(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5695816
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】湾曲したハンドルバーを備えた自転車に用いられる制御装置
(51)【国際特許分類】
B62L 3/02 20060101AFI20150319BHJP
G05G 1/04 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
B62L3/02 Z
B62L3/02 A
G05G1/04 A
【請求項の数】36
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2008-297977(P2008-297977)
(22)【出願日】2008年11月21日
(65)【公開番号】特開2009-126515(P2009-126515A)
(43)【公開日】2009年6月11日
【審査請求日】2011年11月11日
【審判番号】不服2014-2893(P2014-2893/J1)
【審判請求日】2014年2月17日
(31)【優先権主張番号】MI2007A002230
(32)【優先日】2007年11月23日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】592072182
【氏名又は名称】カンパニョーロ・ソシエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】CAMPAGNOLO SOCIETA A RESPONSABILITA LIMITATA
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(72)【発明者】
【氏名】ジュセッペ・ダル・プラ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア・デ・プレット
【合議体】
【審判長】
冨岡 和人
【審判官】
島田 信一
【審判官】
中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】
仏国特許出願公開第2777528(FR,A1)
【文献】
特開2006−103674(JP,A)
【文献】
特開2007−223594(JP,A)
【文献】
特開平5−97088(JP,A)
【文献】
特開平10−147263(JP,A)
【文献】
実開昭59−94989(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62L3/02,B62K23/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲したハンドルバー(M)を備えた自転車に用いられる制御装置であって、
自転車の前記ハンドルバー(M)に固定可能な支持体(5)と、前記支持体(5)に回転自在に接続された制動レバー(2)とを有し、
前記制動レバー(2)が、使用時に制動ケーブル(F)の端部と一体的に動作する反作用アーム(7)を有し、
前記支持体(5)が、把持可能な突部(11)を遠位上部に有し、
前記制動レバー(2)が、前記支持体(5)を把持する第1の乗車状態における第1の作動領域(19)と、前記突部(11)を把持する第2の乗車状態における第2の作動領域(20)とを有し、
前記制動レバー(2)のピボットピン(6)が、前記支持体(5)の上面(12)よりも下にあり、前記支持体(5)の上面(12)から、0〜15ミリメートルである第1の距離(D1)のところにあり、
前記制動レバー(2)のピボットピン(6)と、前記制動ケーブル(F)および前記制動レバー(2)の一体的動作点(8)との間の距離(L1)が、20〜30ミリメートルである制御装置(1)。
【請求項2】
請求項1において、前記突部(11)が、さらに、前記支持体(5)の内側面(13)よりもさらに内側に突出しており、前記第2の乗車状態において運転者の親指を収容する凹部(15)を形成している制御装置(1)。
【請求項3】
請求項2において、前記突部(11)の上端部(14)が、前記支持体(5)の前記内側面(13)よりも内側に、2〜12ミリメートルの距離(S)で突出している制御装置(1)。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、前記突部(11)の遠位外側部が凸形である制御装置(1)。
【請求項5】
請求項4において、前記遠位外側部の凸形の曲率半径(R5)が、30〜45ミリメートルである制御装置(1)。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項において、前記突部(11)の上方外側部が凸形である制御装置(1)。
【請求項7】
請求項6において、前記上方外側部の凸形の曲率半径(R6)が、10〜30ミリメートルである制御装置(1)。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項において、前記突部(11)が、前記制動レバー(2)の上に延在する遠位面(16)を有している制御装置(1)。
【請求項9】
請求項8において、前記遠位面(16)の高さ(H2)が、5〜30ミリメートルで延びている制御装置(1)。
【請求項10】
請求項1において、前記支持体(5)の前記上面(12)から前記第1の作動領域(19)内の中指の作用点までの距離と、前記第1の距離(D1)との比率が、3.3よりも大きい制御装置(1)。
【請求項11】
請求項10において、前記支持体(5)の前記上面(12)から前記第2の作動領域(20)内の中指の作用点までの距離(D4)と、前記第1の距離(D1)との比率が、1よりも大きい制御装置(1)。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項において、前記制動レバー(2)のピボットピン(6)から前記第1の作動領域(19)内の中指の作用点までの距離(L3)と、前記制動レバー(2)のピボットピン(6)と前記制動ケーブル(F)および前記制動レバー(2)の一体的動作点(8)との間の距離(L1)との比率が、1.5〜3.3である制御装置(1)。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項において、前記制動レバー(2)のピボットピン(6)から前記第2の作動領域(20)内の中指の作用点までの距離(L4)と、前記制動レバー(2)のピボットピン(6)と前記制動ケーブル(F)および前記制動レバー(2)の一体的動作点(8)との間の距離(L1)との比率が、0.6〜1.9である制御装置(1)。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項において、前記第1の作動領域(19)と前記第2の作動領域(20)とが重複しており、少なくとも30%重複している制御装置(1)。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項において、前記制動レバー(2)が、前記第1の作動領域(19)において、遠位側方向に面した凸部を有する上部と、遠位側方向に面した凹部を有する下部とを備えている制御装置(1)。
【請求項16】
請求項15において、前記制動レバー(2)の遠位側方向に面した凸部を有する前記第1の作動領域(19)の上部の曲率半径(R3)が、47〜60ミリメートルであり、遠位側方向に面した凹部を有する前記第1の作動領域(19)の下部の曲率半径(R4)が、50〜62ミリメートルである制御装置(1)。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項において、前記制動レバー(2)が、前記第2の作動領域(20)において、遠位側方向に面した凸部を有する上部と、遠位側方向に面した凹部を有する中間部と、遠位側方向に面した凸部を有する下部とを備えている制御装置(1)。
【請求項18】
請求項17において、前記第2の作動領域(20)の上部の曲率半径(R1)が、45〜55ミリメートルであり、前記第2の作動領域(20)の中間部の曲率半径(R2)が、30〜38ミリメートルであり、前記第2の作動領域(20)の下部の曲率半径(R3)が、47〜60ミリメートルである制御装置(1)。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一項において、前記制動レバー(2)が、さらに、前記ハンドルバー(M)を把持する第3の乗車状態における第3の作動領域(18)を有している制御装置(1)。
【請求項20】
請求項19において、前記制動レバー(2)が、前記第3の作動領域(18)において、遠位側方向に面した凹部を備えている制御装置(1)。
【請求項21】
請求項20において、前記制動レバー(2)の遠位側方向に面した凹部を有する前記第3の作動領域(18)の部分の曲率半径(R4)が、50〜62ミリメートルである制御装置(1)。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか一項において、前記制動ケーブル(F)の前記端部が、前記制動レバー(2)に固定された通しピン(8)にヘッド(T)が挿入されていることによって前記制動レバー(2)と一体的に動作する制御装置(1)。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか一項において、前記制動レバー(2)が、軽量化のための1つ以上の孔(21)を有している制御装置(1)。
【請求項24】
ピボットピン(6)と、使用時に制動ケーブル(F)の端部と一体的に動作する反作用アーム(7)と、作動アーム(9)とを備えた、湾曲したハンドルバー(M)を備えた自転車に用いられる制動レバーであって、
前記作動アーム(9)が、遠位側方向に面した凹部を有する上部と、遠位側方向に面した凸部を有する中間部と、遠位側方向に面した凹部を有する下部とを備え、
当該制動レバー(2)が、前記中間部および前記下部を含む第1の作動領域(19)と、
前記上部および前記中間部を含む第2の作動領域(20)とを有し、
前記制動レバー(2)のピボットピン(6)と、前記制動ケーブル(F)および前記制動レバー(2)の一体的動作点(8)との間の距離(L1)が、20〜30ミリメートルである制動レバー(2)。
【請求項25】
請求項24において、前記作動アーム(9)の上部の凹部の曲率半径(R2)が、30〜38ミリメートルである制動レバー(2)。
【請求項26】
請求項24または25において、前記作動アーム(9)の中間部の凸部の曲率半径(R3)が、47〜60ミリメートルである制動レバー(2)。
【請求項27】
請求項24〜26のいずれか一項において、前記作動アーム(9)の下部の凹部の曲率半径(R4)が、50〜62ミリメートルである制動レバー(2)。
【請求項28】
請求項24〜27のいずれか一項において、前記第1の作動領域(19)と前記第2の作動領域(20)とが重複しており、少なくとも30%重複している制動レバー(2)。
【請求項29】
請求項24〜28のいずれか一項において、さらに、前記作動アーム(9)の下部を含む第3の作動領域(18)を有している制動レバー(2)。
【請求項30】
請求項24〜29のいずれか一項において、前記作動アーム(9)の上部の長さ(L6)が、18〜22ミリメートルである制動レバー(2)。
【請求項31】
請求項24〜30のいずれか一項において、前記作動アーム(9)の中間部の長さ(L7)が、38〜46ミリメートルである制動レバー(2)。
【請求項32】
請求項24〜31のいずれか一項において、前記作動アーム(9)の下部の長さ(L8)が、52〜64ミリメートルである制動レバー(2)。
【請求項33】
請求項24〜32のいずれか一項において、前記反作用アーム(7)が、遠位側方向に面した凹部を有する上部と、遠位側方向に面した凸部を有する下部とを備えている制動レバー(2)。
【請求項34】
請求項33において、前記反作用アーム(7)の前記上部の曲率半径(R1)が、45〜55ミリメートルである制動レバー(2)。
【請求項35】
請求項33または34において、前記反作用アームの前記上部の長さ(L5)が、30〜40ミリメートルである制動レバー(2)。
【請求項36】
請求項24〜35のいずれか一項において、軽量化のための1つ以上の孔(21)を有している制動レバー(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、競走用自転車に典型である湾曲したハンドルバーを備えた自転車に用いられる制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような制御装置は、自転車のハンドルバーに固定可能な支持体と、支持体および反作用アームに回転自在に接続された制動レバーとを備えており、この反作用アームには、制動ケーブル、典型的には、非伸張性の被覆ケーブル(ボーデンケーブル)の端部が取り付けられている。作動アームをハンドルバーの方向に移動させて制動レバーを作動させるとき、制動レバーの反作用アームはハンドルバーから離れるように移動し、この結果生じる制動ケーブルの引っ張り力によって制動が作動し、これによってブレーキの顎部が車輪のリムの周りを締め付ける。
【0003】
このような制御装置の一部である、いわゆる統合型の装置には、さらに、自転車のギアシフトのディレイラを作動させるために1つ以上のレバーおよび/または1つ以上のボタンが設けられている。
【0004】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、垂直、水平、遠位、近位、上、下、内側および外側などのあらゆる空間的基準は、ハンドルバーに固定された支持体の状態について指すものである。詳細には、近位とはハンドルバーの方向に面することをいい、他方、遠位とはハンドルバーの方向に面していないことをいい、内側とはハンドルバーの中心の方向に面することをいい、他方、外側とはハンドルバーの中心の方向に面していないことをいう。
【0005】
より詳細には、支持体は、ハンドルバーの湾曲した端部から遠位方向に突出するようにして固定可能であり、制動レバーは、支持体が固定されることによって、ハンドルバーの湾曲した端部の前方で支持体からほぼ垂直に延出する。
【0006】
1つの乗車状態において、運転者はハンドルバーを把持する。実際の作動アーム長が最大になり、運転者は、手が実質的に開いた状態から、親指以外の指、詳細には人差し指および中指を使って制動レバーを動作するので、このような乗車状態は制動に関して最も好ましい。
【0007】
他の乗車状態において、運転者は、支持体を把持し、手の平を支持体の上面に載置させる。このような乗車状態でも、制動レバーは一般的に容易に作動できる。というのも、作動アームが十分の長さであり、運転者は、手の一部を閉じている状態からでも作動を開始できるからである。
【0008】
この動作状態から、運転者の手が前方に滑って支持体から外れて把持を失うことを防ぐために、例えば、特許文献1に示されているような、支持体の遠位外側の位置に、基本的に把持することのできない小さい突部が設けられた制御装置が知られている。
【0009】
さらに、特許文献2には、内側に湾曲したラッパ状の突部を支持体が備えた制御装置が記載されている。しかしながら、この突部は、表示装置を支持するためのものなので把持することができない。
【0010】
さらに、支持体の突部が、さらなる他の乗車状態において把持できるようにさらに突出した制御装置も知られている。
【0011】
特許文献3には、このような、内側に湾曲し、把持することができるラッパ状の突部を備えた制御装置が記載されている。しかしながら、手の平を突部の近位面に載置して指を突部の回りで閉じることで突部を把持している乗車状態から制動レバーを作動させるには、運転者は、実際には把持を解放し、指を開いて手の平を支持体の上面において滑らせなければならず、つまり、支持体を把持する上述の乗車状態に移行することによってのみ、制動が可能である。
【0012】
特許文献4には、把持可能な突部を備えた制御装置が記載されている。運転者が突部を把持した乗車状態からでも作動ができるように(実際の作動アーム長が比較的短く、運転者は手が事実上閉じた状態から作動を開始させるので、この乗車状態は最もぎりぎりの制動になる)、この特許文献には、制動レバーのピボットピンを、制動ケーブルの端部の方向またはその方向よりも上に配置した構成が記載されており、詳細には、制動レバーと制動ケーブルの端部との間に適切な伝動機構が設けられている。
【特許文献1】欧州特許第0504118号明細書
【特許文献2】米国特許第5676021号明細書
【特許文献3】仏国特許第2777528号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2007/0204716号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の基本的な技術的課題は、湾曲したハンドルバーを備えた自転車に用いられ、乗車・制動状態に関して特に多面的に用いることができ、かつ安全である他の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、自転車のハンドルバーに固定可能な支持体と、支持体に回転自在に接続された制動レバーとを備えた、湾曲したハンドルバーを備えた自転車に用いられる制御装置に関するものであり、制動レバーが、使用時に制動ケーブルの端部と一体的に動作する反作用アームを有し、支持体が、把持可能な突部を遠位上部に有し、制動レバーが、支持体を把持する第1の乗車状態における第1の作動領域と、前記突部を把持する第2の動作状態における第2の作動領域とを有している。
【0015】
好ましくは、前記突部は、さらに、支持体の内側面よりもさらに内側に突出しており、前記第2の乗車状態において運転者の親指を収容する凹部を形成している。
【0016】
このような凹部によって、手首を小さく回転でき、これによって親指以外の指、または少なくとも中指、薬指ならびに小指を、突部の下の低い位置において閉じることができる。
【0017】
好ましくは、前記突部の上端部は、支持体の内側面よりも内側に、2〜12ミリメートル(mm)、より好ましくは、4〜8ミリメートル(mm)、さらに好ましくは、6.5ミリメートル(mm)の距離で突出している。
【0018】
好ましくは、さらに、突部の遠位外側部が凸形である。
【0019】
より好ましくは、このような凸形の曲率半径は、30〜45ミリメートル(mm)、より好ましくは、33〜38ミリメートル(mm)、さらに好ましくは、35ミリメートル(mm)である。
【0020】
好ましくは、さらに、突部の上方外側部が凸形である。
【0021】
より好ましくは、このような凸形の曲率半径は、10〜30ミリメートル(mm)、より好ましくは、13〜20ミリメートル(mm)、さらに好ましくは、15ミリメートル(mm)である。
【0022】
好ましくは、突部は、制動レバーの上に延在する遠位面を有している。
【0023】
有利なことに、このような遠位面は、運転者の人差し指の受け部となり、第2の乗車状態における把持を向上させ、場合によっては、制動時における把持も向上させる。
【0024】
好ましくは、前記遠位面の高さは、5〜30ミリメートル(mm)、より好ましくは、10〜20ミリメートル(mm)、さらに好ましくは、14ミリメートル(mm)で延びている。
【0025】
好ましくは、制動レバーのピボットピンは、支持体の上面よりも下にあり、支持体の上面から、0〜15ミリメートル(mm)、より好ましくは、3〜10ミリメートル(mm)、さらに好ましくは、6ミリメートル(mm)である第1の距離のところにある。
【0026】
特に短い前記の距離によって、機械的に有利な状態であらゆる乗車状態から動作できる制動レバーを形成することができる。
【0027】
好ましくは、支持体の上面から前記第1の作動領域内の中指の作用点までの距離と、前記第1の距離との比率は、3.3よりも大きく、より好ましくは、7よりも大きく、さらに好ましくは、10である。
【0028】
好ましくは、支持体の上面から前記第2の作動領域内の中指の作用点までの距離と、前記第1の距離との比率は、1よりも大きく、より好ましくは、3よりも大きく、さらに好ましくは、5である。
【0029】
好ましくは、制動レバーのピボットピンと、制動ケーブルおよび制動レバーの一体的動作点との間の距離は、20〜30ミリメートル(mm)、より好ましくは、23〜27ミリメートル(mm)、さらに好ましくは、24.6ミリメートル(mm)である。
【0030】
好ましくは、制動レバーのピボットピンから前記第1の作動領域内の中指の作用点までの距離と、制動レバーのピボットピンと制動ケーブルおよび制動レバーの一体的動作点との間の距離との比率は、1.5〜3.3、より好ましくは、2〜2.5、さらに好ましくは、2.26である。
【0031】
好ましくは、さらに、制動レバーのピボットピンから前記第2の作動領域内の中指の作用点までの距離と、制動レバーのピボットピンと制動ケーブルおよび制動レバーの一体的動作点との間の距離との比率は、0.6〜1.9、より好ましくは、0.8〜1.4、さらに好ましくは、1.13である。
【0032】
好ましくは、さらに、第1の作動領域と第2の作動領域とは重複しており、少なくとも30%、より好ましくは、少なくとも50%重複している。
【0033】
好ましくは、制動レバーは、第1の作動領域において、遠位側方向に面した凸部を有する上部と、遠位側方向に面した凹部を有する下部とを備えている。
【0034】
このようにして、中指は、制動レバーの、遠位上方から近位下方への傾きを有する領域に当接するので、第1の乗車状態において制動レバーを引っ張るのに特に有利である。
【0035】
好ましくは、制動レバーの遠位側方向に面した凸部を有する第1の作動領域の上部の曲率半径は、47〜60ミリメートル(mm)、好ましくは、50〜56ミリメートル(mm)、さらに好ましくは、53ミリメートル(mm)であり、遠位側方向に面した凹部を有する第1の作動領域の下部の曲率半径は、50〜62ミリメートル(mm)、より好ましくは、53〜59ミリメートル(mm)、さらに好ましくは、56ミリメートル(mm)である。
【0036】
好ましくは、制動レバーは、第2の作動領域において、遠位側方向に面した凸部を有する上部と、遠位側方向に面した凹部を有する中間部と、遠位側方向に面した凸部を有する下部とを備えている。
【0037】
このようにして、中指が、制動レバーの、近位上方から遠位下方への傾きを有する領域に当接するので、第2の乗車状態において制動レバーに対して押圧動作を行うのに特に有利である。
【0038】
好ましくは、第2の作動領域の上部の曲率半径は、45〜55ミリメートル(mm)、好ましくは、48〜52ミリメートル(mm)、さらに好ましくは、50ミリメートル(mm)であり、第2の作動領域の中間部の曲率半径は、30〜38ミリメートル(mm)、より好ましくは、32〜36ミリメートル(mm)、さらに好ましくは、34ミリメートル(mm)であり、第2の作動領域の下部の曲率半径は、47〜60ミリメートル(mm)、より好ましくは、50〜56ミリメートル(mm)、さらに好ましくは53ミリメートル(mm)である。
【0039】
好ましくは、制動レバーは、さらに、ハンドルバーを把持する第3の乗車状態における第3の作動領域を有している。
【0040】
好ましくは、制動レバーは、第3の作動領域において、遠位側方向に面した凹部を有する部分を備えており、制動レバーを引っ張るのに特に有利である。
【0041】
好ましくは、制動レバーの遠位側方向に面した凹部を有する第3の作動領域の部分の曲率半径は、50〜62ミリメートル(mm)、より好ましくは、53〜59ミリメートル(mm)、さらに好ましくは56ミリメートル(mm)である。
【0042】
典型的に、制動ケーブルの端部は、制動レバーに固定された通しピンにヘッドが挿入されることによって制動レバーと一体的に動作する。
【0043】
好ましくは、制動レバーは、軽量化のための1つ以上の孔を有している。
【0044】
本発明の第2の構成は、ピボットピンと、使用時に制動ケーブルの端部と一体的に動作する反作用アームと、作動アームとを備えた、湾曲したハンドルバーを備えた自転車に用いられる制動レバーに関するものであり、前記作動アームが、遠位側方向に面した凹部を有する上部と、遠位側方向に面した凸部を有する中間部と、遠位側方向に面した凹部を有する下部とを備え、当該制動レバーが、前記中間部および前記下部を含む第1の作動領域と、前記上部および前記中間部を含む第2の作動領域とを有している。
【0045】
好ましくは、制動レバーは、さらに、前記作動アームの下部を含む第3の作動領域を有している。
【0046】
好ましくは、作動アームの上部の長さは、18〜22ミリメートル(mm)、より好ましくは、20ミリメートル(mm)である。
【0047】
好ましくは、さらに、作動アームの中間部の長さは、38〜46ミリメートル(mm)、より好ましくは、42ミリメートル(mm)である。
【0048】
好ましくは、さらに、作動アームの下部の長さは、52〜64ミリメートル(mm)、より好ましくは、58ミリメートル(mm)である。
【0049】
好ましくは、さらに、制動レバーの反作用アームは、遠位側方向に面した凹部を有する上部と、遠位側方向に面した凸部を有する下部とを備えている。
【0050】
好ましくは、反作用アームの前記上部の長さは、30〜40ミリメートル(mm)、より好ましくは、35ミリメートル(mm)である。
【0051】
好ましくは、さらに、制動レバーは、軽量化のための1つ以上の孔を有している。
【0052】
制動レバーの曲率半径の好ましい数値および制動レバーの他の有利な特性については、本発明の制御装置に関連して上述しました。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
本発明のさらなる特徴および利点は、好ましい実施形態についての、添付の図面を用いた説明から明らかになる。
【0054】
図1〜4には、湾曲したハンドルバーMを備えた自転車に用いられる、本発明の制御装置1が示されている。この制御装置1は左側の制御装置であり、フロントブレーキを典型的に制御する制動レバー2を備えている。
【0055】
制御装置1は、より詳細には統合型の制御装置であり、自転車の前側のディレイラを典型的に制御するレバー3およびボタンレバー4をさらに備えている。リアブレーキと、場合により自転車の後側のディレイラとを典型的に制御する右側の制御装置は、図示の制御装置1と鏡面対称であるので、図示や以下での説明をしない。
【0056】
制御装置1は、ハンドルバーMの湾曲した左側端部でクランプ22などの適切な手段によってハンドルバーMに固定することができる支持体5を備えており、支持体5は、ハンドルバーMに固定されることによって、ハンドルバーMから遠位方向に突出する。
【0057】
制動レバー2は、ほぼ水平に延びるピボットピン6によって、支持体5の遠位位置に回転自在に接続されている。
【0058】
制動レバー2は、ピボットピン6の上に反作用アーム7を有しており、この反作用アーム7の端部の近傍において、制動ケーブルFの端部が反作用アーム7と一体的に動作する。より詳細には、制動ケーブルFの端部におけるヘッドTが、一体的動作点となる通しピン8の横断孔に周知の方法によって挿入されている。
【0059】
通しピン8は、制動レバー2のピボットピン6から距離L1(
図2)のところにあり、この距離L1は、制動レバー2の実際の反作用アームの長さを示している。
【0060】
制動レバー2は、さらに、ピボットピン6の下に作動アーム9を有しており、この作動アーム9は、ハンドルバーMの湾曲した端部の前方において、支持体5からほぼ垂直に延在している。
【0061】
制動レバー2は、さらに、公知の止め装置10を備えており、これによって制動レバー2は、休止位置と解放位置との間を移動することができ、この休止位置から作動アーム9がハンドルバーMに向かって移動する、つまり反作用アーム7がハンドルバーMから離れるように移動することにより、通しピン8を通る制動ケーブルFが制動レバー2と一体的に動作して引っ張られてブレーキが作動し、解放位置では、作動アーム9がハンドルバーMから離れるように移動することによって反作用アーム7がハンドルバーMに対して休止位置のときよりも近付き、これにより制動ケーブルFが解放されてブレーキの顎部が広がり、車輪が自由に動作する。
【0062】
支持体5は、遠位上部において突部11を備えている。
【0063】
突部11は、支持体5のほぼ平坦な上面12から高さH1(
図2)で突出している。
【0064】
図3に示されているように、さらに、突部11の上端部14は、支持体5の内側面13よりも内側に距離Sで突出しており、制御装置1の凹部15を形成している。突部11の遠位外側部は、曲率半径R5を有する凸形となっている。
【0065】
突部11は、支持体5の幅に相当する基部の幅W1と、基部の幅W1よりも若干短い、上端部14の幅W2とを有している。幅とは、内側−外側方向の間の寸法をいう。
【0066】
突部11は、基部の長さP1(
図4)と、基部の長さP1よりもかなり短い、上端部14の長さP2とを有している。長さとは、遠位−近位方向の間の寸法をいう。突部11の上方外側部は、曲率半径R6を有する凸形となっている。
【0067】
つまり突部11は、全体として丸みを帯びたラッパ形状をしている。
【0068】
制動レバー2のピボットピン6は、支持体5の上面12よりも下にあり、この上面12から、第1の距離である距離D1のところにある。
【0069】
制動レバー2の反作用アーム7の長さのほぼ全体は、突部11の遠位空間(図示せず)内に延在しているが、突部11の高さH1の全体には延在していない。すなわち、突部11は、制動レバー2より上の高さH2に延在する遠位面16を有している。
【0070】
突部11は、さらに、支持体5の上面12に滑らかに連続する近位面17を有している。
【0071】
支持体5は、上面12の長さP3(
図2)と、近位面17の高さH3から突部11の開始部の高さH4へと若干減少する高さと、上述した幅W1(
図3)とを有している。
【0072】
制動レバー2、詳細には、制動レバー2の遠位側の面は、曲線状に延びている。反作用アーム7の長さのほぼ全体が、長さL5の一部において曲率半径R1を持つ、遠位側方向の凸部を有している。制動レバー2は、ピボットピン6において、長さL6の一部において曲率半径R2を持つ、遠位側方向の凹部を有している。作動アーム9の、ピボットピン6に隣接する部分は、長さL7の一部において曲率半径R3を持つ、遠位側方向の凸部を有しており、他方、作動アーム9の残りの部分、すなわち自由端部は、長さL8の一部において曲率半径R4を持つ、遠位側方向の凹部を有している。これら様々な曲率は、変曲点を介して滑らかに連続している。
【0073】
制動レバー2は、さらに、軽量化のための1つ以上の孔21を有している。
【0074】
制御装置1の制動レバー2は、運転者の3つの異なる乗車状態から作動できる。
【0075】
図5に概略的に示された、第3の乗車状態において、運転者は、ハンドルバーMの湾曲した端部を把持し、このようにしてハンドルバーMに手の平を載置する。親指は、ハンドルバーMの回りを閉じてもよい。親指以外の4本の指も、運転中、ハンドルバーMの回りを閉じてもよい。制動をしようとするには、運転者は、親指以外の4本の指のうち1本以上を開き、これらの指を、曲率半径R4および長さL8を持つ凹部を含む、制動レバー2の第3の作動領域18に配置する。より詳細には、制動レバー2の遠位側方向の凹部は、このような乗車状態で運転者が制動レバー2を引っ張るのに特に有利である。
【0076】
この動作状態に対する実際の作動アーム長(ピボットピン6と中指の力の作用中心点との間の距離をいう)は符号L2で示されている。当然ながら、指の実際の位置、詳細には、中指の実際の位置、したがって作動アームL2の位置は、運転者の手のサイズに応じて若干変化することがある。このような力の作用点と支持体5の上面12との間の距離は、符号D2で示されている。
【0077】
実際の作動アームL2の長さが最大になり、運転者は、手が実質的に開いた状態から制動レバー2を動作させるので、このような乗車状態は制動に関して最も好ましい。
【0078】
図6に概略的に示された、第1の乗車状態において、運転者は、支持体5を把持し、手の平を上面12に載置して、親指を支持体5の内側面13に載置する。有利なことに、突部11によって、運転者の手は支持体5から遠位方向に滑らないようになっている。
【0079】
親指以外の4本の指、または少なくとも小指および/または薬指が、運転中に支持体5の回りを閉じてもよい。制動をしようとするには、運転者は、親指以外の1本以上の指、典型的には人差し指および中指を、曲率半径R3および長さL7の凸部の一部と曲率半径R4および長さL8の凹部の一部とを含む、制動レバー2の第1の作動領域19の回りに配置する。より詳細には、中指が、曲率半径R3の凸部の下部または曲率半径R4の凹部の上部、したがって制動レバー2の、遠位上方から近位下方への傾きを有する領域に当接し、この傾きは、この乗車状態で運転者が制動レバー2を引っ張るのに特に有利である。
【0080】
この乗車状態に対する実際の作動アーム長(ピボットピン6と中指による力の作用中心点との間の距離をいう)は符号L3で示されている。この場合でも、指の実際の位置、詳細には、中指の実際の位置、したがって作動アームL3の位置は、運転者の手のサイズに応じて若干変化することがある。このような力の作用点と支持体5の上面12との間の距離は、符号D3で示されている。
【0081】
運転者が支持体5を把持するこの乗車状態からでも、制動レバー2は一般的に容易に作動できる。というのも、実際の作動アームL3の長さが十分であり、運転者は手の一部を閉じている状態からでも作動を開始できるからである。
【0082】
図7に概略的に示された、第2の作動状態において、運転者は、突部11を把持し、手の平を近位面17に載置して、親指を制御装置1の凹部15に載置する。突部11の傾きおよび凹部15により、手首を小さく回転させることで親指以外の指を制動レバー2の回りに閉じることができ、親指および人差し指を除く指のほぼ全てが、ピボットピン6の下に配置される。
【0083】
突部11が凸形であることによって、この乗車状態において、突部11は把持し易くなっており、また、制動レバー2に手の指が届くようになっている。
【0084】
より詳細には、親指以外の4本の指が、曲率半径R1の凸部の一部と、曲率半径R2の凹部と、曲率半径R3の凸部の一部とを含む、制動レバー2の第2の作動領域20の回りを閉じる。より詳細には、中指が、制動レバー2の曲率半径R2の凹部の下部、または制動レバー2の曲率半径R3の凸部の上部、したがって制動レバー2の、近位上方から遠位下方への傾きを有する領域に当接し、この傾きは、この乗車状態で運転者が制動レバー2に対して押圧動作を行うのに特に有利である。
【0085】
さらに、把持を向上させるために、運転者の人差し指は、通常の乗車時および制動時において、突部11の遠位面16の回りを閉じていてもよい。
【0086】
この乗車状態に対する実際の作動アーム長(ピボットピン6と中指による力の作用中心点との間の距離をいう)は符号L4で示されている。この場合でも、指の実際の位置、詳細には、中指の実際の位置、したがって作動アームL4の位置は、運転者の手のサイズに応じて若干変化することがある。このような力の作用点と支持体5の上面12との間の距離は、符号D4で示されている。
【0087】
運転者が突部11を把持するこの乗車状態からでも、制動レバー2は一般的に容易に作動できる。というのも、実際の作動アームL4の長さが十分であり、運転者は手の一部を閉じている状態からでも作動を開始できるからである。
【0088】
運転者が突部11を把持するこの乗車状態は、実際の作動アームの長さL4が比較的短く、手が事実上閉じた状態から作動を開始させるので、最もぎりぎりの制動になる、つまり作動アームの長さL4が短く運転者の作動アームの操作量が大きい乗車状態となる。しかしながら、上述したように、中指、薬指および小指が、ピボットピン6より下の作動領域20に載置されており、薬指および小指の位置は作動アームの長さL4よりも長くなりまた、制動レバー2が上述のように湾曲しているので、制動は可能かつ簡単である。
【0089】
作動領域19と作動領域20とは一部が重複しており、好ましくは、少なくとも30%、より好ましくは、少なくとも50%重複していることを留意されたい。
【0090】
制御装置1の様々な寸法および様々な寸法比の許容可能な範囲、好ましい範囲ならびに好ましい数値が表1に示されている。
【表1】
【0091】
支持体5の上面12から制動レバー2のピボットピン6までの距離D1が、従来技術の制御部の典型的な数値である約24〜36ミリメートル(mm)よりも大幅に短いことを留意されたい。
【0092】
したがって、このような距離D1に対する、
図6の乗車状態の力の作用点と支持体5の上面12との間の距離D3の比率は、従来技術の制御部の典型的な数値である約2.5よりも大幅に大きい。
【0093】
上述した好ましい数値の場合、それぞれ3つの乗車状態についての実際の作動アームL2,L3およびL4の長さと、実際の反作用アームL1の長さとの比率を意味するレバー比は、3つの乗車状態の各々において、それぞれ3.17、2.26および1.13であることを留意されたい。したがって、3つの乗車状態全てにおいて、機械的に有利に作用する。
【0094】
ディレイラを制御するのに、レバー3およびボタンレバー4を、二方向の作動をする単一のレバー、一対のレバーもしくは一対のボタンレバーに置き換えてもよく、または電気/電子ギアシフトの制御の場合、レバー3およびボタンレバー4の一方もしくは両方をスイッチ用の制御ボタンに置き換えてもよく、場合によっては、この制御ボタンを作動させるために1つ以上のレバーも設けてよい。
【0095】
制御装置1が統合型でない場合、レバー3およびボタンレバー4をなくしてもよい。
【0096】
逆に、制御装置が1つ以上のボタンなどのさらなる要素を備えていてもよく、場合によっては、サイクルコンピュータなどの電子装置を制御するために、これに対応するレバーを設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【
図5】
図1の制御装置の把持・制動状態を示す図である。
【
図6】
図1の制御装置の他の把持・制動状態を示す図である。
【
図7】
図1の制御装置のさらなる他の把持・制動状態を示す図である。
【0098】
1 制御装置
2 制動レバー
5 支持体
6 ピボットピン
7 反作用アーム
11 突部
19 第1の作動領域
20 第2の作動領域
F 制動ケーブル
M ハンドルバー