(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第二接着剤層、又は当該第二接着剤層上にその他の接着剤層を設ける場合は、当該その他の接着剤層の少なくとも何れかに、染料又は顔料の少なくとも何れかが含有されている請求項1または2に記載のダイボンドフィルム。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本実施の形態に係るダイボンドフィルムについて、以下に説明する。
図1は、本実施の形態に係るダイボンドフィルムを概略的に示す断面模式図である。
【0023】
図1に示すように、ダイボンドフィルム10は少なくとも第一接着剤層1と第二接着剤層2が積層された構造である。但し、適宜必要に応じて他の接着剤層が積層された構成であってもよい。この場合、他の接着剤層は、第二接着剤層2上に設けられるのが好ましい。
【0024】
前記第一接着剤層1及び第二接着剤層2はそれぞれ、少なくともエポキシ樹脂、フェノール樹脂及びアクリル樹脂により形成されているのが好ましい。但し、前記エポキシ樹脂とフェノール樹脂の合計重量をX重量部とし、アクリル樹脂の重量をY重量部としたとき、前記第一接着剤層1におけるX/(X+Y)は0.5以上0.95以下の範囲内が好ましく、0.51以上0.94以下の範囲内がより好ましく、0.52以上0.93以下の範囲内が更に好ましい。前記X/(X+Y)を0.5以上にすることにより、ボンディングワイヤーにて被着体と電気的に接続された半導体素子上に、ダイボンドフィルム10を圧着する際に、当該ボンディングワイヤーを第一接着剤層1中に埋没させることを可能にする。その一方、前記X/(X+Y)を0.95以下にすることにより、前記圧着の際に第一接着剤層1がはみ出すのを防止し、被着体側のワイヤーボンディング用の電気的端子が塞がれるのを防ぐことができる。
【0025】
また、前記第二接着剤層におけるX/(X+Y)は、0.15以上0.5未満の範囲内が好ましく、0.16以上0.49未満の範囲内がより好ましく、0.17以上0.48未満の範囲が更に好ましい。前記X/(X+Y)を0.15以上にすることにより、半導体ウェハとの接着性を良好にすることができる。その一方、前記X/(X+Y)を0.5未満にすることにより、半導体素子上に他の半導体素子をダイボンディングする際に、第一接着剤層1の内部に埋め込まれているボンディングワイヤーの一部が他の半導体素子の裏面に接触するのを防止することができる。これにより、ボンディングワイヤーの変形や切断を防止し、高信頼性の半導体装置を製造することができる。
【0026】
前記エポキシ樹脂は、接着剤組成物として一般に用いられるものであれば特に限定は無く、例えばビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオンレン型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型等の二官能エポキシ樹脂や多官能エポキシ樹脂、又はヒダントイン型、トリスグリシジルイソシアヌレート型若しくはグリシジルアミン型等のエポキシ樹脂が用いられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらのエポキシ樹脂のうちノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型樹脂又はテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂が特に好ましい。これらのエポキシ樹脂は、硬化剤としてのフェノール樹脂との反応性に富み、耐熱性等に優れるからである。尚、エポキシ樹脂は、半導体素子を腐食させるイオン性不純物等の含有が少ない。
【0027】
更に、前記フェノール樹脂は、前記エポキシ樹脂の硬化剤として作用するものであり、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらのフェノール樹脂のうち、下記化学式で表されるビフェニル型フェノールノボラック樹脂や、フェノールアラルキル樹脂が好ましい。半導体装置の接続信頼性を向上させることができるからである。
【0028】
【化1】
尚、前記nは0〜10の自然数であることが好ましく、0〜5の自然数であることがより好ましい。前記数値範囲内にすることにより、ダイボンドフィルム10の流動性の確保が図れる。
【0029】
前記エポキシ樹脂とフェノール樹脂の配合割合は、例えば、前記エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1当量当たりフェノール樹脂中の水酸基が0.5〜2.0当量になるように配合することが好適である。より好適なのは、0.8〜1.2当量である。即ち、両者の配合割合が前記範囲を外れると、十分な硬化反応が進まず、エポキシ樹脂硬化物の特性が劣化し易くなるからである。
【0030】
本実施の形態に於いては、ダイボンドフィルム10の構成材料として熱硬化触媒を使用してもよい。前記熱硬化触媒としては特に限定されず、例えば、イミダゾール系化合物、トリフェニルフォスフィン系化合物、アミン系化合物、トリフェニルボラン系化合物、トリハロゲンボラン系化合物等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0031】
前記イミダゾール系化合物としては、2−メチルイミダゾール(商品名;2MZ)、2−ウンデシルイミダゾール(商品名;C11−Z)、2−ヘプタデシルイミダゾール(商品名;C17Z)、1?2−ジメチルイミダゾール(商品名;1.2DMZ)、2−エチル−4−メチルイミダゾール(商品名;2E4MZ)、2−フェニルイミダゾール(商品名;2PZ)、2−フェニル−4−メチルイミダゾール(商品名;2P4MZ)、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール(商品名;1B2MZ)、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール(商品名;1B2PZ)、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール(商品名;2MZ−CN)、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール(商品名;C11Z−CN)、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト(商品名;2PZCNS−PW)、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン(商品名;2MZ−A)、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン(商品名;C11Z−A)、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン(商品名;2E4MZ−A)、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物(商品名;2MA−OK)、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(商品名;2PHZ−PW)、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(商品名;2P4MHZ−PW)等が挙げられる(いずれも四国化成工業(株)製)。
【0032】
前記トリフェニルフォスフィン系化合物としては特に限定されず、例えば、トリフェニルフォスフィン、トリブチルフォスフィン、トリ(p−メチルフェニル)フォスフィン、トリ(ノニルフェニル)フォスフィン、ジフェニルトリルフォスフィン等のトリオルガノフォスフィン、テトラフェニルホスホニウムブロマイド(商品名;TPP−PB)、メチルトリフェニルホスホニウム(商品名;TPP−MB)、メチルトリフェニルホスホニウムクロライド(商品名;TPP−MC)、メトキシメチルトリフェニルホスホニウム(商品名;TPP−MOC)、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド(商品名;TPP−ZC)等が挙げられる(いずれも北興化学社製)。また、前記トリフェニルフォスフィン系化合物としては、エポキシ樹脂に対し実質的に非溶解性を示すものであることが好ましい。エポキシ樹脂に対し非溶解性であると、熱硬化が過度に進行するのを抑制することができる。トリフェニルフォスフィン構造を有し、かつエポキシ樹脂に対し実質的に非溶解性を示す熱硬化触媒としては、例えば、メチルトリフェニルホスホニウム(商品名;TPP−MB)等が例示できる。尚、前記「非溶解性」とは、トリフェニルフォスフィン系化合物からなる熱硬化触媒がエポキシ樹脂からなる溶媒に対し不溶性であることを意味し、より詳細には、温度10〜40℃の範囲において10重量%以上溶解しないことを意味する。
【0033】
前記トリフェニルボラン系化合物としては特に限定されず、例えば、トリフェニルボラン構造とトリフェニルフォスフィン構造を有するものも含まれる。当該トリフェニルボラン構造及びトリフェニルフォスフィン構造を有する化合物としては特に限定されず、例えば、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート(商品名;TPP−K)、テトラフェニルホスホニウムテトラ−p−トリボレート(商品名;TPP−MK)、ベンジルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート(商品名;TPP−ZK)、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン(商品名;TPP−S)等が挙げられる(いずれも北興化学(株)製)。
【0034】
前記アミノ系化合物としては特に限定されず、例えば、モノエタノールアミントリフルオロボレート(ステラケミファ(株)製)、ジシアンジアミド(ナカライテスク(株)製)等が挙げられる。
【0035】
前記トリハロゲンボラン系化合物としては特に限定されず、例えば、トリクロロボラン等が挙げられる。
【0036】
前記熱硬化触媒の配合割合としては、有機成分100重量部に対し0.01〜1重量部の範囲内が好ましく、0.01〜0.5重量部の範囲内がより好ましく、0.01〜0.4重量部の範囲内が特に好ましい。配合割合を0.01重量部以上にすることにより、ダイボンディング時においては未反応であったエポキシ基同士を、例えば、後硬化工程までには重合させ、当該未反応のエポキシ基を低減ないは消失させることができる。その結果、半導体素子上に他の半導体素子を確実に接着固定させ剥離のない半導体装置の製造が可能になる。その一方、配合割合を1重量部以下にすることにより、硬化阻害の発生を防止することができる。
【0037】
前記アクリル樹脂としては、例えば、炭素数30以下、特に炭素数4〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基を有するアクリル酸又はメタクリル酸のエステルの1種又は2種以上を成分とする重合体等が挙げられる。前記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、へプチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、テトラデシル基、ステアリル基、オクタデシル基、又はドデシル基等が挙げられる。
【0038】
また、前記重合体を形成する他のモノマーとしては、特に限定されるものではなく、例えばアクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸若しくはクロトン酸等の様なカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸若しくは無水イタコン酸等の様な酸無水物モノマー、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル若しくは(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等の様なヒドロキシル基含有モノマー、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート若しくは(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等の様なスルホン酸基含有モノマー、又は2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等の様な燐酸基含有モノマーが挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0039】
更に、前記アクリル樹脂としてはアクリル共重合体が好ましい。当該アクリル共重合体に用いるモノマー成分としては特に限定されず、例えば、ブチルアクリレート、エチルアクリレート等が挙げられる。本発明に於いては、全モノマー成分に対し、10〜60重量%の範囲内のブチルアクリレートと、40〜90重量%の範囲内のエチルアクリレートとを含み構成される共重合体が好ましい。
【0040】
また、前記モノマー成分と共重合可能な他のモノマー成分としては特に限定されず、例えば、アクリロニトリル等が挙げられる。これら共重合可能なモノマー成分の使用量は、全モノマー成分に対し1〜20重量%の範囲内であることが好ましい。当該数値範囲内の他のモノマー成分を含有させることにより、凝集力、接着性などの改質が図れる。
【0041】
アクリル共重合体の重合方法としては特に限定されず、例えば、溶液重合法、隗状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の従来公知の方法を採用することができる。
【0042】
前記アクリル共重合体のガラス転移温度(Tg)は、−30〜30℃であることが好ましく、−20〜15℃であることがより好ましい。前記ガラス転移温度を−30℃以上にすることにより耐熱性が確保され得る。その一方、30℃以下にすることにより、表面状態が粗い半導体ウェハにおけるダイシング後のチップ飛びの防止効果が向上する。
【0043】
前記アクリル共重合体の重量平均分子量は、10万以上であることが好ましく、60万〜120万であることがより好ましく、70万〜100万であることが特に好ましい。重量平均分子量を10万以上にすることにより、配線基板等の被着体や半導体素子、半導体ウェハ表面に対する高温時の接着性に優れ、かつ、耐熱性も向上させることができる。尚、重量平均分子量が120万以下にすることにより、容易に有機溶剤への溶解することができる。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロトマトグラフィー法(GPC)で標準ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算値である。
【0044】
前記ダイボンドフィルム10においては、無機フィラー又は有機フィラー等のフィラーが含有されていてもよい。取り扱い性及び熱伝導性の向上、溶融粘度の調整、並びにチキソトロピック性の付与等の観点からは、無機フィラーが好ましい。但し、第一接着剤層1においては、その内部に複数のボンディングワイヤーの一部が埋没されており、これらのボンディングワイヤーが相互に電気的に干渉するのは好ましくない。従って、第一接着剤層1に対しては、導電性が付与され得る無機フィラーの添加は好ましくない。
【0045】
前記無機フィラーとしては特に限定されず、例えば、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、窒化ホウ素、結晶質シリカ、非晶質シリカ等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。熱伝導性の向上の観点からは、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、結晶性シリカ、非晶質シリカ等が好ましい。また、ダイボンドフィルム10の接着性とのバランスの観点からは、シリカが好ましい。また、前記有機フィラーとしては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ナイロン、シリコーン等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0046】
前記フィラーの平均粒径は、0.005〜10μmが好ましく、0.05〜1μmがより好ましい。フィラーの平均粒径が0.005μm以上であると、被着体に対する濡れ性を良好なものにし、接着性の低下を抑制することができる。その一方、前記平均粒径を10μm以下にすることにより、フィラーの添加によるダイボンドフィルム10に対する補強効果を高め、耐熱性の向上が図れる。尚、平均粒径が相互に異なるフィラー同士を組み合わせて使用してもよい。また、フィラーの平均粒径は、例えば、光度式の粒度分布計(HORIBA製、装置名;LA−910)により求めた値である。
【0047】
フィラーの含有量は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びアクリル樹脂の合計100重量部に対し、0重量部を超えて80重量部以下であることが好ましく、0重量部を超えて70重量部以下であることがより好ましい。フィラーの含有量が0重量部であるとフィラー添加による補強効果がなく、ダイボンドフィルム10の耐熱性が低下する場合がある。その一方、含有量が80重量部を超えると半導体素子や半導体ウェハに対する濡れ性が低下し、接着性が低下する場合がある。
【0048】
前記フィラーの形状は特に限定されず、例えば球状、楕円体状のものを使用することができる。
【0049】
前記ダイボンドフィルム10を予めある程度架橋をさせておく場合には、作製に際し、重合体の分子鎖末端の官能基等と反応する多官能性化合物を架橋剤として添加させておくのがよい。これにより、高温下での接着特性を向上させ、耐熱性の改善を図ることができる。また架橋剤は、第一接着剤層1及び第二接着剤層2の双方に対して添加してもよく、いずれか一方にのみ添加してもよい。
【0050】
前記架橋剤としては、従来公知のものを採用することができる。特に、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、多価アルコールとジイソシアネートの付加物等のポリイソシアネート化合物がより好ましい。架橋剤の添加量としては、前記の重合体100重量部に対し、通常0.05〜7重量部とするのが好ましい。架橋剤の量が7重量部より多いと、接着力が低下するので好ましくない。その一方、0.05重量部より少ないと、凝集力が不足するので好ましくない。また、この様なポリイソシアネート化合物と共に、必要に応じて、エポキシ樹脂等の他の多官能性化合物を一緒に含ませるようにしてもよい。
【0051】
また、ダイボンドフィルム10には、必要に応じて他の添加剤を適宜に配合することができる。他の添加剤としては、例えば難燃剤、シランカップリング剤又はイオントラップ剤等が挙げられる。
【0052】
前記難燃剤としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、臭素化エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0053】
前記シランカップリング剤としては、例えば、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。これらの化合物は、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0054】
前記イオントラップ剤としては、例えばハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0055】
前記第一接着剤層1の熱硬化前の120℃における剪断損失弾性率G”は、5×10
2Pa以上1.5×10
4Pa以下の範囲内が好ましく、5×10
2Pa以上1.2×10
4Pa以下の範囲内がより好ましく、5×10
2Pa以上1×10
4Pa以下の範囲内が更に好ましい。前記剪断損失弾性率G”を5×10
2Pa以上にすることにより、半導体素子上にダイボンドフィルム10を圧着する際に、第一接着剤層1のはみ出しを防止し、被着体側のワイヤーボンディング用の電気的端子を塞ぐのを防止することができる。その一方、前記剪断損失弾性率G”を1.5×10
4Pa以下にすることにより、前記圧着の際に、ボイド(気泡)を発生させることなく第一接着剤層1中にボンディングワイヤーを埋没させることができる。
【0056】
前記第二接着剤層2の熱硬化前の120℃における剪断損失弾性率G”は、2×10
4Pa以上1×10
6Pa以下の範囲内が好ましく、2×10
4Pa以上8×10
5Pa以下の範囲内がより好ましく、2×10
4Pa以上5×10
5Pa以下の範囲内が更に好ましい。前記剪断損失弾性率G”を2×10
4Pa以上にすることにより、半導体素子上に他の半導体素子をダイボンディングする際に、第一接着剤層1中に埋没しているボンディングワイヤーの一部が、他の半導体素子の裏面と接触するのを防止することができる。その一方、前記剪断損失弾性率G”を1×10
6Pa以下にすることにより、半導体ウェハとの密着性を確保することができる。尚、第一接着剤層1及び第二接着剤層の剪断損失弾性率G”の値は、例えば、後述の方法により測定することが可能である。
【0057】
本実施の形態に係るダイボンドフィルム10を半導体素子上にダイボンディングしたときの仮固着時の第一接着剤層1の剪断接着力は、当該半導体素子に対して0.2MPa以上であることが好ましく、0.2〜10MPaであることがより好ましい。前記剪断接着力を0.2MPa以上にすることにより、ダイボンドフィルム10を加熱して完全に熱硬化させることなくワイヤーボンディング工程を行っても、当該工程に於ける超音波振動や加熱により、第一接着剤層1と半導体素子の間や、第二接着剤層2と他の半導体素子の間の接着面でずり変形を生じることがない。即ち、ワイヤーボンディングの際の超音波振動により半導体素子等が動くことがなく、これにより、ワイヤーボンディングの成功率が低下するのを抑制することができる。
【0058】
第二接着剤層2上に半導体ウェハをマウントしたときの当該第二接着剤層2と半導体ウェハの界面の180度ピール剥離力は、0.5N/10mm以上であることが好ましく、1N/10mm以上であることがより好ましく、1.5N/10mm以上であることが更に好ましい。180度ピール剥離力を0.5N/10mm以上にすることにより、半導体ウェハをダイボンドフィルム10と共にブレードダイシングを行い、半導体素子を形成する際、当該半導体素子のチップ飛びが発生するのを低減することができる。尚、前記180度ピール剥離力は第二接着剤層2の熱硬化前の値である。
【0059】
前記ダイボンドフィルム10の総厚は、40〜120μmの範囲内が好ましい。総厚を40μm以上にすることにより、ボンディングワイヤーの埋め込みを可能にする。その一方、120μm以下にすることにより、半導体装置の薄型化が図れる。また、第一接着剤層1の厚さをd
1(μm)とし第二接着剤層2の厚さをd
2(μm)としたとき、d
1/(d
1+d
2)は0.6以上0.95以下の範囲内が好ましく、0.6以上0.9以下の範囲内がより好ましく、0.7以上0.9以下の範囲内が更に好ましい。前記d
1/(d
1+d
2)を0.6以上にすることにより、第一接着剤層1の内部に埋没されているボンディングワイヤーが第二接着剤層2側に突出するのを防止し、他の半導体素子とボンディングワイヤーとの接触を防ぐことができる。その一方、前記d
1/(d
1+d
2)を0.95以下にすることにより、ボンディングワイヤーが第二接着剤層2側に突出した場合にも、他の半導体素子とボンディングワイヤーとの接触の防止が図れる。
【0060】
前記第一接着剤層1における金属イオンの含有量は100ppm以下が好ましく、80ppm以下がより好ましい。金属イオンの含有量を100ppm以下にすることにより、第一接着剤層1の内部を通過させるボンディングワイヤーが複数の場合にも、これらのボンディングワイヤー間で電気的な干渉が発生するのを防止することができ、高信頼性の半導体装置の製造を可能にする。尚、前記金属イオンは、例えば、後述の染料や顔料に由来するものを意味する。
【0061】
前記第二接着剤層2には、染料又は顔料の少なくとも何れかが含有されていることが好ましい。これにより、ダイボンドフィルム10の表裏の識別を容易にし、かつ他の種類のダイボンドフィルムとの区別も容易にすることができる。その結果、半導体装置の製造プロセスにおいてダウンタイムの短縮を可能にし、歩留まりの向上が図れる。尚、その他の接着剤層を第二接着剤層2上に積層する場合は、当該その他の接着剤層中にも染料や顔料を添加してもよい。
【0062】
前記染料としては特に限定されず、具体的には、例えば、ニトロ染料、ニトロソ染料、スチルベン染料、ピラゾロン染料、チアゾール染料、アゾ染料、ポリアゾ染料、カルボニウム染料、キノアニル染料、インドフェノール染料、インドアニリン染料、インダミン染料、キノンイミン染料、アジン染料、酸化染料、オキサジン染料、チアジン染料、アクリジン染料、ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、チオキサンテン染料、硫化染料、ピリジン染料、ピリドン染料、チアジアゾール染料、チオフェン染料、ベンゾイソチアゾール染料、ジシアノイミダゾール染料、ベンゾピラン染料、ベンゾジフラノン染料、キノリン染料、インジゴ染料、チオインジゴ染料、アントラキノン染料、ベンゾフェノン染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、フタロシアニン染料、シアニン染料、メチン染料、ポリメチン染料、アゾメチン染料、縮合メチン染料、ナフタルイミド染料、ペリノン染料、トリアリールメタン染料、ザンセン染料、アミノケトン染料、オキシケトン染料、及びインジゴイド染料などが挙げられる。これらの染料は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
前記染料の配合量は、第二接着剤層2の全成分100重量部に対して、0.1〜1重量部の範囲内が好ましく、0.1〜0.8重量部の範囲内が好ましい。前記配合量を0.1重量部以上にすることにより、第二接着剤層2の識別を一層容易にすることができる。その一方、前記配合量を1重量部以下にすることにより、不純物イオンを低減させることができる。
【0064】
前記顔料としては特に限定されず、具体的には、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、シェンナ、アンバー、カオリン、炭酸カルシウム、酸化鉄、ランプブラック、ファーネスブラック、アイボリーブラック、黒鉛、フラーレン、カーボンブラック、ヴィリジアン、コバルトブルー、エメラルドグリーン、コバルトグリーン、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、ミロリブルー、ファストイエロー、ジスアゾイエロー、縮合アゾイエロー、ベンゾイミダゾロンイエロー、ジニトロアニリンオレンジ、ペンズイミダゾロンオレンジ、ペリノンオレンジ、トルイジンレッド、パーマネントカーミン、アントラキノニルレッド、パーマネントレッド、ナフトールレッド、縮合アゾレッド、ベンズイミダゾロンカーミン、ベンズイミダゾロンブラウン、アントラピリミジンイエロー、キノフタロンイエロー、コバルト紫、マンガン紫等が挙げられる。これらの顔料は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
前記顔料の配合量は、第二接着剤層2の全成分100重量部に対して、0.3〜5重量部の範囲内が好ましく、0.3〜3重量部の範囲内が好ましい。前記配合量を0.3重量部以上にすることにより、第二接着剤層2の識別を一層容易にすることができる。その一方、前記配合量を5重量部以下にすることにより、不純物イオンを低減させることができる。
【0066】
前記顔料の平均粒径は0.01μm〜10μmの範囲内であることが好ましく、0.01μm〜5μmの範囲内であることがより好ましい。前記数値範囲内にすることにより、顔料を均一に分散させることができる。尚、顔料の平均粒径は、光度式の粒度分布計(HORIBA製、装置名;LA−910)により求めた値である。
【0067】
前記第一接着剤層1及び第二接着剤層2の少なくとも何れかの体積抵抗率は、1×10
11Ω・cm以上であることが好ましく、1×10
12Ω・cm以上であることがより好ましい。体積抵抗率を1×10
11Ω・cm以上にすることにより、第一接着剤層1及び第二接着剤層2の充分な絶縁性を得ることができる。また、第一接着剤層1及び第二接着剤層2の少なくとも何れかの比誘電率は4.5以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましい。比誘電率を4.5以下にすることにより、電気特性の低下を防ぐことができる。更に、第一接着剤層1及び第二接着剤層2の少なくとも何れかの誘電正接は0.01以下であることが好ましく、0.02以上であることがより好ましい。誘電正接を0.01以下にすることにより、電気特性の低下を防ぐことができる。
【0068】
前記第一接着剤層1のガラス転移温度は20℃〜60℃の範囲が好ましく、20℃〜50℃の範囲がより好ましい。前記ガラス転移温度を20℃〜60℃の範囲内にすることにより、例えば、ダイシングフィルム12との剥離力を制御し、良好なピックアップ性を確保することができる。また、前記第二接着剤層2のガラス転移温度は60℃以下が好ましく、50℃以下がより好ましい。前記ガラス転移温度を60℃以下にすることにより、シリコンウェハに対する接着力を確保することができる。
【0069】
また、ダイボンドフィルム10は、セパレータにより保護されていることが好ましい(図示せず)。セパレータは、実用に供するまでダイボンドフィルムを保護する保護材としての機能を有している。また、セパレータは、更に、ダイシングフィルムにダイボンドフィルム10を転写する際の支持基材として用いることができる。セパレータはダイボンドフィルム上にワークを貼着する際に剥がされる。セパレータとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンや、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルムや紙等も使用可能である。
【0070】
(ダイボンドフィルムの製造方法)
第一接着剤層1を形成する為の第一接着剤組成物をシリコーン離型処理等が施された第一離型処理フィルム上に所定厚みとなる様に塗布し、更に所定条件下で乾燥して第一接着剤層を形成する。乾燥条件は適宜必要に応じて設定し得る。一方、第二接着剤層2を形成する為の第二接着剤組成物をシリコーン離型処理等が施された第二離型処理フィルム上に所定厚みとなる様に塗布し、更に所定条件下で乾燥して第二接着剤層を形成する。乾燥条件は適宜必要に応じて設定し得る。前記第一離型処理フィルム及び第二離型処理フィルムとしては特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート等からなるフィルムが挙げられる。
【0071】
更に、前記第一接着剤層と第二接着剤層とが貼り合わせ面となる様に両者を貼り合わせ、本実施の形態に係るダイボンドフィルム10を作製することができる。
【0072】
(ダイシング・ダイボンドフィルム)
次に、前記ダイボンドフィルム10を備えたダイシング・ダイボンドフィルムについて説明する。
図2は、本実施の形態に係るダイシング・ダイボンドフィルムを概略的に表す断面模式図である。
【0073】
図2(a)に示すように、ダイシング・ダイボンドフィルム11は、ダイシングフィルム12上に前記ダイボンドフィルム10が積層された構造を有する。前記ダイシングフィルム12は、基材13上に少なくとも粘着剤層14が積層された構造を有する。ダイボンドフィルム10は、前記粘着剤層14のダイボンドフィルムの貼り付け部分14a上に積層されている。また本発明は、
図2(b)に示すように、粘着剤層14の全面にダイボンドフィルム10’を積層した構成のダイシング・ダイボンドフィルム11’でもよい。
【0074】
前記基材13はダイシング・ダイボンドフィルム11、11’の強度母体となるものである。例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリフェニルスルフイド、アラミド(紙)、ガラス、ガラスクロス、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース系樹脂、シリコーン樹脂、金属(箔)、紙等が挙げられる。粘着剤層14が紫外線硬化型である場合、基材13は紫外線に対し透過性を有するものが好ましい。
【0075】
また基材13の材料としては、前記樹脂の架橋体等のポリマーが挙げられる。前記プラスチックフィルムは、無延伸で用いてもよく、必要に応じて一軸又は二軸の延伸処理を施したものを用いてもよい。延伸処理等により熱収縮性を付与した樹脂シートによれば、ダイシング後にその基材13を熱収縮させることにより粘着剤層14とダイボンドフィルム10、10’との接着面積を低下させて、半導体チップの回収の容易化を図ることができる。
【0076】
基材13の表面は、隣接する層との密着性、保持性等を高める為、慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的処理、下塗剤(例えば、後述する粘着物質)によるコーティング処理を施すことができる。
【0077】
前記基材13は、同種又は異種のものを適宜に選択して使用することができ、必要に応じて数種をブレンドしたものを用いることができる。また、基材13には、帯電防止能を付与する為、前記の基材13上に金属、合金、これらの酸化物等からなる厚さが30〜500Å程度の導電性物質の蒸着層を設けることができる。基材13は単層又は2種以上の複層でもよい。
【0078】
基材13の厚さは、特に制限されず適宜に決定できるが、一般的には5〜200μm程度である。
【0079】
尚、基材13には、本発明の効果等を損なわない範囲で、各種添加剤(例えば、着色剤、充填剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、界面活性剤、難燃剤等)が含まれていてもよい。
【0080】
前記粘着剤層14が紫外線硬化型粘着剤により形成されている場合、紫外線の照射により架橋度を増大させてその粘着力を容易に低下させることができるので、
図2(b)に示す粘着剤層14の半導体ウェハ貼り付け部分に対応する部分14aのみを紫外線照射することにより他の部分14bとの粘着力の差を設けることができる。
【0081】
また、
図2(a)に示すダイボンドフィルム10に合わせて紫外線硬化型の粘着剤層14を硬化させることにより、粘着力が著しく低下した前記部分14aを容易に形成できる。硬化し、粘着力の低下した前記部分14aにダイボンドフィルム10が貼付けられる為、粘着剤層14の前記部分14aと第一接着剤層1との界面は、ピックアップ時に容易に剥がれる性質を有する。一方、紫外線を照射していない部分は十分な粘着力を有しており、前記部分14bを形成する。
【0082】
前述の通り、
図2(b)に示すダイシング・ダイボンドフィルム11’の粘着剤層14に於いて、未硬化の紫外線硬化型粘着剤により形成されている前記部分14bはダイボンドフィルム10と粘着し、ダイシングする際の保持力を確保できる。この様に紫外線硬化型粘着剤は、半導体チップを基板等の被着体に固着する為のダイボンドフィルム10を、接着・剥離のバランスよく支持することができる。
図2(a)に示すダイシング・ダイボンドフィルム11の粘着剤層14に於いては、前記部分14bがダイシングリングを固定することができる。前記被着体6としては特に限定されず、例えば、BGA基板等の各種基板、リードフレーム、半導体素子、スペーサ等が挙げられる。
【0083】
前記紫外線硬化型粘着剤は、炭素−炭素二重結合等の紫外線硬化性の官能基を有し、かつ粘着性を示すものを特に制限なく使用することができる。紫外線硬化型粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等の一般的な感圧性粘着剤に、紫外線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合した添加型の紫外線硬化型粘着剤を例示できる。
【0084】
前記感圧性粘着剤としては、半導体ウェハやガラス等の汚染をきらう電子部品の超純水やアルコール等の有機溶剤による清浄洗浄性等の点から、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。
【0085】
前記アクリル系ポリマーとしては、アクリル酸エステルと、ヒドロキシル基含有モノマーとを含むモノマー組成物からなるものが挙げられる。但し、カルボキシル基含有モノマーは含まないことが好ましい。
【0086】
前記アクリル酸エステルとしては、化学式CH
2=CHCOOR(式中、Rは炭素数6〜10、より好ましくは炭素数8〜9のアルキル基である。)で表されるモノマーを用いることが好ましい。炭素数が6未満であると、剥離力が大きくなり過ぎてピックアップ性が低下する場合がある。その一方、炭素数が10を超えると、ダイボンドフィルムとの接着性又は密着性が低下し、その結果、ダイシングの際にチップ飛びが発生する場合がある。
【0087】
前記化学式で表されるモノマーとしては、例えば、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸イソデシル等が挙げられる。これらのモノマーのうち、前記アルキル基のRの炭素数が8〜9のモノマーが好ましく、具体的にはアクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチルが好ましい。尚、前記に例示したモノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0088】
また、前記アクリル酸エステルの含有量は、全モノマー成分に対し50重量%〜99重量%が好ましく、70〜90重量%がより好ましい。含有量が50重量%未満であると、剥離力が大きくなり過ぎ、ピックアップ性が低下する場合がある。但し、99重量%を超えると、粘着性が低下しダイシングの際にチップ飛びが発生する場合がある。
【0089】
前記アクリル系ポリマーは、前記化学式で表されるモノマー以外のアクリル酸エステルをモノマー成分として含んでもよい。この様なアクリル酸エステルとしては、前記化学式で表されるモノマー以外のアクリル酸アルキルエステルの他、芳香族環を有するアクリル酸エステル(例えば、アクリル酸フェニル等のアクリル酸アリールエステル等)、脂環式炭化水素基を有するアクリル酸エステル(例えば、アクリル酸シクロペンチル、アクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸シクロアルキルエステルや、アクリル酸イソボルニル等)等が挙げられる。これらのモノマー成分のうち、前記アクリル酸アルキルエステル、アクリル酸シクロアルキルエステルが好適であり、アクリル酸アルキルエステルが特に好適である。例示したアクリル酸エステルは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0090】
前記化学式で表されるモノマー以外のアクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸s−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸イソペンチル等のアルキル基の炭素数が5以下のアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸トリデシル、アクリル酸テトラデシル、アクリル酸ヘキサデシル、アクリル酸オクタデシル、アクリル酸エイコシル等のアルキル基の炭素数が11以上(好ましくは11〜30)のアクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0091】
尚、前記化学式で表されるモノマー等のアクリル酸アルキルエステルは、直鎖状、分岐状の何れの形態のアクリル酸アルキルエステルであってもよい。
【0092】
前記アクリル系ポリマーは、前記アクリル酸エステルと共重合可能なヒドロキシル基含有モノマーを必須成分として含む。ヒドロキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0093】
前記ヒドロキシル基含有モノマーの含有量は、全モノマー成分に対し1〜30重量%の範囲内であることが好ましく、3〜10重量%の範囲内であることがより好ましい。含有量が1重量%未満であると、粘着剤の凝集力が低下し、ピックアップ性が低下する場合がある。その一方、含有量が30重量%を超えると、粘着剤の極性が高くなり、ダイボンドフィルムとの相互作用が高くなることにより剥離が困難になる。
【0094】
前記アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性等の改質を目的として、必要に応じ、前記アクリル酸エステルやヒドロキシル基含有モノマーと共重合可能な他のモノマー成分に対応する単位を含んでいてもよい。この様な他のモノマー成分としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸s−ブチル、メタクリル酸t−ブチル等のメタクリル酸エステル;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン等のオレフィン又はジエン類;塩化ビニル等のハロゲン原子含有単量体;フッ素(メタ)アクリレート等のフッ素原子含有単量体;アクリルアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0095】
前記アクリル系ポリマーは、前述した通り、カルボキシル基含有モノマーを含まないことが好ましい。カルボキシル基含有モノマーを含むと、カルボキシル基とダイボンドフィルム10中のエポキシ樹脂のエポキシ基とが反応することにより、粘着剤層14とダイボンドフィルム10との接着性が大きくなり、両者の剥離性が低下するからである。この様なカルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。
【0096】
前記アクリル系ポリマーは、単一モノマー又は2種以上のモノマー混合物を重合に付すことにより得られる。重合は、溶液重合(例えば、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等)、乳化重合、塊状重合、懸濁重合、光重合(例えば、紫外線(UV)重合)等の何れの方式で行うこともできる。清浄な被着体への汚染防止等の点から、低分子量物質の含有量が小さいのが好ましい。この点から、アクリル系ポリマーの数平均分子量は、好ましくは35万〜100万、より好ましくは45万〜80万程度である。
【0097】
また、前記粘着剤には、ベースポリマーであるアクリル系ポリマー等の数平均分子量を高める為、外部架橋剤を適宜に採用することもできる。外部架橋方法の具体的手段としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、メラミン系架橋剤等のいわゆる架橋剤を添加し反応させる方法が挙げられる。外部架橋剤を使用する場合、その使用量は、架橋すべきベースポリマーとのバランスにより、更には、粘着剤としての使用用途によって適宜決定される。一般的には、前記ベースポリマー100重量部に対して、5重量部程度以下、更には0.1〜5重量部配合するのが好ましい。更に、粘着剤には、必要により、前記成分のほかに、従来公知の各種の粘着付与剤、老化防止剤等の添加剤を用いてもよい。
【0098】
配合する前記紫外線硬化性のモノマー成分としては、例えば、ウレタンオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また紫外線硬化性のオリゴマー成分はウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系等種々のオリゴマーがあげられ、その分子量が100〜30000程度の範囲のものが適当である。紫外線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分の配合量は、前記粘着剤層の種類に応じて、粘着剤層の粘着力を低下できる量を、適宜に決定することができる。一般的には、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、例えば5〜500重量部、好ましくは40〜150重量部程度である。
【0099】
また、紫外線硬化型粘着剤としては、前記説明した添加型の紫外線硬化型粘着剤のほかに、ベースポリマーとして、炭素−炭素二重結合をポリマー側鎖又は主鎖中もしくは主鎖末端に有するものを用いた内在型の紫外線硬化型粘着剤が挙げられる。内在型の紫外線硬化型粘着剤は、低分子量成分であるオリゴマー成分等を含有する必要がなく、又は多くは含まない為、経時的にオリゴマー成分等が粘着剤中を移動することなく、安定した層構造の粘着剤層を形成することができる為好ましい。
【0100】
前記炭素−炭素二重結合を有するベースポリマーは、炭素−炭素二重結合を有し、かつ粘着性を有するものを特に制限なく使用できる。この様なベースポリマーとしては、アクリル系ポリマーを基本骨格とするものが好ましい。アクリル系ポリマーの基本骨格としては、前記例示したアクリル系ポリマーが挙げられる。
【0101】
前記アクリル系ポリマーへの炭素−炭素二重結合の導入法は特に制限されず、様々な方法を採用できるが、炭素−炭素二重結合はポリマー側鎖に導入するのが分子設計において容易である。例えば、予め、アクリル系ポリマーに官能基を有するモノマーを共重合した後、この官能基と反応しうる官能基及び炭素−炭素二重結合を有する化合物を、炭素−炭素二重結合の紫外線硬化性を維持したまま縮合又は付加反応させる方法が挙げられる。
【0102】
これら官能基の組合せの例としては、カルボン酸基とエポキシ基、カルボン酸基とアジリジル基、ヒドロキシル基とイソシアネート基等が挙げられる。これら官能基の組合せのなかでも反応追跡の容易さから、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組合せが好適である。また、これら官能基の組み合わせにより、前記炭素−炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーを生成するような組合せであれば、官能基はアクリル系ポリマーと前記化合物のいずれの側にあってもよいが、前記の好ましい組み合わせでは、アクリル系ポリマーがヒドロキシル基を有し、前記化合物がイソシアネート基を有する場合が好適である。この場合、炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物としては、例えば、メタクリロイルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。また、アクリル系ポリマーとしては、前記例示のヒドロキシ基含有モノマーや2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングルコールモノビニルエーテルのエーテル系化合物等を共重合したものが用いられる。
【0103】
前記内在型の紫外線硬化型粘着剤は、前記炭素−炭素二重結合を有するベースポリマー(特にアクリル系ポリマー)を単独で使用することができるが、特性を悪化させない程度に前記紫外線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合することもできる。紫外線硬化性のオリゴマー成分等は、通常ベースポリマー100重量部に対して30重量部の範囲内であり、好ましくは0〜10重量部の範囲である。
【0104】
前記紫外線硬化型粘着剤には、紫外線等により硬化させる場合には光重合開始剤を含有させる。光重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα−ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1等のアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール等のケタール系化合物;2−ナフタレンスルホニルクロリド等の芳香族スルホニルクロリド系化合物;1−フェノン−1,1―プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等の光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナート等が挙げられる。光重合開始剤の配合量は、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、例えば0.05〜20重量部程度である。
【0105】
また紫外線硬化型粘着剤としては、例えば、特開昭60−196956号公報に開示されている、不飽和結合を2個以上有する付加重合性化合物、エポキシ基を有するアルコキシシラン等の光重合性化合物と、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過酸化物、アミン、オニウム塩系化合物等の光重合開始剤とを含有するゴム系粘着剤やアクリル系粘着剤等が挙げられる。
【0106】
前記粘着剤層14に前記部分14aを形成する方法としては、基材13に紫外線硬化型の粘着剤層14を形成した後、前記部分14aに部分的に紫外線を照射し硬化させる方法が挙げられる。部分的な紫外線照射は、半導体ウェハ貼り付け部分10a以外の部分10b等に対応するパターンを形成したフォトマスクを介して行うことができる。また、スポット的に紫外線を照射し硬化させる方法等が挙げられる。紫外線硬化型の粘着剤層14の形成は、セパレータ上に設けたものを基材13上に転写することにより行うことができる。部分的な紫外線硬化はセパレータ上に設けた紫外線硬化型の粘着剤層14に行うこともできる。
【0107】
ダイシング・ダイボンドフィルム10の粘着剤層14に於いては、前記部分14aの粘着力<その他の部分14bの粘着力、となるように粘着剤層14の一部を紫外線照射してもよい。即ち、基材13の少なくとも片面の、半導体ウェハ貼り付け部分10aに対応する部分以外の部分の全部又は一部が遮光されたものを用い、これに紫外線硬化型の粘着剤層14を形成した後に紫外線照射して、半導体ウェハ貼り付け部分10aに対応する部分を硬化させ、粘着力を低下させた前記部分14aを形成することができる。遮光材料としては、支持フィルム上でフォトマスクになりえるものを印刷や蒸着等で作製することができる。これにより、効率よく本発明のダイシング・ダイボンドフィルム10を製造可能である。
【0108】
ダイシング・ダイボンドフィルム11において、粘着剤層14における前記部分14aの第一接着剤層1に対する粘着力は、前記他の部分14bのダイシングリングに対する粘着力よりも小さくなる様に設計されていることが好ましい。第一接着剤層1に対する前記部分14aの粘着力は、0.5N/20mm以下が好ましく、0.01〜0.42N/20mmがより好ましく、0.01〜0.35N/20mmが更に好ましい。一方、ダイシングリングに対する前記他の部分14bの粘着力は、0.5〜20N/20mmが好ましい。前記部分14aが低いピール粘着力であっても、前記他の部分14bの粘着力によりチップ飛びなどの発生を抑え、ウェハ加工に充分な保持力を発揮させることができる。尚、これらの粘着力は、常温(23℃)、剥離角度90度、引張(剥離)速度300mm/分における測定値に基づく。
【0109】
ダイシング・ダイボンドフィルム11’において、粘着剤層14における前記部分14aの第一接着剤層1に対する粘着力は、前記他の部分14bの半導体ウェハ貼り付け部分1aとは異なる部分1bに対する粘着力よりも小さくなる様に設計されていることが好ましい。常温(23℃)での粘着力(剥離角度90度、剥離速度300mm/分)に基づいて、前記部分14aの粘着力は、ウェハの固定保持力や形成したチップの回収性などの点より0.01N/20mm〜0.2N/20mmであることが好ましい。粘着力が0.01N/20mm未満であると半導体素子の接着固定が不十分となるため、ダイシングの際にチップ飛びを生じる場合がある。また、粘着力が0.2N/20mmを超えると粘着剤層14は第一接着剤層1を過度に接着し過ぎるため、半導体素子のピックアップが困難になる場合がある。
【0110】
また、前記ダイシング・ダイボンドフィルム11、11’において、第二接着剤層2の半導体ウェハに対する粘着力は、第一接着剤層1の前記部分14aに対する粘着力よりも大きくなるように設計するのが好ましい。半導体ウェハに対する粘着力は、その種類に応じて適宜に調整される。第一接着剤層1の前記部分14aに対する粘着力(常温(23℃)、剥離角度90度、剥離速度300mm/分)は、0.5N/20mm以下が好ましく、0.01〜0.42N/20mmがより好ましく、0.01〜0.35N/20mmが更に好ましい。一方、第二接着剤層2の半導体ウェハに対する粘着力(常温(23℃)、剥離角度90度、剥離速度300mm/分)は、ダイシング時、ピックアップ時、ダイボンド時の信頼性、ピックアップ性の点から10〜50N/20mm以下が好ましく、10〜30N/20mmがより好ましい。
【0111】
尚、紫外線照射の際に、酸素による硬化阻害が起こる場合は、紫外線硬化型の粘着剤層14の表面から酸素(空気)を遮断するのが望ましい。その方法としては、例えば粘着剤層14の表面をセパレータで被覆する方法や、窒素ガス雰囲気中で紫外線等の紫外線の照射を行う方法等が挙げられる。
【0112】
粘着剤層14の厚さは、特に限定されないが、チップ切断面の欠け防止や接着層の固定保持の両立性等の点よりは、1〜50μm程度であるのが好ましい。好ましくは2〜30μm、更には5〜25μmが好ましい。また、粘着剤層14は単層であってもよく、複数層が積層されたものであってもよい。
【0113】
粘着剤層14の剪断貯蔵弾性率は、23℃及び150℃に於いて5×10
4〜1×10
10Paであることが好ましく、1×10
5〜1×10
8Paであることがより好ましい。剪断貯蔵弾性率が5×10
4Pa未満であると、粘着剤層14とダイボンドフィルム10、10’の剥離が困難になる場合がある。その一方、剪断貯蔵弾性率が1×10
10Paを超えると、粘着剤層14とダイボンドフィルム10、10’の間の密着性が低下する場合がある。粘着剤層14の剪断貯蔵弾性率は、次の通りにして得られる値である。即ち、先ず粘着剤層を厚さ約1.5mm、直径7.9mmの円筒状に成形する。次に、動的粘弾性測定装置としてレオメトリックサイエンティフィック社製のARES粘弾性測定装置を用いて、各粘着剤層をパラレルプレートの治具に取り付け、周波数1Hzの剪断歪を与えながら、23℃から150℃の温度範囲を昇温速度5℃/minで温度変化させる。このときの弾性率を測定することで23℃及び150℃での剪断貯蔵弾性率が得られる。尚、粘着剤層14が放射線硬化型である場合、前記剪断貯蔵弾性率の値は放射線硬化後の値である。また、剪断貯蔵弾性率は、例えば、外部架橋剤の添加により適宜調整することができる。
【0114】
尚、粘着剤層14には、本発明の効果等を損なわない範囲で、各種添加剤(例えば、着色剤、増粘剤、増量剤、充填剤、粘着付与剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、界面活性剤、架橋剤等)が含まれていてもよい。
【0115】
本実施の形態に係るダイシング・ダイボンドフィルム10は、次の様にすることで作製することができる。
【0116】
先ず、基材13を従来公知の製膜方法により製膜する。当該製膜方法としては、例えばカレンダー製膜法、有機溶媒中でのキャスティング法、密閉系でのインフレーション押出法、Tダイ押出法、共押出し法、ドライラミネート法等が例示できる。
【0117】
次に、基材13上に粘着剤組成物を塗布し、乾燥させて(必要に応じて加熱架橋させて)粘着剤層14を形成する。塗布方式としては、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工等が挙げられる。また、塗布は直接基材13上に行ってもよく、表面に剥離処理を行った剥離紙等に塗布後、基材13に転写してもよい。
【0118】
続いて、ダイボンドフィルム10における第一接着剤層1と粘着剤層14が貼り合わせ面となる様に両者を貼り合わせる。また、ダイボンドフィルム10の貼り合わせは、粘着剤層14におけるダイボンドフィルムの貼り付け部分14aに行う。これにより、本実施の形態に係るダイシング・ダイボンドフィルム10を得ることができる。
【0119】
(半導体装置の製造方法)
次に、本実施の形態に係るダイシング・ダイボンドフィルム11を用いた半導体装置の製造方法について説明する。本実施の形態に係るダイシング・ダイボンドフィルム11は、複数の半導体チップを被着体上に積層して三次元実装をする場合に好適に用いることができる。より詳細には、被着体上に既にダイボンディングされ、かつボンディングワイヤーにより当該被着体と電気的に接続された半導体チップ上に、他の半導体チップを実装する場合(FoW(Film on Wire))に好適である。以下では、複数の半導体チップを三次元実装する場合を例にして説明する。
図3はダイボンドフィルムを介して半導体素子を実装した例を示す断面模式図である。
【0120】
先ず、
図3に示すように、ダイシング・ダイボンドフィルム11に於ける第二接着剤層2上に半導体ウェハ4を圧着し、これを接着保持させて固定する(マウント工程)。本工程は、圧着ロール等の押圧手段により押圧しながら行う。圧着の際の温度は適宜必要に応じて設定されるものであり、通常は40℃〜100℃の範囲内であることが好ましい。また、圧力も適宜必要に応じて設定されるものであり、通常は0.1MPa〜1MPaの範囲内であることが好ましい。尚、半導体ウェハ4が貼り合わせられたダイシング・ダイボンドフィルム11の粘着剤層14周辺部にはダイシングリング17が貼り付けられている。
【0121】
次に、
図4に示すように、半導体ウェハ4のダイシングを行う(ダイシング行程)。これにより、半導体ウェハ4を所定のサイズに切断して個片化し、前記他の半導体チップ5を形成する。ダイシングは、例えば半導体ウェハ4の回路面側から常法に従い行われる。また、切り込み深さは、ダイシングフィルム12まで行われるのが好ましい。本工程で用いるダイシング装置としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。また、切断後においても半導体チップ5は、ダイシング・ダイボンドフィルム11により接着固定されているので、チップ欠けやチップ飛びを抑制できると共に、他の半導体チップ5の破損も低減できる。
【0122】
ダイシング・ダイボンドフィルム11に接着固定された他の半導体チップ5を、ダイボンドフィルム10(第一接着剤層1及び第二接着剤層2)と共にダイシングフィルムから剥離する為にピックアップを行う(ピックアップ工程)。ピックアップの方法としては特に限定されず、従来公知の種々の方法を採用できる。例えば、個々の他の半導体チップ5をダイシング・ダイボンドフィルム11側からニードルによって突き上げ、突き上げられた半導体チップ5をピックアップ装置によってピックアップする方法等が挙げられる。また、ピックアップ条件も適宜必要に応じて設定され得る。更に、ピックアップは、粘着剤層14における前記ダイボンドフィルムの貼り付け部分14aが予め紫外線硬化されているので、粘着剤層14に対し紫外線を照射させることなく行うことができる。但し、粘着剤層14に対して紫外線を照射をすることにより、ダイボンドフィルムに対する粘着力を一層低減させてピックアップを行ってもよい。
【0123】
次に、
図5及び
図6に示すように、ダイボンドフィルム付きの他の半導体チップ5を、既に被着体6上に他のダイボンドフィルム8を用いてダイボンディングされている半導体チップ15上にダイボンディングする(ダイボンド工程)。ダイボンド工程は、ボンディングワイヤー7の一部が第一接着剤層1の内部に埋没する様に、圧着により行われる。また、ダイボンドフィルム10は第二接着剤層2を備えているので、ボンディングワイヤー7が他の半導体チップ5の裏面に接触することがない。ダイボンド条件は適宜必要に応じて設定することができるが、通常は、ダイボンド温度80〜160℃、ボンディング圧力0.05MPa〜1MPa、ボンディング時間0.1秒〜10秒の範囲内で行うことができる。
【0124】
続いて、ダイボンドフィルム10を加熱処理することによりこれを熱硬化させ、半導体チップ15上に他の半導体チップ5を接着させる(熱硬化工程)。加熱処理条件としては、温度80〜180℃の範囲内であり、かつ、加熱時間0.1〜24時間、好ましくは0.1〜4時間、より好ましくは0.1〜1時間の範囲内であることが好ましい。
【0125】
次に、被着体6の端子部(インナーリード)の先端と他の半導体チップ5上の電極パッド(図示しない)とをボンディングワイヤー7で電気的に接続するワイヤーボンディング工程を行う。前記ボンディングワイヤー7としては、例えば金線、アルミニウム線又は銅線等が用いられる。ワイヤーボンディングを行う際の温度は、80〜250℃、好ましくは80〜220℃の範囲内で行われる。また、その加熱時間は数秒〜数分間行われる。結線は、前記温度範囲内となる様に加熱された状態で、超音波による振動エネルギーと印加加圧による圧着エネルギーの併用により行われる。
【0126】
ここで、熱硬化後のダイボンドフィルム10は、175℃において0.01MPa以上の剪断接着力を有していることが好ましく、0.01〜5MPaがより好ましい。熱硬化後の175℃における剪断接着力を0.01MPa以上にすることにより、ワイヤーボンディング工程の際の超音波振動や加熱に起因して、ダイボンドフィルム10と他の半導体チップ5又は被着体6との接着面でずり変形が生じるのを防止できる。即ち、ワイヤーボンディングの際の超音波振動により半導体素子が動くことがなく、これにより、ワイヤーボンディングの成功率が低下するのを防止する。
【0127】
尚、ワイヤーボンディング工程は、前記熱硬化工程によりダイボンドフィルム10を熱硬化させることなく行ってもよい。この場合、ダイボンドフィルム10’の25℃における剪断接着力は、前述の通り、半導体チップ15に対し0.2MPa以上であることが好ましく、0.2〜10MPaであることがより好ましい。これにより、ダイボンドフィルム10を完全に熱硬化させることなくワイヤーボンディング工程を行っても、当該工程に於ける超音波振動や加熱により、ダイボンドフィルム10と半導体チップ15又は他の半導体チップ5との接着面でずり変形を生じることがない。即ち、ワイヤーボンディングの際の超音波振動により半導体素子が動くことがなく、これにより、ワイヤーボンディングの成功率が低下するのを防止する。尚、未硬化のダイボンドフィルム10は、ワイヤーボンディング工程を行っても完全に熱硬化することはない。
【0128】
続いて、
図7に示すように、封止樹脂9により半導体チップ15等を封止する(封止工程)。本工程は、被着体6に搭載された半導体チップ15等やボンディングワイヤー7を保護する為に行われる。本工程は、封止用の樹脂を金型で成型することにより行う。封止樹脂9としては、例えばエポキシ系の樹脂を使用する。樹脂封止の際の加熱温度は、通常175℃で60〜90秒間行われるが、本発明はこれに限定されず、例えば165〜185℃で、数分間キュアすることができる。これにより、封止樹脂を硬化させると共に、ダイボンドフィルム10が熱硬化されていない場合は当該ダイボンドフィルム10も熱硬化させる。即ち、本発明に於いては、後述する後硬化工程が行われない場合に於いても、本工程に於いてダイボンドフィルム10を熱硬化させて接着させることが可能であり、製造工程数の減少及び半導体装置の製造期間の短縮に寄与することができる。
【0129】
前記後硬化工程に於いては、前記封止工程で硬化不足の封止樹脂9を完全に硬化させる。封止工程に於いてダイボンドフィルム10が熱硬化されない場合でも、本工程に於いて封止樹脂9の硬化と共にダイボンドフィルム10を熱硬化させて接着固定が可能になる。本工程に於ける加熱温度は、封止樹脂の種類により異なるが、例えば165〜185℃の範囲内であり、加熱時間は0.5〜8時間程度である。
【実施例】
【0130】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定するものではない。また、部とあるのは、重量部を意味する。
【0131】
(実施例1)
[第一接着剤層の作製]
アクリル酸エチル−メチルメタクリレートを主成分とするアクリル共重合体としてのアクリル酸エステル系ポリマー(根上工業(株)製、商品名;パラクロンW−197CM)100部、エポキシ樹脂A(JER(株)製、商品名;エピコート1004)242部、エポキシ樹脂B(JER(株)製、商品名;エピコート827)220部、フェノール樹脂(三井化学(株)製、商品名;ミレックスXLC−4L)489部、平均粒径500nmの球状シリカ(アドマテックス(株)製、商品名;SO−25R)660部、熱硬化触媒としての2−ウンデシルイミダゾール(四国化成工業(株)製、商品名;C11−Z)3部をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度23.6重量%の第一接着剤組成物を調製した。
【0132】
この第一接着剤組成物溶液を、シリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルムA(剥離ライナー)上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させた。これにより、厚さ60μmの第一接着剤層を作製した。
【0133】
[第二接着剤層の作製]
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC(株)製、商品名;EPICLON HP−7200H)10部、フェノール樹脂(三井化学(株)製、商品名;ミレックスXLC−4L)10部、アクリル樹脂としてのアクリル酸エステル系ポリマー(ナガセケムテックス(株)製、商品名;SG−80H)100部、球状シリカ(アドマテックス(株)製、商品名;SO−25R)63部をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度23.6重量%の第二接着剤組成物を調製した。
【0134】
この第二接着剤組成物溶液を、シリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルムB(剥離ライナー)上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させた。これにより、厚さ10μmの第二接着剤層を作製した。
【0135】
[ダイボンドフィルムの作製]
前記離型処理フィルムA上に形成された第一接着剤層と、離型処理フィルムB上に形成された第二接着剤層とを、第一接着剤層及び第二接着剤層が貼り合わせ面となる様にして貼り合わせ、離型処理フィルムAと離型処理フィルムBの間に厚さ70μmのダイボンドフィルムを形成した。貼り合わせ条件は、温度80℃、貼り合わせ圧力0.3MPa、ラミネート速度10mm/secとした。
【0136】
(実施例2)
[第一接着剤層の作製]
アクリル酸エチル−メチルメタクリレートを主成分とするアクリル共重合体としてのアクリル酸エステル系ポリマー(根上工業(株)製、商品名;パラクロンW−197CM)100部、エポキシ樹脂A(JER(株)製、商品名;エピコート1004)53部、エポキシ樹脂B(JER(株)製、商品名;エピコート827)56部、フェノール樹脂(三井化学(株)製、商品名;ミレックスXLC−4L)146部、球状シリカ(アドマテックス(株)製、商品名;SO−25R)150部、熱硬化触媒としての2−ウンデシルイミダゾール(四国化成工業(株)製、商品名;C11−Z)3部をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度23.6重量%の第一接着剤組成物を調製した。
【0137】
この第一接着剤組成物溶液を、シリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルムA(剥離ライナー)上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させた。これにより、厚さ60μmの第一接着剤層を作製した。
【0138】
[第二接着剤層の作製]
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC(株)製、商品名;EPICLON HP−7200H)20部、フェノール樹脂(三井化学(株)製、商品名;ミレックスXLC−4L)16部、アクリル樹脂としてのアクリル酸エステル系ポリマー(ナガセケムテックス(株)製、商品名;SG−80H)100部、球状シリカ(アドマテックス(株)製、商品名;SO−25R)60部をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度23.6重量%の第二接着剤組成物を調製した。
【0139】
この第二接着剤組成物溶液を、シリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルムB(剥離ライナー)上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させた。これにより、厚さ10μmの第二接着剤層を作製した。
【0140】
[ダイボンドフィルムの作製]
前記離型処理フィルムA上に形成された第一接着剤層と、離型処理フィルムB上に形成された第二接着剤層とを、第一接着剤層及び第二接着剤層が貼り合わせ面となる様にして貼り合わせ、離型処理フィルムAと離型処理フィルムBの間に厚さ70μmのダイボンドフィルムを形成した。貼り合わせ条件は、温度80℃、貼り合わせ圧力0.3MPa、ラミネート速度10mm/secとした。
【0141】
(実施例3)
[第一接着剤層の作製]
アクリル酸エチル−メチルメタクリレートを主成分とするアクリル共重合体としてのアクリル酸エステル系ポリマー(根上工業(株)製、商品名;パラクロンW−197CM)100部、エポキシ樹脂A(JER(株)製、商品名;エピコート1004)33部、エポキシ樹脂B(JER(株)製、商品名;エピコート827)36部、フェノール樹脂(三井化学(株)製、商品名;ミレックスXLC−4L)76部、球状シリカ(アドマテックス(株)製、商品名;SO−25R)100部、熱硬化触媒としての2−ウンデシルイミダゾール(四国化成工業(株)製、商品名;C11−Z)3部をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度23.6重量%の第一接着剤組成物を調製した。
【0142】
この第一接着剤組成物溶液を、シリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルムA(剥離ライナー)上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させた。これにより、厚さ60μmの第一接着剤層を作製した。
【0143】
[第二接着剤層の作製]
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC(株)製、商品名;EPICLON HP−7200H)44部、フェノール樹脂(三井化学(株)製、商品名;ミレックスXLC−4L)54部、アクリル樹脂としてのアクリル酸エステル系ポリマー(ナガセケムテックス(株)製、商品名;SG−80H)100部、球状シリカ(アドマテックス(株)製、商品名;SO−25R)100部をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度23.6重量%の第二接着剤組成物を調製した。
【0144】
この第二接着剤組成物溶液を、シリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルムB(剥離ライナー)上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させた。これにより、厚さ10μmの第二接着剤層を作製した。
【0145】
[ダイボンドフィルムの作製]
前記離型処理フィルムA上に形成された第一接着剤層と、離型処理フィルムB上に形成された第二接着剤層とを、第一接着剤層及び第二接着剤層が貼り合わせ面となる様にして貼り合わせ、離型処理フィルムAと離型処理フィルムBの間に厚さ70μmのダイボンドフィルムを形成した。貼り合わせ条件は、温度80℃、貼り合わせ圧力0.3MPa、ラミネート速度10mm/secとした。
【0146】
(実施例4)
[第一接着剤層の作製]
アクリル酸エチル−メチルメタクリレートを主成分とするアクリル共重合体としてのアクリル酸エステル系ポリマー(根上工業(株)製、商品名;パラクロンW−197CM)100部、エポキシ樹脂A(JER(株)製、商品名;エピコート1004)242部、エポキシ樹脂B(JER(株)製、エピコート827)220部、フェノール樹脂(三井化学(株)製、商品名;ミレックスXLC−4L)489部、球状シリカ(アドマテックス(株)製、商品名;SO−25R)660部、熱硬化触媒としての2−ウンデシルイミダゾール(四国化成工業(株)製、商品名;C11−Z)3部をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度23.6重量%の第一接着剤組成物を調製した。
【0147】
この第一接着剤組成物溶液を、シリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルムA(剥離ライナー)上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させた。これにより、厚さ60μmの第一接着剤層を作製した。
【0148】
[第二接着剤層の作製]
アクリル樹脂としてのアクリル酸エステル系ポリマー(ナガセケムテックス(株)製、商品名;SG−80H)100部、球状シリカ(アドマテックス(株)製、商品名;SO−25R)50部をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度23.6重量%の第二接着剤組成物を調製した。
【0149】
この第二接着剤組成物溶液を、シリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルムB(剥離ライナー)上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させた。これにより、厚さ10μmの第二接着剤層を作製した。
【0150】
[ダイボンドフィルムの作製]
前記離型処理フィルムA上に形成された第一接着剤層と、離型処理フィルムB上に形成された第二接着剤層とを、第一接着剤層及び第二接着剤層が貼り合わせ面となる様にして貼り合わせ、離型処理フィルムAと離型処理フィルムBの間に厚さ70μmのダイボンドフィルムを形成した。貼り合わせ条件は、温度80℃、貼り合わせ圧力0.3MPa、ラミネート速度10mm/secとした。
【0151】
(実施例5)
[第一接着剤層の作製]
アクリル酸エチル−メチルメタクリレートを主成分とするアクリル共重合体としてのアクリル酸エステル系ポリマー(根上工業(株)製、商品名;パラクロンW−197CM)100部、エポキシ樹脂A(JER(株)製、商品名;エピコート1004)23部、エポキシ樹脂B(JER(株)製、商品名;エピコート827)26部、フェノール樹脂(三井化学(株)製、商品名;ミレックスXLC−4L)52部、球状シリカ(アドマテックス(株)製、商品名;SO−25R)120部、熱硬化触媒としての2−ウンデシルイミダゾール(四国化成工業(株)製、C11−Z)3部をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度23.6重量%の第一接着剤組成物を調製した。
【0152】
この第一接着剤組成物溶液を、シリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルムA(剥離ライナー)上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させた。これにより、厚さ60μmの第一接着剤層を作製した。
【0153】
[第二接着剤層の作製]
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC(株)製、商品名;EPICLON HP−7200H)10部、フェノール樹脂(三井化学(株)製、商品名;ミレックスXLC−4L)10部、アクリル樹脂としてのアクリル酸エステル系ポリマー(ナガセケムテックス(株)製、商品名;SG−80H)100部、球状シリカ(アドマテックス(株)製、商品名;SO−25R)63部をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度23.6重量%の第二接着剤組成物を調製した。
【0154】
この第二接着剤組成物溶液を、シリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルムB(剥離ライナー)上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させた。これにより、厚さ10μmの第二接着剤層を作製した。
【0155】
[ダイボンドフィルムの作製]
前記離型処理フィルムA上に形成された第一接着剤層と、離型処理フィルムB上に形成された第二接着剤層とを、第一接着剤層及び第二接着剤層が貼り合わせ面となる様にして貼り合わせ、離型処理フィルムAと離型処理フィルムBの間に厚さ70μmのダイボンドフィルムを形成した。貼り合わせ条件は、温度80℃、貼り合わせ圧力0.3MPa、ラミネート速度10mm/secとした。
【0156】
(実施例6)
[第一接着剤層の作製]
アクリル酸エチル−メチルメタクリレートを主成分とするアクリル共重合体としてのアクリル酸エステル系ポリマー(根上工業(株)製、商品名;パラクロンW−197CM)100部、エポキシ樹脂A(JER(株)製、商品名;エピコート1004)242部、エポキシ樹脂B(JER(株)製、商品名;エピコート827)220部、フェノール樹脂(三井化学(株)製、商品名;ミレックスXLC−4L)489部、球状シリカ(アドマテックス(株)製、商品名;SO−25R)660部、熱硬化触媒としての2−ウンデシルイミダゾール(四国化成工業(株)製、商品名;C11−Z)3部をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度23.6重量%の第一接着剤組成物を調製した。
【0157】
この第一接着剤組成物溶液を、シリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルムA(剥離ライナー)上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させた。これにより、厚さ60μmの第一接着剤層を作製した。
【0158】
[第二接着剤層の作製]
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC(株)製、商品名;EPICLON HP−7200H)80部、フェノール樹脂(三井化学(株)製、商品名;ミレックスXLC−4L)86部、アクリル樹脂としてのアクリル酸エステル系ポリマー(ナガセケムテックス(株)製、商品名;SG−80H)100部、球状シリカ(アドマテックス(株)製、商品名;SO−25R)60部をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度23.6重量%の第二接着剤組成物を調製した。
【0159】
この第二接着剤組成物溶液を、シリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルムB(剥離ライナー)上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させた。これにより、厚さ10μmの第二接着剤層を作製した。
【0160】
[ダイボンドフィルムの作製]
前記離型処理フィルムA上に形成された第一接着剤層と、離型処理フィルムB上に形成された第二接着剤層とを、第一接着剤層及び第二接着剤層が貼り合わせ面となる様にして貼り合わせ、離型処理フィルムAと離型処理フィルムBの間に厚さ70μmのダイボンドフィルムを形成した。貼り合わせ条件は、温度80℃、貼り合わせ圧力0.3MPa、ラミネート速度10mm/secとした。
【0161】
(実施例7)
[第一接着剤層の作製]
本実施例に係る第一接着剤層については、実施例1と同様のものを用いた。
【0162】
[第二接着剤層の作製]
本実施例に係る第二接着剤層は、厚さを30μmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして離型処理フィルムB上に形成した。
【0163】
[ダイボンドフィルムの作製]
前記離型処理フィルムA上に形成された第一接着剤層と、離型処理フィルムB上に形成された第二接着剤層とを、第一接着剤層及び第二接着剤層が貼り合わせ面となる様にして貼り合わせ、離型処理フィルムAと離型処理フィルムBの間に厚さ90μmのダイボンドフィルムを形成した。貼り合わせ条件は、実施例1と同様にした。
【0164】
(実施例8)
[第一接着剤層の作製]
本実施例に係る第一接着剤層については、実施例1と同様のものを用いた。
【0165】
[第二接着剤層の作製]
本実施例に係る第二接着剤層は、厚さを5μmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして離型処理フィルムB上に形成した。
【0166】
[ダイボンドフィルムの作製]
前記離型処理フィルムA上に形成された第一接着剤層と、離型処理フィルムB上に形成された第二接着剤層とを、第一接着剤層及び第二接着剤層が貼り合わせ面となる様にして貼り合わせ、離型処理フィルムAと離型処理フィルムBの間に厚さ65μmのダイボンドフィルムを形成した。貼り合わせ条件は、実施例1と同様にした。
【0167】
(実施例9)
[第一接着剤層の作製]
本実施例に係る第一接着剤層については、実施例1と同様のものを用いた。
【0168】
[第二接着剤層の作製]
本実施例に係る第二接着剤層は、厚さを2μmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして離型処理フィルムB上に形成した。
【0169】
[ダイボンドフィルムの作製]
前記離型処理フィルムA上に形成された第一接着剤層と、離型処理フィルムB上に形成された第二接着剤層とを、第一接着剤層及び第二接着剤層が貼り合わせ面となる様にして貼り合わせ、離型処理フィルムAと離型処理フィルムBの間に厚さ62μmのダイボンドフィルムを形成した。貼り合わせ条件は、実施例1と同様にした。
【0170】
(実施例10)
[第一接着剤層の作製]
本実施例に係る第一接着剤層については、実施例1と同様のものを用いた。
【0171】
[第二接着剤層の作製]
本実施例に係る第二接着剤層は、厚さを60μmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして離型処理フィルムB上に形成した。
【0172】
[ダイボンドフィルムの作製]
前記離型処理フィルムA上に形成された第一接着剤層と、離型処理フィルムB上に形成された第二接着剤層とを、第一接着剤層及び第二接着剤層が貼り合わせ面となる様にして貼り合わせ、離型処理フィルムAと離型処理フィルムBの間に厚さ120μmのダイボンドフィルムを形成した。貼り合わせ条件は、実施例1と同様にした。
【0173】
(実施例11)
[第一接着剤層の作製]
本実施例に係る第一接着剤層については、実施例1と同様のものを用いた。
【0174】
[第二接着剤層の作製]
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC(株)製、商品名;EPICLON HP−7200H)10部、フェノール樹脂(三井化学(株)製、商品名;ミレックスXLC−4L)10部、アクリル樹脂としてのアクリル酸エステル系ポリマー(ナガセケムテックス(株)製、商品名;SG−80H)100部、染料(オリエント化学工業(株)製、商品名;OIL RED 330)0.5部、球状シリカ(アドマテックス(株)製、商品名;SO−25R)63部をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度23.6重量%の第二接着剤組成物を調製した。
【0175】
この第二接着剤組成物溶液を、シリコーン離型処理した厚さが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルムB(剥離ライナー)上に塗布した後、130℃で2分間乾燥させた。これにより、厚さ10μmの第二接着剤層を作製した。
【0176】
[ダイボンドフィルムの作製]
前記離型処理フィルムA上に形成された第一接着剤層と、離型処理フィルムB上に形成された第二接着剤層とを、第一接着剤層及び第二接着剤層が貼り合わせ面となる様にして貼り合わせ、離型処理フィルムAと離型処理フィルムBの間に厚さ70μmのダイボンドフィルムを形成した。貼り合わせ条件は、実施例1と同様にした。
【0177】
(実施例12)
[第一接着剤層の作製]
本実施例に係る第一接着剤層については、実施例1と同様のものを用いた。
【0178】
[第二接着剤層の作製]
本実施例に係る第二接着剤層としては、染料(オリエント化学工業(株)製、商品名;OIL BLUE 630)を用いたこと以外は、実施例11と同様にした。
【0179】
[ダイボンドフィルムの作製]
前記離型処理フィルムA上に形成された第一接着剤層と、離型処理フィルムB上に形成された第二接着剤層とを、第一接着剤層及び第二接着剤層が貼り合わせ面となる様にして貼り合わせ、離型処理フィルムAと離型処理フィルムBの間に厚さ70μmのダイボンドフィルムを形成した。貼り合わせ条件は、実施例1と同様にした。
【0180】
(実施例13)
[第一接着剤層の作製]
本実施例に係る第一接着剤層については、実施例1と同様のものを用いた。
【0181】
[第二接着剤層の作製]
本実施例に係る第二接着剤層としては、染料(オリエント化学工業(株)製、商品名;OIL YELLOW 129)を用いたこと以外は、実施例11と同様にした。
【0182】
[ダイボンドフィルムの作製]
前記離型処理フィルムA上に形成された第一接着剤層と、離型処理フィルムB上に形成された第二接着剤層とを、第一接着剤層及び第二接着剤層が貼り合わせ面となる様にして貼り合わせ、離型処理フィルムAと離型処理フィルムBの間に厚さ70μmのダイボンドフィルムを形成した。貼り合わせ条件は、実施例1と同様にした。
【0183】
(実施例14)
[第一接着剤層の作製]
本実施例に係る第一接着剤層については、実施例1と同様のものを用いた。
【0184】
[第二接着剤層の作製]
本実施例に係る第二接着剤層としては、染料(オリエント化学工業(株)製、商品名;OIL GREEN 502)を用いたこと以外は、実施例11と同様にした。
【0185】
[ダイボンドフィルムの作製]
前記離型処理フィルムA上に形成された第一接着剤層と、離型処理フィルムB上に形成された第二接着剤層とを、第一接着剤層及び第二接着剤層が貼り合わせ面となる様にして貼り合わせ、離型処理フィルムAと離型処理フィルムBの間に厚さ70μmのダイボンドフィルムを形成した。貼り合わせ条件は、実施例1と同様にした。
【0186】
(実施例15)
[第一接着剤層の作製]
本実施例に係る第一接着剤層については、実施例1と同様のものを用いた。
【0187】
[第二接着剤層の作製]
本実施例に係る第二接着剤層としては、染料を添加せず、かつ、フィラーとしてカーボンブラック(大日精化(株)製、商品名;NAF5091 ブラック)63部添加したこと以外は、実施例11と同様にした。
【0188】
[ダイボンドフィルムの作製]
前記離型処理フィルムA上に形成された第一接着剤層と、離型処理フィルムB上に形成された第二接着剤層とを、第一接着剤層及び第二接着剤層が貼り合わせ面となる様にして貼り合わせ、離型処理フィルムAと離型処理フィルムBの間に厚さ70μmのダイボンドフィルムを形成した。貼り合わせ条件は、実施例1と同様にした。
【0189】
(実施例16)
[第一接着剤層の作製]
本実施例に係る第一接着剤層については、実施例1と同様のものを用いた。
【0190】
[第二接着剤層の作製]
本実施例に係る第二接着剤層としては、フィラーとしてアルミナフィラー(電気化学工業(株)製、商品名;DAM−03)を用いたこと以外は、実施例15と同様にした。
【0191】
[ダイボンドフィルムの作製]
前記離型処理フィルムA上に形成された第一接着剤層と、離型処理フィルムB上に形成された第二接着剤層とを、第一接着剤層及び第二接着剤層が貼り合わせ面となる様にして貼り合わせ、離型処理フィルムAと離型処理フィルムBの間に厚さ70μmのダイボンドフィルムを形成した。貼り合わせ条件は、実施例1と同様にした。
【0192】
(実施例17)
[第一接着剤層の作製]
本実施例に係る第一接着剤層については、実施例1と同様のものを用いた。
【0193】
[第二接着剤層の作製]
本実施例に係る第二接着剤層としては、フィラーとしてニッケルフィラー(三井金属(株)製、商品名;SPQ03S)を用いたこと以外は、実施例15と同様にした。
【0194】
[ダイボンドフィルムの作製]
前記離型処理フィルムA上に形成された第一接着剤層と、離型処理フィルムB上に形成された第二接着剤層とを、第一接着剤層及び第二接着剤層が貼り合わせ面となる様にして貼り合わせ、離型処理フィルムAと離型処理フィルムBの間に厚さ70μmのダイボンドフィルムを形成した。貼り合わせ条件は、実施例1と同様にした。
【0195】
(実施例18)
[第一接着剤層の作製]
本実施例に係る第一接着剤層については、実施例1と同様のものを用いた。
【0196】
[第二接着剤層の作製]
本実施例に係る第二接着剤層としては、フィラーとして銅フィラー(三井金属(株)製、商品名;1110)を用いたこと以外は、実施例15と同様にした。
【0197】
[ダイボンドフィルムの作製]
前記離型処理フィルムA上に形成された第一接着剤層と、離型処理フィルムB上に形成された第二接着剤層とを、第一接着剤層及び第二接着剤層が貼り合わせ面となる様にして貼り合わせ、離型処理フィルムAと離型処理フィルムBの間に厚さ70μmのダイボンドフィルムを形成した。貼り合わせ条件は、実施例1と同様にした。
【0198】
(実施例19)
[第一接着剤層の作製]
本実施例に係る第一接着剤層については、実施例1と同様のものを用いた。
【0199】
[第二接着剤層の作製]
本実施例に係る第二接着剤層としては、フィラーとして酸化チタンフィラー(大日精化(株)製、商品名;EP−56 ホワイト)を用いたこと以外は、実施例15と同様にした。
【0200】
[ダイボンドフィルムの作製]
前記離型処理フィルムA上に形成された第一接着剤層と、離型処理フィルムB上に形成された第二接着剤層とを、第一接着剤層及び第二接着剤層が貼り合わせ面となる様にして貼り合わせ、離型処理フィルムAと離型処理フィルムBの間に厚さ70μmのダイボンドフィルムを形成した。貼り合わせ条件は、実施例1と同様にした。
【0201】
(実施例20)
[第一接着剤層の作製]
本実施例に係る第一接着剤層については、実施例1と同様のものを用いた。
【0202】
[第二接着剤層の作製]
本実施例に係る第二接着剤層としては、フィラーを添加しなかったこと以外は、実施例15と同様にした。
【0203】
[ダイボンドフィルムの作製]
前記離型処理フィルムA上に形成された第一接着剤層と、離型処理フィルムB上に形成された第二接着剤層とを、第一接着剤層及び第二接着剤層が貼り合わせ面となる様にして貼り合わせ、離型処理フィルムAと離型処理フィルムBの間に厚さ70μmのダイボンドフィルムを形成した。貼り合わせ条件は、実施例1と同様にした。
【0204】
(剪断損失弾性率G”の測定)
各実施例で作製したダイボンドフィルムにおける第一接着剤層及び第二接着剤層について、熱硬化前の120℃における剪断損失弾性率G”をそれぞれ測定した。測定には、固体粘弾性測定装置(レトメトリックサイエンティフィック社製、ARES)を用いた。10mm角、厚さ1mmのサンプルを作製し、各試料の25℃〜300℃の剪断損失弾性率G”を求めた。結果を下記表1に示す。
【0205】
(熱硬化後の175℃における引張貯蔵弾性率)
各実施例で作製したダイボンドフィルムを、それぞれ175℃、5時間の条件下で熱処理して熱硬化させた。次に、熱硬化後のダイボンドフィルムからそれぞれ長さ40mm、幅10mmの短冊状の試料をカッターナイフで切り出した。更に、固体粘弾性測定装置(レトメトリックサイエンティフィック社製、RSA III)を用いて、各試料の−50〜300℃の引張貯蔵弾性率を昇温速度10℃/分、周波数1MHzの条件下で測定し、175℃における引張貯蔵弾性率を求めた。
【0206】
(ダイボンドフィルムの厚さ)
各実施例で作製したダイボンドフィルムにおける第一接着剤層及び第二接着剤層の断面をSEMで観察し、第一接着剤層の厚さd
1(μm)、及び第二接着剤層の厚さd
2(μm)を測定して、d
1/(d
1+d
2)の値を算出した。
【0207】
(ダイボンドフィルムと半導体ウェハの180度ピール剥離力)
各実施例で作製した第一接着剤層又は第二接着剤層と、半導体ウェハとの180度ピール剥離力の測定は、JIS Z 0237に従って行った。即ち、先ず、第一接着剤層又は第二接着剤層に粘着テープ(日東電工(株)製、商品名;BT−315)を貼り付けて裏打ちをした。次に、長さ100mm×幅10mmの短冊状の試料を切り出し、50℃のホットプレート上で、半導体ウェハの裏面に貼り付けた。貼り付けは、重さ2kgのローラーを一往復させ、常温環境下で20分間放置して試験片を作製した。次に、貼り付けた半導体ウェハを固定し、剥離角度180度、剥離速度30mm/分の条件下で、引張試験機(島津製作所、商品名;AGS−H)を用いて180度ピール剥離力をそれぞれ測定した。
【0208】
(ボンディングワイヤーの接触評価)
先ず、被着体として、ソルダーレジスト(太陽インキ(株)製、商品名;AUS308)で被覆され、かつ、ビスマレイミド・トリアジンを主成分とするBGA基板(ワイヤーボンディング用パッドピッチ60μm)を用意した。
【0209】
次に、前記BGA基板上に、第一接着剤層を用いて半導体チップをダイボンディングした。即ち、半導体チップの裏面に各実施例で作製した第一接着剤層を温度40℃で貼り付けた。次に、ダイボンド温度150℃、ボンディング圧力0.1MPa、ボンディング時間3secの条件下で、BGA基板上に半導体チップをダイボンディングした。尚、前記半導体チップとしては、チップサイズ5mm×5mm、厚さ100μmのアルミ蒸着を施したものを用いた。ダイボンディング後、乾燥機を用いて120℃、8時間の熱処理を行った。これにより、第一接着剤層を熱硬化させた。
【0210】
次に、BGA基板のワイヤーボンディング用パッドと半導体チップを電気的に接続するためのワイヤーボンディング工程を行った。ワイヤーボンディング装置としてはASM社製のEagle60(商品名)を用いた。また、ワイヤーボンディング条件は、超音波周波数:120KHz、超音波出力時間:15ミリ秒、超音波出力:100mW、ボンド荷重:20gF、サーチ荷重:15gFとした。また、ボンディングワイヤーの半導体チップ表面からの高さh(
図5参照)は、約60μmであった。
【0211】
続いて、前記半導体チップ上に、他の半導体チップをダイボンディングした。即ち、他の半導体チップの裏面に各実施例で作製したダイボンドフィルムを温度40℃で貼り付けた。このとき、他の半導体チップとの貼り合わせ面は第二接着剤層とした。次に、ダイボンド温度150℃、ボンディング圧力0.1MPa、ボンディング時間3secの条件下で、BGA基板上に半導体チップをダイボンディングした。このときのBGA基板との貼り合わせ面は第一接着剤層である。尚、前記半導体チップ及び他の半導体チップとしては、チップサイズ5mm×5mm、厚さ100μmのものを用いた。ダイボンディング後、乾燥機を用いて120℃、8時間の熱処理を行った。これにより、ダイボンドフィルムを熱硬化させた。
【0212】
その後、ボンディングワイヤーが他の半導体チップの裏面と接触しているか否かを確認するため、断面をSEMにて観察した。他の半導体チップに接触していない場合を○、接触している場合を×として評価した。結果を下記表1に示す。
【0213】
(ボンディングワイヤーの埋まり込み評価)
ボンディングワイヤーの第一接着剤層に対する埋まり込み評価については、前記ボンディングワイヤーの接触評価において行ったのと同様の方法により、BGA基板に対し半導体チップをダイボンディングした後、各実施例で作製したダイボンドフィルムを用いて他の半導体チップを前記半導体チップ上にダイボンディングした。その後、乾燥機を用いて120℃、8時間の熱処理を行い、ダイボンドフィルムを熱硬化させた。
【0214】
続いて、ボンディングワイヤーが第一接着剤層中に埋没しているか否かを確認するため、断面をSEMにて観察した。ボンディングワイヤーが第一接着剤層中にボイドを発生させることなく埋没している場合を○、接触していない場合やボイドが発生している場合を×として評価した。結果を下記表1に示す。
【0215】
(ピックアップ性)
各実施例で作製したダイボンドフィルムと、ダイシングフィルム(日東電工株式会社製、商品名;V−12S)とを、ダイボンドフィルムにおける第一接着剤層と、ダイシングフィルムにおける粘着剤層とが貼り合わせ面になる様に両者を貼り合わせた。
【0216】
続いて、ダイボンドフィルムの第二接着剤層上に半導体ウェハ(直径8インチ、厚さ200μm)を40℃でロール圧着して貼り合わせ、更にダイシングを行った。また、ダイシングは8mm角のチップサイズとなる様にフルカットした。
【0217】
次に、各ダイシング・ダイボンドフィルムの基材側からニードルによる突き上げ方式で半導体チップをピックアップしピックアップ性の評価を行った。具体的には、100個の半導体チップを連続してピックアップし、後述の条件で行ったときの成功率を示す。
【0218】
<貼り合わせ条件>
貼り付け装置:日東精機製、MA−3000II
貼り付け速度計:10mm/min
貼り付け圧力:0.15MPa
貼り付け時のステージ温度:40℃
【0219】
<ダイシング条件>
ダイシング装置:DFD6361(DISCO社製)
ダイシングリング:DTF2−8−1(DISCO社製)
ダイシング速度:50mm/sec
ダイシングブレード:NBGZH−1030−27HCBB
ダイシングブレード回転数:45000rpm
ブレード高さ:0.085mm
カット方式:Aモード/ステップカット
チップサイズ:8mm角
【0220】
<ピックアップ条件>
ダイボンド装置:新川(株)製
ニードル本数:9本
ニードル突き上げ量:500μm
ニードル突き上げ速度:5mm/秒
コレット保持時間:1秒
【0221】
(ガラス転移温度(Tg)の測定)
各実施例で作製した第一接着剤層又は第二接着剤層を長さ40mm、幅10mmの短冊状にカッターナイフで切り出した。更に、これらの試料を固体粘弾性測定装置(RSAIII、レオメトリックサイエンティフィック社製)を用いて、周波数1Hz、昇温速度10℃/minの条件下で、−50〜300℃での引張貯蔵弾性率、及び損失弾性率を測定した。ガラス転移温度は、この測定の際のtan(δ)のピーク値を読み取って得た。結果を下記表1に示す。
【0222】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】