特許第5695929号(P5695929)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5695929
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】遠心力操作式連結装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 43/18 20060101AFI20150319BHJP
【FI】
   F16D43/18
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-28440(P2011-28440)
(22)【出願日】2011年2月14日
(65)【公開番号】特開2011-169464(P2011-169464A)
(43)【公開日】2011年9月1日
【審査請求日】2013年12月13日
(31)【優先権主張番号】10 2010 008 244.9
(32)【優先日】2010年2月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】598052609
【氏名又は名称】アンドレアス シュティール アクチエンゲゼルシャフト ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100091867
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(74)【代理人】
【識別番号】100167151
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】ベルント エンゲル
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス チュルヒャー
【審査官】 稲垣 彰彦
(56)【参考文献】
【文献】 実開平1−119932(JP,U)
【文献】 西独国特許出願公開第3125444(DE,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 43/02−43/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホールダ(3)で半径方向に可動に支持され、半径方向内側の位置と半径方向外側の位置との間で可動な少なくとも1つの遠心錘(5)と、該遠心錘(5)を前記半径方向内側の位置へ付勢している少なくとも1つのばね(6)とを備えた遠心力操作式連結装置であって、該連結装置が、回転軸線(21)のまわりに回転可能に配置され、且つ前記少なくとも1つのばね(6)を前記回転軸線(21)の方向において位置固定する少なくとも1つの位置固定要素を含み、前記少なくとも1つのばね(6)が、その長さの少なくとも一部にわたって、前記遠心錘(5)に設けた受容部(11)内に配置され、前記少なくとも1つの位置固定要素が前記遠心錘(5)と一体に形成されている前記連結装置において、
前記受容部(11)がその半径方向内側の面と半径方向外側の面とにそれぞれ前記ばね(6)のための前記位置固定要素を有し、該位置固定要素間の間隔(a)が前記ばね(6)の外径(d)よりも小さいことを特徴とする連結装置。
連結装置。
【請求項2】
前記位置固定要素が、前記ばね(6)の周囲に隣接して配置される、楔状に形成された保持突起(12,13)として構成されていることを特徴とする、請求項に記載の連結装置。
【請求項3】
少なくとも2つの遠心錘(5)が設けられ、前記ばね(6)が、引張りコイルばねとして形成され、その端部でもって隣接の遠心錘(5)に掛止されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の連結装置。
【請求項4】
前記遠心錘(5)の間に、前記ばね(6)によって橋絡される中間空間(22)が形成され、1つの遠心錘(5)と一体に形成される少なくとも1つの半径方向の位置固定要素が設けられ、該位置固定要素が、前記ばね(6)の前記半径方向外側の面において、前記ばね(6)に隣接して前記中間空間(22)内へ突出していることを特徴とする、請求項に記載の連結装置。
【請求項5】
互いに隣接し合っている遠心錘(5)の2つの半径方向の位置固定要素が互いに相手側へ突出しており、前記連結装置の静止状態で、これら位置固定要素の間の間隔(b)が前記ばね(6)のワイヤー径(c)の0.5倍なしい2倍に相当していることを特徴とする、請求項に記載の連結装置。
【請求項6】
前記ばね(6)の外径(d)が少なくとも前記遠心錘(5)の厚さ(g)に相当していることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか一つに記載の連結装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの位置固定要素が前記回転軸線(21)の方向において前記ホールダ(3)での前記遠心錘(5)の位置を固定し、前記位置固定要素が前記遠心錘(5)に案内細条部(16)として形成され、該案内細条部(16)が前記ホールダ(3)に形成された案内溝(17)内へ突出していることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか一つに記載の連結装置。
【請求項8】
前記遠心錘(5)が半径方向に配向されるガイドスリット(15)を有し、該ガイドスリット(15)内へ前記ホールダ(3)の案内部材(4)が突出していること、前記案内溝(17)が前記ホールダ(3)の前記案内部材(4)に形成されていること、前記案内細条部(16)が前記遠心錘(5)と一体に形成されて、該遠心錘(5)の前記ガイドスリット(15)内へ突出していることを特徴とする、請求項に記載の連結装置。
【請求項9】
前記遠心錘(5)が金属から成っていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか一つに記載の連結装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの位置固定要素が前記遠心錘(5)に焼結結合されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか一つに記載の連結装置。
【請求項11】
3つの遠心錘(5)が設けられ、これら遠心錘(5)が3つのばね(6)を介して互いに結合されていること、前記連結装置が遠心クラッチ(1)であり、該遠心クラッチがクラッチドラム(2)を有し、前記遠心錘(5)は、該遠心錘が半径方向外側の位置にあるときに前記クラッチドラム(2)に接触することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか一つに記載の連結装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の遠心力操作式連結装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から知られている遠心力操作式連結装置、すなわち遠心クラッチでは、遠心錘の軸線方向位置を固定するためのホールダが設けられている。ホールダは軸線方向においてばねを部分的に橋絡している。
【0003】
ばねが破損した場合、ばねが遠心クラッチの領域から外側へ回動して隣接の部材と接触し、これを損傷または破壊しないようにしなければならない。このため、クラッチドラムとは反対側でクラッチ全体をディスクによって覆うことが知られている。
【0004】
遠心クラッチをパワーソー、刈払い機等の手で操縦される作業機で使用する場合、遠心クラッチの重量をできるだけ軽量にするとともに、軸線方向における構造サイズをできるだけ小さくする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国実用新案登録第9411945U1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、構成が簡潔で軽量なこの種の遠心力操作式連結装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1の構成を備えた遠心力操作式連結装置によって解決される。
位置固定要素が遠心錘と一体に形成されていることにより、位置固定要素を小型に構成できる。軸線方向位置固定用に別個のディスクを備えた連結装置に比べて構造幅が狭くなり、位置固定ディスクの重量を節減できる。位置固定要素のために付加的な部材を必要としないので、連結装置の構成が簡潔になる。位置固定要素を別個に形成した場合に起こりうる位置固定要素の誤った取り付けが阻止されている。組み立てる部品数が少ないので、組み立てが簡単である。
【0008】
有利には、位置固定要素は少なくとも1つのばねを回転軸線の方向において位置固定させている。この場合、位置固定要素は、特に、ばねが損傷または破損した場合にばねを遠心クラッチで保持して横ずれまたは抜けおちを阻止するために用いる。ばねは、有利には、その長さの少なくとも一部にわたって、遠心錘に設けた受容部内に配置されている。受容部は、有利には、その半径方向内側の面と半径方向外側の面とにばねのための位置固定要素を有している。この場合、位置固定要素間の間隔は有利にはばねの外径よりも小さい。これにより、ばね破損の場合にばねが横ずれするのを簡単に阻止できる。この場合、位置固定要素は、有利には、遠心錘のクラッチドラムとは逆の側に配置される。というのは、クラッチドラム自体によってクラッチドラム側へのばねの変位が阻止されるからである。
【0009】
位置固定要素が、ばねの周囲に隣接して配置される、ほぼ楔状に形成された保持突起として構成されていれば、簡潔な構成が得られる。保持突起は非常に小さく形成されていてよく、ばねまたはばねの破片が抜けおちない程度に受容部を狭くするにすぎない。位置固定要素によって軸線方向の構成サイズが大きくらず、その結果公知の配置構成に比べて構成空間を節減できる。
【0010】
有利には、少なくとも2つの遠心錘が設けられ、ばねは、引張りコイルばねとして形成され、その端部でもって隣接の遠心錘に掛止されている。この場合、有利には、遠心錘の間に、ばねによって橋絡される中間空間が形成されている。有利には、1つの遠心錘と一体に形成される少なくとも1つの半径方向の位置固定要素が設けられ、該位置固定要素は、ばねの半径方向外側の面において、ばねに隣接して中間空間内へ突出している。これにより、折損したばね部分が半径方向外側へ抜け落ちるのを簡単に阻止できる。有利には、互いに隣接し合っている遠心錘の2つの半径方向の位置固定要素は互いに相手側へ突出している。この場合、これら位置固定要素の間の間隔は、連結装置の静止状態で、ばねのワイヤー径のほぼ0.5倍なしいほぼ2倍に相当している。これにより、製造公差が不都合な場合でも、互いに隣接し合っている遠心錘が互いに接触するのを阻止することができる。同時に、ばねの破片が半径方向外側へ抜け出るのを阻止することができる。位置固定要素を比較的小さく構成することができるので、重量の増大はわずかでしかない。公知の位置固定装置と比べると、連結装置の総重量が軽減されている。
【0011】
総じて連結装置の小サイズ化を達成するため、ばねの外径は少なくとも遠心錘の厚さに相当している。従って、遠心錘はばねから側方へ突出しない程度に幅狭に形成されている。連結装置の幅は必要とするばねの径によって特定される。
【0012】
有利には、少なくとも1つの位置固定要素は回転軸線の方向においてホールダでの遠心錘の位置を固定している。公知の遠心クラッチでは、このために別個のホールダが設けられていた。この別個のホールダは補助的な部材であり、連結装置の構成を複雑にし、重量を増大させる。位置固定要素が遠心錘に案内細条部として形成され、該案内細条部がホールダに形成された案内溝内へ突出していれば、簡潔な構成が得られる。これにより、遠心錘をホールダに対して軸線方向両方向において位置固定させることができる。特に、案内溝はホールダの案内部材に形成され、案内細条部は遠心錘と一体に形成されて、該遠心錘のガイドスリット内へ突出している。
【0013】
有利には、遠心錘は金属から成っている。特に、少なくとも1つの位置固定要素は遠心錘に焼結結合されている。これにより、位置固定要素を遠心錘とともに共通の製造方法で製造することができる。位置固定要素を製造するための別個の方法ステップは必要ない。3つの遠心錘が設けられ、これら遠心錘が3つのばねを介して互いに結合されていれば、有利な構成が得られる。
【0014】
連結装置は遠心クラッチであり、該遠心クラッチはクラッチドラムを有し、遠心錘は、該遠心錘が半径方向外側の位置にあるときにクラッチドラムに接触する。しかし、連結装置は遠心力操作式制動装置等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
次に、本発明の有利な実施形態を図面を用いて説明する。
図1】遠心クラッチの側面図である。
図2図1の線II−IIによる断面図である。
図3】クラッチドラムを取り外した遠心クラッチの斜視図である。
図4】クラッチドラムを取り外した図1の線IV−IVによる断面図である。
図5】クラッチドラムを取り外した図1の線V−Vによる断面図である。
図6】クラッチドラムを取り外した、図1の矢印VIの方向に見た遠心クラッチの側面図である。
図7図6の線VII−VIIによる断面図である。
図8】遠心錘の斜視図である。
図9図8の遠心錘の側面図である。
図10図9の線X−Xによる断面図である。
図11図9の線XI−XIによる断面図である。
図12図10の矢印XIIの方向に見た側面図である。
図13図12の線XIII−XIIIによる断面図である。
図14図12の線XIV−XIVによる断面図である。
図15】遠心クラッチのホールダの斜視図である。
図16】ホールダの側面図である。
図17図16の線XVII−XVIIによる断面図である。
図18図17の線XVIII−XVIIIによる断面図である。
図19図18の線XIX−XIXによる断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、遠心力操作式連結装置の1実施形態として遠心クラッチ1を示している。遠心クラッチ1の代わりに、遠心力操作式制動装置等を設けてもよい。遠心クラッチ1は、有利にはパワーソー、研磨切断機、刈払い機等の手で操縦される作業機のパワートレイン内において駆動原動機と駆動される工具との間に配置され、予め構造的に設定された連結回転数を越えたときに工具を原動機の駆動軸と相対回転不能に結合させる。駆動原動機(特に内燃エンジンとして構成されている)のアイドリング時には原動機は通常工具から切り離されている。遠心クラッチ1はホールダ3を有し、ホールダ3は図2に図示したように駆動軸8と相対回転不能に結合されている。ホールダ3は半径方向外側へ突出する3つの案内部材4を有し、これら案内部材にはそれぞれ遠心錘5が配置されている。互いに同一に構成されている3つの遠心錘5は、それぞればね6用の2つの掛止穴10を有している。それぞれのばね6はその端部でもって、周方向に隣接している遠心錘5に掛止されている。
【0017】
遠心クラッチ1はクラッチドラム2を有し、該クラッチドラムのエッジ23は、遠心クラッチ5と該遠心クラッチの半径方向外側にある領域とオーバーラップしている。駆動軸8が回転軸線21(遠心クラッチ1の対称軸線でもある)のまわりに回転駆動されると、遠心力がばね6の力に抗して半径方向外側へ向けて遠心錘5に作用する。予め構造的に設定された回転数を越えると、遠心錘5が半径方向外側へ変位し、その摩擦面18でもってエッジ23と接触する。これにより駆動軸8はクラッチドラム2と摩擦結合される。クラッチドラム2には、図2に図示した従動軸9が相対回転不能に固定されている。
【0018】
複数個のばね6の1つが破損すると、このばね6が図2の図示において左側へ遠心クラッチ1から突出して隣接している部材を損傷または破壊しないようにしなければならない。ばね破損の場合でもばね6を遠心クラッチ1で確実に保持するため、ばね6に隣接するように遠心錘5には保持突起12と13が一体成形されている。この場合、回転軸線21に関して保持突起12は半径方向内側に位置するように、保持突起13は半径方向外側に位置するように設けられている。ばね6が半径方向に飛び出すのを阻止するため、半径方向の保持突起14が遠心錘5に一体成形されている。次に、保持突起12,13,14の構成を詳細に説明する。
【0019】
図2が示すように、遠心クラッチ1は比較的幅狭に形成されている。回転軸線21に平行に測った遠心錘5の厚さgは、本実施形態では、ばね6の外径dよりも幾分小さい。それ故、遠心クラッチ1の構造幅が同じであれば、遠心クラッチ1のクラッチドラム2とは逆の側に密閉して形成される受容部にばね6を配置することは、不可能である。
【0020】
図3ないし図7は遠心クラッチ1の構成を詳細に示したものである。図4が示すように、保持突起12と13はほぼ楔状に形成されている。保持突起12と13は互いに間隔b(図7)を有し、この間隔bはばね6の外径dよりも小さい。図6が示すように、半径方向の保持突起14は遠心錘5の中央領域に配置された細条部として形成され、遠心錘5の厚さgの半分以下にわたって延在している。これはばね6を拘束するために十分である。
【0021】
図7が示すように、遠心錘5は、ばね6の端部部分を配置することのできるそれぞれ2つの受容部11を有している。この場合、受容部11は回転軸線21に対しほぼ接線方向に配向されており、その結果ばね6も回転軸線21に対する周方向に対し接線方向に配置されている。互いに隣接し合っている遠心錘5の個々の受容部11は互いに対向し合っており、その結果各ばね6を第1の端部でもって1つの遠心錘5に配置し、第2の端部でもってこの遠心錘に隣接している遠心錘5に配置することができる。互いに隣接し合っている遠心錘5の間にはそれぞれ幅hを有する中間空間22が形成されている。この中間空間22内へ半径方向の保持突起14が突出している。中間空間22はばね6によって橋絡されている。図7が示すように、保持突起14は静止状態において互いに間隔bを有し、この間隔bは、本実施形態では、引張りコイルばねとして構成されたばね6のワイヤー径cよりもわずかに大きい。間隔bは有利にはワイヤー径cのほぼ半分ないしほぼ2倍である。
【0022】
遠心クラッチ1は、さらに、回転軸線21の方向においてホールダ3での遠心錘5の位置を固定する位置固定装置を有している。図1図5が示しているように、ホールダ3の案内部材4は遠心錘5のガイドスリット15内へ突出している。ガイドスリット15は回転軸線21に対し半径方向に配向されている。しかし、ガイドスリット15を回転軸線21の半径方向に対し傾斜するようにまたは湾曲するように形成してもよい。ガイドスリット15内には案内細条部16が突出し、案内細条部16はガイドスリット15の長手方向に延在して、ガイドスリット15の中央部へ突出している。案内細条部16は遠心錘5よりも著しく幅狭に形成されている。案内細条部16はホールダ3の案内部材4によって両側を取り囲まれている。案内細条部16を受容するため、案内部材4は案内溝17を有し、この案内溝17内へ案内細条部16が突出している。これによって、回転軸線21の方向においてホールダ3に対する遠心錘5の位置が固定されている。
【0023】
図8ないし図14は、遠心錘5の構成を詳細に示している。図10が示すように、ばね6のための受容部11は、回転軸線21に対しほぼ平行に延在している側壁20を有している。楔状の保持突起12と13はこれらの側壁20から受容部11内へ延在している。複数の図が示すように、遠心錘5は両側に凹部19を有し、これらの凹部19はそれぞれ遠心錘5の厚さのほぼ三分の一にわたって延在している。遠心錘5はガイドスリット15の領域においてのみ全幅にわたって延在している。受容部11および掛止穴10の領域には凹部19が延在しており、その結果これらの領域では遠心錘5の厚さはより薄くなっており、よって遠心クラッチ1の全重量もより軽量になっている。図12が示すように、案内細条部16はガイドスリット15のほぼ全深さにわたって延在している。本実施形態では、ガイドスリット15の片側にのみ1つの案内細条部16が設けられているが、ガイドスリット15の互いに対向し合っている側に2つの案内細条部を配置してもよい。
【0024】
図14が示すように、案内細条部16の幅eは、図19に示した案内溝17の幅fにほぼ相当している。幅eとfは有利には遠心錘5の厚さgのほぼ四分の一ないし三分の二である。これによって軸線方向における良好な案内が生じる。ホールダ3を詳細に示す図15ないし図19が示すように、案内溝17はそれぞれホールダ3の案内部材4の同じ側に設けられ、その結果ホールダ3の回転対称な構成が生じている。さらに図16が示すように、ホールダ3は駆動軸8のための受容部7を有している。
【0025】
遠心錘5は、ホールダ3およびクラッチドラム2と同様に金属から成っている。遠心錘5は有利には焼結方法で製造され、この場合保持突起12,13,14は遠心錘5に焼結結合される。保持突起12,13,14が設けられているので、遠心錘5を軸線方向に位置固定するための補助部材は設けずに済む。
【符号の説明】
【0026】
1 遠心クラッチ
2 クラッチドラム
3 ホールダ
4 案内部材
5 遠心錘
6 ばね
11 ばねの受容部
12,13 保持突起(位置固定要素)
15 ガイドスリット
16 案内細条部(位置固定要素)
17 案内溝
21 回転軸線
22 中間空間
a 位置固定要素間の間隔
b 静止状態での位置固定要素間の間隔
c ばねのワイヤー径
d ばねの外径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19