【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の実施例1における空気調和装置の冷媒回路図である。
図1に示す空気調和装置は、少なくとも1台の室外機1と1台の室内機10から構成されている。室外機1は、圧縮機2、油分離器3、逆止弁4、四方弁5、室外膨張弁6、室外熱交換器7、アキュムレータ8から構成され、図に示す如く順次配管接続されている。また、室外機1には、油分離器3の下部からアキュムレータ8の入口側に対してバイパス回路が形成され、該バイパス回路を流れる油量を調整するために油循環量調整装置9(例えば、キャピラリチューブ)が設けられている。さらに、圧縮機2下部の油貯留部には、圧縮機2内の油量が所定量以上となった場合に、圧縮機2の吐出側配管に油を排出するための排油管15が設けられている。
【0015】
また、室内機10は、室内熱交換器11と室内膨張弁12から構成され、前記室外機1と室内機10は、ガス配管と液配管により配管接続されている。
【0016】
次に、本発明の空気調和装置に付設するアキュムレータ8の構造について説明する。
【0017】
図2は、本発明の実施例1における空気調和装置に用いたアキュムレータ8の構造図である。冷媒及び油を貯留するための容器20に対して、アキュムレータ8内に冷媒及び油を導入するための導入管21と、アキュムレータ8から圧縮機2に冷媒及び油を排出するための導出管22を設けた構造である。前記導出管22には、該導出管22の最下部に冷媒と油の混合液体を所定量だけ吸い込むための第1油戻し穴23が、アキュムレータ8の容器20の最下端部から所定の距離H1の位置に設けられ、前記導出管22の上部には導出管22内部と容器20内の圧力差を解消するための均圧穴24が設けられた構造となっている。
【0018】
次に、本発明の空気調和装置の冷媒及び冷凍機油の流れについて説明する。
【0019】
まず、冷房運転の場合は、室外機1の圧縮機2から吐出される高温、高圧の冷凍機油とガス冷媒は油分離器3に流入し、油分離器3で冷凍機油とガス冷媒に分離され、大部分の冷凍機油は油循環量調整装置9で流量が調整されアキュムレータ8に流入する。一方、油分離器3で分離しきれなかった冷凍機油とガス冷媒は、逆止弁4、四方弁5を通り室外熱交換器7に流入する。ここで、室外熱交換器7に流入する空気と熱交換して放熱し高圧の液冷媒となり、室外膨張弁6を通り室外機1を出て液接続配管を通り室内機10に流入する。室内機10に流入した液冷媒と冷凍機油は、室内膨張弁12で減圧され低圧となり、室内熱交換器11に流入し室内熱交換器11に流入する空気と熱交換して吸熱しガス化して、室内機10から流出してガス接続配管を通り室外機1に流入し、四方弁5を通りアキュムレータ8に流入し、アキュムレータ8で圧縮機2に流入する油循環量が調整されガス冷媒と一緒に圧縮機2に戻ることで冷凍サイクルが形成される。
【0020】
次に、暖房運転の場合は、室外機1の圧縮機2から吐出される高温、高圧の冷凍機油とガス冷媒は油分離器3に流入し、油分離器3で冷凍機油とガス冷媒に分離され、大部分の冷凍機油は油循環量調整装置9で流量が調整されアキュムレータ8に流入する。一方、油分離器3で分離しきれなかった冷凍機油とガス冷媒は、逆止弁4、四方弁5を通り室外機1を出てガス接続配管を通り室内機10に流入する。室内機10に流入した冷凍機油とガス冷媒は、室内熱交換器11に流入し、室内熱交換器11に流入する空気と熱交換して放熱し液化して、室内膨張弁12を通り室内機10aから流出して液接続配管を通り、室外機1に流入される。そして、室外機1に流入した冷凍機油と液冷媒は室外膨張弁6で減圧され低圧となり室外熱交換器7に流入し、室外熱交換器7に流入する空気と熱交換して吸熱しガス化して、四方弁5を通りアキュムレータ8に流入し、アキュムレータ8で圧縮機2に流入する油循環量が調整されガス冷媒と一緒に圧縮機2に戻ることで冷凍サイクルが形成される。
【0021】
次に、本実施例1の空気調和装置の全運転範囲内における油循環量特性について説明する。
【0022】
図3は、本発明の実施例1で用いられるアキュムレータと返油量調整装置の油循環量の関係を表した特性図である。本図の横軸は冷凍サイクルの吸入圧力Psを示し、縦軸は
図2に示す構造のアキュムレータ8及び油循環量調整装置9を流れる油循環量Goを示す。
【0023】
本実施例1の空気調和装置の全運転範囲内における油循環量調整装置9を流れる油循環量は、実線矩形で囲まれた範囲内に調整され、
図2に示す構造のアキュムレータ8から流出する油循環量は、一点鎖線で示される状態に調整される。
【0024】
本実施例1の空気調和装置では、アキュムレータ8の油循環量は、常に油循環量調整装置9の油循環量よりも少ない状態に調整されるため、油分離器3に流入する油循環量よりも油分離器3から流出する油循環量の方が常に多くなるため、油分離器3内は常に空の状態となり、油循環量調整装置9は冷凍機油とガス冷媒の混合流体として流れることで、油分離器3の流入と流出の油循環量のバランスが保たれる。このため、空気調和装置に封入された冷凍機油の内、冷凍サイクル内を循環する冷凍機油以外の余剰冷凍機油は、全てアキュムレータ8に貯留されることになる。
【0025】
上記のように設定されたアキュムレータ8及び油循環量調整装置9を用いた場合の冷凍サイクル中の油上がり率αsは、油分離器3内には冷凍機油が溜まらない状態であるため、冷凍機油とガス冷媒を分離する空間を常に最大にすることができ、油分離器3の分離効率を最大に引き出すことが可能となり、冷凍サイクル中に流出する冷凍機油を最小に抑えることができる。
【0026】
本実施例1の冷凍サイクル中の油上がり率をαsとした場合、以下に示す計算式により求めることができる。
αs=(1−ηo)×(1−X1)×(1−Cr) …(数式1)
【0027】
ここで、ηoは、油分離器3の分離効率、X1はアキュムレータ8の第1油戻し穴23による冷媒かわき度、Crはアキュムレータ8内の冷媒と油の溶解比率である冷媒溶解度を表している。前述したように、本実施例1では、余剰冷凍機油を常にアキュムレータ8内に貯留しているため、油分離器3の分離効率を最大(例えば、0.98)にすることができるため、冷凍サイクル中の油上がり率αsも小さくすることができる。しかし、アキュムレータ8の第1油戻し穴23による冷媒かわき度が大きい場合は、油分離器3の分離効率が高い場合でも、冷凍サイクル中の油上がり率は大きくなってしまう。
【0028】
そこで、本発明の実施例1では、第1油戻し穴23による冷媒かわき度をある範囲に規定することで、冷凍サイクル中の油上がり率を小さく抑えて、空気調和装置の性能を向上するようにした。空気調和装置の性能を向上するためには、接続配管や熱交換器等での圧力損失を低減し、且つ熱交換器の配管内の油膜が形成されにくくして熱交換効率を高くする必要があり、そのためには冷凍サイクル中の油上がり率を0.1wt%以下にする必要がある。本実施例では油上がり率を0.1wt%以下とするために冷媒かわき度がある範囲内となるようにするものであり、このための第1油戻し穴23と導出管22との関係を特定するものである。なお、空気調和装置の通常運転範囲からアキュムレータの冷媒溶解度Crを0.3とすると(数式1)から油上がり率を0.1wt%以下するための第1油戻し穴23による冷媒かわき度は0.93以上とする必要がある。
【0029】
なお、アキュムレータ8の第1油戻し穴23による冷媒かわき度は、導出管22の入口から第1油戻し穴23までを流れるガス冷媒の抵抗と、第1油戻し穴23から流入する冷凍機油と冷媒が混合した液体の抵抗のバランスにより決定される。そこで、発明者等は、第1油戻し穴23の穴径をd1、導出管22の内径をD、Aを比例定数として以下に示す数式1を考え、このAがどの範囲内にあれば冷媒かわき度が0.93〜0.97の範囲内になるか実験により求めた。なお、この場合の冷媒かわき度は、定格運転を行ったときのものである。
d1=A×(D)
0.9 …(数式2)
【0030】
空気調和装置の信頼性を確保するためアキュムレータ8から圧縮機2に油を供給する第1油戻し穴23の詰まり防止から、第1油戻し穴23の穴径d1は少なくとも1.0mm以上を確保する必要がある。ここで一般的に空気調和装置に用いられているアキュムレータ8の導出管22の内径寸法としてφ13.88mm〜φ23mmを考えると、第1油戻し穴23の穴径d1は1mm以上、かつ、導出管22の内径をDはφ13.88mm以上を満たすためのAの範囲は0.1<Aとなる。本発明者等の実験によれば、Aを0.1よりわずかに大きな範囲とすると、冷媒かわき度は約0.97となることが確認された。
【0031】
一方で上記した通り、冷媒かわき度は0.93以上とする必要があり、この場合のAの範囲は、発明者等の実験により、Aを0.16より小さい範囲とすることで冷媒かわき度が0.93以上となることが分かった。以上に説明したように、(数式2)に示すAの値を0.1<A<0.16とすることで冷媒かわき度を0.93〜0.97とすることができる。したがって、このAの範囲となるようにアキュムレータ8の導出管22及び第1油戻し穴径23を決定することで、冷凍サイクル中の油上がり率を0.1wt%以下にすることができ、空気調和装置の性能を向上することができる。
【実施例2】
【0032】
図4は、本発明の実施例2における空気調和装置の冷媒回路図である。本実施例2の空気調和装置は、2つの室外機1a、1bと2つの室内機10a、10bから構成されている。室外機1aは、圧縮機2a、油分離器3a、逆止弁4a、四方弁5a、室外膨張弁6a、室外熱交換器7a、アキュムレータ8aから構成され図の如く順次配管接続され、室外機1bも室外機1aと同様に圧縮機2b、油分離器3b、逆止弁4b、四方弁5b、室外膨張弁6b、室外熱交換器7b、アキュムレータ8bから構成され図の如く順次配管接続されている。また、室内機10aは、室内熱交換器11aと室内膨張弁12aから構成され、室内機10bも室内機10aと同様に室内熱交換器11bと室内膨張弁12bから構成されている。そして、前記室外機1a、室外機1bと室内機10a、室内機10bは、ガス側分配器13と液側分配器14を介して並列に配管接続されている。
【0033】
また、室外機1a、1bには、油分離器3a、3bの下部からアキュムレータ8a、8bの入口側に対してバイパス回路が形成され、該バイパス回路の油循環量を調整する油循環量調整装置9a、9b(例えば、キャピラリチューブ)が設けられている。また、圧縮機2a、2b下部の油貯留部には、圧縮機2a、2b内の油量が所定量以上となった場合に、圧縮機2a、2bの吐出側配管に油を排出するための排油管15a、15bが設けられている。
【0034】
また、
図5は、本実施例2の空気調和装置の室外機1a、1bに用いたアキュムレータ8a、8bの断面を示した構造図である。ここで、
図2と同符号のものは同一のものを示す。本実施例2のアキュムレータ8a、8bは、実施例1で用いたアキュムレータ8に対して、第1油戻し穴23の高さH1より高く、均圧穴24の高さより低い高さH2の位置の導出管22に第2油戻し穴25を設けた構成となっている。
【0035】
本実施例の空気調和装置は、この室外機1a、1bと2台を接続するため、一方の室外機への冷凍機油の分配比が少なくなると冷凍機油の保有量が減少し、冷凍機油不足を起こす可能性がある。そこで本実施例では実施例1に比べてアキュムレータ8a、8bからの油を多く戻すことが望ましい。これにより油分配の多い室外機は、後で説明する
図7のA点以上の油封入量となるため、室外機から流出する油上がり率は、他方の室外機と比較して多くなるため、分配比の少ない室外機側にも十分な冷凍機油を供給することが可能となり、分配比の少ない室外機側のアキュムレータ内の液面低下が止まり、各室外機の油量を一定量以上確保することができる。
【0036】
ここで、前記第2油戻し穴25の径をd2とした場合、上記の理由からd2の径を大きくして多くの冷凍機油を第2油戻し穴25から戻すことが望ましい。しかしながら、あまりにもd2の径を大きくすると、冷凍機油とともに冷媒が圧縮機に戻るため、冷凍機油の粘度低下を招く虞があるため、これを防止する必要がある。そこで、本実施例においては、この粘度低下の限界値として、アキュムレータから戻る冷媒の冷媒かわき度を0.84以上とする。この冷媒かわき度を0.84以上とするときの数式2のAを本発明者等が実験により求めたところ、Aを0.25以下とすることが必要であることが分かった。すると導出管22の内径をD、第1油戻し穴23の径をd1とした場合、以下に示す式により第2油戻し穴25の最大値が決定される。
d2≦((0.25×(D)
0.9)
2−(d1)
2)
0.5 …(数式3)
【0037】
また、(返油量調整装置を流れる油循環量)<(アキュムレータの第1油戻し穴と第2油戻し穴の両方で圧縮機に戻る油循環量)となるように第2油戻し穴25の穴径d2が設定される。また、第2油戻し穴25の高さ位置H2から底面までのアキュムレータ8a、8bの内容積をVA2、該空気調和装置に封入する油体積量をV0、圧縮機2a、2bに保有される油体積量をVC、アキュムレータ8a、8b内の冷媒溶解度をCrとした場合、以下に示す式が成り立つように第2油戻し穴25の高さ位置H2が設定される。
VA2>(V0−VC)/(1−Cr) …(数式4)
【0038】
次に、本実施例2の空気調和装置の全運転範囲内における油循環量特性について説明する。
【0039】
図6は、本発明の実施例2で用いられるアキュムレータ8a、8bと油循環量調整装置9a、9bの油循環量の関係を表した特性図である。本図の横軸は冷凍サイクルの吸入圧力Psを示し、縦軸は
図2に示す構造のアキュムレータ8a、8b及び油循環量調整装置9a、9bを流れる油循環量Goを示す。
【0040】
本実施例2の空気調和装置の全運転範囲内における油循環量調整装置9a、9bを流れる油循環量は、実線矩形で囲まれた範囲内に調整され、
図5に示す構造のアキュムレータ8a、8bの第2油戻し穴25の位置H2よりも少ない液量の場合、すなわち第1油戻し穴23のみで流出する油循環量は、油循環量調整装置9a、9bを流れる油循環量よりも少ない一点鎖線で示される状態に調整される。また、第2油戻し穴25位置H2よりも多い液量の場合、すなわち第1油戻し穴23と第2油戻し穴25の両方で流出する油循環量は、油循環量調整装置9a、9bを流れる油循環量よりも多い破線の状態に調整される。
【0041】
次に、本実施例2の空気調和装置の冷凍サイクル中の油上がり率αsについて説明する。
【0042】
図7は、本実施例2の空気調和装置において、冷凍サイクルシステム内に封入される油封入量Woとサイクル内油上がり率αsの関係を表した特性図である。本図に示すA点は、アキュムレータ8a、8b内に貯留される冷凍機油と冷媒の混合液体が、第2油戻し穴25の位置H2の状態を表している。
【0043】
すなわち、アキュムレータ8a、8b内に貯留される液量が、第2油戻し穴25の位置H2よりも少なくなるようなシステム内の油封入量W1の場合、アキュムレータ8a、8bと油循環量調整装置9a、9bの油循環量の関係が
図6に示す一点鎖線の状態となるため、常に油分離器3a、3b内には冷凍機油が溜まらない状態となり、冷凍機油とガス冷媒を分離する空間を常に最大にすることができ、油分離器3a、3bの分離効率を最大に引き出すことが可能となり、冷凍サイクル中に流出する冷凍機油を最小に抑えることができる。また、本図に示すA点を越えるようなシステム内の油封入量W2の場合は、アキュムレータ8a、8bと油循環量調整装置9a、9bの油循環量の関係が
図6に示す破線の状態となるため、返油量調整装置の油循環量よりも常にアキュムレータから流出する油循環量が多くなるため、アキュムレータ内に貯留されている冷凍機油が油分離器内に移動し、冷凍機油とガス冷媒を分離する空間が減少するため、油分離器3a、3bの分離効率が低下するため冷凍サイクル内の油上がり率αsも急激に多くなる特性となる。
【0044】
すなわち、各室外機への油分配が均一な場合は、それぞれの室外機の油封入量は、A点以下に調整されるため、各々の室外機から流出する油上がり率は、非常に小さな値となるため、冷凍サイクルの性能を向上することができる。また、各室外機への油分配が不均一な場合は、油分配の少ない室外機は、A点以下の油封入量となるため室外機から流出する油上がり率は非常に小さな値となるが、(室外機からの油流出量)>(室内から戻される油流入量)となるため、この室外機の冷凍機油の保有量が減少し、冷凍機油不足を起こす可能性がある。但し、油分配の多い室外機は、A点以上の油封入量となるため、室外機から流出する油上がり率は、他方の室外機と比較して多くなるため、分配比の少ない室外機側にも十分な冷凍機油を供給することが可能となり、分配比の少ない室外機側のアキュムレータ内の液面低下が止まり、各室外機の油量を一定量以上確保することができる。すなわち、複数台の室外機を接続した場合において、油上がり率を最小減に抑えつつ、均油管無しで油分配を可能にすることができる。
【0045】
ここで、実施例1ないし実施例2において、2台の室外機を並列に接続した内容について説明したが、3台ないし4台の室外機を並列に接続した場合も同様の効果があり、本発明の域を脱するものではない。