【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、課題解決型医療機器等開発事業「自動化による術中高速組織診断のための新型免疫組織染色装置の開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【文献】
中村竜太、他5名,電界非接触攪拌技術を用いた抗原抗体反応の迅速メカニズムの解明,精密工学会大会学術講演会講演論文集,日本,2013年,Vol.2013秋季(CD-ROM),Page.ROMBUNNO.J64
【文献】
加賀谷昌美,産学官連携イノベーション顕在化事業―医工連携による医療機器開発―,秋田県産業技術センター業務年報,2012年,Vol.2012,pp.69-70
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所定の抗体を用い、被験対象となる組織標本中の抗原を検出する免疫組織染色を構成する一連の反応が、電界付与に基づく撹拌現象によって迅速化され、かつ自動化される自動電界免疫組織染色装置であって、
前記組織標本が固定された基板が載置されるステージを有する試料載置ユニットと、
前記抗体を含んだ溶液が収容される収容部及び、前記収容部から前記溶液を前記基板上の前記組織標本へ向けて滴下する滴下部材を備える溶液供給ユニットと、
前記基板に滴下された溶液を撹拌するための相対する電極の一方である環状電極を備えた電界撹拌ユニットと、
前記電界撹拌ユニットの上部に設けられ、前記基板上の前記組織標本へ向けて滴下された前記溶液及び前記組織標本を洗浄する洗浄液を排出する排出管と、洗浄液を供給する供給管とを備え、前記組織標本へ滴下された前記溶液を排出した後に前記組織標本への前記洗浄液の供給及びその排出により前記組織標本を洗浄する洗浄ユニットと、
前記抗体を含んだ溶液を前記基板に滴下するときには前記試料載置ユニットを前記溶液供給ユニットへ搬送し、前記基板に滴下された溶液を撹拌及び前記組織標本を洗浄するときには前記試料載置ユニットを前記電界撹拌ユニットへ搬送するためのステージ搬送部と、
を有し、
前記洗浄ユニットは、前記組織標本へ滴下された前記溶液と前記組織標本へ供給された前記洗浄液とを排出するとき又は前記洗浄液を前記組織標本へ供給するときには、前記排出管又は前記供給管を前記環状電極の貫通穴にそれぞれ挿入して行うことを特徴とする自動電界免疫組織染色装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、外科手術や内視鏡手術時の限られた時間内に病変部の性質を特定する術中迅速病理診断には、その時間の制約から、5分以内に染色可能なHE染色(ヘマトキシリン・エオジン染色)が用いられているのが現状である。しかし、HE染色は、単に細胞や組織構造の全体像を把握しやすくするための染色法であるので、小さながん遺残やリンパ節微小転移が見逃されることも多いという問題がある。一方、がん遺残やリンパ節転移を可能な限り見逃さないようにするには、病原となるタンパク質(抗原)の有無により判断可能な抗原抗体反応を利用した免疫組織染色を術中迅速病理診断として採用することが有効である。しかし、従来の免疫組織染色の所要時間は2時間以上とされ、40分以内に診断を完了することが求められる術中迅速病理診断に適さないという問題があった。
【0005】
なお、約30分で遺伝子増幅するOSNA法を利用したリンパ節転移診断機器が市販されているが、同法による転移診断は形態学的な情報が欠如するため、信頼性に欠ける。自動免疫組織染色装置も市販されているが、これらは大量の免疫組織染色を一度に処理する目的で開発され、最短でも90分を要するために術中迅速病理診断に不適である。
【0006】
また、仮に、免疫組織染色による術中迅速病理診断が可能となれば、これをより広く普及させる必要がある。普及を進めていくには、診断に関わる試料を簡便に作成できるようにすること、処理工程を高精度化すること、市販のスライドガラス上ですべてを処理することができ、取扱いを容易化すること等が望まれる。すなわち、迅速化とともに、人手をかけないで免疫組織染色を進めるための自動化が求められることになる。したがって、一次抗体と抗原との抗原抗体反応や、二次抗体と一次抗体との抗原抗体反応等の反応工程をはじめ、反応工程の前後に行われる洗浄工程を含めて迅速化及び自動化していく必要がある。洗浄工程は従来、手作業でされるために人手を要していた。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑み提案され、上記特許文献1で提案したような高電圧交流電界を被験対象に与え、被験対象を非接触な撹拌技術で自動化を進めて構築した自動電界免疫組織染色装置及び、自動電界免疫組織染色方法を提供することを目的とする。特に、本発明は、免疫組織染色に費やす所要時間を著しく短縮し、反応時(撹拌時)に試料温度を上昇させず、かつ、抗体と抗原との抗原抗体反応や、その前後に必要とされる洗浄に係る工程の完全自動化を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、所定の抗体を用い、被験対象となる組織標本中の抗原を検出する免疫組織染色を構成する一連の反応が、電界付与に基づく撹拌現象によって迅速化され、かつ自動化される自動電界免疫組織染色装置であって、前記組織標本が固定された基板が載置されるステージを有する試料載置ユニットと、前記抗体を含んだ溶液が収容される収容部及び、前記収容部から前記溶液を前記基板上の前記組織標本へ向けて滴下する滴下部材を備える溶液供給ユニットと、板状又は環状の一方の電極を備えた電界撹拌ユニットと、前記基板上の前記組織標本へ向けて滴下された前記溶液を排出する排出管を備えた洗浄ユニットとを有することを特徴とする。
【0009】
前記自動電界免疫組織染色装置において、前記試料載置ユニットが、前後又は左右に搬送可能であることが好ましい。
前記試料載置ユニットに、他方の電極が配設されていることが好ましい。
前記他方の電極が、前後又は左右に搬送可能であることが好ましい。
前記他方の電極が、前記ステージの内部に配設されていることが好ましい。
前記収容部が、カセット体に備えられていることが好ましい。
前記一方の電極が、貫通穴を有していることが好ましい。
前記排出管が、前記一方の電極の前記貫通穴に出し入れ可能であることが好ましい。
前記試料載置ユニットが搬送され、前記溶液供給ユニットの前記収容部の直下に前記組織標本が固定された基板が位置したときに、前記組織標本に対して前記溶液が滴下されることが好ましい。
前記試料載置ユニットが搬送され、前記電界撹拌ユニットの前記一方の電極の直下に前記組織標本が固定された基板が、前記溶液が滴下された上で位置したときに、前記組織標本に滴下された前記溶液に対して電界が与えられ、前記溶液が撹拌されて前記反応が進められることが好ましい。
前記反応が進められた前記組織標本に対し、前記洗浄ユニットの前記排出管により前記溶液が排出されることが好ましい。
前記洗浄ユニットが、前記基板上の前記組織標本へ向けて前記組織標本を洗浄する洗浄液を供給する供給管を備え、前記反応が進められた前記組織標本に対し、前記供給管により前記洗浄液が供給されることが好ましい。
前記供給管が、前記一方の電極の前記貫通穴に出し入れ可能であることが好ましい。
前記基板に、区分される複数の領域が形成され、この領域毎に前記組織標本が載置可能であり、前記一方の電極及び前記他方の電極が、前記領域に対応させて複数設けられていることが好ましい。
前記基板に、前記抗原と前記抗体との抗原抗体反応が進行したかどうかの指標となる陽性コントロール又は陰性コントロールが固定されていることが好ましい。
【0010】
このほか、前記一方の電極に、前記貫通穴を中心点として対称に突部が形成されていることが好ましい。なお、前記自動電界免疫組織染色装置は、前記試料載置ユニットが搬送され、前記電界撹拌ユニットの前記一方の電極の直下に前記組織標本が固定された基板が位置したときに、前記組織標本に対して電界が与えられて前記抗原が賦活化される作用を備えることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、前記自動電界免疫組織染色装置を用いて行われる自動電界免疫組織染色方法であって、前記組織標本へ向けて、前記抗原と反応する一次抗体を含む第一の溶液を滴下し、この第一の溶液に対して電界を与えて前記第一の溶液を撹拌し、前記抗原と前記一次抗体との抗原抗体反応を進める工程を含むことを特徴とする。
特に、前記自動電界免疫組織染色方法において、前記抗原と前記一次抗体との抗原抗体反応の後に、前記第一の溶液を吸引して排出する工程を含むことが好ましい。
前記第一の溶液を吸引して排出した後に、前記組織標本へ向けて、前記一次抗体と反応する二次抗体を含む第二の溶液を滴下し、この第二の溶液に対して電界を与えて前記第二の溶液を撹拌し、前記一次抗体と前記二次抗体との抗原抗体反応を進める工程を含むことが好ましい。
前記一次抗体と前記二次抗体との抗原抗体反応の後に、前記第二の溶液を吸引して排出する工程を含むことが好ましい。
前記抗原と前記一次抗体との抗原抗体反応を進めることから前記第二の溶液を吸引して排出することまでを自動化することが好ましい。
【0012】
前記自動電界免疫組織染色方法は、前記洗浄ユニットが、前記基板上の前記組織標本へ向けて前記組織標本を洗浄する洗浄液を供給する供給管を備え、前記第一の溶液を吸引して排出した後であって、前記一次抗体と前記二次抗体との抗原抗体反応を進める前に、前記組織標本へ向けて前記供給管により前記洗浄液を供給し、この洗浄液に対して電界を与えて前記洗浄液を撹拌し、前記組織標本を洗浄し、前記第二の溶液を吸引して排出した後に、前記組織標本へ向けて前記供給管により前記洗浄液を供給し、この洗浄液に対して電界を与えて前記洗浄液を撹拌し、前記組織標本を洗浄することが好ましい。
また、前記一方の電極が、貫通穴を有し、前記供給管が、前記一方の電極の前記貫通穴に出し入れ可能であることが好ましい。
前記基板に、区分される複数の領域が形成され、この領域毎に前記組織標本が載置可能であり、前記一方の電極及び前記他方の電極が、前記領域に対応させて複数設けられていることが好ましい。
前記基板に、前記抗原と前記抗体との抗原抗体反応が進行したかどうかの指標となる陽性コントロール又は陰性コントロールが固定されていることが好ましい。
なお、前記自動電界免疫組織染色方法は、前記一方の電極及び前記他方の電極の間に、前記組織標本が固定された基板を載置し、前記組織標本に対して電界を与え、前記抗原を賦活化する工程を備えるが好ましい。この場合、本発明において、抗原を賦活化することから第二の溶液を吸引して排出することまでを自動化することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、組織標本が固定された基板が載置される試料載置ユニット、組織標本へ向けて抗体を含んだ溶液を滴下する溶液供給ユニット、一方の電極を有して、組織標本に滴下された溶液へ向けて電界を与える電界撹拌ユニットを有している。これらのユニットが連係して動作することで、抗体等の溶液を滴下し、抗原抗体反応を進めて免疫組織染色を構成する一連の反応を自動化することができる。さらに、組織標本へ向けて滴下された抗体等の溶液を排出する排出管を備えた洗浄ユニットを有し、抗体等の溶液の排出も自動的に進めることができる。本発明では、これらの構成により、免疫組織染色を構成する一連の反応の迅速化及び、自動化に成功している。したがって、時間の制約に厳しさのある術中迅速病理診断に適用可能な自動電界免疫組織染色装置及び、自動電界免疫組織染色方法を提供することができる。
【0014】
特に、電界撹拌ユニットに、組織標本を洗浄する洗浄液を供給する供給管を備えさせ、組織標本に対して供給管により洗浄液を供給する構成とすれば、抗原抗体反応の前後に必要な洗浄プロセスまでを迅速化し、自動化することができる。また、確実な免疫組織染色を進めることができる。そうすると、時間の制約に厳しさのある術中迅速病理診断に確実に適用することのできる自動電界免疫組織染色装置及び、自動電界免疫組織染色方法として提供することができる。
【0015】
さらに、基板に区分される複数の領域を形成し、この領域毎に組織標本を載置可能とし、併せて一方の電極及び他方の電極が、上記領域に対応するように複数設けられている構成にとすれば、複数の組織標本を同時に免疫組織染色することができる。基板に、抗原と抗体との抗原抗体反応が進行したかどうかの指標となる陽性コントロール又は陰性コントロールが固定されている構成とすれば、免疫組織染色のロット毎の妥当性、確実性を保証することが可能になる。一方の電極及び他方の電極の間に、組織標本が固定された基板を載置し、組織標本に対して電界を与えて抗原を賦活化する構成によって、免疫組織染色で染色される抗原の割合が向上する。したがって、本発明に係る自動電界免疫組織染色装置の品質及び、自動電界免疫組織染色方法の質を向上させることができる。
【0016】
なお、一方の電極に、貫通孔を中心点として対称に突部が形成されている構成とすることで電界分布のバランスが崩れるので、組織標本上に滴下された溶液の局所へ向けて電界を集中させて与えることができる。これにより、滴下する溶液の液量を減らして液滴の高さを減じ、抗体と組織標本中の抗原との接触機会を増やすことができる。さらに、一の電極と他の電極との電極間距離を短くすること、電界強度を高めること等によっても抗体と組織標本中の抗原との接触機会を増やすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る自動電界免疫組織染色装置並びに、当該装置を用いて行う自動電界免疫組織染色方法についての一実施形態を、図面を参照しつつ詳述していく。この実施形態は、本発明の構成を具現化した例示に過ぎない。本発明は、特許請求の範囲に記載した事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことができる。
【0019】
なお、本発明に係る自動電界免疫組織染色装置により、所定の抗体を用いて被験対象となる組織標本中の抗原を検出する免疫組織染色に関する一連の反応が、電界付与に基づく撹拌現象によって迅速化され、かつ、この一連の反応のほとんどが自動化される。したがって、本発明は、免疫組織染色を時間的な制約がある術中迅速病理診断に適用可能とする。また、抗体試薬を希釈、すなわち節約して免疫組織染色をすることが本発明に係る自動電界免疫組織染色装置を使えば可能となるので、免疫組織染色にかかる費用を抑えることができる。本発明は、凍結切片を用いた術中迅速診断、パラフィン切片を用いた免疫組織染色診断に適用可能であるほか、核酸のハイブリダイゼーション、その他の抗原抗体反応等の迅速化、自動化に貢献することもできる。
【0020】
本発明に係る自動電界免疫組織染色装置1は、
図1に示すように、その筐体に、試料載置ユニット2、溶液供給ユニット3、電界撹拌ユニット4及び洗浄ユニット5を有している。また、その筐体には、
ステージ21を各ユニット
(溶液供給ユニット3、電界撹拌ユニット4及び洗浄ユニット5)
に搬送するステージ搬送部23、カセット搬送部35、上部電極搬送部42、洗浄管搬送部53が備えられている。各搬送部の動力源として、モーター等の公知の動力源を採用することができる。
【0021】
自動電界免疫組織染色装置1は、試料載置ユニット2、溶液供給ユニット3、電界撹拌ユニット4及び洗浄ユニット5が相互に連係して動作することにより、各種の作用を及ぼすことができる。具体的には、試料載置ユニット2と電界撹拌ユニット4とが動作し、組織標本中の抗原が賦活化される。試料載置ユニット2と溶液供給ユニット3とが動作し、組織標本に対して所定の抗体を含む溶液等が供給される。試料載置ユニット2と電界撹拌ユニット4とが動作し、所定の抗体を含む溶液が供給された組織標本に対し、抗原抗体反応が進められる。試料載置ユニット2、電界撹拌ユニット4及び洗浄ユニット5が動作し、所定の抗体を含む溶液等を排出したり、洗浄液を供給したりすることにより、組織標本が洗浄される。なお、本発明において抗原が賦活化されるとは、抗原抗体反応が進められる前の組織標本に対して電界が与えられることで、組織標本中の抗原の抗体に対する反応性が高まることをいう。
【0022】
図1及び
図2に示すように、試料載置ユニット2は、組織標本Tが固定された基板としてのガラス基板Gが載置される載置部21Aを有し、この載置部21Aを前後又は左右又は上下に搬送可能なステージ21を備えている。このステージ21の内部に、載置部21Aに近接させて、他方の電極である下部電極22が配設されている。また、試料載置ユニット2は、ステージ21が前後又は左右に搬送されるようにステージ搬送部23に取り付けられて構成されている。組織標本Tが固定される基板として、ガラス製の基板ほか、プラスチック製の基板を採用することができる。
【0023】
ステージ21
を備える試料載置ユニット2は、ステージ搬送部23により、溶液供給ユニット3、電界撹拌ユニット4及び洗浄ユニット5に向けてそれぞれ
に搬送される。ステージ21は中央部がへこんで形成され、このへこんだ領域が載置部21Aとなる。ガラス基板Gは、ステージ21の載置21Aがへこんでいるので、載置部21Aに確実に収容される。また
、下部電極22には、電導性の高い銅、アルミ合金、ステンレス、透明電極である酸化インジウムスズ(ITO)等をはじめとする公知の電極材料を採用することができる。下部電極22の厚みは4〜10mmであることが、安定的な電界形成の観点から望ましい。その形状は、後述する一方の電極としての上部電極との間で電界を形成することができれば、板状、円盤状、棒状等、各種の形状を採用することができる。
【0024】
ガラス基板Gには、固定されている組織標本Tを囲むように、耐アセトン性を有し、電界分布に影響を与えない樹脂からその枠が形成されているリング状で撥水性のはっ水リング24が配設されている(
図12も参照のこと)。はっ水リング24の枠により、溶液供給ユニット3から滴下されてくる溶液が組織標本T上で、液滴としてドーム形状を形成することになる。はっ水リング24の材質は、例えば、ポリビニル系、ポリ塩化ビニル系、シリコーン系又はフッ素系から1つ選ばれる。なお、
図1には2つのリングが形成された枠からなる2穴タイプのはっ水リング24Aが現れている。
【0025】
ここで、はっ水リング24に滴下された溶液は、その樹脂部分である枠によって組織標本T上で45度以下の接触角となるドーム形状を形成する。これにより、その液滴底面の径寸法のばらつきが抑制されるととともに、滴下される液量に応じて最大高さ(頂点位置)が一定となる。このため、ドーム形状を形成している溶液の頂点位置と、電極(下部電極22又は上部電極41)との間の距離のばらつきが抑制され、その結果、電界を与えて溶液を撹拌する際の、撹拌の度合いのばらつきも抑制される。すなわち、再現性に優れた高い品位の撹拌を実現することができる。
【0026】
そして、自動電界免疫組織染色装置1では、溶液の頂点位置と、電極との間の距離をロット毎に調整する調整機構、与える電界強度をロット毎に調整する調整機構及び、滴下された溶液の高さをセンシングする機構を不要とし、その構成を簡略化することができる。
【0027】
本発明では、上述したはっ水リング24に限定されないで、固定されている組織標本Tを囲むように何らかの撥水性の枠を、ガラス基板Gに載置してもよい。また、撥水機能を備えたインクを使ってガラス基板Gに円や矩形を描画することも可能である。ガラス基板Gに固定されている組織標本Tを囲むように撥水処理剤を塗布し、ガラス基板G上に撥水性を有する部位を形成してもよい。
【0028】
ガラス基板Gは、例えば、幅26mm、長さ76mm、厚み0.8mmの大きさのスライドガラスを用いることができる。はっ水リング24は、内径が10mm〜20mmであり、枠を形成している樹脂部分の幅は、45度以下の接触角のドーム形状を溶液に形成させるために、0.5mm〜3mm、好ましくは2mm〜3mmとする。はっ水リング24の厚みは0.15mm〜0.3mmであることが好ましい。また、例えば、長方形の撥水の枠を採用することが可能であり、その滴下する溶液の液量は、3000μL以下の範囲で許容される。ただし、滴下する溶液の液量は撹拌の均一性の面から、8〜1000μLであることが好ましい。
【0029】
図1及び
図3に示すように、溶液供給ユニット3は、組織標本T中の抗原と反応する抗体として一次抗体を含む溶液S等が収容される収容部としてのシリンダ31を有するカセット体32を備えている。また、シリンダ31に出し入れ可能にして設けられ、シリンダ31から一次抗体を含む溶液S等をガラス基板G上の組織標本Tへ向けて滴下する滴下部材としてのプランジャロッド33を備えている。溶液供給ユニット3は、一次抗体を含む溶液S等の滴下時にプランジャロッド33を押圧するピストン34を備えている。カセット体32は、前後又は左右又は上下に搬送するカセット搬送部35に取り付けられている。
【0030】
シリンダ31は、一次抗体を含む溶液S等が収容されやすくするために広口とされたフランジ部31Aと、溶液S等が収容される本体部31Bと、ガラス基板G上の組織標本Tへ向けて滴下するための誘導路となる筒先部31Cとからなる筒体である。カセット体32には、上下方向に貫通させた貫通孔が形成されている。この貫通孔は、シリンダ31に対応した形状で、シリンダ31を収容するためのシリンダ収容部32Aとなる。プランジャロッド33は、ピストン34により押圧されることで溶液S等をガラス基板G上に滴下する。
【0031】
本実施形態において、シリンダ31毎に、例えば、組織標本T中の抗原と反応する一次抗体を含む溶液Sのほか、一次抗体と反応する二次抗体を含む二次抗体溶液、免疫組織染色に必要な内因性ペルオキシダーゼ除去のためのブロッキング溶液、その他の試薬が収容される。また、溶液供給ユニット3では、カセット搬送部35によりカセット体32が搬送される際に、どのシリンダ31に備えられたプランジャロッド33がピストン34により押圧されるのかが決定される。すなわち、カセット搬送部35によりカセット体32が搬送される際に、どの種類の溶液がガラス基板G上の組織標本Tに向けて滴下されるのかが決定される。
【0032】
図1及び
図4に示すように、電界撹拌ユニット4は、本実施形態において貫通穴41A(
図12も参照のこと)を有する環状で、試料載置ユニット2の下部電極22と対をなす一方の電極としての上部電極41を備えている。また、電界撹拌ユニット4は、上部電極搬送部42に取り付けられて、前後又は左右又は上下に搬送される。上部電極41についても下部電極22と同様、導電性の高い銅、アルミ合金、ステンレス、透明電極である酸化インジウムスズ(ITO)等をはじめとする公知の電極材料を採用することができる。その厚みは4〜10mmであることが、安定的な電界形成の観点から好ましい。その形状は貫通孔が形成されれば、板状であってもよい。
【0033】
図1及び
図5に示すように、洗浄ユニット5は、ガラス基板G上の組織標本Tへ向けて滴下された一次抗体を含む溶液S等を排出する排出管51及び、ガラス基板G上の組織標本Tへ向けて組織標本Tを洗浄する洗浄液を供給する供給管52を備えている。排出管51と供給管52とは、洗浄管搬送部53に取り付けられている。この洗浄管搬送部53によって排出管51と供給管52とは前後又は左右又は上下に搬送され、上部電極41の貫通穴41Aに出し入れ可能である。また、図示が省略されているが、排出管51から外部へ溶液S等を排出する排出管接続チューブが排出管51に接続され、外部から供給管52へ洗浄液を供給する供給管接続チューブが供給管52に接続される。
【0034】
なお、洗浄液として、免疫組織染色に用いられるものとしてPBS(リン酸緩衝生理食塩水)を例示することができる。本発明では、PBSに限定されないで、免疫組織染色を有効に進めるこが可能な各種の洗浄液を採用することができる。NaCl、KCl、NaHPO
4,KH
2PO
4が配合されたPBSでもよい。カルシウムやマグネシウムを含む組成の洗浄液を採用し得る。また、界面活性剤を含んだ洗浄液であってもよい。
【0035】
本発明の自動電界免疫組織染色装置1では、
図6に示すように、試料載置ユニット2が搬送され、溶液供給ユニット3の所定のシリンダ31の直下に組織標本Tが固定されたガラス基板Gが位置したときに、組織標本Tに対しシリンダ31に収容されている溶液が滴下される。例えば、組織標本Tに対し、一次抗体を含む溶液Sが滴下される。
【0036】
まず、どの溶液(一次抗体を含む溶液S、一次抗体と反応する二次抗体を含む二次抗体溶液、内因性ペルオキシダーゼ除去のためのブロッキング溶液、その他の試薬)がガラス基板G上の組織標本Tに向けて滴下されるのかが決定される。その上で、決定された溶液(
図6において、一次抗体を含む溶液S)が収容されているシリンダ31に備わるプランジャロッド33の直上にピストン34が位置するように、カセット搬送部35によりカセット体32が搬送される。同時に、組織標本Tが固定されているガラス基板Gが載置されたステージ21が、決定された溶液である一次抗体を含む溶液Sが収容されているシリンダ31の直下の位置までステージ搬送部23により搬送される。
【0037】
次に、一次抗体を含む溶液Sを収容しているシリンダ31に備えられたプランジャロッド33がピストン34により押圧される。これにより、シリンダ31の筒先部31Cを通じ、一次抗体を含む溶液Sが、組織標本Tが固定されているガラス基板G上に滴下される。ピストン34により押圧され、滴下される一次抗体を含む溶液Sの1回の滴下液量は、5〜600μLである。
【0038】
なお、組織標本Tが固定されているガラス基板G上に滴下されるのが、一次抗体を含む溶液Sのほかに、上述した二次抗体溶液、ブロッキング溶液又はその他の試薬のいずれかが滴下される場合がある。この場合にも、上述した試料載置ユニット2と溶液供給ユニット3とが連係した同様な動作により、その選択された溶液が、組織標本Tが固定されているガラス基板G上に滴下される。二次抗体溶液の1回の滴下液量は5〜600μLとすればよい。内因性ペルオキシダーゼ除去のためのブロッキング溶液の1回の滴下液量は5〜1000μLが好ましい。
【0039】
本発明では、
図7に示すように、試料載置ユニット2と電界撹拌ユニット4とが連係して動作することにより、一次抗体を含む溶液S等が供給された組織標本Tに対して抗原抗体反応が進められる。また、組織標本T中の抗原が賦活化される。
【0040】
まず、組織標本Tへ向けて溶液(
図7において、一次抗体を含む溶液S)が滴下されたガラス基板Gを載置するステージ21がステージ搬送部23により、電界撹拌ユニット4の上部電極41の直下の位置まで搬送される。その上で、組織標本Tに対し、上部電極41及び試料載置ユニット2の下部電極22の間に電界が与えられ、一次抗体を含む溶液Sの撹拌によって、一次抗体を含む溶液S中の一次抗体と組織標本T中の抗原との抗原抗体反応が進められる。
【0041】
具体的には、湿度60±20%に制御された環境下で、印加電界強度の主電圧としてプラス側に0.4〜1.5kV/mm、これにオフセット電界強度0.15〜0.7kV/mmが加えられて生成されるプラス側に偏った繰り返しの方形波の交流電界が与えられる。特に、与えられる交流電界として0.1〜300Hzの範囲から一次抗体を含む溶液Sが活発に撹拌される周波数が選択される。このような交流電界が上部電極41及び下部電極22の間に形成され、一次抗体を含む溶液Sが撹拌される。なお、上部電極41、下部電極22のどちらをプラス側としても良い。印加電界強度が、プラス側に1.5kV/mmより強いと放電する可能性があり、0.4kV/mm未満より低いと撹拌が生じない可能性がある。オフセット電圧が、1kV/mmより強いと放電する可能性があり、0.2kV/mmより低いと生じない可能性がある。本発明では、一次抗体と組織標本T中の抗原との抗原抗体反応に必要な時間が従来に比べて大幅に短縮され、5〜7分で済む。
【0042】
また、上部電極41及び下部電極22の間で電界が形成される際には、ガラス基板G上に滴下された溶液が、一次抗体を含む溶液Sのほかに、二次抗体溶液、ブロッキング溶液又はその他の試薬である場合がある。この場合にも、上述した試料載置ユニット2と電界撹拌ユニット4とが連係した動作によって溶液が撹拌される。したがって、一次抗体と二次抗体との抗原抗体反応や非特異的反応を抑制するための反応等、免疫組織染色を構成する一連の反応を、電界付与に基づく撹拌によって迅速化することができる。
【0043】
ここで、自動電界免疫組織染色装置1における電界付与に基づく撹拌により、抗原抗体反応等が迅速化する仕組みを、
図8を参照しつつ説明する。
【0044】
図8に示すように、上部電極41及び下部電極22の間に形成されている交流電界の波形が突状となる瞬間において、撹拌される溶液(例えば、一次抗体を含む溶液S)は、上部電極41に向けて吸引される(
図8中のI参照)。また、交流電界の波形が凹状の(へこんだ)波形となる瞬間において、撹拌される溶液は、下部電極22に向けて吸引されてへこんだ形状となる(
図8中のII参照)。さらに、撹拌される溶液は、その波形が突状に復帰する瞬間においてへこんだ形状が回復し(
図8中のIII参照)、続いて、波形が突状となるのに伴って再び、上部電極41に向けて吸引される(
図8中のIV参照)。このような撹拌により、溶液内でブラウン運動している粒子(一次抗体等)は、その運動速度が加速され、抗原と接触する機会が増えることとなる。その結果、抗原抗体反応が迅速化するのである。
【0045】
撹拌される溶液は、
図9に示すように、選択される周波数が0.1〜300Hzの範囲と低周波であるので、温度上昇が起こりにくい。
図9では、液量を150μLとし、上部電極41及び下部電極22の間の電極間距離を5.4mmとし、印加電圧を3kVとし、周波数をそれぞれ21Hz、91Hzとしたときの溶液の温度上昇を調べた結果を示している。したがって、自動電界免疫組織染色装置1を室温で使用する限り、タンパク質や組織の変性による非特異反応は生じ難い。また、
図10において、自動電界免疫組織染色装置1を使って溶液に所定の印加強度で電界を与えることにより、撹拌が進行し分散性が向上していることを、撹拌によりゼータ電位がマイナス方向へシフトすることを利用して示した。なお、
図10中の△(
図10において黒く塗りつぶされた三角形)で現される点は、公知の卓上ボルテックスミキサーにより任意の溶液を撹拌したときに示されたゼータ電位の値である。
【0046】
本発明では、図示を省略するものの、試料載置ユニット2と電界撹拌ユニット4とが連係して動作することで、電界撹拌ユニット4の上部電極41の直下に組織標本Tが固定されたガラス基板Gが位置したときに、組織標本Tに対して電界が与えられ、組織標本T中の抗原が賦活化される。なお、抗原の賦活化は、ガラス基板Gに固定されている組織標本Tに対し、一次抗体を含む溶液S等を供給する前の段階で行われる。
図11に示すように、抗原と一次抗体との抗原抗体反応前に、組織標本Tに対して電界を与えることで、電界を与えない場合に比べ免疫組織染色で染色される割合が向上し、抗原の反応性が高まる。
図11において、電界を30秒〜3分間与えて抗原を賦活化したサンプルは電界を与えないサンプルに比べ、免疫組織染色で染色される割合が10〜30%程度向上している。
【0047】
自動電界免疫組織染色装置1で抗原が賦活化されるには、まず、組織標本Tが固定されているガラス基板Gを載置するステージ21がステージ搬送部23により、電界撹拌ユニット4の上部電極41の直下の位置まで搬送される。その上で、組織標本Tに対し、上部電極41及び試料載置ユニット2の下部電極22の間に電界が与えられ、組織標本T中の抗原が賦活化される。
【0048】
具体的には、印加電界強度の主電圧としてプラス側に0.4〜2kV/mm、これにオフセット電界強度0.25〜1kV/mmが加えられて生成されるプラス側に偏った繰り返しの方形波の交流電界が与えられる。特に、与えられる交流電界として0.1〜20Hzの範囲から抗原が活発に応答する適切な周波数が選択される。このような交流電界が、上部電極41及び下部電極22の間に形成される。なお、抗原を賦活化させる時間は30秒〜3分とすることが好ましい。
【0049】
自動電界免疫組織染色装置1内では、抗原が賦活化されるとき、湿度60±20%の環境下に制御されている。また、上部電極41、下部電極22のどちらをプラス側としてもよい。
【0050】
本発明では、
図12に示すように、試料載置ユニット2と電界撹拌ユニット4と洗浄ユニット5とが連係して動作し、ガラス基板G上の溶液(
図12において、一次抗体を含む溶液S)が排出されたり、ガラス基板G上へ洗浄液が供給されたりすることで、組織標本Tが洗浄される。なお、この洗浄の間、組織標本Tが固定されているガラス基板Gが載置されたステージ21は、上部電極41の直下の位置に維持される。
【0051】
まず、抗原と一次抗体との抗原抗体反応が進んだ組織標本Tに対し、排出管51の管先が上部電極41の貫通穴41Aに出し入れされながら、ガラス基板G上の組織標本Tへ向けて滴下されている一次抗体を含む溶液Sが吸引され、排出される。これにより、組織標本T中の抗原と未反応の一次抗体がガラス基板G上から除去される。
【0052】
また、排出管51によって一次抗体を含む溶液Sが排出された組織標本Tに対し、供給管52の管先が上部電極41の貫通穴41Aに出し入れされながら、ガラス基板G上の組織標本Tへ向けて洗浄液が供給される。特に、供給管52を通じてガラス基板G上の組織標本Tへ向けて洗浄液が供給された後に、ガラス基板G上の洗浄液に対して電界が与えられ、洗浄液の撹拌によって組織標本Tが洗浄される。
【0053】
具体的には、印加電界強度の主電圧としてプラス側に0.4〜1.5kV/mm、これにオフセット電界強度0.15〜0.7kV/mmが加えられて生成されるプラス側に偏った繰り返しの方形波の交流電界が与えられる。特に、与えられる交流電界として00.1〜300HzHzの範囲から洗浄液が活発に撹拌する適切な周波数が選択される。このような交流電界が、上部電極41及び下部電極22の間に形成されて洗浄液が撹拌されることとなる。印加電界強度が、プラス側に1.5kV/mmより強いと放電する可能性があり、0.4kV/mm未満より低いと撹拌が生じない可能性がある。また、オフセット電圧は、1kV/mmより強いと放電する可能性があり、0.2kV/mmより低いと生じない可能性がある。供給する洗浄液の液量は1回の洗浄あたり、5〜1000μLが好ましい。洗浄液に交流電界が与えるときにも、上部電極41、下部電極22のどちらをプラス側としてもよい。
【0054】
組織標本Tを洗浄した後の洗浄液は、排出管51によって吸引され、排出されて、組織標本T中の抗原と未反応の一次抗体がガラス基板G上から除去される。これにより、従来の手作業による洗浄に比べて時間が短縮されるとともに、安定した洗浄によって染色のばらつきを抑制することができる。
【0055】
なお、ガラス基板G上に滴下される溶液が、一次抗体を含む溶液Sのほかに、二次抗体溶液、ブロッキング溶液又はその他の試薬である場合がある。この場合にも、上述した試料載置ユニット2と洗浄ユニット5が連係する同様な動作により、これらの溶液を除去するとともに洗浄液を供給し、ガラス基板G上の組織標本Tに対して適切な洗浄することができる。
【0056】
また、排出管51を使った溶液の排出、供給管52を使った洗浄液の供給は公知のポンプ等の装置を駆動させることにより達成することができる。このような組織標本Tに対する洗浄は、複数回繰り返すことができる。排出管51を使った溶液の排出、供給管52を使った洗浄液の供給を複数回、繰り返すことで染色のばらつきを確実に抑制することができる。排出管51と供給管52の本数及び配置は、特に限定するものではないが、上述したように1本ずつ設けるほか、供給管52を中央に設け、その周囲に排出管51を1本又は複数本設ける等の構成を例示することができる。
【0057】
本発明により、抗原の賦活化から、抗原と一次抗体との抗原抗体反応、PBS洗浄、内因性ペルオキシダーゼ除去、PBS洗浄、一次抗体と二次抗体との抗原抗体反応、PBS洗浄までを自動化することができる。
【0058】
ここで、本発明に係る自動電界免疫組織染色装置を構成するにあたり、電界撹拌ユニットの一方の電極について、
図13(a)に示すように、貫通穴を中心点として対称に突部を二箇所形成し、電界を局所的に集中させるようにした電界集中型上部電極410を採用してもよい。
図13(b)に示すように、突部形状によって、上部電極及び下部電極の間に形成される電界の分布のバランスを崩すことで、形成した突部の数(二箇所)だけ溶液表面が吸引されることになるので、より大きな撹拌効果が得られる。さらに、撹拌時にははっ水リング24の樹脂部分が防波堤のように機能することで溶液を内側へ跳ね返すため、溶液に乱流が生じ、撹拌がより活発化することになる。
【0059】
また、形成した突部の数(二箇所)だけ溶液表面が吸引されるため、吸引される溶液の高さが低くなり、溶液中の粒子(一次抗体等)と組織標本との接触頻度を増やすことができる。また、吸引される溶液の高さが低くなることにより、より電極間距離を狭くすることができ、電界強度を高めることができ、やはり撹拌効果を大きくすることができる。撹拌効果が大きいことにより、抗原抗体反応に要する時間を短くすることもできる。
【0060】
この突部は、貫通穴を中心点として対称に2か所以上6か所以下形成されることが好ましい。貫通穴は内径が10mm未満であり、電界集中型上部電極の外径が22mm〜30mmであることが好ましい。その他、電界集中型上部電極の厚みは突部と突部との間の凹み(へこみ)の深さをαmmとしたときに、3mm+αmmであることが好ましい。また、突部と突部との間の幅は、突部と突部との間の凹み(へこみ)の深さをαmmとしたときに、1.5αmmであることが好ましい。
【0061】
電界集中型上部電極410では、より大きな撹拌効果が得られるため、抗原抗体反応における撹拌、洗浄時の撹拌において有利である。ただし、抗原を賦活化する際には、上述した上部電極41を使って電界を与えるのが好ましい。
【0062】
また、本発明に係る自動電界免疫組織染色装置を構成するにあたり、基板に区分される複数の領域を形成し、この領域毎に組織標本を載置可能とすることで、複数の組織標本を一度に免疫組織染色することができる。具体的には、基板に設けるはっ水リングに関し、
図14に示すように、滴下領域が2箇所、区分されて形成されるように、内径20mmのリングが2つ形成された枠を有する2穴タイプのはっ水リング24Aを採用すればよい。これに対応し、自動電界免疫組織染色装置1では、
図1に示すように、はっ水リング24Aより形成された複数の領域に基づいて、それぞれ上部電極41及び下部電極22が2つずつ設けられている。さらに、供給管52及び排出管51も2つずつ設けられている。
【0063】
また、
図14に示すように、ガラス基板Gに設けたはっ水リング24Aの内側に、溶液(例えば、一次抗体を含む溶液S)が撹拌されたか否かが視認可能な陽性コントロールPC又は陰性コントロールNCを固定することもできる。陽性コントロールPCは撹拌されると発色し、陰性コントロールNCは撹拌されると非発色となる。したがって、陽性コントロールPCが発色し、又は、陰性コントロールNCが非発色となることで、免疫組織染色反応が行われたか否かの指標にすることができる。
【0064】
例えば、
図14に示すように、ガラス基板Gに設けた2つのリングを有するはっ水リング24Aの一方のリング内側に、陽性コントロールPC又は陰性コントロールNCを固定した上で、他方のリング内側に組織標本Tを固定する。このような形態のガラス基板を用い、本発明に係る自動電界免疫組織染色装置を使って免疫組織染色を構成する一連の反応を進める。そうすると、陽性コントロールPC又は陰性コントロールNCを指標に一連の反応が適切に進んだか否かを判断することができ、染色の失敗を未然に防いで免疫組織染色の品位を向上することができる。
【0065】
はっ水リング24Aにはその樹脂部分である枠上に、ガラス基板Gから剥がし易くするタグ24A1を1〜2箇所、設けることが好ましい。また、はっ水リングに関し、内径を10mm程度とすれば3つのリングの枠を形成することもできる(図示省略)。
【0066】
このほか、本発明に係る自動電界免疫組織染色装置に、加温機構を具備させるようにしてもよい。下部電極を例えばペルチェ素子などのヒーターにて加温する。下部電極を35〜38℃に加温することで、抗原抗体反応の反応性が向上するからである。
【実施例】
【0067】
本発明に係る自動電界免疫組織染色装置を使った自動電界免疫組織染色方法に沿った基本プロトコールの例を下記[表1]に示す。また、下記[表2]に、比較例として免疫組織染色に係り、各社から市販されているキットを利用した従来のプロトコール例を示す。
【0068】
【表1】
【表2】
【0069】
すなわち、[表1]に示すように、本発明に係る自動電界免疫組織染色方法では、組織標本をアセトンでガラス基板に固定し、PBSによる洗浄を行った上で、自動電界免疫組織染色装置の試料載置ユニットにおける載置部に組織標本が固定されたガラス基板を載置する。この状態で、自動電界免疫組織染色装置を作動させる。
【0070】
自動電界免疫組織染色装置内では、試料載置ユニットが搬送されて、電界撹拌ユニットの上部電極の直下に組織標本が固定されたガラス基板が位置し、この組織標本に対して電界が30〜60秒間与えられて、組織標本中の抗原が賦活化される。続いて、試料載置ユニットが搬送されて、溶液供給ユニットの一次抗体を含む溶液が収容されている収容部の直下に、抗原を賦活化させた組織標本が固定されているガラス基板が位置し、この組織標本に対して一次抗体を含む溶液が滴下される。さらに、試料載置ユニットが搬送されて、電界撹拌ユニットの上部電極の直下にガラス基板が位置し、一次抗体を含む溶液が滴下された組織標本に対して電界が5〜7分間与えられ、一次抗体を含む溶液の非接触な撹拌によって一次抗体と組織標本中の抗原との抗原抗体反応が進む。
【0071】
抗原と一次抗体との抗原抗体反応の後、洗浄ユニットが搬送されて、排出管の管先が上部電極の貫通孔を通じて一次抗体を含む溶液に届き、一次抗体を含む溶液が吸引されて排出される。また、洗浄ユニットの供給管の管先が上部電極の貫通孔から組織標本へ向けて覗いて、洗浄液としてのPBSがガラス基板上に供給される。このPBSに対して電界が30〜60秒間与えられ、PBSの非接触な撹拌によって、組織標本が洗浄される。洗浄に用いたPBSはガラス基板上から排出管により吸引して排出される。
【0072】
次に、自動電界免疫組織染色装置内では、試料載置ユニットが搬送されて、溶液供給ユニットの内因性ペルオキシダーゼ除去のためのブロッキング溶液が収容されている収容部の直下に、抗原と一次抗体との抗原抗体反応を終え、PBSにより洗浄された組織標本が固定されているガラス基板が位置し、このブロッキング溶液が滴下される。また、試料載置ユニットが搬送されて、電界撹拌ユニットの上部電極の直下にブロッキング溶液が滴下された組織標本が固定されているガラス基板が位置し、この組織標本に対して電界が1分間与えられる。ブロッキング溶液の非接触な撹拌によって、免疫組織染色で用いられる発色剤(ジアミノベンジジン液:DAB液)に対する非特異的な発色が有効に抑えられる。
【0073】
ブロッキング溶液の撹拌の後、洗浄ユニットが搬送され、排出管の管先が上部電極の貫通孔を通じてブロッキング溶液に届き、ブロッキング溶液が吸引されて排出される。また、洗浄ユニットの供給管の管先が上部電極の貫通孔から組織標本へ向き、PBSがガラス基板上に供給される。このPBSに対して電界が30〜60秒間与えられ、PBSの非接触な撹拌によって、組織標本が洗浄される。洗浄に用いたPBSはガラス基板上から排出管により吸引されて排出される。
【0074】
さらに、自動電界免疫組織染色装置内では、試料載置ユニットが搬送されて、溶液供給ユニットの二次抗体溶液が収容されている収容部の直下に、抗原と一次抗体との抗原抗体反応、PBSによる洗浄及び、ブロッキング溶液によるブロッキングを終えた組織標本が固定されているガラス基板が位置し、二次抗体溶液が滴下される。また、試料載置ユニットが搬送され、電界撹拌ユニットの上部電極の直下に二次抗体溶液が滴下された組織標本が固定されているガラス基板が位置し、この組織標本に対して電界が5分間与えられる。二次抗体溶液の非接触な撹拌によって一次抗体と二次抗体との抗原抗体反応が進む。
【0075】
一次抗体と二次抗体との抗原抗体反応の後、洗浄ユニットが搬送され、排出管の管先が上部電極の貫通孔を通じて二次抗体溶液に届いて、これを吸引して排出する。また、洗浄ユニットの供給管の管先が上部電極の貫通孔から組織標本へ向き、洗浄液としてのPBSガラス基板上に供給する。このPBSに対して電界が1分与えられ、PBSの非接触な撹拌によって、組織標本が洗浄される。さらに、洗浄に用いたPBSはガラス基板上から排出管により吸引して排出される。そして、自動電界免疫組織染色装置の作動を停止し、一連の反応を進めたガラス基板を試料載置ユニットから外部へ取り出す。
【0076】
その後、ガラス基板上の組織標本に対し、二次抗体の標識酵素であるペルオキシダーゼと反応するジアミノベンジジンによって発色し(DAB発色)、核染色により細胞核を染色し、発色が退色しないように封入する等の従来の免疫組織染色と同様な処理を行う。
【0077】
本発明に係る自動電界免疫組織染色方法では、自動電界免疫組織染色装置を利用することにより、免疫組織染色を構成する一連の反応であるアセトン固定からDAB発色、核染色、封入等の操作までを22.5分程度で完了することができる。また、自動電界免疫組織染色装置を利用することにより、抗原の賦活化から二次抗体による抗原抗体反応の後の洗浄までを自動で進めることができる。
【0078】
一方、[表2]に示すように、各社から市販されているキットを利用した従来の免疫組織染色方法(比較例1〜3)では、アセトン固定からDAB発色、核染色、封入等の操作までに少なくとも223分以上を要する。
【0079】
また、上記特許文献1に係る特開2010−119388号公報に開示の電界撹拌技術を利用し、一次抗体と組織標本中の抗原との抗原抗体反応及び、一次抗体と二次抗体との抗原抗体反応を電界撹拌技術で進める一方、その前後の洗浄工程を手作業で進めた免疫組織染色の例として比較例4を取り上げた。比較例4の場合、アセトン固定からDAB発色、核染色、封入等の操作までに151分を要した。
【0080】
特に、一次抗体と抗原との抗原抗体反応や一次抗体と二次抗体との抗原抗体反応の時間が、比較例1〜4において60分程度、或いはそれ以上の時間を要する。これに対し、本発明において、それぞれ5分に短縮される。また、抗原抗体反応の前後の洗浄工程が、比較例において5分を3セット、すなわち15分以上の時間を要する。これに対し、本発明において、それぞれ30〜60秒又は1分に短縮される。
【0081】
(実施例1)
実施例1では、ポジティブコントロールに対して本発明に係る自動電界免疫組織染色装置を利用し、免疫組織染色を行った。その基本プロトコールは、上記[表1]のとおりである。実施例1における免疫組織染色の結果である顕微鏡写真を、
図15(b)に示す。
図15(a)には、比較例4として示したプロトコールにより免疫組織染色を行い、その結果である顕微鏡写真を示している。
【0082】
また、実施例1における免疫組織染色に用いた一次抗体、二次抗体及びその液量、洗浄液の液量、はっ水リングの内径を下記[表3]に示した。
【0083】
【表3】
【0084】
実施例1において、ポジティブコントロール標本中の抗原を賦活化するにあたって付与した電界条件は、以下のとおりである。ガラス基板上の組織標本に対して印加電界強度4.5kV、周波数1Hzの矩形波で1分間の条件で電界を与えた。電極と組織標本との隙間は3.3mmであった。
【0085】
また、一次抗体と抗原との抗原抗体反応を進めるにあたって付与した電界条件は、以下のとおりである。内径20mmのはっ水リングに一次抗体を含む溶液をガラス基板上の組織標本へ向けて200μL滴下し、この溶液に対して印加電界強度4kV、オフセット電圧2kV、周波数1〜30Hzの矩形波で4分30秒間の条件で電界を与えた。電極と溶液との隙間は4.5mmであった。
【0086】
また、一次抗体と抗原との抗原抗体反応の後の洗浄工程を進めるにあたって付与した電界条件は、以下のとおりである。一次抗体を含む溶液を排出管により排出した後、供給管12を用いて洗浄液であるPBSを400μL、ガラス基板上の組織標本へ向けて供給し、この洗浄液に対して印加電界強度4kV、オフセット電圧2kV、周波数1〜30Hzの矩形波で30秒間の条件で電界を与えた。電極と洗浄液との隙間は6mmであった。その後、洗浄液を排出管により排出した。なお、洗浄工程において、洗浄の時間は30秒であり、その回数は1回で十分であった。
【0087】
一次抗体と二次抗体との抗原抗体反応を進めるにあたって付与した電界条件は、以下のとおりである。内径20mmのはっ水リングに二次抗体を含む溶液をガラス基板上の組織標本へ向けて200μL滴下し、この溶液に対して印加電界強度4kV、オフセット電圧2kV、周波数1〜30Hzの矩形波で5分間の条件で電界を与えた。電極と溶液との隙間は4.5mmであった。
【0088】
また、一次抗体と二次抗体との抗原抗体反応の後の洗浄工程を進めるにあたって付与した電界条件は、以下のとおりである。二次抗体を含む溶液を排出管により排出した後、供給管12を用いて洗浄液であるPBSを400μL、ガラス基板上の組織標本へ向けて供給し、この洗浄液に対して印加電界強度4kV、オフセット電圧2kV、周波数1〜30Hzの矩形波で30秒間の条件で電界を与えた。電極と洗浄液との隙間は6mmであった。その後、洗浄液を排出管により排出した。なお、この洗浄工程において、洗浄の時間は30秒であり、その回数は2回で十分であった。
【0089】
本発明は、免疫組織染色の所要時間が22.5分であって、比較例4の所要時間(151分)の約7分の1に短縮されている。にもかかわらず、実施例1において、
図15(b)に示す本発明による免疫組織染色の結果は、
図15(a)に示す比較例4によるものと同等に明瞭であることが理解される。
【0090】
(実施例2)
実施例2では、リンパ節組織に対して本発明に係る自動電界免疫組織染色装置を利用し、免疫組織染色を行った。その基本プロトコールは、上記[表1]のとおりである。実施例2における免疫組織染色の結果である顕微鏡写真を、
図16(b)に示す。
図16(a)は、比較例5として行った免疫組織染色の例であり、その結果である顕微鏡写真を示している。比較例5では、上記[表1]の基本プロトコールにおいて、抗原抗体反応やPBSによる洗浄時に電界を付与せず、溶液や洗浄液を撹拌しないで免疫組織染色を進めた。
【0091】
実施例2における免疫組織染色に用いた一次抗体、二次抗体及びその液量、洗浄液にお液量、はっ水リングの内径を下記[表4]に示した。
【0092】
【表4】
【0093】
実施例2において、一次抗体と抗原との抗原抗体反応を進めるにあたって付与した電界条件は、以下のとおりである。内径20mmのはっ水リングに一次抗体を含む溶液をガラス基板上の組織標本へ向けて200μL滴下し、この溶液に対して印加電界強度4kV、オフセット電圧2kV、周波数10Hzの矩形波で5分間の条件で電界を与えた。電極と溶液との隙間は4.5mmであった。
【0094】
また、一次抗体と抗原との抗原抗体反応の後の洗浄工程を進めるにあたって付与した電界条件は、以下のとおりである。一次抗体を含む溶液を排出管により排出した後、供給管12を用いて洗浄液であるPBSを400μL、ガラス基板上の組織標本へ向けて供給し、この洗浄液に対して印加電界強度4kV、オフセット電圧2kV、周波数10Hzの矩形波で30秒間の条件で電界を与えた。電極と洗浄液との隙間は6mmであった。その後、洗浄液を排出管により排出した。なお、洗浄工程において、洗浄の時間は30秒であり、その回数は1回で十分であった。
【0095】
一次抗体と二次抗体との抗原抗体反応を進めるにあたって付与した電界条件は、以下のとおりである。内径20mmのはっ水リングに二次抗体を含む溶液をガラス基板上の組織標本へ向けて200μL滴下し、この溶液に対して印加電界強度4kV、オフセット電圧2kV、周波数10Hzの矩形波で5分間の条件で電界を与えた。電極と溶液との隙間は4.5mmであった。
【0096】
また、一次抗体と二次抗体との抗原抗体反応の後の洗浄工程を進めるにあたって付与した電界条件は、以下のとおりである。二次抗体を含む溶液を排出管により排出した後、供給管12を用いて洗浄液であるPBSを400μL、ガラス基板上の組織標本へ向けて供給し、この洗浄液に対して印加電界強度4kV、オフセット電圧2kV、周波数10Hzの矩形波で30秒間の条件で電界を与えた。電極と洗浄液との隙間は6mmであった。その後、洗浄液を排出管により排出した。なお、この洗浄工程において、洗浄の時間は30秒であり、その回数は1回で十分であった。
【0097】
実施例2において、
図16(b)に示す本発明による免疫組織染色の結果が、
図16(a)に示す比較例5によるものより明瞭であることが理解される。なお、実施例2では、電界付与による抗原の賦活化を行っていない。
【0098】
以上、本発明の実施形態を例示して詳述したが、上記実施形態は、出願人が最良であるものと信じて開示する形態であって、本発明がこれに限定されるものではない。本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【0099】
例えば、本発明を実施するに際し、抗原との非特異的な反応を抑制し、免疫組織染色の染色性を向上させるためのブロッキング工程は不要であるが、敢えてブロッキング工程を行っても免疫組織染色自体に支障は生じない。さらに、CKやCD20等の反応性の高い抗体を用いる場合、抗原を賦活化する工程を行う必要の無い場合がありうる。そして、上述したように、本発明は、免疫組織染色を時間的な制約がある術中迅速病理診断に適用可能とする。また、抗体試薬を希釈、すなわち節約して免疫組織染色をすることが可能となる。本発明は、凍結切片を用いた術中迅速診断、パラフィン切片を用いた免疫染色診断に適用可能であるほか、核酸のハイブリダイゼーション、その他の抗原抗体反応等の迅速化、自動化に貢献することもできる。
【0100】
また、上記実施形態では、試料載置ユニットが搬送されて、免疫組織染色を構成する一連の反応が行われる構成を説明したが、本発明がこれに限定されるものではない。本発明は、試料載置ユニットが固定されたままで、溶液供給ユニット、電界撹拌ユニット及び洗浄ユニットが搬送されることにより、免疫組織染色を構成する一連の反応が行われる構成とすることも可能である。このような構成において本発明は、試料載置ユニットで基板上に滴下された溶液等が、決してこぼれることがないというメリットを有することとなる。
【解決手段】自動電界免疫組織染色装置1を、試料載置ユニット2、溶液供給ユニット3、電界撹拌ユニット4及び洗浄ユニット5を備えて構成し、組織標本Tが固定されているガラス基板Gを載置する試料載置ユニット2と、上部電極41を備える電界撹拌ユニット4とを連動させて組織標本T中の抗原を賦活化し、試料載置ユニット2と、各種の溶液を収容している溶液供給ユニット3とを連動させて組織標本Tに対して一次抗体を含む溶液Sを供給し、試料載置ユニット2と電界撹拌ユニット4とを連動させて組織標本T中の抗原と一次抗体との抗原抗体反応を進め、電界撹拌ユニット4と洗浄ユニット5とを連動させて、一次抗体を含む溶液Sを排出したり、洗浄液を供給したりすることにより、組織標本Tを洗浄し、免疫組織染色の迅速化及び自動化を図る。