(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1によれば、確かにエネルギーの節約が図れるものの、更なる改善の余地がある。詳細には、特許文献1では、汚泥には酸生成菌だけでなくメタン生成菌も含まれているので、酸発酵槽での反応において発生した有機酸がメタンガスに変化してしまうと記載されている。そこで、有機酸のメタンガスへの変化を抑制するために、特許文献1では酸発酵層における汚泥の温度を18〜23℃になるように調整している。
【0006】
しかし、実際問題として、上記の温度範囲に調整したとしても、メタンガスへの変化を完全に抑制できるわけではなく、微量ながらもメタンガスが発生する。一方、このメタンガスは天然ガスの主成分であり、有用なエネルギー源である。そして、汚水に含まれる成分によっては、多量のメタンガスの発生を見込むことができる。しかしながら、特許文献1においてはその活用については何ら考慮されていない。したがって、メタンガスの有効活用を図るという点において課題を有している。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、生物的処理において発生するメタンガスを有効活用することにより、エネルギー消費の更なる削減を図ることが可能な汚水処理システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかる汚水処理システムの代表的な構成は、有機物を含有する汚水を浄化処理する汚水処理システムであって、汚水に含まれる有機物を分解して有機酸を生成する酸生成反応槽と、酸生成反応槽における処理後の汚水の温度を調整する温度調整槽と、温度調整槽において温度を調整された汚水に含まれる有機酸を分解してメタンガスを生成するメタン生成反応槽と、
メタン生成反応槽において処理された汚水に含まれるアンモニアを酸化して硝酸を生成する硝化槽と、メタンガスを燃焼させて蒸気を生成するボイラと、メタン生成反応槽における処理よりも後の
硝化槽の汚水と冷媒との熱交換を行うヒートポンプと、を備え、温度調整槽における温度調整では、ボイラにおいて生成された蒸気を注入することによる加熱と、ヒートポンプにおける冷媒との熱交換による加熱または冷却とを利用することを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、ヒートポンプにおける熱交換による温度調整だけでなく、生物的処理において発生するメタンガスをボイラで燃焼させて生成した蒸気の熱も利用して温度調整槽における汚水の温度調整を行うことが可能となる。換言すれば、汚水から生成したメタンガスによって温度調整を行うと共に、メタンガスでは不足した熱量を、汚水を熱源とするヒートポンプによって補うことができる。したがって、メタンガス、ひいては系全体のエネルギーを有効活用することができ、汚水の温度調整に要するエネルギーを更に削減することが可能となる。
【0010】
上記の温度調整槽は、汚水の温度が25℃〜37℃の範囲となるように温度調整するとよい。これにより、メタンガスの発生を好適に促進することが可能となる。なお、汚水の温度が25℃未満になると、メタン生成菌の活動が不活発となり、メタンガスの生成効率が低下してしまう。また汚水の温度が40℃を超えると、メタン生成菌が死滅するおそれがあるため、安全性を見て37℃以下程度に制御することが好ましい。
【0011】
当該汚水処理システムは、化石燃料を燃焼させて蒸気を生成する第2ボイラを更に備え、温度調整槽における温度調整には、第2ボイラにおいて生成された蒸気を注入することによる加熱も利用するとよい。
【0012】
これにより、例えば冬場等に、ヒートポンプにおける熱交換により得た熱、およびボイラにおいてメタンガスを燃焼させて生成された蒸気の熱の両方を合わせても、温度調整槽での汚水の温度調整に要する熱が不足した場合に、その不足分の熱を好適に補うことが可能となる。したがって、より確実な温度調整が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、生物的処理において発生するメタンガスを有効活用することにより、エネルギー消費の更なる削減を図ることが可能な汚水処理システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態にかかる汚水処理システム100の概略構成を示す図である。汚水処理システム100は、有機物を含有する汚水を浄化処理する。
図1に示すように、工場等(不図示)から排出された汚水は、スクリーンやストレーナ、フィルタ等(不図示)により異物を除去された後に、汚水処理システム100の最上流側に設けられる流量調整槽102に貯留される。流量調整槽102では、一時的に貯留した汚水を、汚水処理システム100での処理能力に合わせて供給量を調整して浮上分離槽104に投入する。
【0017】
浮上分離槽104では、流量調整槽102から投入された汚水を加圧して空気を溶解させた後、大気圧に開放(減圧)する。すると、汚水中に微細気泡が発生して懸濁物質に付着し、懸濁物質の見かけの密度が低下する(水の密度よりも低くなる)。これにより、懸濁物質が水中を浮上するため(浮上分離法)、汚水から懸濁物質を除去することができる。
【0018】
そして、懸濁物質を除去された汚水は、酸生成反応槽106に送出されて嫌気性処理が行われる。酸生成反応槽106では、汚水に含まれる有機物を分解して有機酸を生成する。詳細には、酸生成反応槽106内を嫌気性状態とし、汚水中の有機物が酸生成菌によって分解されることにより、酢酸、プロピオン酸等の有機酸(低級脂肪酸)が生成される。特に酢酸は、次に述べるメタンガスの原料として有用である。
【0019】
上記のように処理された汚水は温度調整槽108に送出される。温度調整槽108では、酸生成反応槽106における処理後の汚水の温度を調整する。これにより、汚水の温度を、次の処理槽であるメタン生成反応槽110での処理に適した温度にすることができる。
【0020】
本実施形態では、温度調整槽108は、汚水の温度が25℃〜37℃の範囲となるように温度調整する。これは、嫌気性処理では一般に、汚水の温度が、25℃未満になると、メタンガスの生成に寄与するメタン生成菌が不活発となるためメタンガスの発生が抑制され、メタンガスの生成効率が低下してしまうためである。また40℃を超えると、メタン生成菌が死滅するおそれがあるため、安全性を見て37℃以下程度に制御することが好ましい。したがって、調整温度は上記範囲が好適である。温度調整槽108では、ヒートポンプ120およびボイラ140によって加熱され、またはヒートポンプ120によって冷却されることにより、温度が調整される。なお、温度調整槽108における汚水の温度調整の詳細については後述する。
【0021】
上記のようにして温度調整された汚水はメタン生成反応槽110に送出される。メタン生成反応槽110では、温度調整後の汚水に含まれる有機酸を分解してメタンガスを生成する。詳細には、メタン生成反応槽110の下方には、メタン生成菌の集合体が形成されている。そして、メタン生成反応槽110内を嫌気状態とすることにより、このメタン生成菌が汚水中の有機酸を分解してメタンガスが生成される。特に、本実施形態では上述したように温度調整槽108において汚水の温度が最適化されているため、メタン生成反応が好適に促進される。
【0022】
更に、本実施形態ではメタン生成反応槽110にメタン回収装置112が接続されている。かかるメタン回収装置112は後述するボイラ140にも接続されており、回収したメタンガスはボイラ140に供給される。これにより、メタンガスをボイラ140において使用することが可能となる。
【0023】
メタン生成反応槽110において処理された汚水は硝化槽114に送出される。硝化槽114では、汚水中のアンモニア(NH4)を酸化して硝酸(NO3)を生成する。詳細には、硝化槽114内を好気状態とすると、汚水中のアンモニアはまずアンモニア酸化細菌によって酸化され亜硝酸(NO2)となる。そして、この亜硝酸が亜硝酸酸化細菌によって酸化されることにより硝酸となる。このような処理が行われた汚水は次に脱窒槽116に送出される。
【0024】
脱窒槽116では、硝化槽114において生成された汚水中の硝酸を還元して窒素(N2)とする。脱窒槽116を嫌気状態とすると、脱窒細菌が硝酸分子の結合酸素を使用して汚水中の有機物を分解する。その結果、硝酸が還元されて窒素ガスが発生し、汚水から窒素が除去される。このようにして硝化・脱窒処理された汚水は、膜分離槽118においてろ過膜(不図示)を通過することにより汚泥をろ過する。ろ過膜としては、精密ろ過膜(MF膜)または限外ろ過膜(UF膜)を用いることができる。その後、必要に応じて消毒等の処理を施され、浄化処理を行った処理水として系外に放出される。
【0025】
なお、本実施形態では、硝化・脱窒工程を行う槽を「硝化槽114、脱窒槽116」の順に配置したが、これに限定するものではない。例えば、上記の槽を「脱窒槽116、硝化槽114」の順に配置し、これらの槽に汚水を循環させる循環経路(不図示)を設ければ本実施形態と同様の効果を得ることができる。他にも、メタン生成反応槽110、脱窒槽116、硝化槽114の3槽に汚水を循環させてもよい。
【0026】
以上、汚水処理システム100における汚水の浄化処理の流れについて説明した。次に、本実施形態の汚水処理システム100の特徴である温度調整槽108における汚水の温度調整について説明する。温度調整槽108における汚水の温度調節を可能にするために、汚水処理システム100にはヒートポンプ120およびボイラ140が設けられている。
【0027】
ヒートポンプ120は、内部に一次冷媒(フロンガスなど)が循環しており、メタン生成反応槽110における処理よりも後の汚水(本実施形態では膜分離槽118における処理後の汚水)と一次冷媒(冷媒)との熱交換を行い、かかる熱交換において得た熱を利用して温度調整槽108の汚水を加熱する。また後述するように、ヒートポンプ120によって温度調整槽108の汚水を冷却することも可能である。このように、ヒートポンプ120は熱交換サイクルを利用しているため、省エネルギーおよび二酸化炭素排出量の削減が可能である。したがって、汚水処理システム100の環境負荷を低減することが可能となる。
【0028】
詳細には、ヒートポンプ120は、その一次冷媒循環経路120a上に設けられる蒸発器122、圧縮機124、凝縮器126、および膨張弁128を含んで構成される。
【0029】
蒸発器122は、一次冷媒循環経路120aを循環する一次冷媒と、膜分離槽118における処理後の汚水(全ての処理が完了した処理水)との間で、二次冷媒を介して熱交換を行う。これにより、一次冷媒は、膜分離槽118における処理後の汚水を吸熱して、温度調整槽108の汚水を加熱するための熱を得ることができる。
【0030】
本実施形態では、蒸発器122に蒸発器側二次冷媒循環経路122aを設け、ポンプ122bを動力として蒸発器側二次冷媒循環経路122aに二次冷媒を循環させている。また蒸発器側二次冷媒循環経路122a上には第1熱交換器132が設けられる。かかる第1熱交換器132は、汚水の処理系統上では膜分離槽118の下流側に配置されているため、第1熱交換器132には膜分離槽118における処理後の汚水が通過する。このような構成により、膜分離槽118における処理後の汚水が、第1熱交換器132において蒸発器側二次冷媒循環経路122aを循環する二次冷媒と熱交換を行う。そして、熱交換後の二次冷媒が蒸発器122において一次冷媒と熱交換を行い、かかる二次冷媒の熱(膜分離槽118における処理後の汚水の熱)が一次冷媒に移動する。すなわち、ヒートポンプ120の一次冷媒は、蒸発器側二次冷媒循環経路122aを循環する二次冷媒を介して、膜分離槽118における処理後の汚水と間接的に熱交換を行う。
【0031】
蒸発器側二次冷媒循環経路122aを流れる二次冷媒としては、例えば水や不凍液を用いることができる。なお蒸発器122に処理水を直接用いないことにより、ヒートポンプと処理水の系を分離させることができる。これにより汚水のヒートポンプ120への流入を避け、ヒートポンプをユニット化することができる。
【0032】
圧縮機124は、一次冷媒を電力を利用して圧縮する。これにより、一次冷媒は高温高圧の気体となる。
【0033】
凝縮器126は、圧縮機124により圧縮されて高温となった一次冷媒と、温度調整槽108の汚水との間で、二次冷媒を介して熱交換を行う。これにより、一次冷媒の熱を用いて温度調整槽108の汚水を加熱して温度調整を行うことができる。
【0034】
本実施形態では、凝縮器126に凝縮器側二次冷媒循環経路126aを設け、ポンプ126bを動力として凝縮器側二次冷媒循環経路126aに二次冷媒を循環させている。また凝縮器側二次冷媒循環経路126a上には第2熱交換器134が設けられる。かかる第2熱交換器134には、汚水循環経路134aを介して温度調整槽108が接続されており、ポンプ134bを動力として温度調整槽108の汚水が循環する。このような構成により、圧縮機124により圧縮された一次冷媒が、凝縮器126において凝縮器側二次冷媒循環経路126aを循環する二次冷媒と熱交換を行う。そして、熱交換後の二次冷媒が第2熱交換器134において温度調整槽108の汚水と熱交換を行い、かかる二次冷媒の熱(一次冷媒の熱)が温度調整槽108の汚水に移動する。すなわち、ヒートポンプ120の一次冷媒は凝縮器側二次冷媒循環経路126aを循環する二次冷媒を介して、温度調整槽108の汚水と間接的に熱交換を行う。
【0035】
凝縮器側二次冷媒循環経路126aを流れる二次冷媒としては、例えば水や不凍液を用いることができる。なお蒸発器122に処理水を直接用いないことにより、ヒートポンプと処理水の系を分離させることができる。これにより汚水のヒートポンプ120への流入を避け、ヒートポンプをユニット化することができる。
【0036】
膨張弁128は一次冷媒を減圧状態とし、膨張冷却する。これにより、蒸発器122において一次冷媒が二次冷媒ひいては膜分離槽118における処理後の汚水の熱を再度吸収することが可能となり、一次冷媒を再利用することができる。
【0037】
上記説明したように、本実施形態の汚水処理システム100によれば、ヒートポンプ120における一次冷媒との熱交換により、膜分離槽118における処理後の汚水の熱を利用して温度調整槽108の汚水を加熱することができる。このため、膜分離槽118における処理後の汚水の熱の有効活用を図ることができ、且つ温度調整槽108の汚水の温度調整に要するエネルギーの削減が可能となる。また、膜分離槽118における処理後の汚水から吸熱することにもなるため、河川に放流する汚水を冷却するための設備も不要になり、システムの簡略化、ひいては設備コストの削減を図ることもできる。
【0038】
更に本実施形態では、一次冷媒循環経路120a上に四方弁120bが設けられており、かかる四方弁120bを切り替えれば一次冷媒循環経路120aにおける一次冷媒の循環方向を逆方向にすることができる。これにより、温度調整槽108の汚水の温度が所定範囲を上回った場合に、四方弁120bを切り替えて一次冷媒の循環方向を逆方向にし、かかる汚水の熱を一次冷媒に吸熱させて、膜分離槽118における処理後の汚水に排熱することが可能となる。すなわち、本実施形態の汚水処理システム100によれば、ヒートポンプ120における一次冷媒との熱交換により温度調整槽108の汚水の冷却も可能となる。これにより、従来温度調整槽108の汚水の冷却用に設けられていたクーリングタワーなどの設備が不要になるため、コスト削減が可能となる。
【0039】
また本実施形態の汚水処理システム100には、温度調整槽108における汚水の温度調節手段として、上述したヒートポンプ120に加えて更にボイラ140が設けられている。ボイラ140は、メタン回収装置112によりメタン生成反応槽110から回収されたメタンガスが供給され、それを燃焼させて蒸気を生成する。ボイラ140には蒸気配管140aが接続されており、生成された蒸気は蒸気配管140aを通じて温度調整槽108に注入される。これにより、ボイラ140において生成された蒸気を利用して温度調整槽108の汚水を加熱し、温度調整を行うことが可能となる。
【0040】
なお、上記のようにメタンガスを燃焼させると二酸化炭素が生成されるが、かかるメタンガスは上述したように有機物を微生物によって分解することにより発生するバイオガスである。このため、ここで生成される二酸化炭素は、二酸化炭素の増減に影響を与えない、すなわちカーボンニュートラルである。したがって、ボイラにおいて化石燃料を燃焼させる場合と比較して、環境負荷を低減することができる。また、メタンガスの温室効果は二酸化炭素の約21倍と言われているため、メタンガスを燃焼させて二酸化炭素とすることにより、温室効果ガスによる環境への影響をより抑制することも可能となる。
【0041】
上記説明したように、本実施形態にかかる汚水処理システム100によれば、ヒートポンプ120における熱交換による温度調整だけでなく、生物的処理において発生するメタンガスをボイラで燃焼させて生成した蒸気の熱も利用して温度調整槽108における汚水の温度調整を行うことができる。これにより、メタンガス、ひいては系全体のエネルギーを有効活用することができ、汚水の温度調整に要するエネルギーを更に削減することが可能となる。またメタンガスを燃焼させることにより、地球環境への負荷の低減を図ることもできる。
【0042】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態にかかる汚水処理システムについて説明する。
図2は、第2実施形態にかかる汚水処理システム200の概略構成を示す図である。なお、上述した第1実施形態の汚水処理システム100の構成要素と実質的に同一の機能、構成を示す要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0043】
図2に示すように、第2実施形態にかかる汚水処理システム200は、温度調整槽108における汚水の温度調節手段として第2ボイラ240を更に備える点において第1実施形態の汚水処理システム100と異なる。詳細には、汚水処理システム200に設けられる第2ボイラ240は、化石燃料を燃焼させて蒸気を生成する。かかる化石燃料としては、都市ガス、天然ガス、石油、石炭等を好適に用いることができる。
【0044】
第2ボイラ240には蒸気配管240aが接続されており、生成された蒸気は蒸気配管240aを通じて温度調整槽108に注入される。したがって、汚水処理システム200では、ヒートポンプ120における熱交換やボイラ140において生成された蒸気以外に、第2ボイラ240において生成された蒸気も利用して温度調整槽108の汚水を加熱し、温度調整を行うことが可能となる。これにより、例えば冬場等に、ヒートポンプ120における熱交換により得た熱、およびボイラ140において生成された蒸気の熱の両方を合わせても、温度調整槽108での汚水の温度調整に要する熱が不足した場合に、その不足分の熱を好適に補うことができ、より確実な温度調整が可能となる。
【0045】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態にかかる汚水処理システムについて説明する。
図3は、第3実施形態にかかる汚水処理システム300の概略構成を示す図である。なお、上述した第1実施形態の汚水処理システム100および第2実施形態の汚水処理システム200の構成要素と実質的に同一の機能、構成を示す要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0046】
図3に示すように、第3実施形態にかかる汚水処理システム300は、主に、硝化槽114の汚水と二次冷媒との熱交換を行う第3熱交換器334、およびかかる第3熱交換器334に二次冷媒を循環させる汚水循環経路334aを備える点において、第1実施形態の汚水処理システム100および第2実施形態の汚水処理システム200と異なる。
【0047】
詳細には、蒸発器側二次冷媒循環経路122aにおける蒸発器122と第1熱交換器132の間には切替弁322aおよび322bが設けられており、かかる切替弁322aおよび322bにおいて蒸発器側二次冷媒循環経路122aが分岐して分岐循環経路334cが設けられる。そして、分岐循環経路334c上には第3熱交換器334が設けられている。これにより、切替弁322aおよび322bを切り替えることにより、ポンプ122bを動力として分岐循環経路334c、ひいては第3熱交換器334に二次冷媒が循環する。また第3熱交換器334は汚水循環経路334aにより硝化槽114に接続されており、硝化槽114の汚水はポンプ334bを動力として汚水循環経路334aを循環して第3熱交換器334に流れる。
【0048】
上記構成により、硝化槽114の汚水と蒸発器側二次冷媒循環経路122aを循環する二次冷媒とが第3熱交換器334において熱交換を行うことが可能となる。したがって、硝化槽114において好気性処理(硝化反応)により汚水の温度が上昇した場合であっても、かかる汚水の熱を二次冷媒に移動させ、好気性処理に適した温度まで汚水の冷却を行うことができる。これにより、硝化槽114の冷却に要していたクーリングタワーなどの冷却設備が不要となり、設備コストの削減を図れる。
【0049】
そして、第3熱交換器334において硝化槽114の汚水と熱交換を行った二次冷媒は蒸発器122において一次冷媒と熱交換を行う。このため、硝化槽114の汚水から二次冷媒に移動した熱は、最終的には温度調整槽108の汚水の温度調整に利用される。したがって、従来では冷却設備に排熱していた硝化槽114の汚水の熱の有効活用を図ることができ、それと同時に、温度調整槽108における温度調整に要するエネルギーを削減することも可能となる。
【0050】
なお、第1実施形態の構成においては、ヒートポンプ120の動力制御は温度調整槽108の温度に基づいて行われるのに対し、第3実施形態の構成において、ヒートポンプ120の動力制御は、硝化槽114の温度に基づいて行われる。このため、硝化槽114の汚水との熱交換時により二次冷媒が得た熱が少ないと、ヒートポンプ120によって温度調整槽108の汚水を加熱するための熱量が不足するおそれがある。しかし、第3実施形態の構成では、回収したメタンガスによるボイラ140、および化石燃料による第2ボイラ240を備えていることにより、温度調整槽108の温度を適切に調整することが可能である。また第2ボイラ240は、第2実施形態において述べたように、例えば冬場等、熱が不足しがちな状況においても有効活用することができる。
【0051】
更に、第3実施形態の構成では、上記のように温度調整槽108の温度に基づいてヒートポンプ120の動力制御を行うのに加えて、硝化槽114の温度に基づいた切替弁322aおよび322bの流量制御を行ってもよい。すなわち、硝化槽114の温度に基づいて切替弁322aおよび322bを制御して、二次冷媒の、第3熱交換器334(硝化槽114側)に流れる量と第1熱交換器132(処理水側)に流れる量を調節すればよい。これにより、二次冷媒は、第3熱交換器334において硝化槽114の汚水から熱を得つつ、第1熱交換器132において処理水からも熱を得ることができる。したがって、二次冷媒が得る熱が不足することなく、換言すればヒートポンプ120の熱量を下げることなく、温度調整槽108の汚水の加熱を効率的に行うことが可能となる。
【0052】
なお、本実施形態では、第3熱交換器334を硝化槽114に接続する構成としたが、これに限定するものではなく、第3熱交換器334は脱窒槽116に接続されてもよい(脱窒反応も発熱反応である)。また、任意の2つの槽間の経路上に設けられてもよい。また、本実施形態では汚水処理システム300に第2ボイラ240を設ける構成としたが、これに限定するものではなく、必ずしも第2ボイラ240を設ける必要はない。
【0053】
また上述した第1実施形態〜第3実施形態では例示していないが、これらの実施形態には含まれていない処理(工程)、例えば脱リン工程等を当該汚水処理システムに加えてもよい。ただし、脱リン工程は工場排水の水質や、処理水を流す先(河川や湖沼)の排出基準によって有無が決定されるため、必ずしも必要なものではない。
【0054】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。