特許第5696296号(P5696296)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5696296
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】中空羽根車およびそれを用いた発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03B 3/04 20060101AFI20150319BHJP
   F03B 3/18 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   F03B3/04
   F03B3/18 A
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-544292(P2014-544292)
(86)(22)【出願日】2014年3月20日
(86)【国際出願番号】JP2014057661
【審査請求日】2014年9月12日
(31)【優先権主張番号】特願2013-81716(P2013-81716)
(32)【優先日】2013年4月10日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513089903
【氏名又は名称】株式会社インターフェイスラボ
(74)【代理人】
【識別番号】100174643
【弁理士】
【氏名又は名称】豊永 健
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
(72)【発明者】
【氏名】内山 知実
(72)【発明者】
【氏名】井手 由紀雄
【審査官】 加藤 一彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/019094(WO,A1)
【文献】 特開平9−105395(JP,A)
【文献】 特開平10−70858(JP,A)
【文献】 特開2006−152711(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0031442(US,A1)
【文献】 特開2013−40568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 3/04
F03B 3/12
F03B 3/18
F03B 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端部から延びる第1の管と、
前記第1の端部に回転軸を中心に回転可能に支持された環状体と、前記外環状体の内面に密接する外面を持ち前記外環状体に固定された内環状体と、を備えた環状体と、
前記内環状体の内面から前記回転軸に向かって突出して前記回転軸方向の長さが前記内環状体より短く前記回転軸と前記内環状体の内面とが連通するように前記内環状体と一体成型されて前記第1の管を流れる流体によって前記環状体に回転力を付与する羽根と、
前記環状体の回転によって発電する発電機と、
を有することを特徴とする発電装置
【請求項2】
前記外環状体と前記内環状体とはボルトで固定されていることを特徴とする請求項1に記載の発電装置
【請求項3】
前記羽根は内側が外側よりも幅が小さくなるように形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の発電装置
【請求項4】
第1の管の内面に前記回転軸と前記第1の管の内面とが連通するように形成されて前記流体の流れに旋回方向の運動量を与えるガイドベーンをさらに有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の発電装置
【請求項5】
前記第1の端部に対向する第2の端部から延びる第2の管をさらに有し、
前記第1の管および前記第2の管は円管であって、同軸に配置されていて、
前記環状体は前記第2の端部にも回転可能に支持されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の発電装置。
【請求項6】
前記環状体の内直径に対する前記羽根の内接円の直径の比が0.6以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の発電装置。
【請求項7】
前記発電機は、前記環状体に固定された永久磁石と前記環状体の外面に対向するコイルとを備えることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の発電装置。
【請求項8】
第1の端部から延びる第1の管と、
前記第1の端部に回転軸を中心に回転可能に支持された外環状体と、前記外環状体の内面に密接する外面を持ち前記外環状体に固定された内環状体と、を備えた環状体と、
前記内環状体の内面から前記回転軸に向かって突出して前記回転軸方向の長さが前記内環状体より短く前記回転軸と前記内環状体の内面とが連通するように前記内環状体と一体成型されて前記第1の管を流れる流体によって前記環状体に回転力を付与する羽根と、
を有することを特徴とする中空羽根車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空羽根車およびそれを用いた発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギーを用いた分散型独立電源の開発は、地球温暖化防止や放射能汚染防止を目的とした、化石燃料や原子力による電源の代替はもちろんのこと、大災害時の非常用電源を確保するためにも極めて重要である。とくに、地産池消エネルギーは地理的特徴を活かした地域資源を活用し、「自立」、「小規模」、「分散」、「多数」の電源が有機的に結合し連携していることが大切である。中でも、CO削減効果が最も大きい水力発電、特にマイクロ水力発電は、災害時に地形的に被災者が分散し孤立する可能性が高い地域・自治体に適した電力源であり、安定した小規模の自立電源が数多くあることが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−120499号公報
【特許文献2】特開2006−022745号公報
【特許文献3】特開2008−031855号公報
【特許文献4】特開2009−114974号公報
【特許文献5】特開2011−130623号公報
【特許文献6】特開2012−193730号公報
【特許文献7】特開2013−053539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マイクロ水力発電は、その豊富なエネルギー賦存量にも関わらず、その開発・実運用が遅れている。特に、事業採算性の観点から、従来のマイクロ水力発電システムでは収益性(エネルギー収支比)に課題があり、改善が必要である。たとえば、マイクロ水力発電機の単位発電容量当たりの単価が高く初期投資の負荷が大きいこと、屋外使用時に、落ち葉・枯れ枝・土砂などを巻き込み、運転障害を引き起こすため設備稼働率が低下すること、保守・メンテナンスにかかる人件費が大きいこと、などの課題がある。
【0005】
特に、山間部に設置されたマイクロ水力発電の運転では、水流中に含まれる小枝、木葉、小石、小動物の死体などが水車の回転する羽根に巻き込まれて流路を閉塞し、運転を停止させる深刻な問題が多発している。従来、水車の閉塞を防止するため、スクリーンやネットなどを水車上流の流路に敷設し、上記の水流中の異物を除去する対策がとられている。これにより一定の効果はもたらされるが、効率的な水車の運転を維持するためには、高い頻度で定期的にスクリーンやネットに捕捉された異物を取り除く作業が必要とされる。これに要する手間と人件費は小さくなく、マイクロ水力発電の有効な運用と普及の大きな障害となっている。
【0006】
そこで、本発明は、流体による発電システムの屋外運用に伴うメンテナンスコストの増加を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するため、本発明は、中空羽根車において、第1の端部から延びる第1の管と、前記第1の端部に回転可能に支持された環状体と、前記環状体の内面に取り付けられて前記第1の管を流れる流体によって前記環状体に回転力を付与する羽と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、発電装置において、第1の端部から延びる第1の管と、前記第1の端部に回転可能に支持された環状体と、前記環状体の内面に取り付けられて前記第1の管を流れる流体によって前記環状体に回転力を付与する羽と、を有する中空羽根車と、前記環状体の回転によって回転するシャフトを持つ発電機と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、流体による発電システムの屋外運用に伴うメンテナンスコストの増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る中空羽根車の一実施の形態を用いた発電装置の側面図である。
図2】本発明に係る中空羽根車の一実施の形態の横断面図である。
図3】本発明に係る中空羽根車の一実施の形態の管と環状体との結合部分の拡大断面図である。
図4】本発明に係る中空羽根車の一実施の形態を用いた発電装置の斜視図である。
図5】本発明に係る中空羽根車の一実施の形態の一変形例における環状体および羽根の縦断面を示す断面図である。
図6】本発明に係る中空羽根車の一実施の形態の一変形例における環状体の横断面図である。
図7】本発明に係る中空羽根車の一実施の形態における中空率に対する水車出力の変化の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る中空羽根車の一実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明に係る中空羽根車の一実施の形態を用いた発電装置の側面図である。図2は、本実施の形態の中空羽根車の横断面図である。図3は、本実施の形態の中空羽根車の管と環状体との結合部分の拡大断面図である。図4は、本実施の形態の中空羽根車を用いた発電装置の斜視図である。
【0013】
本実施の形態の発電装置は,円管内のプロペラ(羽根)を水流により駆動して発電機を回すマイクロ水力発電装置である。中空羽根車は、第1の管12と第2の管14と環状体20とを有している。第1の管12の一方の端部は、第2の管14の一方の端部に対向して配置されている。第1の管12と第2の管14は、同軸に配置された同径の円管である。環状体20は、第1の管12および第2の管14と同軸に配置された円管である。環状体20の径は、第1の管12および第2の管14とほぼ同じである。
【0014】
第1の管12と第2の管14と環状体20とは、たとえば金属あるいは樹脂で形成されている。第1の管12と第2の管14と環状体20は、たとえば小型・軽量でコストが安い直径200mmの硬質塩ビパイプである。第1の管12と第2の管14と環状体20は、たとえば全長500mm程度とする。
【0015】
第1の管12の端部には、フランジ18が設けられている。環状体20の端部には、フランジ24が設けられている。第1の管12の端部と環状体20の端部とは、フランジ18,24が互いに引っかかるように対向し、ベアリング50を介して結合されている。ベアリング50は、水の流れの方向、すなわち軸方向の荷重、および半径方向の荷重に耐えられるものとする。第2の管14の端部と環状体20の他方の端部とも同様の構造で結合されている。したがって、環状体20は、第1の管12および第2の管14の端部に、回転可能に支持されている。第1の管12および第2の管14は、たとえば地面、水底などに固定されている。
【0016】
環状体20の内面には、羽根22が固定されている。羽根22は、第1の管12の内部を図1の矢印40の方向に流れる水によって環状体20に回転力を付与する。また、環状体20の上流側の第1の管12の内面には、内部を流れる水に旋回方向の運動量を与えるガイドベーン16が固定されている。羽根22およびガイドベーン16は、たとえば金属製である。羽根22およびガイドベーン16は、水の流れを有効に活用するため、翼型であることが好ましい。
【0017】
羽根22は、たとえば図示しないボルトで環状体20の内面に固定されている。ボルトは、たとえば1枚の羽根22に対して2以上設ける。ボルトは、たとえば環状体20の外面から内面に貫通する孔を通して羽根22にねじ込まれる。羽根22を、ボルトなどを用いて環状体20に着脱可能に設けておくことにより、メンテナンスが容易でメンテナンスコストが小さくなる。
【0018】
発電装置は、この中空羽根車と発電機30とベルト34とを有している。発電機34は、シャフト32の回転によって発電する。ベルト34は、発電機34のシャフト32あるいはそのシャフト32に取り付けられたボスに架け渡されている。ベルト34は、中空羽根車の環状体20の回転を発電機30に伝達する。ベルト34は、たとえば合成ゴム製である。あるいはベルト34を、金属で形成してもよい。
【0019】
中空羽根車は、たとえば流れを有する水中に沈められる。発電機30は、たとえば水上に配置される。
【0020】
このような発電装置では、図1の矢印40の方向に流れる水が羽根22にぶつかることによって環状体20に回転力が与えられる。この回転力によって環状体20は回転し、ベルト34を動かす。ベルト34を介して、環状体20の運動エネルギーは伝達されて、発電機30のシャフト32が回転する。これにより発電機30が発電して電気エネルギーに変換される。
【0021】
水流を用いて発電する発電装置の場合、水が流れる管の中央に発電機を配置する方法が考えられる。しかし、このように管の中央に発電機を配置すると、回転する羽根を支持するボスが円管軸上に設置されており、水流が通過する円管断面の有効断面積は小さくなってしまう。このため、水流に混入した木の葉や小枝などの異物が流れてくると、狭い流路を閉塞したり、羽根に異物が引っかかったりする。
【0022】
しかし、本実施の形態の発電装置は、環状体20の内周に羽根22を取付け、水が流れる第1の管12および第2の管14の端部に、羽根22とともに回転する環状体20を、ベアリング50によって支持している。環状体20の回転はベルト34により発電機30に伝えられる。発電機20のシャフト32およびそれに取り付けたボスなどを水流中以外の別の場所に移動することにより、円管の有効断面積が飛躍的に増大する。つまり、環状体20、第1の管12および第2の管14の中央に発電機などを配置する必要がないため、上流から流れる異物を下流側に円滑に素通りさせることができる。したがって、羽根22に異物が巻き込まれたり、異物によって流路が閉塞される可能性が低減される。また、エネルギー収支比が向上する。
【0023】
つまり、水流中に含まれる小枝、木葉、小石、小動物の死体などが水車の回転する羽根に巻き込まれて流路を閉塞し、運転を停止させる可能性が低減される。また、水車の閉塞を防止するため、スクリーンやネットなどを水車上流の流路に敷設し、上記の水流中の異物を除去する対策を取らなくても、あるいは、高い頻度で定期的にスクリーンやネットに捕捉された異物を取り除く作業行わなくても、効率的な発電装置の運転を維持できる。
【0024】
したがって、異物が多い水流中でも清水時と同様の運転を継続することができる。さらに水車上流にスクリーンやネットを設置しなくても、実質的に問題がない。落ち葉・ゴミ・土砂の除去作業等、日常の保守・メンテ作業が不要となるため、人件費・交換部品等の大幅削減が可能となる。すなわち,山間部の小規模河川での連続運転にも耐えうる、メンテナンスフリーのマイクロ水車であり、広域への普及が期待される。
【0025】
よって、本実施の形態によれば、流体による発電システムの屋外運用に伴うメンテナンスコストの増加を抑制することができる。
【0026】
小型・無閉塞水車である本実施の形態の中空羽根車および発電装置は、円管中の水流を駆動源とするため、河川を利用したマイクロ水力発電のみならず、上下水道、排水溝、農業用水路、工場内配管、ビル内配管・注水用配管等への設置が可能である。また、この中空羽根車を通過することにより水の圧力が低下するため、各種配管における減圧装置の代替品としても用いることができる。このような発電装置を多数、自立・分散型電源として配置しておくことにより、災害緊急時の電力確保と同時に、通常時の地域産業創生にも貢献できる。
【0027】
また、設計がシンプルであり、規格化大量生産を行うことにより、コストダウンを図ることができる。さらに、外径が小さいため、軽量・低価格な硬質塩ビ管を水路に使用できる。そのため、山間部など機械使用が困難な場所でも人的パワーのみで工事が可能となり、建設コストの大幅削減につながる。
【0028】
図5は、本実施の形態の一変形例における環状体および羽根の縦断面を示す断面図である。図6は、本実施の形態の一変形例における環状体の横断面図である。図6において、羽根22の図示は省略した。
【0029】
この変形例において、環状体20は、内環状体41および外環状体42とからなっている。内環状体41は、円筒状に形成されている。内環状体41の内面には、羽根22が固定されている。内環状体41と羽根22とは、たとえば3Dプリンターなどで一体成型されていてもよい。
【0030】
外環状体42は、内環状体41の外面に対向する内面を持つ円筒状に形成されている。内環状体41は、たとえば外環状体42に形成された貫通孔を通る4本のボルト43によって、外環状体42に固定されている。したがって、内環状体41と外環状体42とは、羽根22が水流から力を受けて生じる回転方向の力によって、一体となって回転する。
【0031】
中空羽根車が配置される水流環境や、所望の発電量を考慮し、中空羽根車の羽根22の大きさ、形状、環状体20の径は適宜変更してもよい。中空羽根車と発電機との組み合わせを、典型的ないくつかの水流環境に対して最適化してユニット化しておけば、コストダウンを図ることができる。
【0032】
また、水流環境に応じて様々な形状の中空羽根車を製造するには、製作コストを低減し、製作時間を短縮しておく方が好ましい。そこで、たとえば3Dプリンターを用いて、中空羽根車を製造すれば、安く、短時間で製造することができる。
【0033】
図7は、本実施の形態における中空率に対する水車出力の変化の例を示すグラフである。ここで、中空率とは、環状体20の内直径D1に対する羽根22の内接円の直径D2の比(D2/D1)である。図5は、D1が100mm、D2が0〜80mm、有効落差6m、流量0.01m/sでの試験結果である。
【0034】
図7に示すように、水車出力は中空率の増加に伴い単調に減少する。これは、羽根22の面積の減少に伴って中を流れる水のうち羽根22にあたる量が減少するため、環状体20を回転させる力が小さくなるためである。しかし、その低下は中空率が低い範囲では小さく、中空率が30%程度以下では実質的に同程度である。また、中空率が60%程度以下では、水車出力は最大値の50%以上はあるため、実用上問題ないと考えられる。
【0035】
ただし、中空率が小さくなると、異物が羽根22に衝突したり、狭くなった流路が閉塞される可能性があるため、設置場所に応じて適宜変更する。たとえば、異物がほとんどない清流では中空率を0%にしてもよい。また、異物が多い流に設置する場合には、水車出力があまり低下しない範囲で中空率を大きくするとよい。
【0036】
また、環状体20の内径が80mmで、羽根22の内接円の直径が24mmである中空羽根車と、回転軸にプロペラを取り付けた比較例の羽根車との比較実験を行った。この比較実験では、落ち葉などを含む異物が流れ落ちる用水路に、これらの2種類の水車を設置して、経過を観察した。その結果、比較例では、落ち葉で流路が閉塞する様子が観察され、短時間でその回転が乱れ、最終的には回転が停止した。一方、本実施の形態の羽根車では、異物は中空部を通過し、安定して回転が持続した。
【0037】
なお、この実施の形態は単なる例示であり、本発明はこれに限定されない。
【0038】
たとえば、羽根22は、巻き角度の合計が360度を超えるように形成してもよい。羽根22として、それぞれの巻き角度が90度以上のものを4枚設ける。ここで巻き角度とは、環状体20の中心軸の周りの流路を羽根22が塞ぐ角度である。羽根22を4枚設けた場合、巻き角度を90度以上とすると、羽根22を環状体20の軸方向に投影したときに隣り合う羽根22の間に隙間が生じない。このため、羽根22の内端が形成する円(内接円)よりも外側を流れる水流はすべて羽根22にぶつかることになるため、水の流れをより有効に活用することができる。
【0039】
ベルト34によって動力を効率よく伝達するため、環状体20および発電機30のシャフト32に歯車を設けてもよい。また、上述の実施の形態では、環状体20の回転を一つのベルト34のみを用いて発電機30のシャフト32に伝達しているが、間にギアを挿入するなどしてもよい。
【0040】
また、第1の管12、第2の管14、環状体20、ベルト34および発電機30を一体化(ユニット化)してもよい。この場合、第1の管12、第2の管14の環状体20に対して反対側の端部を、規格化され、市場に多く出回っている管と容易に結合するようにしておくとよい。
【0041】
上述の実施の形態では、環状体20の下流側に第2の管14を設けているが、環状体20を上流側の第1の管12だけで支持し、環状体20の下流側の端部は、単に開放してもよい。また、第1の管12、第2の管14および環状体20は、同軸からずれていて、あるいは径が異なっていても、環状体20が回転可能であり、環状体20の回転を発電機30に伝達できれば、軸の配置および径は適宜選択してもよい。
【0042】
さらに、発電機30は軸を持っていなくてもよい。環状体20の外面に磁石を配置し、環状体20を囲むようにコイルを配置しておけば、環状体20の回転により発電することができる。
【0043】
ここでは、中空羽根車を用いて発電することとしているが、発電機30をモータに代えることによって、外部の動力で中空羽根車20を回転させてポンプとして機能させることもできる。
【0044】
また、上述の実施の形態は、中空羽根車を水中に沈めることとしているが、ベアリング50の水密性を確保できれば、地上に設置してもよい。羽根22を介して環状体20を回転させる媒体が水であるとして説明したが、他の流体であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
12…第1の管、14…第2の管、16…ガイドベーン、18…フランジ、20…環状体、22…羽根、24…フランジ、30…発電機、32…シャフト、34…ベルト、41…内環状体、42…外環状体、43…ボルト、50…ベアリング


【要約】
屋外運用に伴うメンテナンスコストの増加を抑制するという課題をかいけつするため、発電装置に、中空羽根車とベルト34と発電機30とを備える。中空羽根車は、第1の管12と第2の管14と環状体20とを有している。第1の管12および第2の管14は、互いに端部が対向するように配置されている。環状体20は、第1の管12の端部および第2の管14の端部に回転可能に支持されている。環状体20は、矢印40の方向に流れる水によって回転する。環状体20の回転は、ベルト34を介して発電機30のシャフト32に伝達される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7