特許第5696301号(P5696301)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5696301アドレス線配線構造及びこれを有するプリント配線基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5696301
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】アドレス線配線構造及びこれを有するプリント配線基板
(51)【国際特許分類】
   G06F 12/00 20060101AFI20150319BHJP
   G06F 13/16 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   G06F12/00 550K
   G06F13/16 510A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2007-253470(P2007-253470)
(22)【出願日】2007年9月28日
(65)【公開番号】特開2009-86841(P2009-86841A)
(43)【公開日】2009年4月23日
【審査請求日】2010年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】513192281
【氏名又は名称】ピーエスフォー ルクスコ エスエイアールエル
【氏名又は名称原語表記】PS4 Luxco S.a.r.l.
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100082924
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】平石 厚
(72)【発明者】
【氏名】管野 利夫
(72)【発明者】
【氏名】山口 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】西尾 洋二
(72)【発明者】
【氏名】原 敦
(72)【発明者】
【氏名】青木 孝一郎
【審査官】 松永 稔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−085121(JP,A)
【文献】 FBDIMM Specification: DDR2 SDRAM Fully Buffered DIMM(FBDIMM) Design Specification,米国,JEDEC,2007年 3月,P39,67
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 12/00
G06F 13/16
G11C 5/00
G11C 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つのメモリ素子とこれら3つのメモリ素子とデータを授受する素子との間を、前記メモリ素子のアドレス信号を伝送するアドレス信号線で結び、該アドレス信号線は、主線から各メモリ素子に支線が分岐するスタブ構造を有するアドレス線配線構造において、
前記データを授受する素子のアドレス端子の出力インピーダンスが、前記アドレス信号線の線路の特性インピーダンスよりも低く、
前記データを授受する素子から該データを授受する素子に最も近い距離で支線が分岐する分岐点S1までの距離TL0が、前記分岐点S1から2番目に支線が分岐する分岐点S2までの距離TL1と等しいか、あるいは長く、
前記分岐点S2から3番目に支線が分岐する分岐点S3までの距離TL3が、前記距離TL0及びTL1よりも長いことを特徴とするアドレス線配線構造。
【請求項2】
少なくとも3つのメモリ素子とこれら3つのメモリ素子とデータを授受する素子との間を、前記メモリ素子のアドレス信号を伝送するアドレス信号線で結び、該アドレス信号線は、主線から各メモリ素子に支線が分岐するスタブ構造を有するアドレス線配線構造において、
前記データを授受する素子のアドレス端子の出力インピーダンスが、前記アドレス信号線の線路の特性インピーダンスよりも低く、
前記データを授受する素子から該データを授受する素子に最も近い距離で支線が分岐する分岐点S1までの距離TL0が、前記分岐点S1から2番目に支線が分岐する分岐点S2までの距離TL1と等しく、
前記分岐点S2から3番目に支線が分岐する分岐点S3までの距離TL3が、前記距離TL0及びTL1よりも長いことを特徴とするアドレス線配線構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアドレス線配線構造において、前記距離TL3の二倍の距離を信号が伝播する時間を、アドレス信号が、前記分岐点S2から分岐する支線に接続したメモリ素子の0と1を識別するスレッショルド電圧値を超えるまでの立ち上がり時間よりも長くしたことを特徴とするアドレス線配線構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のアドレス線配線構造を有するプリント配線基板。
【請求項5】
請求項4に記載のプリント配線基板を有する情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体素子を搭載したプリント配線基板に関し、特にメモリを搭載したメモリ基板におけるアドレス線配線構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
メモリを搭載したメモリ基板においては、高速・大容量化が情報処理装置の性能向上に必須となっている。メモリの信号配線は、主線に支線の分岐点があるスタブ構造の配線を用いている。
【0003】
しかしながら、こうした分岐点があるスタブ構造の場合、分岐点で線路が並列の線路になるため、線路の特性インピーダンスは低くなる。そこで伝達波に対して負の反射が生じ波形歪や立ち上がりの波形の鈍りを生じさせる。また、複数の分岐点がある場合、相互の分岐点で反射波が複雑に干渉するため、信号波形に揺れのあるジッタを起こしてしまう。このような、ジッタや波形の歪、立ち上がりの鈍りによって、信号が正しく読み取れなかったり、読み込みタイミングが合わなかったりするため、信号の読み取りエラーとなってしまう可能性があった。
【0004】
高速なメモリの場合、従来、データ信号については、分岐点の支線側に信号線路の特性インピーダンスの半分の値の抵抗素子を挿入するSSTL(Stub Series Terminated Logic)方式によって、分岐点での反射波を抑制する方法がとられている(例えば特許文献1、2、非特許文献1参照)。
【0005】
例えば、特許文献2には、メモリチップと、該メモリチップをマザーボード上のコネクタに接続するためのピンと、前記メモリチップと前記ピンとの間を接続するためのバスと、該バスの一端に接続された終端抵抗とを備えたメモリモジュールにおいて、前記バスの他端と前記ピンとの間にスタブ抵抗を接続したメモリモジュールが開示されている。
【0006】
しかしながら、アドレス信号の場合には、データ信号の伝送速度の半分の速度であるため、抵抗を挿入せずに分岐配線での信号伝送を行っていた。そのため、信号伝送が高速になり、アドレス線の信号速度も高速となると、波形歪や立ち上がり波形の鈍り、ジッタにより、アドレス信号が正しく伝送できなくなる可能性がある。
【0007】
【特許文献1】特開平7−250104号公報
【特許文献2】特開2004−62530号公報
【非特許文献1】エルピーダメモリ ユーザーズマニュアル DDR−SDRAM(Double Data Rate Synchronous Dynamic Random Access Memory)の使い方、第1章 第14頁 1.1.4 インタフェース (4)インタフェース仕様
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、メモリを搭載したプリント配線基板において、アドレス信号の波形歪や立ち上がり波形の鈍りが少ない実装方式を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、少なくとも3つのメモリ素子とこれら3つのメモリ素子とデータを授受する素子との間を、前記メモリ素子のアドレス信号を伝送するアドレス信号線で結び、該アドレス信号線は、主線から各メモリ素子に支線が分岐するスタブ構造を有するアドレス線配線構造に適用される。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、前記データを授受する素子のアドレス端子の出力インピーダンスが、前記アドレス信号線の線路の特性インピーダンスよりも低く、前記データを授受する素子から該データを授受する素子に最も近い距離で支線が分岐する分岐点S1までの距離TL0が、前記分岐点S1から2番目に支線が分岐する分岐点S2までの距離TL1と等しいか、あるいは長く、前記分岐点S2から3番目に支線が分岐する分岐点S3までの距離TL3が、前記距離TL0及びTL1よりも長いことを特徴とするアドレス線配線構造が提供される。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、前記データを授受する素子のアドレス端子の出力インピーダンスが、前記アドレス信号線の線路の特性インピーダンスよりも低く、前記データを授受する素子から該データを授受する素子に最も近い距離で支線が分岐する分岐点S1までの距離TL0が、前記分岐点S1から2番目に支線が分岐する分岐点S2までの距離TL1とほぼ等しく、前記分岐点S2から3番目に支線が分岐する分岐点S3までの距離TL3が、前記距離TL0及びTL1よりも長いことを特徴とするアドレス線配線構造が提供される。
【0012】
なお、上記第1、第2の態様のいずれにおいても、前記距離TL3の二倍の距離を信号が伝播する時間を、アドレス信号が、前記分岐点S2から分岐する支線に接続したメモリ素子の0と1を識別するスレッショルド電圧値を超えるまでの立ち上がり時間よりも長くすることが望ましい。
【0013】
本発明の他の態様によれば、上記のいずれかのアドレス線配線構造を有するプリント配線基板が提供される。
【0014】
本発明の更に他の態様によれば、上記のプリント配線基板を有する情報処理装置が提供される。
【0015】
本発明のより他の態様によれば、上記のアドレス線配線構造を有するプリント配線基板に搭載するメモリ素子であって、該メモリ素子には、少なくとも2つのメモリチップが搭載され、該メモリ素子の接続端子とそのメモリチップを接続する配線は、途中で分岐する分岐配線であって、分岐点からメモリチップまでのそれぞれの配線長が概ね等しいことを特徴とする積層型メモリ素子が提供される。
【発明の効果】
【0016】
上記配線構造とすることで、分岐点S2で発生した負の反射波と、分岐点S1で発生した負の反射波が前記データを授受する素子で再反射された正の反射波とが相互に打ち消し、加えて分岐点S3での負の反射波が2番目の支線のメモリ素子に到達する時刻が、0と1を識別するスレッショルド電圧値を超えた後に届くことにより、近端の波形歪や遅延を防止することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[第1の実施例]
図1図10を用いて本発明の第1の実施例を説明する。
【0018】
第1の実施例は、図2に示したようなメモリ基板にバッファ素子を搭載したバッファドDimm(Dual inline memory module)に本発明を適用した例である。図2において、Dimm基板(メモリ基板)300は、コネクタ端子301でCPU基板(図示省略)と電気的に接続している。CPU基板上のメモリコントローラとバッファ素子302間で、メモリのアドレス信号・データ信号を授受し、それらの信号をバッファ素子302から、18個のメモリ素子304R、305R、306R、307R、313R、314R、315R、316R、317R、304L、305L、306L、307L、313L、314L、315L、316L、317Lに伝送する。メモリ素子は、2スタック構造になっており、二つのメモリチップが積層構造で搭載されている。
【0019】
図1(a)に、バッファ素子302(図2b)とメモリ素子間のアドレス信号のトポロジを示す。本方式では、メモリ素子は図2のバッファ素子302を間にした右側(Rを付す)と左側(Lを付す)の二系統に分けて信号を伝送している。アドレス信号は、バッファ素子の出力回路302Rから、主線101Rの配線があり、主線101Rは、各メモリ素子への支線分岐を繰り返した後、20Ωの終端抵抗122Rを経て、終端電位Vttで終端120Rに接続している。この主線101Rに対して、図2において、バッファ素子302の裏面に配置したメモリ素子317Rは、バッファ素子302に最も近い一番目の分岐点S1に接続する支線で繋がっている。主線101Rの二番目の分岐点S2には二個のメモリ素子304Rと313Rが表裏面でそれぞれ接続している。
【0020】
以下、同様に主線101Rの三番目の分岐点S3には二個のメモリ素子305Rと314Rが表裏面で接続し、四番目の分岐点S4には二個のメモリ素子306Rと315Rが接続し、五番目の分岐点S5には二個のメモリ素子307Rと316Rが接続している。第1の実施例での各配線間の配線長を図1(b)に示す。第1の実施例では、バッファ素子302と分岐点S1までの距離TL0を11.6mm、分岐点S1とS2間の距離TL1を11.0mm、分岐点S2とS3の間の配線長TL3_1を30mmとして、TL0≒TL1、TL0<TL3_1、TL1<TL3_1の関係になるような配線としている。なお、記号≒は、配線長TL0とTL1とがほぼ(実質上)等しいことを意味する。
【0021】
なお、分岐点S3とS4の間の配線長TL3_2、分岐点S4とS5の間の配線長TL3_2は、配線が最短で結線できるように15mmとしている。
【0022】
図1(c)には、一般的な配線パターンの配線長構成を示す。この場合には、第1の実施例と異なり、分岐点S2とS3間(配線長TL3_1)、分岐点S3とS4間(配線長TL3_2)、分岐点S4とS5間(配線長TL3_2)は、全て最短となる15mmで結線している。この条件でのアドレス信号の波形を、SPICE(Software Programs for Integrated Circuit Evaluation)を用いてシミュレーション解析した。解析は、バッファ素子302より533MHzのランダム信号を送信し、各メモリチップの入力部に現れる信号波形をアイパターンとしてまとめている。その結果を、図3に示す。図3のように、バッファ素子に一番近いメモリ素子317Rの下段チップD17での信号波形は、アイの開口部中ほどで、くびれ状の波形歪を発生する。また、バッファ素子に二番目に近い位置に実装したメモリ素子313Rの下段チップD13での信号波形は、立ち上がり部に段が発生し、立ち上がり時間Δtrに大きな遅延を発生させている。
【0023】
図4に下段チップD17の波形歪原因を解析した結果を示す。図4では、分岐点S1とS2間の配線長TL1を11mmから300mmと極端に長くした場合のステップパルス波形を示している。この結果から、図4中破線の円で囲ったa部のオーバシュートが大きくなるとともに、くびれによる波形歪b部の出現時刻が遅くなる。これは、分岐点S2以降で発生する負の反射が、下段チップD17に到達するのが遅くなり、くびれによる波形歪b部の出現時刻が遅くなったためである。また、a部のオーバシュートが大きくなったのは、分岐点S1で発生した負の反射波が、バッファ素子部でさらに負の再反射し(バッファ素子の出力インピーダンスは、アドレス信号線路の特性インピーダンスよりも低いので負の反射)、結果的に正の反射としてオーバシュート波形となって現れたためである。従来の一般的な配線の場合、このオーバシュートと分岐点S2以降の反射波が一部相殺されて、図4のようにオーバシュートが少ない波形となっている。このように、分岐点S2以降の分岐での反射波が下段チップD17のくびれ波形に影響を与えている。
【0024】
図5には、下段チップD13での立ち上がり波形の鈍りを解析した結果を示す。図5において、波形鈍りが開始するD点までの時間を計測すると、220psであり、伝播時間を7ps/mmとすると長さが31.4mmとなり、分岐点S2とS3間の配線長(TL3_1)15mmのおよそ二倍となっている。そこで、分岐点S2とS3間の配線長を15〜50mmまで変更して、シミュレーション解析を行った。その結果、分岐点S2とS3間の長さを長くすると、波形鈍りの開始位置が後方にずれてくることがわかる。このことから、下段チップD13の立ち上がり波形の鈍りは、分岐点S3以降の反射波が原因であることがわかる。
【0025】
以上のことから、第1の実施例では、図1に示したように、配線長TL0≒TL1、TL0<TL3_1、TL1<TL3_1となる配線としている。バッファ素子と分岐点S1間の配線長TL0と、分岐点S1とS2間の配線長TL1の長さをほぼ同等とすることにより、メモリ素子317Rの信号波形で、分岐点S1からの負の反射波がバッファ素子で再反射した正の反射波と、分岐点S2からの負の反射波を相殺させる。また、分岐点S2とS3間の距離TL3_1を長くすることで、メモリ素子313Rの信号立ち上がり波形の鈍りが発生するのを遅延させて、バッファ素子で再反射した正の反射波で波形干渉させる。これによって、鈍りの位置をスレッショルド電圧を越えた時刻以降で発生させると共にその鈍りの影響を小さくすることが出来る。
【0026】
図6及び図7に、配線長TL3_1の長さを9〜30mmまで変更したときの、下段チップD17とD13の波形を示す。
【0027】
図8に下段チップD17のくびれ部の電圧、及び下段チップD13の立ち上がり時間をまとめた結果を示す。これらの結果より、配線長TL3_1が30mmであれば、下段チップD17のノイズ電圧、D13の立ち上がり時間とも小さくできる。下段チップD13において、二番目に支線が分岐する分岐点S2から三番目に支線が分岐する分岐点S3までの距離TL3_1の二倍の距離を信号が伝播する時間が、二番目に支線が分岐する分岐線に接続したメモリ素子の0と1を識別するスレッショルド電圧値をアドレス信号が超えるまでの立ち上がり時間よりも大きくなる配線長TL3_1=24mm以上であれば、立ち上がり時間Δtrの遅延時間を小さく出来る。
【0028】
以上のように、配線長TL0≒TL1、TL0<TL3_1、TL1<TL3_1の配線を行うことで、バッファ素子に近いメモリ素子の波形歪を小さくすることが出来る。
【0029】
図1図9を用いて本発明の第2の実施例を説明する。第2の実施例では、図1のトポロジ構成において、図9(b)に示した配線としている。この配線では、配線長TL0>TL1、TL0<TL3_1、TL1<TL3_1の構成としている。図9(a)に示す通り、本構成によっても、各メモリ素子の波形歪を最小に出来る。第2の実施例では、配線長TL1より配線長TL0を長くすることで、分岐点S2からの負の反射波が到達した後、分岐点S1から反射波がバッファ素子で再反射した正の反射波が到達する。これによって、分岐点S2での波形歪後、直ちにバッファ素子からの再反射波で波形の修正を行うことが出来、ノイズによる波形歪・遅延を小さくすることが出来る。
【0030】
図1図10、及び図11を用いて、本発明の第3の実施例を説明する。第3の実施例では、メモリ素子の構成を図10(a)のように、スタック構成にした際の、パッケージ内部の配線構造を等長にした場合の例である。第3の実施例において、プリント配線基板(メモリ基板)の配線パターンは第1の実施例と同じで、図1(a)及び図1(b)に示した条件で配線している。
【0031】
スタック型のパッケージの場合、従来ではプリント配線基板と電気的接続をするハンダボール部で、上部メモリチップと下部メモリチップに分岐して配線するため、図10(b)のように、上段と下段のメモリチップまでの配線長が異なっている。それに対して、第3の実施例である図10(c)では、プリント配線基板と電気的接続をするハンダボール部からの配線を、上段のチップを配線するインターポーザ部と下段のインターポーザ部を接続するハンダボール近傍で分岐する構造としている。そして、分岐後の上段、及び下段の配線長がほぼ同じとなるような構成としている。
【0032】
そのときのメモリチップD17の波形を図11図12に示す。図11(b)、図12に示すように、メモリチップD17での波形立ち上がり部での段を解消することが出来る。これにより、プリント基板の反射による波形歪だけでなく、チップ内での波形も整形されるため、より高速な信号とすることが出来る。
【0033】
図13、及び図14を用いて、本発明の第4の実施例を説明する。第4の実施例では、第1の実施例のメモリ基板(メモリDimm基板)300(本例では1530で示す)をサーバ装置(情報処理装置)1510に実装した例である。
【0034】
図13において、サーバ装置1510は、CPU1522やメモリコントローラ1524を搭載したCPUボード1520が実装されており、そのCPUボード1520には、本発明のメモリ基板1530が搭載されている。
【0035】
図14は、本装置のメモリ周りのアーキテクチャを示したブロック図である。
【0036】
本発明のメモリ基板を実装することにより、サーバ装置では、大容量かつ高速なメモリを搭載することが出来、システム全体でのスループット性能を向上することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、半導体装置及びそれを搭載するプリント配線基板全般に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、本発明の第1の実施例によるメモリモジュールのアドレス線トポロジを配線長と共に従来例と比較しつつ説明するための図である。
図2図2は、本発明が適用されるメモリ基板の概形を説明するための図である。
図3図3は、従来のメモリモジュールのアドレス線トポロジの場合のアドレス信号波形を示す。
図4図4は、ノイズ要因の分析について説明するための図である。
図5図5は、ノイズ要因の分析について説明するための図である。
図6図6は、本発明の第1の実施例におけるアドレス信号波形を示した図である。
図7図7は、本発明の第1の実施例におけるアドレス信号波形を示した図である。
図8図8は、本発明の第1の実施例のアドレス信号波形のノイズ評価結果を説明するための図である。
図9図9は、本発明の第2の実施例における各メモリ素子部のアドレス信号波形を配線長の例と共に示した図である。
図10図10は、本発明の第3の実施例によるメモリモジュールのパッケージ構造と配線構成を従来例と共に示した図である。
図11図11は、本発明の第3の実施例のアドレス信号波形を示した図である。
図12図12は、本発明の第3の実施例における各メモリ素子部のアドレス信号波形を示した図である。
図13】本発明の第4の実施例によるメモリ基板を実装したサーバ装置の構成例を示した図である。
図14】本発明の第4の実施例によるメモリ基板周りのアーキテクチャを示したブロック図である。
【符号の説明】
【0039】
101R・・・主線
102R・・・分岐点S2−S3間の配線
120R・・・終端Vtt
122R・・・終端抵抗
300・・・・メモリ基板(Dimm基板)
302・・・・バッファ素子
304R〜307R、313R〜317R、304L〜307L、313L〜317L・・・メモリ素子
1510・・・サーバ装置
1520・・・CPU基板
1522・・・CPU
1524・・・メモリコントローラ
1530・・・メモリ基板(Dimm基板)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14