(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記上部電極層および前記下部電極層は、前記半導体基板の前記一辺に並んだ前記複数のボンディングパッドのうち、第1端に位置する第1のボンディングパッドと、第2端に位置する第2のボンディングパッドとにそれぞれ接続される、請求項6に記載の半導体圧力センサ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
特許文献2は、ダイアフラムのへき開方向と交差する方向に沿って配線を配置することにより、ダイアフラムの破損を検知する技術思想を開示する。しかし特許文献2に開示された構成によれば、ダイアフラムの破損にともなって破損検知用の配線が断線しなければダイアフラムの破損を検知することができない。
【0020】
さらに、特許文献2に開示された構成によれば、ダイアフラムの破損を検出するためにトランジスタが用いられる。このため、ダイアフラムの破損を検出するためにトランジスタへの電流供給が必要となる。
【0021】
特許文献3は、半導体圧力センサの薄肉部の表面に圧電素子を配置するとともに、その圧電素子により薄肉部に強制的に歪みを生じさせる技術を開示する。
【0022】
この技術によれば、圧電素子への電圧印加後における半導体圧力センサの出力に基づいて半導体圧力センサの自己診断を行なうことができる。
【0023】
しかしながら、特許文献3の
図1に示された半導体圧力センサは、支持部材により圧電素子を固定する構成を有する。このため、特許文献3に開示された半導体圧力センサを製造するために複雑な工程を要する。特許文献3は、周知のIC製造手法によって、ダイアフラムの一主面に圧電素子が形成されることを示唆している。しかし特許文献3は、半導体圧力センサの一主面に薄膜として圧電素子を形成し、これにより圧電素子の支持部材を不要とする構成について明示していない。
【0024】
薄肉部の表面に薄膜の圧電素子を配置する場合、薄膜圧電素子の配置を考慮する必要がある。単純に薄肉部の表面全体に薄膜圧電素子を配置すると、薄肉部と薄膜圧電素子との間の熱膨張率の違いにより、薄肉部に予期しない歪みが生じる。このため、半導体圧力センサの出力に狂いが生ずる。
【0025】
さらに、薄膜圧電素子による自己診断機能が正常に動作するためには、薄膜圧電素子の配置にも配慮しなければならない。
【0026】
ダイアフラムを作成する際の加工精度により、ダイアフラムの位置と抵抗素子の位置との間にずれが生じる可能性がある。ダイアフラムおよび抵抗素子の間の相対的な位置がずれることによって、同じ工程により製造された複数の圧力センサ装置の間で、抵抗ブリッジの特性のばらつきが生じる可能性がある。抵抗ブリッジの特性とは、たとえば、ダイアフラムに印加される圧力と抵抗ブリッジの出力電圧との関係である。
【0027】
一般的に、圧力センサ装置は、広い範囲にわたり圧力を検出できるように構成される。たとえば大気圧は、標準気圧(約101.3[kPa])の付近で変化する。半導体圧力センサを大気圧の検出のために使用する場合、そのセンサの感度が標準気圧の近傍で高いことが好ましい。
【0028】
しかしながら、従来の圧力センサ装置の構成によれば、圧力センサ装置の検出範囲が広い。したがって、圧力センサ装置の感度が所望の領域、特に検出範囲の上限値近くの領域においてのみ高くなるように圧力センサ装置を構成することは容易ではない。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明の1つの目的は、薄肉部上に薄膜圧電素子を配置することによって自己診断を実行することが可能であるととともに、その薄膜圧電素子による出力への影響を低減可能な半導体圧力センサを提供することである。
【0030】
本発明の他の目的は、ダイアフラムの位置と抵抗ブリッジの位置との間のずれに起因する抵抗ブリッジの特性のばらつきが大きくなることを抑制することである。
【0031】
本発明の他の目的は、半導体圧力センサの検出範囲の上限値付近の領域においてその半導体圧力センサの検出感度を高めることを可能にすることである。
【0032】
本明細書において「自己診断機能」とは、半導体圧力センサが該半導体圧力センサ自身の構造的な欠陥を検知する機能を指す。
【0033】
本明細書において「診断基準電圧」とは、ダイアフラムの破損等の欠陥が存在しない半導体圧力センサが自己診断を実施した時の、半導体圧力センサの出力電圧の差分を指す。
【0034】
本明細書において「オフセット電圧」とは、ダイアフラムに歪みが生じていない状態における、半導体圧力センサの出力を指す。
【0035】
本明細書において「薄肉領域」とは、半導体基板に形成された薄肉部の表面、および薄肉部を含む。本明細書において「厚肉領域」とは、半導体基板に形成された厚肉部の表面、および厚肉部を含む。
【0036】
本発明のある局面では、半導体圧力センサは、薄肉領域および薄肉領域の周囲に設けられた厚肉領域を有する半導体基板と、半導体基板の一主面に形成され、薄肉領域に対応する半導体基板の部分の歪みに応じて抵抗値を変化させる歪みゲージ抵抗と、半導体基板上において、薄肉領域の少なくとも一部を含む領域に形成されて、下部電極層、圧電層、および上部電極層を有する少なくとも1つの薄膜圧電素子とを備える。少なくとも1つの薄膜圧電素子は、歪みゲージ抵抗から離間した領域に形成される。
【0037】
上記構成によれば、薄膜圧電素子への電圧印加前後の半導体圧力センサの出力に基づいて、半導体圧力センサの自己診断を行なうことができる。さらに、薄膜圧電素子と半導体基板の熱膨張率の違いによる歪みゲージ抵抗の変形を低減することによって、半導体圧力センサの出力、たとえばオフセット電圧等に狂いが生じることを防止することができる。
【0038】
好ましくは、少なくとも1つの薄膜圧電素子は、薄肉領域の中央部に向かう方向に長手軸を有する細長形状を有する。
【0039】
上記構成によれば、小面積の薄膜圧電素子によって薄肉領域全体を均一に歪ませることができるので、自己診断の精度を高めることができる。
【0040】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つの薄膜圧電素子は、薄肉領域と厚肉領域との境界を横切って厚肉領域まで延びるように設けられてもよい。
【0041】
上記構成によれば、薄膜圧電素子の一部が物理的に強固な厚肉領域上に固定されるため、自己診断時に薄肉部に付与される歪み量が安定する。これにより、自己診断の精度を高めることができるとともに、薄膜圧電素子の金属配線を厚肉領域上のみで行なうことができる。
【0042】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つの薄膜圧電素子はさらに、厚肉領域において、薄肉領域の外周に沿って延びるように設けられてもよい。
【0043】
上記構成によれば、薄膜圧電素子の一部が厚肉領域上に強固に固定される。これにより自己診断時に薄肉部に付与される歪み量が安定するので、自己診断の精度を高めることができる。
【0044】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つの薄膜圧電素子は、半導体基板上に形成された複数の薄膜圧電素子を含んでもよい。
【0045】
上記構成によれば、半導体基板上の異なる位置に形成された複数の薄膜圧電素子に同じ電圧を印加することによって薄肉部全体を均一に歪ませることができる。
【0046】
本発明の一実施形態において、複数の薄膜圧電素子は、前記厚肉領域上で互いに結合されてもよい。
【0047】
上記構成によれば、薄膜圧電素子の上部電極層の配線および薄膜圧電素子の下部電極層の配線がひとつずつでよいため、半導体圧力センサの構成を簡便にすることができる。
【0048】
本発明の一実施形態において、複数の薄膜圧電素子は、薄肉領域の中央部まで延長されるとともに薄肉領域の中央部で互いに結合されてもよい。
【0049】
本発明の一実施形態において、半導体圧力センサは、さらに、厚肉領域上に設けられた複数のボンディングパッドを備え、少なくとも1つの薄膜圧電素子は、複数のボンディングパッドのうちの少なくとも1つのボンディングパッドの近傍まで延びるように設けられてもよい。
【0050】
上記構成によれば、薄膜圧電素子の金属配線を短くすることができるので、歪みゲージ抵抗の金属配線に利用できる領域を広くすることができる。これにより、複数の歪みゲージ抵抗を接続してブリッジ回路を構成する際に、配線長の調整を容易にすることができる。
【0051】
本発明の一実施形態において、複数のボンディングパッドは半導体基板の一辺に並んで設けられてもよい。
【0052】
上記構成によれば、ワイヤボンディング時の利便性を向上することができる。
本発明の一実施形態において、上部電極層および下部電極層は、半導体基板の一辺に並んだ複数のボンディングパッドのうち、第1端に位置する第1のボンディングパッドと、第2端に位置する第2のボンディングパッドとにそれぞれ接続されてもよい。
【0053】
本発明の一実施形態において、半導体圧力センサは、4つの前記歪みゲージ抵抗を備え、薄肉領域は略四辺形を呈し、歪みゲージ抵抗は、前記薄肉領域の各辺の中点近傍に形成されてもよい。
【0054】
上記構成によれば、歪みゲージ抵抗の抵抗値を大きく変化させることができるので、半導体圧力センサの感度を向上させることができる。
【0055】
好ましくは、少なくとも1つの薄膜圧電素子は、薄肉領域の対角線上に形成されてもよい。
【0056】
本発明の一実施形態において、薄肉領域は、略円形を呈していてもよい。
上記構成によれば、円周上の半導体基板の歪み方が同じであるために、歪みゲージ抵抗の配置における自由度が高まる。
【0057】
好ましくは、歪みゲージ抵抗は、半導体基板の一主面に不純物を拡散することによって形成された拡散抵抗である。
【0058】
好ましくは、圧電層の主成分はPZTである。
好ましくは、歪みゲージ抵抗は、薄肉領域上の配線に接続され、配線は、拡散配線を含む。
【0059】
好ましくは、圧電層の厚さは0.01μm以上5μm以下である。
上記構成によれば、薄膜圧電素子の上部電極層に至るコンタクトホールと薄膜圧電素子の下部電極層に至るコンタクトホールとを同時に形成することができるので、半導体圧力センサの製造時間を短縮することができる。
【0060】
好ましくは、半導体基板は、SOI(Silicon On Insulator)基板である。
【0061】
上記構成によれば、薄肉部の製造時に、薄肉部の厚さの精度を良くすることができる。
本発明の他の局面において、半導体圧力センサの製造方法は、第1の導電型を有する一主面Si層と、他主面Si層とを有する半導体基板を準備する工程と、一主面Si層に、第1の導電型とは異なる第2の導電型を有する歪みゲージ抵抗を形成する工程と、一主面Si層における歪みゲージ抵抗と隣接する領域に、前記第2の導電型を有し前記歪みゲージ抵抗よりも不純物濃度の高い拡散配線を形成する工程と、一主面Si層上に第1の層間絶縁膜を形成する工程と、第1の層間絶縁膜上に下部電極層を形成する工程と、下部電極層上に圧電層を形成する工程と、圧電層上に上部電極層を形成する工程と、第1の層間絶縁膜、下部電極層、圧電層、および上部電極層上に第2の層間絶縁膜を形成する工程と、第2の層間絶縁膜に、拡散配線、下部電極層、および上部電極層に至るコンタクトホールを形成する工程と、第2の層間絶縁膜上およびコンタクトホールに金属配線を形成する工程と、他主面Si層に基準圧力室を形成する工程とを備える。
【0062】
前記製造方法において、下部電極層に至るコンタクトホールと上部電極層に至るコンタクトホールとは同時に形成される。
【0063】
本発明の他の局面において、半導体圧力センサは、半導体基板と、少なくとも1つの抵抗ブリッジとを備える。半導体基板は、ダイアフラムと、ダイアフラムの外縁部を支持するための支持部とを含む。少なくとも1つの抵抗ブリッジは、半導体基板の主表面に配置される。少なくとも1つの抵抗ブリッジは、ダイアフラムに印加された圧力に応じて各々の抵抗値を変化させる複数の抵抗素子を含む。複数の抵抗素子は、ダイアフラムと支持部との境界の一部を含む主表面内の一部の領域に、集合的に配置される。
【0064】
好ましくは、複数の抵抗素子は、第1の抵抗素子と、第2の抵抗素子とを含む。第2の抵抗素子は、第1の抵抗素子に電気的に接続されるとともに、第1の抵抗素子に隣接するように領域に配置される。
【0065】
好ましくは、第1の抵抗素子は、境界に平行する方向に沿って延在するように、領域に形成される。第2の抵抗素子は、境界と交差する方向に沿って延在するように、領域に形成される。
【0066】
好ましくは、少なくとも1つの抵抗ブリッジは、互いに電気的に並列に接続された複数の抵抗ブリッジである。
【0067】
本発明の他の局面において、圧力センサ装置は、半導体基板と、少なくとも1つの抵抗ブリッジとを備える。半導体基板は、ダイアフラムと、ダイアフラムの外縁部を支持するための支持部とを含む。少なくとも1つの抵抗ブリッジは、半導体基板の主表面に配置される。少なくとも1つの抵抗ブリッジは、ダイアフラムに印加された圧力に応じて各々の抵抗値を変化させる複数の抵抗素子を含む。複数の抵抗素子は、ダイアフラムと支持部との境界の一部を含む主表面内の一部の領域に、集合的に配置される。圧力センサ装置は、複数の抵抗素子の各々の抵抗値に基づいて圧力を示す信号を出力するための信号処理回路をさらに備える。
【0068】
本発明の他の局面において、電子機器は、半導体基板と、少なくとも1つの抵抗ブリッジとを備える。半導体基板は、ダイアフラムと、ダイアフラムの外縁部を支持するための支持部とを含む。少なくとも1つの抵抗ブリッジは、半導体基板の主表面に配置される。少なくとも1つの抵抗ブリッジは、ダイアフラムに印加された圧力に応じて各々の抵抗値を変化させる複数の抵抗素子を含む。複数の抵抗素子は、ダイアフラムと支持部との境界の一部を含む主表面内の一部の領域に、集合的に配置される。電子機器は、複数の抵抗素子の各々の抵抗値に基づいて圧力を示す信号を出力するための信号処理回路と、信号処理回路からの信号に基づいて所定の処理を実行するための本体部とをさらに備える。
【0069】
本発明の他の局面において、圧力センサ装置は、圧力に基づいて信号電圧を変化させるセンサと、センサから出力された信号を処理するための信号処理回路とを備える。信号処理回路は、信号電圧を増幅するための増幅回路と、増幅回路の出力電圧に基づいて、圧力に従って変化する検出電圧を生成するための演算回路とを含む。演算回路は、増幅回路の出力電圧に対して所定の相関関係を有する電圧を、所定のオフセット電圧から減算することによって、検出電圧を生成するように構成される。
【0070】
好ましくは、信号処理回路は、第1の電圧に基づいて、圧力に従って変化する第2の電圧を生成するための第2の演算回路をさらに備える。圧力に対する第1の電圧の第1の変化率は、圧力に対する第2の電圧の第2の変化率と異なる。第1の電圧は、圧力センサにより検出される圧力の範囲の上限値において、第2の電圧に一致する。
【0071】
好ましくは、第2の変化率の絶対値は、第1の変化率の絶対値よりも大きい。
好ましくは、第2の演算回路は、第1の電圧を増幅することにより第2の電圧を生成する。
【0072】
好ましくは、信号処理回路は、第1の電圧を信号処理回路の外部に出力するための第1の端子と、第2の電圧を信号処理回路の外部に出力するための第2の端子とをさらに備える。
【0073】
好ましくは、圧力の範囲は、大気圧の標準値を含みかつ上限値が標準値の近傍の値となるように定められる。
【0074】
本発明の他の局面では、電子機器は、圧力に基づいて信号電圧を変化させるように構成されたセンサと、センサから出力された信号を処理するための信号処理回路とを備える。信号処理回路は、信号電圧を増幅するための増幅回路と、増幅回路の出力電圧に基づいて、圧力に従って変化する検出電圧を生成するための演算回路とを含む。演算回路は、増幅回路の出力電圧に対して所定の相関関係を有する電圧を、所定のオフセット電圧から減算することによって、検出電圧を生成するように構成される。電子機器は、検出電圧に基づいて、所定の処理を実行する本体部をさらに備える。
【発明の効果】
【0075】
本発明によれば、薄肉領域上に形成された薄膜圧電素子に電圧を印加することにより、半導体圧力センサの自己診断を行なうことができる。薄膜圧電素子が歪みゲージ抵抗から離間した領域に形成されているため、薄膜圧電素子と半導体基板との熱膨張率の違いによる歪みゲージ抵抗の変形を最小限に抑えることができる。したがって、半導体圧力センサの出力に狂いが生じることを防止することができる。
【0076】
本発明によれば、薄膜圧電素子が厚肉領域上の所定の位置まで延びるように設けられる。これにより薄膜圧電素子の一部を厚肉領域に固定することができるとともに、薄膜圧電素子の金属配線を短くすることができる。このため、自己診断の精度が高まるとともに、歪みゲージ抵抗の金属配線に使用できる領域を広くすることができる。
【0077】
本発明によれば、ダイアフラムの位置と抵抗ブリッジの位置との間のずれに起因する、抵抗ブリッジの特性のばらつきが大きくなることを抑制することができる。
【0078】
本発明によれば、検出範囲の上限値付近の領域における圧力センサ装置の検出感度を高めることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0080】
以下において本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0081】
図1は、本発明の実施の形態に係る圧力センサ装置を備える電子機器の構成を概念的に示すブロック図である。
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る電子機器1000は、圧力センサ装置10と、本体部50とを備える。圧力センサ装置10は、半導体圧力センサ(以下、単に「センサ」と称することもある)1と、信号処理回路2とを含む。1つの実施の形態において、圧力センサ装置10は大気圧を検出するために用いられる。ただし、圧力センサ装置10の用途は大気圧の検出に限定されるものではない。
【0082】
半導体圧力センサ1は、半導体圧力センサ1に印加された圧力(たとえば大気圧)を検出するとともに、その検出結果を示す信号電圧を信号処理回路2に送信する。半導体圧力センサ1は、半導体圧力センサ1に印加された圧力に従って信号電圧を変化させる。
【0083】
信号処理回路2は、半導体圧力センサ1からの信号電圧に基づいて、半導体圧力センサ1に印加された圧力を示す検出電圧(信号)を生成する。信号処理回路2は、その検出電圧を本体部50に出力する。本体部50は、信号処理回路2から出力された検出電圧(すなわち圧力センサ装置10から出力された検出電圧)に基づいて所定の処理を実行する。
【0084】
本発明の実施の形態に係る電子機器1000の種類は特に限定されるものではない。一例として、電子機器1000は、ハードディスクである。ハードディスクの場合、磁気ディスクとヘッドとの間の間隔がハードディスクの周辺の気圧によって変動しうる。たとえば本体部50は、磁気ディスクと、ヘッドと、磁気ディスクとヘッドとの間の間隔を調整するための機構とを含む。本体部50は、圧力センサ装置10からの検出電圧に基づいて、磁気ディスクとヘッドとの間の間隔が一定に保たれるよう、磁気ディスクとヘッドとの間の間隔を調整する。
【0085】
他の例では、電子機器1000はカーナビゲーションシステムである。車両の周囲の大気圧は、車両の高度によって変化する。本体部50は、圧力センサ装置10からの検出電圧に基づいて、車両の現在の高度を算出する。これにより、システムは、車両の高度の情報を取得することができる。
【0086】
図2は、
図1に示した圧力センサ装置10の上面図である。
図3は、
図1に示した圧力センサ装置10の側面図である。
図2および
図3を参照して、半導体圧力センサ1および信号処理回路2は、パッケージ3の内部に収納される。半導体圧力センサ1および信号処理回路2は配線5によって電気的に接続される。パッケージ3には、パッケージ3の外部からパッケージ3の内部に大気を導入するための開口部4が形成される。
【0087】
図4は、
図2および
図3に示した圧力センサ装置10の内部を示した断面図である。
図4を参照して、パッケージ3は、容器3Aと、容器3Aを塞ぐための蓋3Bとを備える。容器3Aは、たとえばセラミックにより形成される。蓋3Bは、たとえば金属により形成される。蓋3Bには開口部4(貫通孔)が形成される。
【0088】
半導体圧力センサ1は、ダイアフラム7とダイアフラム7の外縁を支持する支持部8とが一体的に形成されたシリコン基板6を含む。ダイアフラム7は、シリコン基板6の一部を薄膜状に加工することによって形成される。たとえば、所定のエッチングマスクを介してシリコン基板6の裏面にエッチングを施すことにより、ダイアフラム7および支持部8が形成される。
【0089】
シリコン基板6は、台座9に設置される。シリコン基板6の裏面に形成された開口部は台座9によって塞がれる。したがってシリコン基板6の内部には、圧力が一定に保たれた圧力室が形成される。本実施の形態では、圧力室の内部はほぼ真空(0[Pa])である。圧力室の内部の圧力を以下では「基準圧力」とも呼ぶ。
【0090】
信号処理回路2は、たとえばシリコンチップに形成された半導体集積回路である。信号処理回路の構成は後に詳細に説明する。ダイアフラム7が形成されたシリコン基板6の主表面には、抵抗素子(図示せず)が形成される。この抵抗素子と信号処理回路2とは配線5により接続される。配線5は、たとえば金製のワイヤである。
【0091】
信号処理回路2が形成された半導体チップの防湿性を高めるために、たとえばシリコンチップは樹脂により封止されてもよい。同様に、防湿の観点から、パッケージ3の内部の空間は、水分を通しにくい素材(たとえばジェル等)で満たされていてもよい。ただし、その素材は、圧力センサ装置10の周囲の気圧によってダイアフラム7に圧力を印加するように変形できることが求められる。
【0092】
次に、
図1〜
図3に示された半導体圧力センサ1の実施形態が説明される。なお、各実施の形態に係る半導体圧力センサの構成において、薄肉領域は
図4に示したダイアフラム7に対応し、厚肉領域は、
図4に示した支持部8に対応する。
【0093】
[第1の実施の形態]
図5は、本発明の第1の実施の形態にかかる半導体圧力センサ400の上面図である。
図5を参照して、半導体圧力センサ400は、半導体基板401を有する。半導体基板401は、薄肉領域402および厚肉領域404を有する。薄肉領域402は、半導体基板401の主表面のほぼ中央に設けられる。厚肉領域404は、薄肉領域402の周囲に設けられる。半導体基板401は、薄肉部および厚肉部によるダイアフラム構造を有する。
【0094】
薄肉部の一主面には、拡散抵抗406、408、410、および412が形成される。拡散抵抗406、408、410、および412は、薄肉部の一主面に不純物の拡散によって形成される。拡散抵抗406、408、410、および412は、薄肉部の歪みを検知する歪みゲージ抵抗である。拡散抵抗406、408、410、および412は図示しない配線によりブリッジ回路を構成する。
【0095】
薄肉領域402上には、拡散抵抗406、408、410、および412上を避けて薄膜圧電素子414が配置される。薄膜圧電素子414は、半導体圧力センサ400の自己診断に使用される。自己診断の方法については後述する。
【0096】
半導体基板401と薄膜圧電素子414とは熱膨張率が異なる。このため、半導体圧力センサ400に温度変化が生じた場合には、半導体基板401における薄膜圧電素子414との接触面付近において予期しない歪みが生ずることがある。
【0097】
通常、半導体圧力センサ400に薄膜圧電素子414を形成する際には、500℃〜800℃の高温下で圧電材料を焼成した後、半導体圧力センサ400を常温まで冷却する。このため、前記歪みは半導体圧力センサ400の製造過程において既に発生している。
【0098】
この歪みが拡散抵抗406、408、410、および412の抵抗値に影響を与えることを防止するために、薄膜圧電素子414は、拡散抵抗406、408、410、および412からできるだけ離して配置される。
【0099】
さらに、自己診断時に薄肉領域402全体を均一に歪ませるために、薄膜圧電素子414は薄肉領域402の中心402Cに向かう方向に長手軸を有する細長形状を有することが望ましい。自己診断時の薄膜圧電素子414の変形方向および薄肉領域402の歪み方については後述する。
【0100】
図6は、
図5に示した半導体圧力センサ400のVI−VI断面図である。
図6を参照して、厚肉部404Aの底部には台座としてのガラス基板416が固着される。薄肉部402Aとガラス基板416との間には、基準圧力室418が形成される。
【0101】
薄肉部402Aは、基準圧力室418の内部の圧力と外気圧との気圧差に応じて歪みを生ずる。そのため、半導体圧力センサ400を絶対圧の測定に用いる場合には、通常、基準圧力室418は真空状態とされる。本発明に係る半導体圧力センサは、以下の全ての実施形態について、絶対圧測定型圧力センサ、相対圧測定型圧力センサの双方に適用可能である。
【0102】
薄膜圧電素子414は、下部電極層414A、圧電層414B、および上部電極層414Cを有する。圧電層414Bは例えばPZT等の圧電材料によって構成される。下部電極層414Aと上部電極層414Cとの間に電圧が印加されることにより、圧電層414Bの全体が膨張または収縮する。本発明の実施の形態では、圧電層414Bを薄肉領域402と並行な方向に収縮させることにより、薄肉領域402に意図的に歪みを生じさせて自己診断が行なわれる。自己診断の方法については後述する。
【0103】
図7は、
図5に示した半導体圧力センサ400について、基準圧力室418の内部の圧力と外気圧との間の気圧差によって薄肉領域402に歪みが生じた状態を模式的に示した図である。
【0104】
図7を参照して、外気圧と基準圧力室418の内部の圧力との間の圧力差によって、薄肉部402Aに歪みが生ずる。拡散抵抗408および412は、薄肉領域402の中心402Cに向かう方向に長手軸を有する。
図7に示されるように、薄肉部402Aに歪みが生じたときに、拡散抵抗408,412の各々が長くなる。このため、拡散抵抗408,412の抵抗値が増大する。
【0105】
一方、
図5に示した拡散抵抗406,410は、拡散抵抗408,412とは異なり、薄肉領域402の中心402Cに向かう方向と垂直な向きに長手軸を有する。薄肉部402Aに歪みが生じた場合には、拡散抵抗406,410の幅が広くなる。このため拡散抵抗406,410の抵抗値が減少する。
【0106】
拡散抵抗406、408、410、および412の抵抗値の変化によって半導体圧力センサ400は外気圧を測定することができる。例えば、拡散抵抗406、408、410、および412をブリッジ接続すればよい。拡散抵抗406、408、410、および412の接続の例は後述する。
【0107】
次に、薄膜圧電素子414による半導体圧力センサ400の自己診断機能について説明する。
【0108】
図8は、
図5に示した半導体圧力センサ400のVIII−VIII断面を模式的に示した断面図である。
図8は、薄膜圧電素子414に電圧が印加された状態における半導体圧力センサ400の断面を示す。
【0109】
図8を参照して、下部電極層414Aと上部電極層414Cの間に電圧が印加されると、圧電層414Bは矢印415に沿った方向に収縮する。圧電層414Bが収縮すると薄肉部402Aの一主面(圧電層414B側)も同時に収縮する。しかしながら薄肉部402Aの他主面(ガラス基板416側の面)は圧電層414Bの拘束を受けない。このため薄肉部402Aの一主面の面積と薄肉部402Aの他主面の面積とに違いが生じる。したがって
図8に示されるように、全体としてガラス基板416側に凹むように薄肉部402Aに歪みが生じる。すなわち薄膜圧電素子414に電圧が印加されることにより、半導体圧力センサ400は、基準圧力室418の内部の圧力と外気圧との間に圧力差が発生した状態を擬似的に発生させることができる。
【0110】
薄肉部402A全体を均一に歪ませるために、薄膜圧電素子414は、薄肉領域402の中心402Cに向かう方向に長手軸を有する細長形状を有することが望ましい。また、
図1に示した拡散抵抗406、408、410、および412から離間して薄膜圧電素子414を配置するならば、薄膜圧電素子414の形状は略長方形でもよいし、略楕円形でもよい。これは本明細書中の他の実施形態についても同様である。
【0111】
半導体圧力センサ400の自己診断時、薄膜圧電素子414への電圧印加前後でのセンサ出力の差が診断基準電圧から所定の範囲内であれば、半導体圧力センサ400に破損が生じていないと判断される。破損が生じていないことが予め判っている半導体圧力センサについて、薄膜圧電素子への電圧印加前後のセンサ出力に基づいて診断基準電圧を設定すればよい。なお、この実施形態では薄膜圧電素子414への電圧印加前後のセンサ出力差を診断基準電圧として採用しているが、電圧印加後のセンサ出力を診断基準電圧として採用することもできる。これは本明細書中の他の実施形態についても同様である。
【0112】
図9は、薄膜圧電素子414への印加電圧を変化させた時の、薄肉領域402中心の変位量の例をプロットした図である。
図9に一例が示されるように、薄膜圧電素子414に電圧が印加された際の薄肉領域402の変位量は、通常、ヒステリシス特性を有する。このため、半導体圧力センサの自己診断を行なう前には、薄膜圧電素子414に予期しない電圧が印加されないようにする等の注意が必要である。薄肉領域402の変位量は、たとえば薄膜圧電素子414の材料、厚さ、形状等によって異なる。
【0113】
上記した方法以外に、薄膜圧電素子414に交流電圧を印加して薄肉領域402を振動させることによって、半導体圧力センサ400の自己診断を行なうこともできる。この場合、薄膜圧電素子414に交流電圧が印加された際における半導体圧力センサ400の出力波形に基づいてセンサの自己診断が行なわれる。
【0114】
図10は、
図1に示した半導体圧力センサ400における、拡散抵抗406、408、410、412、および薄膜圧電素子414の配線パターンの一例を示した図である。
図10を参照して、金属配線420は実線で示され、不純物の拡散により形成される拡散配線422は点線で示される。参照符号424、426、428、430、434、および438はボンディングパッドを指している。
【0115】
金属配線420と半導体基板401との熱膨張率の違いによる薄肉領域402の歪みを軽減するために、薄肉領域402上の配線には拡散配線を用いることが望ましい。拡散配線422は、半導体基板401の選択領域に高濃度の不純物を注入することにより形成される。
【0116】
ボンディングパッド426および430(またはボンディングパッド424および428)の間には、基準電圧として例えば5Vの電圧が印加される。ボンディングパッド424および428(またはボンディングパッド426および430)の間の電圧が半導体圧力センサの出力となる。ボンディングパッド424および428は図示しない増幅回路に接続されていてもよい。これは本明細書中の他の実施形態についても同様である。
【0117】
ボンディングパッド424とボンディングパッド428との間のオフセット電圧を無くすために、拡散抵抗406および408の抵抗比と、拡散抵抗412および410の抵抗比とは同一であることが望ましい。各抵抗値は半導体圧力センサ400の構成に応じて所定の値に設定される。また、拡散抵抗406、408、410、および412の抵抗値を全て同一の値としてもよい。これは本明細書中の他の実施形態についても同様である。
【0118】
拡散抵抗406および拡散抵抗410の抵抗値は、薄肉領域402の歪みが大きくなるほど減少する。一方、拡散抵抗408および拡散抵抗412の抵抗値は、薄肉領域402の歪みが大きくなるほど増大する。このため、ボンディングパッド424および428の間には、薄肉領域402の歪み量に応じた電圧が生じる。
【0119】
ボンディングパッド438は薄膜圧電素子414の下部電極層414Aに接続される。ボンディングパッド434は薄膜圧電素子414の上部電極層(
図6において符号414Cにより示される)に接続される。ボンディングパッド438および434の間に電圧を印加することにより、薄肉領域402に意図的に歪みを生じさせることができる。
【0120】
半導体圧力センサ400の自己診断時、薄膜圧電素子414への電圧印加前後におけるボンディングパッド424および428間の出力電圧の差が、診断基準電圧から所定の範囲内であればダイアフラムの破損が無いと判断される一方、診断基準電圧から所定の範囲外であればダイアフラムの破損有りと判断される。
【0121】
図5および
図10において、薄肉領域402の形状が略正方形として示される。しかし薄肉領域402の形状は特に限定されるものではない。
図11に示されるように、薄肉領域402の主表面の形状は、例えば略円形でもよい。これは本明細書の他の実施形態についても同様である。
【0122】
薄肉領域402の形状が略正方形である場合には、薄肉部に歪みが生じた際に薄肉領域402の各辺の中点近傍が、薄肉領域402の頂点近傍と比較して大きく変形する。薄肉領域の各辺の中点近傍に拡散抵抗を配置することによって、薄肉領域の形状を略円形とした場合と比較して半導体圧力センサの感度を向上することができる。この場合、薄膜圧電素子は拡散抵抗と離間した位置、たとえば薄肉領域の対角線上に配置すればよい。
【0123】
一方、薄肉領域402の形状が略円形である場合には、薄肉領域402に歪みが生じた際における薄肉領域402の円周上での変形量がほぼ同一となる。このため拡散抵抗の配置における自由度が高まる。
【0124】
図10に示す半導体圧力センサ400の構成によれば、薄膜圧電素子414が薄肉領域402内にのみ形成される。このため、薄膜圧電素子414の下部電極および上部電極の配線(金属配線432および436)が拡散抵抗406、408、410、および412のブリッジ回路を横切ることになる。この場合、ブリッジ回路の金属配線420と薄膜圧電素子414の金属配線432および436とを互いに別の階層の金属配線で形成する等の工夫が必要になる。このために半導体圧力センサの配線に制約が生ずる可能性がある。このような課題を解決可能な半導体圧力センサが、第2の実施の形態で説明される。
【0125】
[第2の実施の形態]
図12は、本発明の第2の実施の形態にかかる半導体圧力センサ500の上面図である。
図12を参照して、半導体圧力センサ500は、薄膜圧電素子414に代えて薄膜圧電素子502を備える。薄膜圧電素子502はブリッジ回路の金属配線420を横切って厚肉領域404まで延びる。この点において、半導体圧力センサ500の構成は、
図10に示した構成と異なる。薄膜圧電素子502は金属配線504とは電気的に絶縁された別の階層に形成される。これは、本明細書における他の実施形態についても同様である。本発明における半導体圧力センサの製造方法については後述する。
【0126】
薄膜圧電素子502は、下部電極層502Aと、圧電層と、上部電極層とを有する。下部電極層502Aは、金属配線を介してボンディングパッド518に接続される。薄膜圧電素子502の上部電極層は、金属配線を介してボンディングパッド516に接続される。本構成によれば、薄膜圧電素子502の下部電極または上部電極に接続される金属配線をブリッジ回路の外側に配置することができる。これにより、半導体圧力センサ500の金属配線を一層のみの配線によって形成できるとともに、ブリッジ回路の金属配線420のレイアウトの自由度が高まる。
【0127】
半導体圧力センサ500のオフセット電圧、すなわち薄肉領域402に歪みが生じていない時の半導体圧力センサ500の出力を0に設定する場合には、各ボンディングパッドから各拡散抵抗までの配線抵抗を同じ値とするために、金属配線420および拡散配線422の配線長を揃えることが望ましい。本実施の形態に係る半導体圧力センサ500においては、薄膜圧電素子502が厚肉領域404上の任意の位置まで延びるように薄膜圧電素子502が配置される。これにより、薄膜圧電素子502の金属配線を任意の位置に配置できる。したがってボンディングパッド424、426、428、430、516、および518の配置、あるいはブリッジ回路の金属配線420および拡散配線422の配線長の調整が容易となる。
【0128】
さらに、薄膜圧電素子502が厚肉領域404の一部に固定される。このため、
図10に示された半導体圧力センサ400と比較して、薄膜圧電素子502が薄肉領域402に及ぼす歪み量を安定させることができる。これにより自己診断の精度を高めることができる。
【0129】
図13は、
図12に示した半導体圧力センサ500の変形例を示した図である。
図13を参照して、半導体圧力センサ530は薄膜圧電素子502に代えて薄膜圧電素子532を有する。薄膜圧電素子532は、延設部532Xおよび532Yを有する。この点において、半導体圧力センサ530は
図12に示した半導体圧力センサ500と異なる。延設部532Xおよび532Yは、薄肉領域402の外周に沿って延びるように厚肉領域404上に形成される。
【0130】
薄膜圧電素子532は、下部電極層532Aと、圧電層と、上部電極層とを有する。下部電極層532Aは、ボンディングパッド518に接続される。薄膜圧電素子532の上部電極層は、ボンディングパッド516に接続される。本構成によれば、薄膜圧電素子532が延設部532Xおよび延設部532Yによって厚肉領域404に固定されるので、薄膜圧電素子532が薄肉領域402に及ぼす歪み量をさらに安定させることができる。これにより自己診断の精度を高めることができる。
【0131】
図14は、
図12に示した半導体圧力センサ500の別の変形例を示した図である。
図14を参照して、半導体圧力センサ550は、薄膜圧電素子502に代えて薄膜圧電素子552を備える。薄膜圧電素子552は、薄肉領域402の外周を囲むように厚肉領域404上に形成される。この点において、半導体圧力センサ550は、
図12に示した半導体圧力センサ500と異なる。薄膜圧電素子552は、薄肉領域402の外周を囲む部分として延設部554を有する。
【0132】
薄膜圧電素子552は、下部電極層552Aと、圧電層と、上部電極層とを有する。下部電極層552Aは、ボンディングパッド518に接続される。薄膜圧電素子552の上部電極層は、ボンディングパッド516に接続される。本構成によれば、薄膜圧電素子552が厚肉領域404に強固に固定されるので、薄膜圧電素子552が薄肉領域402に及ぼす歪み量をさらに安定させることができる。これにより自己診断の精度をさらに高めることができる。
【0133】
[第3の実施の形態]
図15は、本発明の第3の実施の形態にかかる半導体圧力センサ600の上面図である。
図15を参照して、半導体圧力センサ600は、薄肉領域402上に設けられた複数の薄膜圧電素子602、604、606、および608を備える。この点において、半導体圧力センサ600は、
図10に示した半導体圧力センサ400と異なる。
【0134】
拡散抵抗406、408、410、および412は、薄肉領域402に歪みが生じた時の変形量が大きい位置、すなわち薄肉領域402の各辺の中点近傍に設けられる。
【0135】
薄膜圧電素子602、604、606、および608は、拡散抵抗406、408、410、および412から離れた位置、たとえば薄肉領域402の対角線上に設けられる。薄膜圧電素子602、604、606、および608は拡散抵抗406、408、410、および412から所定距離離れていれば良く、薄膜圧電素子を設ける位置は薄肉領域402の対角線上に限定されない。ただし拡散抵抗の予期しない歪みを最小とするために、各薄膜圧電素子は、薄肉領域の外周に沿って隣り合った2つの拡散抵抗の中間に配置することが望ましい。
【0136】
薄膜圧電素子602は、下部電極層602Aと、圧電層と、上部電極層とを有する。下部電極層602Aは、ボンディングパッド610に接続される。薄膜圧電素子602の上部電極層は、ボンディングパッド612に接続される。
【0137】
薄膜圧電素子604は、下部電極層604Aと、圧電層と、上部電極層とを有する。下部電極層604Aは、ボンディングパッド614に接続される。薄膜圧電素子604の上部電極層は、ボンディングパッド616に接続される。
【0138】
薄膜圧電素子606は、下部電極層606Aと、圧電層と、上部電極層とを有する。下部電極層606Aは、ボンディングパッド618に接続される。薄膜圧電素子604の上部電極層は、ボンディングパッド620に接続される。
【0139】
薄膜圧電素子608は、下部電極層608Aと、圧電層と、上部電極層とを有する。下部電極層608Aは、ボンディングパッド622に接続される。薄膜圧電素子608の上部電極層は、ボンディングパッド624に接続される。
【0140】
本構成によれば、自己診断時、薄膜圧電素子602、604、606、および608が協働して薄肉領域402に歪みを付与する。このため、薄膜圧電素子602、604、606、および608に同じ電圧を印加すれば、薄肉領域402全体に均一な歪みを付与することができる。これにより、自己診断の精度を高めることができる。
【0141】
図16は、
図15に示した半導体圧力センサ600の変形例を示した図である。
図16を参照して、半導体圧力センサ630は、薄膜圧電素子632,634,636,638を備える。薄膜圧電素子632,634,636,638は、薄肉領域402の対角線上に設けられるとともに、薄肉領域402の中心402C近傍で互いに結合される。この点において半導体圧力センサ630は、
図15に示した半導体圧力センサ600と異なる。
【0142】
下部電極層636Aは、薄膜圧電素子632,634,636,638に共通の下部電極層である。下部電極層636Aは、ボンディングパッド640に結合される。同様に、薄膜圧電素子632,634,636,638に共通の上部電極層がボンディングパッド642に接続される。本構成によれば、薄膜圧電素子632〜638の上部電極の配線と、薄膜圧電素子632〜638の下部電極の配線とをそれぞれ1つずつ設ければよいため、半導体圧力センサ630の構成を簡便化することができる。
【0143】
[第4の実施の形態]
図17は、本発明の第4の実施の形態にかかる半導体圧力センサ700の上面図である。
図17を参照して、半導体圧力センサ700は、薄膜圧電素子701を備える。薄膜圧電素子701は、薄膜圧電素子702、704、706、および708と、延設部710A、710B、710C、および710Dとを備える。薄膜圧電素子702、704、706、および708は、薄肉領域402の対角線上に設けられる。延設部710A、710B、710C、および710Dは厚肉領域404上に配置される。薄膜圧電素子702、704、706、および708は、延設部710A、710B、710C、および710Dによって互いに結合される。この点において、半導体圧力センサ700は、
図15に示した半導体圧力センサ600と異なる。
【0144】
薄膜圧電素子701はさらに延設部710E、または710Fによってボンディングパッド716F、または716A近傍まで延設されている。ボンディングパッド716A、716B、716C、716D、716E、および716Fと、薄膜圧電素子701とは電気的に絶縁された別の階層に形成される。半導体圧力センサ700の製造方法については後述する。延設部710E、710Fはボンディングパッド直下まで延設されていてもよい。
【0145】
薄膜圧電素子702、704、706、および708が厚肉領域上の延設部710A、710B、710C、および710Dにより互いに結合されている。このため薄膜圧電素子701の上部電極層および薄膜圧電素子701の下部電極層701Aの配線をそれぞれ1つずつ設ければよい。薄膜圧電素子701の上部電極層は、ボンディングパッド716Aに接続される。薄膜圧電素子701の下部電極層701Aは、ボンディングパッド716Fに接続される。
【0146】
薄膜圧電素子701は厚肉領域404上で延設部710A、710B、710C、および710Dによって固定される。このため薄膜圧電素子701が薄肉領域402に及ぼす歪み量を安定させることができる。これにより自己診断の精度を高めることができる。
【0147】
さらに、薄膜圧電素子701は延設部710E、または710Fによってボンディングパッド716Aまたは716Fの近傍まで延びている。このため、薄膜圧電素子701の金属配線を短くすることができる。これにより、拡散抵抗406、408、410、および412を接続するブリッジ回路の金属配線712を配置するために使用できるスペースが広くなるので、金属配線712による配線抵抗の調整が容易となる。延設部710F、または710Eはボンディングパッド716F、または716A直下まで延設されていてもよい。
【0148】
図17に示されるように、ボンディングパッド716A、716B、716C、716D、716E、および716Fは半導体基板401の一辺に並んで設けられる。このような構成によって、ボンディングパッドへワイヤボンディングを行なう際の利便性が向上する。
【0149】
図17では、金属配線712が実線で示されるとともに、拡散配線714が破線で示される。拡散抵抗406は、金属配線712および拡散配線714によってボンディングパッド716Bおよび716Eに接続される。拡散抵抗408は、金属配線712および拡散配線714によってボンディングパッド716Dおよび716Eに接続される。拡散抵抗410は、金属配線712および拡散配線714によってボンディングパッド716Cおよび716Dに接続される。拡散抵抗412は、金属配線712および拡散配線714によってボンディングパッド716Bおよび716Cに接続される。半導体圧力センサ700のオフセット電圧を無くすために、金属配線712および拡散配線714の長さを各拡散抵抗の間で互いに等しくすることが望ましい。
【0150】
図18は、オフセット電圧を0に設定可能な金属配線および拡散配線の例を示した図である。
図18を参照して、半導体圧力センサ720において、拡散抵抗406,408,410,412の各々をボンディングパッドに接続する金属配線722および拡散配線724の長さは、互いに等しい。これにより配線抵抗の抵抗値を互いに等しくすることができる。この点において、半導体圧力センサ720は、
図17に示した半導体圧力センサ700と異なる。
【0151】
図19は、
図17に示した半導体圧力センサ700の他の変形例を示した図である。
図19を参照して、薄膜圧電素子702,704,706,708は、薄肉領域402の対角線上に設けられるとともに薄肉領域402の中心402C近傍で互いに結合される。この点において、半導体圧力センサ730は、
図17に示した半導体圧力センサ700と異なる。このような構成によって、薄膜圧電素子701が薄肉領域402に付与する歪み量を大きくすることができる。これにより薄膜圧電素子701に印加する電圧が低くても自己診断が可能となる。
【0152】
図20は、
図17に示した半導体圧力センサ700のさらに別の変形例を示した図である。
図20を参照して、半導体圧力センサ780は薄膜圧電素子782を有する。薄膜圧電素子782はスリット部784を有する。この点において半導体圧力センサ780は
図17に示した半導体圧力センサ700と異なる。
【0153】
薄膜圧電素子782にスリット部784を設けることにより、薄膜圧電素子782と半導体基板401との接触面積が小さくなる。これにより、薄膜圧電素子782と半導体基板401の熱膨張率の違いにより生ずる、半導体基板401の予期しない歪みを軽減することができる。
【0154】
本発明の各実施の形態について、半導体圧力センサの歪みゲージ抵抗として拡散抵抗を用いたが、歪みゲージ抵抗は拡散抵抗でなくても良い。例えば、セラミックス複合材料あるいはカーボンナノチューブ複合材料を半導体基板上に形成したものであってもよい。
【0155】
本発明の各実施の形態について、半導体圧力センサの歪みゲージ抵抗として4つの拡散抵抗を用いる例を示したが、拡散抵抗の数は4つでなくてもよい。半導体圧力センサに要求される感度で薄肉領域の歪み量を測定できるのであれば、拡散抵抗の数は1つであってもよい。
【0156】
本発明の各実施の形態について、半導体圧力センサの半導体基板の一主面にトランジスタやダイオード等の回路素子を形成することもできる。
【0157】
[本発明の実施形態に係る半導体圧力センサの製造方法]
次に、上記の実施形態に係る半導体圧力センサの製造方法について
図21〜
図27を用いて説明する。なお作図および説明の都合上、各領域の膜厚および幅の比率は必ずしも正確ではない。
【0158】
半導体圧力センサ800に含まれる拡散抵抗を形成するために、たとえばLOCOS(Local Oxidation of Silicon)法が用いられる。
【0159】
図21は、本発明に係る製造方法の第1工程を示す図である。
図21を参照して、まず、SOI(Silicon on Insulator)基板802を用意する。SOI基板802は、一主面Si(Silicon)層804と、埋込酸化膜層806と、他主面Si層808とを有する。SOI基板802の一主面(一主面Si層804の表面)を保護するために、パッド酸化膜810およびSiN膜812を形成する。SOI基板802は、例えば、2枚の半導体基板によって形成される。2枚の半導体基板の各々の貼り合わせ界面を、研削および研磨して鏡面仕上げし、その後に、熱酸化により2枚の半導体基板を接合する。これによりSOI基板が形成される。SiN膜812は、例えばCVD法(化学気相成長法)により形成する。
【0160】
一主面Si層804は第1の導電型を有する。以下、一主面Si層はn型半導体として説明するが、一主面Si層804がp型半導体であってもよい。
【0161】
SiN膜812上のアクティブ領域813にはレジスト814が塗布される。アクティブ領域813とは後に拡散抵抗が形成される領域である。その後、SiN膜812のエッチングを行ない、レジスト814が塗布されていない領域のSiN膜812が除去される。
【0162】
図22は、本発明に係る製造方法の第2工程を示す図である。
図22を参照して、SiN膜812のエッチングを行った後、レジスト814を除去する。次に、ウェット酸化法やパイロジェニック法によりフィールド酸化膜816を形成する。さらにアクティブ領域813のSiN膜812およびパッド酸化膜810を除去する。
【0163】
その後、アクティブ領域813には例えばボロン等の不純物が注入され、拡散抵抗818が形成される。フィールド酸化膜816は拡散抵抗818の形成後に除去される。
【0164】
図23は、本発明に係る製造方法の第3工程を示す図である。
図23を参照して、拡散抵抗818の形成後に、拡散抵抗818に隣接して、拡散抵抗818と同じ導電型を有する不純物が注入された拡散配線820A、820Bが形成される。拡散配線820A、820Bの不純物濃度が拡散抵抗818の不純物濃度より高くなるように、拡散抵抗818に隣接した領域に、高濃度の不純物が注入される。その後、第1の層間絶縁膜822が形成される。第1の層間絶縁膜822としては例えば、リンやボロン等の不純物を含まないシリコン酸化物であるNSG(Nondoped Silicate Glass)膜が用いられる。なお、本明細書に記載の製造方法では、NSG膜をPSG(Phosphorous Silicate Glass)膜あるいはBPSG(Boron Phosphorous Silicate Glass)膜に代用することもできる。
【0165】
図24は、本発明に係る製造方法の第4工程を示す図である。
図24を参照して、第1の層間絶縁膜822上に下部電極層824、圧電層826、および上部電極層828が形成される。
【0166】
下部電極層824、圧電層826、上部電極層828は例えばスパッタ法により形成される。下部電極層824の材料としては白金あるいはチタンが用いられる。下部電極層824の膜厚は、白金の場合には例えば1750Åに設定され、チタンの場合には例えば200Åに設定される。
【0167】
圧電層826の材料としては例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)が用いられる。圧電層826の膜厚は例えば10000Åに設定される。
【0168】
上部電極層828の材料としては例えばイリジウムあるいは酸化イリジウムが用いられる。上部電極層828の膜厚は、イリジウムの場合には例えば1000Åに設定され、酸化イリジウムの場合には例えば800Åに設定される。
【0169】
下部電極層824、圧電層826、上部電極層828の膜厚は上記したものに限定されない。下部電極層824、上部電極層828の膜厚は、後述するコンタクトホール形成時に、コンタクトホールが各電極層を貫通しないような範囲で設定すればよい。
【0170】
図25は、本発明に係る製造方法の第5工程を示す図である。
図25を参照して、下部電極層824、圧電層826、および上部電極層828を選択的にエッチングすることにより、薄膜圧電素子の所定のパターンが形成される。この時、下部電極層824、圧電層826、および上部電極層828が拡散抵抗818と重ならないように、パターンが形成される。
【0171】
図26は、本発明に係る製造方法の第6工程を示す図である。
図26を参照して、下部電極層824、圧電層826、および上部電極層828のエッチング後、第2の層間絶縁膜830が形成される。さらに第2の層間絶縁膜830には、拡散配線820Aに至るコンタクトホール832A、拡散配線820Bに至るコンタクトホール、上部電極層828に至るコンタクトホール832B、および下部電極層824に至るコンタクトホール832Cが形成される。図示の都合上、拡散配線820Bに至るコンタクトホールは
図26には示されていない。
【0172】
下部電極層824に至るコンタクトホール832Cと、上部電極層828に至るコンタクトホール832Bとは第2の層間絶縁膜830のエッチングによって同時に形成される。この時、圧電層826の膜厚が大きすぎると、コンタクトホール832Bの深さとコンタクトホール832Cの深さとが大きく異なる。このため、上部電極層828がエッチング液に長時間曝される。
【0173】
さらに、自己診断機能を果たすために、圧電層826の膜厚は所定の厚みを確保しなければならない。したがって、圧電層826の膜厚は0.01μm以上5μm以下とすることが望ましい。
【0174】
図27は、本発明に係る製造方法の第7工程を示す図である。
図27を参照して、コンタクトホール832A、832B、832Cおよび第2の層間絶縁膜830上には金属配線834A、834B、834Cが形成される。金属配線834A、834B、834Cの主成分は、例えばアルミニウムあるいは銅等である。
【0175】
金属配線の834A、834B、834Cの形成後に半導体圧力センサ800の一主面を保護するためのパッシベーション膜836が形成される。パッシベーション膜836としては例えばSiN膜が用いられる。
【0176】
パッシベーション膜836の一部には、ボンディングパッド838を形成するための開孔部が形成される。
【0177】
次に、他主面Si層808および埋込酸化膜層806の一部がエッチングされる。これによりダイアフラムが形成される。
【0178】
埋込酸化膜層806のエッチングの後、他主面Si層808の底部にはガラス基板842が接合される。ガラス基板842と他主面Si層808との接合は真空中で行なわれる。これにより一主面Si層804とガラス基板842との間に形成される基準圧力室840の内部は真空とされる。
【0179】
以上、本発明に係る半導体圧力センサの製造方法について説明した。本製造方法によれば、従来の半導体装置製造プロセスを利用して半導体圧力センサを製造することができる。
【0180】
下部電極層824、圧電層826、および上部電極層828は、金属配線834A、834B、および834Cとは電気的に絶縁された別の階層に形成される。このため、半導体圧力センサにおける、金属配線および薄膜圧電素子の配置、形状の自由度を高めることができる。
【0181】
さらに、圧電層826の膜厚を0.01μm以上5μm以下とすれば、下部電極層824および上部電極層828に至るコンタクトホールを同時に形成することが可能となる。これにより半導体圧力センサの製造時間を短縮することができる。
【0182】
[第5の実施の形態]
図28は、本発明の第5の実施の形態に係るセンサの構成を概略的に示す平面図である。なお、
図1〜
図4に示された要素と同一または対応する要素には、同一の符号が付されている。さらに、以後の説明においても、
図1〜
図4に示された要素が参照される。
【0183】
図28を参照して、センサ1は、ダイアフラム7およびダイアフラム7の外縁部を支持するための支持部8とを含むシリコン基板6を備える。センサ1は、さらに、抵抗ブリッジB1〜B4を備える。抵抗ブリッジB1〜B4の各々は、シリコン基板6の主表面6Aに配置された複数の抵抗素子を含む。
【0184】
抵抗ブリッジB1〜B4の各々は4つの抵抗素子を含む。具体的には、抵抗ブリッジB1は、抵抗素子11A,12A,13A,14Aを含む。抵抗ブリッジB2は、抵抗素子11B,12B,13B,14Bを含む。抵抗ブリッジB3は、抵抗素子11C,12C,13C,14Cを含む。抵抗ブリッジB4は、抵抗素子11D,12D,13D,14Dを含む。後に詳細に説明するように、4つの抵抗素子は、ホイートストンブリッジを構成する。各抵抗素子は、圧力に応じてその抵抗値を変化させる抵抗素子であり、たとえばピエゾ素子である。なお、実施の形態1〜4と同じく、抵抗素子に拡散抵抗を用いることもできる。
【0185】
1つの抵抗ブリッジに含まれる4つの抵抗素子は、ダイアフラム7と支持部8との境界7Aの一部を含む主表面6Aの一部の領域に集合的に配置される。具体的には、抵抗素子11A〜14Aは、境界7Aの一部を含む領域6A1に配置される。抵抗素子11B〜14Bは、境界7Aの一部を含む領域6A2に配置される。抵抗素子11C〜14Cは、境界7Aの一部を含む領域6A3に配置される。抵抗素子11D〜14Dは、境界7Aの一部を含む領域6A4に配置される。
【0186】
抵抗ブリッジB1,B3は互いに対向するようにシリコン基板6の主表面6Aに配置される。同様に、抵抗ブリッジB2,B4は、互いに対向するようにシリコン基板6の主表面6Aに配置される。
図5に示す直線X,Yは、ダイアフラム7の中心点Oを通り、互いに直交する直線である。抵抗ブリッジB1,B3は直線X上に配置される。抵抗ブリッジB2,B4は直線Y上に配置される。したがって、抵抗ブリッジB1〜B4は、点Oを中心として、シリコン基板6の主表面6Aに等方的に配置される。
【0187】
この実施の形態では、抵抗ブリッジの個数は、複数であれば特に限定されない。ただし、抵抗ブリッジの個数が多くなるほど、各ブリッジに一定の電圧を印加したときに複数の抵抗ブリッジ全体での消費電力が大きくなる。一方、複数の抵抗ブリッジ全体に流れる電流を一定に制御する場合、抵抗ブリッジの個数が多くなるほど1つのブリッジを流れる電流が小さくなる。このため、ダイアフラム7に印加される圧力に対する抵抗ブリッジの出力電圧の変化が小さくなる。
【0188】
抵抗ブリッジの個数は、たとえば上述の観点から定められる。たとえば
図28に示したように、4つの抵抗ブリッジが半導体基板の主表面上に配置される。さらに複数の抵抗ブリッジは、シリコン基板6の主表面6A上に等方的に配置されることが好ましい。
【0189】
図29は、
図28に示したシリコン基板6の主表面6A上の位置に対する応力の関係を示した図である。
図29を参照して、グラフの横軸は、
図28に示した直線X上の位置を示す。位置x
0は、シリコン基板6の一方端(たとえば紙面左側に位置するシリコン基板6の端部)の位置である。位置x
1は、直線Xと境界7Aとの第1の交点(直線Yに対して紙面左側に位置する交点)の位置に対応する。位置x
2は、ダイアフラム7の中心点Oの位置に対応する。位置x
3は、直線Xと境界7Aとの第2の交点(直線Yに対して紙面右側に位置する交点)の位置に対応する。位置x
4は、シリコン基板6の他方端(たとえば紙面右側に位置するシリコン基板6の端部)の位置を示す。
【0190】
図29に示すように、ダイアフラム7に働く応力は、ダイアフラム7の外縁部において最も大きくなる。ダイアフラム7に印加する圧力によって、ダイアフラム7の外縁部に作用する応力が大きく変化する。抵抗ブリッジを構成する4つの抵抗素子はダイアフラム7の外縁部に配置される。したがって、ダイアフラム7に印加される圧力により、各抵抗素子の抵抗値を大きく変化させることができる。
【0191】
図30は、
図28に示した抵抗ブリッジB1〜B4の回路図である。
図30を参照して、この実施の形態では、電気的に並列に接続された4つの抵抗ブリッジB1〜B4が半導体基板の主表面に設けられる。
【0192】
抵抗ブリッジB1〜B4の各々はホイートストンブリッジである。抵抗ブリッジB1〜B4の構成は互いに同様であるので、抵抗ブリッジB1の構成を代表的に説明する。
【0193】
抵抗ブリッジB1は、抵抗素子11A〜14Aを含む。抵抗素子11A,13Aは、電極16Aと電極16Dとの間に直列に接続される。同様に、抵抗素子12A,14Aは、電極16Aと電極16Dとの間に直列に接続される。電圧Vbiasが電極16Aに印加される。電極16Dは接地される。抵抗素子11A,13Aの接続点は、電極16Bに接続される。抵抗素子12A,14Aの接続点は、電極16Cに接続される。電極16A〜16Dは、たとえば配線5に接続されるためにシリコン基板6の主表面6Aに形成されたボンディングパッドである。
【0194】
ダイアフラム7に圧力が印加されていない状態(すなわち真空状態)では、各抵抗素子11A〜14Aの抵抗値が互いに同じとなる。ダイアフラム7に印加される圧力の変化に対し、抵抗素子11A,14Aの抵抗値と抵抗素子12A,13Aの抵抗値とは互いに逆方向に変化する。抵抗ブリッジB2〜B4の各々についても同様に、ダイアフラム7に印加される圧力に応じて各ブリッジに含まれる4つの抵抗素子の各々の抵抗値が変化する。
【0195】
ダイアフラム7に圧力が印加されていない状態では、電極16Bの電圧VA
0および電極16Cの電圧VB
0はともに1/2Vbiasである。ダイアフラム7が加圧されて各ブリッジの抵抗素子の抵抗値が変化することにより、電圧VA
0は1/2Vbiasから減少する一方で、電圧VB
0は1/2Vbiasから増加する。
【0196】
図31は、
図28に示した抵抗ブリッジB1を詳細に示した図である。抵抗ブリッジB2〜B4の各々の構成は、
図31に示される抵抗ブリッジB1の構成と同様である。
【0197】
図31を参照して、抵抗ブリッジB1は、ダイアフラム7と支持部8との境界7Aの一部を含む領域6A1に配置された抵抗素子11A〜14Aを含む。抵抗素子11A,12Aは互いに隣接して配置される。抵抗素子11Aは配線15Aによって抵抗素子12Aに電気的に接続される。
【0198】
抵抗素子11A,13Aは互いに隣接して配置される。抵抗素子11Aは配線15Bによって抵抗素子13Aに電気的に接続される。
【0199】
抵抗素子12A,14Aは互いに隣接して配置される。抵抗素子12Aは配線15Cによって抵抗素子14Aに電気的に接続される。
【0200】
互いに隣接して配置される2つの抵抗素子のうちの一方は、ダイアフラム7と支持部8との境界7Aに平行する方向に沿って延在するようにシリコン基板6の主表面6Aの領域6A1に形成される。上記の2つの抵抗素子の他方は、境界7Aと交差する方向に沿って延在するように領域6A1に形成される。
【0201】
具体的に説明すると、抵抗素子13Aは、境界7Aに平行な方向に沿って延在するようにシリコン基板6の主表面6Aの領域6A1に形成される。抵抗素子11Aは境界7Aと交差する方向に沿って延在するように領域6A1に形成される。同様の関係は、抵抗素子11A,12Aの間に成立するとともに、抵抗素子12A,14Aの間に成立する。
【0202】
図31では、境界7Aは直線で示される。
図28に示されるように、ダイアフラム7の輪郭が円形である場合には、その円の接線に沿って延在するように抵抗素子12A,13Aが形成されてもよい。
【0203】
互いに隣接して配置された2つの抵抗素子は、境界に対して異なる方向に沿って延在するように形成される。これによりダイアフラム7に印加される圧力に応じて、各々の抵抗値を互いに逆方向に変化させることができる。したがって複数の抵抗素子を抵抗ブリッジとして機能させることができる。
【0204】
図32は、第5の実施の形態に係るセンサの比較例の構成を示した平面図である。
図32を参照して、センサ1Aは、4つの抵抗素子11〜14を含む1つの抵抗ブリッジを備える。抵抗素子11〜14は、シリコン基板6の主表面6A上に分散的に配置される。
図32に示した構成によれば、センサ1Aの加工精度に起因する抵抗ブリッジの特性ばらつきが大きくなる可能性がある。
【0205】
図33は、
図32に示したセンサ1Aの製造の際に生じ得る課題を説明するための第1の図である。
図33を参照して、抵抗素子11〜14は、ダイアフラム7が形成されたシリコン基板6の主表面6Aに形成される。なお、
図33では4つの抵抗素子のうち抵抗素子11,13のみを示す。
【0206】
主表面6Aと反対側に位置する主表面6B(裏面)には、開口部6Cが形成される。主表面6Bにエッチング(異方性エッチングおよび等方性エッチングのいずれでもよい)を施すことによって、主表面6Bに開口部6Cが形成される。
【0207】
抵抗素子11,13は、ダイアフラム7と支持部8との境界7Aと重なるように配置されることが好ましい。一般的には、シリコン基板6の主表面6A上に抵抗素子が配置され、その後にダイアフラム7および支持部8が形成される。このため、主表面6Bの開口部6Cの位置が抵抗素子11〜14の主表面6Aの位置に対してずれる可能性がある。位置のずれの程度は、センサの加工精度に依存する。ずれの程度が大きい場合、抵抗ブリッジの感度、すなわちダイアフラムに印加される圧力に対する電圧の変化の比がばらつく可能性がある。これによりセンサの検出精度が低下する。
【0208】
図34は、
図32に示したセンサ1Aの製造の際に生じ得る課題を説明するための第2の図である。
図34を参照して、シリコン基板6の主表面6Bから主表面6Aへ向かう向きにシリコンがエッチングされる。シリコン基板6の内部はテーパ状に加工される。このため、抵抗素子11〜14の位置がダイアフラム7と支持部8との境界の位置に対してずれる可能性がある。
【0209】
図31に戻り、この実施の形態では、抵抗ブリッジを構成する複数の抵抗素子が1つの領域に集合的に配置される。抵抗素子11A〜14Aは同種類の抵抗であり、同一の工程によって形成される。抵抗素子11A〜14Aが1つの領域に集合的に配置されることによって、抵抗素子11A〜14Aの間で特性(たとえば抵抗値、温度特性など)のばらつきが大きくなることを抑制できる。この結果、圧力がダイアフラムに印加されていない状態において抵抗ブリッジB1の平衡状態を得ることができる。
【0210】
複数のセンサの間では、抵抗素子の抵抗値が異なる場合が生じ得る。しかしながら1つの抵抗ブリッジに含まれる複数の抵抗素子の抵抗値のばらつきが小さい場合には、抵抗ブリッジの平衡状態を得ることができる。よって、複数のセンサの間における抵抗ブリッジの特性のばらつきを小さくすることができる。
【0211】
さらに、この実施の形態では、第1の抵抗素子と、その第1の抵抗素子と電気的に接続される第2の抵抗素子とが隣接して配置される。互いに電気的に接続される2つの抵抗素子を隣接して配置することによって、ダイアフラム7と支持部8との境界の位置ずれが生じても、2つの抵抗素子の抵抗値の変化の方向を互いに同じとすることができる。これにより、抵抗ブリッジの特性ばらつきを小さくすることができる。さらに2つの抵抗素子を接続するための配線を短くすることができる。
【0212】
さらに、この実施の形態では、センサは、電気的に並列に接続された複数の抵抗ブリッジを備える。抵抗ブリッジB1に対して境界7AがX,Yの少なくとも一方の方向にずれた場合、抵抗ブリッジB1〜B4の各々の特性が変動する。しかしながら、複数の抵抗ブリッジが電気的に並列に接続されることにより、1つの抵抗ブリッジの特性の変動が、他の抵抗ブリッジの特性の変動によって相殺される。この結果、複数のセンサの間における抵抗ブリッジの特性のばらつきを小さくすることができる。
【0213】
なお、第5の実施の形態では、ダイアフラム7すなわち薄肉領域の形状は円形に限定されるものではない。第1〜第4の実施の形態と同様に、ダイアフラム(薄肉領域)の形状が略正方形であってもよい。
【0214】
[第6の実施の形態]
この実施の形態は、半導体圧力センサから出力される信号を処理するための回路に関する。この信号処理回路は、上記の第1〜第5の実施形態に係る半導体圧力センサのいずれとも組み合わせることができる。
【0215】
図35は、第6の実施の形態に係る信号処理回路の回路図である。
図35を参照して、抵抗素子11〜14は、ホイートストンブリッジを構成する。具体的に説明すると、抵抗素子11,12は、ノード20と接地ノードとの間に直列に接続される。同様に、抵抗素子13,14は、ノード20と接地ノードとの間に直列に接続される。電圧Vbiasがノード20に印加される。抵抗素子13,14の接続点はノード25に接続される。抵抗素子11,12の接続点はノード26に接続される。抵抗素子11〜14は、たとえば
図5に示した拡散抵抗406,408,410,412に対応する。あるいは、抵抗素子11〜14を
図30に示した抵抗ブリッジB1〜B4にそれぞれ置き換えてもよい。
【0216】
信号処理回路2は、増幅部21と、演算部22,23とを備える。増幅部21は、差動増幅器211,212と、抵抗213,214,215とを含む。
【0217】
差動増幅器211は、ノード25に接続された非反転入力端子(記号「+」により示す。以下も同様)と、抵抗213の一方端および抵抗214の一方端の両方に接続された反転入力端子(記号「−」により示す。以下も同様)と、ノード27に接続された出力端子とを備える。抵抗214の他方端は、差動増幅器211の出力端子とともにノード27に接続される。
【0218】
差動増幅器212は、ノード26に接続された非反転入力端子と、抵抗213の他方端および抵抗215の一方端の両方に接続された反転入力端子と、ノード28に接続された出力端子とを備える。抵抗215の他方端は、差動増幅器212の出力端子とともにノード28に接続される。
【0219】
演算部22は、差動増幅器221と、抵抗222〜225と、オフセット電源226と、駆動電源227とを含む。
【0220】
差動増幅器221は、駆動電源227から電源電圧VDDが供給されることにより動作する。抵抗222は、ノード28と、差動増幅器221の反転入力端子との間に接続される。抵抗223は、差動増幅器221の反転入力端子と差動増幅器221の出力端子との間に接続される。抵抗224は、ノード27と、差動増幅器221の非反転入力端子との間に接続される。抵抗225は、差動増幅器221の非反転入力端子とオフセット電源226との間に接続される。
【0221】
オフセット電源226は、電圧VDDを発生させる。
図35に示した構成では、オフセット電源226および駆動電源227は互いに別の電源として示されているが、これらは1つの電源に共通化されてもよい。
【0222】
演算部23は、差動増幅器231と、抵抗232,233と、駆動電源234とを含む。差動増幅器221は、駆動電源234から電源電圧VDDが供給されることにより動作する。差動増幅器221は、ノード29に接続された非反転入力端子と、抵抗232の一方端および抵抗233の一方端に接続された反転入力端子と、端子30に接続された出力端子とを備える。抵抗233の他方端は、差動増幅器231の出力端子とともに端子30に接続される。抵抗232,233の各々は可変抵抗である。したがって抵抗232,233の抵抗値は可変である。
【0223】
次に、信号処理回路2の動作について詳しく説明する。ノード25における電圧VA
0およびノード26における電圧VB
0は、抵抗素子11〜14の抵抗値の変化によって変化する。すなわちダイアフラム7に印加される圧力によって、電圧VA
0およびVB
0が変化する。ダイアフラム7に圧力が印加されていない場合には、電圧VA
0およびVB
0はともに1/2Vbiasである。圧力がダイアフラム7に印加されることにより、電圧VA
0およびVB
0は、1/2Vbiasから変化する。
【0224】
図36は、ダイアフラムに印加される圧力と、ホイートストンブリッジから出力される電圧との関係を示した図である。
図36を参照して、ダイアフラム7に印加される圧力がP
0であるとき、電圧V(P)は1/2Vbiasである。圧力P
0は基準圧力に等しい。
【0225】
ダイアフラム7に印加される圧力がP
0から増加するに従って、電圧VA
0は1/2Vbiasから低下する。一方で、電圧VB
0は、ダイアフラム7に印加される圧力が増加するに従って1/2Vbiasより上昇する。圧力Pに対する電圧VB
0の増加量と圧力Pに対する電圧VA
0の減少量とは同じである。したがって、電圧VB
0はVB
0=1/2Vbias+ΔV(P)と表わされ、電圧VA
0は、VA
0=1/2Vbias−ΔV(P)と表わされる。ΔV(P)は圧力Pに応じて変化する。電圧VB
0およびVA
0の間の差は2ΔV(P)である。電圧VB
0およびVA
0の間の電圧差は、センサ1から出力される信号電圧に相当する。
【0226】
増幅部21は、電圧VB
0およびVA
0の間の差に対応する電圧を増幅する。増幅部21の増幅度(利得)をαと表わす。増幅度αは抵抗213〜215の抵抗値に従って定められる。抵抗213の抵抗値をR
1と示し、抵抗214,215の各々の抵抗値をR
2と示す。増幅度αは、α=R
2/R
1と表わされる。
【0227】
ノード28における電圧VB
1は、VB
1=1/2Vbias+(1+α)ΔV(P)と表わされる。一方、ノード27における電圧VA
1は、VA
1=1/2Vbias−(1+α)ΔV(P)と表わされる。電圧VB
0およびVA
0の間の差は2(1+α)ΔV(P)である。すなわち、増幅部21は、センサ1から出力される信号電圧を増幅して出力する。
【0228】
圧力P
1は、センサ1によって検出される圧力の範囲の上限値である。この実施の形態では、センサ1の検出範囲は以下のように定められる。すなわち、検出範囲は、標準気圧(約101.3[kPa])の値を含み、かつ、圧力P
1が標準気圧の近傍に位置する。圧力P
1の値は、たとえば110[kPa]である。この実施の形態では、圧力センサ装置10がたとえば気圧センサとして使用される。よって、圧力センサ装置10により実際に検出される圧力の範囲は、センサ1の検出範囲の上限値近傍の範囲となる。
【0229】
図35に戻り、演算部22は、電圧VA
1およびVB
1に基づき、ダイアフラム7に印加された圧力に従って変化する電圧Vout1を生成する。具体的には、演算部22は電圧VA
1およびVB
1の間の差に比例する電圧を、オフセット電圧VDDから減算することによって、電圧Vout1を生成する。
【0230】
図37は、ダイアフラムに印加される圧力と、信号処理回路2の演算部22から出力される電圧Vout1との関係を示した図である。
図37を参照して、圧力P
0における電圧Vout1はVDDであり、圧力P
1における電圧Vout1は0である。電圧Vout1の減少量は圧力の増加量に比例する。この実施の形態では、抵抗222,224の抵抗値はともにR
3であり、抵抗223,225の抵抗値はいずれもR
4である。電圧Vout1は、以下の式に従って表わされる。
【0231】
Vout1=VDD−R
4/R
3(VB
1−VA
1)
このように、本実施の形態ではオフセット電圧(VDD)から、増幅部21の出力電圧(VB
1−VA
1)に比例する電圧を減算することによって電圧Vout1を生成する。比例係数(R
4/R
3)は、圧力P
1における電圧Vout1が0となるように定められる。
【0232】
電圧Vout1は圧力P
1の近傍の領域では0付近の値となる。これにより、圧力P
1の近傍の領域における圧力センサ装置の感度を高めることができる。本明細書では、「感度」とは、圧力の範囲に対する電圧の変化量の比を意味する。圧力の範囲がP
0から圧力P
1までの範囲である場合、圧力センサ装置の感度はVDD/(P
1−P
0)と表わされる。
【0233】
演算部22は、増幅部21から出力される電圧に対して所定の相関関係を有する電圧を生成するように構成される。「所定の相関関係」とは、演算部22により生成される電圧が、増幅部21から出力される電圧に基づいて一意的に定まるという関係である。したがって相関関係は比例関係に限定されない。
【0234】
再び
図35を参照して、演算部23は、電圧Vout1を増幅することにより電圧Vout2を端子30から出力する。抵抗232の抵抗値をR
5と示し、抵抗233の抵抗値をR
6と示す。電圧Vout2は以下の式に従って表わされる。
【0235】
Vout2=(R
5+R
6)/R
5×Vout1
一般に、差動増幅器は、電源電圧よりも高い電圧を出力することができない。したがって、電圧Vout2の最大値はVDDである。
【0236】
図38は、ダイアフラムに印加される圧力と、信号処理回路2の演算部23から出力される電圧Vout2との関係を示した図である。
図38を参照して、圧力P
1′以下では電圧Vout2はVDDである。圧力がP
1′から増加するに従って、電圧Vout2は電圧VDDから低下する。電圧Vout2は、圧力P
1において0である。
【0237】
演算部23は電圧Vout2の変化率を電圧Vout1の変化率と異ならせる。ここで「変化率」とは、圧力の変化量に対する電圧の変化量の比の絶対値を意味する。より具体的には、演算部23は電圧Vout2の変化率を電圧Vout1の変化率よりも大きくする。これにより検出範囲の上限値付近の領域において圧力センサ装置の検出感度が高められる。抵抗232,233はともに可変抵抗である。抵抗232,233の少なくとも一方の抵抗値を変化させることによって、電圧Vout2の変化率を変更できる。すなわち、感度を調節することができる。
【0238】
センサ(ダイアフラム)に印加される圧力が高くなるほど、その出力電圧が大きくなるように信号処理回路を構成する場合には、検出範囲の上限値付近の領域において圧力センサ装置の感度を高めることは容易ではない。この点について、第6の実施の形態に係る信号処理回路の比較例を示しながら説明する。
【0239】
図39は、第6の実施の形態に係る信号処理回路の比較例の構成を示す回路図である。
図39を参照して、信号処理回路251は、演算部22に代えて演算部32を備える点、および、演算部23を含まない点において信号処理回路2と異なる。抵抗222の一方端はノード27に接続され、抵抗224の一方端はノード28に接続される。この点において、演算部32は演算部22と異なる。さらに、演算部32はオフセット電源226を含まない点、および、抵抗225の一端が接地される点において演算部22と異なる。演算部32は電圧Voutを出力する。
【0240】
図40は、ダイアフラムに印加される圧力と、信号処理回路251の演算部32から出力される電圧Voutとの関係を示す図である。
図40を参照して、電圧Voutは圧力P
0において0であり、かつ圧力に比例する。圧力P
1において電圧VoutはVDDである。
図40に示した構成によれば、圧力センサ装置の最大の感度は、VDD/(P
1−P
0)である。圧力P
1′から圧力P
1までの範囲における圧力センサ装置の感度を上記の感度より高くすることはできない。
【0241】
圧力センサ装置の感度を高めるため、たとえば
図35に示した構成を有する演算部23を
図39に示す演算部32の出力に接続することが考えられる。しかしながら、
図40に示されるように、その上限値がP
1′よりも小さい範囲の圧力に対して圧力センサ装置の感度が高くなる。一方、圧力P
1′から圧力P
1までの範囲では、Voutが一定である。すなわち、この範囲における圧力センサ装置の感度が低下する。
【0242】
図41は、圧力センサ装置10に含まれるセンサ1の状態を模式的に示した断面図である。
図41を参照して、センサ1の内部の圧力(基準圧力)はP
0である。この実施の形態では、センサ1の内部はほぼ真空である。よって圧力P
0の値は、ほぼ0である。
【0243】
圧力(気圧)PはP
0より高いため、ダイアフラム7はセンサ1の外側からの圧力によって変形する。一方、センサ1の周囲の環境も真空である場合、すなわちセンサ1に印加される圧力PがP
0である場合、ダイアフラム7の歪みは発生しない。したがって、ダイアフラム7は、圧力Pにしたがって、実線の矢印および破線の矢印に示すように動く。
【0244】
図39に示した構成によれば、圧力P=P
0であるときのダイアフラム7の状態に対応する電圧が圧力センサ装置10の基準電圧である。すなわちセンサ1の内部の圧力と、センサ1の外部の圧力とが等しいときに、圧力センサ装置10の出力電圧が基準電圧(0)になる。しかしながら圧力センサ装置を気圧センサとして用いる場合には、センサ1(ダイアフラム7)に印加される圧力PがP
0近傍で変化する状況は発生しない。
【0245】
さらに、圧力P
1′から圧力P
1までの範囲において圧力センサ装置の出力電圧は上限(VDD)に近い電圧となる。このため、
図39に示した構成によれば、上記の範囲において圧力センサ装置の感度を高めることが困難となる。
【0246】
この実施の形態では、圧力P=P
1であるときのダイアフラム7の状態に対応する電圧を圧力センサ装置10の基準電圧とする。さらに、圧力Pによるダイアフラム7の状態の変化にともなって、圧力センサ装置の出力電圧を基準電圧より変化させる。これにより、圧力センサ装置の感度を、標準気圧を含む所望の領域において高くすることができる。
【0247】
図37に示される電圧と圧力との関係は、たとえば
図41に示した構造と異なる構造を有するセンサを用いることによって得られることができる。
図42は、センサの検討例を模式的に示した断面図である。
図42を参照して、センサ1の内部の圧力は、センサ1の検出範囲の上限値(P
1)に等しい。センサ1の周囲の気圧(圧力P)はセンサ1の内部の圧力P
1より小さい。したがって、ダイアフラム7は半導体圧力センサ1の外側に向けて突出するように変形する。
【0248】
上述の説明と同様に、センサ1の内部の圧力と、センサ1の外部の圧力とが等しいときに、圧力センサ装置10の出力電圧が基準電圧(0)になる。したがって、圧力P=P
1であるときに、圧力センサ装置10の出力電圧が基準電圧になる。圧力Pは圧力P
1よりも小さくなるように変化する。この結果、圧力センサ装置10の出力電圧を
図37に示した関係に従って変化させることができる。
【0249】
しかしながら、半導体圧力センサ1の内部の圧力が正確にP
1となるように半導体圧力センサ1を製造することは容易ではない。よって一般的には、
図41に示されるように、半導体圧力センサ1の内部は真空である。本実施の形態によれば、このような一般的な圧力センサを気圧センサとして使用する場合に、標準気圧を含む所望の領域における感度を高くすることができる。
【0250】
なお、この実施の形態に係る信号処理回路は
図35に示した構成を有するものと限定されない。以下に、本実施の形態に係る信号処理回路の変形例について説明する。
【0251】
図43は、第6の実施の形態に係る信号処理回路の第1の変形例を示した図である。
図43を参照して、信号処理回路2Aは、演算部22に代えて演算部22Aを備える点において信号処理回路2と異なる。演算部22Aは、オフセット電源226に代えてオフセット電源226Aを含む点において演算部22と異なる。信号処理回路2Aの他の部分の構成は、信号処理回路2の対応する部分の構成と同様である。
【0252】
オフセット電源226Aは、オフセット電圧V1を発生させる。電圧V1は差動増幅器221の電源電圧VDDよりも低い電圧である。
【0253】
図44は、
図43に示した演算部22Aから出力される電圧Vout1を説明するための図である。
図44を参照して、電圧Vout1は圧力P
0においてV1であり、圧力P
1において0となる。電圧Vout1は圧力に比例して低下する。なお、比例係数は、抵抗222,224の抵抗値R
3と抵抗223,225の抵抗値R
4との比によって定められる。R
4/R
3=V1/(P
1−P
0)である。
【0254】
図43に示した構成においても、半導体圧力センサ1の検出範囲の上限値(圧力P
1)に近い領域において、電圧Vout1は0付近の電圧となる。したがって、圧力P
1に近い領域における圧力センサ装置の感度を高くすることができる。
【0255】
図45は、第6の実施の形態に係る信号処理回路の第2の変形例を示した図である。
図45を参照して、信号処理回路2Bは、端子35をさらに備える点において信号処理回路2と異なる。端子35は、ノード29に接続される。信号処理回路2Bは電圧Vout1,Vout2の両方を外部に出力することができる。たとえば電圧Vout1に基づいて広い範囲にわたる圧力を検出することができる。さらに、電圧Vout2に基づいて、標準気圧を含む所望の領域(検出範囲の上限値に近い領域)では、検出感度を高くすることができる。
【0256】
図46は、第6の実施の形態に係る信号処理回路の第3の変形例を示した図である。
図46を参照して、信号処理回路2Cは、電圧Vout1およびVout2のいずれか一方を選択する選択部36を備える点において信号処理回路2と異なる。選択部36は、信号SELに応じて電圧Vout1,Vout2の一方を選択するとともに、その選択された電圧を、端子30に出力する。信号SELはたとえば信号処理回路2Cの外部から選択部36に与えられる。
図46に示すように、電圧Vout1およびVout2の一方が選択的に出力されるように信号処理回路が構成されていてもよい。
【0257】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。