(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5696048
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】風力タービン・ブレード・ピッチ制御システム
(51)【国際特許分類】
F03D 7/04 20060101AFI20150319BHJP
【FI】
F03D7/04 H
F03D7/04 Z
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-526852(P2011-526852)
(86)(22)【出願日】2009年9月8日
(65)【公表番号】特表2012-502227(P2012-502227A)
(43)【公表日】2012年1月26日
(86)【国際出願番号】US2009005037
(87)【国際公開番号】WO2010030338
(87)【国際公開日】20100318
【審査請求日】2012年3月21日
(31)【優先権主張番号】12/283,254
(32)【優先日】2008年9月10日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501188177
【氏名又は名称】ムーグ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポッター、ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】長崎 隆一
(72)【発明者】
【氏名】志賀 守
【審査官】
尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−075521(JP,A)
【文献】
特開昭62−284969(JP,A)
【文献】
特表2006−519334(JP,A)
【文献】
特開2009−299656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気流に対してブレードのピッチを変化させるブレード軸を中心とする制御された回転のためにハブに設置された少なくとも1つのブレードを有し、前記ハブが、ハブ軸を中心とする回転のためにナセルに設置される風力タービンにおいて、前記風力タービンが、
前記ナセルに設置され前記ブレードと関連付けられたエネルギー蓄積装置と、
ナセルに設置され前記ブレード及び前記エネルギー蓄積装置と関連付けられたピッチ−軸コントローラと、
前記ハブに設置され前記ブレードと関連付けられた電気機械式アクチュエータと、
前記ピッチ−軸コントローラと前記電気機械式アクチュエータとの間で電力及び/又は光学的データ信号を伝送するように作動可能に配置された少なくとも1つのスリップ・リングと、を含み、
それにより前記ハブの質量を減少させることができ、
前記ピッチ−軸コントローラが故障状態の場合に、前記スリップ・リングが前記エネルギー蓄積装置から前記アクチュエータに電力を伝達する、風力タービン。
【請求項2】
前記データ信号が多重化される、請求項1に記載の風力タービン。
【請求項3】
前記風力タービンが複数のブレードを有し、前記スリップ・リングが、電力及びデータ信号を、ピッチ・コントローラと、各ブレードと関連付けられた電気機械式アクチュエータとの間で伝送するように配置される、請求項1に記載の風力タービン。
【請求項4】
前記風力タービンが、前記ブレードのピッチを選択的に制御するための主ピッチ制御システムと、故障又は過回転状態の場合に前記主ブレード・ピッチ制御システムを無効にし、且つフェザリング位置に向けて前記ブレードを移動するための安全ピッチ制御システムとを含む、請求項1に記載の風力タービン。
【請求項5】
前記エネルギー蓄積装置と前記ピッチ・コントローラが前記安全ピッチ制御システムの一部である、請求項4に記載の風力タービン。
【請求項6】
前記主ピッチ制御システムと前記安全ピッチ制御システムが共通の構成要素を有する、請求項4に記載の風力タービン。
【請求項7】
前記スリップ・リングが前記主ピッチ制御システムと前記安全ピッチ制御システムの一部である、請求項4に記載の風力タービン。
【請求項8】
前記ピッチ−軸コントローラの故障状態を検出するように配置され、こうした検出された故障状態を反映する信号を前記ピッチ−軸コントローラに供給するように配置された故障センサをさらに備える、請求項1に記載の風力タービン。
【請求項9】
前記スリップ・リングが非接触式のものである、請求項1に記載の風力タービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ブレードのそれぞれの個々のブレード軸を中心とする独立して制御された回転のためのハブに設置された複数のブレードを有する風力タービンに関し、より詳細には、以前は回転するハブに設置されていた或る構成要素がナセルに移設された、改善された風力タービン・ブレード・ピッチ制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現代の風力タービンは、幾つかの理由のためにロータ・ブレード・ピッチを調節する。理由の1つは、風速変化に伴う効率を最適化するようにブレード空気力学を適合させることによって、ブレード効率を改善することである。別の理由は、風速が最大安全定格回転数を超過する場合に又は故障状態の場合に、ブレードが無負荷の又はフェザリング状態をとることである。
【0003】
現代の風力タービンは、2つの別個の独立したブレード・ピッチ制御システム、すなわち、(1)正常作動条件の間に性能を最適化するのに用いられる主ブレード・ピッチ制御システムと、(2)感知された故障の場合に又は風速が所定の最大を超過する場合に主ブレード・ピッチ制御システムをオーバーライドし、且つブレードの各々を無負荷の又はフェザリング状態に向けて移動するように適合された安全ピッチ制御システムとを有することがある。
【0004】
主ブレード・ピッチ制御システムは、典型的には、閉ループのピッチ−軸コントローラによって制御される。このコントローラは、タービンを或る所定の作動曲線状態又は特徴を維持するために、タービンの作動状態を自動的に調節する。コントローラは、ブレード・ピッチ・アクチュエータを通じてブレードのピッチ、すなわち角度を変化させる。このアクチュエータは、電気的に又は油圧でのいずれかで電力を与えられることができる。
【0005】
安全ピッチ制御システムは、主ブレード・ピッチ制御システムとは異なる別個のものであってもよい。その機能は、問題のある場合にタービンを安全状態にもっていくことである。安全システムは、普通は適応電子装置に依存しない。むしろ、アクチュエータは、普通は、
電気的な故障などによる主ブレードピッチ制御システムまたはピッチ−軸コントローラの故障状態の下で又は過回転状態の場合に選択的に閉じる常時開リレー接点を通じてバッテリに配線接続される。
【0006】
従来は、各ブレードのピッチを変化させるためのピッチ−軸コントローラ、バッテリ、及び電気機械式アクチュエータは、ハブに位置づけられていた。これらは、安全ピッチ制御システムの構成要素であった。これは、回転するハブの質量を増加させ、高価な構成要素の使用を要求し、ハブ内のスペースに制約を与えるものであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、バッテリ及び制御電子装置をナセルに移動する又は移設することの、別個の利点が存在するであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示された実施例の対応する部品、部分、又は表面を挿入句的に参照すると、限定するのではなく単に説明の目的のために、本発明は、大まかには、気流に対してブレードのピッチを変化させるブレード軸(y
b−y
b)を中心とする制御された回転のために、ハブ(22)に設置された少なくとも1つのブレード(21)を有する風力タービンの改善(40)を提供し、ハブは、ハブ軸(x
h−x
h)を中心とした回転のために、ナセル(23)に設置され、風力タービンは、ブレードのピッチを選択的に制御するための主ピッチ制御システム、及び/又は、故障状態又は過回転状態の場合に主ブレード・ピッチ制御システムをオーバーライディングし、且つフェザリング位置に向けてブレードを移動するための個別の安全ピッチ制御システムを含む。
【0009】
改良点は、大まかには、ナセルに設置されブレードと関連付けられたエネルギー蓄積装置(26)と、ナセルに設置されブレード及びエネルギー蓄積装置と関連付けられたピッチ−軸コントローラ(25)と、ハブに設置されブレードと関連付けられた電気機械式アクチュエータ(28)と、ピッチ−軸コントローラと電気機械式アクチュエータとの間で電力及び/又はデータ信号を伝送するように作動可能に配置された少なくとも1つのスリップ・リング(29)とを含み、それによりハブの質量を減少させることができる。
【0010】
故障又は過回転状態の場合に、スリップ・リングは、エネルギー蓄積装置からアクチュエータに電力を伝達することができる。
【0011】
データ信号は、光学的なものであってもよく、多重化されてもよい。代替的に、各電力及び/又はデータ・チャネルのための個別のスリップ・リングが存在してもよい。
【0012】
風力タービンは、複数のブレードを有してもよく、スリップ・リングは、ピッチ・コントローラと、各ブレードと関連付けられた電気機械式アクチュエータとの間で電力及びデータ信号を伝送するように配置されてもよい。多数のブレードが存在する場合、典型的にはエネルギー蓄積装置(例えば、バッテリ)と同様に、ピッチ−軸コントローラと電気機械式アクチュエータは、各ブレードと関連付けられてもよい。幾つかの場合において、エネルギー蓄積装置は、異なるブレードによって共有されてもよい。
【0013】
エネルギー蓄積装置とピッチ−軸コントローラは、安全ピッチ制御システムの一部であってもよい。
【0014】
主ピッチ制御システムと安全ピッチ制御システムは、部分的に冗長であってもよく、又は共通の構成要素を有してもよい。
【0015】
故障センサは、故障又は過回転状態を検出するように配置されてもよく、こうした検出された故障又は過回転状態を反映する信号をピッチ−軸コントローラに供給するように配置されてもよい。
【0016】
スリップ・リングは、主ピッチ制御システム及び安全ピッチ制御システムの一部であってもよい。
【0017】
スリップ・リングは、非接触式のものであってもよい。
【0018】
したがって、本発明の一般的な目的は、風力タービンのための改善されたピッチ制御システムを提供することである。
【0019】
別の目的は、回転するハブの質量を減少させる、改善された風力タービン・ブレード・ピッチ制御システムを提供することであってもよい。
【0020】
別の目的は、幾つかの又はすべてのバッテリ及びピッチ−軸コントローラがハブからナセルに移設されることを可能にし、それにより、キャビネットを組み合わせることによるコスト削減、バッテリ及びコントローラをナセルに移設することによるアクセス及びメンテナンスの容易さ、及びシステム全体の簡素化の利点を与える、改善された風力タービン・ブレード・ピッチ制御システムを提供することである。
【0021】
これらの及び他の目的及び利点は、上記の及び進行中の書面の明細書、図面、及び付属の請求項から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】風力タービンに関連するコントローラ、バッテリ、電気機械式アクチュエータ、及びスリップ・リングの拡大詳細図を示し、なおかつ従来技術の設計におけるそれらの配置場所を示す、風力タービンの一部分の斜視図である。
【
図2】ハブに設置されている各ブレードのためのバッテリ、ピッチ−軸コントローラ、及び電気機械式アクチュエータを備えた、
図1に示された典型的な従来技術のシステムの概略的なブロック図である。
【
図3】ナセルに移設され、少なくとも1つのスリップ・リングを介してハブの種々の電気機械式アクチュエータと通信するものとして、バッテリとピッチ−軸コントローラを示す、改善されたブレード・ピッチ制御システムの概略的なブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
最初に、同様の参照符号は、幾つかの図面を通じて一貫して同じ構造要素、部分、又は表面を特定することを意図され、要素、部分、又は表面は、明細書の全体によってさらに説明され又は解説されてもよい。他に指定のない限り、図面は、明細書と共に読まれることを意図され(例えば、クロス・ハッチング、部品の配置、比率、度合いなど)、本発明の説明の全体の一部と考えられるべきである。以下の説明において用いられる場合の、「水平」、「垂直」、「左」、「右」、「上」、及び「下」という用語、並びに、それらの派生形容詞的語句及び副詞相当語句(例えば、「水平方向に」、「右向きに」、「上向きに」、など)は、単に特定の図面が読者に面する場合の例証された構造体の向きのことを指す。同様に、「内向きに」及び「外向きに」という用語は、一般に、その長手方向の軸又は回転軸に対する表面の向きのことを指す。
【0024】
従来技術のシステム(
図1及び
図2)
一般に20で示される典型的な従来技術のシステムが
図1に示される。このシステムは、一般に22で示されるハブに設置された、それぞれ21で示される複数のブレードを有する。ブレードの各々は、該ブレードの位置における気流に対してブレードの角度又はピッチを変化させるためにブレードの縦軸(y
b−y
b)を中心としてハブに対して選択的に回転されるように適合される。
【0025】
ハブ22は、ハブ軸(x
h−x
h)を中心として回転するため、一般に23で示されるナセルに設置される。ナセルは、典型的には、支持タワー又はポスト24の上端部に旋回運動可能に設置される。したがって、ナセルは、ナセル自身が風向又は気流に対して方向付けられるようにタワー24の垂直軸(z
p−z
p)を中心として自由に旋回運動する。風が各ブレードを通過することにより、ハブはその軸(x
h−x
h)を中心としてナセルに対して回転する。上記で示されたように、ブレードの各々は、気流に対してブレードのピッチを変化させるためにブレード独自の縦軸(y
b−y
b)を中心として選択的に回転するように配置される。
【0026】
図1をさらに主として参照すると、従来技術のシステムにおいて、コントローラ、バッテリ、及びアクチュエータは、典型的には、各ブレードの基部においてハブ内に位置づけられていた。これらの構成要素は、安全ピッチ制御システムの一部であった。幾つかの場合において、アクチュエータは、主ブレード・ピッチ制御システムと共有されていることもある。ブレードの各々は、典型的には、ナセルに対するその角位置の関数として、他のものとは独立して制御可能であった。各ブレードに独立した主ブレード・ピッチ制御及び安全システムを有することの利点は、風力タービンが、機能不良の場合に又は過度の風負荷の場合にタービンを全負荷状態から安全又はフェザリング状態にもっていくことができる少なくとも2つの独立した制動システムを有するという安全要件を満たすことであった。個々のピッチ・アクチュエータを独立してフェイルセーフにすることができると仮定すると、この安全要件は、故障又は強風状態においていずれか1つのブレード・システムが故障しても、他のブレードをフェザリング状態にしておけば良い、という一般的概念を導く。
【0027】
図1はまた、各ブレードと関連付けられたピッチ−軸コントローラ25、バッテリ26、及び電気機械式アクチュエータ28を図示する。電力及び制御信号は、スリップ・リング29を通じて幾つかの回転するコントローラに及び/又はコントローラから搬送される。従来技術においてスリップ・リングの信頼性がないのは、コントローラとバッテリがハブに設置されなければならないことが主な理由とされていた。ピッチ−軸コントローラは、高帯域のアクチュエータ制御信号がスリップ・リングを通過する必要がないように、スリップ・リングの回転する側部に置かれていた。完全な停電又はスリップ・リングの機能不良の場合にハブに設置されたバッテリが電力を提供してブレードをフェザリング状態に向けて動かすために利用可能となるように、ハブ内に位置していた。これは、一般に認められた産業標準となった。
【0028】
このシステムの欠点は、電子装置及び/又はバッテリの多数の組が、回転するハブ内に収容され又は格納されなければならないことであり、そこでそれらは遠心力と緊密なパッケージングの制約を受ける。加えて、ハブは、常時作動しているためにアクセスするのが難しい。
【0029】
ここで
図2を参照すると、
図1に示された従来技術の配置が、ハブに設置された3つのブレードを有するものとして図示される。したがって、各ブレードは、バッテリ26、ピッチ−軸コントローラ25、及び電気機械式アクチュエータ28を含むものとして示される。タービンのための中央コントローラ30は、スリップ・リング29を通じて種々のピッチ−軸コントローラと通信する。電力はまた、このスリップ・リングを横切って種々のアクチュエータに伝達される。タービン中央コントローラ30は、典型的にはナセルに設置され、スリップ・リングは、ナセルとハブとの間にインターフェースを提供し、バッテリ26、26、26、ピッチ−軸コントローラ25、25、25、及び電気機械式ブレード・ピッチ・アクチュエータ28、28、28は、すべて回転するハブに設置されていた。
図1に視覚的に図示されるように、これらの種々の構成要素をハブの内部に設置するためにハブにおける物理的サイズ、スペース、及び外囲部の制約が存在した。そのうえ、それらの質量が回転するハブの質量に加わり、ナセル内に位置づけられた構成要素よりもアクセスしづらいものであった。
【0030】
改善されたシステム(
図3)
本発明に係る改善されたピッチ制御システムは、
図3において一般に40で示される。改善されたピッチ制御システムは、前述した多くの同じ要素を有する。したがって、
図2に関して前述した対応する構成要素を指すために、
図3においても同じ参照符号が用いられる。したがって、改善されたシステム40はまた、別々に26で示される3つのバッテリと、別々に25で示される3つのピッチ−軸コントローラとを含む。顕著な違いは、これらのバッテリとピッチ−軸コントローラが、ここでは、従来技術の配置におけるようにハブにではなく、ナセルに位置づけられることである。タービン中央コントローラ30もまた、ナセルに位置づけられる。別々に28で示される種々の電気機械式アクチュエータは、回転するハブに位置づけられる。これらのアクチュエータは、スリップ・リング29を通じて種々のピッチ−軸コントローラと通信する。したがって、本発明は、冗長スリップ・リング・システムを有し、他の構成要素の不必要な冗長性をなくし、ピッチ−軸コントローラとエネルギー蓄積装置をナセルに移動する。このシステムの適用によって、種々の構成要素を統合することができ、単一のキャビネットにすべての電子装置を収容することができる。そのうえ、本発明は、より低定格のあまり高価ではない電気構成要素の使用を可能にし、ナセル内での制御へのより高いアクセス可能性の能力を与える。
【0031】
スリップ・リングは、光学スリップ・リング又は幾つかの他の非接触式デバイスであってもよい。データは、物理的チャネルの数を減少させるためにスリップ・リングを通じて多重化されてもよい。スリップ・リングの冗長性は、2組の同じスリップ・リングを、例えば、切換デバイス及びエラー・エラー検出システムと連携して有することによって達成することができる。必要ならば、各データ及び/又は電力チャネルに対して個別のスリップ・リングを用いることができる。したがって、本発明は、ナセルの安全ブレード・ピッチ電力システムから各ブレードの回転するアクチュエータに独立した冗長な電力伝達を提供する回転継手を提供する。
【0032】
1つの実装方法は、ハブとナセルとの間で、より詳細には、電源とコントローラとの間でデータ及び/又は電力を伝達するための電力及び信号スリップ・リングと、安全回路の各々のための3つの独立したスリップ・リングとを提供することである。これらのスリップ・リングの各々は、それ独自の独立した構造体、ベアリング、及びリング/ブラシ接続部を有し、通常状態の下では作動しない。これらのリングは、故障又は強風状態における安全回路を現在作動させているシステムによって、電力伝達状態へと選択的に作動させることができる。各アクチュエータに対する2つのリング(すなわち、電力及び戻り)の代わりに、すべての3つの回路が共通の戻りリングを共有することができる。
【0033】
共有された構成要素及び/又は部分的な冗長性の他の方法を用いることもできる。例えば、独立した安全リングを、一次スリップ・リングから独立した、システム故障センサによって始動される共通のシャフト及びベアリング支持システムに提供することができる。一次スリップ・リングは、独立したブレード・ピッチ制御システムに対する要件を満たすために、必要な冗長システムと共に設計することができる。
【0034】
別の実装方法は、正規のスリップ・リングの一部として、各ブレード・ピッチ・アクチュエータのための独立した電力回路を提供することである。これは、システム安全要件を満たすために冗長ベアリング設計又は冗長ブラシ設計と結合することができる。
【0035】
別の実装方法は、安全回路の各々のための、回転変圧器のような非接触式に電力を与えられるデバイスを用いて、電源とコントローラとの間でデータ及び/又は電力を伝達するための電力及び信号スリップ・リングを3つの独立したブレード・ピッチ・アクチュエータに提供することである。これらの安全電力デバイスは、それらの独自の独立した構造体、ベアリング、及びリング/ブラシ接触部を有し、それらは通常状態の下では作動しない。これらの独立した電力デバイスは、故障状態において安全回路を現在作動させている同じシステムによって、電力伝達状態へと選択的に作動させることができる。
【0036】
さらに別の実装方法は、主ブレード・ピッチ制御システムの一部として、各ブレード・ピッチ・アクチュエータのための独立した非接触式電力デバイスを提供することである。これらの独立したデバイスは、通常のブレード・ピッチ制御、並びに、安全ピッチ制御の両方のための電力伝達デバイスとして働くことができる。これは、安全要件を満たすために冗長ベアリング設計及び/又は冗長ブラシ設計と結合することができる。非接触式電力伝達デバイスは、電力変換のための介在する電子装置を必要とすることなく、アクチュエータを直接動かすように設計することができる。
【0037】
本発明は、したがって、インターフェースを横切るモータ制御を可能にするために、ハブ/ナセル風力タービン・インターフェースを横切る十分な信号品質を提供する回転継手を提供する。別の実装方法は、高いデータ転送速度の信号が銅伝送線で伝送されることを可能にする広帯域スリップ・リング技術を用いることである。この広帯域スリップ・リング技術は、要求される信号リングの数を減少させるために多重化技術と共に用いることができる。別の実装方法は、光ファイバの信号伝送のための光ファイバ回転継手を用いることである。ファイバ・データ伝送は、回転継手を横切る伝送のために単一のファイバに信号を組み合わせることを可能にするべく多重化と結合することができる。多重化は、単一のファイバで双方向の信号を、若しくは2つのファイバで冗長信号を、又は2つのファイバで一方向の信号を、などのように、要望どおりに提供することができる。さらに別の方法は、データを伝送するために、RF又は容量性のような他の非接触式信号技術を多重化技術と共に又は多重化技術なしに用いることである。
【0038】
修正
本発明は、多くの変化及び修正がなされてもよいことを考慮している。例えば、本発明の原理は、マルチブレード風力タービンに一般に適用可能である。したがって、これは、風力タービンが2つ、3つ、又は4つ以上のブレードを有するかにかかわらずに実装されてもよい。ブレードの各々は独立して制御可能であることが現在望ましいが、これは不変のものではない。主ピッチ制御システム及び/又は安全ピッチ制御システムを提供することがある他のデバイスが用いられてもよい。これらのシステムは、独立して作動されてもよく、又は、幾つかの部分的な冗長性又は共通の構成要素を有してもよい。
【0039】
したがって、本発明の好ましい形態が示され説明され、それらの幾つかの修正が説明されたが、当業者は、以下の特許請求の範囲によって定義され区別されるように、本発明の精神から逸脱することなく種々の付加的な変化及び修正がなされてもよいことをすぐに理解するであろう。