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特許5696035アルガトロバン一水和物の多形体及びその合成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5696035
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】アルガトロバン一水和物の多形体及びその合成方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/12 20060101AFI20150319BHJP
【FI】
   C07D401/12
【請求項の数】11
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2011-503414(P2011-503414)
(86)(22)【出願日】2009年4月6日
(65)【公表番号】特表2011-516519(P2011-516519A)
(43)【公表日】2011年5月26日
(86)【国際出願番号】EP2009054085
(87)【国際公開番号】WO2009124906
(87)【国際公開日】20091015
【審査請求日】2012年3月27日
(31)【優先権主張番号】PD2008A000106
(32)【優先日】2008年4月7日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】510266701
【氏名又は名称】ランドベック ファルマチェウティカルズ イタリー ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100130029
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 道雄
(72)【発明者】
【氏名】ヅァノン・ジャコポ
(72)【発明者】
【氏名】リブラロン・ジョヴァンナ
(72)【発明者】
【氏名】ニコレ’・アンドレア
【審査官】 爾見 武志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−101649(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第1951937(CN,A)
【文献】 特開昭55−033499(JP,A)
【文献】 BIOCHEMICAL AND BIOPHYSICAL RESEARCH COMMUNICATIONS,(1981), Vol.101, No.2,p.440-446
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 401/12
CA/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
未精製のアルガトロバンを含有する反応塊を攪拌可能な残留物に濃縮する工程と、
未精製のアルガトロバンを含有する残留物を有機溶媒で溶解し、イソプロパノール及びノルマル−プロパノールから選択される結晶化用溶媒媒体で有機溶液を処理することによる結晶化によって、精製したアルガトロバンを分離する工程と、
先の工程で単離された精製アルガトロバンを、メタノール及び水の混合溶液から、脱色炭を加え、還流温度で加熱し、次いで炭素をろ過し、11〜17時間で還流温度から15〜25℃の温度に制御しながら冷却することにより、再結晶させることで、アルガトロバン一水和物を分離する工程と
を少なくとも備えることを特徴とするアルガトロバン一水和物の調製方法。
【請求項2】
前記結晶化用溶媒媒体がイソプロパノールである、請求項1に記載のアルガトロバン一水和物の調製方法。
【請求項3】
(2R,4R)-1-[N-ニトロ-N-(3-メチル-8-キノリンスルホニル)-L-アルギニル]-4-メチル-2-ピペリジンカルボン酸から、メタノール/酢酸中で、未精製のアルガトロバンを調製する工程を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のアルガトロバン一水和物の調製方法。
【請求項4】
前記反応塊が、塩基の水溶液で処理され、その混合物自体のpHを7.0〜7.5間にすることを特徴とする請求項1に記載のアルガトロバン一水和物の調製方法。
【請求項5】
前記塩基の溶液が、10〜30%の濃度で、水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム及びアンモニアから選択されることを特徴とする請求項4に記載のアルガトロバン一水和物の調製方法。
【請求項6】
メタノール及び水からの結晶化又は再結晶化は、前記塊が、90〜95℃への加熱と、還流温度で1〜3時間の維持と、少なくとも1時間で70〜75℃への冷却及びこの温度で少なくとも1時間の維持と、2〜6時間で20℃への冷却及びこの温度で少なくとも6時間の維持という温度勾配を受けることにより達成されることを特徴とする請求項1に記載のアルガトロバン一水和物の調製方法。
【請求項7】
メチルアルコール及び水の混合溶媒媒体は、アルコールの濃度が10〜20%で、未精製又は精製アルガトロバンのグラム当たり50ボリューム以下の量であることを特徴とする請求項1に記載のアルガトロバン一水和物の調製方法。
【請求項8】
得られたアルガトロバン一水和物からなる結晶性沈殿物を乾燥させる工程を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のアルガトロバン一水和物の調製方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに規定された工程を備えるアルガトロバン一水和物の調製方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の方法に従ってアルガトロバン一水和物を調製する工程と、
水中に溶解させた後、2分以内で10〜20℃の温度まで素早く冷却することでそれを再結晶させる工程と
を少なくとも備えることを特徴とするアルガトロバン一水和物の調製方法。
【請求項11】
183〜185℃の融点;
3399,1270,1160のI.R.スペクトル(KBr)(cm−1);
約160℃で吸熱が起こる示差走査熱量測定;
XRPD:ピーク番号1 角度(2θ)6.800,相対強度(%)100;ピーク番号2 角度(2θ)7.840,相対強度(%)12;ピーク番号3 角度(2θ)9.800,相対強度(%)13;ピーク番号4 角度(2θ)10.020,相対強度(%)13;ピーク番号5 角度(2θ)10.700,相対強度(%)6;ピーク番号6 角度(2θ)11.780,相対強度(%)5;ピーク番号7 角度(2θ)13.080,相対強度(%)12;ピーク番号8 角度(2θ)13.540,相対強度(%)32;ピーク番号9 角度(2θ)14.540,相対強度(%)21;ピーク番号10 角度(2θ)16.900,相対強度(%)8;ピーク番号11 角度(2θ)17.540,相対強度(%)18;ピーク番号12 角度(2θ)18.640,相対強度(%)14;ピーク番号13 角度(2θ)19.060,相対強度(%)13;ピーク番号14 角度(2θ)19.620,相対強度(%)13;ピーク番号15 角度(2θ)20.000,相対強度(%)20;ピーク番号16 角度(2θ)21.420,相対強度(%)16;ピーク番号17 角度(2θ)21.780,相対強度(%)21;ピーク番号18 角度(2θ)22.660,相対強度(%)15;ピーク番号19 角度(2θ)23.680,相対強度(%)15;ピーク番号20 角度(2θ)24.080,相対強度(%)16;ピーク番号21 角度(2θ)24.740,相対強度(%)25;ピーク番号22 角度(2θ)25.340,相対強度(%)9;ピーク番号23 角度(2θ)26.480,相対強度(%)10;ピーク番号24 角度(2θ)27.580,相対強度(%)10;ピーク番号25 角度(2θ)28.220,相対強度(%)7;ピーク番号26 角度(2θ)29.120,相対強度(%)8;ピーク番号27 角度(2θ)29.740,相対強度(%)11;ピーク番号28 角度(2θ)31.820,相対強度(%)9;ピーク番号29 角度(2θ)34.840,相対強度(%)7;ピーク番号30 角度(2θ)40.580,相対強度(%)6
によって特徴付けられる精製アルガトロバンであって、イソプロパノールで溶媒和された精製アルガトロバン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルガトロバン一水和物の調製方法に関するものである。前記方法は、アルガトロバンを、三つの異なる結晶形態で、即ちアルガトロバン一水和物、精製アルガトロバン及びアルガトロバン無水物の形態で得ることを可能にし、それぞれは、新規で特有の物理化学的特性を有している。また、本発明は、三つの異なる単離形態、即ちアルガトロバン一水和物、精製アルガトロバン及びアルガトロバン無水物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
米国特許第4,201,863(1980年5月6日)及びEP 8746(前述の米国特許の出願に基づく優先権を主張して1979年8月22日に出願した)は、抗血栓作用を有するN-アリールスルホニル-L-アルギニンアミドの薬物群と、それらを得るための方法を記載する。当然ながら、化合物4-メチル-1-[N-(3-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-8-キノリンスルホニル)-L-アルギニル]-2-ピペリジンカルボン酸(アルガトロバン,異性体混合物)を記載する。記載された方法は、中間体N-置換-N-キノリンスルホニル-L-アルギニンアミドの合成を含み、該中間体から触媒水素化分解又は酸分解及び触媒水素化によって所望の上記化合物が得られる。水素化分解及び水素化反応に提供される一般的な条件は、i)不活性溶媒(メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン又はジオキサン);ii)触媒(ラネーニッケル、パラジウム、白金、ルテニウム、ロジウム)の存在;iii)1〜100kg/cm、好ましくは5〜50kg/cmの圧力の水素雰囲気;iv)0℃〜200℃、好ましくは50℃〜150℃の温度;v)2時間〜120時間の反応温度である。次いで、得られた未精製の生成物を、粉砕、又はジエチルエーテル−テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル−メタノール若しくは水−メタノールからの再結晶、又はクロマトグラフィーにより精製する。この精製工程の例は与えられていない。特に、US 4,210,863及びEP 8746双方は、例1(E)において、アルガトロバン,異性体混合物の調製を記載する。この化合物は、Pd/Cの存在下、水素圧10kg/cm及び100℃で8時間エタノール中において[N-ニトロ-N-(3-メチル-8-キノリンスルホニル)-L-アルギニル]-4-メチル-2-ピペリジンカルボン酸を水素化することにより、非晶質形態で得られる。触媒は、エタノール溶液のろ過により除去され、次いで、更なる精製工程及び/又は再結晶工程を行わずに、該溶液を蒸発させる。実際、特許出願EP 8746の場合と同様に問題になっている上記米国特許においては、化合物の多形形態について一切言及されておらず、得られる化合物について、以下の特性が報告されている:非晶質固体,I.R.(KBr)(cm−1)3400;1620;1460;1380;分子構成(%):理論値C54.31;H7.13;N16.52;実測値(%)C54.01;H6.98;N16.61。
【0003】
US 4,258,192(1981年3月24日)(前述の特許出願US 4,201,863の一部継続)及び同一特許出願EP 8746は、立体異性体及びその調製を記載し、薬剤において有効成分として使用されるアルガトロバン、即ち、立体異性体(2R,4R)-4-メチル-1-[N-(3-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-8-キノリンスルホニル)-L-アルギニル]-2-ピペリジンカルボン酸が含まれ、以下に示す特性を有する:融点(m.p.)188〜191℃;I.R.(KBr)(cm−1)3400,1620,1460,1380;分子構成(%):理論値C54.31;H7.13;N16.52;実測値(%)C54.05;H6.94;N16.65。上記化合物は、US 4,258,192の例1(E)並びにEP 8746の例2(E)及び3のそれぞれにおいて与えられた記載に従って、酢酸の存在下、Pd/Cによる触媒作用を受け、エタノール中、(2R,4R)1-[N-ニトロ-N-(3-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-8-キノリンスルホニル)-L-アルギニル]-2-ピペリジンカルボン酸を水素化することにより調製される。触媒を除去するためにその塊をろ過した後、溶媒を蒸発させ、残留物をクロロホルム中に懸濁させ、その溶液を飽和重炭酸ナトリウム溶液又は1Nの水酸化ナトリウム溶液で処理し、洗浄後、溶媒を蒸発させる。次いで、上記化合物をエタノールから再結晶する。この場合も同様に、一水和物多形形態の獲得については一切言及されていない。
【0004】
前記多形形態は、代わりに、刊行物Biochem.Biophys.Res.Comm.1981,101,440−446において立体異性体の調製との関連で記載されている。(2R,4R)立体異性体の一水和物多形体は、エタノール/水からの再結晶により調製され、報告された特性は、m.p.176〜180℃;[α]27+76.1°(c1,0.2N HCl)である。
【0005】
次いで、US 5,925,760(1999年7月20日)及びEP 0823430(1997年8月4日出願)は、新規の中間体N-(3-メチル-8-キノリンスルホニル)-N-ニトロ-L-アルギニンを用いてアルガトロバンを調製するための新規の方法を記載する。特に、上記特許は、アルガトロバンの結晶性一水和物の形態の調製について言及しており、日本国特許公報H02−31055(1990年)の例(D)及び(E)を振り返ってみて、総称的に、市販のアルガトロバン化合物のものと同一のI.R.スペクトルを参照する。引用する特許公報において関係のある例は、例(E)であるが、例(D)は、(2R,4R)-1-[N-ニトロ-N-(3-メチル-8-キノリンスルホニル)-L-アルギニル]-4-メチル-2-ピペリジンカルボン酸の調製に関係する。この化合物は、Pd/Cの存在下での触媒による還元によってアルガトロバンを調製するための出発化合物を表す。次いで、得られた未精製のアルガトロバンは、クロロホルムによる抽出、飽和重炭酸ナトリウム溶液での処理、溶媒蒸発後のエタノール又は水中15%アルコールからの再結晶により精製される。しかしながら、日本国特許は、得られるアルガトロバンの一水和物形態について一切言及が無く、該化合物について以下の特性を報告することに注意すべきである:m.p.188〜191℃;分子構成(理論値/実測値)(%):C54.31/54.01;H7.13/6.98;N16.52/16.61;I.R.(KBr)(cm−1)3400;1620;1460;1380。これらの分析データは、報告の無い融点を除き、アルガトロバンの(2R,4R)-4メチル-1-[N-(3S-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-8-キノリンスルホニル)-L-アルギニル]-2-ピペリジンカルボン酸及び(2R,4R)-4メチル-1-[N-(3R-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-8-キノリンスルホニル)-L-アルギニル]-2-ピペリジンカルボン酸の異性体混合物が記載される引用特許文献において示されるものと同一であるが、アルガトロバンの一水和物形態を同定する唯一の文献である上記公報にて与えられた融点とは一致していない。
【0006】
つい最近では、特許出願CN 1,951,937(出願日2006年11月10日)は、アルガトロバンを、大量の水で(アルガトロバンのグラム当たり60ボリュームより大きく最大で80ボリュームまでの蒸留水で)80〜100℃の温度にて0.5〜1時間処理し、冷却による結晶化を行うことにより、水和アルガトロバンを調製するための方法を記載する。報告された水の含有量は、3.3〜3.8%の間であり、右旋性異性体Rの左旋性異性体Sに対する割合は、R:S=63〜67:37〜33である。
【0007】
アルガトロバンは、治療的使用の範囲が広い化合物であり、その理由については、容易に工業化され且つ経済的に都合のよい方法によって得られる薬剤的に許容できる品質の化合物を提供する必要性が依然として存在することにある。一水和物に関して、この形態は、無水物形態が不安定で且つ水和したり及び/又は湿ったりする傾向があるため、実用的な目的に好ましい。更に、それは、ジアステレオ異性体間での正確な割合が困難な場合のみで結晶化する。
【0008】
従って、本発明の第一の主要な目的は、医薬品の調製に製剤品質の有効成分として使用できるアルガトロバン一水和物を調製するための方法を提供することである。更なる目的は、良好な収率で且つ非常に高い純度で得られるようにする合成及び精製方法により前記有効成分を得ることである。
【発明の概要】
【0009】
先に示した目的のため、本発明に従うアルガトロバン一水和物の調製方法は、好ましくは触媒水素化及び水素化分解という既知の合成方法に従って化合物(2R,4R)-1-[N-ニトロ-N-(3-メチル-8-キノリンスルホニル)-L-アルギニル]-4-メチル-2-ピペリジンカルボン酸から出発して、未精製のアルガトロバンを調製することと、次いで、それを精製し、その反応塊からメタノール/水溶媒中での制御された結晶化により一水和物として分離するように処理することとからなる。好ましくは、アルガトロバン一水和物は、精製アルガトロバンからなる中間体を分離し、次いでメタノール/水からの結晶化という上述の方法によって一水和物形態に変換されるように処理することで調製される。精製中間体の分離による調製は、この中間体が新規で特徴的な特性を示し、アルガトロバン一水和物を高純度で且つ正確なジアステレオ異性体比で得ることができるため、好適である。
【0010】
その上、驚くべきことに、新規で特徴的な物理化学的特性を有するアルガトロバン無水物をアルガトロバン一水和物から続いて得ることができることを見出した。
【0011】
それ故、第一の態様において、本発明は、アルガトロバン一水和物の調製に関し、随意的にはアルガトロバン無水物に関するものである。
【0012】
従って、本発明は、
未精製のアルガトロバンを含有する濃縮した反応塊又は精製したアルガトロバンから、脱色炭を加え、その塊を還流温度で加熱し、次いで炭素をろ過し、11〜17時間で還流温度から15〜25℃の温度への制御された段階的な冷却を受けることによるメタノールと水とからなる溶媒媒体からの結晶化によって、アルガトロバン一水和物を分離する工程
を少なくとも備えるアルガトロバン一水和物の調製方法を提供する。
【0013】
上記調製方法が未精製のアルガトロバンからである場合、本発明の第一の実施態様によれば、前記方法は、実質的に一つの連続工程にあるが、アルガトロバン一水和物を、結晶化によるアルガトロバン一水和物の分離前に、イソプロパノール及びノルマル−プロパノールから選択される結晶化用溶媒で未精製のアルガトロバンの有機溶液から結晶化することによって、精製アルガトロバンを単離するという二工程において調製することもできる。
【0014】
この第二の実施態様によれば、アルガトロバン一水和物の調製方法は、
未精製のアルガトロバンを含有する反応塊を攪拌可能な残留物に濃縮する工程と;
未精製のアルガトロバンを含有する残留物を有機溶媒で溶解し、イソプロパノール及びノルマル−プロパノールから選択される結晶化用溶媒媒体で有機溶液を処理することによる結晶化によって、精製したアルガトロバンを分離する工程と;
先の工程で単離された精製アルガトロバンを、メタノール及び水の混合溶液から、脱色炭を加え、その塊を還流温度で加熱し、次いで炭素をろ過し、11〜17時間で還流温度から15〜25℃の温度への制御された段階的な冷却を受けることにより、再結晶させることで、アルガトロバン一水和物を分離する工程と
を少なくとも備える。
【0015】
連続モードにより又は精製アルガトロバン中間体を分離することによる二工程において得られた、アルガトロバン一水和物からなる結晶性沈殿物は、窒素フロー又は真空下で、50℃〜80℃の温度にて少なくとも8時間乾燥されることができる。
【0016】
得られたアルガトロバン一水和物が、2分以内で15℃に素早く冷却することによる水からの再結晶を受けることにより、アルガトロバン無水物を得ることができ、新規な物理化学的特性を有することが示される。
【0017】
よって、第二の態様において、本発明は、単離して得たアルガトロバンの単一形態に関し、従って、以下に記載し且つ請求項において報告する物理化学的特性を有するアルガトロバン一水和物、精製アルガトロバン及びアルガトロバン無水物に関するものである。
【0018】
本発明により達成できる利点は、図面を参照しつつ、上記方法の特定の実施態様の詳細な説明と、それと共に得られる非制限的な例として与えられた化合物とから、当業者にとって明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】記載された方法に従い、メタノール及び水からなる溶媒からの結晶化により得た結晶質アルガトロバン一水和物の代表的なI.R.スペクトルを示す。
図2】記載された方法に従い、メタノール及び水からなる溶媒からの結晶化により得たアルガトロバン一水和物の代表的なサンプルに関しての示差走査熱量測定(DSC)を示す。
図3】記載された方法に従い、メタノール及び水からなる溶媒からの結晶化により得たアルガトロバン一水和物の代表的なサンプルに関しての熱重量分析を示す。
図4】記載された方法に従い、メタノール及び水からなる溶媒からの結晶化により得たアルガトロバン一水和物の回折法(XRPD)プロファイルを示す。
図5】記載された方法によってアルガトロバン一水和物から得たアルガトロバン無水物の代表的なI.R.スペクトルを示す。
図6】記載された方法によってアルガトロバン一水和物から得たアルガトロバン無水物の代表的なサンプルに関しての示差走査熱量測定(DSC)を示す。
図7】記載された方法によってアルガトロバン一水和物から得たアルガトロバン無水物の代表的なサンプルに関しての熱重量分析を示す。
図8】記載された方法によってアルガトロバン一水和物から得たアルガトロバン無水物の回折法(XRPD)プロファイルを示す。
図9】記載された方法により得た精製アルガトロバンの代表的なI.R.スペクトルを示す。
図10】記載された方法により得た精製アルガトロバンの代表的なサンプルに関しての示差走査熱量測定(DSC)を示す。
図11】記載された方法により得た精製アルガトロバンの代表的なサンプルに関しての熱重量分析を示す。
図12】精製アルガトロバンの回折法(XRPD)プロファイルを示す。
図13】記載された方法により得たアルガトロバン無水物(2°ピーク)及び対応する一水和物(1°ピーク)のDSC間での比較を示す。
図14】記載された方法により得たアルガトロバン無水物(上方曲線)及び一水和物(下方曲線)の熱重量分析間での比較を示す。
図15】記載された方法により得た水和物、精製物及び無水物種のXRPDディフラクトグラム間での比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のアルガトロバン一水和物の調製方法は、以下に示すスキームに由来する:
【化1】
【0021】
発明の概要において報告した工程を含む、本発明のアルガトロバン一水和物の調製方法においては、アルガトロバン一水和物を調製するための出発化合物は、US 4,258,192及びEP 8746において既に記載された(2R,4R)-1-[N-ニトロ-N-(3-メチル-8-キノリノスルフィル)-L-アルギニル]-4-メチル-2-ピペリジンカルボン酸(II)である。
【0022】
本発明の目的のため、前記化合物(II)は、酢酸の存在下、メタノールからなる溶媒中、炭素上のパラジウム(Pd/C)からなる触媒によって触媒作用を受ける水素化及び水素化分解にさらされ、ここで、二つの間でのv/v比は1(酢酸)と4〜16(アルコール)の間であり、出発化合物(II)と酢酸のw/vでの割合は、0.5〜2.5である。水素化反応は、当業者に知られる方法によって水素雰囲気下で行われ、好ましくは6〜12barの圧力で、50℃〜100℃の温度で、6〜18時間である。
【0023】
連続モードプロセス
方法が連続モードである場合、室温に冷却した後、反応塊からPd/C触媒を除去し、次いで、得られた塊を40℃〜80℃間の温度に加熱し、少なくとも半分の体積まで濃縮する。
【0024】
このようにして得た混合物を、好ましくは水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム及びアンモニアから10〜30%の濃度で選ばれる塩基の水溶液で任意に処理することができ、該混合物自体のpHを7.0〜7.5にする。
【0025】
このようにして得た溶液を水で希釈し、水及びメチルアルコールの混合物であって、メチルアルコールの濃度が10〜20%である混合物からなるアルガトロバン一水和物(I)結晶化用溶媒を得る。MetOH:水の結晶化用溶媒は、アルガトロバン(III)のグラム当たり最大で50ボリュームまでの量であり、好ましくは40ボリューム以下であり、より好ましくは25〜35ボリュームからなり、MetOH:水の比は好ましくは1:7v/vである。
【0026】
その後、結晶化は、脱色炭を加え、その塊を還流温度にて加熱し、それを攪拌しながら1〜3時間維持し、次いで、炭素をろ過し、還流温度から15〜25℃、好ましくは20℃にするように11〜17時間制御された冷却を行うことにより、達成される。特に、上記塊は、以下に示す温度勾配にさらされる:90〜95℃への加熱、還流温度にて1〜3時間、好ましくは2時間の維持、少なくとも1時間で70〜75℃への冷却及びこの温度で少なくとも1時間の維持、2〜6時間、好ましくは4時間で20℃への冷却及びこの温度で少なくとも6時間の維持。形成する結晶性沈殿物は、後述する物理化学的特性を持つアルガトロバン一水和物(I)である。
【0027】
この第一実施態様において以上に報告した全工程に関し、アルガトロバン一水和物の調製方法は、
メタノール/酢酸中で、(2R,4R)-1-[N-ニトロ-N-(3-メチル-8-キノリンスルホニル)-L-アルギニル]-4-メチル-2-ピペリジンカルボン酸から未精製のアルガトロバンを調製する工程と;
その反応塊を少なくとも半分の体積まで濃縮する工程と;
任意には、その反応塊を、混合物自体のpHが7.0〜7.5になるように塩基の水溶液で処理する工程と;
メタノール:水の混合物であって、メチルアルコールの濃度が10〜20%である混合物からなる結晶化用溶媒媒体を形成し、その塊に炭素の添加と、還流温度での加熱とを受けさせ、次いで、それに炭素のろ過と、11〜17時間で還流温度から15〜25℃の温度への制御された段階的な冷却とを受けさせることにより、アルガトロバン一水和物を結晶化する工程と
を備える。
【0028】
特に、制御された段階的な冷却は、以下の温度勾配である:90〜95℃への加熱と、還流温度にて1〜3時間の維持と、少なくとも1時間で70〜75℃への冷却及びこの温度で少なくとも1時間の維持と、2〜6時間で20℃への冷却及びこの温度で少なくとも6時間の維持である。
【0029】
窒素フロー又は真空下、50℃〜80℃の温度で、少なくとも8時間乾燥する工程を更に備えることができる。
【0030】
精製アルガトロバン(IV)中間体の単離方法
合成反応を上述のように行い、水素化完了時に、室温に冷却して、その後、得られる塊からPd/C触媒を除去する。次いで、前記塊を40℃〜80℃の温度に加熱し、少なくとも攪拌可能な残留物に濃縮する。
【0031】
未精製のアルガトロバン(III)を含有する残留物を、有機溶媒、好ましくはジクロロメタン中に溶解する。
【0032】
このようにして得た混合物を、好ましくは水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム及びアンモニアから10〜30%の濃度で選ばれる塩基の水溶液で任意に処理することができ、混合物自体のpHを7.0〜7.5の間にする。任意には、過剰の場合、その後、有機相を水で洗浄することで又は真空下で、塩基を取り除く。
【0033】
この場合、イソプロピルアルコール及びノルマル−プロピルアルコールから選択される結晶化用溶媒を、未精製のアルガトロバン(III)を塩基で処理した後に得られた混合物に加える。好ましくは、本発明の目的のため、結晶化用溶媒は、イソプロピルアルコールであり;その混合物を溶媒還流温度に加熱し、塩素化した溶媒を蒸留により除去し、次いで0〜20℃に冷却する。この工程では、精製アルガトロバン(IV)を得、行った分析から、それは、結晶化用アルコール、特にイソプロパノールで溶媒和されることが証明され、以下に記載する物理化学的特性を有する。
【0034】
次いで、先に記載されるメタノール:水の混合物中で精製アルガトロバン(IV)を可溶化した後、先に記載されるアルガトロバン一水和物(I)を得るために、この結晶性沈殿物を処理する。
【0035】
ノルマル−プロパノール又はイソプロパノールからの結晶化による精製アルガトロバンの分離は、アルガトロバン一水和物の収率及び純度、更には良好な生成物の加工性及びその方法の信頼性の観点から、より効果的な調製を可能にする。プロパノールアルコールが、エタノールに比べて、これらの側面について良好なためである。結晶性溶媒としてのエタノールは、わずかな体積誤差の場合でさえも、かなりの収率の低下を実際に起こす場合があり、ジアステレオ異性体比に関して否定的な結果の場合がある。これは、その後の結晶化において正確なジアステレオ異性体比を達成させる際に、より多くの困難をもたらすであろう。得られた溶媒和物は、ここに精製アルガトロバンとして示され、新規であり、それどころか、ジアステレオ異性体比に悪影響を与えることなく、その精製及び単離を非常に容易にするような結晶特性を示す。
【0036】
この第二実施態様において以上に報告した全工程に関し、アルガトロバン一水和物の調製方法は、
メタノール/酢酸中で、(2R,4R)-1-[N-ニトロ-N-(3-メチル-8-キノリンスルホニル)-L-アルギニル]-4-メチル-2-ピペリジンカルボン酸から未精製のアルガトロバンを調製する工程と;
任意には、その反応塊を、混合物自体のpHが7.0〜7.5になるように塩基の水溶液で処理する工程と;
未精製のアルガトロバンを含有する反応塊を攪拌可能な残留物に濃縮する工程と;
未精製のアルガトロバンを含有する残留物を有機溶媒で溶解し、イソプロパノール及びノルマル−プロパノールから選択される結晶化用溶媒で該有機溶液を処理することによる結晶化によって精製アルガトロバンを分離する工程と;
メタノール:水の混合物であって、メチルアルコールの濃度が10〜20%である混合物からなる溶媒媒体から、先の工程で単離した精製アルガトロバンを再結晶し、その塊に脱色炭の添加と、還流温度での加熱とを受けさせ、次いで、それに炭素のろ過と、11〜17時間で還流温度から15〜25℃の温度への制御された段階的な冷却とを受けさせることにより、アルガトロバン一水和物を分離する工程と
を備える。
【0037】
特に、制御された段階的な冷却は、以下の温度勾配である:90〜95℃への加熱と、還流温度にて1〜3時間の維持と、少なくとも1時間で70〜75℃への冷却及びこの温度で少なくとも1時間の維持と、2〜6時間で20℃への冷却及びこの温度で少なくとも6時間の維持である。
【0038】
窒素フロー又は真空下、50℃〜80℃の温度で、少なくとも8時間乾燥する工程を更に備えることができる。
【0039】
本発明に従うアルガトロバン一水和物の調製方法は、同一の目的を達成することが分かる。
【0040】
実際、得られるアルガトロバンの収率は、連続工程又は二工程調製の場合で、65%〜70%であり;得られた化合物は、少なくとも99%に等しいか又は99%より高い純度、少なくとも3.4%のKF、65:35±2の異性体比を示していた。
【0041】
純度に関しては、本発明に従う方法によって得られるアルガトロバン一水和物は、あらゆる単一不純物が0.1%未満、好ましくは0.03%より低い不純物プロファイルを有する。従って、アルガトロバン一水和物の純度は、少なくとも99.0%に等しいか又は99.0%より高く、好ましくは少なくとも99.8%であるか又は99.8%より高い。
【0042】
任意には、アルガトロバン一水和物からアルガトロバン無水物(V)を得ることができ、これは、連続モード又は二つの異なる工程において、アルガトロバン一水和物(I)からなる得られた結晶性沈殿物を水中に再溶解し、該溶液を75℃〜100℃、好ましくは80℃に加熱し、未溶解の残留物を除去し、次いで該溶液を10℃〜20℃に素早く、好ましくは15℃に2分で冷却し、それを前記温度にて最大で1時間維持することによって得られる。
【0043】
この方法で得たアルガトロバンは、無水物であり、後述する物理化学的特性を有する。
【0044】
アルガトロバン一水和物の特徴付け
(2R,4R)-4-メチル-1-[N-[(1,2,3,4-テトラヒドロ-3-メチル-8-キノリルスルホニル]-L-アルギニル]ピペコリン酸一水和物(I)の分析データを以下に与える:
実験式: C2338S;
分子量: 526.65;
分子構成:
C H N S
計算値(%): 54.45 7.27 15.96 6.09
実測値(%): 52.46 7.30 15.95 6.11;
HPLCによる純度: 99.0%〜99.8%;
I.R.(KBr): 3416、1272、1157cm−1。上記方法により得たアルガトロバン一水和物の代表的なI.R.スペクトルを図1に示す;
旋光度: [α]27=+78(0.2N HClにおけるc=1mg/ml);
融点: 176〜182℃。融点はガラス毛細管を用いて決定された;
示差走査熱量測定(DSC)及び熱重量分析(TGA): 示差走査熱量測定は、穿孔アルミニウムるつぼを用いて行われた。アルガトロバン一水和物は、約150℃で吸熱事象を示す。図2は、典型的なDSCプロファイルを与える。吸熱現象は、水分損失及びその後の化合物の融解を表す。水分損失は、図3の熱重量分析プロファイルによりはっきりと実証される。熱重量分析は、水分損失が85〜177℃の温度で3.68%であり、その値は3,42%の理論値と完全に適合するため、その化合物が一水和物として現れることを示す。また、175℃より高い重量損失の高温度範囲は、含有される水の性質が結晶質タイプであることを示す;
X線回折法による分析: アルガトロバン一水和物は、白色の結晶質固体として現れる。図4に示されるアルガトロバン一水和物に関連するピークは、以下、表1において集約される:
【0045】
【表1】
【0046】
アルガトロバン無水物の特徴付け
(2R,4R)-4-メチル-1-[N-[(1,2,3,4-テトラヒドロ-3-メチル-8-キノリル)スルホニル]-L-アルギニル]ピペコリン酸の無水物形態(V)での代表的なサンプルの記載を、対応する一水和物形態との比較として以下に与える:
分子式: C2336S;
分子量: 508.63;
融点: 分解とともに220℃;
I.R.(KBr): 3432、1265、1164。上記方法により得たアルガトロバン無水物の代表的なI.R.スペクトルを図5に示す;
示差走査熱量測定(DSC)及び熱重量分析(TGA): 示差走査熱量測定及び熱重量分析は、アルガトロバン一水和物の分析に適用したものと同一の条件下で行われた。図6は、アルガトロバン無水物サンプルの代表的なDSC分析を与える。アルガトロバン無水物は、約215℃で吸熱事象を示す。吸熱現象は、化合物の融解に関係がある。熱重量分析を図7に示す。25℃〜140℃の温度範囲内にて重量で約1%の損失は、わずかな量の吸収水の存在に起因する;
X線回折: XRPD分析をアルガトロバン一水和物のために記載した手順に従って行った。以下に示す表2は、図8に示されるピークの集約を与える:
【0047】
【表2】
【0048】
イソプロパノール中で溶媒和されたアルガトロバンの特徴付け
イソプロパノールで溶媒和された精製した(2R,4R)-4-メチル-1-[N-[(1,2,3,4-テトラヒドロ-3-メチル-8-キノリル)スルホニル]-L-アルギニル]ピペコリン酸(IV)の分析データを以下に与える:
I.R.(KBr): 3399、1270、1160cm−1。上記方法により得たiPrOHで溶媒和されたアルガトロバンの代表的なI.R.スペクトルを図9に与える;
融点: 183〜185℃。融点測定は、ガラス毛細管を用いて行われた;
示差走査熱量測定(DSC)及び熱重量分析(TGA): 示差走査熱量測定は、穿孔アルミニウムるつぼを用いて行われた。イソプロパノールで溶媒和されたアルガトロバンは、約160℃に吸熱ピークを有する。図10は、典型的なDSCプロファイルを与える。吸熱事象は、溶媒損失と化合物の融解とを表す。溶媒損失は、図11の熱重量分析プロファイルからはっきりと実証される。熱重量分析は、溶媒損失が9.0%であり、その値は一溶媒和物形態についての理論値10.55%と完全に適合するため、その化合物がイソプロパノールとの溶媒和物として現れることを示す。また、70℃〜176℃の重量損失の高温度範囲は、含有される溶媒の性質が結晶質タイプであることを示す;
X線回折による分析: イソプロパノールで溶媒和されたアルガトロバンは、白色の結晶質固体として現れる。図12に示すイソプロパノールで溶媒和したアルガトロバンについて得られるピークは、以下、表3において集約される:
【0049】
【表3】
【0050】
アルガトロバン一水和物、アルガトロバン無水物及び精製アルガトロバンの比較
示差走査熱量測定(DSC):比較により分かるように、アルガトロバン一水和物のDSCプロファイルは、無水物について見られたプロファイルとかなり異なる。この点において、アルガトロバン一水和物は、約160℃に吸熱ピークを有するが、アルガトロバン無水物のものは約220℃に示される(図13)。
【0051】
熱重量分析(TGA):熱重量分析に関しては、アルガトロバン一水和物及び無水物の曲線間での実質的な差異が再び見られ、それぞれの重量損失が事実上異なることを示す(図14)。
【0052】
図15は、アルガトロバン無水物、アルガトロバン一水和物及び精製アルガトロバンの回折法プロファイル間での比較を与える。重ね合わせることから明らかなように、三つの結晶構造は明らかに異なる。
【0053】
本発明の合成方法の非制限的な説明のために以下に与える例は、上記方法を完全な形で形成する異なる工程に関し、先に報告したスキームを参照する。
【実施例】
【0054】
実験パート
(2R,4R)-1-[N-ニトロ-N-(3-メチル-8-キノリンスルホニル)-L-アルギニル]-4-メチル-2-ピペリジンカルボン酸(II)からの精製アルガトロバン(IV)の合成例
例1:NaOHでの未精製アルガトロバンの処理及びイソプロパノールでの精製アルガトロバンの分離
1リットルのガラス製オートクレーブに、(2R,4R)-1-[N-ニトロ-N-(3-メチル-8-キノリンスルホニル)-L-アルギニル]-4-メチル-2-ピペリジンカルボン酸60g、メタノール480ml、酢酸120ml及び5%炭素上のパラジウム(60%湿潤)20gを供給した。このようにして得た混合物を、激しく攪拌しながら、85℃及び8.5barの水素雰囲気にて8.5時間処理した。
【0055】
次に、その塊を室温に冷却し、触媒をろ過により除去した。得られた溶液を減圧下で残留物に濃縮した。塩化メチレン600ml、水300ml、及び30%水酸化ナトリウム水溶液75mlを、その得られた油状残留物に加え、残った酢酸を中和した(pH=7.5)。
【0056】
次いで、メタノール30mlを加え、その混合物をかき混ぜながら1時間維持した。水相を除去し、有機相を水300mlで2回洗浄した。良好な分離を達成するため、必要な量のメタノールを洗浄するたびに加えた。
【0057】
次いで、このようにして得た塩化メチレン溶液(全溶液の3分の1)を、2-プロパノール120mlを含有する500mlのジャケット付き反応器中に浸透させた。次に、その塊を加熱し、溶媒200mlを留去した。その後、溶液を2時間かけて0℃に冷却し、この温度で3時間維持した。
【0058】
結晶化により得た固体をろ別し、真空下50℃で16時間乾燥させ、精製(2R,4R)-4-メチル-1-[N-[(1,2,3,4-テトラヒドロ-3-メチル-8-キノリルスルホニル]-L-アルギニル]ピペコリン酸(IV)16.0gを得た。収率=86%。
【0059】
例2:NaOHでの未精製アルガトロバンの処理及びノルマルプロパノールからの結晶化
1リットルのガラス製オートクレーブに、(2R,4R)-1-[N-ニトロ-N-(3-メチル-8-キノリンスルホニル)-L-アルギニル]-4-メチル-2-ピペリジンカルボン酸50g、メタノール375ml、酢酸95ml及び5%炭素上のパラジウム(60%湿潤)16.4gを供給した。
【0060】
このようにして得た混合物を、激しく攪拌しながら、85℃及び8.5barの水素雰囲気にて8時間処理した。
【0061】
次に、その塊を室温に冷却し、触媒をろ過により除去した。得られた溶液を減圧下で残留物に濃縮した。
【0062】
塩化メチレン570mlをその得られた油状残留物に加え、その溶液を二つの部分に分けた。得られた溶液の半分をジャケット付きの1リットルガラス製反応器中に供給し、それに水120mlを加えた。次いで、30%水酸化ナトリウム溶液を加えることで、酢酸残留物を中和し、pH=7.5に達した。有機相及び水相間で正味の分離を得るため、次にメタノール12mlを加えた。その混合物を攪拌しながら1時間維持し、次いで、水相を除去し、有機相を水120mlで2回洗浄した。良好な分離を達成するため、必要な量のメタノールを洗浄するたびに加えた。
【0063】
次いで、このようにして得た塩化メチレン溶液を、1-プロパノール140mlを含有する500mlのジャケット付き反応器中に浸透させた。次に、その塊を55℃に加熱し、存在するジクロロメタンを留去した。その後、溶液を2時間かけて0℃に冷却し、この温度で2時間維持した。
【0064】
結晶化により得た固体をろ別し、真空下50℃で16時間乾燥させ、精製(2R,4R)-4-メチル-1-[N-[(1,2,3,4-テトラヒドロ-3-メチル-8-キノリルスルホニル]-L-アルギニル]ピペコリン酸(IV)17.0gを得た。収率=73%。
【0065】
例3:中和無しでイソプロパノールからの結晶化による未精製アルガトロバンの処理
例2で得た化合物(III)のジクロロメタン溶液の半分を、水120ml及びメタノール12mlの混合物で2回抽出した。
【0066】
次いで、このようにして得た塩化メチレン溶液を、2-プロパノール140mlを含有する500mlのジャケット付き反応器中に浸透させ、得られた塊を蒸留により濃縮した。
【0067】
蒸留が完了したとき、温度は90℃になり、その塊をかき混ぜながら1時間置いておき、20℃に冷却し、最終的には0℃に冷却し、そこで、2時間維持した。
【0068】
結晶化により得た固体をろ別し、真空下50℃で16時間乾燥させ、精製(2R,4R)-4-メチル-1-[N-[(1,2,3,4-テトラヒドロ-3-メチル-8-キノリルスルホニル]-L-アルギニル]ピペコリン酸(IV)21.5gを得た。収率=93%。
【0069】
(2R,4R)-1-[N-ニトロ-N-(3-メチル-8-キノリンスルホニル)-L-アルギニル]-4-メチル-2-ピペリジンカルボン酸(II)からのアルガトロバン一水和物(I)の合成例
例4:一水和物形態を直接得るための未精製アルガトロバンのNHによる処理
250mlのガラス製オートクレーブに、(2R,4R)-1-[N-ニトロ-N-(3-メチル-8-キノリンスルホニル)-L-アルギニル]-4-メチル-2-ピペリジンカルボン酸(II)20g、メタノール160ml、酢酸10.4ml及び5%炭素上のパラジウム(50%湿潤)5.6gを供給した。
【0070】
このようにして得た混合物を、激しく攪拌しながら、85℃及び9barの水素雰囲気にて8時間処理した。
【0071】
次いで、その塊を室温に冷却し、触媒をろ過により除去した。得られた溶液を大気圧で濃縮した。
【0072】
溶媒60mlを蒸留した後、その溶液を0℃に冷却し、30%アンモニアの水溶液12mlで中和した。
【0073】
過剰のアンモニアを真空下で除去し、次いで、水700mlをその反応混合物に加えた。得られた溶液を還流(約95℃)にて加熱し、攪拌しながらこの温度で1時間維持し、次いで、4時間かけて20℃に冷却し、この温度で8時間維持した。
【0074】
結晶性沈殿物をろ別し、80℃、大気圧及び窒素フローにて8時間乾燥させ、アルガトロバン一水和物(I)15.8gを得た(HPLC純度=99.8%;異性体比=63.8:36.2;KF=3.5%)。収率=82.4%。
【0075】
精製アルガトロバン(IV)からアルガトロバン一水和物(I)を得るための結晶化例
例5:水35ボリューム及びメタノール5.5ボリュームでの結晶化
ジャケット付きのスチール製反応器に、精製(2R,4R)-4-メチル-1-[N-[(1,2,3,4-テトラヒドロ-3-メチル-8-キノリルスルホニル]-L-アルギニル]ピペコリン酸(IV)2218g、メタノール12192ml及び脱塩水77647mlを供給した。得られた混合物に、脱色炭66.6gを加え、還流にて加熱し、この温度で窒素下にて1時間維持した。次いで、その炭素を高温条件下でろ過により除去した。
【0076】
次いで、溶液を還流させて、この温度で2時間維持し、初期結晶化温度(75℃)まで1時間かけて冷却し、この温度で1時間維持し、次いで、4.5時間かけて20℃に冷却し、攪拌しながら6時間置いておいた。
【0077】
結晶化により得た固体をろ別し、脱塩水2218mlで洗浄し、減圧下55℃で12時間乾燥し、(2R,4R)-4-メチル-1-[N-[(1,2,3,4-テトラヒドロ-3-メチル-8-キノリルスルホニル]-L-アルギニル]ピペコリン酸(I)水和物1998gを得た。(HPLC純度=99.9%;異性体比=63.2:36.8;KF=3.5%)。収率=87%。
【0078】
アルガトロバン無水物(V)を得るための結晶化例
例6:水からの結晶化
ジャケット付きのガラス製反応器に、水100mlを供給し、80℃にして;この温度でアルガトロバン一水和物0.8gを加えた。その塊をこの温度で10分間攪拌しながら維持し、次いで、未溶解の残留物をろ過により除去した。母液を素早く(約2分で)15℃まで冷却し、この温度で1時間維持した。得られた固体をろ過により分離し、80℃及び大気圧にて窒素フロー下で10分間乾燥させ、アルガトロバン無水物0.5gを得た(HPLC純度=99.9%;異性体比=60.6:39.4;KF=0.26%)。収率65%。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15