(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5696056
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】原子炉隔離時冷却装置
(51)【国際特許分類】
G21C 15/18 20060101AFI20150319BHJP
G21D 3/04 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
G21C15/18 VGDB
G21D3/04 Q
G21C15/18 L
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-349(P2012-349)
(22)【出願日】2012年1月5日
(65)【公開番号】特開2013-140079(P2013-140079A)
(43)【公開日】2013年7月18日
【審査請求日】2014年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】水出 有俊
【審査官】
村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−246492(JP,A)
【文献】
特開昭62−170886(JP,A)
【文献】
特開平06−281779(JP,A)
【文献】
特開2002−267784(JP,A)
【文献】
特開平04−027896(JP,A)
【文献】
特開平05−080191(JP,A)
【文献】
特開2003−302490(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0101951(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0121056(US,A1)
【文献】
特開平03−042595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 15/18
G21D 3/00
G21D 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝熱管を有する復水器と、前記伝熱管の入口に連絡されて原子炉圧力容器内で生成された蒸気を前記伝熱管に導く蒸気供給管と、前記伝熱管の出口に連絡されて前記伝熱管から排出された凝縮水を前記原子炉圧力容器に導く凝縮水戻り管と、前記凝縮水戻り管に設けられて原子炉隔離時に開く第1開閉弁と、前記第1開閉弁をバイパスして両端が前記凝縮水戻り管に接続されるバイパス配管と、前記バイパス配管に設けられ、電源喪失時に開く第2開閉弁とを備えたことを特徴とする原子炉隔離時冷却装置。
【請求項2】
前記第1開閉弁が電動弁である請求項1に記載の原子炉隔離時冷却装置。
【請求項3】
前記原子炉圧力容器内に導く前記凝縮水の流量を制限する流量制限装置を、前記バイパス配管に設けた請求項1または2に記載の原子炉隔離時冷却装置。
【請求項4】
前記流量制限装置が流量制限オリフィスである請求項3に記載の原子炉隔離時冷却装置。
【請求項5】
前記第2開閉弁が空気作動弁であり、この空気作動弁は、シリンダ、及び前記シリンダ内に配置されて弁体に連結されたピストンを有し、
前記シリンダ内で前記ピストンよりも前記弁体側に形成された第1シリンダ室に接続され、前記第1シリンダ室への第1作動空気の供給及び前記第1シリンダ室内からの前記第1作動空気の排出を行う第1トリップ弁、前記シリンダ内で前記ピストンよりも前記弁体から遠ざかる方向に形成された第2シリンダ室に接続され、前記第2シリンダ室への第1作動空気の供給及び前記第2シリンダ室内からの前記第1作動空気の排出を行う第2トリップ弁、及び前記第1及び第2トリップ弁のそれぞれへの第2作動空気の供給を制御する電磁弁を有する弁作動装置であって、前記電磁弁に電流が供給されているときには前記第2シリンダ室内の圧力が前記第1シリンダ室内の圧力よりも高くなるように前記第1及び第2トリップ弁を制御し、前記電磁弁に電流が供給されないときには前記第1シリンダ室内の圧力が前記第2シリンダ室内の圧力よりも高くなるように前記第1及び第2トリップ弁を制御する前記弁作動装置を設けた請求項1ないし4のいずれか1項に記載の原子炉隔離時冷却装置。
【請求項6】
前記第2開閉弁は、弁体に連結された鉄心、前記鉄心を取り囲む電磁コイル及び前記電磁コイルへの電流の供給が途絶えたときに前記鉄心を前記バイパス配管から離れる方向に移動させるばねを有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の原子炉隔離時冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉隔離時冷却装置に係り、特に、沸騰水型原子力プラントに適用するのに好適な原子炉隔離時冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子力プラントにおいて、原子炉は原子炉格納容器によって取り囲まれており、原子炉格納容器内に圧力抑制室が形成されている。この沸騰水型原子力プラントでは、原子炉にすべての制御棒が挿入された原子炉停止状態においても定格出力の数パーセントの崩壊熱が原子炉内の炉心で生じる。運転中の沸騰水型原子力プラントにおいて、何らかの要因により、原子炉の炉心内に全制御棒が挿入されて沸騰水型原子力プラントの運転が停止されると、原子炉に接続された主蒸気配管に設けられた主蒸気隔離弁が全閉状態になり、核燃料物質の崩壊熱により炉心で発生する蒸気が、主蒸気配管に設けられた逃し安全弁から原子炉圧力抑制室内の冷却水中に放出される。この蒸気の放出は、原子炉内の水位の低下をもたらす。
【0003】
このため、制御棒が炉心に全挿入されて原子炉が隔離された状態において原子炉内の炉心で発生する崩壊熱を除去する原子炉隔離時冷却装置が、上記の原子炉水位の低下を抑制するために用いられている。原子炉隔離時冷却装置は、核燃料物質の崩壊熱で発生する蒸気を原子炉から復水器の胴体内に設置された伝熱管内に導いてこの蒸気をその胴体内で伝熱管の外側に存在する冷却水と熱交換することにより除熱するシステムである。伝熱管内で蒸気の凝縮により生成された凝縮水は、原子炉圧力容器内に戻される。
【0004】
原子炉隔離時冷却装置の一例が、特開平4−27896号公報に記載されている。この原子炉隔離時冷却装置は、内部に伝熱管を設けた冷却水貯水槽を設け、この伝熱管の入口側に原子炉圧力容器に接続された蒸気配管を接続し、伝熱管の出口側に接続された復水配管を原子炉圧力容器に接続し、復水配管に流量調節弁を設けている。原子炉の隔離時事象が発生したときには、原子炉圧力容器内で崩壊熱により発生した蒸気が蒸気配管を通して伝熱管に導かれて凝縮され、発生した凝縮水が復水配管を通して原子炉圧力容器に戻される。このとき、計測された原子炉圧力を入力した制御装置が、流量調節弁の開度を調節し、原子炉圧力容器内に戻される凝縮水の量を調節する。このため、隔離時事象が発生したときにおいて、原子炉圧力容器内の圧力の低下を抑制し、この圧力を一定に保持する。
【0005】
また、特開平3−246492号公報に記載された原子炉隔離時冷却装置は、冷却水が充填されたプール内に配置された復水器を有し、復水器の伝熱管の一端を蒸気配管により原子炉圧力容器に接続し、その伝熱管の他端を復水配管により原子炉圧力容器に接続している。第1隔離弁が蒸気配管に設けられ、第3隔離弁が復水配管に設けられる。第2隔離弁が設けられた第1バイパス配管が、第1隔離弁をバイパスして蒸気配管に接続される。第4隔離弁が設けられた第2バイパス配管が、第3隔離弁をバイパスして復水配管に接続される。その原子炉隔離時冷却装置を起動するときには、第2及び第4隔離弁を開き、復水器の暖気に要する時間が経過した後に第1及び第3隔離弁を開く。このようにして、復水器の暖気を行っている。原子炉隔離時冷却装置が起動された後における原子炉圧力容器内の温度は、第2及び第4隔離弁のそれぞれの開度調整または第1及び第3隔離弁のそれぞれの開度調整により制御される。なお、第1隔離弁、第2隔離弁、第3隔離弁及び第4隔離弁の各開度は、制御装置によって制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−27896号公報
【特許文献2】特開平3−246492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特開平4−27896号公報に記載された原子炉隔離時冷却装置では、原子炉隔離時において電源喪失が生じている場合には、復水配管に設けられた流量調節弁を開くことができない。この結果、原子炉隔離時において、原子炉隔離時冷却装置による原子炉の冷却を行うことができなくなる。
【0008】
本発明の目的は、原子炉隔離時に電源喪失が生じていても原子炉を冷却することができる原子炉隔離時冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、伝熱管を有する復水器と、伝熱管の入口に連絡されて原子炉圧力容器内で生成された蒸気を伝熱管に導く蒸気供給管と、伝熱管の出口に連絡されて伝熱管から排出された凝縮水を原子炉圧力容器に導く凝縮水戻り管と、凝縮水戻り管に設けられて原子炉隔離時に開く第1開閉弁と、第1開閉弁をバイパスして両端が凝縮水戻り管に接続されるバイパス配管と、バイパス配管に設けられ、電源喪失時に開く第2開閉弁とを備えたことにある。
【0010】
電源喪失時に開く第2開閉弁を設けたバイパス配管を、第1開閉弁をバイパスさせて凝縮水戻り管に接続しているため、原子炉隔離時に電源喪失が生じて第1開閉弁を開くことができない場合でも、第2開閉弁を開くことができる。これにより、復水器の伝熱管内における蒸気の凝縮によって生じた凝縮水を、バイパス配管を通して原子炉圧力容器に導くことができ、原子炉を冷却することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、原子炉隔離時に電源喪失が生じていても原子炉を冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の原子炉隔離時冷却装置の構成図である。
【
図2】電源喪失時において
図1に示すバイパス弁を作動させる弁作動装置の構成図である。
【
図3】本発明の他の実施例である実施例2の原子炉隔離時冷却装置に用いられるバイパス弁の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0014】
本発明の好適な一実施例である実施例1の原子炉隔離時冷却装置を、
図1及び
図2を用いて説明する。
【0015】
本実施例の原子炉隔離時冷却装置3を、
図1を用いて説明する。原子炉隔離時冷却装置3は沸騰水型原子力プラントに適用される。この沸騰水型原子力プラントは、炉心2を内蔵する原子炉圧力容器1を有する。圧力計13及び水位計14が原子炉圧力容器1に設置される。圧力計13及び水位計14は作動信号発生装置15に接続される。
【0016】
原子炉隔離時冷却装置3は、伝熱管5を胴体内に設置した復水器4、蒸気供給管8、凝縮水戻り管9、復水弁10、制御装置11、バイパス配管16、バイパス弁17、及び弁作動装置27を備えている。原子炉圧力容器1に接続された蒸気供給管8が、復水器4の伝熱管5の入口部に接続される。蒸気供給管8の、原子炉圧力容器1における開口の位置は、原子炉圧力容器1内に形成される、沸騰水型原子力プラントの通常運転時における冷却水の液面よりも上方に位置している。その伝熱管7の出口部に接続された凝縮水戻り管9が、原子炉圧力容器1に接続される。凝縮水戻り管9の、原子炉圧力容器1における開口の位置は、原子炉圧力容器1内に形成される、沸騰水型原子力プラントの通常運転時における冷却水の液面よりも下方に位置している。電動弁である復水弁10が凝縮水戻り管9に設けられる。バイパス弁(開閉弁)17が設けられたバイパス配管16が復水弁10をバイパスして凝縮水戻り管9に接続される。流量制限オリフィス(流量制限装置)18がバイパス配管16に取り付けられる。
【0017】
バイパス弁17は、
図2に示すように、シリンダ19、ピストン20及び弁体21を有する。ピストン21がシリンダ19内に配置され、弁体21がロッドでピストン20に連結される。シリンダ室22及び23がシリンダ19内に形成される。シリンダ室23はピストン20よりも弁体21側に形成され、シリンダ室22がピストン20に対して弁体21とは反対側に形成される。
【0018】
弁作動装置27が、トリップ弁24,25及び電磁弁26を有する。トリップ弁24,25は空気作動弁である。トリップ弁24のAが配管36によってシリンダ19に接続されてシリンダ室22に連絡される。トリップ弁24のPが配管38でボリュームタンク32に接続される。シリンダ19に接続されてシリンダ室23に連絡される配管37が、トリップ弁25のAに接続される。トリップ弁25のEが配管39により配管38に接続される。トリップ弁25のPは配管31により計装用空気源28に接続される。逆止弁29が配管31に設けられる。
【0019】
トリップ弁24に駆動用空気を供給する配管40が電磁弁26のAに接続される。トリップ弁25に駆動用空気を供給する配管41が配管40に接続される。電磁弁26のPに接続される配管30が逆止弁29と計装用空気源28の間で配管31に接続される。トリップ弁24のE及び電磁弁26のEはどこにも接続されていない。電源12が制御装置11及び電磁弁26に接続される。制御装置11には作動信号発生装置15も接続される。
【0020】
沸騰水型原子力プラントの通常運転時では、復水弁10が閉じられており、原子炉圧力容器1内で発生した蒸気が原子炉隔離時冷却装置3の復水器4に流入することが阻止されている。
【0021】
原子炉圧力容器1内の水位が水位計14で計測され、原子炉圧力容器1内の圧力が圧力計13で計測される。計測された水位及び圧力が作動信号発生装置15に入力される。圧力計13で計測された圧力が設定圧力以上になったとき、または、水位計14で計測された水位が設定水位以下になったとき、作動信号発生装置15から制御装置11に作動信号が出力される。作動信号発生装置15から出力された作動信号を入力された制御装置11は、復水弁10を開く。復水弁10が開いたとき、原子炉隔離時冷却装置3が起動される。すなわち、原子炉隔離時に、原子炉隔離時冷却装置3が起動される。また、沸騰水型原子力プラントの運転中に、計測された圧力が設定圧力以上になったとき、または、計測された水位が設定水位以下になったときには、全制御棒が炉心に挿入され、沸騰水型原子力プラントの運転が停止され、原子炉圧力容器1に接続された主蒸気配管(図示せず)に設けられた主蒸気隔離弁(図示せず)が閉止される。
【0022】
沸騰水型原子力プラントの運転が停止されているときに、原子炉圧力容器1内の炉心において核燃料物質の崩壊熱により発生した蒸気は、原子炉隔離時において復水弁10が開いたときに、蒸気供給管8を通って復水器4の伝熱管5内に導かれる。復水弁10の開度は電源12から電流が供給される制御装置11によって調節される。伝熱管5内の蒸気は、伝熱管5の外側で復水器4の胴体内に存在する水6によって凝縮され、凝縮水7になる。この凝縮水7は、伝熱管5から凝縮水戻り管9内に排出される。電源12が正常であるとき、この凝縮水7が凝縮水戻り管9を通って原子炉圧力容器1内に導かれ、炉心2が凝縮水7によって冷却される。
【0023】
電源12が正常状態にあって復水弁10が開いているとき、バイパス弁17が閉じている。電源12が正常状態であるときにおけるバイパス弁17の閉動作について説明する。電源12の正常状態時においては、電源12から電磁弁26に電流が供給されるため、電磁弁26は、A及びPを開放してEを閉止している。このため、計装用空気源28からの空気が、配管31,30を経由して電磁弁26に達した加圧空気が、電磁弁26のP,Aを通って配管40に排出され、トリップ弁24に供給される。また、配管40に排出された加圧空気の一部は配管41を通ってトリップ弁25に供給される。トリップ弁24,25のそれぞれは、加圧空気の作用によってA及びPが開放され、Eが閉止される。このため、ボリュームタンク32内の加圧空気が、配管41、トリップ弁24のP及びA、及び配管36を通ってシリンダ室22に供給される。また、計装用空気源28が、配管31、トリップ弁25のP及びA、及び配管37を通してシリンダ室23に連絡される。ボリュームタンク32内の加圧空気の圧力が計装用空気源28の加圧空気の圧力よりも高いので、ピストン20がシリンダ室23に向かって移動し、バイパス配管16がバイパス弁17の弁体21によって閉止される。
【0024】
沸騰水型原子力プラントの運転が停止されて、万が一、電源12が喪失した場合には、復水弁10が閉止状態になっている。電源12の喪失時、すなわち、電源12から電磁弁26に電流が供給されなくなったとき、電磁弁26はA及びEが開放されてPが閉止される。このため、トリップ弁24,25の駆動用空気である、計装用空気源28の加圧空気が、電磁弁26からトリップ弁24,25のそれぞれに供給されなくなり、トリップ弁24,25のそれぞれではA及びEが開放されてPが閉止される。ボリュームタンク32内の加圧空気が配管38,39、トリップ弁25のE及びA、及び配管37を通してシリンダ室23に供給される。シリンダ室22内の加圧空気は、配管36、及びトリップ弁24のA及びEを通して外部に排気される。このため、ピストン20がシリンダ室22側に移動して弁体21を持ち上げる。バイパス弁17が開放される。
【0025】
本実施例では、上記したように、原子炉隔離時において、万が一、電源が喪失した場合でもバイパス弁17が開放されるため、原子炉圧力容器1内の炉心2で核燃料物質の崩壊熱により発生した蒸気は、前述したように、復水器4の伝熱管5内で凝縮される。この蒸気の凝縮により発生した凝縮水7は、凝縮水戻り管9に排出され、バイパス配管16を通って原子炉圧力容器1に導かれる。
【0026】
本実施例では、電源12から電流が制御装置11に供給される状態において、原子炉が隔離されたとき、制御装置11によって復水弁10が開放されるため、原子炉圧力容器1内の炉心2で核燃料物質の崩壊熱により発生した蒸気を、復水器4の伝熱管5内で凝縮させることができる。発生した凝縮水7は、復水弁10を通して原子炉圧力容器1内に導かれる。このように、電源12から電流が供給されるときには、復水弁10を開いて原子炉を冷却することができる。
【0027】
原子炉隔離時において電源が喪失したときには、復水弁10が全閉状態になっており、前述したように、弁作動装置27によってバイパス弁17を開くことができる。このため、原子炉隔離時に炉心2で核燃料物質の崩壊熱によって発生した蒸気が伝熱管5内で凝縮され、生成された凝縮水7が凝縮水戻り管9、バイパス配管16及び凝縮水戻り管9を順次通って原子炉圧力容器1内に導かれて原子炉が冷却される。このとき、凝縮水7は復水弁10を通過しない。また、凝縮水7が原子炉圧力容器1内に導かれるために、原子炉圧力容器1内の水位は実質的に変化しない。
【0028】
バイパス配管16に設けられている流量制限オリフィス18によって、原子炉圧力容器1に導かれる凝縮水7の流量が制限される。すなわち、流量制限オリフィス18は、凝縮水7が過度に原子炉圧力容器1内に流入することを制限している。このため、原子炉圧力容器1内の温度減少率が制限値よりも大きくなることを防止できる。電源12から電流が供給されるときには、復水弁10の開度が調節されて原子炉圧力容器1に導かれる凝縮水7の流量が調節され、原子炉圧力容器1内の温度減少率が制限値よりも大きくなることを防止できる。電源が喪失しているときには、バイパス弁17の開度を調節することができないので、流量制限オリフィス18によって、原子炉圧力容器1に導かれる凝縮水7の流量を制限している。
【実施例2】
【0029】
本発明の他の実施例である実施例2の原子炉隔離時冷却装置を、
図3を用いて説明する。
【0030】
本実施例の原子炉隔離時冷却装置は、実施例1の原子炉隔離時冷却装置3においてバイパス弁17をバイパス弁17Aに替えた構成する。バイパス弁17Aを用いることによって、実施例1で用いた弁作動装置27が不要になる。本実施例の原子炉隔離時冷却装置の他の構成は実施例1の原子炉隔離時冷却装置3と同じである。
【0031】
本実施例で用いられるバイパス弁17Aの詳細な構造を、以下に説明する。バイパス弁17Aは、鉄心36、電磁コイル33、ばね(圧縮ばね)34及び弁体21を有する。鉄心36、電磁コイル33及びばね34は、ケース内に設置されている。弁体21は、鉄心36に取り付けられてケースを貫通するロッドに取り付けられる。電磁コイル33は鉄心32を取り囲んでいる。ばね34は、ケースに取り付けられて鉄心32を支えている。電磁コイル33は電源35に接続される。
【0032】
原子炉隔離時において電源が喪失していないときには、電源35から電磁コイル33に電流が供給されて電磁コイル33が励磁される。鉄心32が電磁コイル33の励磁によって下方に引き付けられ、弁体21によってバイパス配管16が封鎖されている。本実施例では、原子炉隔離時に、炉心2において核燃料物質の崩壊熱で発生した蒸気が、復水器4の伝熱管5内で凝縮される。電源が喪失していないときには、実施例1と同様に、復水弁10が開放されるので、伝熱管5内で生成された凝縮水7が、バイパス配管16ではなく、凝縮水戻り管9を通って原子炉圧力容器1内に導かれる。なお、原子力プラントの通常運転時においても、電磁コイル33が励磁されて鉄心32が電磁コイル33の励磁によって下方に引き付けられ、バイパス配管16が弁体21によって封鎖されている。
【0033】
原子炉隔離時において電源が喪失したときには、復水弁10は閉じたままである。電源35からバイパス弁17Aの電磁コイル33に電流が供給されないので、電磁コイル33は励磁されず、鉄心32はばね34によって上方に向かって押し上げられる。弁体21が上方に引き上げられ、バイパス弁17Aが開放される。このとき、伝熱管5内で生成された凝縮水7がバイパス配管16を通って原子炉圧力容器1内に導かれ、炉心2が冷却される。
【0034】
本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。また、電源喪失で解放されるバイパス弁17Aをバイパス配管16に設けているので、本実施例は、弁作動装置27が不要になり、実施例1の原子炉隔離時冷却装置3よりも構成が単純化される。
【符号の説明】
【0035】
1…原子炉圧力容器、2…炉心、3…原子炉隔離時冷却装置、4…復水器、5…伝熱管、8…蒸気供給管、9…凝縮水戻り管、10…復水弁、11…制御装置、10…水位計、11…蒸気供給管、13…圧力計、14…水位計、15…作動信号発生装置、16…バイパス配管、17,17A…バイパス弁、18…流量制限オリフィス、19…シリンダ、20…ピストン、21…弁体、24,25…トリップ弁、26…電磁弁、27…弁作動装置、32…鉄心、33…電磁コイル、34…ばね。