(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5696277
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】テープカートリッジおよびテープ印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 17/32 20060101AFI20150319BHJP
B41J 3/36 20060101ALI20150319BHJP
B41J 15/04 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
B41J17/32 A
B41J3/36 T
B41J15/04
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-203634(P2013-203634)
(22)【出願日】2013年9月30日
(62)【分割の表示】特願2010-145005(P2010-145005)の分割
【原出願日】2010年6月25日
(65)【公開番号】特開2014-31014(P2014-31014A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2013年10月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000129437
【氏名又は名称】株式会社キングジム
(74)【代理人】
【識別番号】110001623
【氏名又は名称】特許業務法人真菱国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小菅 晋作
【審査官】
牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−032709(JP,A)
【文献】
特開平05−185707(JP,A)
【文献】
特開平10−071756(JP,A)
【文献】
特開2003−011454(JP,A)
【文献】
特開2000−103129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 17/32
B41J 3/36
B41J 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
嵌合軸と前記嵌合軸の外周面から前記嵌合軸の周方向において部分的に突出した嵌合突起とが設けられたカートリッジ装着部を有するテープ印刷装置に装着されるテープカートリッジであって、
外周面にテープが巻回されたコア本体、および前記コア本体の軸心に形成された軸孔、を有するテープコアと、
前記テープコアを収容するカートリッジケースと、を備え、
前記カートリッジケースは、
前記軸孔に挿通されて前記テープコアを回転自在に軸支する軸支部と、
前記軸支部の外周面から突出した回転ガイド部と、を有し、
前記軸支部には、前記嵌合軸が嵌合する中空部が設けられ、
前記回転ガイド部には、前記嵌合突起が嵌合する凹部が設けられ、
前記回転ガイド部は、前記軸支部の周方向において部分的に設けられていることを特徴とするテープカートリッジ。
【請求項2】
前記軸支部の前記中空部に前記嵌合軸が嵌合し、前記回転ガイド部の前記凹部に前記嵌合突起が嵌合することによって、前記テープカートリッジが前記カートリッジ装着部に対して位置決めされることを特徴とする請求項1に記載のテープカートリッジ。
【請求項3】
前記回転ガイド部は、前記コア本体の内周面に摺接することを特徴とする請求項1または2に記載のテープカートリッジ。
【請求項4】
前記軸支部および前記回転ガイド部は、前記カートリッジケースと一体に成形されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のテープカートリッジ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のテープカートリッジが装着可能なテープ印刷装置であって、
前記嵌合軸と前記嵌合軸の外周面から前記嵌合軸の周方向において部分的に突出した前記嵌合突起とが設けられた前記カートリッジ装着部を有することを特徴とするテープ印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープコアをカートリッジケース内に回転自在に軸支して、テープコアに巻回したテープを繰出し可能に収容するテープカートリッジおよびテープ印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外周面にテープが巻回されたコア本体と、コア本体の内周面の中段位置に設けられ、下ケースの突起に回転自在に軸支される円板状のリブ部を有するテープコアと、上下二分割のカートリッジケースと、により構成されるテープカートリッジが知られている(特許文献1参照)。
テープカートリッジのテープコアは、リブ部がコア本体の内周面の軸方向中間部に設けられているため、突起に挿通させるテープコアの向きはどちら向きでもよく、組み立て時の装着ミスを未然に防止することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−071756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、テープコアは、突起に対して所定の寸法公差をもってリブ部でのみ軸支されているため、テープの繰り出し等によるテープコアの回転に伴ってテープコアの「がたつき」等が生じていた。このため、テープを引き出す力が、テープの幅方向において不均一に作用すると、テープコアが傾き、テープが斜行しながら繰り出される等の問題があった。
【0005】
本発明は、テープコアの傾きを抑制し、その回転を安定させることができるテープカートリッジおよびテープ印刷装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のテープカートリッジは、嵌合軸と嵌合軸の外周面から
嵌合軸の周方向において部分的に突出した嵌合突起とが設けられたカートリッジ装着部を有するテープ印刷装置に装着されるテープカートリッジであって、外周面にテープが巻回されたコア本体、およびコア本体の軸心に形成された軸孔、を有するテープコアと、テープコアを収容するカートリッジケースと、を備え、カートリッジケースは、軸孔に挿通されてテープコアを回転自在に軸支する軸支部と、軸支部の外周面から突出した回転ガイド部と、を有し、軸支部には、嵌合軸が嵌合する中空部が設けられ、回転ガイド部には、嵌合突起が嵌合する凹部が設けられ
、回転ガイド部は、軸支部の周方向において部分的に設けられていることを特徴とする。
【0007】
この場合、軸支部の中空部に嵌合軸が嵌合し、回転ガイド部の凹部に嵌合突起が嵌合することによって、テープカートリッジがカートリッジ装着部に対して位置決めされることが好ましい。
【0010】
また、この場合、回転ガイド部は、
コア本体の内周面に摺接することが好ましい。
【0011】
また、この場合、
軸支部および回転ガイド部は、カートリッジケースと一体に成形されていることが好ましい。
【0012】
本発明のテープ印刷装置は、上記のテープカートリッジが装着可能なテープ印刷装置であって、嵌合軸と嵌合軸の外周面から
嵌合軸の周方向において部分的に突出した嵌合突起とが設けられたカートリッジ装着部を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】テープ印刷装置の開蓋状態の外観斜視図である。
【
図2】上ケースを破断した第1実施形態に係るテープカートリッジの平面図である。
【
図5】
図2に示すテープカートリッジのA−A線における断面図およびカートリッジ装着部の断面図である。
【
図6】上ケースを省略した第2実施形態に係るテープカートリッジの平面図である。
【
図7】上ケースを省略したテープカートリッジであって、(a)は第3実施形態に係るテープカートリッジの平面図、(b)はその変形例に係るテープカートリッジの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照しながら、第1実施形態に係る本発明のテープ印刷装置について説明する。このテープ印刷装置は、装着したテープカートリッジから印刷テープおよびインクリボンを繰り出し、張りを与えた状態で併走させながら印刷を行い、印刷テープの印刷済み部分を切断して、ラベル(テープ片)を作成するものである。
【0019】
図1および
図2を参照して、テープ印刷装置1等について説明する。
図1は、テープ印刷装置1の開蓋状態の外観斜視図である。
図2は、上ケース25aを破断したテープカートリッジ2の平面図である。テープ印刷装置1は、その外殻を形成する装置本体10と、開閉蓋11の内側に窪入形成され、印刷テープ21a等を収容したテープカートリッジ2を着脱自在に装着するカートリッジ装着部12と、テープカートリッジ2から印刷テープ21aを繰り出しながら送るテープ送り手段13と、印刷済みの印刷テープ21aを切断するカッター手段14と、を備えている。ユーザーは、装置本体10の上面に配設されたキーボード15を操作し、操作結果等を表示したディスプレイ16を確認しながら印刷動作を実行させる。
【0020】
テープカートリッジ2は、印刷テープ21aをテープコア21bに巻回してなるテープ体21と、インクリボン22aをリボンコア22bに巻回してなるリボン体22と、使用後のインクリボン22aを巻き取る巻取りコア23と、印刷テープ21aをテープ体21から繰り出して送るプラテンローラー24と、を備えている。
【0021】
テープ送り手段13は、カートリッジ装着部12に装着したテープカートリッジ2内の印刷テープ21aおよびインクリボン22aを走行させるためにプラテンローラー24および巻取りコア23を回転させる複数の駆動軸17と、テープコア21bに係合して位置決めする位置決め突起18と、複数の駆動軸17を同期回転させる駆動機構(図示省略)と、を備えている。
【0022】
テープカートリッジ2をカートリッジ装着部12に装着すると、サーマルヘッド19が、印刷テープ21aおよびインクリボン22aを挟んでプラテンローラー24に当接し、印刷待機状態となる(
図2参照)。印刷が開始されると、インクリボン22aは、プラテンローラー24の部分で、印刷テープ21aに重なって併走する。そして、サーマルヘッド19により印刷処理が行われた印刷テープ21aは、テープカートリッジ2および装置本体10の外部に送り出され、カッター手段14により印刷済み部分がテープ幅方向に切断され、テープ片(ラベル)が作成される。一方、インクリボン22aは、テープカートリッジ2内を所定の経路に沿って送られ巻取りコア23に巻き取られる。
【0023】
次に、
図2ないし
図5を参照して、テープカートリッジ2について詳細に説明する。
図3は、テープカートリッジ2の表裏斜視図である。
図4は、テープカートリッジ2の分解斜視図である。
図5は、
図2に示すテープカートリッジ2のA−A線における断面図およびカートリッジ装着部12の断面図である。テープカートリッジ2は、上ケース25aと下ケース25bとからなるカートリッジケース25により、その外殻が形成され、上記した、テープ体21、リボン体22、巻取りコア23およびプラテンローラー24をカートリッジケース25内に収容している。上ケース25aおよび下ケース25bは、接合端面に形成したピンおよび貫通孔により、圧入接合されている(分解・再利用可能)。
【0024】
テープ体21を構成するテープコア21bは、外周面に印刷テープ21aが巻回されたコア本体26と、コア本体26の内周面の軸方向中間部に突設されたリブ部27と、リブ部27の軸心に形成した軸孔28と、で一体に形成されている(
図2および
図5参照)。コア本体26は、中空円筒形を為しており、リブ部27は、軸心に軸孔28が開口した中空円板状を為している。
【0025】
また、コア本体26の内周面には、印刷テープ21aの繰出し端がカートリッジケース25内へ、引き込まれることを防止するための逆転防止機構31が組み込まれている(
図4および
図5参照)。逆転防止機構31は、上記したリブ部27の表裏両面にそれぞれ形成され、印刷テープ21aの繰出し方向にのみ回転を許容するように形成された鋸歯状の爪車で構成されたラチェット溝(図示省略)と、両端部をリブ部27および上ケース25aにそれぞれ当接し、直線状に延長した線状係止部33が下側端部に形成された逆転防止ばね32(いわゆる、コイルばね)と、を有している。
【0026】
下ケース25bは、軸孔28に挿通してテープコア21bを回転自在に軸支する軸支部41と、コア本体26の内周面に摺接するように軸支部41に添設する回転ガイド部42と、を有している。
【0027】
軸支部41は、下ケース25bから立設した中空円筒形を為しており、その上端から縦溝43が形成されている。縦溝43は、軸支部41に装着したテープコア21bのラチェット溝よりも低い位置まで切り込まれている(
図5(a)参照)。
【0028】
したがって、逆転防止ばね32は、縦溝43に線状係止部33を位置合わせして、軸支部41の内周部分に投入すると、線状係止部33がラチェット溝の上に載り、さらに、この状態で上ケース25aを装着すると、逆転防止ばね32は、圧縮され、その線状係止部33がラチェット溝に押し付けられる(
図5(a)参照)。これにより、テープコア21bは、印刷テープ21aの繰出し方向(
図2におけるB方向)への回転は許容され、その逆方向への回転が阻止される。一方、テープカートリッジ2をカートリッジ装着部12に装着すると、上記の位置決め突起18が逆転防止ばね32を下側から押圧し、線状係止部33のラチェット溝に対する係合を解く(
図5(b)参照)。すなわち、ラチェット溝から線状係止部33が離間し、テープコア21bは自由回転が可能となる。なお、逆転防止ばね32は、軸支部41の外周面に装着する構造にしてもよい。
【0029】
回転ガイド部42は、軸支部41の基端部分において、軸支部41から凸設されており、所定の肉厚を有して下ケース25bと一体に成形されている。なお、本実施形態では、回転ガイド部42は、
図2において上側に一箇所設けられている。回転ガイド部42は、コア本体26の内周面に摺接する部分が、当該内周面とほぼ同一の曲率をもって形成されており、テープコア21bの回転を妨げることがないようになっている。このような構成によれば、テープコア21bを下ケース25bの
軸支部41に支持させると、コア本体26のリブ部27が軸支部41に摺接すると共に、回転ガイド部42がコア本体26の内周面に摺接する。したがって、テープコア21bは、軸支部41と回転ガイド部42との2箇所で下ケース25b内に回転自在に軸支される。これにより、テープコア21bは、「がたつく」ことなく(傾くことなく)回転し、テープコア21bに巻回した印刷テープ21a斜行しながら繰出されることが防止できる。
【0030】
なお、下ケース25bの下面(裏面)には、軸支部41の内周面となる中空部44aと、回転ガイド部42により
形成された凹部44bと、が一体となった嵌合開口部44が形成されている(
図3(b)参照)。
【0031】
次に、テープカートリッジ2を着脱自在に装着するカートリッジ装着部12について説明する。カートリッジ装着部12には、上述したように、テープコア21bに係合して位置決めする位置決め突起18が立設している(
図1および
図5参照)。位置決め突起18は、テープカートリッジ2をカートリッジ装着部12に装着したときに、軸支部41の中空部44aに嵌合する嵌合軸18aと、回転ガイド部42により
形成された凹部44bに嵌合する嵌合突起18bと、が一体となって設けられている。すなわち、テープカートリッジ2をカートリッジ装着部12に装着すると、位置決め突起18は、下ケース25bの下面の嵌合開口部44に嵌合し、テープカートリッジ2をカートリッジ装着部12に位置決めして回転不能に固定される。これにより、カートリッジ装着部12におけるテープカートリッジ2自体の「がたつき」を無くすことができ、テープカートリッジ2内のテープコア21bの回転を安定させることができる。
【0032】
以上の構成によれば、リブ部27と回転ガイド部42とにより、テープコア21bの回転を安定させることができ、テープコア21bに巻回した印刷テープ21aの繰出しを適切に行うことができる。
【0033】
なお、本実施形態では、回転ガイド部42を軸支部41に添設させ、軸支部41と一体に形成しているが、回転ガイド部42を、軸支部41から離間した位置に独立して設けてもよい。
【0034】
(第2実施形態)
図6を参照して、第2実施形態に係るテープカートリッジ2について説明する。なお、第1実施形態に係るものと同様の説明は省略する。
図6は、上ケース25aを省略した第2実施形態に係るテープカートリッジ2の平面図である。第2実施形態に係るテープカートリッジ2は、印刷テープ21aが繰出されて巻回状態が解かれる位置の法線上に回転ガイド部42を配設している。このように、傾きを生じさせる力が集中して作用する(最も力が掛る)部分に、回転ガイド部42を設けることで、テープコア21bが傾くことを確実に防止することができ、「がたつき」のない安定した回転を保証することができる。
【0035】
(第3実施形態)
図7(a)は、第3実施形態に係るテープカートリッジ2の平面図である。なお、第1実施形態に係るものと同様の説明は省略する。このテープカートリッジ2は、軸支部41の周方向に複数(本実施形態では4つ)の回転ガイド部42を等間隔に設けている。この場合、回転ガイド部42の数および位置は任意である。この構成によれば、複数の方向へのテープコア21bの傾きを阻止することができ、確実にテープコア21bの「がたつき」を防ぐことができる。
【0036】
(第3実施形態の変形例)
図7(b)は、第3実施形態の変形例に係るテープカートリッジ2の平面図である。このテープカートリッジ2は、回転ガイド部42が、軸支部41の全周に亘って設けられている。この構成によれば、テープコア21bの傾きを更に阻止することができ、確実にテープコア21bの「がたつき」を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0037】
1:テープ印刷装置、2:テープカートリッジ、18b:嵌合突起、21a:印刷テープ、21b:テープコア、25:カートリッジケース、26:コア本体、27:リブ部、28:軸孔、41:軸支部、42:回転ガイド部