特許第5696263号(P5696263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5696263端縁が密封されたミラーおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5696263
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】端縁が密封されたミラーおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20150319BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   B32B15/08 M
   G02B5/08 A
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-551580(P2014-551580)
(86)(22)【出願日】2013年1月4日
(86)【国際出願番号】EP2013050114
(87)【国際公開番号】WO2013104569
(87)【国際公開日】20130718
【審査請求日】2014年9月16日
(31)【優先権主張番号】102012100293.2
(32)【優先日】2012年1月13日
(33)【優先権主張国】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513100910
【氏名又は名称】ハイドロ アルミニウム ロールド プロダクツ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Hydro Aluminium Rolled Products GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー デンクマン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルヘルム シェンケル
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ジーメン
(72)【発明者】
【氏名】ウルリッヒ ハンペル
(72)【発明者】
【氏名】サンドラ エーベルハルト
【審査官】 平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−524864(JP,A)
【文献】 米国特許第5320893(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00〜43/00
G02B 5/00〜 5/136
A47G 1/00〜 1/24
C03C27/00〜29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射膜(1)と基板(2)との複合体で形成された反射面を備えたミラーであって、前記反射膜(1)は前記基板(2)の表面に配設され、少なくとも1つのポリマー層(3)と前記少なくとも1つのポリマー層(3)の下に配設された金属層(4)とを備える、ミラーにおいて、
少なくとも1つの密封シーム(10)が少なくともいくつかの箇所に防蝕用に設けられ、前記密封シーム(10)は、前記ポリマー層(3)を前記基板(2)に材料固着式に接合することによって形成され、前記金属層(4)は前記密封シーム(10)の箇所において中断され、前記密封シーム(10)は超音波溶接部であることを特徴とするミラー。
【請求項2】
前記ミラー(7)は帯体状であり、前記帯体の長手方向に長手方向端縁(6)に沿ってそれぞれ延在する密封シーム(10)を少なくとも1つ備えることを特徴とする請求項に記載のミラー。
【請求項3】
前記反射膜(1)はポリメチルメタクリレート(PMMA)から成るポリマー層(3)を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のミラー。
【請求項4】
平行に延在するいくつかの密封シーム(10’、12’)が設けられることを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載のミラー。
【請求項5】
前記基板(2)は、金属、または前記ポリマー層より高い硬度を有する複合材料、であることを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載のミラー。
【請求項6】
請求項1乃至の何れか1項に記載の反射膜と基板との複合体から成るミラーを製造する方法であって、前記基板は少なくとも1つのポリマー層と前記ポリマー層の下に配設された金属層とを備えた反射膜に貼り合わされる方法において、
貼り合わせに引き続き、密封シームが前記ミラーに形成され、前記密封シームは、前記ポリマー層を前記基板に材料固着式に接合することによって形成され、前記金属層は前記密封シームの箇所において中断され、前記密封シームは超音波溶接によって形成されることを特徴とする方法。
【請求項7】
前記基板と前記反射膜とは帯体状であり、前記反射膜は前記帯体状の基板に連続的に貼り合わされ、このように製作された前記ミラーはコイルに巻き取られ、密封シームによる前記帯体状ミラーの長手方向端縁の密封が、前記反射膜の貼り合わせと一緒にインラインで、または追加の製造ステップにおいて前記コイルから前記ミラーを新たに繰り出すことによって、行われることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記基板は帯体状であり、複数の面状基板ブランクに分割され、前記反射膜は前記複数の基板ブランクに貼り合わされ、前記反射膜が貼り合わされた前記複数の基板ブランクに少なくとも1つの密封シームが少なくとも前記長手方向端縁に沿ってそれぞれ設けられることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記密封シームは、超音波ローラソノトロードを用いて、必要であればアンビルローラも用いて、超音波溶接によって形成されることを特徴とする請求項乃至の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記超音波ローラソノトロードの半径は1.0mm〜3.0mmであることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項11】
接触圧が1MPaと6MPaの間であり、周波数が20〜60kHzであり、振幅が25μmと70μmの間であることを特徴とする請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1乃至の何れか1項に記載のミラーを製造する装置であって、前記装置は、帯体状基板(2)の繰り出し器(13)と、帯体状反射膜(1)を前記帯体状基板(2)に貼り合わせる貼り合わせ装置(15)と、前記貼り合わせ装置(15)の下流において前記帯体状基板(2)の対向する長手方向端縁(6)の領域にそれぞれ配置された、前記帯体状ミラー(7)を前記対向する長手方向端縁(6)に沿って超音波溶接によって密封するために使用可能な少なくとも2つの超音波ローラソノトロード(8)とを備え、前記端縁が密封されたミラー(7)を巻き取るための巻き取り器(22)が更に設けられる装置。
【請求項13】
貼り合わせプロセスの前または後に前記基板(2)を複数のブランク(24)に切断するブランク切断装置が前記基板の繰り出し器の下流に設けられ、前記所定サイズに切断されたミラーの載置テーブル(23)が、前記巻き取り器の代わりに設けられることを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
請求項1乃至5の何れか1項に記載のミラーを製造する装置であって、前記装置は、所定サイズに切断された複数の基板(26)のためのレセプタクル(25)と、基板(26)を貼り合わせおよび密封のために送り出すフィードと、帯体状反射膜(1)を前記所定サイズに切断された基板(26)に貼り合わせる貼り合わせ装置(15)と、前記貼り合わせ装置(15)の下流において前記所定サイズに切断された基板(26)の対向する長手方向端縁(6)の領域にそれぞれ配置された、少なくとも2つの超音波ローラソノトロード(8)であって、前記帯体状ミラー(7)を前記長手方向端縁(6)に沿って超音波溶接シームによって密封するために使用可能な超音波ローラソノトロード(8)とを備える装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射膜と基板との複合体から形成された反射面を備えたミラーに関する。反射膜は基板の表面に配設され、少なくとも1つのポリマー層とこの少なくとも1つのポリマー層の下に配設された金属層とを備える。また、本発明は、このようなミラーを製造する方法とこの方法を実施するための装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
再生エネルギーを生成する太陽光発電設備は、大型のミラーを多数含む。太陽光発電設備に必要な反射面の総数が莫大であるため、ガラスから製造される蒸着反射面は採算が合わないと思われる。したがって、これらミラーを採算の合う方法で提供するために、特に単純なプロセスに戻る必要がある。反射面を設けるための1つの方策は、鋼、アルミニウム、またはアルミニウム合金などの金属薄板で通常構成される基板を反射膜に貼り合わせることである。反射膜は、その極めて高い透明度を特徴とする、例えばPMMAプラスチック製の、ポリマー層から成る。ポリマー層の裏面は、例えばナノメートル範囲内の厚さを有する金属層、好ましくはポリマー層にスパッタされた銀層、でもよい。また、第1の銀層とこれにスパッタされた追加の銅層など、2つの金属層の使用も可能である。金属層、特に銀層、は、極めて高い反射率を特徴とし、反射率が極めて高い反射膜の製造を可能にする。例えば、これら反射膜をアルミニウム薄板、鋼薄板、または鋼帯体に貼り合わせると、安価な反射面が得られる。基板も勿論、同じくポリマから成る、複合材料にし得る。太陽光発電設備のミラーは、変わりやすい天候に極めて長時間さらされる。特に、反射率のために重要な銀層は腐蝕しがちであり、腐蝕した箇所はその反射能の大部分を失い、「ブラインド」化し、これにより反射面としての有用性を失う。
【0003】
したがって、このようなミラーの端縁を腐蝕から保護するために、さまざまな方法が従来から採用されてきた。例えば、接着テープが端縁保護として用いられた。接着テープは、ミラーの製造中または製造後に端縁に施された。この接着テープ、または端縁の周囲のワニスなどの別の密封材料、あるいはシリコーン密封材料の使用は、ポリマー層と金属層、特に銀層、との間における湿気の浸透を防止することを意図していた。その理由は、湿気の浸透は金属層の腐蝕を引き起こし、ミラーをブラインド化することは周知であるからである。特に毛細管現象により腐蝕が続き、反射面全体に広がると、反射面全体が短期間のうちに劣化する。ミラーを保護するために従来取られた防蝕対策は何れも高価であると同時に、長期使用中に問題を引き起こしていた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
したがって、本発明の要件は、単純な方法で製造可能でありながら、改良された腐蝕挙動を示すミラーを提案することである。また、このようなミラーを製造する方法、ならびにこの方法を実施するための装置が提案される。
【0005】
本発明の第1の教示によると、上記要件は、ポリマー層を基板に材料固着式に接合することによって形成された密封シームが少なくともいくつかの箇所に防蝕用に設けられ、密封シームの箇所において金属層が中断されることで達成される。
【0006】
したがって、本発明によるミラーの密封シームは、金属層、特に銀層、が中断されてポリマー層が基板に材料固着式に接合される箇所から成る。金属層上に配設されたポリマー層と基板との間の材料固着式接合は、例えば、反射面に残っている金属層をミラーの端縁領域から密封分離できるので、腐蝕を促進する如何なる湿気も密封シームを貫通できない。本発明により構成された密封シームによって完全に包囲された反射面が腐蝕、すなわち「ブラインド」化、し難いことは塩水噴霧試験によって証明された。
【0007】
本発明によるミラーの第1の設計によると、密封シームは超音波溶接部である。超音波溶接は、ポリマー層の下に配設されている銀層を切断すると同時に、基板へのポリマー層の綿密な接合を可能にする。これは、例えば銀層の保護のために追加の銅層が銀層の下に配設されている場合にも当て嵌まる。
【0008】
大型反射面の特に安価な製造が本発明によるミラーの次の設計を可能にする。この設計では、ミラーは、帯体状であり、帯体の長手方向に延在する少なくとも1つの密封シームをその長手方向端縁に沿って備える。これは、その長手方向端縁に沿って密封されている帯体状ミラーの提供を可能にする。この帯体状ミラーは、例えば現場で所定のサイズに切断可能であり、次に、この切断によって生じた追加の端縁に沿って、例えば手作業で、密封可能である。しかし、長手方向端縁が密封された帯体状ミラーを複数のブランクに処理し、次にこれらブランクに1つ以上の追加の、例えば横方向の、密封シームを自動的に設けることも可能である。
【0009】
ミラーの次の実施形態により、反射膜がPMMAポリマー層を備える場合は、超音波溶接に特に適したプラスチック層と、反射性金属層、すなわち銀層、のためのキャリア材としての高透明性プラスチックとを使用でき、製造されたミラーに密封シームを極めて容易な方法で設けることができる。
【0010】
ミラーの別の設計によると、いくつかの平行密封シームが設けられる。いくつかの平行密封シーム、例えば二重シーム、は、所要面積が増えるが、一方の密封シームの金属層が完全に切断されなかった場合のための冗長性も増す。
【0011】
ミラーの次の実施形態により、基板が金属、またはポリマー層より高い硬度の複合材料、である場合は、超音波溶接は基板を傷めず、ポリマー層のみが基板に接合されるので、密封シームを単純な方法で作製できる。したがって、適した基板は、鋼、アルミニウム、またはアルミニウム合金、または高硬度のプラスチック複合材料である。好適なアルミニウム合金は、合金含有率が高いAlMg1、AlMg1Mn1、またはアルミニウム・マグネシウム合金である。その理由は、これら合金のより薄く、かつより軽い基板でも要求される安定性を既に提供できているからである。アルミニウム合金から成る基板の厚さは、例えば0.4mmと1.5mmの間である。ミラーとしての使用に関して、上記厚さに対して良好な処理特性と極めて良好な安定度特性とを有する一般的な低価格アルミニウム合金帯体は、タイプAA3005およびAA3105のアルミニウム合金から成る帯体を含む。
【0012】
本発明の第2の教示によると、少なくとも1つのポリマー層とこのポリマー層の下に配設された金属層とを備えた反射膜に基板が貼り合わされる、反射膜と基板との複合体から成るミラーの製造方法についての上記要件は、貼り合わせに引き続き、ポリマー層を基板に材料固着式に貼り合わせることによって密封シームがミラーに形成され、金属層が密封シームの箇所で中断されることで達成される。
【0013】
上で既に説明したように、発明者らは、銀層の中断は、銀層の一箇所における腐蝕作用が銀層の他の箇所を侵すこと、ひいては反射面を曇らせること、を防止する効果があることを認識した。ポリマー層が基板に材料固着式に接合され、この接合部が湿気バリアとして利用されると、銀層の中断箇所において特に良好な密封効果が実現される。
【0014】
密封シームは超音波溶接によって形成されることが好ましい。超音波溶接では、一方では、超音波ソノトロードがポリマー層を溶融させ、他方では、選択的接触圧によって密封シームの箇所で金属層が崩壊して完全に中断される。超音波溶接は、ポリマー層を基板に接続すると同時に金属層を中断するための極めて安全な方法である。また、超音波溶接は極めて局所的に限定されるので、ミラーの如何なる隣接箇所も損われない。
【0015】
本発明による方法の第1の設計によると、基板と反射膜とは帯体として形作られ、反射膜は帯体状の基板に連続的に貼り合わされ、このように製造されたミラーはコイルに巻き取られる。この帯体状ミラーの長手方向端縁の密封は、反射膜の貼り合わせと一緒にインラインで行われるか、または追加の製造ステップでミラーをコイルから新たに繰り出すことによって行われる。密封シームはインラインで帯体状ミラーに形成されることが好ましい。その理由は、帯体状ミラーの長手方向端縁を密封するための次のプロセスステップが不要になるからである。この場合は、しかし、帯体状ミラーがコイルからもう一度繰り出される場合においても、長手方向端縁の密封は、例えば超音波溶接によって、端縁領域を連続的に密封することによって行われる。使用されるこの方法は、「ロール・ツー・ロール(roll-to-roll,Roll-to-roll(英、独訳))」方式と呼ばれる。
【0016】
別の設計によると、所謂「ロール・ツー・シート(roll-to-sheet, Roll-to-sheet(英、独訳))」方式が提供される。この方法では、基板は帯体状であり、複数の面状基板ブランク(areal substrate blanks,flaechige Substratzuschnitte(英、独訳))に分割される。次に、反射膜が各基板ブランクの表面に接合される。反射膜が接合された各基板ブランクに、少なくとも各長手方向端縁に、少なくとも1つの密封シームがそれぞれ設けられる。これにより、各長手方向端縁が密封されたミラーブランクを用意できる。その後、これらミラーブランクに、長手方向の密封シームに直角な密封シームを設けることができる。特に、この方法は、ブランクを製造対象のミラーのそれぞれのミラーサイズに直ちに適応させ得る可能性と、横方向の密封シームを自動的に設け得る可能性とをもたらす。この場合、完全に密封されたミラーを提供できる。
【0017】
この密封シームは、超音波ローラソノトロードを用いて、必要であればアンビルローラも用いて、超音波溶接によって特に高速で形成可能であることが明らかになった。超音波ローラソノトロード、ならびにカウンタホルダとして使用される任意使用のアンビルローラ、は特に直線的に延在する密封シームの形成時に用いられる。
【0018】
超音波ローラソノトロードの幾何学的形状は、半径が1.0mm〜3.0mm、好ましくは1.5mm〜2.5mm、であることが好ましい。対応する超音波ローラソノトロードの幾何学的形状により、ポリマー層が基板に材料固着式に接合され、同時に密封シームの箇所において金属層が完全に中断されることが保証される。その理由は、上記より大きい半径では、金属層を十分確実に中断できないことが明らかになったからである。1.0mm未満の半径を使用すると、材料固着式の貼り合わせによって基板が損傷する危険がある。
【0019】
また、プロセスの信頼性が十分に高い密封は、超音波ソノトロードの接触圧が1〜6MPa、周波数が20〜60kHz、および振幅が25μmと70μmの間で形成される密封シームによって実現可能であることが明らかになった。前記パラメータは、プロセスの信頼性が極めて高く、極めて緊密な密封シーム、ひいては腐蝕に対する反射面の優れた保護、がもたらされることが証明された。同時に、反射膜と基板とから成る密封されたミラーの経済的製造を可能にする十分に高い処理速度も実現され得る。
【0020】
最後に、上記の要件は、帯体状基板の繰り出し器と、帯体状反射膜を帯体状基板に貼り合わせる貼り合わせ装置と、長手方向端縁に沿って帯体状ミラーを密封するために貼り合わせ装置の下流に設けられた、帯体状基板の対向する長手方向端縁の領域にそれぞれ配設された少なくとも2つの超音波ローラソノトロードとを備え、端縁が密封されたミラーを巻き取るための巻き取り器がさらに設けられた、ミラー製造装置によって達成される。この装置は、端縁が密封された帯体状ミラーを製造するためのロール・ツー・ロールプロセスを可能にする。このプロセスは特に経済的である。帯体状ミラーは、太陽光発電設備の現地において供給材料としてのサイズに切断可能であり、必要に応じて、切断後の反射面を包囲するための追加の密封シームを設けることができる。さらに、本発明による装置では、長手方向端縁の密封中に帯体状基板に有害なあらゆる機械的衝撃を回避するために、超音波ローラソノトロードに対する反対圧力を生じさせるための手段として、アンビルローラを設けることが可能である。
【0021】
本装置の次の設計によると、貼り合わせプロセスの前または後に基板を複数のブランクに切断する切断装置が繰り出し器の下流に設けられ、更に、ミラーブランクの載置装置が、巻き取り器の代わりに、設けられる。この装置を用いると、帯体状の基板、例えばアルミニウム合金帯体、から、長手方向端縁に沿って密封シームが設けられて所定サイズに切断された複数のミラーが用意され得る。これらミラーは、意図された用途に既に適合化されている、すなわち所定サイズに切断されている、ので、反射面を腐蝕の影響から完全に保護するために、横方向の密封シームを設けるだけでよい。横方向の密封シームは、例えば、次のプロセスステップにおいて自動的に形成され得る。上記の装置を用いると、所謂「ロール・ツー・シート」プロセスを実現できる。
【0022】
最後に、本装置は、繰り出し器の代わりに、所定サイズに切断された基板のレセプタクルと、これら基板を貼り合わせおよび密封ステーションに送るためのフィードとを設けることによって更なる適合化が可能である。本発明による装置のこの実施形態は、「シート・ツー・シート(sheet-to-sheet, Sheet-to-sheet(英、独訳))」プロセス、すなわち、板状の基板から、その長手方向端縁に沿って密封シームが設けられた板状ミラーの製造、を可能にする。
【0023】
次に、図面と併せて複数の実施形態によって本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】反射膜と基板との複合体から成るミラーの一例示的実施形態の構成を模式的に示す。
図2図1b)によるミラーのための密封シームの形成の一例示的実施形態を略断面図で示す。
図3】帯体状ミラーの別の例示的実施形態を示す。
図4】ミラーの別の例示的実施形態の上面図を示す。
図5図3の例示的実施形態における密封シームの形成方法を略斜視図で示す。
図6】「ロール・ツー・ロール」プロセスによるミラー製造装置の一例示的実施形態を概略図で示す。
図7】「ロール・ツー・シート」プロセスによるミラー製造装置の一例示的実施形態を概略図で示す。
図8】「シート・ツー・シート」プロセスによるミラー製造装置の一例示的実施形態を概略図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1a)は、反射膜1と基板2とから成るミラーの主構成を示す。反射膜1は、好ましくは、ポリマー層3と金属層4とを備える。反射膜1は、本実施形態に示されているように、基板2への反射膜1の貼り合わせを可能にする接着層5を備えることも随意である。基板2は、既に説明したように、鋼、アルミニウム、またはアルミニウム合金などの金属で、あるいは反射膜のポリマー層3より高い硬度を有する複合材料で、構成され得る。例えば、アルミニウム合金、好ましくはタイプAA3005またはAA3105のアルミニウム合金、が用いられる場合の基板の厚さは、通常、0.1〜2mm、好ましくは0.4〜1.3mm、である。例えばアルミニウム合金帯体の表面を不動態化して反射膜の接着用に最適化するために、図1a)および図1b)には示されていない変換層を基板に設けることも随意である。アルミニウム合金帯体の表面の化学的不動態化は、光の反射を担う金属層が、通常設けられる銀層に加え、銅層を備え、この銅層が銀層と基板との間に設けられる場合に特に有利である。原則として、貼り合わせまたは接合の前に、更に、または代わりに、接着層5を基板2の表面に配置することも可能である。
【0026】
図1b)の略断面図に示されているように、反射膜1および基板2の2つの個々の材料の接合または貼り合わせによって、ミラー7、特に複合ミラー、が製造される。これら図面においては、個々の層の寸法は相互間で同じ縮尺ではない。その理由は、特に金属層4、例えば銀層、の厚さは、数ナノメートルに過ぎないからである。これに比べ、透明ポリマー層3は際立って厚い。ポリマー層3の厚さはマイクロメートル範囲内である。このように構成されたミラーが湿気にさらされると、この湿気が外側からミラーの端縁6を通って金属層4の内側に浸透する。例えば金属層4が銀層から成る場合は、腐蝕に至り、最悪の場合は、透明ポリマー層3の剥離に至る。腐蝕は金属層4またはミラー7の反射率の極度の低下をもたらし、ミラー7はその反射特性を失うことになる。換言すると、ミラーはブラインド化する。
【0027】
図2は、腐蝕を防止する、ひいてはミラー7のブラインド化を防止する、密封シームの形成の一実施形態を略断面図で示す。帯体状ミラー7の、好ましくはPMMAプラスチック製の、ポリマー層3は、金属層4が密封シーム10の箇所において完全に中断されるように、超音波ローラソノトロード8とアンビルローラ9とを用いて基板2に溶接される。図2において分かるように、材料固着式の接合部がポリマー層3と基板との間に形成される。これは、外側から端縁6内への湿気の浸透が密封シーム10において直接阻止されるという効果があるので、対応する密封シーム10によって包囲された反射面は、塩水噴霧試験後の数週間は腐蝕が起きず、完全に無傷の状態のままであった。基板2へのポリマー層3の超音波溶接によって、プロセスの信頼性が高い反射面の密封が極めて有効に行えることが明らかになった。このために、超音波ローラソノトロード8の半径11は、好ましくは1.0mm〜3.0mmであり、特に好ましくは1.5mm〜2.5mmである。しかし、図2に示されているアンビルローラ9を超音波ローラソノトロードとして使用し、適切な半径を有するアンビルローラの助けを借りて、密封シーム10の断面形を実現することも可能である。このとき、ローラ自体は超音波振動を一切行わない。
【0028】
アンビルローラ9と超音波ローラソノトロード8とはどちらも、帯体と同じ速度で回転運動を行うように、一駆動装置によって駆動されることが好ましい。また、超音波ローラソノトロード8とアンビルローラ9とは、金属層4を中断する密封シームを形成するために、一定の接触圧で互いに押し合される必要がある。PMMAポリマー層3とタイプAA3105アルミニウム合金製のアルミニウム合金基板2とを有する本実施形態においては、プロセスの信頼性が高い方法で密封シームを形成するために、2〜4バールの接触圧で十分であった。試験中、超音波ソノトロードまたはアンビルローラの幾何学的形状の選択が密封シーム10の品質に影響を及ぼし得ることも明らかになった。すなわち、半径8.5mmを使用すると、設定された接触圧または設定された超音波出力とは無関係に、十分に緊密な密封シーム10が形成されなかった。これら試験において、使用された超音波周波数は20kHzであり、超音波ローラソノトロードの振幅は40μm、出力は500Wであった。対応する試験の結果が表1に示されている。
【0029】
【表1】
【0030】
試験V1〜V4は、塩水噴霧試験において、銀層の腐蝕がポリマー層の下で発生したので、結果に不良マーク(−−)が付けられたことを示している。試験V5およびV6は、対照的に、腐蝕が一切発生しなかったので、極良好マーク(++)が付けられたことを示している。
【0031】
図3は、別の実施形態による帯体状ミラー7の斜視図を示す。帯体状ミラー7は、帯体状ミラー7の両端縁6の領域にそれぞれ配置された2つの密封シーム10を備える。帯体状ミラー7は、図3に示されているように、コイルを形成するために巻き取り可能であり、特定用途向けに切断された複数の完全密封ミラーを製造するために使用可能である。帯体状ミラー7は、相応に切断された複数のミラー要素の特に経済的な製造を可能にする。
【0032】
対応するミラー要素が図4a)および図4b)に上面図で示されている。図4a)は、帯体状ミラー7から製造されたミラーの一実施形態を示す。このミラーは、帯体状ミラー7の製造中に長手方向端縁に設けられた密封シーム10に加え、横方向の密封シーム12を備える。この更に設けられた横方向の密封シーム12は、図2に示されているのと同じ方法で形成され得る。ミラーの長手方向端縁に沿って延在する密封シーム10を所定サイズに切断後の薄板に形成する、すなわち不連続的に形成する、ことも勿論可能である。密封シーム10、12は、手動装置による形成も可能である。直線的に延在する端縁領域だけでなく、異形端縁の密封も可能にするために、間欠送りプロセス(indexing process,getakter Prozess(英、独訳))も可能である。
【0033】
2つの半径を有する二重隆起の形状を超音波ローラソノトロードまたはアンビルローラの幾何学的形状に選択すると、図4b)に示されているように、例えばミラーの長手方向に、または長手方向に直角な方向にでさえ、二重密封シーム10’または12’を作成できる。二重密封シーム10’、12’は、漏れが一方の密封シームの箇所に存在したとしても、ミラーのブラインド化防止の信頼性を更に高める。
【0034】
図5は、密封シーム10をその長手方向端縁に有する帯体状ミラー7の製造方法の一実施形態を略斜視図で示す。図5に示されている実施形態では、超音波ローラソノトロードは帯体の下側、すなわち基板側、に位置付けられ、アンビルローラ9はポリマー層3側に配置される。図2に示されている実施形態とは対照的に、超音波ローラソノトロードおよびアンビルローラの位置が逆になっており、アンビルローラの半径は1.0mm〜3.0mmである。これは、極めて良い品質の密封シームを形成する別の方法である。
【0035】
対応する構成が図6図7、および図8にも示されている。図6は、密封シーム10を長手方向端縁の領域に有する帯体状ミラー7を製造するための「ロール・ツー・ロール」プロセスを実施する装置の一実施形態を示す。このプロセスは、基板、例えばタイプAA3005またはAA3105のアルミニウム合金から成るアルミニウム合金帯体、をコイルの形態で保持する繰り出し器13から始まる。帯体状の基板は、ガイドローラ構造14を介して、貼り合わせ装置15に送られる。貼り合わせ装置15は、保護膜17が設けられた反射膜1をコイル16に備える。保護膜17は接着層5に接着されており、コイルとして巻き取られている反射膜1の容易な扱いを可能にする。反射膜1は、貼り合わせロール18の助けを借りて、および圧力と熱との印加によって、基板2に貼り合わされる。基板2は、好ましくはタイプAA3005またはAA3105のアルミニウム合金製の帯体であり、必要であれば、事前に加熱装置19で加熱されている。このように製作された、反射膜1と基板2とから構成された複合体は、冷却ロール装置20を介して、アンビルローラ9と超音波ローラソノトロード8とから成る密封シーム形成装置21に送られる。その後、その各長手方向端縁に沿って2つの密封シームを備えた帯体状ミラー7はコイル22に巻き取られる。この製造プロセスが経済的かつ生産性が高いことは容易に推察される。このように用意された、その長手方向端縁に沿って密封シームを有する帯体状ミラー7のコイルは、所望される反射面を製作するために、更なるプロセスステップにおいて所定サイズに切断され、対応する追加の密封シームが設けられ得るので、その周囲全体が密封シーム10、12によって防蝕保護された反射面が得られる。
【0036】
あるいは、必要とされる反射面を製作するための切断プロセスは、帯体状ミラー7の長手方向端縁6に沿って密封シーム10を形成した直後に実施され得る。「ロール・ツー・シート」プロセスを実施するための一実施形態が図7に示されている。図6に比べ、アンビルローラ9と超音波ローラソノトロード8とから成る、密封シーム10を形成する装置21が貼り合わせ装置15の直ぐ下流に設けられる。密封シーム10の形成に続き、載置テーブル23に到着する帯体状ミラー7は、複数のブランク24を形成するために切断される。ただし、ブランクに切断する装置は図7に示されていない。所定サイズに切断されたミラー24を、載置テーブルから、例えば横方向の密封シーム12または12’を形成するための、更なる処理ステップに送ることができる。
【0037】
最後に図8に、「シート・ツー・シート」プロセスを実施するための装置の実施形態が示されている。この実施形態では、図6および図7の実施形態に比べ、繰り出し器13の代わりに、所定サイズに切断された板状基板26を収容するための収容テーブル25が用いられる。板状基板26は次に貼り合わせ装置15において反射膜1に貼り合わされ、装置21を用いて長手方向の密封シーム10が設けられる。長手方向端縁に沿って密封シーム10が設けられた反射面は、載置テーブル23に載置され、さらに次の処理ステップ、特に横方向の密封シームを形成するためのステップ、に搬送される。
【要約】
本発明は、反射膜と基板との複合体で形成された反射面を備えたミラーに関する。反射膜は基板の表面に配設され、少なくとも1つのポリマー層とこの少なくとも1つのポリマー層の下に配設された金属層とを備える。本発明の要件は、簡単な方法で製造可能でありながら、腐蝕挙動が改良されたミラーを提案することである。本発明の第1の教示によると、上記要件は、ポリマー層を基板に材料固着式に接合することによって形成された密封シームを少なくともいくつかの箇所に防蝕用に設け、密封シームの箇所において金属層を中断することで達成される。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8