【文献】
Shemesh H et al.,The ability of optical coherence tomography to characterize the root canal walls,J Endod.,2007年11月,vol. 33, no. 11,pages 1369 - 1373
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シース内に、該シースと前記プローブ本体との間の空間を充填するマッチングオイルを有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の歯科用OCT装置。
【背景技術】
【0002】
う蝕は抜歯の原因の約4割を占めている疾患である。う蝕が歯牙の内部に深達するに従い、歯髄に炎症が発生し、歯髄炎を誘発する。歯髄炎は例えば急性歯髄炎と慢性歯髄炎とに分類され、急性歯髄炎の初期症状では、炎症部位に象牙芽細胞の変成萎縮、充血、漿液の滲出等が生じる。う触の進行が早い乳歯及び若年者の場合は、急性化膿性歯髄炎が起こるのとほぼ前後して象牙質が破壊され、開放性全部性化膿性歯髄炎が起こり、歯髄壊死を起こす。歯髄炎にかかった場合、治療をしないで放置しておくと歯根膜をはじめとする歯周組織乃至骨膜、顎骨等に炎症や感染が進行することもある。
【0003】
細菌感染が根部歯髄まで波及し、不可逆的な全部性歯髄炎に陥った場合は、通常、抜髄処置が行われるが、歯髄除去後は、血管による歯(象牙質・歯髄)の物質代謝が絶たれるため象牙質が脆弱化し破折乃至亀裂の罹患率が上昇する。また、痛みを伝達する歯髄の変性により神経が無くなるので、再びう蝕に罹患した場合に自覚症状が得られず、早期発見が困難となる。
【0004】
う蝕原因菌群が歯髄内に侵入すると、感染した歯髄は歯内で壊死をおこし、菌体は顎骨内に侵入し根尖性歯周炎をきたす。根尖性歯周炎の治療には、(1)リーマー又はファイル等を用いた機械的清掃、(2)次亜塩素酸又は過酸化水素水等による化学的殺菌洗浄、(3)ヨード、水酸化カルシウム、抗生剤及びホルムアルデヒド製剤等による局所的調薬等の歯内療法が施行されるが、再発症例は少なくない。
【0005】
根尖性歯周炎は歯髄炎に比較して慢性的な期間が長く疼痛症状は緩やかで、根尖性歯周膿瘍→肉芽腫→のう胞と時間をかけて顎骨を大きく破壊する事も多く、周囲歯牙の逆行性感染等重症化してから発見される症例も存在し、歯牙を失う大きな原因となる。
【0006】
顎骨内に形成された感染病巣は慢性時も持続的に全身血管内への菌体の侵入がおこり、感染性心内膜炎症、心筋梗塞、及び脳梗塞等を引き起こす。
【0007】
一方、歯牙根尖部の解剖学的形態は、歯根体部に比較して、側枝及び網状根尖を有する場合が多い。側枝及び網状根尖の構造は微細かつ複雑であり、更にこれらの複雑構造は個々人において種々相違するため、側枝及び網状根尖の生体内での評価は極めて困難である。加えて加齢とともに狭窄した髄腔内では過剰的乃至奇形的に存在する過剰狭窄根管の発見も極めて困難であり、これらは、歯内療法の治療成績を下げる。
【0008】
根管治療はリーマー及びファイル等を用い、ブラインド状態で手探りにて行われており、実際に根管内部の状態や根管壁、根尖部の病変を直接確認する方法はない。
【0009】
歯髄炎や根尖性歯周炎の初発治療時には確実な歯内療法の施術が必要不可欠であり、それを確実にする術前の診査、初期病変、側枝、及び網状根尖を生体内で検出する方法や機器開発が模索されている。加えて、破折、亀裂、奇形的過剰狭窄根管、残髄の有無等の客観的画像検査方法は必要不可欠であるにもかかわらず、これらの検査方法は未だ存在しない。
【0010】
歯科臨床における硬組織検査法は、歯科用X線写真検査、パノラマレントゲン検査、及び歯科用CT等があげられるが、いずれも解像度が低く歯牙根尖部の解剖学的形態の正確な描出、初期の根尖性歯周炎の描出、歯根破折の検出等は極めて困難である。
【0011】
一方、OCTは、生体組織の表層から内部までの断層画像を高速にかつ高解像度に取得できる最先端技術であり、眼科領域をはじめ非侵襲イメージングとして注目されている。
【0012】
例えば、非特許文献1には、心臓血管用OCT(Light−Lab(登録商標))を用い、歯根体部の根管内OCTイメージングが記載されている。また、例えば特許文献1には、光源から発した低コヒーレンス光を用いて口腔内の観察対象の断層画像を取得するOCTプローブが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、非特許文献1のOCTプローブは、光の射出角度が光ファイバに対して90度となっており、更にOCTプローブの直径が根管直径より太いため、上部歯髄腔と根管体部の描出のみ可能で、歯牙根尖部と根尖性歯周組織部の描出には、歯牙を貫通した過度の根管拡大が必要になり、根管拡大を行わずに歯牙根尖部及び根尖性歯周組織部の描出は不可能である。また、特許文献1のOCTプローブも、光の射出角度が光ファイバに対して90度となっており、このOCTプローブを根管内イメージングに適用したとしても、上部歯髄腔と根管体部の描出は可能であるが、歯牙根尖部及び根尖性歯周組織部の描出は不可能である。
【0016】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、過度の根管拡大を行うことなく、歯牙根尖部、根尖性歯周組織部、及び側枝の描出を可能とする新規で独創的な歯科用OCT装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明は、OCTプローブとして、
先端側から順に、直角プリズムと、GRINレンズと、柔軟性を有して曲折可能な光ファイバと、接続導光部とを備えるプローブ本体を有し、前記GRINレンズと前記接続導光部との間には一組のワイヤが取り付けられ、一方のワイヤを縮小させると前記プローブ本体は該縮小させた一方のワイヤ側の方向を向くように可動することで、前記プローブ本体の先端が異なる方向を向くように可動する第1OCTプローブと、入射光を直進させて観察対象に射出する第2OCTプローブ
と、の
2タイプを用意し、これらを根管内組織の描出対象位置に応じて、互換的に選択使用したことを特徴とする。
【0018】
具体的には、本発明は、生体に極めて非侵襲な近赤外光源と、先端部が透過性を有するシース内にプローブ本体が配置されたOCTプローブと、一端が前記光源に接続され他端が前記プローブ本体に接続された導光手段と、口腔内の観察対象の画像を表示する画像表示手段とを備え、前記プローブ本体は、前記光源から導光手段を経て導かれた光を前記観察対象に射出してその反射光を前記導光手段に掃引し、この反射・散乱光に基づく画像を前記画像表示手段に表示する歯科用OCT装置であって、前記OCTプローブは、
先端側から順に、直角プリズムと、GRINレンズと、柔軟性を有して曲折可能な光ファイバと、接続導光部とを備えるプローブ本体を有し、前記GRINレンズと前記接続導光部との間には一組のワイヤが取り付けられ、一方のワイヤを縮小させると前記プローブ本体は該縮小させた一方のワイヤ側の方向を向くように可動することで、前記プローブ本体の先端が異なる方向を向くように可動する第1OCTプローブと、前記入射光を直進させて観察対象に射出する第2OCTプローブ
と、の
2タイプからなり、これら
を互換使用するように構成されていることを特徴とする。
【0019】
前記口腔内の観察対象は、例えば、根管内の歯牙根尖部、根尖性歯周組織部又は側枝である。
【0020】
また、前記口腔内の観察対象は、例えば、残髄、歯髄根管病巣、破折、亀裂、又は奇形的過剰狭窄根管である。
【0021】
加えて、根管内及びシース内にはマッチングジェルにより円滑な駆動と屈折率調整による光減衰の抑制を行う。
【0022】
即ち、前記シース内に、該シースと前記プローブ本体との間の空間を充填するマッチングオイルを有することが好ましい。
【0023】
また、前記観察対象と前記シースとの間の空間を充填するマッチングオイルを有することが好ましい。
【0024】
本発明では、
2タイプのOCTプローブを使い分けることにより、光を導光手段を通じて各OCTプローブに導き、口腔内の観察対象、例えば根管内の歯牙根尖部、根尖性歯周組織部又は側枝の画像を取得して、根管全部の画像を画像表示手段に表示できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、
過度の根管拡大を行うことなく、歯牙根尖部、根尖性歯周組織部、及び側枝の描出が可能となる。そのため、歯髄炎や根尖性歯周炎の初発治療時の診査等を精密に行うことができ、更に、実際に根管内部の状態、根管壁及び根尖部の病変を直接確認することにより簡易かつ正確に根管治療を行うことができる。加えて、破折、亀裂、奇形的過剰狭窄根管、及び残髄の有無等の客観的画像検査を可能とし、これまでの歯科用画像診断機器では極めて困難であった歯牙疾患の診査診断を可能とする。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1実施形態)
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明するが、当該実施形態は本発明の原理の理解を容易にするためのものであり、本発明の範囲は、下記の実施形態に限られるものではなく、当業者が以下の実施形態の構成を適宜置換した他の実施形態も、本発明の範囲に含まれる。
【0028】
図1は、本実施形態の歯科用OCT装置900の全体的な構造を示すブロック図である。OCTメイン装置200内においては、電気信号の経路を一点鎖線で示す。本実施形態に係る歯科用OCT装置900は、後述するように、OCTプローブを、光の射出角度が直角となるように外部照射する第1OCTプローブ101と、光をプローブ先端方向へ外部照射する第2OCTプローブ102と、第1OCTプローブ101の照射角度と第2OCTプローブ102の照射角度との間の照射角度で外部照射する第3OCTプローブ103とを有して構成する。そして、これらを根管内組織の描出対象位置に応じて、互換的に選択使用する。
図1においては第1OCTプローブ101を利用するものとする。
【0029】
図1に示すように歯科用OCT装置900は、第1OCTプローブ101と、OCTメイン装置200と、画像表示手段としての表示部300とを有し、第1OCTプローブ101を利用して観察対象である口腔内検査体の生体組織に関する断層画像を取得する。なお、以下の説明においては、光路上、OCTプローブ101の光源に近づく方向を基端側、該光源から遠ざかる方向を先端側と定義する。
【0030】
OCTメイン装置200は、光源212、ファイバカプラ213、コントローラ210、ロータリージョイント214、第1アクチュエータ215、光検出部216、信号処理回路217、レンズ218、ダハミラー219、第2アクチュエータ220、導光手段としての第1から第4光ファイバF1〜F4を有し、第1光ファイバF1は光源212とファイバカプラ213とを接続し、第2光ファイバF2はファイバカプラ213とロータリージョイント214とを接続し、第3光ファイバF3はファイバカプラ213からダハミラー219まで導出しており、第4光ファイバF4はファイバカプラ213と光検出部216とを接続している。なお、本実施形態の光ファイバはいずれもシングルモード光ファイバを想定する。
【0031】
コントローラ210は、OCTメイン装置200全体を制御し、具体的には光源212をオン・オフし、第1アクチュエータ215及び第2アクチュエータ220を制御させ、信号処理回路217を制御する。光源212は、近赤外光源であり、OCTを可能とする波長走査型レーザー光源である。波長走査型OCTであるため、2次元データ収集速度を著しく高速にする事も可能となる。
【0032】
ロータリージョイント214には、導光手段としての第5光ファイバF5が結合されており、その第5光ファイバF5の端部には、OCTプローブを取り付けるためのプローブ被取付部142が設けられる。ロータリージョイント214は、第5光ファイバF5及び第6光ファイバF6を回転させる。
【0033】
歯科用OCT装置900を使用した場合、以下のようにして断層像が取得される。まず、光源212から近赤外光が照射され、照射されたその近赤外光は、第1光ファイバF1内を通り、ファイバカプラ213に進行する。ファイバカプラ213により、第1光ファイバF1を介して入射する近赤外光は、第2光ファイバF2を通る光と、第3光ファイバF3を通る光とに分割される。
【0034】
ファイバカプラ213の分割率は、特に限定されるものではなく、根管内組織の断層画像を鮮明に取得できるように適宜設定することが可能であり、例えば、第2光ファイバF2に向かう光の量を入射光量の50%、第3光ファイバF3に向かう光の量を入射光量の50%と設定できる。
【0035】
ファイバカプラ213で分割されて第2光ファイバF2を進行する光は、次にロータリージョイント214に導かれ、ロータリージョイント214に結合されている第5光ファイバF5に入射する。ロータリージョイント214は、コントローラ210の制御下、第1アクチュエータ215によって駆動され、第5光ファイバF5、第6光ファイバF6及び第1プローブ本体131をファイバの中心軸回りに回転させる。
【0036】
第5光ファイバF5内を進む光は、プローブ被取付部142及びプローブ取付部141を通過し、シース120の内部空間に長手方向に配設される第6光ファイバF6を通過し、第6光ファイバF6に軸合わせした状態で接合して配設される第1プローブ本体131に入射する。第1プローブ本体131は、入射する光を直角に照射する。そして第1プローブ本体131から照射された光は、第1OCTプローブ101の側面から射出され、プローブ外部に存在する根管内組織Rcに集光する。そしてコントローラ210を操作し、第1アクチュエータ215を作動させてロータリージョイント214を回転させることにより、第1OCTプローブ101の側面から射出される光を根管内組織周上に回転させる。
【0037】
一方、ファイバカプラ213で分割されて第3光ファイバF3を進行する光は、レンズ218を介して、平行光束に変換された後、ダハミラー219にて反射される。ダハミラー219からの反射光は、入射時の光路と同一光路を戻ることにより、ファイバカプラ213に導かれる。
【0038】
第3光ファイバF3は、ファイバカプラ213から第5光ファイバF5の先端までの光路長に対応する全長を有する。ダハミラー219は、コントローラ210の制御の下で、第2アクチュエータ220によって、第3光ファイバF3の中心軸(換言すれば、レンズ208の光軸)に沿って平行移動するので、コントローラ210により第3光ファイバF3の先端側端面F3aからダハミラー219間の光路長を調整する。
【0039】
根管内組織からの反射光及びダハミラー219からの反射光は、共にファイバカプラ213を介して光検出部216により受光される。ここで、ダハミラー219を微少距離移動させ、第3光ファイバF3の先端側端面F3aからダハミラー219までの光路長を第6光ファイバF6の先端側端面から根管内組織間の光路長に一致させる。これにより、二種類の反射光は干渉を発生させる。
【0040】
光検出器216は、上記の二種類の反射・散乱光を受光することにより検出した干渉パターンに対応する信号を信号処理回路217に送信する。信号処理回路217は、受信した干渉パターンに対応する信号に基づいて、根管内組織に関する画像信号を生成し、生成された画像信号は表示部300に出力される。表示部300はその画像信号に対応する画像を表示する。
【0041】
次に、OCTプローブの構成について説明する。
図2は、第1OCTプローブ101の第6光ファイバF6の中心軸を含む面での断面図である。
図2に示すように、第1OCTプローブ101は、可撓性を有するチューブ管状のシース120を有しており、シース120の先端部には、光透過性を有する透過領域121が設けられている。シース120内には、導光手段としての第6光ファイバF6及び第1プローブ本体131が設けられる。
【0042】
第1プローブ本体131は、第6光ファイバF6の先端側端面に軸合わせをした状態で接続されて配設されている。第1プローブ本体131は、先端側から順に、直角プリズム113と、GRINレンズ(屈折率傾斜レンズ)112と、GRINレンズ112と光ファイバF6とを接続する接続導光部111とを有する。
図2に示すように、直角プリズム113は、第6光ファイバF6により導かれた光の射出角度が直角となるように配置されている。
【0043】
第1プローブ本体131によって直角に偏向された光は、透過領域121から外部に存在する根管内組織Rcに照射され、第1プローブ本体131外周には、第1プローブ本体131がシース120の内壁に接触することで損傷しないように、例えば金属コート114が施されている。
【0044】
第1OCTプローブ101の基端側の端部には、プローブ被取付部142に取り付けできるプローブ取付部141が設けられている。
【0045】
次に、
図3は、第2OCTプローブ102の第6光ファイバF6の中心軸を含む面での断面図であり、そのうち(a)はプローブ先端方向へ照射する場合であり、(b)は射出方向の角度を変更する場合である。
図3(a)に示すように、第2OCTプローブ102に形成される第2プローブ本体132は、マイクロミラー160と、直角プリズム113と、GRINレンズ112と、接続導光部111とを有する。即ち、第2プローブ本体132は、直角プリズム113の配置は上述の第1OCTプローブ101と同じであるが、直角プリズム113で偏向された光を再び偏向させて、第2OCTプローブ102の先端側に直進させ、根管内組織Rcに照射するようにマイクロミラー160が配置されている点において、第1OCTプローブ101と異なる。マイクロミラー160は、電力ライン162から供給される電力により回転軸161を中心に所定角度だけ回動可能に構成されている。その他の構成は、上記の第1OCTプローブ101及び第1プローブ本体131と同様である。
【0046】
図3(b)に示すように、マイクロミラー160を回動させることにより、斜め方向の角度にてプローブ先端方向へ照射させてプローブ先端方向の画像走査が可能となる。なお、マイクロミラー160を回動させてプローブ先端方向の画像走査を行う場合、第2プローブ本体132を回転させ、マイクロミラー160の回転動作と第2プローブ本体132の回動動作との同期をとることにより、プローブ先端方向の画像走査を行うことも可能である。
【0047】
なお、光を先端側に射出する第2OCTプローブ102は、
図4に示すように、第1OCTプローブ101において直角プリズム113を有しない構成を採用することも可能である。
図4に示されるように、GRINレンズ112の先端には何も設けない構成でも良いし、またGRINレンズ112の先端を保護する保護ガラスを設けることも可能である。
【0048】
次に、
図5は、第3OCTプローブ103の第6光ファイバF6の中心軸を含む面での断面図である。
図5に示すように、第3OCTプローブ103に形成される第3プローブ本体133では、直角プリズム113は、第6光ファイバF6により導かれた光の射出角度が、第1プローブ本体131から光が照射される照射角度と、第2プローブ本体132から光が照射される照射角度との間の照射角度で根管内組織Rcに照射されるように配置されて構成されており、本実施形態ではその照射角度は例えば60度である。その他の構成は、上記の第1OCTプローブ101と同様である。
【0049】
次に、
図6〜
図8を使用して根管内の観察対象の画像を取得する要領について説明する。
図6は、第1OCTプローブ101を使用して根管500の上部の断層画像を取得する場合の説明図である。
【0050】
根管500は、
図6に示すように、中腔形状の主根管510と、主根管510から細かく枝分かれしている部位である側枝520とを有する。象牙質543の上部はエナメル質542にて覆われており、下部はセメント質540、歯根膜549及び歯槽骨541にて固定される。根管500の根尖部530の下には、根尖病巣560がある。根尖病巣とは、根尖病変又は根尖性歯周炎ともいい、歯の歯根の先端付近にできる病気(例えば、歯根肉芽腫、歯根嚢胞等)の病巣総称である。
【0051】
コントローラ210を操作して、光源212をオン状態にして近赤外光をファイバカプラ213まで到達させ、第2光ファイバF2を通る光と第3光ファイバF3を通る光とに分割する。第2光ファイバF2を進む光は、第5光ファイバF5に入射し、次に第6光ファイバF6を通過し、第1プローブ本体131に入射する。第1プローブ本体131からは光が直角に照射され、根管内組織に集光して、再度、第1プローブ本体131に掃引される。
【0052】
一方、第3光ファイバF3を進む光は、ダハミラー219にて反射され、その反射光は、再度ファイバカプラ213に導かれる。
【0053】
根管内組織からの反射光及びダハミラー219からの反射光は、共にファイバカプラ213を介して光検出部216により受光される。そしてコントローラ210によりダハミラー219を微少距離移動させ、第3光ファイバF3の先端側端面F3aからダハミラー219までの光路長を、第6光ファイバF6の先端側端面から根管内組織間の光路長に一致させて、二種類の反射光から干渉を発生させる。第1OCTプローブ101の動きは、例えば、シース120を固定させて第1プローブ本体131を回転させながら上下移動させることも可能であり、また、第1プローブ本体131と共にシース120を上下移動させることも可能である。このようにして根管500の上部の断層画像を取得する。
【0054】
次に、根管500の根尖部の画像を取得する場合は、第1OCTプローブ101を取り外して第2OCTプローブ102を取り付ける。第2OCTプローブ102の取り付けは、例えば、シース120はそのままで第1プローブ本体131を取り外して第2プローブ本体132を取り付ける。
図7は、第2OCTプローブ102を使用して根管500の根尖部の断層画像を取得する場合の説明図である。上記したように第1OCTプローブ101の操作と同様にして、コントローラ210を操作して、
図7に示すように、光をプローブ先端方向へ外部照射し、プローブ外部に存在する根管内組織に集光して、根尖部の断層画像を取得する。
【0055】
次に、根管500の根尖部と上部との間の中間領域の根管側壁の画像を取得する場合は、第3OCTプローブ103を取り付ける。第3OCTプローブ103の取り付けは、例えば、シース120はそのままで第2プローブ本体132を取り外して第3プローブ本体133を取り付ける。
図8は、第3OCTプローブ103を使用して根管500の側壁の中間領域の断層画像を取得する場合の説明図である。上記したように第1OCTプローブ101の操作と同様にして、コントローラ210を操作して、
図8に示すように、光を所定角度で外部照射し、プローブ外部に存在する根管内組織に集光して、根管内の中間領域の断層画像を取得する。
【0056】
(第2実施形態)
上述の実施形態1において、シース120とプローブ本体131との間の空間が空気である場合、直角プリズム113→空気の際と、空気→シース120の際とで、各々の接続部の屈折率の差に起因する光の接続損失が発生する場合がある。そこで、本実施形態では、シース120内に、シース120とプローブ本体131との間の空間を充填する屈折率調整用のマッチングオイルを有する。マッチングオイルの屈折率は直角プリズム113の屈折率に同一又は近いものを使用しても良いし、また、シース120の屈折率に同一又は近いものを使用しても良い。また、直角プリズム113の屈折率とシース120の屈折率とが同一又は近い場合は、その屈折率のものを使用することが可能である。
【0057】
シース120内に充填されるマッチングオイルは、OCTプローブ131の回転及び前後移動を円滑に担保する程度の粘性を有するものが好ましい。シース120とプローブ本体131との間の空間を充填する屈折率調整用のマッチングオイルを使用することにより、光の接続損失を防止することができ、クリアな根管内組織Rcの撮影が可能となる。
【0058】
(第3実施形態)
上述の実施形態1において、シース120と根管内組織Rcとの間の空間が空気である場合、シース120→空気の際と、空気→根管内組織Rcの際とで、各々の接続部の屈折率の差に起因する光の接続損失が発生する場合がある。そこで、本実施形態では、シース120と根管内組織Rcとの間の空間を充填する屈折率調整用のマッチングオイルを、シース120の周囲に配置する。マッチングオイルの屈折率はシース120の屈折率に同一又は近いものを使用することが可能である。
【0059】
シース120の周囲に配置されるマッチングオイルは、シース120周辺に一定時間停滞する程度の粘性を有するものが好ましく、また、根管内組織に接触するため、生体為害性を有しないことが必要である。シース120の周囲に配置されるマッチングオイルの種類としては、特に限定されるものではないが、例えば植物性オイル等を使用することが可能である。シース120と根管内組織Rcとの間の空間を充填する屈折率調整用のマッチングオイルを使用することにより、光の接続損失を防止することができ、クリアな根管内組織Rcの撮影が可能となる。
【0060】
(第4実施形態)
上述の実施形態では第3OCTプローブは一種類のみ設けていたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、例えば第3OCTプローブを複数設けることも可能である。
図9は、第3OCTプローブ103aの第6光ファイバF6の中心軸を含む面での断面図である。
図9に示すように、第3OCTプローブ103aに形成される第3プローブ本体133では、直角プリズム113は照射角度30度で照射されるように配置されている。そして、
図5に示した照射角度60度で照射される第3OCTプローブ103と組み合わせることで、より正確に根管内の中間領域の画像を取得することが可能となる。
【0061】
(第5実施形態)
また、本発明は、シース120内部にてプローブ本体の先端が異なる方向を向くように可動するように構成することも可能である。
図10は、先端が異なる方向を向くように可動する別実施形態に係る第4OCTプローブの説明図であり、そのうち(a)は曲げていない場合の第4プローブ本体であり、(b)は曲げている場合の第4プローブ本体である。
図10(a)に示すように、第4プローブ本体は、先端側から順に、直角プリズム113と、GRINレンズ(屈折率傾斜レンズ)112と、柔軟性を有して曲折可能な第7光ファイバF7と、接続導光部111とを有する。GRINレンズ112の両端部にはワイヤ取付部171,171が設けられ、また、接続導光部111の両端部にもワイヤ取付部172,172が設けられており、これらのワイヤ取付部の間に一組のワイヤ173が各々取り付けられている。
図10(a)の状態では、第6光ファイバF6及び第7光ファイバF7により導かれた光の射出角度は、直角となる。
【0062】
そして、
図10(b)に示すように、一方のワイヤ173を縮小させると第4プローブ本体は該縮小させた一方のワイヤ173側の方向を向くように可動する。
図10(b)の状態では、第6光ファイバF6及び第7光ファイバF7により導かれた光の射出角度は直角ではなく斜め前方の角度θにて出射される。本実施形態に係る構成によれば直角プリズム113の形状を変更させることなく、プローブ本体に設けられたワイヤの長さを調整する簡易な手法により光の射出角度を調整することができる。
【0063】
なお、上述の実施形態では、フーリエ・ドメインOCT(FD−OCT)のうち、スウェプト・ソースOCT(SS−OCT)を用いているがこの方式に限定されるわけではなく、OCT装置をスペクトル・ドメインOCT(SD−OCT)で提案されている形式とすることもでき、また、OCT装置をタイム・ドメインOCT(TD−OCT)で提案されている形式とすることもできる。
【0064】
以上、上述したように本実施形態に係る歯科用OCT装置によれば、第1OCTプローブ101、第2OCTプローブ102、及び第3OCTプローブ103を組み合わせて、根管内組織画像を幅広く取得することができ、根管上部のみならず、中間領域の根管側壁並びに根尖部及び根尖性歯周組織部の描出が可能となる。そのため、従来のようにファイルやリーマーをブラインド状態で操ることなしに、実際に、根管内部の状態、具体的には歯牙根尖部、歯根膜、セメント質、歯槽骨、根管壁及び根尖部の状態を直接確認することにより簡易かつ正確に根管治療を行うことができ、また、歯根破折の検出も可能であるため、本発明により得られる利益は計り知れない。