【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも一つの針床と、針床の編針に編糸を給糸する複数の給糸部材とを備える横編機を用いて、編地の編幅方向に隣接し、かつ独立して編成される二つの編地部を接合するための隣接する編地部の接合方法に係る。この本発明の隣接する編地部の接合方法は、編地部を編成する針床に近い給糸口を手前側給糸口、同針床から遠い給糸口を奥側給糸口とし、手前側給糸口からの編糸で編成される編地部を第一編地部、奥側給糸口からの編糸で編成される編地部を第二編地部としたとき、以下の手順に従った編成を行うことで第一編地部と第二編地部とを接合することを特徴とする。
手前側給糸口と奥側給糸口の少なくとも一方を移動させることで、第一編地部と第二編地部との境界付近で手前側給糸口からの編糸と奥側給糸口からの編糸とを交差させた状態とした上で、奥側給糸口を移動させる間に第二編地部の編目を少なくとも1目編成する。
次いで、手前側給糸口を移動させる間に第一編地部の編目を少なくとも1目編成して、手前側給糸口から延びる編糸が、前記編成した第二編地部の編目の根元部分で折り返された状態とした後、奥側給糸口を移動させる間に第二編地部の編目を少なくとも1目編成する。
【0007】
上述した本発明の隣接する編地部の接合方法は、第二編地部におけるウエール方向の同一の高さにある編目列を、少なくとも二つの編成工程に分けて編成し、その分けて編成される編目列の間で、第一編地部の編糸を第二編地部の編糸に巻き付けて折り返す編成である。当該編目列の編成工程の分割は、第一編地部と第二編地部との境界に向かって当該編地部を編成するときに行っても良いし、同境界から離れる方向に向かって当該編地部を編成するときに行っても良い。
【0008】
まず、第二編地部の編目列を境界に向かって編成するときに当該編目列の編成工程を分割する本発明の隣接する編地部の接合方法は、以下の工程A〜Eを備える。
[工程A]奥側給糸口を第一編地部の方向に移動させる間に、第二編地部の一部となる編目列を、第一編地部と第二編地部の境界側端部よりも1〜3目手前まで編成する。
[工程B]手前側給糸口を第二編地部の方向に移動させ、手前側給糸口から延びる編糸と奥側給糸口から延びる編糸とを交差させる。
[工程C]奥側給糸口を第一編地部の方向に移動させる間に、工程Aで編成せずにおいた1〜3目を編成する。
[工程D]手前側給糸口を第一編地部の方向に移動させる間に、第一編地部の一部となる編目列を編成し、手前側給糸口から延びる編糸が、工程Cで編成した最初の編目の根元部分で折り返された状態とする。
[工程E]奥側給糸口を第二編地部の方向に移動させる間に、第二編地部の一部となる編目列を編成する。
【0009】
次に、第二編地部の編目列を境界から離れる方向に向かって編成するときに当該編目列の編成工程を分割する編地部の接合方法は、以下の工程A´〜E´を備える。
[工程A´]奥側給糸口を第一編地部の方向に移動させる間に、第二編地部の一部となる編目列を、第一編地部と第二編地部の境界まで編成する。
[工程B´]手前側給糸口を第二編地部の方向に移動させ、手前側給糸口から延びる編糸と奥側給糸口から延びる編糸とを交差させる。
[工程C´]奥側給糸口を第二編地部の方向に移動させる間に、第二編地部の一部となる前記境界から1〜3目の編目を編成する。
[工程D´]手前側給糸口を第一編地部の方向に移動させる間に、第一編地部の一部となる編目列を編成し、手前側給糸口から延びる編糸が、工程C´で編成した最後の編目の根元部分で折り返された状態とする。
[工程E´]奥側給糸口を第二編地部の方向に移動させる間に、工程C´で編成した最後の編目の編幅方向に続いて第二編地部の一部となる編目列を編成する。
【0010】
一方、本発明編地は、少なくとも一つの針床と、針床の編針に編糸を給糸する複数の給糸部材とを備える横編機を用いて編成される編地であり、その編幅方向に隣接し、かつ独立して編成された二つの編地部を備える編地であって、以下に示す定義に従う終端編目、始端編目、掛け糸部、および折り返し点編目を備えることを特徴とする。
[終端編目]第一編地部における、第一編地部と第二編地部との境界に向かって編成された編成コースの終端にある編目。
[始端編目]第一編地部における、上記終端の編目のウエール方向(編幅方向に直交する方向)に続く編目であり、かつ当該終端の編目を含む編成コースのウエール方向に続く編成コースの始端にある編目。
[掛け糸部]第一編地部の編糸の一部であって、上記終端の編目から延びて、第二編地部を構成する編目の一つである折り返し点編目の根元部分の周りに巻き付いて折り返され、上記始端の編目に繋がる編糸であって、編地の厚み方向において上記折り返し点編目が形成される編目よりも、その編目から上記折り返し点編目が引き出される側とは反対側に配置される編糸。但し、折り返し点編目の位置は、第二編地部における上記境界側の端部の位置、もしくは端部の位置よりも1〜2目内側にある位置。
【発明の効果】
【0011】
本発明の隣接する編地部の接合方法によれば、第一編地部におけるある編成コースの終端の編目と、その次の編成コースの始端の編目とを繋ぐ掛け糸部が、第一編地部に隣接する第二編地部の編目に絡むことで、第一編地部と第二編地部とが接合された本発明編地を編成することができる。この編地における第一編地部と第二編地部との接合部分には、タックによる隣接する編地部同士の接合のように重ね目が形成されないため、当該接合部分における編地の厚さ方向の厚みを薄くすることができる。その結果、接合部分と他の編地部分との見栄えの差をなくすことができる。
【0012】
また、工程A〜Eを行うことで、後述する実施形態1に示すように、第一編地部の掛け糸部が第二編地部における編成コースの終端の編目(もしくは、終端の編目よりも1〜2目内側の編目)に絡んだ本発明編地を編成できる。この接合方法によれば、編地における第一編地部と第二編地部との接合部分を自然な美しい仕上がりとすることができる。
【0013】
また、工程A´〜E´を行うことで、後述する実施形態2に示すように、第一編地部の掛け糸部が、第二編地部におけるある編成コースの始端の編目(もしくは、始端の編目よりも1〜2目内側の編目)に絡んだ本発明編地を編成できる。この接合方法によれば、上記工程A〜Eを備える接合方法よりも、工程数を少なくすることができる。