特許第5696362号(P5696362)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジェイテクトの特許一覧

特許5696362ブラシ装置、直流モータ及び電動パワーステアリング装置
<>
  • 特許5696362-ブラシ装置、直流モータ及び電動パワーステアリング装置 図000002
  • 特許5696362-ブラシ装置、直流モータ及び電動パワーステアリング装置 図000003
  • 特許5696362-ブラシ装置、直流モータ及び電動パワーステアリング装置 図000004
  • 特許5696362-ブラシ装置、直流モータ及び電動パワーステアリング装置 図000005
  • 特許5696362-ブラシ装置、直流モータ及び電動パワーステアリング装置 図000006
  • 特許5696362-ブラシ装置、直流モータ及び電動パワーステアリング装置 図000007
  • 特許5696362-ブラシ装置、直流モータ及び電動パワーステアリング装置 図000008
  • 特許5696362-ブラシ装置、直流モータ及び電動パワーステアリング装置 図000009
  • 特許5696362-ブラシ装置、直流モータ及び電動パワーステアリング装置 図000010
  • 特許5696362-ブラシ装置、直流モータ及び電動パワーステアリング装置 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5696362
(24)【登録日】2015年2月20日
(45)【発行日】2015年4月8日
(54)【発明の名称】ブラシ装置、直流モータ及び電動パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 13/00 20060101AFI20150319BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20150319BHJP
【FI】
   H02K13/00 P
   B62D5/04
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-10161(P2010-10161)
(22)【出願日】2010年1月20日
(65)【公開番号】特開2011-151919(P2011-151919A)
(43)【公開日】2011年8月4日
【審査請求日】2012年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】柴田 由之
【審査官】 河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/157259(WO,A1)
【文献】 特開平05−328671(JP,A)
【文献】 特開2005−269780(JP,A)
【文献】 特開2009−124788(JP,A)
【文献】 実開昭58−078771(JP,U)
【文献】 実開昭55−064875(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流子の周面に設けられた各セグメントに摺接する給電ブラシと、前記給電ブラシを収容するブラシホルダと、前記ブラシホルダ内に設けられて該ブラシホルダから突出する方向に前記給電ブラシを付勢する付勢手段とを備えたブラシ装置であって、
前記給電ブラシは、
前記給電ブラシにおける前記各セグメントと摺接する先端部分に設けられる拡幅部と、
前記拡幅部が摩耗した後に前記各セグメントと摺接する部分であって、そのブラシ幅が本来のブラシ幅である摺接部分とを備え、
前記拡幅部は、使用当初のブラシ幅を拡張すべく幅方向に延びるとともに、そのブラシ幅が前記本来のブラシ幅よりも大きく形成され、
前記給電ブラシは、前記摺接部分において前記ブラシホルダに収容され、
前記拡幅部の形成範囲は、前記給電ブラシの長さ方向において、使用当初において該給電ブラシが前記ブラシホルダに収容された際、該ブラシホルダから前記給電ブラシが突出する範囲、且つ前記ブラシホルダから前記給電ブラシが突出する長さよりも短くなるように設定されること、を特徴とするブラシ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のブラシ装置において、
前記拡幅部は、使用当初のブラシ幅が、前記本来のブラシ幅以上となるように形成されること、を特徴とするブラシ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のブラシ装置を備えた直流モータ。
【請求項4】
請求項3に記載の直流モータを備えた電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシ装置、直流モータ及び電動パワーステアリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ブラシ付の直流モータにおいて、その給電ブラシは、長尺略直方体状に形成される。そして、当該給電ブラシは、ブラシホルダ内に収容され、コイルばねに付勢されることにより、その先端が、整流子の周面に整列された複数のセグメントに摺接するようになっている。
【0003】
また、このような給電ブラシでは、その使用当初における摺接状態の早期安定化、即ち所謂「なじみ性」が一つの課題となっている。そして、従来、図8に示すように、給電ブラシ50の一側面(同図中、上側の面)に、その整流子51側の各セグメント52と摺接する先端側に向かって傾斜するテーパ面53を形成する構成が知られている(例えば、特許文献1(第1図)参照)。即ち、このようなテーパ面53を形成することにより、その使用当初において整流子51側の各セグメント52に摺接する先端部分の摺接面積が小さくなる。そして、その初期摺接部となる先端部分の磨耗を促進することによって、なじみ性の向上を図るようになっている。
【0004】
ここで、このような先端側に傾斜するテーパ面53を有した給電ブラシ50は、そのテーパ面53が整流子51の軸線方向(同図に示す例では、軸方向上側)に位置するように配置される。即ち、図9に示すように、ブラシ幅(摺接面の幅)の広い場合(同図中、実線に示す波形M)とブラシ幅の狭い場合(同図中、一点鎖線に示す波形N)とを比較すると、ブラシ幅の狭い場合の方が、より短い時間で整流が完了する。そして、このように整流時間が短い場合には、その急峻な電流変化が振動や音の発生要因となるおそれがある。このため、上記のようなテーパ面53の形成により使用当初の摺接面積を小さくして初期摺接部となる先端部分の磨耗を促進する構成であっても、その磨耗の前後においてブラシ幅が変化しないよう、同テーパ面53を整流子51の軸線方向に配置するのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−141200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図10に示すように、未使用状態の給電ブラシ50には、多くの場合、その先端面54の角部(幅方向両端部)に、製造時の公差、或いはその後の磨耗等により形成された湾曲部55が存在することから、その使用当初におけるブラシ幅W1は、本来のブラシ幅W0よりも狭くなっている。このため、使用当初においては、上記テーパ面53の如何にかかわらず、こうした湾曲部55の存在に起因するブラシ幅の狭さが、音や振動を発生させる一因となっており、この点において、なお改善の余地が残されていた。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、使用当初から高い静粛性を確保することのできるブラシ装置、直流モータ及び電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、整流子の周面に設けられた各セグメントに摺接する給電ブラシと、前記給電ブラシを収容するブラシホルダと、前記ブラシホルダ内に設けられて該ブラシホルダから突出する方向に前記給電ブラシを付勢する付勢手段とを備えたブラシ装置であって、前記給電ブラシは、前記給電ブラシにおける前記各セグメントと摺接する先端部分に設けられる拡幅部と、前記拡幅部が摩耗した後に前記各セグメントと摺接する部分であって、そのブラシ幅が本来のブラシ幅である摺接部分とを備え、前記拡幅部は、使用当初のブラシ幅を拡張すべく幅方向に延びるとともに、そのブラシ幅が前記本来のブラシ幅よりも大きく形成され、前記給電ブラシは、前記摺接部分において前記ブラシホルダに収容され、前記拡幅部の形成範囲は、前記給電ブラシの長さ方向において、使用当初において該給電ブラシが前記ブラシホルダに収容された際、該ブラシホルダから前記給電ブラシが突出する範囲、且つ前記ブラシホルダから前記給電ブラシが突出する長さよりも短くなるように設定されること、を要旨とする。
【0009】
上記構成によれば、使用当初において摺接面となる先端面の角部(幅方向両端部)に、製造時の公差やその後の磨耗等により形成された湾曲部が存在する場合であっても、その使用当初から十分なブラシ幅を確保することができる。その結果、使用当初のブラシ幅が本来のブラシ幅よりも狭くなることを防止して、それより生ずる整流時の急峻な電流変化に起因する振動や音の発生を抑えることができる。そして、これにより、使用当初から高い静粛性を確保することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記拡幅部は、使用当初のブラシ幅が、前記本来のブラシ幅以上となるように形成されること、を要旨とする。
即ち、静粛性の向上を図る観点からすれば、使用当初のブラシ幅が本来のブラシ幅以上である方が、小さい場合よりも影響が少ない。従って、上記構成のように、製造時の公差やその後の磨耗等により形成される上記湾曲部の存在を考慮して、予め使用当初のブラシ幅を大きく設定することで、使用当初から、その静粛性を担保するために十分なブラシ幅を確保することができる。尚、多くの場合、このような湾曲部の大きさについては、ある程度、事前に予想することが可能である。従って、この場合、拡幅部の最大幅は、当該拡幅部が磨耗した後における本来のブラシ幅に、その予想される湾曲部の大きさ(幅方向の長さ)を加えた長さとするとよい。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のブラシ装置を備えた直流モータであること、を要旨とする。
上記構成によれば、使用当初から高い静粛性を確保することが可能な直流モータを提供することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の直流モータを備えた電動パワーステアリング装置であること、を要旨とする。
上記構成によれば、使用当初から高い静粛性を確保することが可能な電動パワーステアリング装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、使用当初から高い静粛性を確保することが可能なブラシ装置、直流モータ及び電動パワーステアリング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】電動パワーステアリング装置(EPS)の概略構成図。
図2】モータの断面図。
図3】給電ブラシの斜視図。
図4】(a)給電ブラシの側面図、(b)給電ブラシの正面図。
図5】A−A断面図。
図6】別例の給電ブラシの斜視図。
図7】(a)別例の給電ブラシの側面図、(b)別例の給電ブラシの正面図。
図8】整流子(の各セグメント)に摺接する給電ブラシを示す説明図。
図9】ブラシ幅と整流時間との関係を示す説明図。
図10】給電ブラシ先端面の角部(幅方向両端部)に形成される湾曲部、及びそのブラシ幅との関係を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態の電動パワーステアリング装置(EPS)1において、ステアリング2が固定されたステアリングシャフト3は、ラックアンドピニオン機構4を介してラック軸5と連結されている。そして、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト3の回転は、ラックアンドピニオン機構4によりラック軸5の往復直線運動に変換される。尚、本実施形態のステアリングシャフト3は、コラムシャフト3a、インターミディエイトシャフト3b、及びピニオンシャフト3cを連結してなる。そして、このステアリングシャフト3の回転に伴うラック軸5の往復直線運動が、同ラック軸5の両端に連結されたタイロッド6を介して図示しないナックルに伝達されることにより、転舵輪7の舵角、即ち車両の進行方向が変更される。
【0016】
また、EPS1は、操舵系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与する操舵力補助装置としてのEPSアクチュエータ10と、該EPSアクチュエータ10の作動を制御する制御手段としてのECU11とを備えている。
【0017】
本実施形態のEPSアクチュエータ10は、駆動源であるモータ12が減速機構13を介してコラムシャフト3aと駆動連結された所謂コラム型のEPSアクチュエータとして構成されている。尚、本実施形態では、モータ12には、ブラシ付の直流モータが採用されており、同モータ12は、ECU11から駆動電力の供給を受けることにより回転する。そして、EPSアクチュエータ10は、このモータ12の回転を減速してコラムシャフト3aに伝達することにより、そのモータトルクをアシスト力として操舵系に付与する構成となっている。
【0018】
一方、ECU11には、トルクセンサ14及び車速センサ15が接続されており、ECU11は、これらトルクセンサ14及び車速センサ15により検出される操舵トルクτ及び車速Vに基づいて、操舵系に付与すべきアシスト力(目標アシスト力)を演算する。そして、その目標アシスト力に相当するモータトルクを発生させるべく、モータ12に対して駆動電力を供給することにより、同モータ12を駆動源とするEPSアクチュエータ10の作動、即ち操舵系に付与するアシスト力を制御する構成となっている。
【0019】
次に、本実施形態のEPSの駆動源であるモータの構成について説明する。
図2に示すように、本実施形態のモータ12は、略有底円筒状をなすヨーク20の内周に永久磁石21を固着してなる固定子22と、同永久磁石21の内側において回転自在に支承された電機子23と、同電機子23に給電する給電ブラシ24とを備えたブラシ付き直流モータとして構成されている。
【0020】
詳述すると、電機子23は、回転軸25に固定されることにより同回転軸25とともに一体回転する電機子コア26及び整流子27を備える。本実施形態では、回転軸25は、ヨーク20の底部20a及び同ヨーク20の開口端20bを閉塞するハウジング28にそれぞれ設けられた軸受29a,29bに軸支されることにより、ヨーク20の軸線に沿うように配置されている。そして、電機子23は、これにより、その電機子コア26が永久磁石21に対応する軸方向位置に配置された状態で、回転自在にヨーク20内に収容されている。
【0021】
さらに詳述すると、電機子コア26は、径方向外側に向かって放射状に延設された複数(本実施形態では22本)のティース30を有しており、これら各ティース30には、巻線(モータコイル)31が巻回されている。そして、固定子22側において同電機子コア26と対向する永久磁石21には、その周方向に沿って複数(本実施形態では4極)の磁極が形成されている。
【0022】
一方、整流子27は、回転軸25に固定された円筒体32の周面に複数(本実施形態では、22個)のセグメント33を固定することにより形成される。具体的には、円筒体32は、ヨーク20内において、上記電機子コア26よりも開口端20b側(図2中、下側)に配置されており、各セグメント33は、円筒体32の周面に沿って所定間隔で整列配置されている。そして、これらの各セグメント33には、それぞれ、上記各ティース30に巻回された巻線31の一部が接続されている。
【0023】
また、本実施形態のモータ12は、整流子27の径方向外側において、当該整流子27を囲むように周方向に沿って配置された複数(4本)の給電ブラシ24を有している。そして、これら各給電ブラシ24は、ブラシホルダ34内に収容され、付勢手段としてのコイルばね35に付勢されることにより、上記整流子27の周面に配設された各セグメント33に対し、その先端が摺接されている。
【0024】
さらに詳述すると、各給電ブラシ24には、所定角度をおいて周方向に離間した二つを組として、上記ECU11により、そのモータ回転に応じた正負の電圧が印加される。そして、これらの各給電ブラシ24が同整流子27の回転位置に応じた各セグメント33に摺接することにより、当該各セグメント33に接続された巻線31に対する通電が行われる。
【0025】
即ち、ブラシ付きモータである本実施形態のモータ12では、その電機子23の回転により各給電ブラシ24の摺接するセグメント33が移行することで、モータコイルを構成する巻線31に対する通電方向の切り替え(整流)が行なわれる。そして、モータ12は、その巻線31に対する通電により、当該巻線31と上記固定子22側に形成された各磁極との間に生ずる電磁力(電磁吸引力及び反発力)に基づくモータトルクを発生する構成となっている。
【0026】
(ブラシ形状)
次に、本実施形態のモータに用いられる給電ブラシの形状について説明する。
図3は、給電ブラシの斜視図、図4(a)(b)は、その側面図及び正面図、そして、図5は、そのA−A断面図である。
【0027】
図3及び図4(a)(b)、並びに図5に示すように、略直方体状に形成された本実施形態の給電ブラシ24は、上述のように、その長手方向の一端を先端として整流子27の周面に整列配置された各セグメント33に摺接されるべく、整流子27の径方向外側に設けられたブラシホルダ34内に保持される(図2参照)。そして、本実施形態の給電ブラシ24は、その使用当初において整流子27側の各セグメント33との摺接面となる先端面40が、整流子27の周面に合わせて湾曲面(凹面)状に形成されている。
【0028】
また、本実施形態の給電ブラシ24において、その使用状態において整流子27の軸線方向に配置される一側面(上面41)には、当該整流子27の各セグメント33に対する摺接部となる先端側(図4(a)中、右側)に向かって傾斜するテーパ面42が形成されている。
【0029】
即ち、使用状態において整流子27の軸線方向に沿った方向の長さを「高さ」とすれば、このようなテーパ面42を形成することで、使用当初において整流子27側の各セグメント33との摺接面となる先端面40の高さH1は、当該テーパ面42が形成されていない部分の高さH0よりも低くなる。そして、本実施形態では、これにより、使用当初の摺接面積を小さくして、その初期摺接部となる先端部分の磨耗を促進することにより、その摺接状態について、早期の安定化を図る構成となっている。
【0030】
また、本実施形態の給電ブラシ24において、その初期摺接部となる先端部分には、使用当初のブラシ幅(摺接面の幅)W1を拡張すべく幅方向(使用状態において整流子27の周方向に沿った方向、図5中、左右方向)に延びる拡幅部44が設けられている。
【0031】
即ち、上述のように、未使用状態の給電ブラシには、多くの場合、その摺接面となる先端面の角部(幅方向両端部)に、製造時の公差やその後の磨耗等による形成された湾曲部が存在する(図10参照)。このため、その使用当初におけるブラシ幅W1は、本来のブラシ幅W0よりも狭くなっており、ひいては、これを要因とした音や振動が発生するおそれがある。
【0032】
この点を踏まえ、本実施形態の給電ブラシ24では、上記のように、その先端部分に拡幅部44を形成することにより、使用当初から十分なブラシ幅を確保する。そして、これにより、使用当初から高い静粛性を確保することが可能となっている。
【0033】
詳述すると、本実施形態では、上記拡幅部44は、給電ブラシ24の使用状態において整流子27の周方向に沿った方向に配置される両側面(幅方向側面45,46)に、それぞれ、当該整流子27側の各セグメント33との摺接面となる先端面40から連続する態様で突部47,48を立設することにより形成されている。
【0034】
具体的には、本実施形態では、上記拡幅部44を構成する各突部47,48は、給電ブラシ24の長さ方向(同図中、上下方向)において、その先端側の長さLに示される範囲に形成されている。尚、この長さLは、使用当初において給電ブラシ24がブラシホルダ34に収容された際、その先端部分が当該ブラシホルダ34から突出する部分の長さよりも短く設定されている。
【0035】
また、これらの各突部47,48は、それぞれ、当該各突部47,48が設けられた各幅方向側面45,46における先端側の各辺(先端面40側の各辺)に沿って、給電ブラシ24の高さ方向(図4(a)(b)中、上下方向)に延設されている。そして、本実施形態では、これにより、使用当初のブラシ幅W1が、その摺接面となる先端面40の高さ方向全域に亘って拡張されるようになっている。
【0036】
ここで、このように拡幅部44を形成した場合であっても、製造時の公差、或いはその後の磨耗等により、当該拡幅部44の角部、即ち先端面40の幅方向両端部に湾曲部49が形成されることに変わりない。そこで、本実施形態では、図5に示すように、上記各突部47,48の突出量、即ち拡幅部44の最大幅W2は、その未使用状態における給電ブラシ24のブラシ幅、つまり使用当初のブラシ幅W1が、当該拡幅部44が磨耗した後の本来のブラシ幅W0以上となるように設定されている。
【0037】
即ち、静粛性の向上を図る観点からすれば、使用当初のブラシ幅W1が本来のブラシ幅W0以上(W1≧W0)である方が、小さい場合(W1<W0)よりも影響が少ない。従って、本実施形態では、その先端面40の幅方向両端に湾曲部49が形成されることを考慮して、予め使用当初のブラシ幅W1を大きく設定することにより、その静粛性を担保するために十分なブラシ幅を確保する構成となっている。
【0038】
以上、本実施形態によれば、以下のような作用・効果を得ることができる。
(1)給電ブラシ24の先端部分には、使用当初のブラシ幅W1を拡張すべく幅方向に延びる拡幅部44が形成される。
【0039】
上記構成によれば、その摺接面となる先端面40の角部(幅方向両端部)に、製造時の公差やその後の磨耗等により形成された湾曲部49が存在する場合であっても、使用当初から十分なブラシ幅を確保することができる。その結果、使用当初のブラシ幅W1が本来のブラシ幅W0よりも狭くなることを防止して、それより生ずる整流時の急峻な電流変化に起因する振動や音の発生を抑えることができる。そして、これにより、使用当初から高い静粛性を確保することができる。
【0040】
(2)拡幅部44の最大幅W2は、使用当初のブラシ幅W1が、当該拡幅部44が磨耗した後の本来のブラシ幅W0以上となるように設定される。
即ち、静粛性の向上を図る観点からすれば、使用当初のブラシ幅W1が本来のブラシ幅W0以上(W1≧W0)である方が、小さい場合(W1<W0)よりも影響が少ない。従って、上記構成のように、製造時の公差やその後の磨耗等により、その先端面40の幅方向両端に湾曲部49が形成されることを考慮して、予め使用当初のブラシ幅W1を大きく設定することで、使用当初から、その静粛性を担保するために十分なブラシ幅を確保することができる。尚、多くの場合、こうした先端面40の幅方向両端に形成される湾曲部49の大きさについては、ある程度、事前に予想することが可能である。従って、上記拡幅部44の最大幅W2は、本来のブラシ幅W0に、その予想される湾曲部49の大きさ(幅方向の長さ)を加えた長さとするとよい。
【0041】
(3)拡幅部44の形成範囲は、給電ブラシ24の長さ方向において、使用当初において該給電ブラシ24がブラシホルダ34に収容された際、該ブラシホルダ34から給電ブラシ24が突出する長さよりも短くなるように設定される。
【0042】
上記構成によれば、給電ブラシ24以外の部材については変更の必要がない。また、その拡幅部44の形成により生ずるモータ特性の変化を使用当初に限定することができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
【0043】
・上記実施形態では、本発明をEPS1のモータ12に具体化したが、その他、EPS以外の用途に用いられるモータに適用してもよい。また、EPSに適用する場合においても、本実施形態のEPS1のような所謂コラム型に限らず、所謂ラックアシスト型や所謂ピニオン型等、その他の形式のEPSに具体化してもよい。
【0044】
・上記実施形態では、本発明を、その使用状態において整流子27の軸線方向に配置される一側面(上面41)に、摺接部となる先端側に向かって傾斜するテーパ面42が形成された給電ブラシ24に具体化した。しかし、これに限らず、このようなテーパ面42を有しない構成に適用してもよい。
【0045】
・上記実施形態では、拡幅部44を構成する各突部47,48は、その使用当初のブラシ幅W1が、その摺接面となる先端面40の高さ方向全域に亘って拡張されるように給電ブラシ24の高さ方向(図4(a)(b)中、上下方向)に延設されることとした。しかし、これに限らず、図6及び図7に示すように、拡幅部44の高さH2は、先端面40の高さH1よりも低くてもよい。即ち、整流時間の確保という観点からすれば、その摺接面積、即ち摺接面の高さについては特に問題とはならない。従って、このよう構成としても上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0049】
1…電動パワーステアリング装置(EPS)、2…ステアリング、3…ステアリングシャフト、10…EPSアクチュエータ、11…ECU、12…モータ、13…減速機構、23…電機子、24…給電ブラシ、27…整流子、33…セグメント、34…ブラシホルダ、35…コイルばね、40…先端面、42…テーパ面、44…拡幅部、49…湾曲部、50…給電ブラシ、51…整流子、52…セグメント、53…テーパ面、54…先端面、55…湾曲部、W0,W1…ブラシ幅、W2…最大幅。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10