの発生の可能性があり、樹脂基板を用いた有機EL素子の長期的な使用が難しいが、ゾルゲル材料を用いて作製された基板を備える有機EL素子では劣化が抑制される。
【0087】
上記実施形態の有機EL素子の製造方法の変形形態について、
図11を参照しながら説明する。上記実施形態では、ロールプロセスを経て作製した光学基板のゾルゲル材料層上(凹凸表面上)に、透明電極、有機層及び金属電極を順次積層して有機EL素子を製造したが、光学基板の凹凸表面と反対側の面(平坦面)上に、透明電極92a、有機層94a及び金属電極98aを順次積層して、
図11に示すような有機EL素子200aを製造してもよい。この変形形態において、上記実施形態において説明したのと同様の方法及び材料を用いて透明電極、有機層及び金属電極を積層することができる。本変形形態の製造方法によって製造された有機EL素子200aの透明電極92a、有機層94a及び金属電極98aは、凹凸パターンを有するゾルゲル材料層42が形成された面と反対側の、凹凸パターンが形成されていない平坦な面の上に積層されているため、いずれも平坦な層構造を有する。また、本変形形態の製造方法によって製造された有機EL素子200aにおいて、ゾルゲル材料層42は、光学基板内を通過してきた光が基板(ゾルゲル材料層42を含む)と空気の界面において全反射することを抑制して光取出し効率を向上させる、マイクロレンズアレイとして機能することができる。
【0088】
なお、上記実施形態及び変形形態の有機EL素子の製造方法に用いた光学基板は、一方の面にのみ凹凸パターンが形成されていたが、両面に凹凸パターンが形成された光学基板を用いて有機EL素子を製造してもよい。それにより、回折格子としての凹凸パターンとマイクロレンズアレイとしての凹凸パターンの両方を備えた有機EL素子を製造することができる。両面に凹凸パターンを備える光学基板は、上記の光学基板の製造方法によって一方の面にゾルゲル材料層からなる凹凸パターンを形成した後、さらに、形成した凹凸パターン面と反対側の面に上記の光学基板の製造方法を適用して凹凸パターンを形成することによって製造することができる。一方の面の凹凸パターンのみを上記の光学基板の製造方法によって形成し、他方の面の凹凸パターンを任意の他の方法で形成してもよい。
【0089】
以上、本発明を実施例により説明してきたが、本発明の光学基板の製造方法及び製造装置は上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した技術思想の範囲内で適宜改変することができる。例えば、
図4に示した光学基板の製造装置は、塗布部(塗膜形成部)120と押圧部150の間に塗膜を乾燥させる乾燥機構を備えてもよい。