(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
“アルギン酸塩”は、(1−4)−結合 β−D−マンヌロン酸(M)及びα−L−グルロン酸(G)残基を含む、直鎖で分岐していないポリマーを意味する。アルギン酸塩は、ワカメ(綱、phaeophyceae)及び他のソースにおいて見出される。アルギン酸塩は、ランダムコポリマーではなく、同じ及び交互の残基のブロックからなり(例えば、MMMM、GGGG、及びGMGM)、一般に、アルギン酸又はその塩の形態において有用である。Phaeophyceaeの海藻由来のアルギン酸塩では、Mの割合が変動し、Lessonia nigrescens(53−60%M)、Laminaria digitata(約59%M)、Macrocystis pyrifera(約60%M)、Ecklonia maxima及びLaminaria Saccharinaを含む。
【0013】
“カプセル”は、内容物(充填マテリアル)及び表面(フィルム)を有する、囲いのある構造物を意味する。実質的に乾燥状態である場合、フィルムは充填マテリアルを制約(constrains)する。いくつかの他のコンディション下において、フィルムは充填マテリアルが漏れ出ることを許容し得る。好ましくは、フィルムは、哺乳類の小腸でみられるコンディション下において崩壊する。完成したカプセルは、1日間室温で30%若しくはそれ未満の相対湿度での過剰のガス又はそれに相当するものへの暴露後、実質的に乾燥している。乾燥とは、実質的に乾燥していることを意味する。実質的に乾燥していない場合、又は水性溶液に実質的に接触している場合、カプセルは“湿潤状態”である。
【0014】
“非結晶性可塑剤”は、カプセルのフィルム中又はフィルム上における可塑剤物質のブルーム又は再結晶化を低減させる化合物又は組成物を意味する。グリセロールは、非結晶性可塑剤の定義から排除される。非結晶性可塑剤は、糖アルコール及びデヒドロ糖アルコールの混合物を含み、又は本質的に糖アルコール及びデヒドロ糖アルコールの混合物からなり得る。一実施態様において、非結晶性可塑剤は、ソルビトール及びデヒドロ糖アルコールの混合物である。
【0015】
“非結晶性ソルビトール”は、ソルビトール及び脱水素化ソルビトールを有する混合物を意味する。脱水素化ソルビトールは、1,4−ソルビタン及びマンニトールを有する。POLYSORB(登録商標)85/70/00(Roquette社、レストロン、フランス)は、適切な非結晶性ソルビトールである。POLYSORB(登録商標)85/70/00は、35−45%(wt/wt)のソルビトール、及びソルビトールの部分的な内部での脱水により得られる、24−28%(wt/wt)の1,4−ソルビタンの水溶液である。POLYSORB(登録商標)85/70/00は、約83%の固形分を有する。Sorbitol Special Polyol Solution(登録商標)(SPI Pharma社、ウィルミングトン、デラウェア、USA)はまた、適切な非結晶性ソルビトールである。Sorbitol Special Polyol Solutionは、ソルビトール、ソルビトール無水物、及びマンニトールを含む、76%固形分の水溶液である。
【0016】
本発明のシームレスなアルギン酸塩カプセルは、所望の特性の驚くべき組み合わせを有する。それは、酸化感受性充填マテリアルの低い割合の酸化、カプセルの高い破壊強度、カプセルフィルムの高い弾性、及び湿潤環境におけるカプセルの安定性を含む。この特性の組み合わせは、予測されないものである。カプセル組成を変化させることがこのような異種の他の特性を改善させるであろうことが知られていなかったからである。
【0017】
本発明のシームレスなアルギン酸塩カプセルは、約1:1と8:1との間の、好ましくは約2:1と6:1との間の、より好ましくは約3:1の、非結晶性可塑剤のグリセロールに対する重量比(S/G比と称される)を有し得る。一実施態様において、本発明のシームレスなアルギン酸塩カプセルは、約1:1と約8:1との間の、非結晶性可塑剤のグリセロールに対する重量比(すなわち、S/G比)を有する。他の実施態様において、S/G比は、約2:1と約6:1との間である。さらなる他の実施態様において、S/G比は、約1:1と約4:1との間である。さらなる他の実施態様において、S/G比は、約4:1と約9:1との間である。好ましい実施態様において、S/G比は、約2:1と4:1との間である。より具体的には、S/G比は、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、又は約9:1であり得る。一実施態様において、S/G比は、約3:1である。
【0018】
シームレスなアルギン酸塩カプセルのフィルムは、約70重量%までのトータルの可塑剤を有し得る。一実施態様において、トータルの可塑剤は、フィルム重量の60%未満、55%未満、50%未満、45%未満、40%未満、35%未満、又は30%未満である。一実施態様において、トータルの可塑剤は、フィルム重量の約25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、又は50%以上である。一実施態様において、トータルの可塑剤は、フィルム重量の約45%と55%との間である。
【0019】
シームレスなアルギン酸塩カプセルのフィルムは、約6%(wt/wt)と約22%(wt/wt)との間のグリセロールを有し得る。一実施態様において、シームレスなアルギン酸塩カプセルのフィルムは、約10%と18%との間のグリセロールを有する。一実施態様において、シームレスなアルギン酸塩カプセルのフィルムは、約12%と16%との間のグリセロールを有する。他の実施態様において、シームレスなアルギン酸塩カプセルのフィルムは、約14%のグリセロールを有する。一実施態様において、フィルムのグリセロール含量は、17%を超えない。
【0020】
シームレスなアルギン酸塩カプセルのフィルムは、約6%(wt/wt)と約54%(wt/wt)との間の非結晶性可塑剤を有し得る。一実施態様において、シームレスなアルギン酸塩カプセルのフィルムは、約6%(wt/wt)と約54%(wt/wt)との間の非結晶性ソルビトールを有する。一実施態様において、フィルムは、約28%と46%との間の非結晶性ソルビトールを有する。他の実施態様において、フィルムは、約32%と42%との間の非結晶性ソルビトールを有する。他の実施態様において、フィルムは、34%と38%との間の非結晶性ソルビトールを有する。好ましい実施態様において、フィルムは、約36%の非結晶性ソルビトールを有する。
【0021】
一実施態様において、非結晶性可塑剤は、マルチトール、フルクトース、プロピレングリコール、又はポリオキシエチレングリコール(単独で又は他の可塑剤との組み合わせで)であり得る。
【0022】
一実施態様において、本発明の乾燥されたシームレスカプセルは、M及びG含量の50重量%−62重量%の平均M含量を有するアルギン酸塩を含む、アルギン酸塩シェル膜を有する。より具体的には、アルギン酸塩の平均M含量は、M及びG含量の重量に基づき、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、又は62%であり得る。M含量はまた、M及びG含量の重量に基づき、53%から59%の範囲にあってもよい。
【0023】
本発明のM含量を有するアルギン酸塩は典型的には、種々のアルギン酸塩を作る海藻から得られる。海藻におけるM含量は、収穫時の生活環、植物特異性等に依存して変化し得る。本発明に適切なM含量を有するアルギン酸塩を作るとされる海藻は概して、Lessonia nigrescens(50−62%M)、Laminaria digitata(約59%M)、Macrocystis pyrifera(約60%M)、Ecklonia maxima及びLaminaria Saccharinaを含む。混合物における全アルギン酸塩のM含量が53−62%Mの平均M含量又は50−62%Mの平均M含量を有する場合、種々のM含量を有するアルギン酸塩の混合物を用いることはまた、本発明の範囲内にある。アルギン酸塩における平均M含量は典型的には、
1H−NMRにより測定される。アルギン酸塩は典型的には、例えば、酸性前処理後のアルカリ性抽出を含む水性プロセスといった、標準的な工業用抽出プロセスを用いて、海藻から抽出され得る。このような慣習上の技術は、参照により本明細書に取り込まれる。
【0024】
50−62%MのM含量を有する本発明の抽出されたアルギン酸塩は典型的には、大きい分子量、及びそれゆえに1%水溶液において200−1,000cpsといった高い粘度を有するため、アルギン酸塩は、60rpm及びスピンドル#1でブルックフィールドLV粘度計を用いて、20℃で3.5%水溶液において測定される場合、35−80cpsの平均粘度を得るように分解されなければならない。分解は典型的には、アルギン酸の慣習的な熱処理プロセスにより行われる。これらの慣習的なプロセスは、参照により本明細書に取り込まれる。用いられるすべてのアルギン酸塩の平均粘度が35−80cpsの範囲内にある場合、本明細書において測定されるように、35−80cpsの範囲外の可変粘度を有するアルギン酸塩を用いることが可能である。アルギン酸塩における粘度測定は、アルギン酸ナトリウムといった、アルギン酸塩の一価金属イオン塩において行われる。
【0025】
本発明の乾燥されたシームレスカプセルは望ましくは、37℃、pH3で、0.1MのNaCl及び酸(HCl)の溶液における20分間の前処理後、腸管緩衝液における12分間未満の崩壊時間、並びに少なくとも10kgの乾燥破断強さを有する。より具体的には、本発明の乾燥されたシームレスカプセルは、pH3で、酸性水溶液における20分間の前処理後、腸管緩衝液における10分間未満、8分間未満、又は6分間未満の崩壊時間を有する。さらに、本発明の乾燥されたシームレスカプセルは、少なくとも12kg、少なくとも15kg、少なくとも16kg、少なくとも17kg、少なくとも18kg、少なくとも19kg、少なくとも20kg、少なくとも21kg、少なくとも22kg、少なくとも23kg、少なくとも24kg、少なくとも25kg、少なくとも26kg、少なくとも27kg、少なくとも28kg、少なくとも29kgの乾燥破断強さを有する。破断強さは、水平に横たわった(直立していない)状態のカプセルを備える平行プレートが取り付けられたSMSテクスチャ解析機を用いて測定される。腸管緩衝液は、パンクレアチンが用いられないことを除いて、USP28、2040章、2858頁に基づきモデル化された腸管緩衝液である。より具体的には、5Lの脱イオン水に136.0gのKH
2PO
4(Merck社、ロット番号A585477)を溶解し、10Lの脱イオン水に61.6mLの5N NaOHを加え、pHを6.8に調節し、20Lの最終容積に希釈することで作られる。崩壊方法は、USP28、2040章(遅延放出型(腸溶錠)錠剤についての章を含む)(参照により本明細書に取り込まれる)において記載される通りである。
【0026】
一実施態様において、乾燥されたシームレスカプセルは、充填マテリアルを封入するアルギン酸塩フィルムを含み、(i)前記アルギン酸塩シェル膜は、(a)M及びG含量の重量に基づき50重量%−62重量%の平均M含量、及び(b)60rpm及びスピンドル#1でブルックフィールドLV粘度計を用いて20℃、3.5%水溶液における一価の金属イオンアルギン酸塩として測定される場合35−80cpsの粘度を有する、多価金属イオンアルギン酸塩を含み;(ii)前記アルギン酸塩シェル膜は、前記充填マテリアルの少なくとも50重量%の量で存在する油を封入し;(iii)前記乾燥されたシームレスカプセルは、37℃、pH3で、0.1MのNaCl及び酸(HCl)の溶液における20分間の前処理後、腸管緩衝液(例えば前述の通り)における12分間未満の崩壊時間を有し;並びに(iv)前記乾燥されたシームレスカプセルは、少なくとも7kgの乾燥破断強さを有する。
【0027】
本発明の乾燥されたシームレスカプセルは、前記充填マテリアルの少なくとも50重量%の量で油を封入する。油自体は、食物といった活性成分又は薬学的、栄養補助的、及び獣医学的な活性成分となり得る。又は、それは、食物又は薬学的、栄養補助的、若しくは獣医学的な活性剤といった活性成分に対するキャリアとなり得る。油は、いかなる油、又は油の組み合わせから選択されてもよく、それは、例えば薬学的、獣医学的、栄養補助的、及び食物の産業における使用に対して、封入形態における有用性を見出す。適切な油は、限定されることなく、飽和油、ポリ不飽和油を含む不飽和油;魚、動物、植物、微生物又はそれらの抽出物由来の油;合成若しくは他の方法により得られた化学化合物又はその製剤である油;又は、脂肪酸、そのエステル若しくは誘導体である油を含む。本発明の範囲内にある他の油は、自然発生的な乳化剤を含むものである。このような油の一つは、大豆油であり、それはレシチンを含む。レシチンは、乳化剤として脂肪及び油が多く含まれる製品の食品製造において有用である。本発明の範囲内における好ましい油は、液体のものであり、又は、例えば20℃から95℃の範囲の温度で液体に作られ得るものである。
【0028】
油は、いかなる油、又は油の組み合わせから選択されてもよく、それは、例えば薬学的、獣医学的、栄養補助的、及び食物の産業における使用に対して、封入形態における有用性を見出す。適切な油は、限定されることなく、魚、動物、植物、微生物を含む、海洋資源及び非海洋資源、又はその抽出物由来の油;合成若しくは他の方法により得られた化学化合物である油、又はその製剤;又は、脂肪酸、そのエステル、塩若しくは誘導体である油を含む。このような油は、トリグリセリド植物油を含み、それは、ヒマシ油、コーン油、綿実油、オリーブ油、ピーナッツ油、ベニバナ油、ゴマ油、大豆油、硬化大豆油、及び硬化植物油といった長鎖トリグリセリド;ココナッツ油又はヤシ種子油由来といった中鎖トリグリセリド、モノグリセリド、ジグリセリド、及びトリグリセリドとして通常知られる。混合グリセリドに加えて、プロピレングリコールのカプリル酸/カプリン酸の混合ジエステルといったプロピレングリコールのエステル、飽和ココナッツ及びパーム核油由来のカプリル酸脂肪酸、リノール酸脂肪酸、コハク酸脂肪酸若しくはカプリン酸脂肪酸グリセリン、又はプロピレングリコールのエステル、並びにカプリン酸又はカプリル酸とグリセロールとの間で形成されるエステルといった脂肪酸と脂肪アルコールとの間で形成されるエステルといった他の油が存在する。脂肪酸、その塩、エステル、又は誘導体である油は、本発明において有用であり、現在、有用な健康効果(例えば、心臓血管系疾患のリスクファクターの低減及び種々の代謝系疾患の治療)をもたらすものとして大きな商業的関心を引いている。オメガ−3−脂肪酸、その塩、エステル、又は誘導体を含む油は、本発明において用いられ得る。このような脂肪酸、その塩、エステル、又は誘導体を含む油の例は、加工されていない又は濃縮された形態である海産油(例えば、魚油)、及び藻類により作られた複合油を含む。このような海産油は、(オール−Z オメガ−3)−5,8,11,14,17−エイコサペンタエン酸(EPA)及び(オール−Z オメガ−3)−4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン酸(DHA)といった重要なオメガ−3 ポリ不飽和脂肪酸を含み、本発明の油において可変の割合で含まれ得る。本発明において有用であるこのような油の一例は、少なくとも80重量%のオメガ−3−脂肪酸、その塩又は誘導体を含み、EPA及びDHAは、全脂肪酸含量の少なくとも75重量%の量で存在する。例えば、米国特許5,502,077号明細書を参照のこと。いかなるDHA/EPA比の、いかなるソース由来のDHA及びEPAを含む、いかなる油でも、本発明において用いられ得る。
【0029】
油自体は、食物といった活性成分若しくは薬学的、栄養補助的、及び獣医学的な活性成分となり得、又はそれは、食物又は薬学的、栄養補助的、若しくは獣医学的な活性剤といった活性成分に対するキャリアとなり得る。油が食物又は薬学的、栄養補助的、若しくは獣医学的な活性剤といった活性成分に対するキャリアとして用いられる場合、食物又は薬学的、栄養補助的、若しくは獣医学的な活性剤といった活性成分は、油中に溶解され、又は油中に分散され得る。
【0030】
油中に溶解され、又は分散され得る薬学的な活性成分の例は、スタチンといった種々の心臓血管及び代謝コンディションを治療するのに有用なすべての活性成分を含む。油中に溶解され得る他の薬物は、アンプレナビル、アジェネラーゼ、ベキサロテン、カルシトロール、クロファジミン、シクロスポリンA、ジゴキシン、ドルナビノール、デュタステライド、エトポシド、イソトレタノイン、ロピナビル、イトラコナゾール、ロラチジン、ニフェジピン、ニモジピン、フェノバルビトール、プロゲステロン、リスペリドン、リトナビル、サキナビル、シロリムス、トレチノイン、及びバルプロ酸を含む。油中に懸濁され得る薬物は、胃腸薬、非ステロイド性抗炎症薬といった抗炎症薬、抗菌薬、痛みを治療するのに用いられる薬物、肥満、糖尿病及び関節リウマチといった代謝性疾患を治療するために用いられる薬物のクラス由来のものを含む。
【0031】
油は、カプセルの充填マテリアル中、充填マテリアルの少なくとも50重量%、より具体的には、充填マテリアルの少なくとも60重量%、充填マテリアルの少なくとも70重量%、充填マテリアルの少なくとも80重量%、充填マテリアルの少なくとも90重量%、及び充填マテリアルの少なくとも95重量%の量で存在する。
【0032】
充填マテリアルにおける油はまた、油中水滴型エマルション、水中油滴型エマルション、又は水/油/水型エマルションといったエマルション中に存在し得る。
【0033】
ゲル化浴におけるアルギン酸塩の量は、本発明のカプセルの調製においてプロセス粘度のキーコントロールを提供するように決定された。本発明者らは、本発明のカプセルを作るために、ゲル化浴中に用いられるアルギン酸塩の量が、ゲル化浴の3重量%−4重量%、より具体的にはゲル化浴の3.25重量%−3.75重量%であると決定した。より具体的には、アルギン酸塩は、ゲル化浴の3.5重量%の量で、ゲル化浴において含まれ得る。ゲル化浴のプロセス粘度は典型的には、標的範囲に対して適切なスピンドル及び速度でブルックフィールドLV粘度計により測定される。
【0034】
本発明者らは、ゲル化浴におけるアルギン酸塩の量及び種類がプロセス粘度のキーコントロールであること、並びにプロセス粘度はカプセルが良好に調製される場合に注意深く制御されなければならないことを明らかにした。
【0035】
さらに、アルギン酸塩浴におけるカプセルフラグメントの撹拌とアルギン酸塩の粘度とは、カプセルを作ることができる点において関連する。強すぎる撹拌を要する粘度を有するアルギン酸塩は、エマルションフラグメントを変形させ又は破壊し、一方、非常に弱い撹拌を要する粘度を有するアルギン酸塩では、カプセルフラグメントは一時的又は永久に互いに接着しているだろう。第一に、カプセルフラグメントが破壊したところで、シェルの穴が形成され、カプセルに漏れが生じる。第二に、二重又は対のカプセルが作られ、二倍量を含むこととなり、それゆえ、それらはバッチから分離され、廃棄される必要があるだろう。端と端とがつながった対のカプセルは、ゲル化工程を生きのび、プロセスの後のほうで壊れ、エマルションで他のカプセルにコンタミネーションを起こし得る。本発明のアルギン酸塩の粘度は、ゲル化浴において採用される適切な撹拌を可能とし、前述の問題を起こさない。本発明者らは、標準的な撹拌技術(かき混ぜる、振動、又はバッフル上の連続流)が採用される場合、30cP未満及び100cP超過のゲル化浴粘度は望ましくなく、いっそう多くの前述の問題をもたらすことを観察した。
【0036】
ゲル化浴はさらに、少なくとも1つの一価塩を含んでいてもよい。一価塩は、塩化ナトリウム及び塩化カリウムのうちの少なくとも1つであってもよい。具体的には、一価塩は、塩化ナトリウムであってもよい。一価塩は、ゲル化浴の0.1重量%−0.5重量%の量でゲル化浴に存在し得、より具体的には、ゲル化浴の0.3重量%の量で存在し得る。
【0037】
ゲル化浴における一価塩の添加はまた、カルシウムがアルギン酸と反応するため、ゲル化浴における一価塩のレベル制御の好ましい手段を提供するように見出されてきた。この濃度制御は、カプセルの特性の重要なコントロールをもたらす。
【0038】
本発明のプロセスにおいて、塩化カルシウムといった多価塩がゲル化浴においてアルギン酸塩(例えば、アルギン酸ナトリウム)と反応すると、塩化ナトリウムが生成する。一般に、一価塩の存在は通常、ゲル化する多価塩とアルギン酸塩との間の反応を妨げ、これはゲル特性に悪影響を与え得る。一価塩がはじめにアルギン酸塩溶液に加えられない場合、一価塩の濃度は、最初はほとんどゼロであり、プロセスの間顕著に増加し、それは、連続生成モードが選択された場合には特にそうであろう。この変化は、プロセスの間、カプセルの品質にバリエーションをもたらすだろう。ゲル化浴への一価塩の添加は、継続的なカプセル生成の間、一価塩の安定的レベルをもたらし、それは、湿潤状態及び乾燥状態の両方のカプセルの一貫した品質を保証するものである。
【0039】
ゲル化浴はまた、限定されることなく、染料、着色料、可塑剤、エマルション不安定化剤、濃度調節剤、保存剤、抗酸化剤、固体、崩壊剤、消泡剤、及び他の成分を含む、付加的な成分を含有し得る。
【0040】
WO03/084516は、典型的なプロセスコンディション及び本発明において用いられ得る他の成分の例を開示しており、このような開示は全体において参照により本明細書に取り込まれる。
【0041】
本発明の内容において適する乳化剤は、親水性基及び親油性基の両方を有する(HLB値は1から19の範囲にある)化学化合物である。1から19の範囲のHLB値を有するこのような乳化剤の例は、限定されることなく、グリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリドの乳酸エステル、レシチン、ポリグリセロールポリリシノーリエート、脂肪酸のソルビタンエステル、モノグリセリドのコハク酸エステル、カルシウムステアロイルジラクテート、モノグリセリドのクエン酸エステル、モノグリセリドのジアセチル酒石酸エステル、脂肪酸のポリオキシエチレンソルビタンエステル、脂肪酸のスクロースエステル、及び他の乳化剤を含む。乳化剤はまた、例えば一般に知られているすす(soot)(油中水滴型エマルション安定化剤)又はシリカ粉末(水中油滴型エマルション安定化剤)といった、いくつかの微粒子マテリアルを含み得る。本発明の好ましい乳化剤は、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート(TWEEN40の名称で販売される)、ポリグリセロールポリシリノレエート(Danisco社(コペンハーゲン、デンマーク)により、PGPR90の名称及び商標で販売される)、カルシウム−ステアロイル−2−ラクチレート(American Ingredients Company(カンザスシティ、MO、USA)により、VERV Kの名称及び商標で販売される)、ソルビタンモノオレエート(Aldrich Chemical社(ミルウォーキー、WI、USA)により、SPAN80の名称及び商標で販売される)、及びこれらの混合物の群より選択される。より好ましい乳化剤は、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート、ポリグリセロールポリシリノレエート、又はこれらの混合物である。
【0042】
本発明の油及び水のエマルションは、水溶性多価金属塩又は酸のうち少なくとも1つを含む。本発明の使用に適する水溶性多価金属塩又は酸は、水中で遊離イオンの状態にならない、いかなる無機又は有機塩をも含み、イオンはアルギン酸塩によりゲルを形成することができる。適切な塩は、限定されることなく、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛の塩、他の塩、及びこれらの混合物を含む。好ましい塩は、水和又は無水の形態での塩化カルシウムである。油及び水のエマルションにおける塩含量を増やすと、とりわけ、カプセルが形成されたときのポリサッカライドゲル膜の厚さが増大する。油及び水のエマルションにおける塩は、少なくとも、一部の油及び水のエマルションを取り囲んでアルギン酸塩シェル膜を適切に形成するのに十分なゲル形成剤量で存在する。好ましくは、本発明の範囲内において、塩は、エマルションの25重量%までの量で油及び水のエマルションにおいて存在し、より好ましくは、エマルションの2重量%から15重量%の量で存在する。
【0043】
本発明の一実施態様において、エマルションは、水中油滴型エマルションである。エマルションは、水に、多価金属塩(前述の通り)(例えば、塩化カルシウム二水和物)及び少なくとも1つの乳化剤(前述の通り)(例えば、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)を溶解することにより調製され得る。溶液はその後、高い粘度の水中油滴型エマルションを形成するように油がゆっくりと加えられ得る時間の間、ホモジナイズされ得る。エマルションは、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、又は少なくとも90重量%の油を有し得る。水中油滴型エマルションに存在する油の量は、好ましくは、油、水、乳化剤、水溶性多価金属塩及び酸の70重量%から98重量%の量であり、より好ましくは、油、水、乳化剤、水溶性多価金属塩及び酸の85重量%から95重量%の量である。
【0044】
本発明の他の実施態様において、エマルションは、油中水滴型エマルションである。エマルションは、油中水滴型エマルションを提供するように混合物がホモジナイズされ得る時間の間、多価金属塩(前述の通り)及び少なくとも1つの乳化剤(前述の通り)の水溶液(例えば、ポリグリセロールポリリシノレエート)を、油(前述の通り)に加えることにより調製され得る。油中水滴型エマルションにおいて存在する油の量は、好ましくは、油、水、乳化剤並びに水溶性多価金属塩及び酸の65重量%から85重量%の量であり、より好ましくは、油、水、乳化剤並びに水溶性多価金属塩及び酸の70重量%から80重量%の量である。前述の通り、大豆油は、自然発生的な乳化剤レシチンを含む。大豆油の油中水滴型エマルションは、エマルションが付加的な乳化剤の添加無しで封入され得るように、十分に長い間安定的であり得る。
【0045】
本発明のさらなる他の実施態様において、エマルションは、水/油/水エマルションである。水/油/水エマルションは、油又は油溶性物質のみならず、水溶性物質又は水溶性活性成分をも封入するための手段を提供する。したがって、水中で水溶性物質の溶液からなる内部相は、油中水滴型エマルションを提供するように混合物がホモジナイズされ得る時間の間、油(前述の通り)及び乳化剤(前述の通り)(例えば、ポリグリセロールポリリシノレエート)からなる中間相に加えられ得る。そのように形成された油中水滴型エマルションはその後、高い粘性を有する水/油/水エマルションを形成するように混合物がホモジナイズされ得る時間の間、1価金属塩又は多価金属塩(前述の通り)及び乳化剤(前述の通り)の水溶液(例えば、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)からなる外部相に加えられ得る。水/油/水エマルションにおいて存在する油の量は、好ましくは、油、水、乳化剤並びに水溶性多価金属塩及び酸の60重量%から90重量%の量であり、より好ましくは、油、水、乳化剤並びに水溶性多価金属塩及び酸の70重量%から80重量%の量である。
【0046】
本発明の内容において好ましいエマルションは、上記において記載された水中油滴型エマルションである。封入前に水中油滴型エマルションから水を除去するために、高くされた温度及び高いエアフロー(例えば、約30℃、0.5−5m/s)での乾燥プロセスは、封入工程から大部分の水を取り除くことができ、その結果、乾燥状態でのカプセルが望まれる場合には、比較的乾燥された状態でのカプセルを提供し得る。それゆえ、独立したカプセル乾燥工程の長さは、短くされ得る。さらに、もし望まれるのであれば、封入−乾燥工程の長さを短くする一助として、エマルション中のいくらかの水が、水混和性溶媒(例えば、直鎖の又は分岐した炭素数1−4の炭素長のアルコール(例えばエタノール))で置換され得る。
【0047】
本発明のシームレスカプセルはまた、油以外の封入マテリアルを含み得る。これらの付加的な封入マテリアルは、いかなる油、又は水溶性の薬学的、栄養補助的、及び獣医学的活性成分でもあり得る。したがって、このような付加的な封入マテリアルは、油中に溶解され、又は分散され得る。
【0048】
本発明のカプセルは、球体、楕円体、円筒状、又は長楕円体といった、いかなる形をもとり得る。それらは、乾燥状態にあってもよく、意図された用途に依存した可変のカプセル直径を有していてもよい;例えば、カプセル直径は、比較的小さい又はいくらかより大きくてもよく、0.5ミリメーターから35ミリメーターの範囲にあってもよく、この場合、アルギン酸塩フィルムは一般に40μmから500μmの範囲の厚さを有する。
【0049】
カプセルは、乾燥されると、充填マテリアル中、5重量%未満、3重量%未満、又は0重量%−0.5重量%の間の量の水を含有し得る。典型的には、乾燥されると、エマルションは、もはや充填マテリアル中に存在せず、それは、その構造を維持する無水エマルションの形態で見られ得る。
【0050】
ゲル化され、及び任意に洗浄された湿潤カプセルはさらに、グリセロール及び非結晶性ソルビトールといった非結晶性可塑剤の混合物を有する可塑剤で処理される。
【0051】
本発明のすべての実施態様は、乾燥されたシームレスカプセル中の充填マテリアルが、シームレスなアルギン酸塩カプセルを製造するプロセスにおいて用いられるエマルション、ゲル化溶液、及び可塑化溶液と同様に、マルメロ粘液を含有しないところのものを含む。
【0052】
本発明は、下記の実施例を参照することにより、より詳細に記載されるが、本発明がそれに限定されるとして解釈されないと理解されるべきである。本明細書において他に示唆のない限り、すべての部、パーセント、比率、及び同様の記載は、重量によるものである。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
可塑剤浴組成
カプセルは、以下の通り、可塑化溶液中の異なる可塑剤組成を用いて調製された。
【0054】
水中油滴型エマルションは、米国特許出願2005/0106233号又は下記に従って調製された。全体の湿潤プロセスの間、溶液は、窒素散布され、低い酸素レベルを作り出し及び維持するように、窒素雰囲気下に置かれた。水相は、最初に水にEDTAを溶解させる(約0.1M)ことにより、及び次に無水塩化カルシウムを加える(7g/10mL溶液)ことにより、調製された。その後、Polysorbate40(0.8g)を加え、溶液を20分間撹拌した。エマルションを形成するように、水溶液にK85EE(登録商標)(高濃度ω−3 脂肪酸エチルエステル、Pronova BioPharma社(ノルウェイ、Lysaker)より購入)を加え、約30分間にわたってゆっくり撹拌した。エマルションを、約80000cPから100000cPのエマルションの粘度をもたらすのに十分な速度で、インラインミキサーを介して汲み上げた。エマルションをノズルにより押し出し、約1.1gのフラグメントを0.1mmの細いワイヤーで形成した。得られた均一のフラグメントを、アルギン酸塩ゲル化溶液浴に移した。
【0055】
この実施例において、エマルションの水相における塩化カルシウム塩由来のカルシウムイオンは、浴溶液中の周囲のアルギン酸ナトリウムと反応して、エマルションフラグメントの周囲にアルギン酸カルシウムのゲルを形成する。このゲルは、変性され得、カプセルフィルムを形成し、また、カプセルシェル又はシェル膜と称される。
【0056】
湿潤カプセルを約20℃でおよそ4時間精製水に移した後、均一なフラグメントを約20℃でおよそ20分間ゲル化浴に置いた。洗浄されたカプセルをその後、約20℃で25分間、表1に従って、可塑剤の水溶液に移した。カプセルを実験室スケールで作り、バッチを7つのサブバッチに分けた。各々のサブバッチを異なる可塑剤溶液中で可塑化した。
【0057】
【表1】
【0058】
アルギン酸塩カプセルを、3工程のプロセスで乾燥させた:a)初期集中乾燥を、下からカプセルを保持する乾燥メッシュを提供する2つの3600m
3/hrのブロワーを用いて行い;b)カプセル重量が1300mg以下に落ちた時に、ブロワーをオフし、天井型扇風機をオンにし;c)25分後、扇風機をオフし、カプセルを完全に乾燥させるために乾燥メッシュに置いた。
【0059】
乾燥後、いくつかのカプセルを酸化測定のために取っておいた。他のカプセルを、開放容器中で、25℃及び60%RHで、環境制御キャビネットにおいて、段階的な長さの時間、インキュベートした。
【0060】
1、2、4、及び8日後、カプセルを環境制御キャビネットから回収し、吸湿、及び破壊強度又は弾性を測定した。
【0061】
4%グリセロール及び12.5%Polysor(登録商標)85/70/00浴において可塑化されたカプセル由来のカプセルフィルムの分析は、35重量%アルギン酸カルシウム、14重量%グリセロール、36重量%Polysorb固体(それは、ソルビトール、ソルビタン、及び同様物である)、及び15重量%水の組成物をもたらした。
【0062】
(実施例2)
予測、充填マテリアルの酸化
充填マテリアルの酸化は、フィルム組成物とは異なり得る。一般に、カプセルを調製するためのプロセス工程のいくつかは、得られるカプセルの低酸素レベルを達成するために、無酸素環境下で調製される必要がある。乾燥プロセスの制御は、乾燥工程の間、活性薬学的成分の酸化を回避するために重要である。
【0063】
グリセロールは、非常に良い可塑剤として知られており、乾燥条件において非常に成形しやすいカプセルをもたらす。しかしながら、可塑剤としてグリセロールのみを用いたアルギン酸塩カプセルは、高い酸素透過率を有し得る。非結晶性ソルビトールは、効果の低い可塑剤であり、高いレベルのそれを用いて調製されたカプセルは、乾燥コンディションにおいて壊れやすい傾向にある。
【0064】
カプセルは、実施例1の通り作られた。カプセルを乾燥後、25℃及び60%RHで開放容器において2週間保存後、酸化をアニシジン価(AnV)及びペルオキシド価(PV)を決定することにより測定した。TOTOXは、第一(ペルオキシド/ヒドロペルオキシド)酸化及び第二(アニシジン)酸化の両方の値であり、式:TOTOX=AnV+2PVに従う。ヨーロッパ薬局方のTOTOX測定方法が適切である。
【0065】
期待される酸化は、以下のように、25℃及び60%RHで開放容器における2週間の保存で得られる。可塑剤としてグリセロールのみを有するカプセルは、30半ばにおけるTOTOX値の増加が予測される。8:1と1:1との間のPolysorb/グリセロール比を有する可塑化浴において調製されたカプセルは、約10未満、好ましくは約8未満のTOTOX値の増加が予測される。約3:1と8:1との間のPolysorb/グリセロール比を用いて調製されたカプセルは、約5未満のTOTOX値の増加が予測される。
【0066】
したがって、可塑剤組成は、カプセルフィルムの酸素透過性に影響を与える。グリセロールに伴う非結晶性ソルビトールの比較的少量の添加は、酸化を低減させる。作用機序に限定されるものではないが、酸素透過性は、アルギン酸塩フィルムの水含有量に関連し得る。非結晶性ソルビトールは、グリセロールよりも吸湿性が低いからである。
【0067】
(実施例3)
カプセルシェルの吸湿
アルギン酸塩カプセルのフィルムにおける吸湿の経時的変化を、25℃及び60%相対湿度(RH)で開放容器において保存することで評価した。
【0068】
吸湿の正確な分析は、重量増加の測定であり、それは、カプセルフィルム及びカプセル自体のいずれかにおいて測定され得る。水分レベルはまた、水分分析器を用いることにより測定され得るが、いくらかの不確実性が、上昇する温度でのグリセロール(グリセリン)蒸発及び/又は分解により生じる。
【0069】
フィルムの厚さの増加は、吸湿を追跡する他の方法である。
【0070】
カプセルの重量は、開放容器での保存後に増加した。すべてのカプセルで、0〜1日で重量が増加し、最初の増加後は実質的に不変であった。可塑剤として高い比率の非結晶性ソルビトールは概して、より低いカプセル重量をもたらす。可塑剤としてグリセロールのみで作られたカプセルは、中間の重量を有していた。
【0071】
カプセルフィルムの絶対重量の経時変化が測定された。フィルムの結果は、全体のカプセルの結果と同様であったが、値の変動性はより小さかった。
【0072】
カプセルフィルム重量における正規化された増加の経時変化が測定された。この測定により、フィルムは、1日目で、グリセロールフィルムに対して約7%、3.1非結晶性ソルビトール/グリセロール(S/G)フィルムに対して約20%、8日目で、グリセロールフィルムに対して約11%、3.1 S/Gフィルムに対して約20%に増加した。
【0073】
高いグリセロールレベルに起因して、保存時のグリセロールの漏出が、AC−7(10%グリセロール)カプセルにおいて見られた。カプセル表面におけるグリセロールのいくらかを、測定前にこれらのカプセルにおいて取り除いた。さらに、カプセルマテリアルのいくらかが、シェルから漏出した。これらのファクターは、重量分析及びフィルム厚分析を歪曲する。
【0074】
(実施例4)フィルム厚及び乾燥含量
アルギン酸塩カプセルのフィルムの厚さは、較正された光学顕微鏡により測定された。安定性試験の間、フィルムの厚さの進行が測定された。フィルムの厚さは概して、ソルビトール含量の増加に伴い増加した。フィルムの厚さは、ほとんどのカプセルにおいて、0日目から1日目へと増加し、概して1日後からは不変であった。
【0075】
フィルムの乾燥含量の経時変化が、実施例3の通り、カプセル保存に対して測定された。乾燥含量は、すべてのカプセルにおいて、0日目から1日目へと減少し、実質的に1日後からは不変であった。例えば、AC1カプセルでは、0日目での約79%乾燥含量から1日目での約70%乾燥含量に減少し、AC6カプセルでは、0日目での約90%から1日目での約81%に減少した。
【0076】
このように、カプセルフィルムは、試験された安定性の設定において迅速に水分を吸収した。可塑剤レベルを上げると、フィルムの厚さ及びフィルム重量が増加した。最も高いレベルのソルビトールを有する処方物は、最も低い割合の吸湿を示した。AC5及びAC6における吸湿は、他のカプセルに比して低かった。これらのサンプルは、8日間の保存後、80%より高いフィルム乾燥含量を有していた。AC4カプセルは、8日間の保存後、およそ80%のフィルム乾燥含量を有していた。他の4つの処方物は、約75%のフィルム乾燥含量を有していた。
【0077】
(実施例5)カプセルの破壊強度及び弾性
カプセルの破断強度及び弾性の経時変化は、開始時、乾燥コンディション(0日目)及び25℃及び60%相対湿度(RH)での開放容器中の段階的期間での保存において、評価された。
【0078】
カプセルの破壊強度及び弾性は、平行プレートを用いてSMSテクスチャ解析機を用いて最も良好に測定される。カプセルの破壊強度は、カプセルを直立させた状態ではなく、平行の状態に置いて評価された。カプセルの脆性は、非結晶性ソルビトールが高いレベルで可塑剤として用いられ、カプセルが乾燥コンディション下で保存された場合にのみ、増加した。
【0079】
カプセルは、実施例1と同様に作られた。カプセルを、カプセル層が単層又は二層のいずれかからなるように、開放容器において25℃及び60%RHでインキュベートした。1、2、4及び8日後、カプセルを環境制御キャビネットから回収し、吸湿及び破壊強度又は弾性を分析した。
【0080】
破壊強度を、8日間の保存の経過後に評価した。カプセル処方物のほとんどは、時間が経過しても実質的に不変の破壊強度を有していた。AC4、AC5及びAC6では、0日目から2日目にわたって、若干強度が減少し、AC1及びAC2では、同期間、わずかに破壊強度が上昇した。
【0081】
弾性の進行を測定した。弾性は、カプセルを0.5mm押しつけるのに必要な力(変形の力)である。したがって、値が大きくなると、カプセルは硬くなり、弾性が低くなる。すべてのカプセル処方物で、0日目と1日目との間弾性が高くなり、一方、グリセロールカプセルであるAC7は最も少ない増加率を示した。
【0082】
(実施例6)脆性
脆性は、落下試験により評価された。表2は、開始時のコンディション(およそ30%RH及び23℃)での落下試験の結果(10カプセルのうち、1.5メートルの高さからスチールバケットへ落下させた後に破損せずに残ったカプセルの数)を示す。これらのコンディションは、相対的に乾燥状態であるとみなされ、“乾燥コンディション”を示す。
【0083】
【表2】
【0084】
乾燥コンディションでの落下試験は、可塑剤浴処方物間の差異を明確に示す。浴においてより高レベルのグリセロールを有する処方物は、落下試験で生き残り、一方、非常に低レベルのグリセロールを有する処方物は、より容易に破損する。AC6は、脆弱なシェルを有する。
【0085】
(実施例7)コアの変化
本実施例において、発明者らは、可塑剤組成が、エマルションの単層の油層への変化に影響を与えるかについて検討した。エマルションは、安定的なエマルションから、乾燥状態の液体油相に変化するらしい。いくつかのパラメータが、変化のプロセスに影響を与え、可塑剤組成は、これらのひとつである。コアの変化を評価するために、カプセルを切り開き、視覚的に評価した。
【0086】
カプセルは、実施例1に従って調製した。1,2,4及び8日後、カプセルを環境制御キャビネットから回収し、コアの変化を分析した。
【0087】
結果を表3に示す。それは、測定の期間変化しなかったコアの割合を示す。
【0088】
【表3】
【0089】
このように、変化の程度と可塑剤組成との間には明確な依存性が存在する。非結晶性ソルビトールのレベルの増加及びグリセロールのレベルの減少は、より遅い変化及びより低い程度への変化をもたらす。これらのコンディション下、AC5及びAC6は、生成後及び保存時の両方において、カプセル内部で変化しないエマルションの高い可能性を有する。
【0090】
(実施例8)充填マテリアルの酸化
充填マテリアルの酸化は、フィルム組成物によって異なり得る。概して、プロセス工程のいくつかは、完成されたカプセルにおいて低い酸素レベルを達成するために、無酸素条件下で操作される必要がある。乾燥プロセスの制御は、乾燥工程の間、活性薬学的成分の酸化を回避するのに不可欠である。さらに、唯一の可塑剤としてグリセロールを有するアルギン酸塩カプセルの閉鎖容器における安定性は、酸化に関連して比較的低く、唯一の可塑剤としての非結晶性ソルビトールの使用は、低い弾性を有するアルギン酸塩カプセルをもたらすことが示された。
【0091】
グリセロールは、非常に良い可塑剤として知られ、乾燥コンディションにおいて非常にしなやかなカプセルをもたらす。しかしながら、可塑剤としてグリセロールのみを有するアルギン酸塩カプセルは、高い酸素浸透性を有し得る。非結晶性ソルビトールは、可塑剤としてはより効果的ではなく、より低いフィルム酸素透過性を保証する。しかしながら、ソルビトールカプセルは、乾燥コンディションにおいて脆弱である傾向を有する(落下試験のセクション参照)。
【0092】
カプセルは、実施例1の通り作られた。カプセル乾燥後、酸化を25℃及び60%RHで、開放容器中で2週間の保存の後、アニシジン価(AnV)及びペルオキシド価(PV)を決定することにより測定した。TOTOXは、第一(ペルオキシド/ヒドロペルオキシド)の値及び第二(アニシジン)の値の両方の値であり、式:TOTOX=AnV+2PVに従う。TOTOXは、ヨーロッパ薬局方の方法に従って測定され得る。
【0093】
酸化の結果を、表4に示す。
【0094】
【表4】
【0095】
表4より、可塑剤組成は、カプセルフィルムの酸素透過性及びひいては充填マテリアルの油の酸化に強い影響を与える。グリセロールに伴う比較的少量の非結晶性ソルビトールでさえも、酸化を低減させる。グリセロールのより高いレベルは、より高い酸化レベルをもたらす。非結晶性ソルビトールは、酸化を制限することに関して良い可塑剤である。ソルビトールを有するすべてのカプセルでは、ソルビトール無しでグリセロールを有するカプセルに比して、酸化の割合がかなり低くなる。作用のメカニズムに限定されるものではないが、酸素透過性は、アルギン酸塩フィルムの水分含量に関連し得る。ソルビトールはグリセロールほどたくさん吸湿しないからである。試験された組成のうち、AC4、AC5及びAC6が特に、許容可能な酸素透過性特性を有する。
【0096】
理解の明確さの目的で説明及び例示により、本発明について詳細かつ十分に記載したが、同様物が、本発明の範囲又はいかなる特定の実施態様に影響を与えることなく、コンディション、組成、及び他のパラメータの広い範囲内及び同等の範囲内における本発明の修正又は変形により実施され得ること、並びに、このような修正又は変形は、添付された特許請求の範囲内に包含されるように意図されることは、本技術分野の当業者にとって明白であろう。本明細書において記載されたすべての公報、特許及び特許出願は、本発明が関連する技術分野における当業者のレベルを示し、並びに、各々個々の公報、特許又は特許出願が参照により取り込まれるように特別に及び個別に示唆されたように、同程度に参照により本明細書に取り込まれる。