特許第5696078号(P5696078)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5696078
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】放射線測定装置及びその測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/00 20060101AFI20150319BHJP
   G01T 1/20 20060101ALI20150319BHJP
   G01T 1/167 20060101ALI20150319BHJP
   G01T 1/203 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   G01T1/00 A
   G01T1/20 B
   G01T1/167 C
   G01T1/203
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-64869(P2012-64869)
(22)【出願日】2012年3月22日
(65)【公開番号】特開2013-195320(P2013-195320A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2014年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】蒲生 秀穂
(72)【発明者】
【氏名】近藤 正弘
(72)【発明者】
【氏名】田山 隆一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 義大
【審査官】 秋田 将行
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−092789(JP,A)
【文献】 特開平07−035866(JP,A)
【文献】 特開平07−035867(JP,A)
【文献】 特開平08−094758(JP,A)
【文献】 特開平10−197645(JP,A)
【文献】 特開2001−013254(JP,A)
【文献】 特開2001−281337(JP,A)
【文献】 特開2002−006045(JP,A)
【文献】 特開2003−090884(JP,A)
【文献】 特開2006−343144(JP,A)
【文献】 特開2007−192548(JP,A)
【文献】 特開2009−198365(JP,A)
【文献】 特表2012−520448(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/103071(WO,A1)
【文献】 米国特許第05264702(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00 − 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境中の被測定対象物の放射線を検出する放射線検出器と、該放射線検出器で発生した光信号を電気信号に変換・増幅する光電子増倍管と、該光電子増倍管からの信号を電気信号に増幅するプリアンプと、該プリアンプで増幅された電気信号を時間分解能向上のために信号波形前処理を行う信号波形前処理装置と、該信号波形前処理装置からの信号を、スタート信号とストップ信号の時間間隔調整を行うディレイ装置と、該ディレイ装置からの信号を、時間間隔を出力の大小に変換する入力時間差波高変換が行われる時間波高変換機と、該時間波高変換機からの出力信号を、信号の強度に応じて分別する多重波高分析器と、該多重波高分析器からの出力信号を可視化する出力装置とを備えた放射線測定装置において、
前記放射線検出器は、プラスチックシンチレーションファイバーから成り、該プラスチックシンチレーションファイバーは、前記被測定対象物の放射線レベルに応じて、その本数を変えて前記光電子増倍管に接続され、中央部に前記プラスチックシンチレーションファイバーが差込まれる少なくとも1つの差込み口が形成されているプラグを介して、前記光電子増倍管に接続されていると共に、前記プラグは、前記光電子増倍管側のソケットに設けられた開口部を介して挿入されて前記光電子増倍管に接続され、前記ソケットは、該ソケットの開口部の外側を囲むように、上方に突出した案内部が形成され、その案内部と前記プラスチックシンチレーションファイバーの間にはスプリングが配置され、この状態で前記案内部の外周にキャップをねじ込むことで一体化され、前記プラグとソケットは、前記キャップを、前記案内部の外周部にねじ込んで両者を一体化するカセット式になっており、かつ、前記プラスチックシンチレーションファイバーは、その先端部を除く部分がポリ塩化ビニルチューブで被覆されていると共に、前記プラグの差込み口に差込まれた前記プラスチックシンチレーションファイバーとプラグの間に、黒色シリコン材が充填されていることを特徴とする放射線測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線測定装置において、
前記光電子増倍管及びプリアンプで1つのユニット、前記信号波形前処理装置、ディレイ装置、時間波高変換機及び多重波高分析器で1つのユニットを構成していることを特徴とする放射線測定装置。

【請求項3】
請求項1又は2に記載の放射線測定装置において、
前記プラスチックシンチレーションファイバーを、金属フレキシブル管で覆ったことを特徴とする放射線測定装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の放射線測定装置において、
前記放射線測定装置に、全地球測位システムが組み込まれていることを特徴とする放射線測定装置。
【請求項5】
環境中の被測定対象物の放射線を放射線検出器で検知して光信号に変更するステップ(S1)と、該ステップ(S1)で変更された光信号を、光電子増倍管で電気信号に変換・増幅するステップ(S2)と、該ステップ(S2)からの電気信号を、プリアンプで信号処理装置への入力前に電気信号を増幅するステップ(S3)と、該ステップ(S3)で増幅された電気信号を、信号波形前処理装置で時間分解能向上のために信号波形前処理を行うステップ(S4)と、該ステップ(S4)からの信号を、ディレイ装置でスタート信号とストップ信号の時間間隔調整のための信号遅延処理を行うステップ(S5)と、前記ステップ(S5)の信号が入力された時間波高変換機で、時間間隔を出力の大小に変換する入力時間差波高変換がおこなわれるステップ(S6)と、該ステップ(S6)からの信号を、多重波高分析器で信号の強度に応じて分別する多重波高分析が行われるステップ(S7)と、該ステップ(S7)での結果に基づく出力信号を、出力装置に可視化するステップ(S8)とから成る放射線測定方法において、
前記放射線検出器を、プラスチックシンチレーションファイバーとし、前記被測定対象物の放射線レベルに応じて、前記プラスチックシンチレーションファイバーの本数を変えて前記被測定対象物の放射線を測定する際に、
前記プラスチックシンチレーションファイバーは、前記被測定対象物の放射線レベルに応じて、その本数を変えて前記光電子増倍管に接続され、中央部に前記プラスチックシンチレーションファイバーが差込まれる少なくとも1つの差込み口が形成されているプラグを介して、前記光電子増倍管に接続されていると共に、前記プラグは、前記光電子増倍管側のソケットに設けられた開口部を介して挿入されて前記光電子増倍管に接続され、前記ソケットは、該ソケットの開口部の外側を囲むように、上方に突出した案内部が形成され、その案内部と前記プラスチックシンチレーションファイバーの間にはスプリングが配置され、この状態で前記案内部の外周にキャップをねじ込むことで一体化され、前記プラグとソケットは、前記キャップを、前記案内部の外周部にねじ込んで両者を一体化するカセット式になっており、かつ、前記プラスチックシンチレーションファイバーは、その先端部を除く部分がポリ塩化ビニルチューブで被覆されていると共に、前記プラグの差込み口に差込まれた前記プラスチックシンチレーションファイバーとプラグの間に、黒色シリコン材が充填されていることを特徴とする放射線測定方法。
【請求項6】
請求項に記載の放射線測定方法において、
全地球測位システムによる位置情報を、前記被測定対象物の放射線測定結果の情報に組み合わせて出力することを特徴とする放射線測定方法。
【請求項7】
請求項5に記載の放射線測定方法において、
事前に算出した前記プラスチックシンチレーションファイバーの断面積と放射線レベルの関係に基づいて、前記プラスチックシンチレーションファイバーの本数を定めることを特徴とする放射線測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放射線測定装置及びその測定方法に係り、特に、環境中に放出された放射性物質によって汚染された土壌、建物、森林、その他さまざまな物に付着した放射性物質から放出される放射線を測定するものに好適な放射線測定装置及びその測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所での汚染管理等では、プラスチックシンチレーションファイバー(以下、PSFという)を用いて放射線を測定することが行われている。このPSFを用いた測定技術としては、例えば、特許文献1に記載されたものがある。
【0003】
この特許文献1に記載されている測定技術は、箱型の測定装置室に被検体である作業者が入室し、測定装置室の周囲に張り巡らせたPSFを使用して、被検体表面に付着した放射能を面的に測定するものである。
【0004】
この特許文献1には、被検体の表面に付着した放射能を測定するためには、複数の放射線検出器の設置が必要であるが、これでは測定装置全体の構成が大きくなってしまい、臨界事故等の放射能汚染に対応して複数の放射線検出器を移動、設置することが困難であることから、PSFをプレート状に束ねて検出器を形成し、この検出器を被検者の周囲に配置し、放射線検出器のコンパクト化を図った放射線検出装置が記載されている。
【0005】
従来技術によるPSFを用いた一般的な放射線測定装置の一例を、図4を用いて説明する。
【0006】
図4に示すように、従来の放射線測定装置は、環境中の放射線を検出するPSF(放射線検出器)1と、PSF1で発生した光信号を電気信号に変換・増幅する光電子増倍管(以下、PMTという)2と、PMT2からの信号を電気信号に増幅するプリアンプ3と、時間分解能向上のための信号波形前処理装置(以下、CFDという)4と、スタート信号とストップ信号の時間間隔調整用のディレイ装置5と、時間間隔を出力の大小に変換する時間波高変換機(以下、TACという)6と、出力信号を信号の強度に応じて分別する多重波高分析器(以下、MCAという)7と、2つの系統の各機器に電力を供給する2つの電源装置8A、8Bと、出力信号を可視化するPC等からなる出力装置9とから概略構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−281337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来技術の放射線測定装置の構成では、被測定対象物の放射線レベルが有る程度既知の状態で使用する前提で開発されていること、予備測定等で放射線レベルを予測することで、使用目的に合わせた最適な測定レンジにターゲットを絞って感度の調整が可能であったことから、PSF1とPMT2については、常時接続したままの構造になっている。また、PSF1とPMT2の接合部は、常時接続する仕様であるため、PSF測定装置で問題となる光学的ノイズの原因である、不要な光の進入を防止する遮光材料に対して、物理的な強化対策は考慮されていない。
【0009】
また、PSF測定装置は、原子力施設の建物内や実験設備等、屋内で固定設置された使用を前提としているため、装置が大型で重量があり、PSF測定装置の構成要素である電子機器同士を接続する配線も多く、防水対策も実施されていない。
【0010】
よって、環境放射線測定を対象として、そのまま移動させて樹木や建物の壁面など垂直方向の測定及び広い平面を一括測定するような使用方法や、全地球測位システム(以下、GPSという)による位置情報(緯度経度等)を測定結果の情報に組み合わせて出力する機能も待たない。
【0011】
即ち、従来技術のPSF測定装置では、放射線レベルが未知の被測定対象物を測定する場合には、さまざまな感度を有する測定装置一式を複数準備する必要があり、運搬に多大な労力を要し、コストが高額になるといった課題がある。
【0012】
また、従来技術のままPSF1を脱着することを想定した場合、PSF1とPMT2の接合部が、光学的ノイズの原因となる不用な光が進入し易い構造であるため、遮光の強化が必要となる。しかし、複雑な形状を有するPSF1とPMT2の接合部に適用可能で十分な遮光性能を有する材料が、放射線測定分野では存在しないこと、遮光性能が確保された接合方法が存在しないことより、遮光が不十分となる課題があった。
【0013】
また、PSF測定装置は、大型で重量があり、かつ、精密機器の集合体であるため衝撃に弱く、容易に移動させることは困難であったため、任意の場所へ運搬して測定することや、運搬しながらの測定は難しいといった課題があった。
【0014】
また,従来技術のPSF測定装置では、過酷な使用環境における測定を実施する場合(例えば、水中、埃の多い場所において、作業者がPSFを引きずって使用するような状態の場合)には、精密機械の接続強度が低く接触不良が発生し、遮光材料が破損し測定できなくなり、水分の混入により精密機器が故障するといった課題があった。
【0015】
また、従来技術のPSF測定装置では、環境中に広域に分布した放射性物質を測定することを想定していないため、測定結果と測定位置(東経北緯等)の情報を一対として記録する概念が無く、広域的な放射線率分布を可視化するためのマッピングシステムとのインターフェースが確立されていないことから、測定結果と別に測定位置の情報を別途記録し両者の整合性を確保する必要が発生し、確認作業の増加、測定結果の品質低下を発生させる課題があった。
【0016】
一方、環境放射線の測定において主な方法であるサーベイメータによる点的な測定手法を、測定時間の短縮と局所的な高線量場(以下、ホットスポットという)の見落としを防止するために、PSF1を使用した線的な測定手法へ改良する際、従来技術をそのまま適用することには課題があった。
【0017】
特に、PSF1が有する測定感度は、PSF1の有感体積に大きく依存するため、PSF1の本数や断面積に応じて測定レンジが限定されることが問題であった。これにより、被測定対象物の放射線レベルが不明な状況で測定せざるを得ない場合、多様な感度を有する復数台のPSF測定装置を準備することで対応しなければならなかった。
【0018】
このような状況において、PSF測定装置を放射性物質によって汚染された環境の放射線測定に適用した場合、迅速で正確な測定性能を有するPSFの有効性は、可搬性やコスト面のデメリットによって相殺され、実際に環境の放射線測定には適用できないのが現状であった。
【0019】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、被測定対象物の放射線レベルが不明である場合でも、可搬性やコスト面でのデメリットを伴わずに効率的な測定が実現できることは勿論、高レベルから低レベルまでの広範囲の放射線レベルを1台で測定できる放射線測定装置及びその測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の放射線測定装置は、上記目的を達成するために、環境中の被測定対象物の放射線を検出する放射線検出器と、該放射線検出器で発生した光信号を電気信号に変換・増幅する光電子増倍管と、該光電子増倍管からの信号を電気信号に増幅するプリアンプと、該プリアンプで増幅された電気信号を時間分解能向上のために信号波形前処理を行う信号波形前処理装置と、該信号波形前処理装置からの信号を、スタート信号とストップ信号の時間間隔調整を行うディレイ装置と、該ディレイ装置からの信号を、時間間隔を出力の大小に変換する入力時間差波高変換が行われる時間波高変換機と、該時間波高変換機からの出力信号を、信号の強度に応じて分別する多重波高分析器と、該多重波高分析器からの出力信号を可視化する出力装置とを備えた放射線測定装置において、前記放射線検出器は、プラスチックシンチレーションファイバーから成り、該プラスチックシンチレーションファイバーは、前記被測定対象物の放射線レベルに応じて、その本数を変えて前記光電子増倍管に接続され、中央部に前記プラスチックシンチレーションファイバーが差込まれる少なくとも1つの差込み口が形成されているプラグを介して、前記光電子増倍管に接続されていると共に、前記プラグは、前記光電子増倍管側のソケットに設けられた開口部を介して挿入されて前記光電子増倍管に接続され、前記ソケットは、該ソケットの開口部の外側を囲むように、上方に突出した案内部が形成され、その案内部と前記プラスチックシンチレーションファイバーの間にはスプリングが配置され、この状態で前記案内部の外周にキャップをねじ込むことで一体化され、前記プラグとソケットは、前記キャップを、前記案内部の外周部にねじ込んで両者を一体化するカセット式になっており、かつ、前記プラスチックシンチレーションファイバーは、その先端部を除く部分がポリ塩化ビニルチューブで被覆されていると共に、前記プラグの差込み口に差込まれた前記プラスチックシンチレーションファイバーとプラグの間に、黒色シリコン材が充填されていることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の放射線測定方法は、上記目的を達成するために、環境中の被測定対象物の放射線を放射線検出器で検知して光信号に変更するステップ(S1)と、該ステップ(S1)で変更された光信号を、光電子増倍管で電気信号に変換・増幅するステップ(S2)と、該ステップ(S2)からの電気信号を、プリアンプで信号処理装置への入力前に電気信号を増幅するステップ(S3)と、該ステップ(S3)で増幅された電気信号を、信号波形前処理装置で時間分解能向上のために信号波形前処理を行うステップ(S4)と、該ステップ(S4)からの信号を、ディレイ装置でスタート信号とストップ信号の時間間隔調整のための信号遅延処理を行うステップ(S5)と、前記ステップ(S5)の信号が入力された時間波高変換機で、時間間隔を出力の大小に変換する入力時間差波高変換がおこなわれるステップ(S6)と、該ステップ(S6)からの信号を、多重波高分析器で信号の強度に応じて分別する多重波高分析が行われるステップ(S7)と、該ステップ(S7)での結果に基づく出力信号を、出力装置に可視化するステップ(S8)とから成る放射線測定方法において、前記放射線検出器を、プラスチックシンチレーションファイバーとし、前記被測定対象物の放射線レベルに応じて、前記プラスチックシンチレーションファイバーの本数を変えて前記被測定対象物の放射線を測定する際に、前記プラスチックシンチレーションファイバーは、前記被測定対象物の放射線レベルに応じて、その本数を変えて前記光電子増倍管に接続され、中央部に前記プラスチックシンチレーションファイバーが差込まれる少なくとも1つの差込み口が形成されているプラグを介して、前記光電子増倍管に接続されていると共に、前記プラグは、前記光電子増倍管側のソケットに設けられた開口部を介して挿入されて前記光電子増倍管に接続され、前記ソケットは、該ソケットの開口部の外側を囲むように、上方に突出した案内部が形成され、その案内部と前記プラスチックシンチレーションファイバーの間にはスプリングが配置され、この状態で前記案内部の外周にキャップをねじ込むことで一体化され、前記プラグとソケットは、前記キャップを、前記案内部の外周部にねじ込んで両者を一体化するカセット式になっており、かつ、前記プラスチックシンチレーションファイバーは、その先端部を除く部分がポリ塩化ビニルチューブで被覆されていると共に、前記プラグの差込み口に差込まれた前記プラスチックシンチレーションファイバーとプラグの間に、黒色シリコン材が充填されていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の放射線測定装置の実施例1であるPSF測定装置の詳細構成を示す図である。
図2図1に示したPSF測定装置のユニット化した概略構成を示す斜視図である。
図3図1に示したPSF測定装置における測定方法を示すフローチャートである。
図4】従来技術によるPSF測定装置の構成を示す図である。
図5図1に示したPSF測定装置における放射線レベルとPSF断面積(PSF本数)との関係を示す特性図である。
図6a図1に示したPSF測定装置に採用される1本用のプラグを示す縦断面図である。
図6b図6aの横断面図である。
図7a図1に示したPSF測定装置に採用される7本用のプラグを示す縦断面図である。
図7b図7aの横断面図である。
図8a図7aに示したPSF測定装置に採用される7本用のプラグがソケットと組合された状態を示す横断面図である。
図8b図8aの横断面図である。
図9図8aの組立状態からの分解状態を示す分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図示した実施例に基づいて本発明の放射線測定装置及びその測定方法を説明する。尚、符号は、従来と同一のものは、同符号を使用する。
【実施例1】
【0024】
図1及び図2に、本発明の放射線測定装置の実施例1であるPSF測定装置を示す。
【0025】
該図に示す如く、本実施例のPSF測定装置は、環境中の被測定対象物の放射線レベルに応じて本数が変えられ、さまざまな有感体積を持つカセット式に取替可能で、かつ、放射線を検出し光信号に変換するPSFを束ねて後述するポリ塩化ビニル(PVC)で被覆されたバンドル(以下、PSFバンドル1とする)と、PSFバンドル1で発生した光信号を電気信号に変換・増幅するPMT2と、信号処理装置への入力前に電気信号を増幅するプリアンプ3と、時間分解能向上のためのCFD4と、スタート信号とストップ信号の時間間隔調整用のディレイ装置5と、時間間隔を出力の大小に変換するTAC6と、出力信号を信号の強度に応じて分別するMCA7と、PSF測定装置の各構成要素である電子機器に電力を供給する電源装置8と、出力信号を可視化するPC等の出力装置9とから概略構成されている。このうち、図2に示す如く、PMT2とプリアンプ3はユニット1(10)、CFD4、ディレイ装置5、TAC6、MCA7及び電源装置8はユニット2(11)に纏めた構成となっている。
【0026】
そして、本実施例のPSF測定装置は、被測定対象物の放射線レベルに応じて,PSFの本数を調整することで有感体積を任意に変更にすることを可能にしている。即ち、放射線レベルが未知の被測定対象物を測定する場合であっても、さまざまな感度を有するPSF測定装置の一式を準備することなく対応を可能にするため、複数の感度を有するPSFバンドル(放射線検出器)1をあらかじめ準備し、放射線レベルに応じて交換して使用できる構成となっている。
【0027】
次に、実施例1のPSF測定装置における放射線測定方法を図3を用いて説明する。
【0028】
該図に示す如く、本実施例のPSF測定装置における放射線測定方法は、環境中の被測定対象物の放射線レベルに応じて本数が変えられ、さまざまな有感体積を持つカセット式に取替可能なPSFバンドル1で、放射線を検知して光信号に変更するステップ(S1)と、ユニット1(10)のPMT2で、PSFバンドル1で発生した光信号を電気信号に変換・増幅するステップ(S2)と、ステップ(S2)からの電気信号を、プリアンプ3で信号処理装置への入力前に電気信号を増幅するステップ(S3)と、ステップ(S3)で増幅された電気信号を、ユニット2(11)のCFD4で時間分解能向上のために信号波形前処理を行うステップ(S4)と、一方の系統のステップ(S4)からの信号を、ディレイ装置5でスタート信号とストップ信号の時間間隔調整のための信号遅延処理を行うステップ(S5)と、一方のステップ(S5)と他方のステップ(S4)の信号が入力されたTAC6で、時間間隔を出力の大小に変換する入力時間差波高変換がおこなわれるステップ(S6)と、ステップ(S6)からの信号を、MCA7で信号の強度に応じて分別する多重波高分析が行われるステップ(S7)と、ステップ(S7)での結果に基づいて、出力装置9には、検出位置情報表示(ステップ(S8))及び放射線量率表示(ステップ(S9))が行われる。
【0029】
尚、図3において、電源装置8Aの電池13は、位置測定装置(例えば、GPS)14へ電気を供給し、位置測定装置14の出力(東経北緯情報)は、最終的にPSFの線量率測定結果の出力と合体して、出力装置9に測定位置情報15として表示される。
【0030】
ところで、高線量場に有感面積が大きい(PSF本数が多い)測定装置を使用する場合、大量の光信号が発生し処理装置が飽和することで測定不能になる問題が発生する。一方、低線量場に有感面積が小さい(PSF本数が少ない)測定装置を使用する場合、放射線を十分感知できずに、現実的な測定時間で統計的な信頼性を有するだけの最低限必要な計数率が得られない問題が発生する。
【0031】
そこで、PSF断面積(PSF本数)当たりの適切な放射線レベルを実験により調査し、環境中の放射性物質で汚染された被測定対象物に適したPSF断面積(PSF本数)を決定した。
【0032】
放射線レベルとPSF断面積(PSF本数)の適切な組合せを表1に示す。この表1に示す組合せは、今回始めて、本発明者等が行った放射線計測器用校正施設における照射実験によって決定された数値であり、従来は得られていなかった知見である。
【0033】
また、PSFの長さについても、得られる光信号のPSF内での減衰を考慮した数値であり、信頼できる測定結果を得られることを確認している。
【0034】
【表1】
【0035】
尚、上記を達成する場合の信号処理系の仕様は以下のとおりである。
・PMT:立ち上がり時間 1ns以下
・プリアンプ:立ち上がり時間 1ns以下
・TAC:レンジ300ns
・MAC:最大計数率 10kcps
この結果に基づき、最適なPSF断面積(PSF本数)を有するPSFバンドルを、被測定対象物の放射線レベルに応じて付け替え可能とし、PSFから出力される光信号を常に一定とすることで、検出器以降の信号処理装置の負荷も常に一定とすることが可能になり、検出器以外の信号処理系装置は1つだけ準備すれば、どのような放射線レベルの測定に対しても対応が可能になった。
【0036】
尚、バンドル数と対応した放射線レベルは、表1に記載された数値と範囲に限定される値ではなく、それ以外の組み合わせについては、内外挿により求めた図5に示す放射線レベル(μSv/h)とPSF断面積(mm)の関係により確認することができる。
【0037】
図5は、3件の実験データより内外挿によって求めた、PSF断面積に応じた測定可能範囲を示すものである。これに基づき、測定したい線量領域に応じたPSFの本数や外径などを決める目安にする。
【0038】
図5の測定下限は、1秒測定時に測定結果の誤差が1σと定義された場合、その統計誤差が10%に収まるのに必要になる最低の信号検出数100カウントが必要な線量率より決めている。また、図5の測定上限は、検出信号数が多すぎて信号処理系(図1のユニット2)がオーバーフローすることにより、処理不能になる限界を示す。これについては、上述した信号処理系の仕様に応じて決まる。
【0039】
次に、本実施例のPSF測定装置において、環境中の被測定対象物の放射線レベルに応じて本数が変えられ、さまざまな有感体積を持つカセット式に取替可能で、かつ、放射線を検出し光信号に変換するPSFバンドル1とPMT2の接続構成について、図6a乃至図9を用いて説明する。
【0040】
図6a及び図6bに、PSFバンドル1が1本差込まれる1本用プラグ16を示す。該図に示す如く、真鍮から成る円柱状の1本用プラグ16は、その略中央部に、1本差込み用のPSF差込口16Aが形成され、このPSF差込口16Aに1本のPSFバンドル1が差込まれるものである。
【0041】
図7a及び図7bに、PSFバンドル1が7本差込まれる7本用プラグ17を示す。該図に示す如く、真鍮から成る円柱状の7本用プラグ17は、その略中央部に、7本差込み用のPSF差込口17Aが形成され、このPSF差込口17Aに7本のPSFバンドル1が差込まれる(中央に1本のPSFバンドル1が配置され、その周囲を6本のPSFバンドル1が取り囲むように配置される)ものである。
【0042】
図8a及び図8bに、PSF差込口17Aに7本のPSFバンドル1が差込まれた7本用プラグ17が、PMT2に接続された状態を示す。
【0043】
該図に示す如く、PSF差込口17Aに7本のPSFバンドル1が差込まれた7本用プラグ17が、PMT2側のソケット18の開口部18Aから挿入され、PSFバンドル1とPMT2が接続部19で接続されるものである。ソケット18は、開口部18Aの外側を囲むように、上方に突出した円筒状の案内部18Bが形成されていると共に、その案内部18BとPSFバンドル1の間にはスプリング20が配置され、しかも、案内部18Bの外周側にはねじが切られており、内側にねじが切られ、かつ、ステンレス鋼から成るキャップ21を、案内部18Bの外周部にねじ込むことで、ソケット18と7本用プラグ17が一体化されている。つまり、この7本用プラグ17とソケット18は、7本用プラグ17のキャップ21を、案内部18Bの外周部にねじ込むだけで、両者を一体化できるカセット式になっている。
【0044】
ところで、複数種類(PSFの本数或いは外径が異なるPSFの集まり)のPSFバンドル1を準備することで、PSFバンドル1側の接続プラグの外径も複数種類になるが、信号処理装置側のソケット18は、1種類で対応させることが要求される。
【0045】
よって、プラグは、最大PSF本数のバンドルに併せて作成する必要があるが、この場合、1本のPSFバンドル1の1本用プラグ16では、11本分の不必要なスペースが、12本バンドルと比較して発生する。この余分なスペースの存在は、光学的ノイズの原因となる測定に無関係の光進入リスクを高めるため、従来技術と同様の遮光対策では不十分であった。
【0046】
そこで、本実施例でのPSFバンドル1は、バンドル数に対応した内径のポリ塩化ビニル(PVC)チューブ22で被覆され(先端部分は被覆されていない裸)、プラグは予めPSF本数分の穴加工を施しておき、不要スペースを最小化すると共に、放射線測定分野では、使用実績が無かった黒色シリコン材23を使用し、この黒色シリコン材23を残留する隙間に注射器で注入することで遮光し、無用な光の進入リスクを低減している。本実施例では、7本用プラグ17の差込み口17Aに差込まれたPSFバンドル1と7本用プラグ17の間に、黒色シリコン材23が充填されている(黒色シリコン材23が充填されているのは、7本用プラグ17の上端までとする)。
【0047】
尚、PVCチューブ22や黒色シリコン材23は、遮光性能が十分である一方、加工性が悪い問題があり、複雑な形状を有するPSFバンドル1とPMT2の接合部分に即座に適用することはできない。
【0048】
そこで、7本用プラグ17には予めPVCチューブ22を挿入するスペースと、黒色シリコン材23を充填するスペースを確保して遮光加工を容易にすることで、従来技術では実現できなかった高い遮光性能を確保している。また、7本用プラグ17とPMT2の密着性を増加させる目的で、キャップ21とソケット18の隙間に、ばね定数0.03kg/mmのスプリング20を設置することで、7本用プラグ17の鍔をPMT2側に加圧する工夫を実施している。
【0049】
また、PSF測定装置では、PSFと電気信号のケーブルが必要であるが、これらも含めてバンドル化することで、1本のケーブルとして取扱いが可能となり、移動に要する時間を更に低減させている。
【0050】
図9に、図8aの7本用プラグ17とソケット18の組立状態からの分解状態を示す。図9の状態からの7本用プラグ17とソケット18の組立順は、先ず、PSFにPVCチューブ22を被覆し(先端部分は被覆されていない裸)、そのPSFバンドル1の先端に接着剤を塗布し、その後、被覆付きPSFバンドル1をキャップ21、スプリング20を通して7本用プラグ17に挿入する。接着剤が乾燥した後、7本用プラグ17の内面とPSFバンドル1の隙間に黒色シリコン材23を充填する。接着剤除去とPSFバンドル1の切断面の手入れを目的として、7本用プラグ17の先端(PMT2側)を研磨したあと、キャップ21をねじ込むことで、ソケット18と7本用プラグ17が一体化され、組立が完了する。
【0051】
このような本実施例とすることにより、放射線レベルが未知の被測定対象物を測定する場合であっても、さまざまな感度を有するPSF測定装置の一式を準備することなく対応が可能であるため、複数の感度を有する検出器(PSF)をあらかじめ準備し、放射線レベルに応じて交換して使用できる。
【0052】
また、放射線レベルに応じて交換して使用できる装置構成とする際に、発生するPSFとPMTの接合部分の遮光に対する課題が解決でき、遮光性能を向上させることができる。
【0053】
更に、PSF測定装置の構成要素である精密機器間の接続端子を削減するため、個々の精密機器を可能な限りユニット化すると共に、省電力化、軽量化により装置全体のコンパクト化を図ることで持ち運びを容易にし、サーベイメータ同様の可搬性を実現することで、作業者が手で運搬しながら測定することが可能となる。
【実施例2】
【0054】
川底等水中の放射性物質を本実施例のPSF測定装置によって測定する場合、水より軽いPSFは水没して測定することができない。そこで、本実施例では、水没測定を可能とするため、金属フレキシブル管をPSFに被覆する冶具を用いることで、水中での測定を可能とした。
【0055】
これによれば、PSF測定装置の破損の防止しながら、苛酷な環境化における被測定対象物に対して効率的な測定を可能にする冶具を用い、水中測定等においても作業員に負荷をかけずに簡単に測定することができる。
【0056】
また、防水対策を実施することで、従来技術では乾燥状態に限定されていたPSF測定装置の使用条件を、屋外での使用を前提に使用条件を限定しない仕様とし、加えてサーベイメータでは測定不可能な池や川の水中における測定をも可能にできる。
【実施例3】
【0057】
次に、GPSにより測定結果と測定位置を簡単・正確に記録するための実施例を、以下に説明する。
【0058】
即ち、環境放射線の被測定対象物は非常に広範囲に分布しており、個々の測定結果は局所的な放射線情報に過ぎない。よって、除染作業等で活用可能な有力インプットとして測定結果を使用する場合には、非常に大量の測定結果を測定位置毎に管理する必要があった。
【0059】
一方、環境の放射線状況を一目瞭然にするためには、マッピングによる測定結果の可視化が有効であったため、PSF測定装置に高性能なGPSを組み込むことで、広域的な放射線率分布を可視化するためのマッピングシステムとのインターフェースを確立できる。その際、高性能のGPSを搭載すれば、使用電力量の増加、装置の物理的強度低下、装置外形の肥大化が懸念されるため、GPS精度をマッピングシステムの有効測定単位にあわせた精度にすることで、性能の最適化を図った。
【0060】
測定結果には、位置情報、測定線量率、ホットスポットの有無などを記録し、CSV形式で出力可能な機能を出力装置に持たせることで、さまざまなマッピングシステムとの連携を可能にできる。
【0061】
この実施例によれば、PSF測定装置にGPSを内蔵させて、出力処理時にアウトプットに位置情報を付加するインターフェースを用いることで、測定結果の確認作業労力の削減、測定結果の品質向上が実現できる。
【0062】
また、PSF測定装置に高性能なGPSを組み込むことで、測定結果に位置情報を付加した出力を可能にし、広域的な放射線率分布を可視化するためのマッピングシステムとのインターフェースを確立することにより、測定結果の他システムへの受け渡しの信頼性向上と入力作業の削減を実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
内除染作業を実施する場合、除染方法や除染割合等を計画するためには、現場の放射線環境の正確な把握が重要である。正しい放射線量の把握ができないことは、不必要な除染作業を実施し無駄なコストを発生する問題や、除染を実施後に現場の放射線量が目標値まで低減しないといった諸問題が発生する可能性を高める。そのため、精度の高い測定を実施することは不可欠ではあるが、現状の技術(例えば、サーベイメーター)を使用した測定では精度と迅速性を両立させることは困難であった。
【0064】
よって、合理的な除染を実施するための迅速・正確な環境の放射線測定は、社会全体のニーズとなっており、このような状況下において、本発明は、ニーズを満足するために非常に有効な技術であり、産業上の利用可能性は非常に高い。
【符号の説明】
【0065】
1…PSF又はPSFバンドル、2…光電子増倍管、3…プリアンプ、4…信号波形前処理装置、5…ディレイ装置、6…時間波高変換機、7…多重波高分析器、8、8A、8B…電源装置、9…出力装置、10…ユニット1、11…ユニット2、13…電池、14…位置測定装置、15…測定位置情報、16…1本用プラグ、16A…1本用のPSF差込口、17…7本用プラグ、17A…7本用のPSF差込口、18…ソケット、18A…ソケットの開口部、18B…ソケットの案内部、19…PSFバンドルとPMTの接続部、20…スプリング、21…キャップ、22…ポリ塩化ビニル(PVC)チューブ、23…黒色シリコン材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7a
図7b
図8a
図8b
図9